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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】配管補修装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/34 20060101AFI20221004BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B29C63/34
F16L55/18 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022023042
(22)【出願日】2022-02-17
【審査請求日】2022-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597022975
【氏名又は名称】エスジーシー下水道センター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】日沼 史人
(72)【発明者】
【氏名】落合 隆生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正俊
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-166447(JP,A)
【文献】特開2008-175381(JP,A)
【文献】特開2011-158392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/34
F16L 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設配管(11)の内壁に、環状で未硬化の光硬化性のライニング材(7)を配置して、そのライニング材(7)の内側から光を照射し、ライニング材(7)を硬化させる配管補修装置において、
中心部材(1)と、一端が中心部材(1)に固定され、他端が既設配管(11)の半径方向に伸縮可能な複数の脚体(2)と、中心部材(1)にリンク機構(5)を介し、前記半径方向に拡縮自在に取付けられた複数の光照射装置(6)と、を具備する配管補修装置。
【請求項2】
請求項1に記載の配管補修装置において、
中心部材(1)に固定されたモータケーシング(3)と、モータケーシング(3)に回動自在に取付けられた駆動体(4)と、駆動体(4)にリンク機構(5)を介し、前記半径方向に拡縮自在に取付けられた複数の光照射装置(6)と、を具備する配管補修装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配管補修装置において、
複数の中心部材(1)が直列に連結して配置され、隣り合う中心部材(1)の各駆動体(4)が互いに逆向に回動駆動される配管補修装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3に記載の配管補修装置において、
前記光照射装置(6)は、基部(6a)に多数のUV-LED(6b)が分散配置されたものからなる配管補修装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂を含浸させたライニング材を利用し、既設配管の内面をライニングする配管補修装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のライニング方法およびライニング装置が知られていた。
これは、未硬化状態の光硬化性樹脂を含浸させた管状ライニング材を既設配管の内面に導入し、加圧気体によりその外周を配管に密着させた状態で、ライニング材の内面から光照射装置により光照射して、ライニング材を硬化することが行われている。
この光硬化ライニング法で使用されるライニング材は、一般的にガラス繊維の編込み物に光硬化性の樹脂(例えば、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等)を含浸させたものが使用される。
そして、紫外線ランプからなる光照射装置には放射方向に車輪が設けられており、ライニング材の内側の中心部にランプ本体が保持されて移動できるようになっている。この場合、紫外線ランプは配管の上流側から下流側に移動速度を15~20cm/minで移動していた。その照射光の波長は、365~400nmであり、その光の波長に適合するように光硬化性樹脂の光反応開始材を調整するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5684427号公報
【文献】特開2020-23068号公報
【文献】特表2010-534051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外線ランプを複数連結し、ライニング材を硬化させる場合、電力消費が極めて大きいと共に、その移動速度が遅い欠点がある。
また、紫外線LEDによってライニングする場合には、その発光量が電力の80%を占め、発熱量は20%である。
また、近年効率のよいLEDが生産されるようになり、その連結個数を増加してライニング作業を効率よく行う試みが多くなってきている。
しかしながら、既設配管の直径は各種、多数存在し、その配管直径毎に光照射装置を製作することは極めて面倒である。
そこで、本発明は一例として、配管直径が250~600mmの各種既設配管まで多用できる配管補修装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、既設配管11の内壁に、環状で未硬化の光硬化性のライニング材7を配置して、そのライニング材7の内側から光を照射し、ライニング材7を硬化させる配管補修装置において、
