(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】クレーンおよび巻上機
(51)【国際特許分類】
B66C 11/00 20060101AFI20221004BHJP
B66D 3/26 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B66C11/00
B66D3/26 J
(21)【出願番号】P 2020565635
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2019048262
(87)【国際公開番号】W WO2020145001
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2019003270
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 峻也
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-091749(JP,A)
【文献】特公昭55-010519(JP,B2)
【文献】特開2007-276948(JP,A)
【文献】特開平02-056397(JP,A)
【文献】実開昭62-083091(JP,U)
【文献】特開昭63-262395(JP,A)
【文献】実開昭57-116696(JP,U)
【文献】特開2014-196161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 9/00-11/00
B66C 17/00-17/26
B66D 1/00- 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームと、前記本体フレームに備えられたハンガーと、前記本体フレームに設けたドラムと、前記ハンガーに取り付けられたエコライザシーブとを備えており、前記ドラムから巻き出されたワイヤロープが荷物を吊下げるロードブロックと前記エコライザシーブとを経由して取付けられている巻上機を有するクレーンであって、
前記エコライザシーブには、前記ワイヤロープが最も屈曲する位置に切欠きが設けられており、
前記本体フレームの側面には、前記ワイヤロープを点検するための点検窓が前記切欠き部位と重なる位置に設けられているクレーン。
【請求項2】
請求項1記載のクレーンにおいて、
前記点検窓は前記ワイヤロープの可動域を超える大きさであるクレーン。
【請求項3】
請求項1記載のクレーンにおいて、
前記点検窓は、前記本体フレームに穴を形成したものであるクレーン。
【請求項4】
請求項1記載のクレーンにおいて、
前記点検窓は、前記本体フレームに形成された穴と、前記穴を覆う透明カバーにより形成されているクレーン。
【請求項5】
請求項1記載のクレーンにおいて、
前記点検窓は、前記本体フレームに形成された穴と、前記穴を覆う開閉可能な扉により形成されているクレーン。
【請求項6】
請求項1記載のクレーンにおいて、
前記本体フレームの外側であって、前記点検窓内を撮像可能な位置に取付けられたカメラと、前記カメラで撮影した画像を表示する表示装置を有するクレーン。
【請求項7】
請求項1記載のクレーンにおいて、
前記本体フレームの外側であって、前記点検窓内を撮像可能な位置に取付けられたカメラと、
前記カメラで撮影された画像を入力し、前記画像を画像処理して得られた入力画像情報と、予め求めて記憶していた判断用画像情報とを比較し、該比較した結果を用いて前記ワイヤロープの状態を判断する点検制御部を有するクレーン。
【請求項8】
本体フレームと、前記本体フレームに備えられたハンガーと、前記本体フレームに設けたドラムと、前記ハンガーに取り付けられたエコライザシーブを備えており、前記ドラムから巻き出されたワイヤロープが荷物を吊下げるロードブロックと前記エコライザシーブとを経由して取付けられている巻上機であって、
前記エコライザシーブには、前記ワイヤロープが最も屈曲する位置に切欠きが設けられており、
前記本体フレームの側面には、前記ワイヤロープを点検するための点検窓が前記切欠き部位と重なる位置に設けられている巻上機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンおよび巻上機に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンは、ワイヤロープを巻上巻下げすることによりワイヤロープ下端部のロードブロックに吊下げられた重量物(荷物)を垂直方向に運搬する巻上機と、その巻上機に吊下げられた荷物を水平方向に搬送させる水平方向移動装置とを有する。ロードブロックは、荷物を吊下げるためのフックとワイヤロープが巻かれるシーブとで構成される。例えば、クレーンの一種である天井クレーンは、レールに沿って走行するガーダーに沿って水平方向に横行可能に設置された本体フレーム内に巻上機を備えている。本体フレームは、この巻上機を備えたまま、走行モータにより駆動され、水平方向の移動(搬送)を行う。巻上機は巻上モータの駆動によりドラムを回転させ、ドラムに巻かれたワイヤロープを巻上巻下げし、吊下げられた荷物(吊荷)を上下方向(垂直方向)に運搬する。
