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特許7152526調理器具及びその保温制御方法、決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】調理器具及びその保温制御方法、決定方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
A47J27/00 109K
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020570413
(86)(22)【出願日】2018-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 CN2018122915
(87)【国際公開番号】W WO2020062650
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】201811160653.0
(32)【優先日】2018-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516256766
【氏名又は名称】珠海格力電器股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Gree Electric Appliances, Inc. of Zhuhai
【住所又は居所原語表記】West Jinji Road, Qianshan, Zhuhai, Guangdong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張力文
(72)【発明者】
【氏名】孔進喜
(72)【発明者】
【氏名】王江南
(72)【発明者】
【氏名】陳海鵬
(72)【発明者】
【氏名】張伶俐
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-051069(JP,A)
【文献】特開2003-204874(JP,A)
【文献】特開2001-061651(JP,A)
【文献】特開平09-122014(JP,A)
【文献】特開2002-355173(JP,A)
【文献】特開2000-041835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/13;
27/20-29/06;
33/00-36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具の保温制御方法における第1の所定の温度T1を決定する決定方法であって、
前記第1の所定の温度T1の範囲は[T4,T5](T4は第4の所定の温度で、T5は第5の所定の温度である)であり、
少なくとも自然冷却状態における内部温度Tの温度変化状況と、前記調理器具の器具蓋上の凝縮水付着箇所の温度変化状況とに基づいて、前記第4の所定の温度T4を決定すること、及び/又は、
少なくとも自然冷却状態における前記内部温度Tの温度変化状況と、コントローラの温度変化状況とに基づいて、前記第5の所定の温度T5を決定することを含み、
前記調理器具は、コントローラ及び上部加熱装置を含み、
前記保温制御方法は、
前記調理器具が保温モードに入る場合、前記コントローラが、前記調理器具の内部温度Tを取得し、前記内部温度Tが第1の所定の温度T1以下であるか否かを判断し、そうであれば、前記調理器具が加熱段階に入るように制御し、そうでなければ、前記内部温度Tが第1の所定の温度T1以下になるまで、前記上部加熱装置がオフ状態にあるように制御し、前記調理器具が前記加熱段階に入るように制御することを含み、
前記加熱段階において、前記コントローラは、前記上部加熱装置が所定の方式で加熱するように制御することを特徴とする、決定方法。
【請求項2】
85℃≦T1≦110℃であることを特徴とする、請求項1に記載の決定方法。
【請求項3】
前記所定の方式は、
前記コントローラが、前記上部加熱装置が断続的に加熱するように制御することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の決定方法。
【請求項4】
前記上部加熱装置が断続的に加熱するように制御することは、
