(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】細胞外小胞による疾患の診断方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20221004BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20221004BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20221004BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20221004BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALI20221004BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6886 Z
C12N15/09 Z
C12Q1/6883 Z
(21)【出願番号】P 2021066482
(22)【出願日】2021-04-09
(62)【分割の表示】P 2019158951の分割
【原出願日】2019-08-30
【審査請求日】2021-04-09
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519316988
【氏名又は名称】台湾基督長老教会馬偕医療財団法人馬偕紀念医院
【住所又は居所原語表記】No.92, Sec. 2, Zhongshan N Rd., Zhongshan District, Taipei City 104, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】楊崑徳
(72)【発明者】
【氏名】陳治平
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/149206(WO,A1)
【文献】特表2016-535283(JP,A)
【文献】特表2013-521502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543,33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ(a)から(c)を含む被験体の生体サンプルから前記被験体が
パーキンソン病を有するか否かを診断する方法であって、
ステップ(a)において、前記生体サンプルから複数の細胞外小胞(EV)を分離し、
ステップ(b)において、複数の前記EV
の上皮成長因子(EGF)、フラクタルカイン、L1細胞接着分子(L1CAM)、インターフェロン-α(IFN-α)、IFN-γ、成長調節タンパク質(GRO)、インターロイキン(IL)-10、単球走化性タンパク質3(MCP-3)、及びエキソソームDNA(exoDNA)
の発現レベルを決定し、
ステップ(c)において、
ステップ(b)で決定された発現レベルに基づいてパーキンソン病を診断し、EGF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、GRO、IL-10及びMCP-3のそれぞれの発現レベルが健康な被験体から取得された参照サンプル
よりも低く、
L1CAM及びexoDNAのそれぞれの発現レベルが前記参照サンプルよりも高い場合、前記健康な被験体ではない前記被験体が
パーキンソン病を有することを診断する、方法。
【請求項2】
複数の前記EVのそれぞれは、
その内及び/又は上で発現される少なくとも1つのマーカーを有し、前記マーカーは、CD9、CD63、CD81、熱ショックタンパク質60(HSP60)、HSP90及びHSP105からなる群より選択されること、及び
30から450nmの粒子サイズを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体サンプルは、血液、尿、脳脊髄液、胸水、腹水、母乳、羊水
、気管支肺胞洗浄液又は唾液である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体はヒトである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年8月30日に出願された係属中の日本特許出願第2019158951号の分割出願であり、2018年8月30日に提出された米国仮出願第62/724,645号の優先権を主張し、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、疾患の予測及び治療の分野に関する。より具体的には、本開示は、被験体の細胞外小胞(EV)における1つ以上の標的分子の発現レベルを決定することにより、治療を必要とする被験体を特定し、特定された結果に基づいて、疾患を予測し、被験体に適切な治療を施す方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞外小胞(EV)は、細胞由来の膜小胞であり、組織液の様々な由来源(血液、尿、脳脊髄液、胸水、腹水、母乳、羊水、産道、胃腸管、気管支肺胞洗浄液及び唾液を含む)に存在する。EVは、ドナー細胞(例えば、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球、又はがん細胞)又は遠隔組織(例えば、脳、心臓、膵臓、骨髄、肺、腎臓、又は胎盤)から放出され、エンドサイトーシス、膜融合又は特異的なリガンド受容体の内在化を介して受容細胞に取り込まれることによって、EVの内容物(例えば、核酸、リポ多糖、タンパク質及び/又は脂質)をドナー細胞から受容細胞に送達する。EVは、臓器の発達、細胞間コミュニケーション、腫瘍の転移、免疫関連疾患(例えば、自己免疫疾患、変性疾患又は炎症性疾患)の発症と進行など、様々な生理学的及び病理学的反応を媒介することが知られている。
【0004】
EVの内容物は、ドナー細胞の状態に反映しているため、診断、予後、及び疫学の応用において候補分子として使用することができる。しかし、生理学的及び病理学的反応の複雑さと予測不能性に基づいて、疾患(例えば、がん、変性疾患、又は感染症)及び/又は症状(例えば、老化)に関連する特異的EVバイオマーカーを特定する必要性がある。当業者は、これらのEVバイオマーカーを分析することにより、疾患又は症状の発生を正確に予測又は診断し、被験体に適切な治療を迅速に施すことができる。
【発明の概要】
【0005】
以下は、読者に基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を示す。この概要は、本開示の広範な概略ではなく、本発明の肝心/重要な要素を特定したり、本発明の範囲を限定したりするものではない。その唯一の目的は、後で提示するより詳細な説明の前置きとして、本明細書で開示するいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【0006】
本明細書で具体化され、広く説明されるように、本開示の一態様は、被験体の生体サンプルからがん、変性疾患、感染症又は老化を診断又は予後する方法に関する。当該方法は、
生体サンプルから複数の細胞外小胞(EV)を分離するステップ(a)と、
上記複数のEVの標的分子の発現レベルを決定するステップ(b)と、
ステップ(b)で決定された標的分子の発現レベルに基づいて、がん、変性疾患、感染症又は老化を診断又は予後し、上記複数のEVの標的分子の発現レベルが健康な被験者から得られた参照サンプルの発現レベルと異なる場合、上記被験体は、がん、変性疾患若しくは感染症を患っているか、又は発症するリスクがあるか、或いは老化状態にあることを示すステップ(c)と、を含む。
【0007】
本開示において、1つ以上の標的分子の発現パターンは、1つ以上の標的分子に対する結合親和性を示すユニークな抗体及び/又は新規アプタマーを有する二重特異性及び多重特異性モジュールによって真に設計及び検出され、シグナル強度の増幅に使用される。
【0008】
本開示の実施形態によれば、がんの診断又は予後において、EVにおける標的分子は、E-カドヘリン、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、ダームシジン、EFハンドドメイン1を有する細胞成長制御因子(CGREF1)、コクリン、アンフィレグリン(AREG)、ロイシンリッチα2糖タンパク質(LRG)、グアニンデアミナーゼ、S100カルシウム結合タンパク質A8(S100A8)、ムチン5AC(Muc5AC)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、hsa-miR-10a-5p、hsa-miR-182-5p、hsa-miR-10b-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-181a-5p、hsa-miR-21-5p、hsa-miR-143-3p、hsa-miR-127-3p、hsa-miR-221-3p、hsa-miR-222-3p、hsa-let-7i-5p、hsa-miR-27b-3p、hsa-miR-26a-5p、hsa-miR-100-5p、hsa-miR-151a-3p、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-21-3p、hsa-miR-125b-5p、hsa-miR-181b-5p、hsa-miR-31-5p、hsa-miR-30a-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-28-3p、hsa-miR-148a-3p、hsa-miR-409-3p、hsa-miR-16-5p、hsa-miR-99b-5p、hsa-miR-381-3p、hsa-miR-25-3p、hsa-miR-410-3p、hsa-miR-29a-3p、hsa-miR-199b-3p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-186-5p、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0009】
変性疾患の診断又は予後において、EVにおける標的分子は、上皮成長因子(EGF)、フラクタルカイン、α-シヌクレイン、L1細胞接着分子(L1CAM)、インターフェロン-α(IFN-α)、IFN-γ、成長調節タンパク質(GRO)、インターロイキン(IL)-10、単球走化性タンパク質3(MCP-3)、エキソソームDNA(exoDNA)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される
【0010】
感染症の診断又は予後において、EVにおける標的分子は、核酸、リポ多糖、脂質及び/又はタンパク質、例えば、非構造タンパク質1(NS-1)である。
【0011】
