(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】人工肩関節用の改良された関節窩アダプタ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/40 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
A61F2/40
(21)【出願番号】P 2021523402
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2020066285
(87)【国際公開番号】W WO2020249720
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】102019000009015
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515156197
【氏名又は名称】リマコーポレート・ソチエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】LIMACORPORATE S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Nazionale, 52 Villanova 33038 San Daniele del Friuli(UD), Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファットーリ、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ウルセラ、シモーネ
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/079104(WO,A2)
【文献】欧州特許出願公開第1591084(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/147163(WO,A1)
【文献】特表2018-509226(JP,A)
【文献】米国特許第9592128(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/30
A61F 2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解剖学的表面置換型人工関節からリバース型人工肩関節への変換を可能にするための関節窩アダプタ(1)であって、
自身の軸(X)を有する内部中空のピンとして構成され、関節窩アンカー(100)を介して肩甲骨(300)の関節窩(301)に固定されるように構成された少なくとも1つの固定用突出部(2)と、
前記固定用突出部(2)と一体のフランジ(4)と、
前記フランジ(4)と一体であり、前記固定用突出部(2)とは反対の方向に延在し、凸状の関節面(11)を備えたリバース型人工関節の関節コンポーネント(10)と結合されるように構成され、自身の長手方向軸(Y)を有する取付部(3)と
を備え、
前記固定用突出部(2)および前記取付部(3)が円錐台形状を有し、前記取付部の軸(Y)が前記固定用突出部の軸(X)に対して位置ずれしており、
前記フランジ(4)は、前記固定用
突出部(2)がそこから隆起している関節窩面(4a)を有する、関節窩アダプタ(1)。
【請求項2】
円錐台形状の前記固定用突出部(2)が、前記関節窩アンカー(100)に固定されるように構成され、前記関節窩アンカー(100)が、固定ねじ(30)を介して前記関節窩(301)に固定可能である、請求項1に記載のアダプタ(1)。
【請求項3】
前記関節窩アンカー(100)は、内部中空のピンであり、内側端(120)と、内部表面(112)によって画定される内部空洞(110)と連通する開放近位端(111)とを有し、前記アダプタ(1)の前記固定用突出部(2)が、前記内部空洞(110)の前記内部表面(112)と締り嵌めまたはモース円錐結合により結合することが可能な外部表面(2a)を備える、請求項2に記載のアダプタ(1)。
【請求項4】
前記外部表面(2a)が円錐状であり、前記関節窩アンカー(100)の空洞(110)の前記内部表面(112)も円錐状である、請求項3に記載のアダプタ(1)。
【請求項5】
前記関節窩アンカー(100)の前記内側端(120)が、前記内部空洞(110)と連通する孔(121)によって開放され、前記固定用突出部(2)が、前記関節窩アンカー(100)の前記孔(121)内に、ねじ締め中に係合することが可能な、第1の前記固定ねじ(30)を挿入するための突出部貫通孔(2c)を備える、請求項3または4に記載のアダプタ(1)。
【請求項6】
前記フランジ(4)が、前記関節窩(301)と接触するように構成され
