(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】付着防止部材、3次元印刷装置及び3次元印刷方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/124 20170101AFI20221004BHJP
B29C 64/255 20170101ALI20221004BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20221004BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221004BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221004BHJP
B33Y 40/10 20200101ALI20221004BHJP
【FI】
B29C64/124
B29C64/255
B29C64/264
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y40/10
(21)【出願番号】P 2020563639
(86)(22)【出願日】2019-05-05
(86)【国際出願番号】 CN2019085569
(87)【国際公開番号】W WO2019214552
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】201810422439.1
(32)【優先日】2018-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810571564.9
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810984844.2
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810984845.7
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810984776.X
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520433333
【氏名又は名称】ラクスクレオ・(ベイジン)・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】朱 光
(72)【発明者】
【氏名】姚 志▲鋒▼
(72)【発明者】
【氏名】李 方
(72)【発明者】
【氏名】林 依禾
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲ヤン▼▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】王 虎
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-543717(JP,A)
【文献】特開2018-051996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0279895(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元印刷装置であって、
重合液体を保持するように構成された液体貯蔵タンクと、
前記液体貯蔵タンクの底部上に配された付着防止部材であって、前記付着防止部材が、
前記重合液体と接触した上面と、
複数の微細構造のキャビティであって、前記複数の微細構造のキャビティの各々が、前記重合液体から離れて前記上面上の開口部から伸びる、複数の微細構造のキャビティと、を含む、付着防止部材と、
を含み、
前記付着防止部材の前記複数の微細構造のキャビティの内の少なくとも2つが、流れ連通しており、
前記付着防止部材は、3次元部品が前記液体貯蔵タンクの前記底部へ付着することを防止する、3次元印刷装置。
【請求項2】
前記複数の微細構造のキャビティの内の少なくとも1つが、前記付着防止部材の底面上の開口部へと前記付着防止部材の前記上面上の前記開口部の内の1つから伸び、前記付着防止部材の前記底面が、前記液体貯蔵タンクと接触している、請求項
1に記載の3次元印刷装置。
【請求項3】
前記複数の微細構造のキャビティの内の少なくとも1つが、前記付着防止部材の側面上の開口部へと前記付着防止部材の前記上面上の前記開口部の内の1つから伸びる、請求項1
又は2に記載の3次元印刷装置。
【請求項4】
前記付着防止部材の前記上面上の前記開口部の内の少なくとも1つが、0.0001μm
2から100000μm
2の範囲の面積を有する、請求項1から
3の何れか一項に記載の3次元印刷装置。
【請求項5】
前記付着防止部材の前記上面の面積に対する前記付着防止部材の前記上面上の前記開口部の面積の和の比率が、0.01から0.99の範囲である、請求項1から
4の何れか一項に記載の3次元印刷装置。
【請求項6】
前記付着防止部材の前記上面上の前記開口部の密度が、1mm
2あたり104から1011の範囲である、請求項1から
5の何れか一項に記載の3次元印刷装置。
【請求項7】
前記付着防止部材が、10から500MPaの範囲における曲げ弾性率を有する、請求項1から
6の何れか一項に記載の3次元印刷装置。
【請求項8】
前記付着防止部材が、光透過性である、請求項1から
7の何れか一項に記載の3次元印刷装置。
【請求項9】
前記付着防止部材が、ポリマー材料で作製された、請求項1から
8の何れか一項に記載の3次元印刷装置。
【請求項10】
3次元部品を形成するための方法であって、
液体材料を液体貯蔵タンク内に注ぐ段階であって、付着防止部材が前記液体貯蔵タンクの底面上に配され、前記付着防止部材が、
前記液体材料と接触した上面と、
前記液体貯蔵タンクの前記底面と接触した底面と、
複数の微細構造のキャビティであって、前記複数の微細構造のキャビティの各々が、前記液体材料から離れて前記付着防止部材の前記上面上の開口部から伸びる、複数の微細構造のキャビティと、
を含
み、
前記付着防止部材の前記複数の微細構造のキャビティの内の少なくとも2つが、流れ連通している、段階と、
前記付着防止部材の前記上面から離れて第1の距離である第1の位置にキャリアを設定して、前記キャリアと前記付着防止部材の前記上面との間にギャップを形成する段階であって、前記ギャップが前記液体材料で満たされる、段階と、
光源によって、前記液体材料を照射して、前記3次元部品の第1の部分を形成する段階であって、前記3次元部品の前記第1の部分が、前記キャリア及び前記付着防止部材の前記上面と接触している、段階と、
前記付着防止部材の前記上面から離れる方向に前記キャリアを移動させて、前記付着防止部材の前記上面から前記3次元部品の前記第1の部分を分離する段階であって、前記付着防止部材は、前記3次元部品が前記液体貯蔵タンクの前記底面へ付着することを防止する、段階と、
を含む方法。
【請求項11】