前記内部温度Tが第3の所定の温度T3よりも大きい場合、前記上部加熱装置がオフ状態にあるように制御して、前記内部温度Tが第3の所定の温度T3よりも小さい第2の所定の温度T2以下になると、前記上部加熱装置をオンにするように制御することを含むことを特徴とする、請求項3に記載の決定方法。
【請求項5】
80℃≦T2≦110℃であり、及び/又は、
80℃≦T3≦110℃であることを特徴とする、請求項4に記載の決定方法。
【請求項6】
前記加熱段階において、前記調理器具の電源電圧又は前記調理器具の電気部品の実際の電圧を検出し、前記実際の電圧に基づいて前記上部加熱装置の加熱電力を調整することを特徴とする、請求項1~請求項5のうちのいずれか1項に記載の決定方法。
【請求項7】
少なくとも自然冷却状態における前記内部温度Tの温度変化状況と、前記調理器具の器具蓋上の凝縮水付着箇所の温度変化状況とに基づいて、前記第4の所定の温度T4を決定することは、
自然冷却状態における前記内部温度Tの第1の温度変化曲線を取得することと、
自然冷却状態における前記調理器具の器具蓋上の凝縮水付着箇所の第2の温度変化曲線を取得することと、
前記第2の温度変化曲線の温度下降区間において、温度が所定の凝縮温度よりも低い最初の点を凝集特徴点として取得して、該凝集特徴点に対応する時点t1の、前記第1の温度変化曲線における対応する温度値T4’を取得することと、
温度値T4’を前記第4の所定の温度T4とするか、又は第4の所定の温度T4=T4’+ΔT1(ΔT1は第1の温度補正係数である)とすることとを含むことを特徴とする、請求項1に記載の決定方法。
【請求項8】
前記第1の温度補正係数ΔT1の決定方法は、
第1の時間補正係数Δt1を決定することと、
第1の温度変化曲線において、時点t1-Δt1から時点t1までの温度変化量を取得して、該温度変化量を前記第1の温度補正係数ΔT1とすることとを含むことを特徴とする、請求項7に記載の決定方法。
【請求項9】
第1の時間補正係数Δt1を決定することは、
調理器具が保温モードに入った後、上部加熱装置が加熱を開始する時点と、前記上部加熱装置が加熱を開始した後に凝縮水付着箇所の温度が下降から上昇に変化する時点との差を、前記第1の時間補正係数Δt1とすることを含むことを特徴とする、請求項8に記載の決定方法。
【請求項10】
少なくとも自然冷却状態における前記内部温度Tの温度変化状況と、前記コントローラの温度変化状況とに基づいて、前記第5の所定の温度T5を決定することは、
自然冷却状態における前記内部温度Tの第1の温度変化曲線を取得することと、
自然冷却状態における前記コントローラの第4の温度変化曲線を取得することと、
第4の温度変化曲線における各点の傾きをk2と定義し、前記第4の温度変化曲線の温度下降区間において、|k2|≧第1の所定の傾きk2’の最初の点を温度下降特徴点として取得し、該温度下降特徴点に対応する時点t2の、前記第1の温度変化曲線における対応する温度値T5’を取得することと、
温度値T5’を前記第5の所定の温度T5とするか、又は第5の所定の温度T5=T5’+ΔT2(ΔT2は第2の温度補正係数である)とすることとを含むことを特徴とする、請求項1に記載の決定方法。
【請求項11】
前記上部加熱装置が断続的に加熱するように制御することは、
前記内部温度Tが第3の所定の温度T3よりも大きい場合、前記上部加熱装置がオフ状態にあるように制御して、前記内部温度Tが第3の所定の温度T3よりも小さい第2の所定の温度T2以下になると、前記上部加熱装置をオンにするように制御することを含み、
前記第2の温度補正係数ΔT2の決定方法は、
第2の時間補正係数Δt2を決定することと、
第1の温度変化曲線において、時点t2-Δt2から時点t2までの温度変化量を取得して、該温度変化量を前記第2の温度補正係数ΔT2とすることとを含むことを特徴とする、請求項10に記載の決定方法。
【請求項12】
第2の時間補正係数Δt2を決定することは、
