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特許7152613ゴキブリ類駆除用エアゾール、及びゴキブリ類駆除方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ゴキブリ類駆除用エアゾール、及びゴキブリ類駆除方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/06 20060101AFI20221004BHJP
   A01N 53/08 20060101ALI20221004BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20221004BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A01N25/06
A01N53/08 125
A01N53/08 100
A01N53/08 110
A01P7/04
A01M7/00 S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021545398
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2021000262
(87)【国際公開番号】W WO2021157271
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020018201
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020100597
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼林 良輔
(72)【発明者】
【氏名】原田 悠耶
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 太洋
(72)【発明者】
【氏名】向永 真也
(72)【発明者】
【氏名】猪口 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】川尻 由美
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-170140(JP,A)
【文献】特開2008-156235(JP,A)
【文献】特開2019-104830(JP,A)
【文献】特開2018-008947(JP,A)
【文献】特開2018-012676(JP,A)
【文献】特開2010-280633(JP,A)
【文献】特開2019-104708(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078219(WO,A1)
【文献】特開2011-063576(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117160(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/133318(WO,A1)
【文献】化学大辞典 6 縮刷版,1963年12月15日,pp.900-901
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
A01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30℃における蒸気圧が1.5×10-3mmHg未満である殺虫成分及び溶剤を含有するエアゾール原液と、噴射剤とを、定量噴射バルブを備えたエアゾール容器に充填してなり、屋内で空間に向けた噴射に用いるゴキブリ類駆除用エアゾールであって、
前記殺虫成分は、ペルメトリン、シペルメトリン、シフェノトリン、シフルトリン、及びトラロメトリンからなる群から選択される一つであり、
前記溶剤は、エタノールからなり
前記エアゾール原液は、20℃における比重が0.82~1.25であり、10℃における粘度η10が3.2~60.0mPa・sであり、30℃における粘度η30と10℃における粘度η10との比率η30/η10が0.60~0.90であり、
噴口の数は1個であり、
前記定量噴射バルブは、一回当たりの噴射容量が0.1~0.9mLであるゴキブリ類駆除用エアゾール(但し、隙間に向けた噴射に用いるゴキブリ類駆除用エアゾール、及び塗布に用いるゴキブリ類駆除用エアゾールを除く)
【請求項2】
前記エアゾール原液の20℃における比重をpとし、前記比率η30/η10をqとしたとき、(p)・(q)が0.17~1.00である請求項1に記載のゴキブリ類駆除用エアゾール。
【請求項3】
30℃における蒸気圧が1.5×10-3mmHg未満である殺虫成分及び溶剤を含有するエアゾール原液と、噴射剤とを、定量噴射バルブを備えたエアゾール容器に充填してなるゴキブリ類駆除用エアゾールを用いて噴射処理するゴキブリ類駆除方法であって、
前記殺虫成分は、ペルメトリン、シペルメトリン、シフェノトリン、シフルトリン、及びトラロメトリンからなる群から選択される一つであり、
前記溶剤は、エタノールからなり
前記エアゾール原液は、20℃における比重が0.82~1.25であり、10℃における粘度η10が3.2~60.0mPa・sであり、30℃における粘度η30と10℃における粘度η10との比率η30/η10が0.60~0.90であり、
前記ゴキブリ類駆除用エアゾールの噴口の数は1個であり、
前記定量噴射バルブは、一回当たりの噴射容量が0.1~0.9mLであり、
前記ゴキブリ類駆除用エアゾールを屋内で空間に向けて噴射するゴキブリ類駆除方法(但し、前記ゴキブリ類駆除用エアゾールを隙間に向けて噴射するゴキブリ駆除方法、及び前記ゴキブリ類駆除用エアゾールを塗布するゴキブリ類駆除方法を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺虫成分及び溶剤を含有するエアゾール原液と、噴射剤とを、定量噴射バルブを備えたエアゾール容器に充填してなる害虫防除用エアゾール、及び当該害虫防除用エアゾールを用いた害虫防除方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床面や壁を徘徊するゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫を対象とし、匍匐害虫が生息する場所や通り道に施用するタイプの殺虫剤としては、(1)燻煙剤、(2)全量噴射型エアゾール、(3)塗布型エアゾール、及び(4)ベイト剤が代表的で、それぞれ剤型上の特長を有している。
【0003】
(1)燻煙剤や(2)全量噴射型エアゾールは、薬剤を一気に室内の隅々まで放散し、所定時間室内を密閉して薬剤濃度を高める方式であり、その間、人が入室できないことから医薬品の範疇に入るものである。これらの製剤は、放散された薬剤によって、処理空間全体において匍匐害虫に対して高い駆除効果を奏する、所謂、空間処理であることが特徴である。しかしながら、これらの製剤は、処理前に電気器具類や食器類を養生し、また処理後には噴射沈降物の清掃作業が必要となるなどの手間を要し、さらに、薬剤の安全性に格別留意する必要があることなどから、手軽に頻繁に採用し得る剤型とは言い難い。
【0004】