前記付着防止部材の前記上面から離れて第2の距離である第2の位置に前記キャリアを設定して、前記3次元部品の前記第1の部分と前記付着防止部材の前記上面との間に第2のギャップを形成する段階であって、前記第2のギャップが前記液体材料で満たされる、段階と、
前記光源によって、前記液体材料を刺激して、前記3次元部品の第2の部分を形成する段階であって、前記3次元部品の前記第2の部分が、前記付着防止部材の前記上面と接触している、段階と、
前記付着防止部材の前記上面から離れる前記方向に前記キャリアを移動させて、前記付着防止部材の前記上面から前記3次元部品の前記第2の部分を分離する段階と、
をさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記光源によって、前記液体材料を照射して、前記3次元部品の第1の部分を形成する段階が、
前記光源によって、前記液体材料に向かって光を投影する段階であって、前記光が、前記付着防止部材の2つの隣接する微細構造のキャビティの開口部間の距離より長い波長を有する、段階、
を含む、請求項
10又は
11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の微細構造のキャビティの内の少なくとも1つが、前記付着防止部材の底面上の又は側面上の開口部へと前記付着防止部材の前記上面上の前記開口部の内の1つから伸び、前記付着防止部材の前記底面が、前記液体貯蔵タンクと接触している、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記光源が、前記液体貯蔵タンクの下に位置づけられ、前記液体貯蔵タンクの前記底面が、光透過性である、請求項
10から
13の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化3次元印刷の技術分野に関し、具体的には、付着防止部材、3次元印刷装置及び3次元印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化3次元印刷技術は、光硬化樹脂を原料として、コンピュータによって光源を制御して2次元平面内の硬化すべき樹脂領域を照射し硬化して、3次元物体のある横断面構造と同じ硬化層を得て、硬化層を層ごとに堆積することにより、最終的に所望の3次元物体を得る。
【0003】
従来、一般的に、光硬化樹脂を収容したカートリッジの底部に透明なフッ素含有ポリマーフィルムを配置し、光硬化樹脂が硬化して硬化層を形成した後、硬化層がフィルムに接触し、次に、硬化層とフィルムとの間に光硬化樹脂を充填するための隙間ができるように、硬化層をフィルムから離れた方向に移動させ、次に、硬化層とフィルムとの間の光硬化樹脂が硬化して新たな硬化層を形成する。
【0004】
硬化層をフィルムから離れた方向に移動させるとき、硬化層とフィルムとの間の接着力が、フィルムと硬化層との接触面を破壊し、また硬化層を損壊して硬化して得られた3次元物体の機械的強度を低下させることがある。業界の従来の解決手段として、各層の硬化層を成形した後、カートリッジをわずかに反転させるように駆動することにより、硬化層からフィルムを引き剥がすという効果を達成する。これにより、フィルムと硬化層との分離時のフィルムと硬化層との間の付着力を低減して、フィルムと硬化層への破壊を低減することができるが、このような方法は、トレイを反転させるように駆動する装置を設置する必要があるため、3次元印刷装置の設備コストを増加させ、また、各硬化層とフィルムとを分離するたびに、カートリッジを反転させる必要があり、印刷時間が延長する。
【0005】
また、硬化層をフィルムから離れた方向に移動させるとき、硬化層とフィルムとの間の隙間に光硬化樹脂を迅速に充填するために、光硬化樹脂の流速を上げる必要がある。現在、一般的に光硬化樹脂を加熱するか又はカートリッジを振動させる方法を採用するが、光硬化樹脂を加熱するには加熱装置を増設する必要があり、カートリッジを振動させるには振動装置を増設する必要があり、いずれも3次元印刷装置の設備コストを増加させる。
【0006】
また、光硬化3次元造形(印刷)の技術的原理として、まず、3次元モデルを一方向に多層化することにより、各層の輪郭情報又は画像情報を得て、次に、各層のデータ情報を光源によって実現し、ポリマーモノマーとプレポリマーとで光開始剤(光増感剤)を構成し、UV光の照射によって、重合反応を起こし、各層の硬化を完了し、繰り返して、最後に3次元ソリッドモデルを形成する。1層印刷したたびに、構造している3次元構造物を硬化発生領域の底面から分離する離型動作を必要とし、離型後に数秒間静置することにより液面を安定させる必要があり、1層印刷するのに十数秒間かかるため、効率が非常に低い。
【0007】
従来技術において用いられる方法は、構造している3次元構造物を硬化発生領域の底面から機械的工程によって剥離することであり、このような機械的工程は、機械的構造の高精度を要求するだけでなく、全体的な造形時間が増加する。出願日2014年02月10日出願された「キャリアを介した供給による3次元造形のための方法及び装置」と題する中国特許出願第201480008529.6号は、以下の技術内容が開示されている。3次元造形物の硬化発生領域の底面は、半透過性部材及び重合性液体フィルムのリリース層とにより、硬化隔離の作用を果たし、新たな硬化層が硬化発生領域の底面から分離され、機械的工程により両者を分離する必要がないため、造形効率を向上させる。しかしながら、上記技術的解決手段を実現するために、阻害剤を硬化発生領域の底面に流体保持し、阻害剤で硬化性材料の硬化を阻害し、かつ一定の厚さを有する硬化性材料の液体フィルムを常に維持する等の要件を必要とする。実際の操作過程において、阻害剤を供給する流速、阻害剤に対する半透過性部材の浸透効果、硬化性材料の液体フィルムの厚さ等の変数は、いずれも硬化に影響を与え、さらに3次元構造物の最後の成形効果に影響を与え、該設備は実際の応用において変数が多いため、生産プロセスの難度が高い。
【発明の概要】
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題は、付着防止部材、3次元印刷装置及び3次元印刷方法を提供することであり、付着防止部材自体の構造を改善することにより、付着防止部材と硬化層との間の付着力を低減し、かつ硬化層と付着防止部材との間の負圧吸着作用をなくし、付着防止部材と硬化層との剥離をより容易にし、かつ付着防止部材自体の構造を改善することにより、成形材料で硬化層と付着防止部材との間の隙間を充填する時間を短縮するとともに、付着防止部材の局所的な弾性変形性能を向上させることにより、付着防止部材の耐用年数を延長する。
【0009】
上記技術的課題を解決するために、本発明に係る付着防止部材は、光透過性本体と、本体に設置された幾つかの微細構造とを含み、該本体が、対向する第1の表面と第2の表面、第1の表面と第2の表面を接続する側面を有し、各微細構造がそれぞれ、本体内に形成されたキャビティと、本体の第1の表面に設置されてキャビティに通じる第1の開口面とを有する。
【0010】