調理器具が保温モードに入った後、上部加熱装置が加熱を開始する時点と、前記上部加熱装置が加熱を開始した後にコントローラの温度が下降から上昇に変化する時点との差を、前記第2の時間補正係数Δt2とすることを含むことを特徴とする、請求項11に記載の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年9月30日に提出された、出願番号が201811160653.0で、発明の名称が「調理器具及びその保温制御方法、決定方法」の中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、台所の電気器具の技術分野に関し、特に調理器具及びその保温制御方法、決定方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ユーザが炊飯器を使用するとき、長時間保温する必要がある場合があり、その1つは、ユーザが炊飯器でご飯やお粥を炊いた後にそのまま保温し、もう1つは、非熱鍋状態で保温するものである。長時間の保温過程において、炊飯器の蓋に大量の凝縮水が形成されることが多く、凝縮水がご飯上に滴下して「水っぽくなる」(箇所的に柔らかすぎる)状況が生じ、一方、凝縮水が蓋を開く時に集まって支持リングへ流れ込み、ユーザ体験を低減する。
【0004】
そのため、市販されている炊飯器では、一般的に上部電熱線を用いて加熱して蓋板上の凝縮水を乾燥させる。しかしながら、この過程では矛盾が生じ、凝縮水の乾燥効果が高いほど、コントローラの温度が高くなり、耐用年数が短くなる。また、従来の炊飯器は、保温段階でも同様の制御を行い、異なる場合の保温に対して適応調整をしない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、本発明の1つの目的は、長時間の保温過程において異なる場合の保温に対して適応調整をしないという問題を解決するために、調理器具及びその保温制御方法、決定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、一態様では、本発明は、以下の技術手段を採用する。
【0007】
コントローラ及び上部加熱装置を含む調理器具の保温制御方法は、
前記調理器具が保温モードに入る場合、前記コントローラが、前記調理器具の内部温度Tを取得し、かつ前記内部温度Tが第1の所定の温度T1以下であるか否かを判断し、そうであれば、前記調理器具が加熱段階に入るように制御し、そうでなければ、前記内部温度Tが第1の所定の温度T1以下になるまで、前記上部加熱装置がオフ状態にあるように制御し、前記調理器具が前記加熱段階に入るように制御することを含み、
前記加熱段階において、前記コントローラは、前記上部加熱装置が所定の方式で加熱するように制御する。
【0008】
好ましくは、85℃≦T1≦110℃である。
【0009】
好ましくは、前記所定の方式は、
前記コントローラが、前記上部加熱装置が断続的に加熱するように制御することを含む。
【0010】
好ましくは、前記上部加熱装置が断続的に加熱するように制御することは、
前記内部温度Tが第3の所定の温度T3よりも大きい場合、前記内部温度Tが第2の所定の温度T2以下になるまで、前記上部加熱装置がオフ状態にあるように制御してから、前記上部加熱装置をオンにするように制御することを含む。
【0011】
好ましくは、80℃≦T2≦110℃であり、及び/又は、
80℃≦T3≦110℃である。
【0012】
好ましくは、前記加熱段階において、前記調理器具の電源電圧又は前記調理器具の電気部品の実際の電圧を検出し、前記実際の電圧に基づいて前記上部加熱装置の加熱電力を調整する。
【0013】
別の態様では、本発明は、以下の技術手段を採用する。
【0014】
上記保温制御方法における第1の所定の温度T1を決定する決定方法は、前記第1の所定の温度T1の範囲は[T4,T5](T4は第4の所定の温度であり、T5は第5の所定の温度である)であり、
少なくとも自然冷却状態における前記内部温度Tの温度変化状況と、前記調理器具の器具蓋上の凝縮水付着箇所の温度変化状況とに基づいて、前記第4の所定の温度T4を決定すること、及び/又は、
少なくとも自然冷却状態における前記内部温度Tの温度変化状況と、前記コントローラの温度変化状況とに基づいて、前記第5の所定の温度T5を決定することを含む。
【0015】
好ましくは、少なくとも自然冷却状態における前記内部温度Tの温度変化状況と、前記調理器具の器具蓋上の凝縮水付着箇所の温度変化状況とに基づいて、前記第4の所定の温度T4を決定する方法は、
自然冷却状態における前記内部温度Tの第1の温度変化曲線を取得することと、
自然冷却状態における前記調理器具の器具蓋上の凝縮水付着箇所の第2の温度変化曲線を取得することと、