老化の診断又は予後において、EVにおける標的分子は、α-シヌクレイン、L1CAM、S100A8、EGF、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、GRO、インターロイキン-1受容体拮抗薬(IL-1RA)、IL-1α、IL-4、IL-6、IL-8、インターフェロンガンマ誘発タンパク質10(IP-10)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、マクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、exoDNA、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0012】
本開示の実施形態によれば、上記複数のEVのそれぞれは、その内及び/又はその上で発現される少なくとも1つのマーカーを有し、上記マーカーがCD9、CD63、CD81、熱ショックタンパク質60(HSP60)、HSP90及びHSP105からなる群より選択されること、及び30から450nmの粒子サイズを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の方法により診断又は予測されるのに適したがんの例は、胃がん、肺がん、膀胱がん、乳がん、膵臓がん、腎がん、大腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、脳腫瘍、前立腺がん、肝細胞がん、黒色腫、食道がん、多発性骨髄腫、及び頭頸部がんを含むが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の方法により診断又は予測されるのに適した変性疾患の非限定的な例は、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、ストローク、慢性腎臓病、慢性肺疾患、良性前立腺肥大及び難聴を含む。
【0015】
本発明の方法により診断又は予測されるのに適した感染症は、細菌、ウイルス又は真菌によって引き起こされ得る。
【0016】
本開示の特定の実施形態によれば、上記生体サンプルは、血液、尿、脳脊髄液、胸水、腹水、母乳、羊水、産道、消化管、気管支肺胞洗浄液又は唾液である。
【0017】
本開示のいくつかの例によれば、がんの診断又は予後を目的とする場合、上記生体サンプルは、被験体から採取した尿サンプルであり、EVにおける標的分子は、E-カドヘリン、S100A8、Muc5AC、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。標的分子の発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、被験体は、がんに罹患しているか、又はがんを発症するリスクがあることを示す。
【0018】
本開示のいくつかの例によれば、EVにおける標的分子は、がんの診断又は予後に使用される。E-カドヘリン、ICOS-L、Muc5AC、ダームシジン、CGREF1、コクリン、AREG、LRG、グアニンデアミナーゼ、S100A8、NGAL、hsa-miR-10a-5p若しくはhsa-miR-182-5pの発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、及び/又はhsa-miR-10b-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-181a-5p、hsa-miR-21-5p、hsa-miR-143-3p、hsa-miR-127-3p、hsa-miR-221-3p、hsa-miR-222-3p、hsa-let-7i-5p、hsa-miR-27b-3p、hsa-miR-26a-5p、hsa-miR-100-5p、hsa-miR-151a-3p、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-21-3p、hsa-miR-125b-5p、hsa-miR-181b-5p、hsa-miR-31-5p、hsa-miR-30a-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-28-3p、hsa-miR-148a-3p、hsa-miR-409-3p、hsa-miR-16-5p、hsa-miR-99b-5p、hsa-miR-381-3p、hsa-miR-25-3p、hsa-miR-410-3p、hsa-miR-29a-3p、hsa-miR-199b-3p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-186-5pの発現レベルが参照サンプルよりも低い場合、被験体は、がんに罹患しているか、又はがんを発症するリスクがあることを示す。
【0019】
本開示の特定の例によれば、変性疾患を診断又は予後するための生体サンプルは、被験体から採取した血液サンプル、唾液サンプル又は尿サンプルであり、EVにおける標的分子は、EGF、フラクタルカイン、L1CAM、α-シヌクレイン、IFN-α、IFN-γ、GRO、IL-10、MCP-3、exoDNA、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。EGF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、GRO、IL-10若しくはMCP-3の発現レベルが参照サンプルよりも低い場合、及び/又はL1CAM、α-シヌクレイン若しくはexoDNAの発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、被験者は、変性疾患に罹患しているか、又は変性疾患を発症するリスクがあることを示す。
【0020】
本開示の特定の例によれば、感染症を診断又は予後するための生体サンプルは、被験者から採取した血液又は尿サンプルである。EVの標的分子は、核酸、リポ多糖又は微生物タンパク質、例えばNS-1である。上記標的分子の発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、被験体は、感染症に罹患しているか、又は感染症を発症するリスクがあることを示す。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態によれば、上記方法は、被験体の老化の診断又は予後(即ち、被験体の老化の状態の診断又は予測)に用いられる。一実施例において、生体サンプルは、試験体から分離した血液サンプルであり、EVにおける標的分子は、L1CAM、S100A8、α-シヌクレイン、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)、CD90、エフリン受容体A2(EphA2)、IL-2、IL-12、脳由来神経栄養因子(BDNF)、b2-ミクログロブリン(B2M)、結合組織成長因子(CTGF)、ニューロフィラメント軽鎖(NFL)、EGF、G-CSF、GM-CSF、GRO、IL-1RA、IL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、MIP-1β、TNF-α及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。EGFの発現レベルが参照サンプルよりも低い場合、及び/又はG-CSF、GM-CSF、GRO、IL-1RA、IL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、MIP-1β、TNF-αの発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、被験体は老化状態にあることを示す。或いは、生体サンプルは、被験体の尿サンプルであってもよく、EVにおける標的分子は、S100A8、DPP4、CD90、EphA2、L1CAM、IL-2、IL-12、BDNF、B2M、CTGF、NFL、EGF、bFGF、G-CSF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、MDC、IL-1RA、IL-1α、IL-4、IL-6、IL-8、GRO、IP-10、MCP-1、L1CAM、α-シヌクレイン、exoDNA、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。EGF、bFGF、G-CSF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、MDC、IL-1RA、IL-1α若しくはIL-4の発現レベルが参照サンプルよりも低い場合、及び/又はS100A8、IL-6、IL-8、GRO、IP-10、MCP-1、L1CAM、α-シヌクレイン若しくはexoDNAの発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、被験体は老化状態にあることを示す。
【0022】
診断又は予後の結果に基づいて、当業者は、がん、変性疾患若しくは感染症に罹患しているか、又はがん、変性疾患若しくは感染症を発症するリスクがある被験体、或いは老化状態にある被験体に、有効量の治療薬、例えば、抗がん剤、抗変性剤、抗感染症剤(例えば、抗菌剤、抗ウイルス剤又は抗真菌剤)又は抗老化剤を投与することにより、疾患/病状の発生及び/又は進行を防止又は阻害することができる。従って、本開示の別の態様によれば、被験体のがん、変性疾患、感染症又は老化を治療する方法が提供される。上記方法は、
試験体から生体サンプルを取得するステップ(a)と、
上記生体サンプルから複数のEVを分離するステップ(b)と、
上記複数のEVの標的分子の発現レベルを決定するステップ(c)と、
ステップ(c)で決定された標的分子の発現レベルに基づいて、がん、変性疾患、感染症又は老化を治療するステップ(d)であって、上記複数のEVの標的分子の発現レベルが健康な被験体から得られた参照サンプルと異なる場合、健康な被験体ではない上記被験体に有効量の治療薬を投与するステップ(d)と、を含む。
【0023】
治療方法の特徴は、上記の診断/予後方法の特徴と非常に類似しているため、簡潔のために本明細書ではその詳細な説明は省略される。
【0024】
本発明の方法の被験体は、好ましくは哺乳動物である。本開示のいくつかの実施例によれば、被験体はヒトである。
【0025】
本開示の付随する特徴及び利点の多くは、添付の図面に関連して考慮される以下の詳細な説明を参照してよりよく理解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本明細書は、添付図面に照らして読まれる以下の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。
【0027】
【
図1】本開示の実施例1に係るEV又は素通り画分における特異的マーカーの発現を示すウェスタンブロットアッセイの結果である。同図には、PEVは、血漿サンプルから分離されたEVを示し、UEVは、尿サンプルから分離されたEVを示し、MEVは、臍帯の間葉系幹細胞から分離されたEVを示し、SEVは、唾液サンプルから分離されたEVを示し、Solnは、血漿サンプル、尿サンプル、臍帯の間葉系幹細胞又は唾液サンプルの素通り画分を示す。
【