好ましくは、少なくとも2つの微細構造のキャビティは互いに連通する。
【0011】
好ましくは、全ての微細構造のキャビティは互いに連通する。
【0012】
好ましくは、少なくとも1つの微細構造のキャビティは、本体の第2の表面に設置された第2の開口面を有する。
【0013】
好ましくは、全ての微細構造のキャビティは、いずれも、本体の第2の表面に設置された第2の開口面を有する。
【0014】
好ましくは、少なくとも1つの微細構造のキャビティは、本体の少なくとも1つの側面に設置された第3の開口面を有する。
【0015】
好ましくは、各微細構造の第1の開口面の面積は、0.0001~100000平方マイクロメートルである。
【0016】
好ましくは、各微細構造の第1の開口面の面積は、0.01~100平方マイクロメートルである。
【0017】
好ましくは、各微細構造の第1の開口面の面積の和と本体の第1の表面の面積との比は0.01~0.99である。
【0018】
好ましくは、各微細構造の第1の開口面の面積の和と本体の第1の表面の面積との比は0.05~0.9である。
【0019】
好ましくは、各微細構造の第1の開口面の面積の和と本体の第1の表面の面積との比は0.1~0.4である。
【0020】
好ましくは、本体の第1の表面での前記微細構造の第1の開口面の分布密度は104~1011個/平方ミリメートルである。
【0021】
好ましくは、各微細構造のキャビティの体積の和と本体の体積との比は0.01~0.99である。
【0022】
好ましくは、各微細構造のキャビティの体積の和と本体の体積との比は0.1~0.95である。
【0023】
好ましくは、各微細構造のキャビティの体積の和と本体の体積との比は0.6~0.9である。
【0024】
好ましくは、任意の隣接する2つの微細構造の第1の開口面の間隔の平均値は450nmより小さい。
【0025】
好ましくは、前記本体の曲げ弾性率は10~500Mpaである。
【0026】
好ましくは、前記付着防止部材は、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオリド、ポリトリクロロエチレン、パーフルオロアルキルポリエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、フッ素化ポリ塩化ビニル、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、ポリジメチルシロキサンのうちの1種又は複数種で構成される。
【0027】
好ましくは、前記付着防止部材は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン及びポリジメチルシロキサンのうちの1種又は複数種で構成される。
【0028】
好ましくは、前記付着防止部材は、パリレン、フッ素化エチレンプロピレン、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフロライド、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体、テトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドの共重合体、クロロトリフルオロエチレンとビニリデンフルオライドの共重合体、o-フェニルフェノール、ポリフェニレンエーテル、ポリテレフタル酸、ポリスチレンのうちの1種又は複数種で構成され、そのうち、パリレンは、パリレンC、パリレンN、パリレンD、パリレンHT及びパリレンAFを含む。
【0029】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、液状の成形材料を配置するために用いられ、底面が光透過性であるカートリッジと、第1の表面がカートリッジ内の成形材料との接触面であり、第2の表面がカートリッジの底面に配置される上記付着防止部材と、付着防止部材の第1の表面に接触する成形材料を照射して、照射される成形材料を硬化して硬化層を形成するための光源と、硬化層を連れて移動させるキャリアとを含む、3次元印刷装置をさらに提供する。
【0030】
好ましくは、前記成形材料と付着防止部材は互いに浸透しない。
【0031】
好ましくは、任意の隣接する2つの微細構造の第1の開口面の間隔は、いずれも前記光源が発する光の波長より小さい。
【0032】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、a)、付着防止部材をカートリッジの底面に配置する工程と、b)、液状の成形材料をカートリッジ内に注ぐ工程と、c)、キャリアを付着防止部材の第1の表面から一定距離離れた位置に移動し、光源で付着防止部材の第1の表面に接触する成形材料を照射し、照射された成形材料が硬化して硬化層を形成し、硬化層がキャリアの底部に付着する工程と、d)、キャリアによって硬化層を光源から離れた方向に連れて移動させ、硬化層が移動している過程において、硬化層に接触する付着防止部材の第1の表面の部分が引き上げられて弾性変形し、硬化層が一定距離移動すると、硬化層が付着防止部材の第1の表面から分離する工程と、e)、光源で付着防止部材の第1の表面に接触する成形材料を続いて照射し、照射された成形材料が硬化して形成された硬化層が、その前に形成された硬化層に付着して、一体構造を形成する工程と、f)、3次元物体の印刷が完了するまで以上の工程c)~e)を繰り返す工程とを含む、3次元印刷方法をさらに提供する。
【0033】
以上の構造及び方法を採用すると、本発明は、従来技術と比較して、以下の利点を有する。
【0034】
1)、第1の開口面の存在により、付着防止部材と硬化層との接触面積が低減して、付着防止部材と硬化層との間の付着力を低減し、2)、大量の微細構造が存在するため、成形材料と付着防止部材の第1の表面との接触角が大きくなり、付着防止部材と硬化層との間の付着力をさらに低減し、成形材料と付着防止部材の第1の表面との接触角は、cosθ′=φ(cosθ+1)-1によって形成され、ここで、φは各微細構造の第1の開口面の面積の和と本体の第1の表面の面積との比であり、θ′は成形材料と複数の第1の開口面を有する付着防止部材の第1の表面との接触角であり、θは成形材料といずれの第1の開口面を有さない付着防止部材の第1の表面との接触角であり、3)、微細構造のキャビティに空気が存在してよく、キャビティに空気が存在すると、硬化層と付着防止部材との間の負圧吸着作用をなくすことができることにより、付着防止部材と硬化層との剥離に寄与し、4)、大量の微細構造が存在するため、付着防止部材の局所的な変形性能が高く、即ち、付着防止部材が局所的に変形するとき、該局所的な変形の付着防止部材の他の部分に対する影響が小さく、このような局所的な変形により、抵抗素子の変形が発生した部位を固化層から分離した後に迅速に復帰させることができ、該復帰過程により、成形材料を付着防止部材の変形した部分に引き寄せることができることにより、成形材料が硬化層と付着防止部材との間の隙間を充填する時間を短縮して、3次元印刷の時間を短縮することができる。