た凸状の近位面(4a)と、前記近位面(4a)の反対側の遠位面(4b)とを備え、前記固定用突出部(2)が前記近位面(4a)から内側方向に延在しており、前記取付部(3)が前記遠位面(4b)から側方向に延在している、請求項1~5のいずれか1項に記載のアダプタ(1)。
【請求項7】
前記フランジ(4)が略球状キャップの形状を有しており、前記固定用突出部の軸(X)が前記近位面(4a)の周辺領域(7)と交差する、請求項6に記載のアダプタ(1)。
【請求項8】
前記フランジ(4)が略球状キャップの形状を有しており、前記取付部の軸(Y)が前記近位面(4a)の周辺領域(7)と交差する、請求項6または7に記載のアダプタ(1)。
【請求項9】
前記フランジ(4)が、前記関節窩(301)内に挿入することが可能な少なくとも1つの安定化骨ねじ(20、21)を通すための、前記近位面(4a)から前記遠位面(4b)まで前記フランジ(4)と交差する少なくとも1つの貫通穴(5、6a、6b、6c)を備える、請求項6~8のいずれか1項に記載のアダプタ(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの中心貫通孔(5)が実質的に、前記近位面(4a)の中心において形成された、請求項9に記載のアダプタ(1)。
【請求項11】
前記フランジ(4)が略球状キャップの形状を有しており、少なくとも1つの周辺貫通孔(6a、6b、6c)が前記近位面(4a)の周辺領域(7)において形成されている、請求項9または10に記載のアダプタ(1)。
【請求項12】
前記取付部(3)がねじ付きの円筒形空洞(43)を備え、前記リバース型人工関節の前記関節コンポーネント(10)が、前記円筒形空洞(43)と係合する第2の固定ねじ(31)により、前記取付部(3)と結びつけることが可能な、請求項1~11のいずれか1項に記載のアダプタ(1)。
【請求項13】
前記取付部(3)が、前記関節コンポーネント(10)の内部結合面(13a)と接触して結合可能な外部取付面(3a)を備える、請求項1~12のいずれか1項に記載のアダプタ(1)。
【請求項14】
前記外部取付面(3a)が円錐状であり、および前記内部結合面(13a)も円錐状である、請求項13に記載のアダプタ(1)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の関節窩アダプタ(1)、関節窩アンカー(100)、およびリバース型人工関節の凸状関節コンポーネント(10)を備えるリバース型人工肩関節。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバース型人工関節の凸状関節コンポーネントをインプラントするための関節窩アダプタに関する。
【0002】
本発明は、特に、解剖学的人工関節のアンカーが関節窩の周辺領域内に挿入されている場合に、リバース型人工関節への、いわゆる解剖学的表面置換型人工関節の変換において特別な有用性を見出す。以下の説明は、その説明を簡単にするためにこの特定の適用分野を参照して行う。
【0003】
本発明は、たとえば解剖学的人工関節の除去により、中心領域において骨組織を欠いている関節窩にリバース型人工関節の凸状コンポーネントを固定するために使用することも可能である。
【背景技術】
【0004】
よく知られているように、人工肩関節の分野では、ハイブリッド型またはコンバーチブル型と呼ばれる人工肩関節がすでに広く普及している。これらの人工肩関節は、複数の要素で構成されたモジュール式の人工関節から構成される。複数の要素を互いに組み合わせることで、リバース型または解剖学的な人工関節を得ることができ、後からアンカーを取り外すことなく、骨に固定されたアンカーに取り付けられた関節コンポーネントを交換するだけで、人工関節を解剖学的なものからリバース型のものに、またはその逆に変換することができる。
【0005】
一般的に使用されているハイブリッド型人工関節では、メタルバックと呼ばれる金属材料製の関節窩アンカーが使用される。アンカーは、フランジの近位面が骨に接触するまで、関節窩の中央に予め実質的に形成された孔にピンを挿入することで、関節窩に固定される。
【0006】
解剖学的人工関節の場合、ポリエチレンインサートが、フランジの遠位面上に固定される。
【0007】
リバース型人工関節上を移動してインサートが除去され、グレノスフィアと呼ばれる凸状の関節窩関節コンポーネントが、ピン内において軸方向に挿入されたアダプタを介在させることにより、金属製のバックに固定される。
【0008】
代替的な解決策は、関節窩に固定された、フランジのない、1つの中空ピンのみで構成された関節窩アンカーを提供する。解剖学的人工関節の場合、ピン関節窩アンカー内に挿入されることが意図されたピン部がそこから延在しているフランジで構成されたインサートが使用される。前述の解決策と同様に、リバース型人工関節上を移動してインサートが除去され、グレノスフィアがアダプタ上に取り付けられ、アダプタは、今度はピン内に軸方向に固定される。
【0009】