【0003】
また、重量が大きい荷物を吊下げるには、ワイヤロープに加わる張力を分散するために巻上機のフレームにエコライザシーブが取付けられ、巻上機のドラムから巻き出されたワイヤロープはロードブロックのシーブと、エコライザシーブとを経由して巻上機のフレームに固定される。このようなクレーンは、例えば特開昭63-262395号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クレーンあるいは巻上機において、荷物の運搬に使用されるワイヤロープは、定期的な点検や、交換等の保守作業が必要である。特に、エコライザシーブに掛けられたワイヤロープは、その屈曲部に大きなダメージが加わるので劣化が顕著に現れる。そのため、エコライザシーブ部におけるワイヤロープの点検は特に重要である。
しかし、エコライザシーブ設置部のワイヤロープは巻上機の本体フレーム及びエコライザシーブを固定するハンガーに覆われているため、そのままでは点検ができず、ワイヤロープの点検は大きな負担となっていた。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ワイヤロープの点検を容易に行うことができるクレーンおよび巻上機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一例を挙げると、本体フレームと、前記本体フレームに備えられたハンガーと、前記本体フレームに設けたドラムと、前記ハンガーに取り付けられたエコライザシーブとを備えており、前記ドラムから巻き出されたワイヤロープが荷物を吊下げるロードブロックと前記エコライザシーブとを経由して取付けられている巻上機を有するクレーンであって、
前記エコライザシーブには、前記ワイヤロープが最も屈曲する位置に切欠きが設けられており、
前記本体フレームの側面には、前記ワイヤロープを点検するための点検窓が前記切欠き部位と重なる位置に設けられているクレーンである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エコライザシーブ部のワイヤロープの点検作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、天井クレーンの概略を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1にかかるクレーンを回転軸方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。以下に説明する実施例は、あくまでも一実施例を示すものであり、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。なお、各図面において、共通する各装置、機器には、同一の符号(番号)を用いて、すでに説明した各装置、機器の説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0010】
次に、本発明の実施例1を
図1~
図5を用いて説明する。
【0011】
まず、
図1に沿ってクレーンの概要を述べる。
図1は、本発明の実施例1に係るクレーンの全体斜視図である。なお、ここではクレーンとして天井クレーンの例で説明するが、本発明は天井クレーンに限らず、巻上機を有するクレーンであればどのようなクレーンにも適用することができる。
【0012】
図1において、クレーンのガーダー10は、平行に置かれる走行レール11に載置される。ガーダー10の両端に備わる走行部12が走行レール11に載置支持され、走行部12に設けた車輪13の回転でガーダー10は運ばれ、走行レール11の上を行き来する。車輪13は走行電動機14で駆動される。
【0013】
ガーダー10は横方向に移動する本体フレーム15を載置支持している。この本体フレーム15内に電動式の巻上機16が備えられる。本体フレーム15に設けた車輪(駆動輪17,従動輪18)の回転で本体フレーム15はガーダー10の上を左右水平方向に移動(横行)する。これにより、ワイヤロープ25およびロードブロック24に吊下げられた荷物は水平方向に搬送される。駆動輪17は横行電動機19で駆動される。本実施例では、本体フレーム15内に巻上機16と本体フレーム15が一つにまとまったユニットをクレーンと称している。