【0035】
また、上記従来技術の現状に対して、本発明が解決しようとする技術的課題は、3次元構造物が硬化過程において迅速に離型でき、3次元造形効率が高く安定する光硬化3次元造形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
光硬化3次元造形装置は、(a)3次元構築物を支持及び移動させるキャリアと、(b)液状の硬化性材料を収容するためのカートリッジが設置された構築プラットフォームと、(c)カートリッジの底部に設置され、硬化性材料に接触し、全体的に液状であり、硬化性材料とは非相溶であり、かつ密度が硬化性材料より大きい離型層と、(d)構築プラットフォームを照射し、硬化性材料を硬化させる波長範囲内のUV光を提供するための光源とを含む。
【0037】
さらに、前記離型層とカートリッジの底部との間に、離型層を固定するための固定具が設置される。
【0038】
さらに、前記固定具は内部に外部と連通するキャビティ構造を有し、前記離型層は該固定具のキャビティ内に固定される。
【0039】
さらに、前記固定具はゲル又はナノ繊維である。
【0040】
さらに、前記ゲルは3次元網目構造を有する。
【0041】
さらに、前記離型層は水又は光透過性水溶液である。
【0042】
さらに、前記光透過性水溶液は無機塩溶液である。
【0043】
さらに、前記無機塩溶液は、可溶性のアルカリ金属塩溶液、アンモニウム塩溶液、硝酸塩溶液、過塩素酸塩溶液、過マンガン酸塩溶液、硫酸塩溶液、セレン酸塩溶液、塩化物溶液、臭化物溶液、ヨウ化物溶液のいずれか1種である。
【0044】
さらに、前記可溶性のアルカリ金属塩溶液、アンモニウム塩溶液、硝酸塩溶液、過塩素酸塩溶液、過マンガン酸塩溶液、硫酸塩溶液、セレン酸塩溶液、塩化物溶液、臭化物溶液、ヨウ化物溶液は、いずれも飽和溶液である。
【0045】
さらに、前記光透過性水溶液は水溶性有機塩増量剤溶液である。
【0046】
さらに、前記水溶性有機塩増量剤溶液は、有機酸アルカリ金属塩溶液、有機酸アンモニウム塩溶液、有機酸第三級アンモニウム塩溶液、有機酸第四級アンモニウム塩溶液のいずれか1種である。
【0047】
さらに、前記離型層内には、離型層を固定するための固体固定具が設置される。
【0048】
さらに、前記固定具は、シート状又は板状又はブロック状である。
【0049】
さらに、前記固定具は、離型層の上面と面一となる上面を有する。
【0050】
さらに、前記固定具は幾つかのキャビティを有し、固定具の上面はキャビティと連通する複数の開口面を有し、前記離型層は前記キャビティ内に入り込んで固定具の上面に固液交互面を形成する。
【0051】
さらに、前記固定具は離型層内に浸漬され、該固定具は離型層に平行な上面を有し、該上面から離型層の上面までの距離はゼロより大きく、かつ離型層の深さの二分の一より小さい。
【0052】
さらに、前記固定具の厚さは離型層の深さの四分の一より小さい。
【0053】
さらに、前記固定具の外面はいずれも粗面である。
【0054】
さらに、前記固定具内には、離型層が流通する幾つかのチャンネルが交差して配設され、前記チャンネルの両端はいずれも固定具の対応する上面及び下面に貫通する。
【0055】
さらに、前記固定具は球体又は円錐体又は円筒形であり、該固定具の数は少なくとも2つである。
【0056】
さらに、前記固定具の最高点は固液交互面を形成するように離型層の上面と面一となる。
【0057】
さらに、前記固定具は、離型層内に浸漬され、かつカートリッジの底部に沈設される。
【0058】
さらに、前記固定具は、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオリド、ポリトリクロロエチレン、パーフルオロアルキルポリエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、フッ素化ポリ塩化ビニルのいずれか1種の重合又は複数種の共重合で形成される。
【0059】
従来技術と比較して、本発明の利点は以下のとおりである。本発明は、カートリッジの底部と硬化性材料との間に離型層を設置し、離型層の密度が硬化性材料より大きく、かつ離型層が硬化性材料と非相溶であるため、離型層をカートリッジの底部と硬化性材料との間に保持でき、光源によってキャリアに接触するカートリッジ内の硬化性材料に光照射を実施し、一定時間後に該光照射箇所での離型層における硬化性材料を部分3次元構築物に硬化成形し、光照射を停止した後に駆動装置によってキャリアを光源から離れた方向に一定距離移動させるように制御し、この場合、離型層が液状であり、光硬化後の硬化性材料が固体状態の3次元構築物に成形されるため、3次元構築物と離型層との接触面は固液接触であり、3次元構築物と離型層との間の接着力を低減して、3次元構築物が離型層から迅速に分離し、かつキャリアと連動することを容易にし、3次元造形の効率を向上させ、また離型層が安定した分離媒体として、3次元構築物の成形効果に影響を与えず、3次元造形の安定性を保証する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】硬化層、付着防止部材とカートリッジのアセンブリー図である。
【
図7】3次元印刷過程における各工程の構造概略図である。
【
図8】3次元印刷過程における各工程の構造概略図である。
【
図9】3次元印刷過程における各工程の構造概略図である。
【
図10】3次元印刷過程における各工程の構造概略図である。
【
図11】3次元印刷過程における各工程の構造概略図である。
【
図12】3次元印刷過程における各工程の構造概略図である。
【
図15】本発明の第1の形態による離型層と固定具との間の断面構造概略図である。
【
図16】本発明の第2の形態による第1の実施例における固定具と離型層との連係の平面図である。
【
図17】本発明の第2の形態による第2の実施例における固定具と離型層との連係の断面図である。
【
図18】本発明の第2の形態による第3の実施例における固定具と離型層との連係の断面図である。
【
図19】本発明の第2の形態による第4の実施例における固定具と離型層との連係の断面図である。
【
図21】本発明の第2の形態による第5の実施例における固定具と離型層との連係の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、図面及び具体的な実施形態を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。
【0062】
本実施例における付着防止部材200は、1つの光透過性本体200aと本体200aに設置された幾つかの微細構造とを含む。
【0063】
図2~
図6を参照して、本体200aはフィルム状であり、本体200aは、対向する第1の表面210と第2の表面220と、第1の表面と第2の表面を接続する側面230とを含み、側面230は4つあり、第1の表面210、第2の表面220及び4つの側面230は1つの直方体を構成する。
【0064】
