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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】粉塵の飛散防止方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20221004BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20221004BHJP
   B03C 3/28 20060101ALI20221004BHJP
   E21F 5/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E04G21/32 B
E04G23/08 Z
B03C3/28
E21F5/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021128910
(22)【出願日】2021-08-05
(62)【分割の表示】P 2016252862の分割
【原出願日】2016-12-27
(65)【公開番号】P2021183803
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】島多 義彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】本目 毅
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】野間 達也
【審査官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-295937(JP,A)
【文献】特開2015-205271(JP,A)
【文献】特開2008-062194(JP,A)
【文献】特開2013-227806(JP,A)
【文献】特開2014-152589(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1221119(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04G 23/08
B03C 3/28
E21F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵が発生する場所に沿って帯電性を有する材料で形成された防塵ネットを張設し、
前記防塵ネットに帯電水粒子を散布することで前記防塵ネットを帯電させ、クーロン力により前記粉塵を吸着するようにし
前記粉塵が前記防塵ネットに吸着されたのち、前記防塵ネットに散水することで前記防 塵ネットの帯電を解除すると共に前記防塵ネットを洗浄し、
このように前記防塵ネットを洗浄して前記防塵ネットによる前記粉塵の捕集を繰り返し て行なう、
ことを特徴とする粉塵の飛散防止方法。
【請求項2】
前記帯電水粒子の平均粒径は35μm未満である、
ことを特徴とする請求項1記載の粉塵の飛散防止方法。
【請求項3】
前記帯電水粒子は、ノズル部と、前記ノズル部に設けられた環状誘電電極部を含んで構 成された帯電水粒子噴出部から噴出され、
前記防塵ネットの表面電位の測定結果に基いて、前記帯電水粒子噴出部による前記帯電 水粒子の噴出の実行および停止を行なう、
ことを特徴とする請求項1記載の粉塵の飛散防止方法。
【請求項6】
前記帯電水粒子噴出部による前記帯電水粒子の噴出を、予め定められた第1の時間実行したのち、予め定められた第2の時間休止する動作を繰り返して実行する、
ことを特徴とする請求項3~5の何れか1項記載の粉塵の飛散防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉塵の飛散防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土工事や、トンネル掘削によって生じた掘削土の仮置き場などの作業現場では発生した粉塵が飛散すると、周辺環境に悪影響を与えることが懸念される。
そこで、従来から、作業現場に沿って防塵ネットを張設し粉塵を防塵ネットで捕集して粉塵の飛散を防止している。