前記第2の温度変化曲線の温度下降区間において、温度が所定の凝縮温度よりも低い最初の点を凝集特徴点として取得して、該凝集特徴点に対応する時点t1の、前記第1の温度変化曲線における対応する温度値T4’を取得することと、
温度値T4’を前記第4の所定の温度T4とするか、又は第4の所定の温度T4=T4’+ΔT1(ΔT1は第1の温度補正係数である)とすることとを含む。
【0016】
好ましくは、前記保温制御方法は、請求項4に記載の保温制御方法であり、前記第1の温度補正係数ΔT1の決定方法は、
第1の時間補正係数Δt1を決定することと、
第1の温度変化曲線において、時点t1-Δt1から時点t1までの温度変化量を取得して、該温度変化量を前記第1の温度補正係数ΔT1とすることとを含む。
【0017】
好ましくは、第1の時間補正係数Δt1を決定する方法は、
調理器具が保温モードに入った後、上部加熱装置が加熱を開始する時点と、前記加熱装置が加熱を開始した後に凝縮水付着箇所の温度が下降から上昇に変化する時点との差を、前記第1の時間補正係数Δt1とすることを含む。
【0018】
好ましくは、少なくとも自然冷却状態における前記内部温度Tの温度変化状況と、前記コントローラの温度変化状況とに基づいて、前記第5の所定の温度T5を決定する方法は、
自然冷却状態における前記内部温度Tの第1の温度変化曲線を取得することと、
自然冷却状態における前記コントローラの第4の温度変化曲線を取得することと、
第4の温度変化曲線における各点の傾きをk2と定義し、前記第4の温度変化曲線の温度下降区間において、|k2|≧第1の所定の傾きk2’の最初の点を温度下降特徴点として取得し、該温度下降特徴点に対応する時点t2の、前記第1の温度変化曲線における対応する温度値T5’を取得することと、
温度値T5’を前記第5の所定の温度T5とするか、又は第5の所定の温度T5=T5’+ΔT2(ΔT2は第2の温度補正係数である)とすることとを含む。
【0019】
好ましくは、前記保温制御方法は、請求項4に記載の保温制御方法であり、前記第2の温度補正係数ΔT2の決定方法は、
第2の時間補正係数Δt2を決定することと、
第1の温度変化曲線において、時点t2-Δt2から時点t2までの温度変化量を取得して、該温度変化量を前記第2の温度補正係数ΔT2とすることとを含む。
【0020】
好ましくは、第2の時間補正係数Δt2を決定する方法は、
調理器具が保温モードに入った後、上部加熱装置が加熱を開始する時点と、前記加熱装置が加熱を開始した後にコントローラの温度が下降から上昇に変化する時点との差を、前記第2の時間補正係数Δt2とすることを含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、以下の技術手段を採用する。
【0022】
調理器具は、上記制御方法を用いて制御する。
【0023】
好ましくは、前記調理器具は、炊飯器又は電気圧力鍋を含む。
【発明の効果】
【0024】
本願に係る調理器具及びその保温制御方法、決定方法は、上部加熱装置の加熱方式を制御することにより、保温過程において凝縮水が明らかに凝集し、集まって流れ落ちる状況が発生することを回避し、また従来方式に比べて、コントローラの最高温度と平衡温度を著しく低下させ、最高温度を11.3℃低下させ、平衡温度を12.7℃低下させ、ご飯の表面形態を改善し、表面に「水っぽくなり」、乾燥して硬い状況が発生することを回避するとともに、異なる場合での保温に対して、異なる制御方法を用いて、調理効果がより良好になり、ユーザの異なる使用ニーズを満たし、ユーザ体験を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下の図面を参照しながら本発明の実施例を説明することにより、本発明の上記及びその他の目的、特徴及び利点はより明らかになり、図面において、
図1】本発明に係る保温制御方法の動作態様を示す概略図である。
図2】本発明に係る第4の所定の温度T4の決定方法を示す概略図である。
図3】本発明に係る第5の所定の温度T5の決定方法を示す概略図である。
図4】本発明に係る第1の時間補正係数Δt1と第2の時間補正係数Δt2を決定する方法を示す概略図である。
図5】本発明に係る第1の温度補正係数ΔT1を決定する方法を示す概略図である。