図2A】本開示の実施例2.1に係るイムノブロットアッセイの結果を示す。ここで、臍帯の間葉系幹細胞(即ち、MEV)から分離されたEVと比較して、DLD-1がん細胞(即ち、DEV)から分離されたEVは、E-カドヘリン及びS100A8発現のレベルがより高かった。
【
図2B-2C】それぞれ本開示の実施例2.1に係るMEV及びDEVのmiRNAプロファイルを示すヒストグラムである。
【
図3】本開示の実施例2.2に係るイムノクロマトグラフィーの結果を示す。ここで、健康な被験体から採取された血液のEVにおけるE-カドヘリン及びムチン5ACの発現レベル(
図3の左側には「対照」として表記)は、がん患者の血液から分離されたEV(
図3の右側には「がん」として表記)よりも低かった。検出は、EVの二重特異性捕捉によって実行され、ここで、1:2,000希釈の抗CD63抗体(0.2mg/ml)をEVとともにサンプルローディング領域でインキュベートし、E-カドヘリン及びムチン5ACのアプタマーをそれぞれイムノクロマトグラフィーストリップの上部ポールに標識した。二重特異性結合は、化学発光イメージング用のストレプトアビジン-HRP(1:2,000)と結合した二次抗体によって行われた。
【
図4A-4B】本開示の実施例4に係るイムノクロマトグラフィーの写真である。ここで、抗NS1抗体を結合した金ナノ粒子によって捕捉されたNS-1発現は、デング熱患者の血漿又は尿から分離されたEVにおいて検出可能であるが、非EV画分(pSoln又はuSoln)において検出できない(
図4A)。デング熱の疑いがある患者の尿サンプルに由来する6つのEVのうちの5つは、NS1発現の陽性を明らかにした(
図4B)。血漿は、デングウイルス(DEV)に感染した患者から取得した血漿サンプルを示す。PEVは、DEV感染患者の血漿サンプルから分離されたEVを示す。pSolnは、DEV感染患者から取得した血漿サンプルの素通り画分を示す。UEVは、DEV感染患者の尿サンプルから分離されたEVを示す。uSolnは、DEV感染患者から取得した尿サンプルの素通り画分を示す。尿は、DEV感染患者から取得した尿サンプルを示す。NS-1シグナルは矢印で示される。UEV1-6は、それぞれデング熱疑いの患者番号1-6の尿サンプルから分離されたUEVを示す。
【
図5A-5B】それぞれ本開示の実施例5に係るイムノブロッティング及びイムノクロマトグラフィーの結果を示す。ここで、高齢被験体(50歳以上)のEVにおけるS100A8(
図5A)及びα-シヌクレイン(
図5B)の発現レベルは、若齢被験体(50歳以下)のEVよりも高かった。代表的な結果は、3組の実験で再現性があった。
【
図6】本開示の実施例5に係る若齢被験体とパーキンソン病を有するか又は有しない高齢被験体との発現の違いを示すウェスタンブロットアッセイの写真である。Young UEVは、50歳未満の被験体から分離されたEVUを示す。Old UEVは、50歳以上の被験体から分離されたUEVを示す。PD UEVは、50歳以上でパーキンソン病の被験体から分離されたUEVである。Young uSolnは、50歳未満の被験体から取得した尿サンプルの素通り画分を示す。Old uSolnは、50歳以上の被験体から取得した尿サンプルの素通り画分を示す。PD uSolnは、50歳以上でパーキンソン病の被験体から取得した尿サンプルの素通り画分を示す。代表的な結果は、5組の実験で再現性があった。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面に関連して以下に提供される詳細な説明は、本発明の実施例の説明として意図されており、本発明の実施例を構築又は利用できる唯一の形態を表すことを意図していない。この説明では、実施例の機能と、実施例の構築及び操作のための一連の手順について説明する。ただし、同じ又は同等の機能とシーケンスは、異なる実施例で実現することができる。
I.定義
【0029】
便宜上、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここに集める。 本明細書中で他に定義されない限り、本開示において使用される科学技術用語は、当業者によって一般に理解され使用される意味を有するものとする。文脈によって他に必要とされない限り、単数形の用語は複数の形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。具体的には、本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、文脈が明らかに他に示されない限り、単数形「a」及び「an」は複数の言及を含む。また、本明細書及び特許請求の範囲で使用する「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」という用語は、同じ意味を有し、1、2、3又はそれ以上を含む。
【0030】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示された数値は可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も本質的に、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含む。また、本明細書で使用する「約」という用語は、一般に、所与の値又は範囲の10%、5%、1%又は0.5%以内を意味する。或いは、用語「約」は、当業者によって考慮される場合、平均の許容可能な標準誤差内にあることを意味する。操作例/実施例以外で、又は特に明記しない限り、本明細書中に開示される材料の量、時間、温度、操作条件、量の比などについての、数値範囲、量、値及びパーセンテージの全てが、すべての場合において、用語「約」により修飾されているものと理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、本開示及び添付の請求項に記載される数値パラメータは、所望に応じて変化することのできる近似値である。少なくとも、各数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、及び通常の丸め技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0031】
本明細書で使用される「診断」という用語は、当業者が、患者が所定の疾患又は病状に罹患しているかどうかの確率(「可能性」)を推定及び/又は決定できる方法を指す。本発明の場合には、「診断」は、本発明の特定の標的分子の発現レベルを、場合により他の臨床的特徴とともに使用し、試験体からサンプルを採取して分析することにより、この試験体のがん、変性疾患、感染症又は老化に対する診断結果(即ち、発生又は非発生)を得ることを含む。そのような診断が「決定」されるということは、診断結果が100%正しいと示していることを意味しない。多くのバイオマーカーは、複数の状態を示す。熟練臨床医は、情報が欠如している状態(informational vacuum)では、バイオマーカーの結果を使用せずに、むしろ、試験結果を他の臨床的徴候と併せて使って、診断を行う。従って、所定の診断閾値の一方の側にある測定バイオマーカーレベルは、所定の診断閾値のもう一方の側にあるレベルに比べて、被験者における疾患の発生のより大きな可能性を示す。
【0032】
本明細書における「リスク」という用語は、結果が望ましくない結果、例えば、がん又は変性疾患、感染症、老化などの疾患又は病状の発生、進行又は再発をもたらす可能性を指す。
【0033】
「投与される」、「投与する」又は「投与」という用語は、本明細書で互換的に使用され、本発明の薬剤(例えば、抗がん剤、抗変性剤、抗ウイルス剤、又は抗老化剤)の静脈内、関節内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、動脈内、頭蓋内、又は皮下投与を含むがこれらに限定されない送達態様を指す。
【0034】
本明細書で用いられる「治療」は、哺乳動物(特にヒト)の疾患又は症状の予防(例えば、防止)、治癒又は一時的に軽くする治療を含み、そして、(1)疾患又は症状の傾向にあるが、まだ診断されていない個人で生じる疾患又は症状(例えば、がん、変性疾患、感染症、又は老化)の予防(例えば、防止)、治癒又は一時的に軽くする治療、(2)(例えば、疾患又は症状の発症を抑制することによって)疾患を阻害すること、又は(3)疾患又は症状を緩和する(例えば、疾患又は症状と関連した症状を低減する)こと、を含む。
【0035】
本明細書で言及される「有効量」という用語は、所望の応答をもたらすのに十分な成分の量を指す。治療目的のために、有効量は、成分の毒性又は有害な効果よりも治療的に有益な効果を上回る量でもある。薬剤の有効量は、疾患又は症状を治癒する必要はないが、疾患若しくは症状の発症を遅延、妨害又は予防し、又は疾患若しくは症状を緩和し、疾患若しくは症状を治療することができる。有効量は、適切な投薬形態で1回、2回又はそれ以上の用量に分割されることで、所定の期間内で1回、2回又はそれ以上で投与されることができる。具体的な有効量又は十分量は、処置される特定の病状、患者の身体的条件(例えば、患者の体重、年齢、又は性別)、治療を受けている哺乳類又は動物のタイプ、治療期間、併用療法の性質(存在する場合)、採用される特定の処方、化合物の構造又はその誘導体などの要因によって変化する。有効量は、例えば、細胞数、グラム、ミリグラム若しくはマイクログラムで、又は体重1キログラムあたりのミリグラム(mg/Kg)として表されてもよい。あるいは、有効量は、活性成分(例えば、本開示の抗癌剤、抗変性剤、抗ウイルス剤、又は抗老化剤)の濃度(例えば、細胞濃度、モル濃度、質量濃度、体積濃度、質量モル濃度、モル分率、質量分率及び混合比)で表すことができる。当業者は、動物モデルから決定された用量に基づいて、医薬品(本発明の抗癌剤、抗変性剤、抗ウイルス剤、又は抗老化剤など)のヒト等価用量(HED)を計算することができる。例えば、米国食品医薬品局(FDA)が発行した「成人の健康なボランティアの治療薬の初期臨床試験における最大安全開始用量の推定」と題された業界のガイダンスに従って、ヒト被験体での使用の最大安全用量を推定することができる。
【0036】
「被験体」及び「患者」という用語は、本開示において互換的に使用され、本発明の方法により予測、診断、及び/又は治療されるのに適したヒト種を含む哺乳動物を指す。「被験体」又は「患者」という用語は、1つの性別が特に示されていない限り、雄性と雌生の両方の性別を指すことを意図しています。
【0037】
「健康な被験体」という用語は、疾患又は病状を有しない被験体、例えば、がん、変性疾患若しくは感染症を有しない被験体、又は老化状態ではない被験体(即ち、50歳未満の被験体)を指す。一般的に、「健康な被験体」という用語は、疾患又は病状を有すると診断されておらず、疾患又は病状に関連する2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ又は5つ)の症状を呈していない被験体を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「老化状態にある」という用語は、50歳以上であり、老化の一般的な兆候及び症状(例えば、髪の色の変化、脱毛、しわ、感染症への感受性の増加、熱射病又は低体温のより大きなリスク、及び前屈姿勢)の1つ以上を示す被験体を指す。