しかしながら、従来の防塵ネットは粉塵の捕集効果が低く、また、防塵ネットで捕集した粉塵が風により巻き上げられて再飛散したり、防塵ネットの目合いを通過しなかった粉塵が防塵ネットの上から回り込んで飛散する不具合があった。
そこで、特許文献1には、防塵ネットに散水を行い防塵ネットに水分を付着させることで粉塵の捕集効果の向上を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-152589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、濡れた防塵ネットに粉塵粒子が接触することで粉塵が捕集されることから、粉塵の捕集効果を高めるため、防塵ネットの目合いを小さくすると、空気の流れに対する防塵ネットの抵抗が大きくなり、粉塵が防塵ネットの上方や側方から逃げて飛散してしまい、粉塵の捕集効果を高めるにも限界があった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、空気の流通を図りつつ粉塵の捕集効果を向上する上で有利な粉塵の飛散防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、粉塵が発生する場所に沿って帯電性を有する材料で形成された防塵ネットを張設し、前記防塵ネットに帯電水粒子を散布することで前記防塵ネットを帯電させ、クーロン力により前記粉塵を吸着するようにし、前記粉塵が前記 防塵ネットに吸着されたのち、前記防塵ネットに散水することで前記防塵ネットの帯電を 解除すると共に前記防塵ネットを洗浄し、このように前記防塵ネットを洗浄して前記防塵 ネットによる前記粉塵の捕集を繰り返して行なうことを特徴とする。
また、本発明は、前記帯電水粒子の平均粒径は35μm未満であることを特徴とする。
また、本発明は、前記帯電水粒子は、ノズル部と、前記ノズル部に設けられた環状誘電 電極部を含んで構成された帯電水粒子噴出部から噴出され、前記防塵ネットの表面電位の 測定結果に基いて、前記帯電水粒子噴出部による前記帯電水粒子の噴出の実行および停止 を行なうことを特徴とする。
また、本発明は、前記帯電水粒子は、ノズル部と、前記ノズル部に設けられた環状誘電電極部を含んで構成された帯電水粒子噴出部から噴出されることを特徴とする。
また、本発明は、空気流を形成する空気流形成部が設けられ、前記帯電水粒子噴出部は前記空気流形成部に複数設けられ、前記複数の帯電水粒子噴出部から噴出された前記帯電水粒子が前記空気流にのせられ前記防塵ネットに散布されることを特徴とする。
また、本発明は、前記帯電水粒子噴出部による前記帯電水粒子の噴出を、予め定められた第1の時間実行したのち、予め定められた第2の時間休止する動作を繰り返して実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、粉塵が発生する場所に沿って帯電性を有する材料で形成された防塵ネットを張設し、防塵ネットを帯電させるようにしたので、発生した粉塵を含む空気が防塵ネットに到達すると、粉塵は、帯電した防塵ネットにクーロン力により引き寄せられて吸着されるため、粉塵が効率よく防塵ネットに捕集される。一方、空気は、粉塵ネットの目合いを通過して防塵ネットの外側に流れ出す。
したがって、防塵ネットの目合いを大きくして空気の流通を確保しても、クーロン力により粉塵が効率よく捕集されるので、粉塵の捕集効率を向上する上で有利となる。
そのため、粉塵が防塵ネットの上方や側方から逃げて飛散する不具合いを防止でき、空気の流通を図りつつ粉塵の捕集効果を向上する上で有利となる。
また、いったん防塵ネットに捕集された粉塵は、クーロン力によって防塵ネットに吸着されているため、風が吹きつけても粉塵が防塵ネットから飛散することが抑制される。
また、本発明によれば、大掛かりな装置が不要で、かつ、簡単に短時間で確実に防塵ネットを帯電させることができ、防塵ネットの帯電作業に要するコストの抑制を図る上で有利となる。
また、本発明によれば、市販品を利用して防塵ネットを簡単に帯電させることができる。
また、本発明によれば、防塵ネットから離れた箇所から一度に広範囲の部分を帯電でき、また、帯電水粒子の到達距離を大きく確保できるので、防塵ネットが広範囲にわたる場合や防塵ネットの高さが大きくなる場合、防塵ネットの帯電を短時間で簡単に確実に行う上で有利となる。