図6】本発明に係る第2の温度補正係数ΔT2を決定する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。本発明の本質を混乱させないように、公知の方法、プロセス、流れ及び構成部品については、詳しい説明を省略する。
【0027】
さらに、当業者であれば、本明細書で提供される図面が例示を目的とするものとして、図面が必ずしも一定の縮尺で描かれているものではないことを理解できる。
【0028】
文脈で別途の明確な説明がない限り、本明細書及び特許請求の範囲における「含有」、「含む」などの用語は、排他的又は網羅的な意味よりもむしろ包括的な意味として解釈されるべきであり、すなわち、「含むがそれらに限定されない」という意味である。
【0029】
なお、本発明の説明では、「第1」、「第2」などの用語は、説明するためのものにすぎず、相対的な重要性を示すしたり示唆するものとして理解してはならない。
【0030】
炊飯器や電気圧力鍋などの従来の調理器具は、長時間の保温過程において、器具蓋に大量の凝縮水が形成されることが多く、凝縮水が食物に滴下して「水っぽくなる」(箇所的に柔らかすぎる)状況が生じる一方、凝縮水が蓋を開く時に集まって支持リングへ流れ込み、ユーザ体験を低減してしまう。この問題を解決するために、本願は、コントローラ及び上部加熱装置を含む調理器具の保温制御方法を提供し、ここでの上部加熱装置は、調理器具本体の側部に設けられた側部加熱装置及び/又は調理器具本体の頂部に位置する(例えば、本体の器具蓋に設けられた)頂部加熱装置を含み、好ましくは、上部加熱装置は、主に、本体の頂部に位置する頂部加熱装置を意味する。上記保温制御方法は、上記調理器具が保温モードに入る場合、上記コントローラが、上記調理器具の内部温度Tを取得し、上記内部温度Tが第1の所定の温度T1以下であるか否かを判断し、そうであれば、上記調理器具が加熱段階に入るように制御し、そうでなければ、上記上部加熱装置がオフ状態にあるように制御し、かつ上記内部温度Tが第1の所定の温度T1以下になると、上記調理器具が上記加熱段階に入るように制御することを含み、好ましくは、85℃≦T1≦110℃である。
【0031】
ここで、調理器具の内部温度Tは、上記調理器具に設けられた温度検出素子により検出される。
【0032】
具体的には、図1を参照すると、上記調理器具が保温モードに入る場合、調理器具の内部温度Tを取得し、このとき、T>第1の所定の温度T1であれば、調理器具の現在の状態が熱鍋状態であることを示し、しばらく加熱せず、内部温度Tが高くかつ米及び水の量が大きいほど、加熱段階を停止する時間が長くなり、一定時間の後、温度が徐々に低下して、T≦第1の所定の温度T1になると、上記調理器具が加熱段階に入るように制御する。調理器具が保温モードに入った後、T≦第1の所定の温度T1であれば、調理器具の現在の状態が冷鍋状態であることを示し、上記調理器具がそのまま加熱段階に入るように制御する。
【0033】
さらに、上記加熱段階において、上記コントローラは、上記上部加熱装置が所定の方式で加熱するように制御する。上記所定の方式は、上記コントローラが、上記上部加熱装置が断続的に加熱するように制御し、例えば、上部加熱装置が所定のデューティ比で加熱するように制御することにより、上記内部温度Tを一定の温度範囲内に制御することを含む。具体的には、図1に示すように、上記内部温度Tが第3の所定の温度T3よりも大きい場合、上記内部温度Tが第2の所定の温度T2以下になるまで、上記上部加熱装置がオフ状態にあるように制御してから、上記上部加熱装置をオンにするように制御する。ここで、80℃≦T2≦110℃で、80℃≦T3≦110℃である。なお、上記上部加熱装置は、加熱を開始するか又は加熱を停止するとき、内部温度Tに対する影響に遅延があるため、T≦T2となり、上部加熱装置が加熱を開始した後にも、内部温度Tが小さく低下し、T≧T3となり、上部加熱装置が加熱を停止した後にも、内部温度Tが小さく上昇する。
【0034】
上部加熱装置を設けることにより、上部加熱装置を動作させるとき、器具蓋上の凝縮水を乾燥及び蒸発させることができ、凝縮水が集まって食物上に滴下して、「水っぽくなる」(箇所的に柔らかすぎる)現象が現われることを回避し、かつ上部加熱装置は、断続的に加熱する方式を用いて、内部温度を一定の温度範囲内に維持し、食物が乾燥して硬くなることを回避するとともに、コントローラの最高温度及び平衡温度を著しく低下させる。