【0039】
II.発明の説明
(i)疾患又は病状を予測又は診断する方法
本開示は、少なくとも部分的に、対照被験体(即ち、がん、変性疾患若しくは感染症を有しない被験体、又は老化状態ではない被験体)から取得したEVと比較して、がん、変性疾若しくは感染症を有する被験体、又は老化状態(即ち、50歳以上)にある被験体から取得したEV内又は上において、いくつかのバイオマーカーの発現レベルがアップレギュレート又はダウンレギュレートされる発見に基づく。従って、本開示は、1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを決定することにより、がん、変性疾患、感染症又は老化を診断又は予後する方法を提供する。これによって、当業者又は臨床医師は、治療を必要とする被験体に適切な治療を適時に施すことができる。
【0040】
被験体のがん、変性疾患、感染症又は老化を診断又は予後する方法は、
上記被験体から生体サンプルを取得するステップ(a)と、
上記生体サンプルから複数のEVを分離するステップ(b)と、
上記複数のEVの標的分子の発現レベルを決定するステップ(c)と、
ステップ(c)で決定された標的分子の発現レベルに基づいて、がん、変性疾患、感染症又は老化を診断又は予後し、上記複数のEVの標的分子の発現レベルが健康な被験体から取得した参照サンプルと異なる(即ち、より高いか、又は低い)場合、健康な被験体ではない上記被験体は、がん、変性疾患若しくは感染症を有するか又は発症するリスクがあるか、或いは老化状態にあることを示すステップ(d)と、を含む。
【0041】
ステップ(a)において、生体サンプルは、最初に被験体から取得される。使用目的によっては、上記生体サンプルは、血液、尿、脳脊髄液、胸水、腹水、母乳、羊水、産道、消化管、気管支肺胞洗浄液、唾液又はEVを含む他の生体液であり得る。本発明の方法の上記被験体は、哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、サル、及びウマである。好ましい実施形態によれば、上記被験体はヒトである。
【0042】
次いで、ステップ(b)に記載のように生体サンプルから複数のEVを分離する。上記EVは、当分野で公知の任意の方法、例えば、示差遠心分離、ショ糖勾配遠心分離、精密濾過、イムノクロマトグラフィー、抗体被覆磁気ビーズ及び市販キット(例えば、EXOQUICK(商標))により分離することができる。本開示の実施形態によれば、各分離されたEVは、(1)その内及び/又はその上で発現される特異的マーカー(即ち、CD9、CD63、CD81、HSP60、HSP90及び/又はHSP105)を有すること、並びに(2)30から450nmの粒子サイズを有する(即ち、各EVは30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440又は450nmの粒子サイズを有し得る)ことを特徴とする。このような分離されたEVは、エキソソーム(粒子サイズが30から150nm)及び微小小胞体(粒子サイズが150から450nm)を含む。
【0043】
分離されたEVをアッセイにかけられることにより、EV内及び/又は上で発現される1つ以上の標的分子のレベルを決定し(ステップ(c))、次いで、当業者又は臨床医師は、被験体が疾患又は病状(即ち、がん、変性疾患、感染症又は老化)に罹患しているか、又は発症するリスクがあるか否かを診断又は予後することができる(ステップ(d))。本開示において、1つ以上の標的分子の発現パターンは、上記1つ以上の標的分子に対する結合親和性を示すユニークな抗体及び/又は新規アプタマーを有する二重特異性及び多重特異性モジュールによって真に設計及び検出され、シグナル強度の増幅に使用される。本開示の実施形態によれば、EVにおける標的分子は、タンパク質又は核酸である。タンパク質の発現レベルを決定するためのアッセイの例は、ウェスタンブロットアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、フローサイトメトリー、マイクロビーズアッセイ、イムノクロマトグラフィー、免疫化学発光、及びバイオチップを含むが、これらに限定されない。核酸の発現レベルを決定するための例示的なアッセイは、分光分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量PCR(qPCR)、デオキシリボ核酸(DNA)配列決定、及びリボ核酸(RNA)配列決定を含むが、これらに限定されない。
【0044】
理解できるように、ステップ(c)で決定された標的分子は、生体サンプルのタイプ及び本発明の方法により予測又は診断される疾患/病状によって異なる。本開示のいくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、がんの診断又は予後に使用される。これらの実施形態において、EVにおける標的分子は、E-カドヘリン、ICOS-L、Muc5AC、ダームシジン、CGREF1、コクリン、AREG、LRG、グアニンデアミナーゼ、S100A8、NGAL、hsa-miR-10a-5p(アクセッション番号:MIMAT0000253)、hsa-miR-182-5p(アクセッション番号:MIMAT0000259)、hsa-miR-10b-5p(アクセッション番号:MIMAT0000254)、hsa-miR-22-3p(アクセッション番号:MIMAT0000077)、hsa-miR-181a-5p(アクセッション番号:MIMAT0000256)、hsa-miR-21-5p(アクセッション番号:MIMAT0000076)、hsa-miR-143-3p(アクセッション番号:MIMAT0000435)、hsa-miR-127-3p(アクセッション番号:MIMAT0000446)、hsa-miR-221-3p(アクセッション番号:MIMAT0000278)、hsa-miR-222-3p(アクセッション番号:MIMAT0000279)、hsa-let-7i-5p(アクセッション番号:MIMAT0000415)、hsa-miR-27b-3p(アクセッション番号:MIMAT0000419)、hsa-miR-26a-5p(アクセッション番号:MIMAT0000082)、hsa-miR-100-5p(アクセッション番号:MIMAT0000098)、hsa-miR-151a-3p(アクセッション番号:MIMAT0000757)、hsa-miR-92a-3p(アクセッション番号:MIMAT0000092)、hsa-miR-21-3p(アクセッション番号:MIMAT0004494)、hsa-miR-125b-5p(アクセッション番号:MIMAT0000423)、hsa-miR-181b-5p(アクセッション番号:MIMAT0000257)、hsa-miR-31-5p(アクセッション番号:MIMAT0000089)、hsa-miR-30a-5p(アクセッション番号:MIMAT0000087)、hsa-let-7f-5p(アクセッション番号:MIMAT0000067)、hsa-miR-199a-3p(アクセッション番号:MIMAT0000232)、hsa-miR-28-3p(アクセッション番号:MIMAT0004502)、hsa-miR-148a-3p(アクセッション番号:MIMAT0000243)、hsa-miR-409-3p(アクセッション番号:MIMAT0001639)、hsa-miR-16-5p(アクセッション番号:MIMAT0000069)、hsa-miR-99b-5p(アクセッション番号:MIMAT0000689)、hsa-miR-381-3p(アクセッション番号:MIMAT0000736)、hsa-miR-25-3p(アクセッション番号:MIMAT0000081)、hsa-miR-410-3p(アクセッション番号:MIMAT0002171)、hsa-miR-29a-3p(アクセッション番号:MIMAT0000086)、hsa-miR-199b-3p(アクセッション番号:MIMAT0004563)、hsa-miR-125a-5p(アクセッション番号:MIMAT0000443)、hsa-miR-186-5p(アクセッション番号:MIMAT0000456)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施例において、生体サンプルは、被験体から採取された尿サンプルであり、標的分子は、E-カドヘリン、S100A8、Muc5AC、α-シヌクレイン、L1CAM、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。ここで、標的分子の発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、被験体は、がんを有するか、又はがんを発症するリスクがあることを示す。特定の例において、E-カドヘリン、ICOS-L、Muc5AC、ダームシジン、CGREF1、コクリン、AREG、LRG、グアニンデアミナーゼ、S100A8、NGAL、hsa-miR-10a-5p or hsa-miR-182-5pの発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、被験体は、がんを有するか、又はがんを発症するリスクがあることを示す。いくつかの例において、hsa-miR-10b-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-181a-5p、hsa-miR-21-5p、hsa-miR-143-3p、hsa-miR-127-3p、hsa-miR-221-3p、hsa-miR-222-3p、hsa-let-7i-5p、hsa-miR-27b-3p、hsa-miR-26a-5p、hsa-miR-100-5p、hsa-miR-151a-3p、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-21-3p、hsa-miR-125b-5p、hsa-miR-181b-5p、hsa-miR-31-5p、hsa-miR-30a-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-28-3p、hsa-miR-148a-3p、hsa-miR-409-3p、hsa-miR-16-5p、hsa-miR-99b-5p、hsa-miR-381-3p、hsa-miR-25-3p、hsa-miR-410-3p、hsa-miR-29a-3p、hsa-miR-199b-3p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-186-5pの発現レベルが参照サンプルよりも低い場合、被験体は、がんを有するか、又はがんを発症するリスクがあることを示す。
【0045】