微細構造の形態は多様であってよく、
図3を参照して、この場合、各微細構造はそれぞれ、本体200a内に形成されたキャビティ240と、本体200aの第1の表面210に設置されてキャビティ240に通じる第1の開口面250とを有し、各微細構造のキャビティ240の形状は同一であっても異なってもよく、各微細構造のキャビティ240の体積は同一であっても異なってもよく、各微細構造の第1の開口面250の面積は同一であっても異なってもよく、各微細構造の第1の開口面250の形状は、円形、四角形、多角形又は不規則な形状であってよい。
【0065】
図4を参照して、この場合、各微細構造はそれぞれ、本体200a内に形成されたキャビティ240と、本体200aの第1の表面210に設置されてキャビティ240に通じる第1の開口面250と、本体200aの第2の表面220に設置されてキャビティ240に通じる第2の開口面260とを有し、各微細構造の第2の開口面260の面積は同一であっても異なってもよく、各微細構造の第2の開口面260の形状は、円形、四角形、多角形又は不規則な形状であってよい。
【0066】
図5を参照して、この場合、一部の微細構造はそれぞれ、本体200a内に形成されたキャビティ240と、本体200aの第1の表面210に設置されてキャビティ240に通じる第1の開口面250とを有し、他の一部の微細構造はそれぞれ、本体200a内に形成されたキャビティ240と、本体200aの第1の表面210に設置されてキャビティ240に通じる第1の開口面250と、本体200aの第2の表面220に設置されてキャビティ240に通じる第2の開口面260とを有する。
【0067】
図6を参照して、この場合、各微細構造はそれぞれ、本体200a内に形成されたキャビティ240と、本体200aの第1の表面210に設置されてキャビティ240に通じる第1の開口面250とを有し、一部の微細構造のキャビティ240は、本体200aの第2の表面220に設置された第2の開口面260を有し、一部の微細構造のキャビティ240は、本体200aの1つの側面230に設置された第3の開口面270を有し、各微細構造のキャビティ240はいずれも互いに連通し、各微細構造の第3の開口面270の面積は同一であっても異なってもよく、各微細構造の第3の開口面270の形状は、円形、四角形、多角形又は不規則な形状であってよく、第3の開口面270は本体200aのいずれか1つの側面230に設置されてもよく、本体200aの複数の側面230に第3の開口面270を同時に開設してもよい。
【0068】
一部の微細構造の第1の開口面250の面積は0.1平方マイクロメートルであり、他の一部の微細構造の第1の開口面250の面積は50平方マイクロメートルであり、残りの微細構造の第1の開口面250の面積は100平方マイクロメートルであり、当然のことながら、微細構造の第1の開口面250の面積は、0.0001~100000平方マイクロメートルの間であれば、必要及び作製プロセスに応じて自ら設定してもよい。
【0069】
各微細構造の第1の開口面250の面積の和と本体200aの第1の表面210の面積との比は0.5であり、即ち、本体200aの第1の表面210の表面空隙率は0.5であり、当然のことながら、本体200aの第1の表面210の表面空隙率は、0.01~0.99の間であれば、必要及び作製プロセスに応じて自ら設定してもよい。
【0070】
本体200aの第1の表面210での前記微細構造の第1の開口面250の分布密度は108個/平方ミリメートルであり、当然のことながら、本体200aの第1の表面210での微細構造の第1の開口面250の分布密度は、104~1011個/平方ミリメートルの間であれば、必要及び作製プロセスに応じて自ら設定してもよい。
【0071】
各微細構造のキャビティ240の体積の和と本体200aの体積との比は0.75であり、即ち、本体200aの体積空隙率は0.75であり、当然のことながら、本体200aの体積空隙率は、0.01~0.99の間であれば、必要及び作製プロセスに応じて自ら設定してもよい。
【0072】
任意の隣接する2つの微細構造の第1の開口面250の間隔の平均値が450nmより小さいことにより、各微細構造の第1の開口面250の間隔は小さく、光線が本体200aの第2の表面220から第1の表面210へ本体200aを通過するときの光線の反射及び屈折を低減できる。
【0073】
前記本体200aの曲げ弾性率が60Mpaであることにより、本体200aの弾性は強く、当然のことながら、本体200aの弾性要件を満たす前提で、本体200aの曲げ弾性率は、10~500Mpaの間であれば、必要及び作製プロセスに応じて自ら設定してもよい。
【0074】
図1及び
図12を参照して、本実施例は、カートリッジ100、付着防止部材200、光源300及びキャリア400を含む3次元印刷装置をさらに提供する。
【0075】
カートリッジ100は、液状の成形材料を配置するために用いられ、該カートリッジ100は底面が光透過性である。
【0076】
付着防止部材200の第2の表面220はカートリッジ100の底面に配置され、付着防止部材200の第1の表面210はカートリッジ100内の成形材料500に接触する。
【0077】
光源300はカートリッジ100の下方に設置され、光源300は、付着防止部材200の第1の表面210に接触する成形材料500を照射するために用いられ、成形材料500が照射されて硬化して硬化層600を形成し、硬化層600は付着防止部材200の第1の表面210に接触する。
【0078】
硬化層600が形成された後にキャリア400に付着し、キャリア400が移動すると、硬化層600を連れて移動させる。このように、キャリア400によって硬化層600を光源300から離れた方向に連れて一定距離移動させた後、光源300で付着防止部材200の第1の表面210に接触する成形材料500を続いて照射し、照射された成形材料500が硬化して形成された硬化層600が、その前に形成された硬化層600に付着する。
【0079】
前記成形材料500と付着防止部材200は互いに浸透せず、成形材料500と付着防止部材200の第1の表面210との間の接触角はθ′であり、付着防止部材200の第1の表面210は複数の第1の開口面250を有し、全ての第1の開口面250の面積の和と本体の第1の表面210の面積との比はφであり、成形材料500と何ら第1の開口面250も有さない付着防止部材200の第1の表面210との間の接触角はθであり、θ′とθの関係は、cosθ′=φ(cosθ+1)-1によって決定され、φ値が1より小さいと、即ち、微細構造の第1の開口面250の存在のため、θ′>θになり、成形材料500と付着防止部材200との浸透性がさらに低下し、成形材料500が硬化して硬化層600を形成した後、硬化層600と付着防止部材200との間の付着力がさらに低下することになる。
【0080】
図3を参照して、任意の隣接する2つの微細構造の第1の開口面250の間隔Lの平均値が前記光源300が発する光の波長より小さいことにより、光源300が発する光が付着防止部材200を通過するとき、光の反射及び屈折を低減し、光源300の照射強度を保持し、3次元印刷の印刷品質及び印刷速度を保証することができる。
