(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】渦電流信号の特性を利用した電池の抵抗溶接の品質評価方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/24 20060101AFI20221004BHJP
B23K 11/00 20060101ALI20221004BHJP
G01N 27/90 20210101ALI20221004BHJP
【FI】
B23K11/24 338
B23K11/00 560
G01N27/90
(21)【出願番号】P 2021555268
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 KR2020010048
(87)【国際公開番号】W WO2021020892
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0092629
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】サン・ヒュン・コ
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ス・テク・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・フン・イ
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-66815(JP,U)
【文献】特開2011-34731(JP,A)
【文献】特開2009-252644(JP,A)
【文献】特開2002-162388(JP,A)
【文献】特許第4651801(JP,B2)
【文献】特公平4-42626(JP,B2)
【文献】特許第2506860(JP,B2)
【文献】特開昭61-11645(JP,A)
【文献】特開昭59-68667(JP,A)
【文献】特開昭52-63385(JP,A)
【文献】特開昭48-40496(JP,A)
【文献】特許第3321648(JP,B2)
【文献】特開平8-68779(JP,A)
【文献】特開平11-94803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/24
B23K 11/00
G01N 27/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗溶接された溶接部を含む電池に対する抵抗溶接の品質評価方法であって、
前記溶接部を含む一平面上において、前記平面の一側端部から前記溶接部を経由して反対側の端部を連結するラインに沿って渦電流信号を測定するステップと、
測定された前記渦電流信号を分析し、かつ前記溶接部での渦電流信号の値と溶接部以外の地点での渦電流信号の値とを比較して抵抗溶接の品質を判別するステップと、を含む、電池の抵抗溶接の品質評価方法。
【請求項2】
前記溶接部は、電池タップが抵抗溶接によって接合された地点である、請求項1に記載の電池の抵抗溶接の品質評価方法。
【請求項3】
評価対象となる電池は円筒型電池であり、
前記渦電流信号を測定するステップは、前記円筒型電池において電池タップが溶接された一側端部の平面上で行う、請求項1又は2に記載の電池の抵抗溶接の品質評価方法。
【請求項4】
前記渦電流信号を測定するステップは、電池タップが溶接された一平面上で行い、
かつ前記平面の一側端部から前記溶接部を経由して反対側の端部を連結する前記ラインは、前記溶接部を経由する直線状のラインであるか、前記溶接部を基準として両側が対称である曲線状のラインである、請求項1から3のいずれか一項に記載の抵抗溶接の品質評価方法。
【請求項5】
前記渦電流信号を測定するステップは、
前記平面の一側端部から前記溶接部を経由して反対側の端部を連結する前記ラインに沿って連続的、あるいは間欠的に行う、請求項1から4のいずれか一項に記載の電池の抵抗溶接の品質評価方法。
【請求項6】
前記渦電流信号を測定するステップにおいて、
前記渦電流信号を測定する地点として、前記平面の両側端部および前記溶接部を含む、請求項5に記載の電池の抵抗溶接の品質評価方法。
【請求項7】
前記溶接部以外の地点で測定された渦電流信号のピーク値を基準値とし、
前記溶接部で測定された渦電流信号の最小値を物性値とし、
かつ、前記抵抗溶接の品質を判別するステップは、
前記基準値と前記物性値の差を算出し、算出された差の値が予め設定された範囲を外れる場合には不良として判定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電池の抵抗溶接の品質評価方法。
【請求項8】
評価対象となる電池は円筒型電池であり、
基準値は両側端部の近くで測定された渦電流信号の各ピーク値の平均値である、請求項1から7のいずれか一項に記載の電池の抵抗溶接の品質評価方法。
【請求項9】
評価対象となる電池はアルミニウムまたはその合金で形成されたケースを有する円筒型電池である、請求項8に記載の電池の抵抗溶接の品質評価方法。
【請求項10】
評価対象となる電池は円筒型電池であり、