上述のアダプタは、関節窩アンカーのピンと結合され、グレノスフィアに結合された遠位端と位置合わせされた近位端を有する実質的に細長い形状を備えている。
【0010】
ピン型の関節窩アンカーは、対応するピン部を有する略円形のフランジインサートとともに、いわゆる(部分的な、または全面的な)表面置換型人工肩関節においても使用される。上記人工関節は、インサートの遠位面が周囲関節面の連続性を回復するように関節窩内に少なくとも部分的に挿入された関節窩インサートの使用を提供する。
【0011】
この綿密なインプラントモードは、「インレー」または、あるいは「インセット」として定義される。インサートは、既存の関節面とコンポーネント面との間の連続性を持たすために周囲の骨組織によって保持される。
【0012】
ピンアンカーおよびインサートは通常、前述の解剖学的人工関節に対して小型であり、標準的な関節窩コンポーネントをインプラントするのに有用な関節窩(glene)の中心部における骨の利用可能性が低い(たとえば、A2型関節窩形態)患者、もしくは、変形を有する関節窩の後傾があるために、骨の利用可能性が低い(たとえば、CまたはB3型関節窩形態)ことによって標準的な関節窩コンポーネントをインプラントするのに必要なミーリングが実現可能でないような患者において、または、関節窩の浸食もしくは構造が理由で、標準インプラント(非「インセット」)が、過剰な上腕骨外側化、および周囲軟組織の対応する過張力をもたらす場合に、関節窩骨欠損を治療するのに特に推奨される。上述の患者においては、上腕骨頭が過度に亜脱臼しないようにする必要がある。そうでなければ、「骨移植」技術を用いて関節部を修正するか、可能であれば、骨の利用可能性がある場合には、ミーリングによって適切な座を準備することを可能にする「拡張」型の関節窩を使用する必要がある。
【0013】
特に、これらの小型インプラントは、過剰に骨のミーリングを行うことなく、関節窩傾斜を部分的にまたは全面的に回復しようとするために関節窩の定められた領域において局所に配置することが可能である。
【0014】
最近では、表面置換型人工関節を検査する際に、リバース型人工関節をインプラントする必要がある場合は、インサートとピンアンカーの両方を除去し、リバース型人工関節のさらなる関節アンカーを関節窩に中心的に固定してインプラントし、それに結合しているグレノスフィアの中心を関節窩の中心と一致させるようにする。
【0015】
たとえば、Imascapの名義で出願された特許文献1は、リバース型人工関節のグレノスフィアの中心の位置を調節するための対向するオフセットピンを有する人工関節コンポーネントを含むリバース型人工関節インプラントを開示している。しかし、このインプラントは、リバース型人工関節用のみであり、人工関節の変換用に意図されているものでない。その理由は、関節窩内にインプラントされた、独立したピボットアンカーを利用していないからである。
【0016】
当業者がよく分かっているように、先行してインプラントされたピンアンカーの除去は、周囲骨の一部の除去を必要とし、よって、場合によっては、リバース型人工関節の安定した固定をより困難にするか、または不可能にもする。
【0017】
残念ながら、これらの場合には、表面置換型人工関節のピンアンカーをインプラントしたままにし、グレノスフィアアダプタをそうしたアンカー内に挿入することが可能であると仮定しても、従来技術によるグレノスフィアアダプタを使用することにより、そうしたピンが関節窩の中心に対してずらされた場合、グレノスフィアの中心は、関節窩の中心と位置合わせされなくなり、リバース型人工関節全体の誤った運動学特性が決定されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、従来技術を参照して報告された欠点を解消し、表面置換型人工関節が関節窩上のどこに配置されているかにかかわらず、関節窩アンカーを除去することなく、表面置換型人工関節からリバース型人工関節への正しい変換を可能にするような構造および機能上の特徴を有する、人工肩関節用の関節窩アダプタを提供することにある。
【0020】
本発明のさらなる目的はさらに、必ずしも関節窩の中心領域においてではなく、十分な骨組織を欠いている状況において、リバース型人工関節の凸状関節コンポーネントの正しい配置を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の基となる、解決策の考えは、偏心関節窩アダプタであって、関節窩に対する固定用突出部が、リバース型人工関節の凸状関節コンポーネント用の取付部に対して位置ずれしているが、既にインプラントされている関節窩アンカーとともに使用可能である偏心関節窩アダプタを提供することにある。有利には、固定用突出部は、関節窩アンカーを、関節窩の周辺位置において、または少なくとも中心ではない位置にインプラントされている場合にも、除去することなく、リバース型人工関節への変換を行うために、表面置換型人工関節のピン関節窩アンカーと、締り嵌めまたはモース円錐結合により、結合することが可能である。