また、本発明によれば、帯電水粒子が防塵ネットに散布された際に、防塵ネットに付着した帯電水粒子が瞬間的に蒸発し、防塵ネットの乾燥状態を維持できるので、防塵ネットを効率的に帯電させる上で有利となる。
また、本発明によれば、帯電水粒子噴出部による帯電水粒子の噴出を間欠的に行なうので、防塵ネットに付着した帯電水粒子の蒸発を促進でき、防塵ネットを効率的に帯電させる上で有利となる。
また、本発明によれば、防塵ネットの表面電位を粉塵が防塵ネットに効率的に捕集されるに足る値となるように防塵ネットの帯電を行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(A)は第1の実施の形態において防塵ネットに帯電水粒子が散布される状態を示す正面図、(B)は(A)の側面図である。
図2】帯電水粒子散布装置の構成を示すブロック図である。
図3】帯電水粒子噴出部の構成を示す断面図である。
図4】第2の実施の形態において使用される帯電水粒子散布装置の構成を示す斜視図である。
図5】第2の実施の形態において防塵ネットに帯電水粒子が散布される状態を示す正面図である。
図6】評価試験装置の構成図である。
図7】帯電された防塵ネットおよび帯電されていない防塵ネットの粉塵捕集率の比較結果を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明方法の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明方法を実施するために使用する装置の一例である帯電水粒子散布装置の構成について説明する。
図2に示すように、帯電水粒子散布装置10Aは、帯電水粒子噴出部12と、タンク14と、ポンプ16と、帯電化電源18と、制御部20とを含んで構成されている。
なお、図1(A)、(B)において、符号21は、タンク14、ポンプ16、帯電化電源18、制御部20が収容された筐体を示す。
【0009】
図3に示すように、帯電水粒子噴出部12は、帯電水粒子2を噴出させるものである。
帯電水粒子噴出部12は、ノズル部22と、ノズル部22に設けられた環状誘電電極部26とを含んで構成されている。
ノズル部22は、基部2202と、基部2202の先部に設けられたカバー部2204と、カバー部2204の中央に設けられた噴霧部2206とを備えている。
基部2202は円筒状を呈し、基部2202の半径方向内側の空間は水が供給される通路2208となっている。
ノズル部22の基部2202は、ねじ結合2210およびOリング2212を介して水供給管28に連結されている。なお、図2に示すように、水供給管28は、ホース30、ポンプ16、ホース32を介してタンク14に連結されている。
カバー部2204は、基部2202の先端に設けられ、基部2202よりも大きな外径で基部2202と同軸の円筒状を呈している。
【0010】
本実施の形態では、基部2202およびカバー部2204は絶縁性材料で一体的に形成されている。なお、基部2202およびカバー部2204は別体で構成されていてもよいが、少なくともカバー部2204は絶縁性材料で形成されていることが水粒子を帯電させるために必要である。
噴霧部2206は、基部2202及びカバー部2204と同軸の円筒状に形成され、カバー部2204の基部2202中央に配置されている。
噴霧部2206の内側の空間は通路2208に連通し、噴霧部2206の軸方向の一端は、カバー部2204の内周部に接続され、噴霧部2206の先端中央に水粒子を噴出する噴霧孔2214が形成されている。
本実施の形態では、水粒子の平均粒径が35μm未満となるように、言い換えると、水粒子がドライミストとなるように、噴霧孔2214が形成されている。
【0011】
環状誘電電極部26は、軸方向において噴霧孔2214に対して基部2202から離れる方向に離間したカバー部2204の部分に埋設されている。
環状誘電電極部26は、カバー部2204の全周にわたって延在している。
したがって、後述する帯電化電源18により環状誘電電極部26に帯電に必要な電圧を印加することで、噴霧孔2214から噴出される水粒子が帯電され、帯電水粒子噴出部12から平均粒径が35μm未満の帯電水粒子2が噴出される。