前記渦電流信号を測定するステップは、
前記円筒型電池において電池タップが溶接された一側端部の平面上で行い、
かつ、前記溶接部を経由する第1ライン上で行う第1測定ステップと、
前記溶接部において前記第1ラインと交差し、かつ前記第1ラインと重複しない第2ライン上で行う第2測定ステップと、を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の抵抗溶接の品質評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年07月30日付の韓国特許出願第10-2019-0092629号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、電池の抵抗溶接品質の評価方法に関するものであって、詳細には渦電流信号の特性を利用して、電池の抵抗溶接の品質を評価する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
化石燃料の枯渇によるエネルギー源の価格が上昇し、環境汚染に対する関心が増して、環境にやさしい代替エネルギー源に対する要求が増加する。特に、化石燃料を用いる既存の自動車は公害物質を排出し、それは環境汚染の主な原因として作用する。
【0004】
最近、充放電が可能な二次電池は、ワイヤレスモバイル機器のエネルギー源として広く用いられている。また、二次電池は、化石燃料を用いる既存のガソリン車、ディーゼル車などによる大気汚染などを解決するための方案として提示されている電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力源としても注目されている。
【0005】
二次電池の需要の増加に伴い、製品出荷前の電池の品質評価の重要性も高まっている。特に、溶接によって電池タップを形成する電池の場合には、溶接部での不良率が相対的に高い。例えば、円筒型電池は電池セルを金属ケースが包んだ構造であり、円筒型構造の一側端部には、抵抗溶接によって電池タップが形成される。しかし、金属ケースの個別物性ないし溶接過程で誘発される物性変化は、電池の品質を評価する際に誤差の原因となり、評価の信頼性を低下させる原因となる。
【0006】
したがって、評価工程が簡単明瞭でありながらも金属ケースごとの物性の違いに起因する誤差を防止し得る信頼性の高い品質評価方法に対する必要性が高いのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するために創案されたものであって、渦電流信号の特性を利用して、電池の抵抗溶接の品質を評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電池の抵抗溶接の品質評価方法は、抵抗溶接された溶接部を含む電池に対する抵抗溶接の品質評価方法であって、
溶接部を含む一平面上において、上記平面の一側端部から上記溶接部を経由して反対側の端部を連結するラインに沿って渦電流信号を測定するステップと、
測定された渦電流信号を分析し、かつ溶接部での渦電流信号の値と溶接部以外の地点での渦電流信号の値とを比較して抵抗溶接の品質を判別するステップと、を含む。
【0009】
本発明の一実施形態によると、上記溶接部は、電池タップが抵抗溶接によって接合された地点である。本発明の具体的な一実施形態によると、評価対象となる電池は円筒型電池であり、渦電流信号を測定するステップは円筒型電池において電池タップが溶接された一側端部の平面上で行う。
【0010】
本発明の一実施形態によると、渦電流信号を測定するステップは電池タップが溶接された一平面上で行い、かつ平面の一側端部から上記溶接部を経由して反対側の端部を連結するラインは溶接部を経由する直線状のラインであるか、または溶接部を基準に両側が対称である曲線状のラインである。
【0011】
本発明の一実施形態によると、渦電流信号を測定するステップは、平面の一側端部から上記溶接部を経由して反対側の端部を連結するラインに沿って連続的、あるいは間欠的に行う。具体的には、渦電流信号を測定するステップにおいて、渦電流信号を測定する地点として、平面の両側端部および溶接部を含む。
【0012】
本発明の一実施形態によると、本発明に係る電池の抵抗溶接の品質評価方法では、溶接部以外の地点で測定された渦電流信号のピーク値を基準値とし、溶接部で測定された渦電流信号の最小値を物性値とする。そして、抵抗溶接の品質を判別するステップは基準値と物性値の差を算出し、算出された差の値が予め設定された範囲を外れる場合には、不良と判定する。
【0013】
具体的に、評価対象となる電池は円筒型電池であり、基準値は両側端部の近くで測定された渦電流信号の各ピーク値の平均値である。
【0014】
本発明において、評価対象となる電池は、アルミニウムまたはその合金から形成されたケースを有する円筒型電池である場合を含む。
【0015】
本発明の一実施形態によると、評価対象となる電池は円筒型電池であり、