【0022】
そうした解決策の考えに基づけば、解剖学的表面置換型人工関節からリバース型人工肩関節への変換を可能にするための関節窩アダプタは、自身の軸(X)を有する内部中空のピンとして構成され、関節窩アンカーを介して肩甲骨の関節窩に固定されるように構成された少なくとも1つの固定用突出部と、固定用突出部と一体のフランジと、フランジと一体であり、固定用突出部と反対の方向に延在し、凸状の関節面を備えたリバース型人工関節の関節コンポーネントと結合されるように構成され、自身の長手方向軸(Y)を有する取付部と、を備え、固定用突出部および取付部が円錐台形状を有し、取付部の軸(Y)が固定用突出部の軸(X)に対して位置ずれしており、フランジは、固定用突出部がそこから隆起している関節窩面を有する。
【0023】
好ましくは、固定用突出部は、関節窩アンカーに固定されるように構成され、関節窩アンカーは、関節窩の中心に対してずれた位置において関節窩に固定可能である。
【0024】
関節窩アンカーは有利には、関節窩の関節面の骨欠損部においてポリマーインサートを固定して、損傷した関節面を回復するために表面置換型人工関節において使用されるものと同じであり得る。
【0025】
このようにして、表面置換型人工関節は、関節窩アンカーを、それが関節窩の非中心位置においてインプラントされている場合にも除去することを必要とすることなく、アダプタにより、リバース型人工関節への変換を行うことが可能である。固定用突出部と取付部との間の位置ずれは実際に、有利には、関節窩の中心において、または、肩甲上腕関節の骨形態、もしくは適切な特定の臨床バイオメカニクス上の必要性によって、より好都合とみなされる場所においてリバース型人工関節の凸状関節コンポーネントの中心を位置付けるように決めることが可能である。
【0026】
アダプタは実際には、異なる寸法の異なるサイズで、固定用突出部と取付部との間の異なる位置ずれで設けることが可能である。
【0027】
あるいは、アダプタは、有利には、関節窩の中心領域内に骨組織を欠いている場合にリバース型人工関節をインプラントするために使用することが可能である。そうした場合には、関節窩アンカーは関節窩の周辺領域内にインプラントすることが可能であり、グレノスフィアをアダプタにより取り付けることが可能である。
【0028】
固定用突出部は、円錐状の結合により、ならびに/またはアンカー内の突出部およびねじと交差する固定ねじにより、関節窩アンカーに結合され得る。
【0029】
同様に、取付部は、円錐状の結合、および/または取付部内の凸状関節コンポーネントおよびねじと交差する固定ねじにより、凸状関節コンポーネントに結合され得る。
【0030】
アダプタにはさらに、有利には、関節窩と接触するように構成された近位面と、近位面とは反対側の遠位面とを備えるフランジを、内側方向に近位面から延在する固定用突出部および側方向に遠位面から延在する取付部とともに設けることが可能である。
【0031】
フランジは、関節窩内に挿入することが可能な少なくとも1つの安定化骨ねじを通すための、近位面から遠位面までフランジと交差する貫通孔をさらに備え得る。
【0032】
フランジはさらに、略球状キャップを有し、ならびに/または、外周に近い周辺領域内の少なくとも1つの貫通孔、および/もしくは、外周から遠い中心領域内の少なくとも1つの貫通孔を設け得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明によって提供される関節窩アダプタの遠位部の斜視図を示す。
【
図2】
図1の関節窩アダプタの近位部の斜視図を示す。
【
図6】
図5の線L-Lに沿って見た長手方向断面図を示す。
【
図7】
図3の線K-Kに沿って見た長手方向断面図を示す。
【
図8】リバース型人工関節の凸状関節コンポーネント、ピン関節窩アンカー、および安定化骨ねじと、
図1のアダプタとを組み合わせたアセンブリの近位部の図を示す。
【
図9】分解された、
図8のアセンブリの近位部の図を示す。
【
図10】
図8の線A-Aに沿って見た、アダプタおよび関節窩アンカーの長手方向断面図を示す。
【
図11】
図9の線B-Bに沿って見た、アダプタの、および関節窩アンカーの長手方向断面図を示す。
【
図15】リバース型人工関節の凸状関節コンポーネントと協働する、
図1のアダプタでできたアセンブリの近位部の図を示す。
【
図16】分解された、
図15のアセンブリの近位部の図を示す。
【
図17】
図15の線F-Fに沿って見た長手方向断面図を示す。
【
図18】
図16の線G-Gに沿って見た長手方向断面図を示す。
【
図19】リバース型人工関節の凸状関節コンポーネントおよび中心安定化骨ねじと、
図1のアダプタとを組み合わせたアセンブリの近位部の図を示す。
【
図20】分解された、
図19のアセンブリの近位部の図を示す。
【
図21】
