(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】トランスファ装置
(51)【国際特許分類】
B21K 27/00 20060101AFI20221005BHJP
B21J 9/06 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B21K27/00 B
B21J9/06 Z
(21)【出願番号】P 2019040046
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】内山 元紀
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025499(JP,A)
【文献】特開2019-013975(JP,A)
【文献】特開2014-200799(JP,A)
【文献】実開平6-039239(JP,U)
【文献】特開平10-328778(JP,A)
【文献】特開昭51-028270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 27/00
B21J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側工程でワークを把持し、下流側工程で前記ワークを解放するフィンガを支持するフィンガ支持部と、
前記フィンガ支持部を自転可能に支持する自転支持部と、
前記自転支持部を前記上流側工程と前記下流側工程の間で公転させる旋回駆動部と、
前記フィンガ支持部から延びるリンク部材、ならびに、前記上流側工程および前記下流側工程から等距離の位置に自転可能に設けられて前記リンク部材を支持するリンク支持座を有し、前記自転支持部の公転に伴って前記フィンガ支持部を所定の回転角度だけ回転させるワーク回転部と、
を備えるトランスファ装置。
【請求項2】
前記回転角度は90°である、請求項1に記載のトランスファ装置。
【請求項3】
フレームに設けられたダイス、および前記ダイスに対向して往復動作するパンチをそれぞれ有する複数の圧造工程からなる多工程圧造機に設けられる、請求項1または2に記載のトランスファ装置。
【請求項4】
いずれかの前記圧造工程を前記下流側工程とするトランスファ装置であって、
前記フィンガ支持部は、前記ワークを把持する複数の前記フィンガ、および複数の前記フィンガを相互に接近させる方向に付勢する付勢部材を有する、
請求項3に記載のトランスファ装置。
【請求項5】
前記ワーク回転部は、前記ワークの長手方向が前記パンチの動作方向に一致する縦向き姿勢と、前記ワークの長手方向が前記パンチの動作方向に直交する横向き姿勢との間で、前記ワークを回転させる、請求項4に記載のトランスファ装置。
【請求項6】
最下流の前記圧造工程を前記上流側工程とし、前記ワークを排出する排出工程を前記下流側工程とするトランスファ装置であって、
前記フィンガ支持部は、前記ワークを把持する複数の前記フィンガ、および複数の前記フィンガを開閉操作する操作部材を有する、
請求項3に記載のトランスファ装置。
【請求項7】
前記ワーク回転部は、前記ワークの長手方向が前記パンチの動作方向に一致する縦向き姿勢から、前記ワークの長手方向が前記パンチの動作方向に直交する横向き姿勢へと、前記ワークを回転させ、
前記排出工程は、前記パンチの動作方向に直交する方向に前記ワークを排出する排出コンベアを有し、複数の前記ワークをその長手方向に一列に整列させて排出する、
請求項6に記載のトランスファ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイスおよびパンチによりワークを成形加工する圧造機などに設けられて、ワークを上流側工程から下流側工程に搬送するトランスファ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パンチおよびダイスによりワークを成形加工する圧造工程を複数有する多工程圧造機が知られている。多工程圧造機では、トランスファ装置によりワークを上流側工程から下流側工程に順送りに搬送して、成形加工を進めてゆく。当初に円柱形状であるワークは、多くの場合に軸線の延長方向から荷重が加えられて、製品に成形加工される。