一方、局所的に面処理する(3)塗布型エアゾールや、点処理の(4)ベイト剤は、人体に対する作用が緩和な医薬部外品に該当し、(1)燻煙剤や(2)全量噴射型エアゾールに較べると使い易いが、空間処理でないため薬剤と害虫との接触効率が劣り、必ずしも効率的な駆除方法を提供できるものでもない。
【0005】
このように、従来、空間処理でありながら医薬部外品に該当する匍匐害虫用防除剤の開発は困難と考えられてきた。
【0006】
本発明者らは、先に、空間処理剤であって、医薬部外品に該当する匍匐害虫用防除剤を開発するにあたり、(1)燻煙剤や(2)全量噴射型エアゾールのような製剤ではなく、定量噴射型のエアゾールを用いて噴霧処理すれば実用上十分な防除効果を奏し、人が居る状況下でも使用可能な安全性の高い製剤を目指して鋭意検討を行った。その結果、匍匐害虫のみならず、噴霧当日は飛翔害虫にも有効な害虫、ダニ防除方法(特許文献1を参照)を発明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-63576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の害虫、ダニ防除方法は、匍匐害虫だけではなく、飛翔害虫に対しても実用的な駆除効果を実現することを課題とするものであり、実用性が高い。当該害虫、ダニ防除方法では、エアゾールの噴射特性として、噴射後の噴霧粒子は、浮遊性粒子と、壁面等への付着並びに床面への沈降に関わる付着性粒子とに形成される。本発明者らは、空間処理に用いる定量噴射型のエアゾールにおいて、匍匐害虫のなかでも特にゴキブリ等に対する防除効果をさらに向上させるべく、鋭意検討を行った。
【0009】
検討の中で、空間処理において、匍匐害虫のなかでも特にゴキブリ等に対する防除効果を高めるには、付着性粒子を特許文献1の噴射特性と比較してより一層優先的となし、付着性粒子の中でも壁面への付着よりも、床面への沈降に関わる粒子の比率を高め、さらに、床面全体に均一に付着させることが重要であるとの考えに至った。
【0010】
エアゾールは噴射後、噴射剤の気化熱による影響で、エアゾール原液の温度が低下する。本発明者らは、この温度による粘度変化、すなわち、エアゾール原液の温度による粘度比率が、沈降に関わる付着性粒子の挙動を決定する上で、重要なファクターであることを知見し、試行錯誤を重ね試験を繰り返した結果、前記エアゾール原液の比重と温度による粘度比率を最適の範囲に特定することで、本発明の完成に至った。
【0011】
本発明の目的は、空間噴霧に用いる定量噴射型のエアゾールであって、匍匐害虫に対する防除効果を向上させた害虫防除用エアゾールを提供することであり、さらには、当該害虫防除用エアゾールを用いた害虫防除方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明に係る害虫防除用エアゾールの特徴構成は、
30℃における蒸気圧が1.5×10-3mmHg未満である殺虫成分及び溶剤を含有するエアゾール原液と、噴射剤とを、定量噴射バルブを備えたエアゾール容器に充填してなる害虫防除用エアゾールであって、
前記エアゾール原液は、20℃における比重が0.82~1.25であり、10℃における粘度η10が3.2~60.0mPa・sであり、30℃における粘度η30と10℃における粘度η10との比率η30/η10が0.40~0.92であり、
前記定量噴射バルブは、一回当たりの噴射容量が0.1~3.0mLであることにある。
【0013】
本構成の害虫防除用エアゾールによれば、エアゾール原液の20℃における比重、10℃における粘度η10、及び30℃における粘度η30と10℃における粘度η10との比率η30/η10が上記の範囲にあることで、エアゾールの噴射後に、噴射剤の気化熱等による温度変化によりエアゾール原液の粘度が急激に変化することがないため、噴霧粒子が適切に拡散しながら速やかに沈降する。その結果、噴霧粒子に含まれる殺虫成分が床面全体に付着し、ゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫に対して優れた防除効果を発揮することができる。また、定量噴射バルブの一回当たりの噴射容量が上記の範囲にあることにより、エアゾール原液を一回から数回噴射することで殺虫成分の放出量が適切なものとなり、ゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫に対して実用上十分な防除効果を発揮することができる。
【0014】
本発明に係る害虫防除用エアゾールにおいて、
前記エアゾール原液の20℃における比重をpとし、前記比率η30/η10をqとしたとき、(p)・(q)が0.17~1.00であることが好ましい。
【0015】
本構成の害虫防除用エアゾールによれば、エアゾール原液の20℃における比重をpとし、比率η30/η10をqとしたとき、(p)・(q)を上記の範囲に設定することで、エアゾールの噴射により形成される噴霧粒子は拡散性及び沈降性がより向上したものとなり、その結果、噴霧粒子に含まれる殺虫成分は床面全体に均一に付着することができる。従って、(p)・(q)で表されるパラメータを指標としてエアゾール原液を調製すれば、これまで燻煙剤や全量噴射型エアゾールでしか実現し得なかった空間及び床面に対して優れた害虫防除効果を発揮し得る害虫防除用エアゾールを、定量噴射型のエアゾールとして設計することが可能となる。
【0016】
本発明に係る害虫防除用エアゾールにおいて、
前記殺虫成分は、トランスフルトリン及び/又はメトフルトリンを含有することが好ましい。
【0017】
本構成の害虫防除用エアゾールによれば、殺虫成分がトランスフルトリン及び/又はメトフルトリンを含有することにより、ゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫に対して優れた防除効果を奏することができる。
【0018】
本発明に係る害虫防除用エアゾールにおいて、
匍匐害虫を防除対象とすることが好ましい。
【0019】
本構成の害虫防除用エアゾールによれば、噴射により形成される噴霧粒子の拡散性及び沈降性が優れているため、噴霧粒子に含まれる殺虫成分が床面全体に付着することができる。これにより、床面を徘徊するゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫に対して優れた防除効果を発揮することができる。
【0020】
上記課題を解決するための本発明に係る害虫防除方法の特徴構成は、
30℃における蒸気圧が1.5×10-3mmHg未満である殺虫成分及び溶剤を含有するエアゾール原液と、噴射剤とを、定量噴射バルブを備えたエアゾール容器に充填してなる害虫防除用エアゾールを用いて噴射処理する害虫防除方法であって、
前記エアゾール原液は、20℃における比重が0.82~1.25であり、10℃における粘度η10が3.2~60.0mPa・sであり、30℃における粘度η30と10℃における粘度η10との比率η30/η10が0.40~0.92であり、
前記定量噴射バルブは、一回当たりの噴射容量が0.1~3.0mLであり、
前記害虫防除用エアゾールを屋内で空間に向けて噴射することにある。
【0021】