図19の線C-Cに沿って見た、アダプタの、および中心ねじの長手方向断面図を示す。
【
図22】
図20の線D-Dに沿って見た、アダプタの、および中心ねじの長手方向断面図を示す。
【
図23】周辺安定化骨ねじと、
図1のアダプタとを組み合わせたアセンブリの近位部の図を示す。
【
図24】分解された、
図23のアセンブリの近位部の図を示す。
【
図25】
図23の線N-Nに沿って見た長手方向断面図を示す。
【
図27】本発明によるアダプタにより、リバース型人工関節への変換を行うことが可能な第1の組立てられた表面置換型人工関節の近位部の斜視図を示す。
【
図29】
図28の線B-Bに沿って見た長手方向断面図を示す。
【
図30】分解された、
図27の表面置換型人工関節の近位部の斜視図を示す。
【
図31】
図30の表面置換型人工関節の長手方向断面図を示す。
【
図32】インプラントされた、
図28の表面置換型人工関節を有する肩甲骨モデルの矢状断像を示す。
【
図33】
図32の線A-Aに沿って見た長手方向断面図を示す。
【
図34】インプラントされた、
図28の表面置換型人工関節の関節窩アンカーのみを有する肩甲骨モデルの矢状断像を示す。
【
図35】
図34の線A-Aに沿って見た長手方向断面図を示す。
【
図36】
図1の関節窩アダプタが結合され、インプラントされた、
図34の関節窩アンカーを有する肩甲骨モデルの矢状図を示す。
【
図37】
図1の関節窩アダプタが結合され、インプラントされた、
図34の関節窩アンカーを有する肩甲骨モデルの冠状図を示す。
【
図38】
図36の線B-Bに沿って見た長手方向断面図を示す。
【
図39】本発明によるアダプタにより、リバース型人工関節への変換が可能な第2の組立てられた表面置換型人工関節の近位部の斜視図を示す。
【
図40】分解された、
図39の表面置換型人工関節の近位部の斜視図を示す。
【
図42】
図41の線B-Bに沿って見た長手方向断面図を示す。
【
図44】
図43の線B-Bに沿って見た長手方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
これらの図、特に
図1~7を参照すれば、リバース型人工肩関節への、表面置換型人工肩関節の簡単な、および正しい変換を可能にするために本発明によって提供される関節窩アダプタ1を、符号1で大局的に、および概略的に示す。
【0035】
より一般的には、そうしたアダプタは、関節窩アンカーが、既に固定されているか、または関節窩の非中心領域内に骨組織がないことが理由で固定しなければならない場合において、リバース型人工関節の関節窩関節コンポーネントをインプラントするために使用することが可能である。このことは、関節窩の中心に対する、関節窩関節コンポーネントの中心のずれが必要である場合に、関節窩に対して中心関節窩アンカーとともにそれをいずれにせよ使用することの可能性を明らかに排除する訳でない。
【0036】
本説明の残りの部分では、この関節窩アダプタ1は、より簡単な、アダプタ1との語で表すものとする。
【0037】
下記の適用例では、アダプタ1は、関節窩アンカー100に固定されることが意図され、関節窩アンカー100は、肩甲骨300の関節窩301内で、特に、関節窩301の中心に対してずれた位置において、固定可能である。
【0038】
以下に示す例から明らかになるように、アダプタ1は、表面置換型人工関節の関節窩アンカー100が関節窩内の中心からずれた(decentralized)位置に固定される場合において、表面置換型人工関節400、400’のリバース型人工関節への変換を行う場合に特に有用である。このことは、関節窩アンカー100が従来の解剖学的人工肩関節のアンカー、または、アダプタ1により、リバース型人工関節をインプラントするために使用されるアンカーであり得ることの可能性を明らかに排除する訳ではない。
【0039】
図27~31は、表面置換型人工関節400の2つの主要コンポーネント、すなわち、アダプタ1の固定用突出部2がその中で固定可能なピンアンカー100と、そのような関節窩アンカー100内でも固定可能なインサート200とを示す。
【0040】
関節窩アンカー100は、内部が中空のピンを有するタイプのものであり、開放近位端111からテーパ状の内側端120へ延在している。近位端111は、内側端120を通過する内側孔121内で合流する内部空洞110に連通する。近位開口、内部空洞、および内側孔は、関節窩アンカー100の共通の長手方向対称軸Jに沿って同心円状に連続して存在している。以下で明らかになるように、内側孔121は、ねじ締め中に第1の固定ねじ30を係合させるために内側にねじが切られている。
【0041】
内部空洞110は、内側端120の方向において空洞の内径の削減をもたらす、アンカー軸Jに対して傾いた内部円錐表面112を有する締り嵌めまたはモース円錐形結合により、境界が定められる。
【0042】