【0014】
次に、
図2~
図5を用いて、本発明の実施例1にかかるクレーンの構成を詳細に説明する。
図2は本発明の実施例1に係るクレーンを回転軸方向に切断した断面図、
図3は
図2における右側側面図、
図4は
図2におけるA―A断面の右側側面図、
図5は
図4の正面図である。
【0015】
まず、
図2及び
図3において、巻上機16は、荷物35を吊るためのワイヤロープ25を巻きつけるためのドラム21と、ワイヤロープ25の巻上げ及び巻下げ行うためにドラム21に回転駆動力を供給するための巻上電動機20と、巻上電動機20の回転を減速するための巻上減速部22と、巻上電動機20を制動する巻上ブレーキ装置23を備えている。
【0016】
巻上機16において、巻上電動機20の回転駆動力は巻上減速部22を介してドラム21に伝達され、ドラム21が回転する。これにより、ドラム21に巻きつけられたワイヤロープ25が巻上げ巻戻しされ、吊荷を上下方向に搬送することができる。ドラム21に巻かれるワイヤロープには、エコライザシーブ26を介して、荷物35を吊るロードブロック24が取付けられている。ロードブロック24は、フックと、フックと一体化されたシーブとで構成されており、ワイヤロープはこのシーブに掛けられる。この実施例では、ワイヤロープの両端はドラム21の両端側にそれぞれ取付けられ、片側のロードブロックシーブ27aを通りエコライザシーブ26、他方のロードブロックシーブ27bを通ることにより、1本のワイヤロープ25でロードブロック24を4本で吊上げることが可能となっている。巻上機16は荷物35を水平に移動(搬送)させる為に本体フレーム15内に取付けられている。
【0017】
図4,5に示すように、エコライザシーブ26はシーブピン28によりハンガー29に固定され、ハンガー29はハンガーピン33により回転自由にハンガーフレーム32に取付けられている。エコライザシーブ26は、ワイヤロープ25が最も屈曲する位置のシーブピン28軸方向にワイヤロープ25のひとより間隔よりも大きい間隔の切欠き30を備えている。また、
図5に示すように、本体フレーム15はエコライザシーブ26の切欠き30と重なる位置に点検窓31を備えている。
【0018】
この点検窓31により、本体フレームのフレームハンガーを取り外すことなく、本体フレームの外部から、内部のエコライザシーブ部の点検、特に、エコライザシーブ26の正面の屈曲部にあるワイヤロープの点検を容易に行うことができる。また、エコライザシーブ26にワイヤロープ25のひとより間隔よりも大きな切欠き30とハンガー29に切欠き30と重なるハンガー部の点検窓31を備えているので、ひとより間隔の素線切れの確認もハンガー29の取り外しやワイヤロープ25をずらすことなく可能である。
【0019】
また、この実施例1では、
図4に示すように、ハンガーフレーム32のハンガーピン33軸方向面にはワイヤロープ25を側面から目視することのできる点検窓34を備えている。エコライザシーブ26はハンガー29と共にロードブロック24の位置に対応してハンガーピン33の円周方向に回転することが可能であり、点検窓34はロードブロック24の上限と下限位置でのエコライザシーブ26の可動範囲よりも大きい範囲となっている。
【0020】
点検窓34を設置することにより、エコライザシーブ部のより確実な点検を行うことができる。すなわち、点検窓34により、エコライザシーブ26の正面から見たワイヤロープの屈曲部のワイヤロープの点検(点検窓31による点検)に加え、エコライザシーブ26の側面から見たワイヤロープの点検も行うことができる。
【0021】
ここで、点検窓は、基本的には、フレームを貫通する点検用の穴を形成することで実現できる。しかし、穴の場合は、エコライザシーブ26に掛けられたワイヤロープ25に塗布されている油などが飛散し周辺を汚すことなどの課題がある。そのため、例えば、この穴の部分をカバーで覆うことにより、汚れを防ぐことができる。そして、このカバーにガラスやアクリル等の透明の部材を用いれば、外部からの目視による点検が可能である。あるいは、このフレームに形成された穴と、この穴を覆うような開閉可能な扉とを設け、点検時にその扉を開くことで、目視による点検が実施可能となる。この場合の扉は、ヒンジ等によって手前側に開閉する形式のものや、上下方向や左右方向に開くもの、蓋のようなものなど任意の形式のもので良い。
【0022】
以上説明したように本実施例によれば、エコライザシーブ26やハンガー29を取り外すことなく、外部から容易にワイヤロープ25の点検をすることができ、点検作業の作業性が向上する。また、点検窓を設けたことにより、ワイヤロープの点検だけでなく、エコライザシーブの摩耗や故障などの状態や、油切れなどの点検も行うことができる。