渦電流信号を測定するステップは、円筒型電池において電池タップが溶接された一側端部の平面上で行う。そして、溶接部を経由する第1ライン上で行う第1測定ステップと、溶接部において上記第1ラインと交差し、かつ上記第1ラインと重複しない第2ライン上で行う第2測定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電池の抵抗溶接の品質評価方法は、各電池ごとの物性の違いによる誤差に起因するエラーを防止して高い信頼性を提供することができ、非破壊方式を適用するので評価プロセスが簡単明瞭である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電池の抵抗溶接の品質評価方法を行う過程を撮影した写真である。
【
図2】円筒型電池の一側端部に溶接強度を異なるようにして電池タップを形成し、各試料ごとの溶接部位の断面を電子顕微鏡で観察した結果である。
【
図3】円筒型電池の一側端部に溶接強度を異なるようにして電池タップを形成し、各試料ごとの溶接部位の断面を電子顕微鏡で観察した結果である。
【
図4】円筒型電池の一側端部に溶接強度を異なるようにして電池タップを形成し、各試料ごとの溶接部位の断面を電子顕微鏡で観察した結果である。
【
図5】電池タップを取り付ける前の状態の電池に対して、渦電流信号を測定した結果を示したグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る方法で、電池の渦電流信号を測定した結果を示したグラフである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る方法で、電池の渦電流信号を測定した結果を示したグラフである。
【
図8】各電池のサンプルごとに基準値と物性値の差を算出した結果を示したグラフである。
【
図9】各電池のサンプルごとに物性値の測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる用語や単語は通常的、或いは辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が彼自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈する必要がある。
【0019】
本発明において「溶接」とは、固相の二つの金属に熱および/または圧力を加えて結合する工程を総称する。本発明において「抵抗溶接」とは、多様な溶接方式の中で、溶接部位に電流と圧力を加えて金属自体から発生する抵抗熱を利用して溶接をする方法を意味する。
【0020】
本発明において「渦電流(eddy current)」とは、導体にかかった磁場が時間的に変化するとき、電磁誘導によって導体に生じる渦形の電流である。また、本発明において「渦電流信号」とは、励磁コイルに高周波電流を流して被検査物体の探傷部分に渦電流を発生させ、欠陥によって渦電流の分布状態が変化することを察知する非破壊探傷法による信号を意味する。
【0021】
渦電流信号を測定する過程は、通常に知られている方法で行うことができる。測定原理を概略的に説明すると、次の通りである。空芯時のコイルの直流抵抗、インダクタンス、各周波数をR0、 L0、 jωとすると、コイルのインピーダンスZは、Z=R0+jωL0になる。励磁コイルを被検査体に近寄せると、励磁コイルのインピーダンスは、被検査体の透磁率および導電率によって変化する。励磁コイルのインピーダンスは、空芯時のリアクタンスωL0を基準として正規化し、 R/ωL0, ωL/ωL0としてインピーダンス平面上に表示し得る。そのため、このインピーダンス図から欠陥の分布状態が得られる。渦電流信号を測定する過程は、商業的に入手可能な測定装備で行うことができ、例えば、ジョンアンシステム社のJAS-0100W製品を利用し得る。
【0022】
本発明は、抵抗溶接された溶接部を含む電池に対する抵抗溶接の品質を評価する品質評価方法を提供する。
【0023】
本発明に係る電池の抵抗溶接の品質評価方法は、
溶接部を含む一平面上において、上記平面の一側端部から上記溶接部を経由して反対側の端部を連結するラインに沿って渦電流信号を測定するステップと、
測定された渦電流信号を分析し、かつ溶接部での渦電流信号の値と溶接部以外の地点での渦電流信号の値とを比較して、抵抗溶接の品質を判別するステップと、を含む。
【0024】
本発明に係る評価方法は、溶接部の信号値を測定し、それを予め設定された基準値と単純に比較する方法とは差別化される。電池製造時、同じ製造工程および同じ材質の電池ケースを適用しても、個々の電池ケースの間には物性の違いが存在する。また、電池ケースに溶接を加えると、それは電池ケースの物性変化をもたらすことになる。特に、抵抗溶接は溶接過程において抵抗熱が発生し、個々の溶接工程において多様な熱挙動を示す。このような電池ケースの物性の違いおよび溶接時の熱挙動は、品質評価過程においての誤差として作用することになる。本発明では、渦電流信号を測定するステップにおいて、溶接部および溶接部と離隔された部位を一緒に評価することになる。本発明は、渦電流信号を測定するステップにおいて、溶接部および溶接部と離隔された部位の物性を一緒に測定し、これらの間の違いから溶接品質を評価することになる。従って、本発明に係る評価方法は、このような誤差に起因するエラーを防止するという効果がある。
【0025】