【0081】
本実施例は、印刷の前に、まず、印刷対象となる3次元物体を多層化し、次に、層ごとに印刷する3次元印刷方法をさらに提供し、具体的には、以下a)~f)を含む。
【0082】
a)、
図7を参照して、付着防止部材200をカートリッジ100の底面に配置する。このとき、付着防止部材200の第2の表面220はカートリッジ100の底面に貼り付ける。
【0083】
b)、
図8を参照して、液状の成形材料500をカートリッジ100内に注ぐ。このとき、成形材料500は付着防止部材200の第1の表面210に接触する。
【0084】
c)、
図9を参照して、キャリア400を付着防止部材200の第1の表面210から一定距離離れた位置に移動し、光源300で付着防止部材200の第1の表面210に接触する成形材料500を照射し、照射された成形材料500が硬化して硬化層600を形成し、硬化層600がキャリア400の底部に付着する。
【0085】
d)
図10を参照して、キャリア400によって硬化層600を光源300から離れた方向に連れて移動させ、硬化層600が移動している過程において、硬化層600に接触する付着防止部材200の第1の表面210の部分が引き上げられて弾性変形し、該弾性変形の復元力により、付着防止部材200は硬化層600から分離する傾向にあり、即ち、該弾性変形の復元力は、付着防止部材200が硬化層600から分離するように促進し、付着防止部材200と硬化層600との剥離をより容易にすることができる;硬化層600が一定距離移動した後、硬化層600は付着防止部材200の第1の表面210から分離し、次に、付着防止部材200の弾性変形した部分は弾性復帰し、該弾性復帰過程により、成形材料500を付着防止部材200の弾性復帰した部分に引き寄せるため、成形材料500が硬化層600と付着防止部材200との間の隙間に流れる速度を上げて、成形材料500が硬化層600と接着部材200との間の隙間を充填する時間を短縮し、3次元印刷の時間を短縮することができる。
【0086】
e)、
図11を参照して、光源300で付着防止部材200の第1の表面210に接触する成形材料500を続いて照射し、照射された成形材料500が硬化して形成された硬化層600が、その前に形成された硬化層600に付着して、一体構造を形成する。
【0087】
f)、
図12を参照して、以上の工程c)~e)を繰り返すことにより、硬化層600を層ごとに積層し、全ての硬化層600の印刷が完了すると、印刷対象となる3次元物体が形成する。
【0088】
前記付着防止部材200は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンとポリジメチルシロキサンのうちの1種又は複数種で構成される。
【0089】
前記付着防止部材200は、パリレン、フッ素化エチレンプロピレン、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフロライド、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体、テトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドの共重合体、クロロトリフルオロエチレンとビニリデンフルオライドの共重合体、o-フェニルフェノール、ポリフェニレンエーテル、ポリテレフタル酸、ポリスチレンのうちの1種又は複数種で構成されてもよく、そのうち、パリレンは、パリレンC、パリレンN、パリレンD、パリレンHT及びパリレンAFを含む。
【0090】
当然のことながら、前記付着防止部材200は、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオリド、ポリトリクロロエチレン、パーフルオロアルキルポリエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、フッ素化ポリ塩化ビニル、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、ポリジメチルシロキサンのうちの1種又は複数種で構成されてもよい。
【0091】
付着防止部材200を作製するとき、まず、付着防止部材200を構成する上記材料を各割合で混合し、次に、発泡プロセスによって、多孔質の立体構造を形成し、付着防止部材200は、付着防止部材200の第1の表面210に第1の開口面250が形成された複数のキャビティ240を内部に有する立体構造であってよい;或いは、付着防止部材200を作製するとき、まず、付着防止部材200を構成する上記材料を各割合で混合し、次に、押出プロセスによってフィルムを形成した後、該フィルムの表面に対してレーザスポット溶接又はエッチングを行うことにより、フィルムの表面に空隙を形成する。
【0092】
具体的には、付着防止部材200の作製プロセスは、以下の5つの実施例に記載したとおりであってよい。
【0093】
実施例1
マグネトロンスパッタリングによって厚さが50マイクロメートルの清浄なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の表面に厚さが10ナノメートルの銅を堆積し、具体的なプロセスは以下のとおりである。Discovery 635複数ターゲットマグネトロンスパッタリングコーティング機を採用し、直流スパッタリングモードを使用し、100Wのスパッタリングパワーで、40標準立方センチメートル/分のアルゴンガス流量で、1分間スパッタリングする。スパッタリングしたPTFEフィルムの表面に誘導結合プラズマエッチングを行い、アルゴンガス、酸素ガス及び四フッ化炭素のガス流量の割合をそれぞれ15、10と30標準立方センチメートル/分に調節し、圧力を1~2Paにする。プラズマを発生させる電源パワーを400Wにし、加速誘導結合キャビティ内プラズマの電源パワーを100Wにして、15秒エッチングして、開口面の面積が0.0001平方マイクロメートルの窪みを生成する。
【0094】
実施例2
マグネトロンスパッタリングによって厚さが50マイクロメートルの清浄なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の表面に厚さが5ナノメートルの銅を堆積し、具体的なプロセスは以下のとおりである。Discovery 635複数ターゲットマグネトロンスパッタリングコーティング機を採用し、直流スパッタリングモードを使用し、100Wのスパッタリングパワーで、40標準立方センチメートル/分のアルゴンガス流量で、1分間スパッタリングする。スパッタリングしたPTFEフィルムの表面に誘導結合プラズマエッチングを行い、アルゴンガス、酸素ガス及び四フッ化炭素のガス流量の割合をそれぞれ15、10と30標準立方センチメートル/分に調節し、圧力を1~2Paにする。プラズマを発生させる電源パワーを400Wにし、加速誘導結合キャビティ内プラズマの電源パワーを100Wにし、30秒エッチングして、開口面の面積が0.01平方マイクロメートルの窪みを生成する。