なお、帯電方式は誘電帯電方式やコロナ放電方式などの様々な方式があり、帯電水粒子噴出部12として従来公知の様々な構造が採用可能であり、本実施の形態では、帯電水粒子噴出部12として誘電帯電方式の市販品を使用している。
【0012】
また、帯電水粒子2の平均粒径は、帯電水粒子2が防塵ネット36(図1参照)に散布された際に、防塵ネット36に付着した帯電水粒子2が蒸発しやすく、防塵ネット36を帯電させる上で影響が無い大きさであればよい。
本実施の形態のように、帯電水粒子2の平均粒径が35μm未満であると、帯電水粒子2がドライミストとなるため、帯電水粒子2が防塵ネット36に散布された際に、防塵ネット36が湿潤状態となって放電することはなく、防塵ネット36に付着した帯電水粒子2は、防塵ネット36を帯電後その水分は瞬間的に蒸発し、防塵ネット36の乾燥状態を維持できるので、防塵ネット36を効率的に帯電させる上でより有利となる。
【0013】
図2に示すように、タンク14は水を貯留するものである。
ポンプ16は、タンク14からホース32を介して供給される水を、ホース30および水供給管28を介して帯電水粒子噴出部12のノズル部22に供給するものである。ポンプ16の動作の実行、停止は制御部20によって制御される。
帯電化電源18は、帯電水粒子噴出部12の環状誘電電極部26に帯電に必要な電圧(例えば7500V)を印加するものである。
本実施の形態では、環状誘電電極部26に正の電圧を印加することで、負に帯電させた帯電水粒子2を帯電水粒子噴出部12から噴出させるようにしているが、これとは逆に、環状誘電電極部26に負の電圧を印加することで、正に帯電させた帯電水粒子2を帯電水粒子噴出部12から噴出させるようにしてもよい。
制御部20は、ポンプ16の動作と停止、および、帯電化電源18による電圧の印加の実行と停止を制御するものであり、言い換えると、帯電水粒子噴出部12による帯電水粒子の噴出を制御するものである。
制御部20として以下のようなものが例示される。
【0014】
(1)制御部20は、ポンプ16および帯電化電源18を手動操作によりオン、オフ制御する押しボタンスイッチを備え、押しボタンスイッチの手動操作により防塵ネット36に対する帯電水粒子の散布を実行する。
【0015】
(2)制御部20は、第1の時間および第2の時間が予め設定可能なタイマーを備え、タイマーの動作に基いて、ポンプ16および帯電化電源18を、第1の時間オンさせたのち、第2の時間オフさせる動作を繰り返し、防塵ネット36に対する帯電水粒子の散布を間欠的に実行する。
この場合、帯電水粒子噴出部12による帯電水粒子の噴出を間欠的に行なうので、防塵ネット36に付着した帯電水粒子の蒸発を促進でき、防塵ネット36を効率的に帯電させる上で有利となる。
【0016】
(3)制御部20は、防塵ネット36の表面電位を測定する表面電位計と、表面電位計の測定結果に基いてポンプ16および帯電化電源18をオン、オフ制御するスイッチング回路とを備える。
具体的には、粉塵が防塵ネット36に効率的に捕集されるに足る防塵ネット36の表面電位を目標電位とした場合、制御部20は、表面電位計で測定された防塵ネット36の表面電位が目標電位未満の場合に、ポンプ16および帯電化電源18をオンさせ、防塵ネット36の表面電位が目標電位以上の場合に、ポンプ16および帯電化電源18をオフさせる。
この場合、防塵ネット36の表面電位を、粉塵が防塵ネット36に効率的に捕集されるに足る値となるように防塵ネット36の帯電を行なう上で有利となる。
【0017】
次に本実施の形態について説明する。
まず、図1(A)、(B)に示すように、土工事や、トンネル掘削によって生じた掘削土の仮置き場などの粉塵Dが発生する作業現場34に沿って帯電性を有する防塵ネット36を張設する。
防塵ネット36は、例えば、帯電性を有した網糸を編むことで形成されている。
帯電性を有する網糸の材料として、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニールなどの従来公知の様々な繊維が用いられる。
【0018】
図中、符号38は、作業現場34で例えば地盤Gの掘削作業を行うバックホウなどの建設機械を示す。
具体的に説明すると、パイプ材などからなる複数の支柱40を、作業現場34に沿って間隔をおいて地盤Gから起立させて設ける。