本開示の特定の実施形態によれば、本発明の方法は、変性疾患の診断又は予後に使用される。これらの実施例において、EVにおける標的分子は、ICOS-L、Muc5AC,ダームシジン、CGREF1、コクリン、AREG、LRG、グアニンデアミナーゼ、S100A8、DPP4、CD90、EphA2、IL-2、IL-12、BDNF、B2M、CTGF、NFL、NGAL、α-シヌクレイン、L1CAM、EGF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、GRO、IL-10、MCP-1、MCP-3、exoDNA、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの例において、生体サンプルは、被験体から採取された血液サンプル又は尿サンプルであり、EGF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、GRO、IL-10又はMCP-3の発現レベルが参照サンプルよりも低い場合、被験体が変性疾患を有するか、変性疾患を発症するリスクがあることを示す。特定の例において、生体サンプルは、被験体から採取された血液サンプル、唾液サンプル又は尿サンプルであり、exoDNAの発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、被験体が変性疾患を有するか、又は変性疾患を発症するリスクがあることを示す。
【0046】
本開示の特定の実施形態によれば、本発明の方法は、感染症の診断又は予後に有用である。いくつかの実施例において、生体サンプルは、被験体から採取された尿サンプルであり、EVの標的分子は、微生物核酸、リポ多糖及び/又はタンパク質(例えば、NS-1タンパク質)であり、標的分子の発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、被験体が感染症を有するか、又は感染症を発症するリスクがあることを示す。
【0047】
本開示の代替的な実施形態によれば、本発明の方法は、被験体の老化状態の診断又は予後に有用である。いくつかの実施例において、生体サンプルは、被験体から採取された血液サンプルであり、EVにおけるFEGの発現レベルが参照サンプルよりも低い場合、被験体が老化状態にあることを示す。特定の実施例において、生体サンプルは、被験体から採取された血液サンプルであり、EVにおけるG-CSF、GM-CSF、GRO、IL-1RA、IL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、MIP-1β又はTNF-αの発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、被験体が老化状態にあることを示す。いくつかの実施例において、生体サンプルは、被験体から採取された尿サンプルであり、EVにおけるEGF、bFGF、G-CSF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、MDC、IL-1RA、IL-1α又はIL-4の発現レベルが参照サンプルよりも低い場合、被験体が老化状態にあることを示す。いくつかの実施例において、生体サンプルは、被験体から採取された尿サンプルであり、EVにおけるS100A8、DPP4、CD90、EphA2、IL-2、IL-12、BDNF、B2M、CTGF、NFL、IL-6、IL-8、GRO、IP-10、MCP-1、L1CAM、α-シヌクレイン又はexoDNAの発現レベルが参照サンプルよりも高い場合、被験体が老化状態にあることを示す。いくつかの例において、EVにおけるhsa-miR-10b-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-181a-5p、hsa-miR-21-5p、hsa-miR-143-3p、hsa-miR-127-3p、hsa-miR-221-3p、hsa-miR-222-3p、hsa-let-7i-5p、hsa-miR-27b-3p、hsa-miR-26a-5p、hsa-miR-100-5p、hsa-miR-151a-3p、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-21-3p、hsa-miR-125b-5p、hsa-miR-181b-5p、hsa-miR-31-5p、hsa-miR-30a-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-28-3p、hsa-miR-148a-3p、hsa-miR-409-3p、hsa-miR-16-5p、hsa-miR-99b-5p、hsa-miR-381-3p、hsa-miR-25-3p、hsa-miR-410-3p、hsa-miR-29a-3p、hsa-miR-199b-3p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-186-5pの発現レベルが参照サンプルよりも低い場合、被験体が変性疾患の有無にかかわらず、老化状態にあるか、又は老化を発症するリスクがあることを示す。
【0048】
本発明の方法により予測又は診断されるのに適したがんの例は、胃がん、肺がん、膀胱がん、乳がん、膵臓がん、腎がん、大腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、脳腫瘍、前立腺がん、肝細胞がん、黒色腫、食道がん、多発性骨髄腫又は頭頸部がんを含むが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の方法により予測又は診断されるのに適した変性疾患の非限定的な例は、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、ストローク、慢性腎臓病、慢性肺疾患、良性前立腺肥大及び難聴を含む。
【0050】
本発明の方法により予測又は診断されるのに適した感染症は、細菌、ウイルス又は真菌により引き起こされ得る。
【0051】
(ii)疾患又は病状の治療方法
本明細には、本開示のセクション(i)の方法予後又は診断結果に基づいて被験体のがん、変性疾患、感染症又は老化を治療する方法がさらに開示される。特に、被験体のがん、変性疾患、感染症又は老化を治療する方法は、
被験体から生体サンプルを取得するステップ(a)と、
上記生体サンプルから複数の細胞外EVを分離するステップ(b)と、
上記複数のEVの標的分子の発現レベルを決定するステップ(c)と、
ステップ(c)で決定された標的分子の発現レベルに基づいて、がん、変性疾患、感染症又は老化を治療するステップ(d)であって、上記複数のEVの標的分子の発現レベルが健康な被験体から取得した参照サンプルと異なる(即ち、より高いか、又は低い)場合、健康な被験体ではない上記被験体に有効量の治療薬を投与するステップ(d)と、を含む。
【0052】
上記治療方法のステップ(a)~(c)は、本開示のセクション(i)に記載の方法のステップと類似しているため、簡潔にするために、本明細書ではその詳細を省略する。
【0053】
ステップ(d)において、当業者又は臨床医師は、ステップ(c)で決定された発現レベルに基づいて、治療を必要とする被験体に、有効量の治療薬(例えば、抗がん剤、抗変性剤、抗ウイルス薬又は抗老化剤)を投与することができる。具体的には、本開示のセクション(i)に記載のように、被験体の1つ以上の標的分子の発現レベルが参照サンプルと異なる場合、試験体は、がん、変性疾患若しくは感染症を有するか又は発症するリスクがあるか、或いは老化状態にあることを示す。これによって、当業者又は臨床医師は、このような被験体に適切な治療を施すことにより、がん、変性疾患、感染症若しくは老化に関連する症状の発生を防止、改善及び/又は軽減することができる。
【0054】
本開示において、治療薬は、健康な被験体と比較してEVにおける1つ以上の標的分子の発現パターンが歪んだ被験体に投与される。上記治療薬は、アゴニスト(例えば、アゴマー)又はアンタゴニスト(アンタゴミール、抗体又はアプタマー)であり得る。これにより、被験体のEVにおける1つ以上の標的分子の歪んだ発現パターンが修正される。
【0055】
例示的な抗がん剤は、クルクミン、インターフェロン、サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子、インターフェロンα、インターフェロンγ)、抗体(例えば、ハーセプチン(トラスツズマブ)、T-DM1、AVASTIN(ベバシズマブ)、ERBITUX(セツキシマブ)、ベクチビックス(パニツムマブ)、リツキサン(リツキシマブ)、及びベクサール(トシツモマブ))、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、及びメゲストロール)、LHRHアゴニスト(例えば、ゴスクリン及びロイプロリド)、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド及びビカルタミド)、光線力学療法(例えば、ベルテポルフィン(BPD-MA)、フタロシアニン、光増感剤Pc4、及びデメトキシヒポクレリンA(2BA-2-DMHA))、窒素マスタード(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、エストラムスチン、メルファラン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU))、アルキルスルホン酸塩(例えば、ブスルファン及びトレスルファン)、トリアゼン(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド)、白金含有化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)、タキソイド(例えば、パクリタキセル又はパクリタキセル同等物、例えば、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン)、ドコサヘキサエン酸結合パクリタキセル(DHA-パクリタキセル、タキソプレキシン)、ポリグルタミン酸結合パクリタキセル(PG-パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメックス、CT-2103、XYOTAX)、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)ANG1005(3分子のパクリタキセルに結合したアンジオペップ-2)、パクリタキセル-EC-1(erbB2認識ペプチドEC-1に結合したパクリタキセル)、及びグルコース結合パクリタキセル、例えば、2'-パクリタキセルメチル2-グルコピラノシルスクシネート;ドセタキセル、タキソール)、エピポドフィリン(例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン、イリノテカン、クリスナトール、マイトマイシンC)、代謝拮抗剤、DHFR阻害剤(例えば、メトトレキサート、ジクロロメトトレキサート、トリメトレキサート、エダトレキサート)、IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤(例えば、ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリン、及びEICAR)、リボヌクレオチド還元酵素阻害剤(例えば、ヒドロキシ尿素及びデフェロキサミン)、ウラシルアナログ(例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラチトレキセド、テガフールウラシル、カペシタビン)、シトシンアナログ(例えば、シタラビン(ara