しかしながら、最終的な製品の形状によっては、軸線に直交する横方向から荷重を加える成形加工が必要となる。この場合、ワークを90°回転させて搬送する必要が生じる。圧造および鍛造の技術分野において、ワークを回転させて搬送する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のプレス加工用トランスファユニットは、基台に設けられてワーク搬送方向に往復移動するチャックバーと、チャックバーに取り付けられた複数組のチャック爪と、を備え、チャック爪の少なくとも1組がワーク搬送方向への移動に連動して一定角度回転する。さらに、実施形態には、基台の側に設けられたラックと、チャック爪の側に設けられたピニオンギヤとが噛合することにより、チャック爪が回転駆動される構成が記載されている。これによれば、各種のプレス加工機のトランスファ装置として有効であり、適用範囲が非常に広い、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の技術は、複数組のチャック爪をワーク搬送方向に平行移動させるスライド移動型のトランスファ装置を前提条件としている。このため、チャック爪(フィンガ)を上流側工程から下流側工程へ回転させて移動させる回転移動型のトランスファ装置では、特許文献1の技術を実施することができない。
【0006】
本発明は上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、回転移動型の装置構成において、上流側工程から下流側工程へ搬送するワークを所定の回転角度だけ回転させることができるトランスファ装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトランスファ装置は、上流側工程でワークを把持し、下流側工程で前記ワークを解放するフィンガを支持するフィンガ支持部と、前記フィンガ支持部を自転可能に支持する自転支持部と、前記自転支持部を前記上流側工程と前記下流側工程の間で公転させる旋回駆動部と、前記フィンガ支持部から延びるリンク部材、ならびに、前記上流側工程および前記下流側工程から等距離の位置に自転可能に設けられて前記リンク部材を支持するリンク支持座を有し、前記自転支持部の公転に伴って前記フィンガ支持部を所定の回転角度だけ回転させるワーク回転部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトランスファ装置において、フィンガ支持部を自転可能に支持した自転支持部は、旋回駆動部によって上流側工程から下流側工程へと円弧状の軌跡を描いて搬送される。この搬送に際して、フィンガ支持部は、ワーク回転部によって自転角度が制御され、所定の回転角度だけ自転する。このため、フィンガおよびワークも、同じ回転角度だけ回転する。したがって、トランスファ装置は、回転移動型の装置構成において、上流側工程から下流側工程へ搬送するワークを所定の回転角度だけ回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態のトランスファ装置が設けられる多工程圧造機の全体構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】第1実施形態のトランスファ装置の構成を示す正面図である。
【
図3】トランスファ装置の構成を示す側面図である。
【
図4】
図3のD-D矢視図であって、ワーク回転部の構成を示す平面図である。
【
図5】第2実施形態のトランスファ装置の構成を示す側面図である。
【
図6】排出工程の構成例を示すとともに、第2実施形態のトランスファ装置の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、実施形態のトランスファ装置が設けられる多工程圧造機10の全体構成について、
図1を参考にして説明する。
図1は、多工程圧造機10の全体構成を模式的に示す平面図である。多工程圧造機10は、フレーム21、ラム24、5組のパンチ26およびダイス23、トランスファ装置1、ならびに駆動部9などで構成される。多工程圧造機10は、5組のパンチ26およびダイス23により構成された第1~第5圧造工程で、ワークに順次成形加工を施す。
図1の紙面上下方向が多工程圧造機10の幅方向となり、紙面左右方向が前後方向となる。