本構成の害虫防除方法によれば、エアゾール原液の20℃における比重、10℃における粘度η10、及び30℃における粘度η30と10℃における粘度η10との比率η30/η10が上記の範囲にあることで、害虫防除用エアゾールを屋内で空間に向けて噴射すると、噴射剤の気化熱等による温度変化によりエアゾール原液の粘度が急激に変化することがないため、噴霧粒子が適切に拡散しながら速やかに沈降する。その結果、噴霧粒子に含まれる殺虫成分が床面全体に付着し、ゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫に対して優れた防除効果を発揮することができる。また、定量噴射バルブの一回当たりの噴射容量が上記の範囲にあることにより、エアゾール原液を一回から数回噴射することで殺虫成分の放出量が適切なものとなり、ゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫に対して実用上十分な防除効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の害虫防除用エアゾール、及び害虫防除方法について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定することを意図するものではない。
【0023】
〔害虫防除用エアゾール〕
本発明の害虫防除用エアゾールは、空間処理によって匍匐害虫を防除するために用いられる定量噴射型のエアゾールであり、殺虫成分及び溶剤を含有するエアゾール原液と、噴射剤とを、定量噴射バルブを備えたエアゾール容器に充填したものとして構成される。
【0024】
<エアゾール原液>
本発明の害虫防除用エアゾールにおいて、エアゾール原液の10℃における粘度η10は、3.2~60.0mPa・sに調整され、好ましくは4.0~20.0mPa・sに調整され、より好ましくは4.0~15.0mPa・sに調整される。また、エアゾール原液の30℃における粘度η30と10℃における粘度η10との比率η30/η10は、0.40~0.92に調整され、好ましくは0.60~0.90に調整される。粘度η10、及び比率η30/η10が上記の範囲にあれば、エアゾール原液の粘度が温度変化によって急激に変化することがないため、本発明の害虫防除用エアゾールを屋内の処理空間で一定量噴射すると、噴霧粒子が適切に拡散しながら速やかに沈降する。その結果、噴霧粒子に含まれる殺虫成分が床面全体に付着し、ゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫に対して優れた防除効果を発揮することができる。粘度η10が上記の範囲から外れると、噴射後に噴射剤の気化熱等によりエアゾール原液の温度が低下した状態で、十分な拡散性と沈降性とを有する噴霧粒子が形成されず、その結果、床面への殺虫成分の付着量が不十分となったり、殺虫成分の付着状態に大きな偏りが発生する虞がある。また、比率η30/η10が0.40を下回ると、噴霧粒子の拡散が不十分になる虞があり、比率η30/η10が0.92を上回ると、ゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫に対して十分な防除効果が得られない虞がある。なお、エアゾール原液の30℃における粘度η30は、2.0~26.0mPa・sに調整されることが好ましく、2.5~20.0mPa・sに調整されることがより好ましく、3.0~15.0mPa・sに調整されることがさらに好ましい。エアゾール原液の粘度η10及びη30は、粘度計により測定することができる。本実施形態では、ビーカーに入れたエアゾール原液を恒温水槽(IWAKI製)で10℃又は30℃に調整し、B型粘度計(東京計器株式会社製、ローターNо.1)を使用し、各温度における粘度(測定条件:60rpm、30秒)を測定した。
【0025】
本発明の害虫防除用エアゾールにおいて、エアゾール原液の20℃における比重は、0.82~1.25に調整され、好ましくは0.83~1.20に調整され、より好ましくは0.85~1.05に調整される。エアゾール原液の比重は、殺虫成分と溶剤との配合比率を変えたり、その他の成分を添加することで調製することができる。エアゾール原液の20℃における比重が0.82~1.25の範囲にあれば、本発明の害虫防除用エアゾールを屋内の処理空間で一定量噴射すると、殺虫成分が床面全体に略均一に拡散して付着し、屋内空間においてゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫や、カ、ハエ等の飛翔害虫等に対する優れた防除効果を得ることができ、とりわけゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫に対して、特に優れた防除効果を得ることができる。なお、本明細書では、ノックダウン効果や致死効果に基づく駆除効果に加え、忌避効果を合わせて防除効果と呼ぶ。駆除効果が低くても十分な忌避効果があれば、実用上、防除が達せられる場面も多い。また、エアゾール原液の20℃における比重が上記の範囲にあると、付着性粒子が沈降に至る過程において隙間や物陰にも進入するため、殺虫成分としてピレスロイド系化合物を用いた場合には、ゴキブリ等が隙間や物陰から飛び出すフラッシング効果も十分に期待し得る。エアゾール原液の20℃における比重が0.82未満であると、噴霧粒子の床面への付着量が不足する虞がある。エアゾール原液の20℃における比重が1.25を超えると、床面への殺虫成分の付着状態が不均一になる虞がある。
【0026】
ところで、本発明者らは、害虫防除用エアゾールの害虫防除効果をさらに向上させるべく検討を行ったところ、エアゾール原液の20℃における比重をpとし、比率η30/η10をqとしたとき、(p)・(q)を適切な範囲に設定すれば、空間処理のための特別な準備が要らない定量噴射型のエアゾールでありながら、従来の燻煙剤や全量噴射型エアゾールのような空間及び床面全体を対象とした害虫防除処理が可能となることを見出した。本発明の害虫防除用エアゾールにおいては、(p)・(q)が、0.17~1.00に調整されることが好ましく、0.17~0.69に調整されることがより好ましく、0.40~0.69に調整されることがさらに好ましく、0.55~0.65に調整されることが最も好ましい。(p)・(q)が0.17~1.00の範囲にあれば、エアゾールの噴射により形成される噴霧粒子は拡散性及び沈降性がより向上し、その結果、噴霧粒子に含まれる殺虫成分が床面全体に均一に付着する。よって、匍匐害虫に対する防除効果をより一層向上させることができる。このように、本発明の害虫防除用エアゾールは、(p)・(q)で表されるパラメータを指標としてエアゾール原液を調製することで、定量噴射型エアゾールという簡便な構成を採用しつつ、これまで燻煙剤や全量噴射型エアゾールでしか実現し得なかった空間及び床面に対して非常に優れた害虫防除効果を発揮し得る、これまでに無かった画期的な製品であると言える。
【0027】