C)、シトシンアラビノシド及びフルダラビン)、プリンアナログ(例えば、メルカプトプリン及びチオグアニン)、ビタミンAアナログ、ビタミンD3アナログ(例えば、EB 1089、CB 1093、及びKH 1060)、ビタミンK、イソプレニル化阻害剤(例えば、ロバスタチン)、ドーパミン作動性神経毒(例えば、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン)、細胞周期阻害剤(例えば、スタウロスポリン)、アクチノマイシン(例えば、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン)、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2、ペプロマイシン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン)、MDR阻害剤(例えば、ベラパミル)、Ca2+ATPase阻害剤(例えば、タプシガルギン)、イマチニブ、サリドマイド、レナリドマイド、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、アキシチニブ(AG013736)、ボスチニブ(SKI-606)、セジラニブ(RECENTIN(商標)、AZD2171)、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標)、BMS-354825)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、イマチニブ(Gleevec(登録商標)、CGP57148B、STI-571)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、TYVERB(登録商標))、レスタウルチニブ(CEP-701)、ネラチニブ(HKI-272)、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマキサニブ(セマキサニブ、SU5416)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248)、トセラニブ(PALLADIA(登録商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(登録商標)、ZD6474)、ヴァタラニブ(PTK787、PTK/ZK)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、エベロリムス(AFINITOR(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、テムシロリムス(TORISEL(登録商標))、ENMD-2076、PCI-32765、AC220、乳酸ドビチニブ(TKI258、CHIR-258)、BIBW 2992(TOVOK(商標))、SGX523、PF-04217903、PF-02341066、PF-299804、BMS-777607、ABT-869、MP470、BIBF 1120(VARGATEF(登録商標))、AP24534、JNJ-26483327、MGCD265、DCC-2036、BMS-690154、CEP-11981、チボザニブ(AV-951)、OSI-930、MM-121、XL-184、XL-647及び/又はXL228)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ(Velcade))、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD-001)、リダフォロリムス、AP23573(Ariad)、AZD8055(AstraZeneca)、BEZ235(Novartis)、BGT226(Norvartis)、XL765(Sanofi Aventis)、PF-4691502(Pfizer)、GDC0980(Genetech)、SF1126(Semafoe)及びOSI-027(OSI))、オブリマーセン、ゲムシタビン、カルミノマイシン、ロイコボリン、ペメトレキセド、シクロホスファミド、ダカルバジン、プロカルビジン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、カンパテシン、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、アミノプテリン、メトプテリン、ポルフィロマイシン、メルファラン、ロイロシジン、ロイロシン、クロラムブシル、トラベクテジン、プロカルバジン、ジスコデルモリド、カルミノマイシン、アミノプテリン、及びヘキサメチルメラミンを含むが、これらに限定されない。
【0056】
抗変性剤の例は、クルクミン、分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリンを含むBCAA)、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジル(Aricept)、ガランタミン(Razadyne)及びリバスチグミン(Exelon))、メマンチン(Namenda)、オメガ-3脂肪酸、イチョウ、ビタミン(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEを含む)、レボドパ、カルビドパ、ドーパミンアゴニスト(例えば、プラミペキソール(Mirapex)、ロピニロール(Requip)、ロチゴチン(Neupro)、及びアポモルフィン(Apokyn))、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAO阻害剤、例えば、セレギリン(Eldepryl,Zelapar)、セレギリン(Azilect)、及びサフィンアミド(Xadago))、カテコールO-メチルトランスフェラーゼ阻害剤(COMT阻害剤、例えば、エンタカポン(Comtan)及びトルカポン(Tasmar))、抗コリン剤(例えば、ベンズトロピン(Cogentin)、及びトリヘキシフェニジル)、及びアマンタジンを含むが、これらに限定されない。
【0057】
抗感染症剤の実施例は、LL37、インターフェロン-α、親水性及び疎水性抗生物質、及びアプタマーを含むが、これらに限定されない。
【0058】
抗老化剤の例は、クルクミン、コエンザイムQ10、キサントフィル(例えば、アスタキサンチン、フコキサンチン、ゼアキサンチン)、L-グルタチオン、レチノイド、α-ヒドロキシル酸、β-ヒドロキシル酸及びルテインを含むが、これらに限定されない。或いは、抗老化剤は、プロテオグリカン、及び糖タンパク質又は糖脂質であってもよく、必要に応じて組織の局在化を改善するために足場に搭載される。
【0059】
上記治療薬は、適切な経路、例えば、局所、粘膜(例えば、結膜内、鼻腔内、気管内)、経口、脊髄内(例えば、髄腔内)、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、関節内、脳室内、脳室内、腹腔内、腫瘍内、及び中耳内により被験体に投与され得る。
【0060】
理解できるように、本発明の方法は、単独で、又はがん、変性疾患、感染症若しくは老化の治療にいくつかの有益な効果をもたらす他の療法(例えば、抗酸化剤又は免疫療法)と組み合わせて被験体に適用することができる。目的に応じて、本発明の方法は、他の療法の使用前、使用中、又は使用後に対象に適用することができる。
【0061】
標的分子の使用
本開示によれば、キットの製造のためのバイオマーカーとして機能する標的分子の使用に関する。本開示の使用において、
上記バイオマーカーは、EVの内及び/又は上で発現される標的分子であり、
上記キットは、被験体ががん、変性疾患、感染症若しくは老化を有するか、又は発症するリスクがあるかを診断又は予後するのに有用であり、
がんの予後又は診断において、上記標的分子は、E-カドヘリン、ICOS-L、Muc5AC、ダームシジン、CGREF1、コクリン、AREG、LRG、グアニンデアミナーゼ、S100A8、NGAL、hsa-miR-10a-5p、hsa-miR-182-5p、hsa-miR-10b-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-181a-5p、hsa-miR-21-5p、hsa-miR-143-3p、hsa-miR-127-3p、hsa-miR-221-3p、hsa-miR-222-3p、hsa-let-7i-5p、hsa-miR-27b-3p、hsa-miR-26a-5p、hsa-miR-100-5p、hsa-miR-151a-3p、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-21-3p、hsa-miR-125b-5p、hsa-miR-181b-5p、hsa-miR-31-5p、hsa-miR-30a-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-28-3p、hsa-miR-148a-3p、hsa-miR-409-3p、hsa-miR-16-5p、hsa-miR-99b-5p、hsa-miR-381-3p、hsa-miR-25-3p、hsa-miR-410-3p、hsa-miR-29a-3p、hsa-miR-199b-3p、hsa-miR-125a-5p、hsa-miR-186-5p、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、
変性疾患の予後又は診断において、上記標的分子は、DPP4、CD90、EphA2、IL-2、IL-12、BDNF、B2M、CTGF、NFL、L1CAM、α-シヌクレイン、EGF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、GRO、IL-10、MCP-3、核酸(例えば、exoDNA)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、
感染症の診断又は予後において、上記標的分子はNS-1であり、
老化の診断又は予後において、上記標的分子は、S100A8、DPP4、CD90、EphA2、IL-2、IL-12、BDNF、B2M、CTGF、NFL、EGF、G-CSF、GM-CSF、GRO、IL-1RA、IL-1α、IL-4、IL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、MIP-1β、TNF-α、bFGF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、MDC、L1CAM、α-シヌクレイン、核酸(例えば、exoDNA)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、