図1において、第1~第5圧造工程は、幅方向に並んでいる。
【0011】
フレーム21は、各部を配設するための筐体であり、鉄製で堅牢に形成される。5個のダイスホルダ22は、フレーム21の幅方向に並んで設けられる。5組のダイス23は、各ダイスホルダ22の後側に交換可能に取り付けられる。各ダイス23の図中の左方向を向いた後側に、所定の加工型が形成されている。
【0012】
ラム24は、平面視で概ね矩形であり、前後方向に往復動作する。5個のパンチホルダ25は、ラム24の前側の幅方向に並んで設けられる。5個のパンチ26は、各パンチホルダ25の前側に交換可能に取り付けられる。各パンチ26の図中の右方向を向いた前側に、所定の加工型が形成されている。各パンチ26は、ラム24とともに往復動作する。各圧造工程において、パンチ26およびダイス23は、対向して配置される。
【0013】
多工程圧造機10は、第1圧造工程の上流側に図略の切断工程を備える。切断工程には、可動カッタ、線材送り機構、およびプッシャ機構などが設けられる。可動カッタは、環形であり、線材送り機構によって内部に長尺線材が挿入される。その後、可動カッタは、長尺線材の径方向に動作して、固定刃との間で長尺線材を切断する。これにより、所定寸法の円柱形状のワークが作成される。プッシャ機構は、可動カッタからワークをプッシュアウトする。ワークの材質として、アルミや鉄、各種の合金などを例示できる。
【0014】
トランスファ装置1は、ダイスホルダ22の上方からダイス23の前方にかけて配設される。トランスファ装置1は、ワークを把持する6対のフィンガを有する。最上流の第1のフィンガは、切断工程でワークを把持して、第1圧造工程まで搬送する。第2~第5のフィンガは、上流側の圧造工程でワークを把持して、下流側の圧造工程まで搬送する。最下流の第6のフィンガは、第5圧造工程でワークを把持して、排出工程まで搬送する。
【0015】
ラム24を往復駆動するために駆動部9が設けられる。駆動部9は、主駆動源91と各種の伝達機構およびカム機構などで構成される。主駆動源91は、例えば、三相交流電源で動作する誘導モータまたは同期モータとすることができる。駆動部9は、トランスファ装置1および切断工程を併せて駆動する。主駆動源91の駆動力は、フライホイール92、ディスクブレーキ93、および減速機構94を介して、ラム24を駆動するクランク軸95に入力される。さらに、クランク軸95から分岐歯車対96を介してサイド軸97へと、駆動力が分岐伝達される。
【0016】
サイド軸97は、駆動力を上方に分岐伝達する。上方に分岐された駆動力は、トランスファカム98を回転駆動する。トランスファカム98は、トランスファ装置1を駆動する。また、サイド軸97からトランスファドライブ99を経由した先に、6個のオープンクローズカム9Aが回転駆動されるように連結される。オープンクローズカム9Aは、幅方向に等間隔で配置される。オープンクローズカム9Aは、それぞれフィンガを開閉駆動する。
【0017】
さらに、サイド軸97には、カッタカム9Bが設けられるとともに、プッシャカム9C、フィードカム9D、フィードローラ9E、および5個のノックアウトカム9Fが連結される。カッタカム9B、プッシャカム9C、フィードカム9D、およびフィードローラ9Eは、切断工程を駆動する。ノックアウトカム9Fは、幅方向に等間隔で配置されており、第1~第5圧造工程のノックアウトピンを駆動する。
【0018】
第1実施形態のトランスファ装置1の詳細な説明に移る。
図2は、第1実施形態のトランスファ装置1の構成を示す正面図であり、一つの工程に対応する範囲が示されている。
図3は、トランスファ装置1の構成を示す側面図である。トランスファ装置1は、第1~第5圧造工程のうち少なくとも1工程を下流側工程P2として、ワークWを所定の回転角度だけ回転させて搬送する。
【0019】
第1実施形態において、所定の回転角度は、90°とされている。具体的には、上流側工程P1において、ワークWの長手方向がパンチ26の動作方向に一致する縦向き姿勢で、成形加工が行われる。そして、下流側工程P2において、ワークWの長手方向がパンチ26の動作方向に直交する横向き姿勢で、成形加工が行われる。つまり、トランスファ装置1は、ワークWを縦向き姿勢から横向き姿勢に回転させて搬送する。