エアゾール原液の主成分の一つである殺虫成分としては、30℃における蒸気圧が1.5×10-3mmHg未満である殺虫成分が使用される。具体的には、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、テラレスリン、フラメトリン、モンフルオロトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン、ヘプタフルトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、シフルトリン、ビフェントリン、フェンプロパトリン、トラロメトリン、エトフェンプロックス、イミプロトリン、アレスリン、フタルスリン、プラレトリン、レスメトリン、及び天然ピレトリン等のピレスロイド系化合物、シラフルオフェン等のケイ素系化合物、ジクロルボス、及びフェニトロチオン等の有機リン系化合物、プロポクスル等のカーバメート系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド、及びクロチアニジン等のネオニコチノイド系化合物、フィプロニル、インドキサカルブ、並びにメトキサジアゾン等が挙げられる。安定性、基礎殺虫効力等を考慮すると、30℃における蒸気圧が1.0×10-4mmHg以上、1.5×10-3mmHg未満であるピレスロイド系殺虫成分が好ましく、具体的には、トランスフルトリン、メトフルトリン、及びプロフルトリンが挙げられる。上記の殺虫成分は、単独又は複数種類を混合して使用することができ、トランスフルトリン及び/又はメトフルトリンを含有するものを使用することが好ましい。なお、ピレスロイド系化合物の酸成分やアルコール部分において、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物も匍匐害虫防除用化合物に含まれる。
【0028】
エアゾール原液中の殺虫成分の含有量は、特に限定されないが、8~80w/v%であることが好ましく、10~70w/v%であることがより好ましい。エアゾール原液中の殺虫成分の含有量が上記の範囲にあれば、エアゾール原液の20℃における比重、10℃における粘度η10、及び30℃における粘度η30と10℃における粘度η10との比率η30/η10を適切な範囲に設定することができる。その結果、エアゾールが噴射された際、噴霧粒子が空間処理による匍匐害虫の防除に適した状態で形成され、適切な防除効果を得ることができる。
【0029】
エアゾール原液には、上記の殺虫成分の他に溶剤が含まれる。溶剤は、上記の殺虫成分を溶解してエアゾール原液を適切な比重、及び比率η30/η10に調整することができる有機溶剤が使用される。このような有機溶剤としては、例えば、エタノール、ノルマルプロパノール、及びイソプロパノール(IPA)等の炭素数が2~3の低級アルコール、ノルマルパラフィン、及びイソパラフィン等の炭化水素系溶剤、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、及びラウリン酸ヘキシル等の炭素数が16~20の高級脂肪酸エステル、炭素数が3~10のグリコールエーテル系溶剤、並びにケトン系溶剤等が挙げられる。これらの中でも、炭素数が2~3の低級アルコール、炭化水素系溶剤、及び炭素数が16~20の高級脂肪酸エステルが好ましく、炭素数が2~3の低級アルコールがより好ましく、エタノールがさらに好ましい。
【0030】
エアゾール原液には、上記成分に加え、カビ類、菌類等を対象とした防カビ剤、抗菌剤、殺菌剤、芳香剤、消臭剤、安定化剤、帯電防止剤、消泡剤、共力剤、及び賦形剤等を適宜配合することもできる。防カビ剤、抗菌剤や殺菌剤としては、ヒノキチオール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、トリホリン、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、及びオルト-フェニルフェノール等を例示できる。また、芳香剤としては、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、シトロネラ油、ライム油、ユズ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、リモネン、α-ピネン、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、アミルシンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、ベンジルアセテート等の芳香成分、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド配合の香料成分等が挙げられる。共力剤としては、ピペロニルブトキサイド、オクチルビシクロヘプテンジカルボキシミド等が挙げられる。
【0031】
<噴射剤>
本発明の害虫防除用エアゾールで用いる噴射剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン等の液化石油ガス(LPG)、ノルマルペンタン、イソペンタン、ジメチルエーテル(DME)、及びHFO1234ze等のハイドロフルオロオレフィン等の液化ガス、並びに窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、及び圧縮空気等の圧縮ガスが挙げられる。上記の噴射剤は、単独又は混合状態で使用することができるが、LPGを主成分としたものが使い易い。なお、噴射剤は、ゲージ圧(20℃)を0.1~0.7MPaに調整して使用することが好ましい。
【0032】
エアゾール容器に充填されるエアゾール原液(a)と噴射剤(b)との容量比率(a)/(a+b)は、体積比で0.02~0.5に調整されることが好ましく、0.05~0.5に調整されることがより好ましく、0.1~0.4に調整されることがさらに好ましい。容量比率(a)/(a+b)が上記の範囲にあれば、十分な量の殺虫成分を床面全体へ均一に拡散させることができる。
【0033】
本発明の害虫防除用エアゾールは、定量噴射バルブの一回当たりの噴射容量が、0.1~3.0mLに設定され、好ましくは0.2~1.0mLに設定され、より好ましくは0.2~0.9mLに設定される。噴射容量が上記の範囲にあれば、害虫防除用エアゾールを一回から数回噴射することで、殺虫成分の放出量が、例えば、0.1~50mg/m程度の適切なものとなり、処理空間において匍匐害虫に対して実用上十分な防除効果が得られる。
【0034】
本発明の害虫防除用エアゾールは、噴射口からの距離が5cmの箇所において噴射力が3~50gfとなるように設定されることが好ましく、5~40gfとなるように設定されることがより好ましく、10~35gfとなるように設定されることがさらに好ましい。噴射力が3~50gfであれば、殺虫成分はその大部分が速やかに屋内の処理空間の床面全体に沈降及び付着し、匍匐害虫に対して実用上十分な防除効果が得られる。このような噴射力は、エアゾール原液の組成、エアゾール容器の内圧、噴口の形状等により適宜調整され得る。なお、本実施形態では、害虫防除用エアゾールの噴射力を、デジタルフォースゲージ(FGC-0.5、日本電産シンポ株式会社製)により測定した。
【0035】
本発明の害虫防除用エアゾールは、噴口、ノズル、容器等の形状、操作ボタン等については、その用途、使用目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、上から押して噴射するボタンと斜め上方向きのノズルを備えた卓上タイプとしたり、小型容器の携帯用として設計することができる。
【0036】