【0095】
実施例3
ポリビニリデンフルオライド(PVDF)をN,Nジメチルホルムアミド(DMF)とアセトンとの混合溶液(3:2)に溶解し、60℃の温度で磁気撹拌水浴によって加熱し、濃度が20%のPVDF溶液に調製する。PVDF溶液を容量シリンジに添加し、27Gのステンレスニードルを使用し、シリンジを静電紡糸押出装置に固定し、シリンジの押出速度を2ミリリットル/時間にし、紡糸ニードルとドラムコレクタとの間の距離を約15センチメートルにする。紡糸ニードルを正電圧のターミナルに接続し、ドラムコレクタを負電圧に接続し、紡糸繊維を受け取るベースとしてドラムにアルミニウム箔を1層巻き付ける。ニードルからPVDF溶液が押し出されるとき、負圧を約-2キロボルトに調節し、正圧を15キロボルトに調節する。PVDF溶液を室温で静電紡糸し、ドラムコレクタの回転速度を約50回転/分にして、2~3時間連続紡糸し、紡糸フィルムをアルミニウム箔から剥がして、PVDFナノ繊維フィルムを得る。ナノ繊維が不規則に交絡して窪み細孔付き構造を形成し、窪みの開口面の面積は0.1~1平方ミクロンである。
【0096】
実施例4
ポリジメチルシロキサンである主体と硬化剤を10:1の質量比で混合し、直径が10ミクロンの塩粒子を、混合物の全質量の30%を占めるように添加する。均一に混合した後に脱泡処理を行い、液状の混合物をガラス基板表面に、1000回転/分のスピンコート速度で、2分間スピンコートする。スピンコートしたフィルムを80℃の条件で5時間加熱して硬化する。硬化後、水に48時間浸漬し、全ての塩粒子を溶出させ、表面の窪みを形成し、窪みの開口面の面積は100平方マイクロメートルである。
【0097】
実施例5
フォトリソグラフィプロセスによってシリコンウェハの表面にフォトレジストマスクを作製し、マスクのパターンは四角形のウィンドウアレイであり、各四角形の辺の長さは100マイクロメートルである。ウィンドに露出したシリコン表面を誘導結合プラズマエッチング法によってエッチングし、アルゴンガス、酸素ガス及び六フッ化硫黄のガス流量比をそれぞれ200、10及び35標準立方センチメートル/分に調節し、圧力を2Paにする。プラズマを発生させる電源パワーは800Wで、加速誘導結合キャビティ内プラズマの電源パワーは50Wで、エッチング時間は300秒である。エッチング後のシリコンウェハをマスクとし、ホットエンボス加工機によってポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムの表面に対してエンボス加工処理を行い、エンボス加工の圧力は2Mpaで、昇温速度は6℃/分で、最高温度は237℃であり、最高温度に達した後に2分間保持する。冷却後、ポリテトラフルオロエチレンの表面に窪みが形成し、窪みの開口面の面積は10000平方マイクロメートルである。
【0098】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、特許請求の範囲を限定するものと理解されるべきでなく、本発明の構造に他の変更が可能であり、上記構造に限定されるものではない。要するに、本発明の独立請求項の保護範囲内で行われた様々な変更はいずれも本発明の保護範囲内にある。
【0099】
また、本発明において言及された3次元印刷装置は、光硬化3次元造形装置とも呼ばれ、本発明において言及された硬化性材料5は、重合性材料とも呼ばれる。
【0100】
図13~14に示すとおり、光硬化3次元造形装置は、キャリア1であって、3次元構築物7を支持及び移動させるために用いられ、キャリア1と3次元構築物7が垂直方向に変位するように駆動する機械的駆動装置に接続されているものと、キャリア1の下方に設置され、液状の硬化性材料5を収容する光透過性カートリッジ2が設置された構築プラットフォームと、構築プラットフォームの下方に設置され、構築プラットフォームを照射し、硬化性材料5を硬化させる波長範囲内のUV光を提供する光源4とを含む。該光源は、構築プラットフォーム及びカートリッジ2を通過してカートリッジ2内の硬化性材料5を照射し、硬化性材料5はカートリッジ2内で硬化して、3次元構築物7の一部を形成し、次に、キャリア1によって該3次元構築物7の一部がカートリッジ2の底面から上向きに引き離され、カートリッジ2の底面に還流された硬化性材料5は光源4の照射を受け続けて硬化し、このように層ごとに印刷して完全な3次元構築物7を形成する。3次元構築物7とカートリッジ2がいずれも固体状態であり、両者の間の接触面は固体間接触であるため、両者の間の表面接着力は大きく、直接分離すると、カートリッジ2の底部と3次元構築物7のいずれにも一定の機械的損傷を与えるため、カートリッジ2の底部と硬化性材料5との間に離型層3を増設する。前記離型層3は、全体的に液状であり、硬化性材料5に接触するが非相溶であり、かつ密度が硬化性材料5の密度より大きい。本発明の光硬化3次元造形装置は動作時に、まず、液状の離型層3をカートリッジ2内に添加し、次に、硬化性材料5を添加し、カートリッジ2内の液状の離型層3と硬化性材料5とが明らかに2層に分かれるまで静置することにより、硬化性材料5とカートリッジ2の底部とが液状の離型層3を介して隔離を実現し、光源4で硬化性材料5を照射した後、光源4の照射範囲内の硬化性材料5を離型層3の表面で硬化して一部の3次元構築物7を形成し、キャリア1によって該3次元造形物7を離型層3の底面から上向きに引き離す。このとき、該3次元造形物7と離型層3との間の接触面は固液接触であり、両者の間の表面接着力は前述の固体間接触の表面接着力より小さく、三次元構造物7を直接的に引き離して離型層3から分離することができ、かつ引き離すときに3次元構築物7及びカートリッジ2に機械的損傷を与えないとともに、3次元構築物7と離型層3の迅速な分離を容易にし、3次元造形の効率を向上させる。また、離型層3は安定した分離媒体として、3次元造形物7の成形効果に影響を与えず、3次元製造の安定性を保証する。
【0101】
キャリア1によって3次元構築物7を離型層3から上向きに引き離すとき、離型層3と硬化性材料5との間が真空状態になり、離型層3の一部の液体が大気圧下で引き上げられ、離型層3の表面が平坦でなくなり、離型層3の表面が硬化発生領域の底面であるため、離型層3の平坦でない表面が3次元構築物7の構造に影響を与え、全体の3次元印刷効果に影響を与える、という状況が存在する。以上の状況を回避するために、以下の方法によって解決できる。
【0102】
第1の形態は、