【0023】
なお、この実施例では、2つの点検窓を有する場合について説明したが、点検内容の必要性に応じて、いずれか一つの点検窓を設けることでも良い。
【実施例2】
【0024】
次に、本発明の実施例2を、
図6を用いて説明する。
図6は、本発明の実施例2にかかるクレーンを示す図である。上記
図2~
図5に示すクレーンと、この
図6に示すクレーンとの大きな違いは、
図6に示す実施例2の場合はクレーン設置場所以外の場所(例えば、事務所内、あるいは遠隔場所)において点検作業を行うことができるようにしている点である。その他の構成(クレーン本体の構成)は、
図2~
図5に示す実施例と同様であり、共通する部分に関する説明は省略する。
【0025】
図6において、カメラ41と42は、本体フレーム15の外部に取付けられ、それぞれ点検窓31と点検窓34の内部の画像を撮影するものである。点検制御部50は、カメラ41,42により得られた画像を画像処理して画像の特徴パターンを求め、予め記憶していた正常時の特徴パターンとの差が一定以上である場合に、ワイヤロープが異常状態であることを判断する機能と、その判断結果を表示装置60に表示する機能とを有する。この点検制御部50は、コンピュータで実現することができる。すなわち、点検制御部50は、演算処理部51と、メモリ52と、画像処理部53と、入力部54と、出力部55と、内部の情報通信を行うバス56とで構成される。
【0026】
カメラ41,42で撮影された画像は、通信ケーブルあるいは無線通信により、クレーンが設置された場所と離れた場所(例えば、事務所内)に設けた点検制御部50に伝送される。点検制御部50は、入力部54、出力部55を経由してカメラ41,42が撮影した画像を表示装置60に表示する。また、この表示装置60に表示された画像を目視することにより、作業者はクレーンの設置場所に出向かなくても点検が可能となる。また、この実施例では、点検制御部50が点検作業を自動的に実施することが可能である。すなわち、メモリ52に、点検の判断を行うプログラムと、正常時のワイヤロープの特徴パターンとを記憶しておく。点検制御部50は、このプログラムにより、カメラ41,42が撮影した画像は入力部54を介して画像処理部53に取込まれる。画像処理部53はこの画像の特徴パターンを抽出する。演算処理部51は、画像処理部53が演算処理した結果(特徴パターン)とメモリに記憶した正常時の特徴パターンとを比較する。そして、その差分が一定値を超えているか否かを判断し、差分が一定値を超えている場合に異常であると判断する。この判断結果は、出力部55を介して表示装置60に表示する。
【0027】
この
図6に示す実施例2によれば、実施例1と同様の効果を有するとともに、高所に設置されているクレーンの巻上機に近づかなくても、点検作業を実施することが可能となる。そのため、点検作業はより一層容易となる。また、点検作業の安全性も高い。また、カメラにより撮影した画像を点検制御部50が画像処理を行うことより、点検作業の自動化が実現できる。さらに、点検制御部が行った点検結果の妥当性を、表示装置に表示したカメラで撮像した生画像により確認することもできる。
【0028】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内で様々な変形が可能である。例えば、上述した実施例では、点検窓を2か所に設けたが、少なくても一つの点検窓を設けた場合でも良く、また、上述した2か所の点検窓以外に更に点検窓を設けた場合でも本発明を実施することができる。更に、点検窓の形状は上述した矩形状のものに限らず、他の形状(円形、楕円形状、等)であっても良い。更に、本発明は、クレーンに限らず、巻上機単体や、巻上機を有する他の機械装置(例えば、エレベータ)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10…ガーダー、11…走行レール、12…走行部、13…車輪、14…走行電動機、15…本体フレーム、16…巻上機、17…駆動輪、18…従動輪、19…横行電動機、20…巻上電動機、21…ドラム、22…巻上減速部、23…巻上ブレーキ装置、24…ロードブロック、25…ワイヤロープ、26…エコライザシーブ、27…、28…シーブピン、29…ハンガー、30…切欠き、31…点検窓、32…ハンガーフレーム、33…ハンガーピン、34…点検窓、35…荷物、41…カメラ、42…カメラ、50…点検制御部、51…演算処理部、52…メモリ、53…画像処理部、54…入力部、55…出力部、56…バス、60…表示装置