中心部材1と、一端が中心部材1に固定され、他端が既設配管11の半径方向に伸縮可能な複数の脚体2と、中心部材1にリンク機構5を介し、前記半径方向に拡縮自在に取付けられた複数の光照射装置6と、を具備する配管補修装置である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、上記構成において、中心部材1に固定されたモータケーシング3と、モータケーシング3に回動自在に取付けられた駆動体4と、駆動体4にリンク機構5を介し、前記半径方向に拡縮自在に取付けられた複数の光照射装置6と、を具備する配管補修装置である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載の配管補修装置において、
複数の装置の中心部材1が直列に連結配置され、隣り合う中心部材1の各駆動体4が互いに逆向に回動駆動される配管補修装置である。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載の配管補修装置において、
前記光照射装置6は、基部6aに多数のUV-LED6bが分散配置されたものからなる配管補修装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、中心部材1にリンク機構5を介し、複数の光照射装置6が半径方向に拡縮自在に配置されたものである。
これにより、既設配管11の管径に応じて、ライニング材7と光照射装置6との距離を最適に配置して、効率よくライニング材7を光硬化でき、既設配管を迅速に補修できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上記構成に加え更に、中心部材1のモータケーシング3に回動する駆動体4が設けられ、その駆動体4に複数の光照射装置6が拡縮自在に設けられたものである。
これにより光照射装置6が中心部材1の回りに回動し、既設配管11内のライニング材7を内面から均一に加熱し、配管内をむらなく補修することができる。それと共に、効率よくライニング材7を光硬化でき、迅速に補修できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、上記構成において、複数の中心部材1が直列に連結され、隣り合う中心部材1の各駆動体4が互いに逆向に駆動されるものである。
これにより、隣り合う各駆動体4の回動に伴う、周方向の回転反力が互いに打ち消され、各駆動体4の回動を安定させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、上記構成において、光照射装置6が、基部6aに多数のUV-LED6bを分散配置したものである。
これにより、さらに配管内を均一に補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の配管補修装置の斜視図。
図2】複数の同装置を直列に連結した状態を示す説明図。
図3】既設配管11の各直径に対する本装置の使用状態を示す説明図であって、(A)は既設配管11の直径が比較的小さいもの、(B)は既設配管11の直径が中間のもの、(C)は既設配管11の直径が最大のもの。
図4】本配管補修装置を直列に多数連結した状態を示す説明図。
図5】本発明の配管補修装置の光照射装置6部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明の配管補修装置の斜視図、図2は複数の同装置を直列に連結した状態を示す説明図、図3は既設配管11の各直径に対する本装置の使用状態を示す説明図であって、(A)は既設配管11の直径が比較的小さいもの、(B)は既設配管11の直径が中間のもの、(C)は既設配管11の直径が最大のもの、図4は本配管補修装置を多数連結した状態を示す説明図である。
本発明の配管補修装置の単体は、図1に示す如く、中心軸10を有する中心部材1と、中心部材1の後方に順次配置されたモータケーシング3と駆動体(アウタロータ)4とを有する。その駆動体(アウタロータ)4には、リンク機構5を介して放射方向に複数の光照射装置6が中心軸10の半径方向に拡縮自在に配置されている。
モータケーシング3は、中心部材1に固定され、内部に固定子が配置されると共に、固定子に回転子としてのアウタロータが回動自在に連結され、それが回転駆動体4を構成する。即ち、この例では、モータとして外部回転子型ものを使用し、さらに図示しない遊星歯車機構等を介して、複数の光照射装置6を中心軸10の回りに回転駆動させるものである(回転速度については、〔0018〕で後述します)。このタイプの外部回転子型モータは、一例として特許文献3の公報その他に記載され公知のものである。
【0015】
中心部材1は先端の中心にカメラ12を有し、カメラ12の位置から放射方向に多数のLEDによる前照明8が配置されている。中心部材1には中心軸10の半径方向に複数の脚体2が放射状に且つ、拡縮自在に配置されている。そして、モータケーシング3の内部にはインナブロック(固定子)が設けられ、その外周にアウタロータとしての駆動体4が被嵌されている。駆動体(アウタロータ)4には、この例では4つのリンク機構5が放射状に配置されている。
各リンク機構5は、第1リンク5aと第2リンク5bとからなる。この例では、第1リンク5a,第2リンク5bはその中央部がX字状に軸支され且つ、その第1リンク5aの一端側が駆動体(アウタロータ)4に突設された第1支持リング13に軸支される。それと共に、第2リンク5bの一端側が、第2支持リング14に軸支されている。その第2支持リング14は中心軸10の軸方向に移動自在に被嵌されている。また、第1リンク5aと第2リンク5bの他端が、光照射装置6の基部6aに軸支され、その基部6aに多数のUV-LED6bが分散配置されている。リンク機構5は、その外周直径を任意位置に維持するための、図示しない保持機構を有する。