一つの例において、上記溶接部は電池タップが抵抗溶接によって接合された地点である。本発明に係る評価方法は、抵抗溶接の過程によって溶接された電池タップ部位の溶接品質を評価する方法として適用可能である。例えば、円筒型電池の場合には、円筒型の電池ケースの一側端面の中心部に電池タップを形成することになる。このような電池タップは、抵抗溶接の過程によって形成可能である。従って、本発明に係る評価方法は、円筒型電池で電池タップの溶接品質を評価する方法として活用可能である。
【0026】
一つの例において、渦電流信号を測定するステップは、電池タップが溶接された一平面上で行う。また、平面の一側端部から上記溶接部を経由して反対側の端部を連結するラインは、溶接部を経由する直線状のラインであるか、または溶接部を基準に両側が対称である曲線形状のラインである。この場合、渦電流信号を測定するステップは、溶接部を横切る直線に沿って行うか、あるいは溶接部を基準に左右対称である直線や曲線のラインに沿って行うことができる。このような過程は、電池の一平面上において、一側端部から溶接部を経由して反対側の端部までの物性を連続的に検出するためのものである。
【0027】
本発明の具体例として、評価対象となる電池は円筒型電池である。この場合、渦電流信号を測定するステップは、円筒型電池で電池タップが溶接された一側端部の平面上で行う。円筒型電池は円柱状のボディを有し、円柱状の両側端部の中心には、正極または負極の電極タップがそれぞれ形成される。本発明においては、評価対象となる電池が円筒型電池である場合、電池タップが溶接された一側端部の平面上で渦電流信号を測定することになる。
【0028】
例えば、渦電流信号を測定するステップは、平面の一側端部から上記溶接部を経由して反対側の端部を連結するラインに沿って連続的、あるいは間欠的に行うことが可能である。本発明において、渦電流を「連続的」に測定するというのは、測定地点間に離隔距離がなく、継続的に渦電流を測定することを意味する。また、渦電流を「間欠的」に測定するというのは、測定地点間に一定の離隔距離を置いて、定められたラインに沿って渦電流を測定することを意味する。
【0029】
渦電流信号を測定するステップにおいて、渦電流信号を測定する地点としては、平面の両側端部および溶接部を含むことが望ましい。渦電流信号を測定するステップを間欠的に行うことができる場合に、測定の開始地点となる一側端部、中心地点である溶接部、および測定の終了地点となる反対側の端部は、必ず測定する地点である。
【0030】
具体的に、本発明に係る電池の抵抗溶接の品質評価方法は、溶接部以外の地点で測定された渦電流信号のピーク値を基準値とし、溶接部で測定された渦電流信号の最小値を物性値とする。また、抵抗溶接の品質を判別するステップは、測定された基準値と物性値の差を算出し、それに基づいて溶接部不良の可否を判定することになる。算出された基準値と物性値の差が予め設定された範囲を外れる場合には、不良と判定する。
【0031】
一つの例において、本発明の評価対象となる電池は円筒型電池であり、基準値は両側端部の近くで測定された渦電流信号の各ピーク値の平均値である。通常の円筒型電池の場合、溶接部での信号は物性値となり、両側端部での信号は基準値として作用する。すなわち、円筒型電池においては、溶接部での渦電流信号は最低値を示し、両側端部の近くで測定された渦電流信号はピークを示す場合が多い。このとき、溶接部で示す最低値が物性値となり、両端部から示すピークの平均値が基準値となる。
【0032】
例えば、評価対象となる電池が円筒型電池である場合、上記円筒型電池は、アルミニウムまたはその合金で形成されたケースを有する構造であり得る。この場合、アルミニウムまたはその合金で形成された円筒型ケースのボディに同じ材質で形成された電池タップ溶接され得る。あるいは電池タップがニッケルまたはその合金でメッキされた場合も含む。
【0033】
別の一例において、評価対象となる電池は円筒型電池であり、渦電流信号を測定するステップは円筒型電池で電池タップが溶接された一側端部の平面上で行い、かつ溶接部を経由する第1ライン上で実行う第1測定ステップと、溶接部で上記第1ラインと交差し、かつ上記第1ラインと重複しない第2ライン上で行う第2測定ステップと、を含む。この場合は、二つのラインに沿って渦電流信号を測定することになり、交差測定によって評価の信頼度を高めるためである。上記例示においては、第1ラインおよび第2ラインに沿って渦電流信号を測定するステップを行うことになるが、本発明では複数のラインに沿って渦電流信号を測定する場合を排除するものではない。
【0034】
以下、添付された実施例と図面などを参照して本発明の具体例を詳細に説明する。本明細書に記載された実施例及び図面等に図示された構成は、本発明の具体的な一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想のすべてを代弁するものではない。そのため、本出願時点においてこれらを代替し得る多様な均等物と変形例があり得ることを理解する必要がある。
【0035】
それと関連して、