表面置換型人工関節のインサート200は、インサートフランジ201を有しており、そこから、締り嵌めまたはモース円錐結合により、関節窩アンカー100の内部空洞110と結合することが可能なインサートピン202が延在している。インサート200は、側方向において内部空洞110と接続され、内側方向において孔121と接続される、関節窩アンカー1の環状内側陥凹115内にスナップ嵌めで受容されるインサート内側エッジ203をさらに備えている。歯204が、フランジ201近くに配置されており、関節窩アンカー1の近位端111における対向する切欠き116により、インサート200の回転を阻止するように構成される。
【0043】
インサート200は、「ボタン状」と呼ばれる略円形の形状を有する。そうしたインサート200は通常、欠損を有する関節窩の定められた領域内に配置することが可能であるように小型であり得る。
【0044】
関節窩の大部分に及ぶ関節窩骨欠損の場合、通常の「オンレー」解剖学的人工関節の代替策として、第2の表面置換型人工関節400’を使用することができるが、この人工関節は、上述の表面置換型人工関節400とは異なり、第2のより大きなインサート200’を採用しており、特に異なる形状を有している。
【0045】
また、インサート200’は、関節窩内に深くインプラントされるように、および周囲の骨によって保持されるように構成された「インレー」型のものである。
【0046】
この目的のために、
図39~44に示すインサート200’は、略洋梨状の形状を有している。
【0047】
すなわち、インサート200’は、互いに接合された第1の略半円部分201a’および第2の略半円部分201b’を備え、第1の部分は第2の部分のものよりも小さな曲率半径を有している。
【0048】
インサート200’を収容するための関節窩は、一般的な「オンレー」解剖学的人工関節用のインサートと比較して、深さ方向により多くの骨組織を除去する一方で、インサートの周囲の骨を残すことによって作られる。こうして骨を残すことは、より大きなインプラントを伴う人工関節検査の場合に特に有利であり得る。インサート200’は、少なくとも1つの周辺安定化要素205’、好ましくは、第1の部分201a’における1つ、およびインサートピン202と同じ方向において延在している第2の部分201b’における1つを備え得る。安定化要素205’は実質的に、インサート200’を骨にさらに固定するように骨内にセメント固定するように構成されたピンである。
【0049】
表面置換型人工関節400、400’をリバース型人工関節へ変換する場合には、アダプタ1は、リバース型人工関節の関節窩関節コンポーネント10をインプラントするために、関節窩アンカー100を除去する必要がなく、有利に使用することが可能である。特に、以下で明らかになるように、関節窩アンカー100からインサート200を抜き出して、関節窩アンカー100内にアダプタ1の突出部2を結合することで十分である。
【0050】
アダプタ1を使用することによる変換は特に、関節窩アンカー100が関節窩301の周辺位置内に挿入される場合に有利であるが、それは、固定用突出部と取付部との間の位置ずれのおかげで、関節窩関節コンポーネント10を、関節窩301の中心に一致させることが可能であるからである。しかし、関節窩アンカー100が中心位置においてインプラントされた場合にも、アダプタ1は、リバース型人工関節の関節コンポーネントをたとえば、より下方に中心からずらすために使用することが可能である。
【0051】
アダプタ1は、構造的に独立しており、取付部3と一体で、かつ取付部3とは反対側にある少なくとも1つの固定用突出部2を備える。固定用突出部2および取付部3はフランジ4と一体であり、フランジ4に対して反対の方向に延在している。
【0052】
固定用突出部2は、以下では軸Xと呼ばれる、自身の長手方向軸を有しており、および、関節窩アンカー100の内部空洞110内に挿入されるように構成される。
【0053】
取付部3は、軸Yと呼ばれる、自身の長手方向軸を有しており、グレノスフィアとして知られている、リバース型人工関節の凸状関節窩関節コンポーネント10と結合するように構成される。
【0054】
固定用突出部2の軸Xおよび取付部3の軸Yは有利には、互いに位置がずれている。一実施例では、そうした軸XおよびYは、互いに平行でもある。
【0055】
このようにして、アダプタ1は、関節窩による制約がもたらされる点、およびグレノスフィアが取り付けられる点が位置ずれすることを可能にする。骨による制約がもたらされる点が関節窩の周辺領域内に配置された場合、アダプタは、固定用突出部と取付部との間の位置ずれが、たとえば、関節窩の中心などの選択された点において、グレノスフィアの中心を有するような大きさにし、これにより、人工肩関節の正しい運動学特性を保証し得る。場合によっては、いわゆる「肩甲切痕」を削減するために、グレノスフィアの中心を関節窩に対して、たとえばわずかに下方にずらすことが有用であり得る。
【0056】