本発明の害虫防除用エアゾールの噴口について、その数、形状、サイズは特に限定されない。一例を挙げると、噴口の数は1個であってもよく、2個以上であってもよいが、簡便で低コストで製造できるという観点からすれば、噴口の数は1個であることが好ましい。また、噴口の形状(断面形状)は、円形、楕円形、多角形等の他、各種不定形であってもよい。噴口の開口面積は、0.05~8.0mmであることが好ましく、0.1~4.0mmであることがより好ましく、0.2~3.0mmであることがさらに好ましい。例えば、噴口の数が1個で、噴口の形状が円形の場合、噴口のサイズ(噴口直径)は、0.3mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましく、0.6mm以上であることがさらに好ましい。また、噴口直径は、3.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましく、1.8mm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の害虫防除用エアゾールの噴口は、水平面に対する噴口の仰角が、0~60°に設定されていることが好ましい。水平面に対する噴口の仰角が上記の範囲であれば、噴射不良が起こりにくく、エアゾール原液を安定に噴射することができる。なお、噴口を2個有するノズル又はアクチュエータの水平面に対する噴口の仰角については、各噴口の中心を結んだ線分の垂直二等分線の水平面に対する仰角とする。噴口を3個以上有するノズル又はアクチュエータについては、水平面に対する噴口の仰角を以下のように定める。ノズル又はアクチュエータの噴射部の中央に噴口が存在するものについては、その中央の噴口の中心を貫く直交線の水平面に対する仰角とする。ノズル又はアクチュエータの噴射部の中央に噴口が存在しないものについては、各噴口の中心を結ぶ多角形の外接円の中心を貫く直交線の水平面に対する仰角とする。
【0038】
本発明の害虫防除用エアゾールのノズルについて、特に限定されないが、斜め上方向きのノズルを備えていることが好ましい。また、本発明の害虫防除用エアゾールの容器について、特に限定されないが、その材質は、アルミニウムやブリキ等の金属、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂、耐圧ガラス等が挙げられる。また、容器の形状は、通常の円柱状缶や変形缶等であってもよい。また、容器の材質が合成樹脂や耐圧ガラス等である場合、半透明や透明であってもよい。また、本発明の害虫防除用エアゾールの操作ボタンについて、特に限定されないが、プッシュダウンタイプのボタンやトリガータイプのボタンであってもよい。
【0039】
本発明の害虫防除用エアゾールは、屋内空間で空中に向けて噴射処理を行うことにより、気中への殺虫成分の放出量が0.1~50mg/mとなるように設定されることが好ましく、0.5~50mg/mとなるように設定されることがより好ましい。屋内空間の気中に、殺虫成分の放出量が0.1~50mg/mとなるようにエアゾール原液を噴射した場合、噴射から1時間後までに重量として殺虫成分の50%以上が屋内空間の床面全体に拡散して付着するよう設定されることが好ましい。ここで、殺虫成分が「屋内空間の床面全体に拡散して付着する」とは、付着した殺虫成分によって床面が害虫防除効果を発揮し得る状態となっていればよく、必ずしも殺虫成分が物理的に床面全体に付着していることを要するものではない。噴射から1時間後までに重量として殺虫成分の50%以上が前記屋内空間の床面全体に拡散して付着することで、本発明の害虫防除用エアゾールは、床面を徘徊する匍匐害虫に対する防除効果が強力なものとなり、ノックダウン又は致死効果が特に優れたものとなる。また、処理対象となる屋内空間の体積は特に限定されないが、2.0m未満の隙間空間、2.0~18.8mの狭小空間、4.5~8畳の部屋に相当する容積が18.8~33.3m(面積7.5~13.3m、高さ2.2~3.0m)である室内空間、8~16畳の部屋に相当する容積が33.3~66.6m(面積13.3~26.6m、高さ2.2~3.0m)である広めの室内空間等が挙げられ、2.0~18.8mの狭小空間、4.5~8畳の部屋に相当する容積が18.8~33.3m(面積7.5~13.3m、高さ2.2~3.0m)である室内空間、又は8~16畳の部屋に相当する容積が33.3~66.6m(面積13.3~26.6m、高さ2.2~3.0m)である広めの室内空間であることが好ましく、4.5~8畳の部屋に相当する容積が18.8~33.3m(面積7.5~13.3m、高さ2.2~3.0m)であることがより好ましい。ただし、より容積の大きな屋内空間や、より容積の小さな屋内空間においても、その屋内空間の容積にあわせて、屋内空間の気中に、殺虫成分の放出量が0.1~50mg/mとなるように噴射回数、噴射容量等を適宜設定することで、屋内空間の体積に関わらず同様の防除効果を得ることができる。本発明の害虫防除用エアゾールの使用頻度としては、害虫の発生頻度や状況に応じて適当な時期に、殺虫成分の放出量が上記の範囲となるように施用することが好ましい。
【0040】
本発明の害虫防除用エアゾールは、ワモンゴキブリ、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ等のゴキブリ類、トコジラミ(ナンキンムシ)、タイワントコジラミ(ネッタイトコジラミ)等のトコジラミ類、クサギカメムシ等のカメムシ類、クロヤマアリ、アミメアリ、トビイロケアリ、イエヒメアリ、アカカミアリ、ヒアリ等のアリ類、アシダカグモ、マダラヒメグモ、セアカゴケグモ等のクモ類、ヤスデ類、トビズムカデ等のムカデ類、ダンゴムシ類、ワラジムシ類、イエシロアリ、ヤマトシロアリ等のシロアリ類、ケムシ類等の匍匐害虫に加えて、アカイエカ、ヒトスジシマカ、ネッタイシマカ、チカイエカ等のカ類、イエバエ、ニクバエ等のハエ類、コバエ類、チョウバエ類、ユスリカ類、ハチ類、ガ類等の飛翔害虫、イガ、コイガ等のイガ類、カツオブシムシ、ヒメカツオブシムシ等のカツオブシムシ類等の衣料害虫、コクゾウムシ類等の貯穀害虫、コナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ、ツメダニ、ヤケヒョウヒダニ等の屋内塵性ダニ類等の種々の害虫を防除するために使用することができる。特に、ワモンゴキブリ、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ等のゴキブリ類、トコジラミ(ナンキンムシ)、タイワントコジラミ(ネッタイトコジラミ)等のトコジラミ類、クロヤマアリ、アミメアリ、トビイロケアリ、イエヒメアリ、アカカミアリ、ヒアリ等のアリ類、アシダカグモ、マダラヒメグモ、セアカゴケグモ等のクモ類などの匍匐害虫の防除に有効であり、とりわけ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、クロゴキブリ、トコジラミ(ナンキンムシ)に対して、優れた防除効果を奏する。
【0041】
〔害虫防除方法〕
本発明の害虫防除方法では、こうして得られた害虫防除用エアゾールを用いて噴射処理を行うことにより、種々の害虫を防除することができる。具体的には、前記害虫防除用エアゾールを用い、一回当たりの噴射容量を0.1~3.0mL、好ましくは0.2~1.0mL、より好ましくは0.2~0.9mLとして、屋内空間で空中に向けて噴射処理を行うことにより、気中への防除成分の放出量が0.1~50mg/m、好ましくは0.5~50mg/mとなるように設定されている。また、処理対象となる屋内空間の体積は特に限定されないが、2.0m未満の隙間空間、2.0~18.8mの狭小空間、4.5~8畳の部屋に相当する容積が18.8~33.3m(面積7.5~13.3m、高さ2.2~3.0m)である室内空間、8~16畳の部屋に相当する容積が33.3~66.6m(面積13.3~26.6m、高さ2.2~3.0m)である広めの室内空間等が挙げられ、2.0~18.8mの狭小空間、4.5~8畳の部屋に相当する容積が18.8~33.3m(面積7.5~13.3m、高さ2.2~3.0m)である室内空間、又は8~16畳の部屋に相当する容積が33.3~66.6m(面積13.3~26.6m、高さ2.2~3.0m)である広めの室内空間であることが好ましく、4.5~8畳の部屋に相当する容積が18.8~33.3m(面積7.5~13.3m、高さ2.2~3.0m)であることがより好ましい。例えば、4.5~8畳の部屋に相当する容積が18.8~33.3m(面積7.5~13.3m、高さ2.2~3.0m)の屋内空間で噴射処理を行う場合、エアゾール原液を1回又は複数回噴射することにより、気中への防除成分の放出量が0.1~50mg/mとなる。ただし、より容積の大きな屋内空間や、より容積の小さな屋内空間においても、その屋内空間の容積にあわせて、屋内空間の気中に、殺虫成分の放出量が0.1~50mg/mとなるように噴射回数、噴射容量等を適宜設定することで、屋内空間の体積に関わらず同様の防除効果を得ることができる。本発明の害虫防除方法の実施頻度としては、害虫の発生頻度や状況に応じて適当な時期に、殺虫成分の放出量が上記の範囲となるように施用することが好ましい。