【0020】
トランスファ装置1は、フィンガ支持部3、自転支持部4、旋回駆動部5、およびワーク回転部6などで構成される。
図2において、フィンガ支持部3および自転支持部4は、下流側工程P2に駆動されている。
図2には、下流側工程P2におけるワークWの横向き姿勢が示されている。
図3には、上流側工程P1におけるワークWの縦向き姿勢が示されている。また、
図4は、
図3のD-D矢視図であって、ワーク回転部6の構成を示す平面図である。
図4において、ワークWは、模式的に三角形で示され、姿勢の変化が明瞭化されている。
【0021】
図2および
図4に示されるように、旋回駆動部5は、上流側工程P1と下流側工程P2の中間に配置される。旋回駆動部5の本体部50は、上下方向に長く形成される。本体部50は、上下2組の軸受部51、52によってフレーム21に回転可能に支承される。本体部50の軸受部51、52の間の側面の半周強に、セクタギヤ53が設けられている。
【0022】
セクタギヤ53と噛合するように、ラックギヤ54が設けられている。ラックギヤ54は、前述したトランスファカム98によって
図3の紙面表裏方向に往復駆動される。これにより、旋回駆動部5は、鉛直方向に延びる回転軸を中心にして180°回転駆動される。本体部50の側面のセクタギヤ53の反対方向に、取り付け座55が設けられる。取り付け座55には、自転支持部4が固定して取り付けられる。
【0023】
自転支持部4は、上下に延びる円筒形状に形成されている。自転支持部4の内側に、フィンガ支持部3が配置される。フィンガ支持部3は、支持ロッド31および一対のフィンガ32などで構成される。支持ロッド31は、自転支持部4の内側に、自転可能に嵌合されている。支持ロッド31の下部に、一対のフィンガ32が設けられる。
【0024】
一対のフィンガ32は、閉じた状態を保つクローズドタイプに形成されている。詳述すると、一対のフィンガ32は、上側および下側に離間しつつ、離間距離が可変となるように支持ロッド31に設けられる。ワークWは、図略のノックアウトピンによってダイス23から突き出され、フィンガ32の間に押し込まれる。また、ワークWは、パンチ26によってフィンガ32の間から押し出される。
【0025】
旋回駆動部5は、180°の自転により、自転支持部4を上流側工程P1と下流側工程P2の間で公転させる。自転支持部4およびフィンガ支持部3は、
図4に示される円弧状の軌跡M1、M2を描いて、上流側工程P1と下流側工程P2の間を往復移動する。また、
図3において、フィンガ支持部3および自転支持部4は、上流側工程P1と下流側工程P2の中間まで移動した状態が示され、かつ、フィンガ32のみ上流側工程P1における回転状態が示されている。
【0026】
ワーク回転部6は、リンク部材61およびリンク支持座65などで構成される。リンク部材61は、フィンガ支持部3から延在している。詳述すると、フィンガ支持部3の支持ロッド31の周りに、リンク固定部材34が固定して取り付けられる。リンク固定部材34の後側の一箇所に、固定孔35が形成されている。
【0027】
リンク部材61は、円形断面の丸棒状の部材である。リンク部材61の一端部62に近い側面に、浅い固定溝63が刻まれている。リンク部材61の一端部62は、リンク固定部材34の固定孔35に挿入される。さらに、脱落防止ねじ36がリンク固定部材34に螺合されて、固定溝63の内部に入り込む。これにより、リンク部材61の緩みや抜けが防止される。リンク部材61は、リンク固定部材34から水平後方に向かって延在する。
【0028】
リンク支持座65は、上流側工程P1および下流側工程P2から等距離の位置(
図4参照)であって、旋回駆動部5の前側の下方寄りの位置(
図3参照)に設けられる。リンク支持座65の具体的な位置は、後述するワークWの90°の回転が実現される位置に設定される。
図3に示されるように、リンク支持座65は、軸受部66を用いてフレーム21の下側に自転可能に支承される。リンク支持座65には、支持孔67が形成されている。支持孔67の内径は、リンク部材61の外径よりも若干大きい。リンク部材61は、支持孔67を貫通し、かつ支持孔67に対して進退移動可能となっている。
【0029】