【0016】
この光照射装置6の基部6aの表面は、リンク機構5により、常に中心軸10の軸線に平行に維持されている。
次に、この例では、4つの脚体2の一端が中心部材1に固定され、その脚体2は基部2aとその基部2aの根元に屈曲自在に配置された屈曲部2bとを有し、その屈曲部2bの先端に車輪2cが設けられている。中心部材1と一体の中心軸10の後端には、コネクタ9が設けられ、そのコネクタ9を介して複数の配管補修装置が軸線方向に直列に、図2に示す如く連結される。
【0017】
〔作用〕
先ず、図2に示す如く、複数の配管補修装置が中心軸10の軸線方向にコネクタ9を介して連結される。そして、モータケーシング3にこの例では電源が供給され、駆動体(アウタロータ)4を回転駆動する。
なお、駆動体(アウタロータ)4の回転は周方向に連続的に回転してもよいが、それに変えて軸線の周りに間欠的に反転を繰り返すものであってもよい。
中心軸10の内部には、図示しないケーブルが挿通され、駆動体(アウタロータ)4の駆動源を形成する。なお、駆動源は電源に限らず、空気圧源を用いてもよい。
そして、既設配管11の内面にライニング材7が被覆され、空気圧によりそれが既設配管11の内面に密着する。この状態で、本装置の中心部材1の先端が既設配管11内を、適宜速度で下流側に移動する。
【0018】
このとき、各脚体2の長さ及び、ライニング材7の内面と光照射装置6との距離が一定に保たれる。
光照射装置6は、その背面側(リンク機構5側)に多数の冷却フィン15(図5参照)が配置され、駆動体(アウタロータ)4の回転に伴い、基部6aおよびUV-LED6bを冷却する。駆動体(アウタロータ)4の回転速度は、一例として、100rpmあれば、十分に冷却効果を発揮する。
既設配管11の内直径が最小のものに対しては図3(A)に示す如く、脚体2の屈曲部2bがL字状に屈曲して、車輪2cが既設配管11の内面側に接触する。既設配管11の内直径が中間の場合は、図3(B)の如く、屈曲部2bが基部2aに対してヘの字状に曲折し、その車輪2cが既設配管11内面に図示しないライニング材を介して接触する。また、既設配管11が最大直径の場合には、図3(C)に示す如く、基部2aの最延長上に屈曲部2bが直線的に伸びる。この例では、屈曲部2bはその一端が捩じりコイル状に形成されているが、それに変えて基部2a内に、シリンダのように直線的に伸縮自在に収納されるものであってもよい。
同様に、光照射装置6の位置もリンク機構5を介して、所定の半径に維持される。即ち、光照射装置6の外周半径が、リンク機構5により、既設配管11の内周半径に合わせて、伸縮配置され、光照射装置6とライニング材7との距離が所定距離に維持される。これにより、ライニング材7の光硬化を効率的に行う。
【0019】
また、コネクタ9に介して、直線上に連結された複数の配管補修装置は、最先端の装置の中心部材1に固定された図示しないワイヤにより、図2の矢印方向に所定の定速度で移動する。このとき、各光照射装置6は、駆動体(アウタロータ)4の回転に伴い中心軸10の周りをゆっくり回動する。それにより、中心軸10に被覆されたライニング材7の内面を多数のUV-LED6bを有する光照射装置6の光が照射し、ライニング材7を硬化させる。このとき、進行方向の上流側の駆動体(アウタロータ)4の回転と、それに隣接する下流側の駆動体(アウタロータ)4の回転とは逆向きになる。その状態を図2において矢印で示す。
それに伴って、光照射装置6は実線の状態から想像線の状態に回動する。それらの回転速度、移動速度は、任意に選択することができる。そして、ライニング材7の内面を中心部材1に設けられたカメラ12により観察する。カメラ12は下流側の装置にも設けることができる。また、下流側の装置の後端にも前照明8を配置することが好ましい。
【0020】
次に、図4は、本配管補修装置を直列に多数連結した状態を示し、進行方向の奇数番目の駆動体(アウタロータ)4の回転と、偶数番目の駆動体(アウタロータ)4の回転とは逆向きになる。
【0021】
本発明の実施例では、光照射装置を駆動体(アウタロータ)4により回転させたが、駆動体(アウタロータ)4の回転を停止した状態で、本装置を既設配管11内に移動させてもよい。請求項1に記載の発明は、駆動体(アウタロータ)4の回転を停止した場合も含み、その効果を明細書の詳細な説明に記載する。
また、駆動体(アウタロータ)4の駆動方法は、各種公知の技術を利用できる。
【符号の説明】
【0022】
1 中心部材
2 脚体
2a 基部
2b 屈曲部
2c 車輪
3 モータケーシング
4 駆動体(アウタロータ)
5 リンク機構
5a 第1リンク
5b 第2リンク
【0023】
6 光照射装置
6a 基部
6b UV-LED
7 ライニング材
8 前照明
9 コネクタ
10 中心軸
11 既設配管
12 カメラ
13 第1支持リング
14 第2支持リング
15 冷却フィン
【要約】
【課題】 既設配管11の内面をライニング材7で補修する配管補修装置において、複数の直径の既設配管11に対応できる装置を提供すること。
【解決手段】 中心部材1とそれに固定された脚体2と、中心部材1に固定されたモータケーシング3と、モータケーシング3に回転自在に取付けられた駆動体(アウタロータ)4と、駆動体(アウタロータ)4にリンク機構5を介して半径方向に拡縮自在に取付けられた複数の光照射装置6とを具備する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5