図15に示すとおり、前記離型層3とカートリッジ2の底部との間に離型層3を固定するための固定具6を設置することである。前記固定具6は内部に外部と連通するキャビティ構造を有し、前記離型層3は該固定具6のキャビティ内に固定され、即ち、液状の離型層3は固定具6のキャビティ内に充填され、全体として安定した構造になっている。前記固定具6は、ゲル又はナノ繊維であることが好ましく、前記ゲルは3次元網目構造を有し、液状の離型層3が網目構造に入れ、離型層3を安定させるという効果を達成することができ、前記ナノ繊維構造の平均直径は30nm~80nmであり、液状の離型層3が該ナノ繊維構造に入り込んで離型層3を安定させるという効果を達成することができ、前記ゲル又はナノ繊維の材料は、ナイロン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール等の親水性高分子材料を選択してよい。また、固定具6とカートリッジ2の底部の付着性を向上させるために、つや消しの粗さが光源照射の精度に影響しないように、カートリッジ2の底部をつや消し構造に加工してもよい。
【0103】
第2の態様は、前記離型層3内に離型層3を固定するための固体固定具6を設置することである。前記固定具6は、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオリド、ポリトリクロロエチレン、パーフルオロアルキルポリエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、フッ素化ポリ塩化ビニルのいずれか1種の重合又は複数種の共重合で形成され、固定具6と3次元構築物7とが接触するときの表面接着力を低減できる。
【0104】
好ましくは、前記固定具6は、シート状又は板状又はブロック状であり、該固定具6は、カートリッジ2に取り外し可能に接続されるか又は固定接続され、好ましくは取り外し可能に接続され、洗浄し交換しやすいだけでなく、固定具6の取り付け位置を固定する役割を果たし、固定具6が離型層3の振動に伴って自由に移動して、安定化効果に影響を与えることを回避でき、前記取り外し可能な接続は係止、嵌合等であってよい。
【0105】
図16~17に示すように、前記固定具6は、離型層3の上面と面一となる上面を有し、前記固定具6は幾つかのキャビティを有し、固定具6の上面はキャビティと連通する複数の開口面を有する。前記離型層3は前記キャビティ内に入り込んで固定具6の上面に固液交互面を形成し、即ち、固定具6の上面が離型層3の上面と面一に保持されるとき、固定具6のキャビティ内を液状の離型層3が部分的に充填して、固定具6の上面の開口面の全体に広がり、固定具6の上面に固液交互面を形成することができる。該固液交互面と3次元構築物7との間の表面接着力が従来技術における固体間接触の表面接着力より小さいため、離型しやすいだけでなく、離型層3を安定させる役割を果たし、離型層3の表面が平坦でなくなって3次元印刷の全体的な効果に影響を与えることを回避することができる。なお、固定具6はシート状である場合、幾つかのキャビティを有し、固定具6の上面はキャビティと連通する複数の開口面を有し、該構造が網目構造を含む。
【0106】
図18に示すとおり、前記固定具6は離型層3内に浸漬され、該固定具6は離型層3に平行な上面を有する。該上面から離型層3の上面までの距離はゼロより大きく、かつ離型層3の深さの二分の一より小さく、前記固定具6の厚さは離型層3の深さの四分の一より小さい。前記固定具6の外面はいずれも粗面であり、液状離型層3が振動するとき、摩擦と安定化の効果を奏することができる。前記固定具6内には、離型層3が流通する幾つかのチャンネル8が交差して配設され、前記チャンネル8の両端はいずれも固定具6の対応する上面及び下面に貫通し、液状の離型層3を安定させる役割を果たし、離型層3の表面が平坦でなくなって3次元印刷の全体的な効果に影響を与えることを回避することができる。
【0107】
好ましくは、前記固定具6は球体又は円錐体又は円筒形であり、該固定具6の数は少なくとも2つである。
【0108】
図19~20に示すとおり、前記固定具6の最高点は固液交互面を形成するように離型層3の上面と面一となり、即ち、固定具6は、離型層3の上面に浮遊して固液交互面を形成する。即ち、離型層3の上面に幾つかの点が形成されて、離型層3の上面と共に、固体点が液体に点在している固液交互面を形成する。離型層3と3次元構築物7との間の表面接着力を低減できることを保証するとともに、液状の離型層3を安定させる役割を果たし、離型層3の表面が平坦でなくなって3次元印刷の全体的な効果に影響を与えることを回避することができる。また、隣接する固定具6は、互いに付着するという方式で安定した一体になって、カートリッジ2に固定されその自由な移動が印刷効果に影響を与えることを防止する。
【0109】
図21に示すとおり、前記固定具6は、離型層3内に浸漬され、かつカートリッジ2の底部に沈設されて、液状の離型層3を安定させる作用を果たす。
【0110】
また、離型層3の安定性をさらに向上させるために、離型層3の密度を高めることによって実現できる。好ましくは、前記離型層3は水又は光透過性水溶液であり、実際の操作において、光硬化3次元造形の分野で一般的に使用されている硬化性材料のほとんどは感光性樹脂であるが、該材料は水より密度が低く、かつ水に不溶性であるため、前記離型層3は水又は光透過性水溶液を採用し、環境に優しいだけでなく、安定的な効果を達成できる。好ましくは、前記光透過性水溶液は無機塩溶液であり、前記無機塩溶液は、可溶性のアルカリ金属塩溶液、アンモニウム塩溶液、硝酸塩溶液、過塩素酸塩溶液、過マンガン酸塩溶液、硫酸塩溶液、セレン酸塩溶液、塩化物溶液、臭化物溶液、ヨウ化物溶液のいずれか1種であり、前記可溶性のアルカリ金属塩溶液、アンモニウム塩溶液、硝酸塩溶液、過塩素酸塩溶液、過マンガン酸塩溶液、硫酸塩溶液、セレン酸塩溶液、塩化物溶液、臭化物溶液、ヨウ化物溶液は、いずれも飽和溶液であり、好ましくは、飽和の塩化ナトリウム溶液、塩化カルシウム溶液、塩化マグネシウム溶液、硫酸ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、硝酸ナトリウム溶液、臭化ナトリウム溶液、臭化カリウム溶液、臭化カルシウム溶液、臭化マグネシウム溶液、硫酸銅溶液、硫酸亜鉛溶液、塩化銅溶液、塩化亜鉛溶液等であってよく、コストが低く、かつ温度が安全である。
【0111】
離型層の密度をさらに高めるために、前記光透過性水溶液は水溶性有機塩増量剤溶液であることが好ましく、前記水溶性有機塩増量剤溶液は有機酸アルカリ金属塩溶液、有機酸アンモニウム塩溶液、有機酸第三級アンモニウム塩溶液、有機酸第四級アンモニウム塩溶液のいずれか1種であり、好ましくは、前記有機酸アルカリ金属塩溶液、有機酸アンモニウム塩溶液、有機酸第三級アンモニウム塩溶液、有機酸第四級アンモニウム塩溶液は、いずれも飽和溶液である。
【0112】
なお、上記実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、それを制限するためではなく、前述した実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者は、前記各実施例に記載の技術的手段に対する修正又はその一部の技術的手段に対する等価な置換が、これらの修正又は置換が対応する技術的手段の本質を本発明の各実施例の技術的手段の主旨及び範囲から逸脱させるものでない限り、依然として可能であることを、理解すべきである。