【0042】
本発明の害虫防除方法において、エアゾールの噴射方向角が水平面に対して0~60°となるように噴射することが好ましく、30~60°となるように噴射することがより好ましい。エアゾールの噴射方向角が上記の範囲であれば、拡散均一性が優れたものとなる。
【実施例
【0043】
本発明の害虫防除用エアゾールの効果を検証するため、本発明の特徴構成を備えた害虫防除用エアゾール(実施例1~18)を準備し、試験例1に記載のように、(1)ゴキブリ類に対する駆除効果、(2)トコジラミ類に対する駆除効果、並びに(3)殺虫成分の床面付着率及び拡散の均一性を評価するための試験を行った。また、比較のため、本発明の特徴構成を備えていない害虫防除用エアゾール(比較例1~3)を準備し、同様の試験を行った。さらに、本発明の特徴構成を備えた害虫防除用エアゾール(実施例1、9)、本発明の特徴構成を備えていない害虫防除用エアゾール(比較例3)を用いて、試験例2に記載のように、(1)他の害虫への駆除効果を評価するための試験を行った。実施例及び比較例で用いた殺虫成分及び溶剤の比重(20℃)を以下に示す。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
・トランスフルトリン 1.51
・メトフルトリン 1.28
・プロフルトリン 1.28
・フェノトリン 1.06
・ペルメトリン 1.20
・エムペントリン 0.93
・エタノール 0.79
・イソプロパノール 0.79
・ネオチオゾール 0.76
・ミリスチン酸イソプロピル 0.86
・フェニルグリコール 1.11
【0044】
〔実施例1〕
殺虫成分であるトランスフルトリン(40w/v%)を、溶剤であるエタノールに溶解してエアゾール原液を調製した。このエアゾール原液は、20℃における比重が0.98であり、10℃での粘度η10は5.0mPa・sであり、30℃での粘度η30は4.0mPa・sであり、比率η30/η10は0.80であり、20℃における比重(p)と比率η30/η10(q)の2乗との積(p)・(q)は0.63であった。噴射容量が0.4mLである定量噴射バルブ付きエアゾール容器(耐圧容器)に、エアゾール原液(a)と噴射剤である液化石油ガス(b)との容量比率(a)/(a+b)が体積比で0.3となるように、エアゾール原液(a)9mL、及び液化石油ガス(b)21mLを加圧充填し、実施例1の害虫防除用エアゾールを得た。この害虫防除用エアゾールは、噴射距離5cmにおける噴射力は、15gfであった。
【0045】
〔実施例2~18、比較例1~3〕
実施例1に準じた手順で、表1に示す実施例2~18の害虫防除用エアゾールを調製した。また、比較のため、比較例1~3の害虫防除用エアゾールを調製した。なお、実施例2、12~14、及び16の害虫防除用エアゾールにおいては、1回の噴射容量が1.0mLである定量噴射バルブ付きのエアゾール容器を用い、実施例3~6、8~11、15、17、及び18、並びに比較例1~3の害虫防除用エアゾールにおいては、1回の噴射容量が0.4mLである定量噴射バルブ付きのエアゾール容器を用い、実施例7の害虫防除用エアゾールにおいては、1回の噴射容量が0.2mLである定量噴射バルブ付きのエアゾール容器を用いた。
【0046】
【表1】
【0047】
<試験例1>
(1)ゴキブリ類に対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計8枚(チャバネゴキブリ用、ワモンゴキブリ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に逃亡防止のためにワセリンを塗布した直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(チャバネゴキブリ:♀成虫5匹、ワモンゴキブリ:幼虫5匹)を放って自由に徘徊させた。実施例1、3~6、8~11、17、及び18、並びに比較例1~3では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。実施例2、13、及び16では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)に向けて、供試エアゾールを1.0mL、やや斜め上方に1ショット噴霧した。実施例7では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.2mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、6ショット噴霧した。実施例12、及び14では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを1.0mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。実施例15では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、6ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させ、その間、時間経過に伴い仰転した供試昆虫を数え、KT50値を求めた。さらに、噴霧から30分経過後、ガラス板を、供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、餌を与え、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めた。後述の表2において、チャバネゴキブリのKT50値は、8.0分以下であるときを「A」、8.1~12.0分であるときを「B」、12.1~30.0分であるときを「C」、30.1分以上と推定されるときを「D」で示した。ワモンゴキブリのKT50値は、11.0分以下であるときを「A」、11.1~18.0分であるときを「B」、18.1~30.0分であるときを「C」、30.1分以上と推定されるときを「D」で示した。チャバネゴキブリ、及びワモンゴキブリの致死率は、90~100%であるときを「A」、75~85%であるときを「B」、50~70%であるときを「C」、50%未満であるときを「D」で示した。
【0048】