次いで、防塵ネット36を各支柱40の間に掛け渡して防塵ネット36と各支柱40とを不図示の取り付け部材を介して取り付ける。これにより防塵ネット36が地盤Gから起立した状態で張設される。
【0019】
防塵ネット36は、例えば、作業現場34の風下に設けてもよく、風上および風下の双方に設けてもよく、あるいは、作業現場34の周囲全周を覆うように設けてもよい。
あるいは、図1(B)に示すように、近隣に住宅42などが位置している場合は、粉塵Dが住宅42に飛散することを防止できるように、作業現場34と住宅42との間を仕切るように防塵ネット36を設けてもよい。
あるいは、防塵ネット36を各支柱40の上端に取り付け部材を介して取り付け、防塵ネット36によって作業現場34の上方を覆うように防塵ネット36を地盤Gに対向して張設してもよく、要するに、防塵ネット36は作業現場34で発生した粉塵Dを吸着、捕集できるように張設すればよい。
【0020】
次に、前述した帯電水粒子散布装置10Aを、張設された防塵ネット36の近傍に設置し、作業者は、帯電水粒子噴出部12を防塵ネット36に向けて把持し、制御部20によりポンプ16および帯電化電源18の動作を実行させる。
すると、帯電水粒子噴出部12から帯電水粒子2が防塵ネット36に向けて噴出され、帯電水粒子2が防塵ネット36に付着する。
帯電水粒子2が付着した防塵ネット36の部分は、帯電水粒子2の電荷により帯電する。本実施の形態では、帯電水粒子2が負に帯電しているため、防塵ネット36の部分は負に帯電する。
また、帯電水粒子2は、その平均粒径が例えば35μm未満のドライミストであることから、防塵ネット36に付着しても帯電水粒子2の水分は瞬間的に蒸発するため、防塵ネット36は帯電された乾燥状態が維持される。すなわち、防塵ネット36が水分を含んだ状態となって帯電が阻害されたり、帯電が解除されたりすることが防止されている。
防塵ネット36の全域にわたって帯電水粒子2が付着するように、帯電水粒子噴出部12を防塵ネット36に沿って移動させ、または、防塵ネット36の全域をカバーするように複数の帯電水粒子噴出部12を設け、防塵ネット36の全域を帯電させる。
【0021】
次に帯電された防塵ネット36の作用効果について説明する。
作業現場34において発生した粉塵D(粉塵Dの平均粒径は例えば35μm以下である)を含む空気が防塵ネット36に到達すると、粉塵Dは、帯電した防塵ネット36にクーロン力により引き寄せられて吸着されるため、粉塵Dが効率よく防塵ネット36に捕集される。一方、空気は、防塵ネット36の目合いを通過して防塵ネット36の外側に流れ出す。
したがって、防塵ネット36の目合いを大きくして空気の流通を確保しても、帯電した防塵ネット36のクーロン力によって粉塵Dが効率よく捕集されるので、粉塵Dの捕集効率を向上する上で有利となる。
そのため、粉塵が防塵ネット36の上方や側方から逃げて飛散する不具合いを防止でき、空気の流通を確保しつつ、粉塵Dの捕集効率を向上する上で有利となる。
また、粉塵Dの平均粒径が小さくなるほど、防塵ネット36に捕集されずに目合いを通過する粉塵Dの割合が増加するため、捕集効率を向上させることが難しい。これに対して本実施の形態では、帯電した防塵ネット36のクーロン力によって粉塵Dを吸着、捕集するため、平均粒径が小さい粉塵Dの捕集効率を向上する上で有利となる。
【0022】
また、いったん防塵ネット36に捕集された粉塵Dは、クーロン力によって防塵ネット36に吸着されているため、防塵ネット36に風が吹きつけても粉塵Dが防塵ネット36から飛散することが抑制されている。
また、防塵ネット36に散水することによって、防塵ネット36がアースされて帯電が解除され、クーロン力が消失するため、防塵ネット36に捕集された粉塵Dは、防塵ネット36から流れ落ち、防塵ネット36が洗浄される。そのため、防塵ネット36を再び帯電でき、クーロン力による粉塵Dの捕集を繰り返して行うことが可能となる。なお、防塵ネット36の洗浄は降雨によっても無論なされる。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に図4図5を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