【0035】
さらに、上記加熱段階において、上記調理器具の電源電圧又は調理器具の電気部品の実際の電圧を検出し(電源電圧は電気機器の実際の電圧と線形関係があるため)、電気部品は、例えば、上部加熱装置であってもよく、上記電源電圧又は実際の電圧に応じて上記上部加熱装置の加熱電力を調整する。例えば、実際の電圧に応じて上部加熱装置の加熱デューティ比を調整して加熱電力を調整することにより、設計された電力に近い効果を達成し、加熱デューティ比は、1つの加熱サイクルのうち、上部加熱装置の加熱の継続時間と加熱停止の継続時間との比であり、実際の電圧が大きいほど、加熱デューティ比の比値が小さくなる。1つの具体的な実施例では、電源電圧が第1の所定の電圧値以下である場合、上部加熱装置が第1の所定の加熱デューティで加熱するように制御し、電源電圧が第1の所定の電圧値よりも大きく第2の所定の電圧値以下である場合、上部加熱装置が第2の所定の加熱デューティで加熱するように制御し、電源電圧が第2の所定の電圧値よりも大きい場合、上部加熱装置が第3の所定の加熱デューティで加熱するように制御し、第1の所定の電圧値は、第2の所定の電圧値よりも小さく、第1の所定の加熱デューティ比の比値>第2の所定の加熱デューティ比の比値>第3の所定の加熱デューティ比の比値である。第1の所定の電圧値は、好ましくは200~220Vであり、さらに好ましくは209Vであり、第2の所定の電圧値は、好ましくは220~240Vであり、さらに好ましくは231Vであり、第1の所定の加熱デューティ比は、好ましくは(8~10s):(22~24s)であり、さらに好ましくは9s:23sであり、第2の所定の加熱デューティ比は、好ましくは(6~8s):(24~26s)であり、さらに好ましくは7s:25sであり、第3の所定の加熱デューティ比は、好ましくは(4~6s):(26~28s)であり、さらに好ましくは5s:27sである。
【0036】
上記第1の所定の温度T1は、経験値に基づいて設定することができ、好ましくは、正確な制御を実現するために、本願は、上記保温制御方法における第1の所定の温度T1を決定する決定方法をさらに提供し、上記第1の所定の温度T1の範囲は[T4,T5]である。ここで、T5は、第5の所定の温度であり、第1の所定の温度T1の選択可能範囲の上限として、主に炊飯/お粥調理段階における上部加熱装置の予熱の影響を受けるものであり、T4は、第4の所定の温度であり、第1の所定の温度T1の選択可能範囲の下限として、主に自然冷却時の凝縮水の凝集度の影響を受けるものである。これに基づいて、上記決定方法は、少なくとも自然冷却状態における上記内部温度Tの温度変化状況と、上記調理器具の器具蓋上の凝縮水付着箇所の温度変化状況とに基づいて、上記第4の所定の温度T4を決定することと、少なくとも自然冷却状態における上記内部温度Tの温度変化状況と、上記コントローラの温度変化状況とに基づいて、上記第5の所定の温度T5を決定することとを含む。
【0037】
具体的には、図2を参照すると、上記第4の所定の温度T4を決定する方法は、
自然冷却状態(すなわち、上部加熱装置をオンにせず、調理器具の内部を自然に冷却させる)における上記内部温度Tの第1の温度変化曲線を取得する(内部温度Tは低下し続ける)ステップと、
自然冷却状態における上記調理器具の器具蓋上の凝縮水付着箇所の第2の温度変化曲線を取得する(上部加熱装置が加熱を停止した後にも余熱があるため、凝縮水は、自然冷却状態においても温度がさらに小さく上昇してから、下降し始める)ステップと、
上記第2の温度変化曲線の温度下降区間において、温度が所定の凝縮温度よりも低い最初の点を凝集特徴点として取得し、該凝集特徴点において、凝縮水が明らかに凝集し、蓋を開く時に集まって流れ落ちることができ、該凝集特徴点に対応する時点t1の、上記第1の温度変化曲線における対応する温度値T4’を取得し、温度値T4’を上記第4の所定の温度T4とするか、上部加熱装置が動作した後に凝縮水への影響に遅延があるため、好ましくは、第4の所定の温度T4=T4’+ΔT1(ΔT1は第1の温度補正係数である)とするステップとを含む。
【0038】
図5に示すように、上記第1の温度補正係数ΔT1の決定方法は、
第1の時間補正係数Δt1を決定するステップと、
第1の温度変化曲線において、時点t1-Δt1から時点t1までの温度変化量を取得して、該温度変化量を前記第1の温度補正係数ΔT1とするステップとを含む。