(2)トコジラミ類に対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に逃亡防止のためにワセリンを塗布した直径約10cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(トコジラミ:5匹)を放って自由に徘徊させた。実施例1、3~6、8~11、17、及び18、並びに比較例1~3では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。実施例2、13、及び16では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)に向けて、供試エアゾールを1.0mL、やや斜め上方に1ショット噴霧した。実施例7では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.2mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、6ショット噴霧した。実施例12、及び14では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを1.0mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。実施例15では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、6ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を、供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、さらに24時間後に供試昆虫の致死率を求めた。後述の表2において、トコジラミの致死率は、90~100%であるときを「A」、75~85%であるときを「B」、50~70%であるときを「C」、50%未満であるときを「D」で示した。
【0049】
(3)殺虫成分の床面付着率及び拡散の均一性
容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の床面の6~8ヶ所に20×20cmのガラス板を設置した。実施例1、3~6、8~11、17、及び18、並びに比較例1~3では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。実施例2、13、及び16では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)に向けて、供試エアゾールを1.0mL、やや斜め上方に1ショット噴霧した。実施例7では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.2mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、6ショット噴霧した。実施例12、及び14では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを1.0mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。実施例15では、部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、6ショット噴霧した。噴霧から1時間経過後に全てのガラス板を取り出し、付着した殺虫成分をアセトンで洗い出してガスクロマトグラフィーにより定量分析した。得られた分析値を基に、殺虫成分の理論上の噴射全体量(これは、表1では殺虫成分の放出量に容積を乗じたものに相当する。)に対する噴射処理1時間後までに床面に沈降・付着した殺虫成分量(ガラス板に付着した総殺虫成分量×(部屋の面積)/(ガラス板の総面積)により算出)の比率(床面付着率)を求めた。また、付着した殺虫成分につき、各ガラス板間のバラツキを解析し、拡散の均一性を評価した。結果を、拡散の均一性の良好なものから順に、「A」、「B」、「C」、「D」で示した。
【0050】
試験結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
試験の結果、30℃における蒸気圧が1.5×10-3mmHg未満である殺虫成分を用いた実施例1~18の害虫防除用エアゾールは、ゴキブリ類、及びトコジラミ類の何れに対しても致死率が80%以上となる高い致死効果と、KT50値がチャバネゴキブリに対して8.3分以下となり、ワモンゴキブリに対して18.0分以下となる高いノックダウン効果とを奏することが確認された。なかでも、30℃における蒸気圧が1.0×10-4mmHg以上、1.5×10-3mmHg未満であるピレスロイド系殺虫成分を用いた実施例1~8、11、12、14、15、17、及び18の害虫防除用エアゾールは、KT50値がチャバネゴキブリに対して8.0分以下となり、ワモンゴキブリに対して12.0分以下となる高いノックダウン効果とを奏することが確認された。とりわけ、トランスフルトリン又はメトフルトリンを用いた実施例1~7、11、12、14、15、17、及び18の害虫防除用エアゾールでは、ゴキブリ類に対する優れた致死効果と優れたノックダウン効果を兼ね備えるものであることが分かった。また、試験の結果、実施例1~18の害虫防除用エアゾールは、噴霧処理から1時間後に、殺虫成分の床面付着率が50%以上となるだけでなく、殺虫成分が床面全体に略均一に拡散して付着していることが確認された。実施例1~18の害虫防除用エアゾールは、エアゾール原液の20℃における比重、及び30℃における粘度η30と10℃における粘度η10との比率η30/η10が適切に調整されていることから、殺虫成分が床面全体に均一に拡散して付着し、その結果、床面の何れの位置においても匍匐害虫に殺虫成分が効率よく接触したものと考えられる。
【0053】
これに対し、比較例1の害虫防除用エアゾールは、エアゾール原液の比率η30/η10が小さいため、床面への殺虫成分の付着状態が不均一となり、ゴキブリ類及びトコジラミ類の何れに対しても十分な致死効果、及びノックダウン効果が得られないものとなった。比較例2の害虫防除用エアゾールは、エアゾール原液の比率η30/η10が大きく、20℃における比重が小さいため、床面への殺虫成分の付着量が不十分となり、また、床面への殺虫成分の付着状態が不均一となり、ゴキブリ類及びトコジラミ類の何れに対しても致死効果、及びノックダウン効果が著しく低いものとなった。比較例3の害虫防除用エアゾールでは、エアゾール原液の20℃における比重、及び比率η30/η10が適切に調整されているが、殺虫成分であるエンペントリンの30℃における蒸気圧が1.5×10-3mmHg以上であるため、床面への殺虫成分の付着量が不十分となり、また、床面への殺虫成分の付着状態が不均一となり、十分な致死効果、及びノックダウン効果が得られなかったと考えられる。
【0054】
<試験例2>
他の害虫に対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計12枚(ヒメグモ用、クロヤマアリ用、クロゴキブリ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(ヒメグモ:1匹、クロヤマアリ:5匹、クロゴキブリ:♀成虫5匹)を放って自由に徘徊させた。実施例1、9、及び比較例3の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、餌を与え、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めた。