上記複数のEVの標的分子の発現レベルが健康な被験体から取得された参照サンプルと異なる(即ち、より高い又は低い)場合、被験体は、がん、変性疾患若しくは感染症を有するか又は発症するリスクがあるか、或いは老化状態にあることを示す。
【0062】
標的分子の発現レベルを決定し、そして決定されたレベルに基づいて疾患/病状を診断又は予測する方法は、本開示のセクション(I)に記載の方法と非常に類似しているため、簡潔のために、その詳細な説明はここでは省略する。
【0063】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明し、当業者が本発明を実施するのを助けるために提供される。これらの実施例は、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。さらに詳述することなく、当業者は、本明細書の説明に基づいて、本発明を最大限に利用できると考えられる。本明細書で引用されるすべての刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0064】
材料及び方法
異なるセルからのEVの分離
臍帯(即ち、ucMSC)から分離された間葉系幹細胞及びDLD-1がん細胞(濃度:1×105細胞/ml)をそれぞれ10%ウシ胎児血清(FBS)を含む培地で24時間培養した後、無血清培地に交換した。48時間後、無血清培地(上清)を0.45μmの孔径の精密濾過により濾過して細胞破片と潜在的な細菌汚染を除去し、次に、0.03umフィルターにかけ、0.03umフィルターに保持された(200倍の)EVを収集して濃縮した。このように収集されたEVは、30から450nmの粒子サイズを有する。本発明の実験において、ucMSCから取得されたEVはMEVとして定義され、DLD-1細胞から取得されたEVはDEVとして定義された。ナノ粒子追跡分析の結果によると、MEV及びDEVは、いずれも1085.1μg/ml(約5.0×1010から10×1010小胞/ml)の平均タンパク質濃度を有していた。
【0065】
組織液からのEVの分離
本発明の調査には、(1)頭頸部がんと診断されたがん患者、(2)パーキンソン病の患者、(3)デング熱ウイルスに感染し、デング熱にかかった患者、及び(4)50歳を超えた被験体の4群の被験体が含まれた。血液サンプル又は尿サンプルは、これらの被験体から採取された。
EVは、一連の遠心分離(100x濃度)及び0.45um、0.22um及び0.02umフィルター膜による濾過によって尿サンプル(30ml)から分離された。ドロップスルー画分は、精製効率を分析するために収集された。
【0066】
血液のEVは、EXOQUICK(商標)沈殿により血漿から調製された。簡単に言えば、0.5mlの血漿を0.126ml EXOQUICK(商標)沈殿により4°Cで30分間処理した後、1,500xgで30分間の遠心分離した。血漿EVのペレットを0.5mlに再懸濁し、5アリコートに等分し、精製効率を分析するために上清を回収した。
【0067】
MEV及びDEVのプロテオミクスプロファイルの決定
MEV及びDEVのタンパク質濃度をタンパク質アッセイキットで測定し、3バッチのサンプルの混合物からの等化タンパク質(equalized protein)をITRAQTM法(相対及び絶対定量(iTRAQ)のための等価タグ)により処理した。ITRAQ(TM)法は、等価断片を生成する化合物で標識されたペプチドに基づくタンパク質定量法である。4セットとして提供されたApplied Biosystems ITRAQTM Reagents(Applied Biosystems Inc., USA)(同重体(同質量)試薬:ITRAQTM Reagent 114、ITRAQTM Reagent 115、ITRAQ(TM)Reagent 116及びITRAQTM Reagent 117)を使用してEVのタンパク質を標識し、LC/MS-MS実験で4プレックスサンプル分析を可能にする4つの試薬を作成した。このITRAQTMにより、合計1034個のタンパク質が同定された結果、1034個のタンパク質のうち11個は、MEVと比較してDEVでより高い発現レベル(>5倍)を示した。DEVでより高い発現を示す11個のタンパク質は、E-カドヘリン、ISCOリガンド、Muc5AC、ダームシジン、CGREF1、コクリン、AREG、LRG、グアニンデアミナーゼ、S100A8及びNGALであった。
【0068】
MEV及びDEVのmiRNAプロファイルの決定
MEV又はDEVからのRNAサンプルを溶解試薬で採取した。具体的には、700ulの溶解緩衝液をMEV又はDEVペレットに加え、室温で5分間ホモジナイズした後、15秒間激しく振とうしながら140ulのクロロホルムを加えた。4°Cで15分間をかけて12,000gの総RNAサンプルを採取した。次に、採取されたRNAサンプルをTRUSEQ(登録商標)Small RNALibrary Prep Kitで処理することで、生成されたRNA断片の両端に5'及び3'アダプターが結合され、cDNA生成物(約140bp)を得た。次世代シーケンシング(NGS)によりMEV及びDEVのmiRNAプロファイルを分析した。ディファレンシャルディスプレイ(differential display)により、MEV及びDEVからのEVにおける36個のmiRNAを確定し、そのうち、MEVと比較して、DEVにおいて2個のmiRNA(即ち、miR-10a及びmiR-182a)はより高い発現を示し、34個のmiRNAはより低い発現を示した。RT-PCR定量により10個のmiRNAを検証した。
【0069】
ウェスタンブロットアッセイ
血液、唾液又は尿に由来するEVサンプルの総タンパク質20mgを、変性条件下でSDS-PAGEで処理した。電気泳動後、タンパク質ゲルを半乾燥転写装置によりニトロセルロース膜に転写した。膜を脱脂粉乳と共にインキュベートしてトリス緩衝液(50mM)での非特異的結合をブロックした後、抗体(1:2,000希釈)又はアプタマー(100nM;例えば、それぞれE-カドヘリン及びムチン5Acに特異的な配列番号1又は2のアプタマー)と共にインキュベートした。トリス緩衝液で洗浄して未結合の抗体又はアプタマーを除去した後、ストレプトアビジン-HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)化学発光反応により特定のタンパク質の発現レベルを検出した。
【0070】
免疫化学発光による組織液中の特定のEVの捕捉
1から10mlの組織液を磁気セルのシリンダーに注入した。EVは高親和性ビーズによって捕捉され、未結合の溶液はドロップスルーされた。特定のタンパク質(抗体又はアプタマーによって捕捉又は検出される)又は核酸(例えば、miRNA)(RT-PCR又はアプタマーによって捕捉又は検出される)の発現を検出するために、リガンドでコーティングされた磁気ビーズによって捕捉されたEVを、イムノブロット若しくはアフィニティ結合蛍光フォトニック、化学発光、又は磁気電子変換によりシグナル増幅した。
【0071】
イムノクロマトグラフィーによる組織液中の特定のEVの捕捉
EVを抗CD63、抗CD9又は抗CD81抗体(1:1000希釈)と5分間混合した後、イムノクロマトグラフィーで15分間展開させた。ストリップの上部ポールはガラス繊維で作製され、特定のEVバイオマーカーとの親和性が高いアプタマーでスポットされた。或いは、EVを標識するためのアプタマーを有する最初の混合物は、EVのバイオマーカーに特異的な抗体のスポットによって置き換えることができる。実験では、10ulのEV(100又は1000を超える小胞(粒子))と20ulの抗体(0.2mg/ml)又はアプタマー(100nM)(金ナノ粒子(40nm、20OD)を1:1の比率で事前に組み込むかどうかにかかわらず)とを混合し、60ulのトリス緩衝液(50mM)でイムノクロマトグラフィーストリップの底部領域にスポットした。高分子は、クロマトグラフィーのストリップの上部ポールに移動した。この上部ポールにおいて、100nMのアプタマーがEVを特異的に保持するためのガラス繊維領域にスポットされている。金が取り込まれている場合は、2次抗体による発色は不要である一方、金が取り込まれていない場合は、化学発光又は蛍光を伴う2次抗体を用いて特定のEVバイオマーカーの発現レベルを検出した。
【0072】
組織液のEVにおけるmiRNAの検出
被験体の血液又は尿サンプルから分離されたEVをEXOQUICK(商標)により4:1の比率で沈殿させた。次に、EVペレットを洗浄して溶解することで、EVに含まれるmiRNAを放出した。miRNAを逆転写反応に供してcDNAを生成し、定量的PCR反応を介して特異的プライマーにより定量化した。例えば、hsa-miR-182-5pは、配列番号3の配列を有し、配列番号4及び5のプライマーにより検証され得る。hsa-miR-127-3pは、配列番号6の配列を有し、配列番号7及び8のプライマーにより検証され得る。hsa-miR-183-5pは、配列番号9の配列を有し、配列番号10及び11のプライマーにより検証され得る。hsa-miR-143-3pは、配列番号12の配列を有し、配列番号13及び14のプライマーにより検証され得る。hsa-miR-181a-5pは、配列番号15の配列を有し、配列番号16及び17のプライマーにより検証され得る。hsa-let-7a-5pは、配列番号18の配列を有し、配列番号19及び20のプライマーにより検証され得る。hsa-let-7f-5pは、配列番号21の配列を有し、配列番号22及び23のプライマーにより検証され得る。hsa-miR-199a-3pは、配列番号24の配列を有し、配列番号25及び26のプライマーにより検証され得る。hsa-miR-29a-5pは、配列番号27の配列を有し、配列番号28及び29のプライマーにより検証され得る。hsa-miR-10aは、配列番号30の配列を有し、配列番号31及び32のプライマーにより検証され得る。
【0073】
組織液のEVにおけるexoDNAの検出
オレンジGスペクトロメトリーにより被験体の尿から分離されたEVについてエキソソームDNA(exoDNA)を検出した。簡単に言えば、濃縮されたEVサンプルをエッペンドルフチューブの1:4のトリス緩衝液に入れ、30分間をかけてヒートポットで溶解した。20ulのEV溶液を0.015%オレンジG溶液と混合して二本鎖DNAを染色し、その後、200ulに希釈し、476/590nmの励起/発光で分光測光を行った。exoDNAの濃度は、一連の既知のDNA濃度で作成された標準曲線に基づいて計算され、BCAタンパク質アッセイで測定された1mgの総EVsタンパク質に基づいて正規化された。
【0074】
実施例1:分離されたEVの特性評価