フランジ4は、円形の周縁部を有する略球形のキャップ形状であり、固定用突出部2側に凸部を有し、取付部3側に凹部を有する。固定用突出部2は、フランジ4と一体化されており、フランジ4の中心からずれた領域内で、フランジ4の周縁部近くでそこから突出して形成される。同様に、取付部3は、フランジ4と一体化される一方で、フランジ4の反対側で、フランジ4の周縁部になお近い、フランジ4の中心からずれた領域内で形成され、これは以下にさらに詳細に説明する通りである。
【0057】
フランジ4は特に、小型であり、固定用突出部2の、および取付部3のそれぞれの底部よりもわずかに広いが、いずれにせよ、軸Xと軸Yとの間の位置ずれを保証するようになっている。
【0058】
固定用突出部2は、内部表面112との円錐状の結合により、関節窩アンカー100の内部空洞110内に挿入することが可能な外部表面2aを備える。このことは、当該技術分野において知られている異なる結合タイプにおいてそれを使用する可能性を排除するものでない。
【0059】
外部表面2aは特に、内側方向において減少する外径により、円錐台を画定する。
【0060】
固定用突出部2には、関節窩アンカー100の内部空洞110内に固定用突出部2が挿入される場合に、ねじ締め中に内側孔121と係合することが可能なねじ山を有する第1の固定ねじ30をその中に挿入することが可能な突出部貫通孔2cが軸方向に設けられている。このようにして、アダプタ1は、関節窩アンカー100に固定され、関節窩アンカー100の内部112、および固定用突出部2の外部2aそれぞれの円錐状表面間の接触を維持する。
【0061】
このことは、代替的な実施形態において、固定用突出部が、円錐状の結合のみにより、もしくは、関節窩アンカー100内、または骨内に直接、固定ねじのみにより固定されることの可能性を排除するものでない。
【0062】
取付部3はさらに、遠位方向に減少している外径を有する外部取付面3aによって画定された円錐台形状を有する。
【0063】
取付部3は、取付部3aの遠位端へ自ら開放している円筒形行き止まり空洞43を備える。そうした円筒形空洞43は、リバース型人工関節の関節窩関節コンポーネント10をアダプタ1に固定するための第2の固定ねじ31をねじ締め中に受容するように構成された内部ねじ山43aを有する。
【0064】
取付部3と結合可能なリバース型人工関節の関節窩関節コンポーネント10の例は、遠位凸状関節面11および近位結合部12を有するいわゆるグレノスフィアで構成されている(たとえば
図15~18を参照されたい)。
【0065】
結合部12は、アダプタ1の取付部3の円錐状の結合による挿入を可能にするような内部プロファイルを有する内部結合面13aを有する結合空洞13を備える。
【0066】
このことは、他のタイプの結合を使用することの可能性を排除するものでない。
【0067】
結合空洞13は、凸状関節コンポーネント10の遠位凸状関節面11において得られる開口14内で遠位に合流する。
【0068】
次いで、第2の固定ねじ31は関節窩関節コンポーネント10の結合空洞13内に挿入された場合にそれがアダプタ1の円筒形空洞43内のねじ締め中に係合するまで結合空洞13を介して開口14内に挿入することが可能である。
【0069】
このことは、代替的な実施形態において、取付部がリバース型人工関節の関節窩関節コンポーネントに対して、円錐状の係合によってのみ、または固定ねじによってのみ固定されることの可能性を排除するものでない。
【0070】
前述したように、アダプタ1は、先行して作られた関節窩301と接触するように構成された凸状近位面4aおよび近位面4aの反対側の凹状遠位面4bを有するフランジ4をさらに備える。複数の代替的な実施形態は明らかに、遠位面および/または近位面の異なる構造をもたらし得る、たとえば、それらは平面であり得る。
【0071】
固定用突出部2は近位面4aから内側に延在している一方で、取付部3は遠位面4bから反対方向において外側に延在している。
【0072】
フランジ4には、対応する安定化骨ねじ20、21を関節窩301内に挿入するための、近位面から遠位面へ延在している少なくとも1つの貫通孔5、6a、6b、6cが交差している。
【0073】
アダプタ1は、略円形の外周プロファイルを有する略球状のキャップ形状を有する。
【0074】
本開示の考えられる複数の実施形態の1つでは、フランジ4の遠位面4bは、2つの領域、すなわち、円形中心領域8を取り囲む周辺領域7に分割されている。
【0075】
取付部3の円筒形空洞43および固定用突出部2の突出部貫通孔2cが、そうした周辺領域7に配置されるように、取付部軸Yおよび固定用突出部軸Xは周辺領域7に交差している。代替策として、2つの軸Xまたは軸Yの一方は中心であり得る。
【0076】
周辺領域7では、フランジ4を関節窩301にさらに固定するために、対応する周辺安定化骨ねじ20を挿入するための周辺貫通孔6a、6b、6cが得られる。
【0077】