第1の実施の形態では、帯電水粒子噴出部12から噴出された帯電水粒子2を直接防塵ネット36に散布する場合について説明したが、第2の実施の形態では、帯電水粒子噴出部12から噴出された帯電水粒子2を空気流にのせて防塵ネット36に散布する場合について説明する。
【0024】
図4に示すように、第2の実施の形態では、帯電水粒子散布装置10Bは、複数の帯電水粒子噴出部12と、空気流形成部44とを含んで構成されている。
空気流形成部44は空気流を形成するものである。この空気流は、帯電水粒子噴出部12から噴出された帯電水粒子2をのせて移動させ、作業現場34に沿って張設された防塵ネット36に散布させるものである。帯電水粒子2を空気流にのせて移動させることで、帯電水粒子2の到達距離を大きく確保できる。
空気流形成部44は、筒状のケーシング46と、ケーシング46の内部に配置されたファン48と、ケーシング46を上下に揺動可能に支持するフレーム50と、フレーム50の下部に設けられた複数の移動用キャスター52とを含んで構成されている。
ファン48は、ケーシング46の内部中央で支持されたモータ4802と、モータ4802により回転駆動される複数の羽根体4804とを含んで構成されている。
なお、このような空気流形成部44として従来公知の様々な構造が採用可能であり、本実施の形態では、市販品を用いている。
【0025】
帯電水粒子噴出部12は複数設けられ、一度に防塵ネット36の広範囲の部分が帯電されるように図られている。
各帯電水粒子噴出部12のノズル部22は、空気流形成部44のケーシング46にロッド54を介して水供給管56が配設され、複数のノズル部22の基部2202は水供給管56に連結されている。なお、水供給管56は、第1の実施の形態(図2)と同様に、ホース30、ポンプ16、ホース32を介してタンク14に連結されている。
このように複数のノズル部22が水供給管56に配置された状態で、複数のノズル部22はケーシング46の外周部でその周方向に等間隔をおいた箇所に配置されている。
【0026】
次に帯電水粒子散布装置10Bの使用方法について説明する。
図5に示すように、第1の実施の形態と同様に作業現場34に沿って防塵ネット36を張設する。なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態に比べて防塵ネット36が広範囲にわたり、また、防塵ネット36の高さが大きなものとなっている場合について説明する。
次いで、帯電水粒子散布装置10Bを、張設された防塵ネット36の近傍に設置し、防塵ネット36に向けて空気流が到達するように空気流形成部44の上下方向および水平方向の向きを調節する。
次いで、制御部20によりポンプ16および帯電化電源18の動作を実行させ、また、空気流形成部44のファン48のモータ4802を動作させる。
すると、複数の帯電水粒子噴出部12から噴出された帯電水粒子2が、空気流形成部44で形成された空気流にのせられて防塵ネット36に向けて移動され、防塵ネット36に付着する。
帯電水粒子2が付着した防塵ネット36の部分は、帯電水粒子2の電荷により帯電する。帯電水粒子2が防塵ネット36に付着しても防塵ネット36は湿潤状態にならず、帯電水粒子2の水分は瞬間的に蒸発することは第1の実施の形態と同様である。
防塵ネット36の全域にわたって帯電水粒子2が付着するように、帯電水粒子散布装置10Bを防塵ネット36に沿って移動させ、防塵ネット36の全域を帯電させる。
この場合、単一の帯電水粒子噴出部12ではなく複数の帯電水粒子噴出部12からの帯電水粒子2が防塵ネット36に付着するため、一度に広範囲の部分が帯電される。
【0027】
このような第2の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
また、第2の実施の形態では、帯電水粒子噴出部12を複数用い、それらから噴出された帯電水粒子2を、空気流形成部44によって形成した空気流にのせて防塵ネット36に散布するようにした。
したがって、防塵ネット36から離れた箇所から一度に広範囲の部分が帯電され、また、帯電水粒子2の到達距離を大きく確保でき、防塵ネット36が広範囲にわたる場合や防塵ネット36の高さが大きくなる場合、防塵ネット36の帯電を短時間で簡単に確実に行う上で有利となる。