【0055】
試験結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
試験の結果、実施例1、及び9の害虫防除用エアゾールは、ヒメグモ、クロヤマアリ、クロゴキブリに対しても優れた致死効果を示した。これに対し、比較例3の害虫防除用エアゾールは、ヒメグモ、クロヤマアリ、クロゴキブリの何れに対しても十分な致死効果が得られなかった。
【0058】
<試験例3>
クモに対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚(ヒメグモ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(ヒメグモ:1匹)を放って自由に徘徊させた。実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、餌を与え、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は100%であった。
【0059】
<試験例4>
アリに対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚(クロヤマアリ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(クロヤマアリ:5匹)を放って自由に徘徊させた。実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、餌を与え、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は100%であった。
【0060】
<試験例5>
ムカデに対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚(ムカデ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(ムカデ:1匹)を放って自由に徘徊させた。実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は100%であった。
【0061】
<試験例6>
ゲジゲジに対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚(ゲジゲジ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(ゲジゲジ:1匹)を放って自由に徘徊させた。実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は100%であった。
【0062】
<試験例7>
カメムシに対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚(カメムシ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(カメムシ:1匹)を放って自由に徘徊させた。実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は100%であった。
【0063】
<試験例8>
ワラジムシに対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚(ワラジムシ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(ワラジムシ:1匹)を放って自由に徘徊させた。実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は100%であった。
【0064】
<試験例9>
ダンゴムシに対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚(ダンゴムシ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(ダンゴムシ:3匹)を放って自由に徘徊させた。実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は83%であった。
【0065】
<試験例10>
チャタテムシに対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚(チャタテムシ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(チャタテムシ:3匹)を放って自由に徘徊させた。実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は100%であった。
【0066】
<試験例11>
シバンムシに対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚(シバンムシ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(シバンムシ:3匹)を放って自由に徘徊させた。実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は92%であった。
【0067】
<試験例12>
コクゾウムシに対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚(コクゾウムシ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(コクゾウムシ:1匹)を放って自由に徘徊させた。実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は100%であった。
【0068】
<試験例13>
カツオブシムシに対する駆除効果
20×20cmのガラス板合計4枚(カツオブシムシ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(カツオブシムシ:3匹)を放って自由に徘徊させた。実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は83%であった。
【0069】
<試験例14>
ガに対する駆除効果
容積25mの部屋において、実施例18の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。直ちにガ4匹を放ち薬剤に2時間暴露させた後、全ての供試昆虫を回収した。24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は100%であった。
【0070】
<試験例15>
蚊に対する駆除効果
容積25mの部屋において、実施例1の害虫防除用エアゾールを部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、供試エアゾールを0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。直ちにアカイエカ雄成虫50匹を放ち薬剤に2時間暴露させた後、供試昆虫を回収した。24時間後に供試昆虫の致死率を求めたところ、致死率は100%であった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の害虫防除用エアゾール、及び害虫防除方法は、屋内での害虫、特にゴキブリ、トコジラミ等の匍匐害虫の防除を目的として利用することが可能である。