中心円形領域8において、関節窩301にフランジ4をさらに固定するために、中心安定化骨ねじ21を挿入するための、軸Xおよび軸Yに対して平行な中心孔軸を有する中心貫通孔5が得られる。
【0078】
次に、
図32~38を参照して、アダプタ1を使用することにより、表面置換型人工関節400からリバース型人工関節への変換を行う方法を説明する。
【0079】
同様の方法で、表面置換型人工関節によって使用される関節窩アンカーと同様の関節窩アンカーを使用する解剖学的人工関節も変換することが可能である。
【0080】
図32~33は、関節窩アンカー100内にスナップ嵌めで挿入されるインサート200を有する肩甲骨300の関節窩301内にインプラントされた表面置換型人工関節400を示し、関節窩アンカー100は、骨内に形成された孔内に固定される。
【0081】
リバース型人工関節へ移行するためには、
図34~35に示すように、関節窩アンカー100が関節窩301内にインプラントされたままの関節窩アンカー100からインサート200を除去すれば十分である。
【0082】
次いで、関節窩アンカー100の内部空洞110内にアダプタ1の固定用突出部2を挿入し、フランジ4の近位面4aを関節窩301に接着させることにより、関節窩アダプタ1は関節窩アンカー100に固定される。
【0083】
次いで、ねじ締め中に内側端120の内側孔121が係合されるまでアンカー100の開放端110において第1の固定ねじ30を挿入することにより、固定用突出部2をアンカー100にさらに固定することが可能である。
【0084】
周辺安定化ねじ20をそれぞれの周辺貫通孔6a、6b、6c内に挿入し、安定化ねじ21を中心貫通孔5内に挿入することにより、アダプタ1のフランジ4を関節窩301においてさらに固定することが可能である。
【0085】
最後に、関節窩関節コンポーネント10の結合内部空洞13内に取付部3を挿入することにより、リバース型人工関節の関節窩関節コンポーネント10はアダプタ1の取付部3に固定される。
【0086】
次いで、アダプタ1の取付部2の結合空洞13を介して、関節コンポーネント10の開口14において第2の固定ねじ31を、それが円筒形空洞43内にねじ締め中に係合するまで挿入することにより、関節窩関節コンポーネント10をアンカー100にさらに固定することが可能である。
【0087】
本発明による関節窩アダプタが、意図された目的を達成し、主なものが以下に列挙されるそれらの種々の利点を実現することが、前述の説明から明らかに浮かび上がる。
【0088】
基本的には、本発明の解決策によれば、関節窩アダプタの固定用突出部が、リバース型人工関節の凸状の関節コンポーネント用の取付部と位置合わせされていないことが提供されている。このようにして、固定用突出部と取付部との間の位置ずれを好都合に、必要な大きさにすることによって、位置合わせされていない関節コンポーネントの中心を関節窩アンカーに対するアダプタの固定点に位置決めすることが可能である。
【0089】
この解決策は、特に、表面置換型人工関節の関節窩アンカーが関節窩の周辺領域内に、または少なくとも中心ではない位置にインプラントされる場合に、簡単、高速、かつわずかに侵襲的な方法で表面置換型人工関節をリバース型人工関節へ変換するのに特に有用である。
【0090】
本発明によるアダプタを使用すれば、表面置換型人工関節の関節窩アンカーの除去を必要とすることなくリバース型人工関節をインプラントすることができる。したがって、リバース型人工関節の関節コンポーネントの中心を関節窩の中心に合わせることができ、また、アダプタ1を好都合に回転させることで、臨床上の必要性に応じて別の位置に配置することができ、その結果、リバース型人工肩関節の正しい運動学特性が保証される。
【0091】
このように、解剖学型からリバース型へ人工関節の変換することで、骨に関して、より低侵襲で、より保守的な方法で最も好都合な位置においてグレノスフィアの軸を位置決めし直し、しっかりと骨結合されたピンアンカーを所定の位置に残しとどめることを可能にする。
【0092】
変換する場合には、関節窩アンカーからインサートを除去し、アンカー内にアダプタの固定用突出部を結合することで十分である。その後、リバース型人工関節の関節コンポーネントが取付部に固定される。
【0093】
アダプタは、関節コンポーネントの正しい位置決めを行うためにインプラント中に固定用突出部と取付部との間の最適な位置ずれを外科医が選ぶことを可能にするように2つ以上のサイズで提供され得る。
【0094】
アダプタはさらに、関節窩の中心領域が骨組織を欠いている状況においても、関節窩アンカーによりリバース型人工関節をインプラントするために使用することが可能である。このような場合には、関節窩アンカーは、より多くの骨が存在している、関節窩の周辺領域内にインプラントすることが可能であり、本発明による関節窩アダプタにより、リバース型人工関節の凸状関節コンポーネントを正しく位置決めすることが可能である。