【0028】
なお、実施の形態では、防塵ネット36の帯電を、防塵ネット36に帯電水粒子2を散布することで行う場合について説明したが、従来公知の様々な帯電方法で防塵ネット36の帯電を行うようにしてもよい。例えば、以下のような方法によって防塵ネット36の帯電を行ってもよい。
1)コロナ放電によってイオン風を生成する帯電装置を用い、イオン風を防塵ネット36に吹き付けることで防塵ネット36を帯電させる。
2)防塵ネット36に、絶縁性材料を擦りつけて摩擦帯電により防塵ネット36を帯電させる。
ただし、1)の場合は、防塵ネット36を帯電させるに足る風量のイオン風が必要となり、帯電装置が大掛かりなものとなる。
また、2)の場合は、防塵ネット36に絶縁材料を擦りつけるため、防塵ネット36を帯電させるための作業に手間がかかる。
これに対して、本実施の形態のように防塵ネット36の帯電を帯電水粒子2を散布することで行うようにすると、大掛かりな装置が不要で、かつ、簡単に短時間で確実に防塵ネット36を帯電させることができ、防塵ネット36の帯電作業に要するコストの抑制を図る上で有利となる。
【0029】
(評価試験)
本発明方法により帯電させた防塵ネット36と、帯電させていない防塵ネット36における粉塵捕集率の評価試験を行なった。
まず、評価試験を行なうための評価試験装置について説明する。
図6に示すように、評価試験装置60は、風洞部62と、ファン64と、粉塵発生部66と、風量計68と、粉塵計70A、70Bとを含んで構成されている。
風洞部62は、内径が300mmの円筒状を呈する本体部6202と、本体部6202の延在方向の一方の端部に接続され本体部6202から離れるほど内径が大きくなる拡径部6204が設けられている。
本体部6202の他方の端部は空気を取り入れる取り入れ口6206となっており、拡径部6204の本体部6202と反対側の端部は空気を排出する排出口6208となっている。
排出口6208には、排出口6208の全域を覆うように防塵ネット36が取着される。
【0030】
ファン64は、風洞部62の延在方向の中間部の内部に設けられ、風洞部62の一方の開口部6202から拡径部6206に向かって空気を流通させるものである。
粉塵発生部66は、風洞部62の内部において、ファン64の下流側の箇所に試験用の粉塵を供給するものであり、風洞部62の外部に設けられた本体6602と、本体6602から風洞部62の内部に引き込まれた粉塵供給用配管6604とを備えている。
風量計68は、風洞部62の外部において防塵ネット36の下流側の近傍に配置され、防塵ネット36を通過した直後の空気の風速を測定するものである。
粉塵計70A、70Bは、風洞部62の内部において粉塵供給用配管6604の先部の下流側で防塵ネット36の上流側に位置する測定点PAにおける粉塵濃度と、風洞部62の外部において防塵ネット36の下流側の近傍に位置する測定点PBにおける粉塵濃度とを測定するものである。
【0031】
評価用の防塵ネット36の仕様は以下の通りである。
ネット目合い:1mm
ネット素材:PE(ポリエチレン)
また、粉塵として、粒径10μm以下(JIS試験用粉体11種)のものを使用した。
防塵ネット36の帯電は、コロナ放電によって生成されたイオン風を防塵ネット36に吹き付けることで行った。
帯電された防塵ネット36の表面の電位は、-6.4~-9.0kVであった。
【0032】
上述した評価試験装置60を用い、帯電させた防塵ネット36と、帯電させていない防塵ネット36における粉塵の捕集率を風速を1.3m/s、2.3m/s、3.1m/sの3段階に変化させて測定した。
測定結果を図7に示す。
風速1~3m/sで比較すると、帯電させた防塵ネット36の粉塵捕集率は、帯電させていない防塵ネット36の粉塵捕集率の1.2~2.3倍であり、帯電させた防塵ネット36の粉塵捕集率が向上していることが確認された。
【符号の説明】
【0033】
D 粉塵
2 帯電水粒子
10A、10B 帯電水粒子散布装置
12 帯電水粒子噴出部
34 作業現場
36 防塵ネット
38 作業機械
40 支柱
42 住宅
44 空気流形成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7