「材料及び方法」で説明されている手順で分離されたEVについてナノ粒子追跡アナライザーとウェスタンブロット分析を行い、そのテトラスパニン(CD9、CD63及びCD81を含む)と小胞タンパク質(HSP60、HSP90、HSP105を含む)の数及び発現を決定した。ナノ粒子追跡アナライザーの分析結果によると、尿EVの小胞数(以下「UEV」)は、尿濃度に応じて0.5×1011から5.1×1011であり、血漿EVの小胞数(以下「PEV)は、約5.4×1011から7.8×1011であった。EV画分(即ち、フィルター膜に保持された画分又はEXOQUICK(商標)で沈殿した画分)における小胞数は、ドロップスルー画分よりも顕著に高かった(データは示していない)。UEV及びPEVのサイズは、80から160nmであった。
【0075】
ウェスタンブロットアッセイのデータは、血漿、尿又は唾液から分離されたEV(即ち、PEV、UEV、SEV)内/上においては、テトラスパニン(即ち、CD9、CD63及び/又はCD81)(
図1)及び小胞タンパク質(即ち、HSP60、HSP90及び/又はHSP105)が発現されており、また、UEVにおけるCD9の発現レベルがPEVよりも高く、PEVにおけるCD81の発現レベルがUEVよりも高いことを示した(
図1)。ドロップスルー画分にはテトラスパニンが検出されなかった(
図1)。発現の違いに基づいて、CD9及びCD81を以下のアッセイでUEV及びPEVをそれぞれ捕捉するための標的として使用した。
【0076】
実施例2:癌性及び非癌性の細胞/組織から分離されたEV間の発現の違いの特性評価
2.1 MEV及びDEVにおける標的分子の発現レベル
まず、ITRAQ
TMによりMEV及びDEVのプロテオミクスプロファイルを分析した。分析結果は、差が5倍以上又は1/5未満の変化として定義された場合、MEVとDEVにおける発現レベルが異なる21種類のタンパク質が存在し、そのうち、11種類のタンパク質(E-カドヘリン、ICOS-L、Muc5AC、ダームシジン、CGREF1、コクリン、AREG、LRG、グアニンデアミナーゼ、S100A8,及びNGALを含む(データは示されていない))がDEVにおける発現レベルがMEVよりも高いことを示す。ウェスタンブロットのデータにより、MEVと比較して、DEVにおいてE-カドヘリンとS100A8の発現レベルが顕著に高いことがさらに確認された(
図2A)。
【0077】
本実施例において、プロテオミクスプロファイルに加えて、MEV及びDEVのmiRNAプロファイルを分析し、その結果を表1に示した。MEVと比較して、DEVにおいてhsa-miR-10a-5p及びhsa-miR-182-5pのレベルがアップレギュレートされた一方、DEVにおいてhsa-miR-10b-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-181a-5p、hsa-miR-21-5p、hsa-miR-143-3p、hsa-miR-127-3p、hsa-miR-221-3p、hsa-miR-222-3p、hsa-let-7i-5p、hsa-miR-27b-3p、hsa-miR-26a-5p、hsa-miR-100-5p、hsa-miR-151a-3p、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-21-3p、hsa-miR-125b-5p、hsa-miR-181b-5p、hsa-miR-31-5p、hsa-miR-30a-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-28-3p、hsa-miR-148a-3p、hsa-miR-409-3p、hsa-miR-16-5p、hsa-miR-99b-5p、hsa-miR-381-3p、hsa-miR-25-3p、hsa-miR-410-3p、hsa-miR-29a-3p、hsa-miR-199b-3p、hsa-miR-125a-5p、及びhsa-miR-186-5pのレベルがダウンレギュレートされた(表1)。
【0078】
表1: MEV及びDEVのmiRNAプロファイル
UD:検出限界以下
【0079】
図2B及び2Cの定量結果は、MEVにおけるmiR-181a及びmiR-127aの発現レベルがDEVよりも顕著に高いことをさらに確認した。
【0080】
2.2 がんを有するか又は有しない被験者の標的分子の発現レベル
本実施例において、例2.1で特徴付けられた表現の違いがさらに確認されました。本実施例では、健康な被験体及び頭頸部がんを有するがん患者からそれぞれ尿サンプルを採取し、「材料及び方法」に記載の手順に従って尿サンプルからEVを分離した。
図3のデータに示されるように、対照群(即ち、健康な被験体から採取されたUEV)と比較して、E-カドヘリン及びムチン5ACの発現レベルは、がん患者のUEVにおいて顕著に高かった。
【0081】
これらの結果は、
図2-3及び表1に記載の各標的分子ががん性及び非がん性の組織/細胞の区別に有用であり、したがって、がんの発生を予測又は診断するためのがんマーカーとして適用できることを示している。
【0082】
実施例3:健康な被験体とパーキンソン患者のEV間の発現の違いの特性評価
パーキンソン病を有するか又は有しない高齢者(50歳以上)からそれぞれ尿サンプルを採取し、「材料及び方法」に記載のように、尿サンプルからEVを分離した。表2の結果に示されるように、健康な被験体から分離されたUEVと比較して、パーキンソン病の患者のUEVにおけるEGF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、GRO、IL-10及びMCP-3の発現レベルは、顕著に低かった。
【0083】
表2:パーキンソン病を有するか又は有しない被験体から採取されたUEVにおける特定の標的分子の発現
(1)*P<0.05
(2)調査した高齢者と患者の数は、それぞれ10人と24人であった。
【0084】
結果は、EGF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、GRO、IL-10及びMCP-3がパーキンソン病の発生を予測又は診断するためのバイオマーカーとして適用できることを実証した。
【0085】
実施例4:健康な被験体及びデング熱患者のEV間の発現の違いの特性評価
それぞれ健康な被験体及びデング熱を有する患者から血液及び尿サンプルを採取した。次いで、「材料及び方法」に記載の手順に従って、血液及び尿サンプルからEVを分離した。
図4Aのデータに示されるように、微生物抗原NS-1はデング熱患者のPEV及びUEVに存在したが、非EV画分(Soln)にはNS-1シグナルは検出されなかった。
図4Bのデータは、デング熱が疑われる患者の尿サンプルに由来する6つのEVのうち5つがNS1発現の陽性を示したことをさらに示した。金ナノ粒子共役免疫クロマトグラフィーによって検出されたNS-1シグナルは、
図4A及び4Bの矢印で示された。デングNS1タンパク質が血液及び尿のEV、特に尿EVで検出されるが、非EV画分(pSoln又はuSoln)で検出されないことは、微生物感染(例えば、DEV感染)を予測又は診断する斬新でユニークな発見である。
【0086】
実施例5:若齢者と高齢者のEV間の発現の違いの特性評価
50歳以上又は以下の被験体からそれぞれ血液及び尿サンプルを採取し、「材料及び方法」に記載の手順に従って、血液及び尿サンプルからEVを分離した。分離されたPEV及びUEVの発現の違いをそれぞれ表3-4及び
図5A-5Bに示した。
【0087】
若齢被験体のPEVと比較して、高齢被験体のEGFの発現レベルは低下し、G-CSF、GM-CSF、GRO、IL-1RA、IL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、MIP-1β又はTNF-αの発現レベルは高齢者(高齢被験体)(即ち、老化状態にある被験体)のPEVにおいて向上した(表3)。
【0088】
表3:50歳以上又は以下の被験体から分離されたPEVにおける特定の標的分子の発現
【0089】
UEVは、PEVと異なる発現プロファイルを示した。表4のデータに示されるように、若齢被験体のUEVと比較して、EGF、bFGF、G-CSF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、MDC、IL-1RA、IL-1α及びIL-4の発現レベルは高齢被験体において低下した一方、GRO、IL-6、IL-8、IP-10及びMCP-1の発現レベルは、高齢被験体(即ち、老化状態にある被験体)のUEVにおいて向上した。
【0090】
表4:50歳以上又は以下の被験体から分離されたUEVにおける特定の標的分子の発現
【0091】
図5A及び5Bのデータに示されるように、老化状態(
図5A及び5Bにおいて「aging」で示される)にある被験体のUEVは、イムノブロット及びイムノクロマトグラフィーアッセイにおいてそれぞれより高いS100A8及びα-シヌクレインのレベルを有した。老化状態ではない被験体のUEVと比較して(
図5A及び5Bにおいて「young」で示される)。
【0092】
これらの結果は、S100A8、EGF、G-CSF、GM-CSF、GRO、IL-1RA、IL-1α、IL-4、IL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、MIP-1β、TNF-α、bFGF、フラクタルカイン、IFN-α、IFN-γ、MDC、L1CAM及びα-シヌクレインのそれぞれは、被験体が老化状態にあるか否かを診断するためのバイオマーカーとして適用できることを示している。
【0093】
本発明は、若齢被験体及びパーキンソン病を有するか又は有しない高齢被験体のUEVにおけるL1CAM及びexoDNAの発現を調査した。
図6及び表5のデータに示されるように、50歳以上の被験体と比較して、50歳未満の被験体は、L1CAM及びexoDNAの発現がより低いが、CD9の発現がより高かった。また、L1CAM及びexoDNAの発現レベルは、パーキンソン病を有する被験体ではさらに向上する可能性がある。若齢成人と高齢成人の間のL1CAMとCD9の相互発現は、老化にとって良い予測因子となり得る。
【0094】
表5:特定の被験体のExoDNA濃度
1.exoDNAは、オレンジGスペクトロメトリーによって測定される。
2.SEは標準誤差を示す(n=10)。
*はP<0.05(群間)を示し、
#はP<0.01(群間)を示す。
【0095】
結論として、本開示は、いくつかの標的分子が、がん、変性疾患、感染症、及び老化を含む特定の疾患又は病状を有するか又は有しない被験体において異なる発現レベルを示したことを実証した。本開示の結果に基づいて、当業者又は医師は、これらの疾患及び病状を予後又は早期診断することができ、これによって被験体における疾患又は病状の発生又は進行を効率的に阻害するように、それを必要とする被験体に適切な治療を適時に施すことができる。
【0096】
実施形態の上記の説明は、例としてのみ与えられ、当業者によって様々な修正がなされ得ることが理解されるであろう。上記の態様、実施例、及びデータは、本発明の例示的な実施形態の構造及び使用の完全な説明を提供する。本発明の様々な実施形態が、ある程度の特殊性を伴って、又は1つ以上の個々の実施形態を参照して上記で説明されたが、当業者は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多数の変更を加えることができる。
【配列表】