図1は、本発明の一実施例に係る電池の抵抗溶接の品質評価方法を行う過程を撮影した写真である。評価対象となる電池は円筒型電池である。円筒電池を測定台の上に立っておいた状態で、電池の一側端部面に対する渦電流信号を測定する。渦電流信号の測定は、上記端部面の一側先端から開始して中心部を経り、反対側の先端まで行う。
【0036】
図2~4は、それぞれ溶接強度を異なるようにして電池タップを溶接し、各溶接された試料の断面を電子顕微鏡で観察した結果である。
図2は、溶接強度が弱い場合であり、溶接部の周辺に物性変化がほとんど観察されない。これに対し、
図3は、溶接強度が好適な場合であり、溶接部の周辺に物性変化が観察される。
図4は、溶接強度が過度な場合であり、溶接部の周辺が過度に変形されたことが分かる。この場合、
図2および
図4の場合は、不良品として判定されるべきであり、
図3は、良品として判定されるべきである。通常、電池タップを溶接する場合に、溶接強度が弱い場合には、使用中に電池タップが分離されるか、あるいは電気的連結が切れるという不具合が発生し、溶接強度が過度な場合には、工程効率を低下させることになる。しかし、評価対象となる電池において、溶接部の断面を観察することは容易ではない。そこで、本発明は、非破壊方式で溶接部の品質を効果的に評価し得る方法を提示する。
【0037】
図5は、電池タップを取り付けるための溶接過程を踏まなかった電池に対し、渦電流信号を測定した結果を示したグラフである。具体的に、電池タップを取り付けなかった円筒型電池のサンプルをランダムで5つを選定(Can1~5)し、各電池サンプルに対する渦電流信号を測定した。
図5を参照すると、選定された電池のサンプルは同じ製作過程を経て製造されたにもかかわらず、物性の違いに起因して、データシフト(shift)があることが分かる。このようなデータシフトは、溶接品質評価の信頼性を低下させる原因となる。
【0038】
実施例:電池サンプルごとの抵抗溶接の品質評価を行う
アルミニウムで形成されたケースを有する円筒型電池サンプルに対して抵抗溶接を行い、電池タップを取り付けた。このとき、各サンプルごとに溶接強度を異なるようにした。具体的に、サンプル1~3は、適切な溶接強度で抵抗溶接を行い、サンプル4~6は、弱い溶接強度で抵抗溶接を行った。
【0039】
各サンプルに対する渦電流信号値を測定した。渦電流信号値の測定は、電池タップが取り付けられた面に対して左側の外の領域から右側方向へと、1000回以上を連続的に測定し、ジョンアンシステム社のJAS-0100W装備を利用して行った。
【0040】
たとえば、サンプル1に対する渦電流信号値の測定結果は、
図6に図示し、サンプル4に対する渦電流信号値の測定結果は、
図7に図示した。
図6及び
図7において、Aはサンプルの左側先端、Bは溶接部である中心地点、そして、Cはサンプルの右側先端を示す。サンプル1~6に対する測定結果を図示したグラフは、いずれも中心部での数値が小さく、上記中心部から左側および右側へ行くほど数値が増加する形態であることを確認した。各サンプルごとの測定結果を整理すると、下記表1の通りである。
【0041】
表1において、中心地点(B)からグラフ左側のピークにおいての数値は「左側のピーク値」、中心地点(B)近くの最低点においての数値は「溶接部の最小値」、そして、中心地点(B)からグラフの右側のピークにおいての数値は「右側のピーク値」とし、表1に図示した。下記表1において、単位はmVである。
【0042】
【0043】
上記表1の結果において、左側のピーク値と右側のピーク値の平均値を算出して基準値として表示し、溶接部の最小値を物性値で表示すると、下記表2の通りである。
【0044】
【0045】
表2を参照すると、サンプル1~3の場合には、基準値と物性値の差が0.5以上であり、サンプル4~6の場合には、上記差が0.5未満であることがわかる。本発明においては、上記表2の結果に基づいて、サンプル1~3は正常製品として判定し、サンプル4~6は不良製品として判定することになる。
【0046】
しかし、単純に溶接部での渦電流信号値である物性値のみを比較することになると、不良の可否に対する判定が容易ではない。具体的に、サンプル1~3の物性値は26.5283~26.7256の間である。これに対し、サンプル4の物性値は26.6803であり、サンプル6の物性値は26.5909である。サンプル1~3の範囲と比較して、サンプル4の物性値は上記の範囲と重複され、サンプル6の物性値は上記の範囲と類似したものとして示される。
【0047】
具体的に、
図8は、各サンプルごとに基準値と物性値を差を算出し、その結果を示したグラフである。
図8において、サンプル1~3の数値とサンプル4~6の数値は著しい差を示し、これにより、正常製品と不良製品との間の区分が明らかである。これに対し、
図9は、各サンプルごとに物性値の測定結果を示したグラフである。
図9において、サンプル1~3と比較して、サンプル4は違いが確認されず、サンプル6は類似な数値を示している。
【0048】
したがって、単純に物性値のみを比較することになると、電池不良の可否に対する判定が正しくないことが分かる。本発明は、渦電流信号を測定するステップにおいて、溶接部および溶接部と離隔された部位の物性を一緒に測定し、これらの間の違いを比較することによって、正確な溶接品質評価が可能である。