【0039】
第1の時間補正係数Δt1は経験値であってもよく、制御正確性を向上させるために、好ましくは、調理器具が保温モードに入った後、上部加熱装置が加熱を開始する時点と、上記加熱装置が加熱を開始した後に凝縮水付着箇所の温度が下降から上昇に変化する時点との差は、上記第1の時間補正係数Δt1であり、具体的には、図4に示すように、調理器具が保温モードに入った後、特定の時点で加熱装置をオンにするように制御し、該過程における、調理器具の器具蓋上の凝縮水付着箇所の第3の温度変化曲線を取得し、
第3の温度変化曲線において、温度が下降から上昇に変化する最初の変化点に対応する時点を第1の時点として取得し、上記上部加熱装置が加熱を開始する時点を第2の時点として取得し、上部加熱装置が加熱を開始した後、凝縮水の温度上昇に遅延があるため、第1の時点と第2の時点とは異なるものになり、上記第1の時点と上記第2の時点との差を上記第1の時間補正係数Δt1とする。
【0040】
一方、図3に示すように、上記第5の所定の温度T5を決定する方法は、以下のステップを含む。
【0041】
自然冷却状態における上記内部温度Tの第1の温度変化曲線を取得する(内部温度Tが低下し続ける)ステップと、
自然冷却状態における上記コントローラの第4の温度変化曲線を取得する(上部加熱装置が加熱を停止した後にも余熱があるため、コントローラは、自然冷却状態においても温度がさらに小さく上昇してから、下降し始める)ステップと、
第4の温度変化曲線における各点の傾きをk2と定義し、上記第4の温度変化曲線の温度下降区間において、|k2|≧第1の所定の傾きk2’の最初の点を温度下降特徴点として取得し、該温度下降特徴点において、コントローラの温度が著しく低下し始め、該温度下降特徴点に対応する時点t2の、上記第1の温度変化曲線における対応する温度値T5’を取得し、温度値T5’を上記第5の所定の温度T5とすることができ、上部加熱装置が動作した後にコントローラへの影響に遅延があるため、好ましくは、第5の所定の温度T5=T5’+ΔT2であり、ΔT2は第2の温度補正係数である。
【0042】
図6に示すように、上記第2の温度補正係数ΔT2の決定方法は、
第2の時間補正係数Δt2を決定するステップと、
第1の温度変化曲線において、時点t2-Δt2から時点t2までの温度変化量を取得して、該温度変化量を上記第2の温度補正係数ΔT2とするステップとを含む。
【0043】
第1の時間補正係数Δt1は経験値であってもよく、制御正確性を向上させるために、好ましくは、調理器具が保温モードに入った後、上部加熱装置が加熱を開始する時点と、上記加熱装置が加熱を開始した後にコントローラの温度が下降から上昇に変化する時点との差は、上記第2の時間補正係数Δt2である。具体的には、図4に示すように、調理器具が保温モードに入った後、特定の時点で加熱装置をオンにするように制御し、該過程における、コントローラの第5の温度変化曲線を取得し、
上記第5の温度変化曲線に基づいて、上記第5の温度変化曲線において、温度が下降から上昇に変化する最初の変化点に対応する時点を第3の時点として取得し、上記上部加熱装置が加熱を開始する時点を第2の時点として取得し、上部加熱装置が加熱を開始した後、コントローラの温度上昇に遅延があるため、第3の時点と第2の時点とは異なるものになり、上記第3の時点と上記第2の時点との差を上記第2の時間補正係数Δt2とする。
【0044】
該決定方法によって第1の所定の温度T1を決定することにより、凝縮水が凝集せず、水っぽくなる現象が現れないことを確保するだけでなく、コントローラの温度が高すぎないことを確保し、耐用年数を延長することができる。
【0045】
本願に係る調理器具は、上記制御方法を用いて制御する。好ましくは、上記調理器具は、炊飯器又は電気圧力鍋を含む。
【0046】
当業者であれば、矛盾しない限り、上記の好ましい各解決手段を自由に組み合わせ、重ね合わせることができることを理解できる。
【0047】
なお、上記実施形態は、例示的なものとして、限定的なものではなく、当業者が本発明の基本原理から逸脱せずに上記詳細に対して行うことができる様々な明らかな又は同等の修正又は置換は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6