図4に破線で示されるように、フィンガ支持部3が上流側工程P1に位置するとき、リンク部材61の長さ方向の向きは、ダイス23の前面DFに対して45°傾いている。フィンガ支持部3の自転角度は、リンク部材61の向きによって規定され、ワークWは、縦向き姿勢に制御される。また、
図4に実線で示されるように、フィンガ支持部3が下流側工程P2に位置するとき、リンク部材61の向きは、ダイスの前面DFに対して135°傾き、上流側工程P1のときから90°回転する。したがって、フィンガ支持部3も90°自転し、ワークWは、縦向き姿勢から90°回転した横向き姿勢に制御される。
【0030】
なお、旋回駆動部5の上方には、フィンガ駆動部7が設けられる。フィンガ駆動部7は、後述する開閉タイプのフィンガ82(
図5参照)を開閉操作するものであり、クローズドタイプのフィンガ32に対しては用いられない。フィンガ駆動部7は、駆動レバー71およびグリップレバー72などで構成される。駆動レバー71は、長さ方向の中央部711がフレーム21に支承されて揺動する。駆動レバー71の一端712は、前述したオープンクローズカム9Aによって上方に駆動される。このとき、駆動レバー71の他端713は、グリップレバー72を下方に駆動する。
【0031】
次に、実施形態のトランスファ装置1の動作および作用について説明する。上流側工程P1における成形加工が終了すると、縦向き姿勢のワークWがダイス23から突き出される。フィンガ32は、このワークWを把持する。次に、旋回駆動部5の自転による旋回動作、および自転支持部4の公転が始まる。
【0032】
旋回駆動部5が0°から90°まで自転すると、自転支持部4は、旋回駆動部5を中心とする円弧状の軌跡M1を描きつつ90°公転して、上流側工程P1と下流側工程P2の中間に到達する。このとき、ワーク回転部6のリンク部材61は、リンク支持座65を中心にして45°揺動するとともに、リンク支持座65に対して後退する。また、リンク部材61の45°の揺動に伴い、フィンガ支持部3は45°自転し、フィンガ32およびワークWは45°回転する。
【0033】
さらに、旋回駆動部5が90°から180°まで自転すると、自転支持部4は、旋回駆動部5を中心とする円弧状の軌跡M2を描きつつ90°公転して、下流側工程P2に到達する。このとき、リンク部材61は、リンク支持座65を中心にしてさらに45°揺動するとともに、リンク支持座65に対して前進する。また、リンク部材61の45°の揺動に伴い、フィンガ支持部3は、さらに45°自転し、フィンガ32およびワークWは、さらに45°回転する。
【0034】
結局、旋回駆動部5の180°の旋回動作により、ワークWは、90°回転して横向き姿勢で下流側工程P2に搬送される。これにより、下流側工程P2では、ワークWの横方向からの成形加工が可能となる。なお、フィンガ32の取り付け角度の変更により、トランスファ装置1は、上流側工程P1で横向き姿勢のワークWを把持し、90°回転させた縦向き姿勢で下流側工程P2に搬送することができる。さらに、トランスファ装置1は、複数の工程において、それぞれワークWを90°回転させて搬送することもできる。
【0035】
実施形態のトランスファ装置1において、フィンガ支持部3を自転可能に支持した自転支持部4は、旋回駆動部5によって上流側工程P1から下流側工程P2へと円弧状の軌跡M1、M2を描いて搬送される。この搬送に際して、フィンガ支持部3は、ワーク回転部6によって自転角度が制御され、所定の回転角度だけ自転する。このため、フィンガ32およびワークWも、同じ回転角度だけ回転する。したがって、トランスファ装置1は、回転移動型の装置構成において、上流側工程P1から下流側工程P2へ搬送するワークWを所定の回転角度だけ回転させることができる。
【0036】
次に、第2実施形態のトランスファ装置1Aについて、第1実施形態と異なる点を主にして説明する。第2実施形態のトランスファ装置1Aは、第5圧造工程を上流側工程とし、排出工程85を下流側工程とする。また、第2実施形態では、フィンガ支持部8の構成が第1実施形態と異なる。
図5は、第2実施形態のトランスファ装置1Aの構成を示す側面図である。
【0037】
第2実施形態において、旋回駆動部5、自転支持部4、およびワーク回転部6の構成は第1実施形態と同様である。また、第2実施形態において、前述のフィンガ駆動部7が用いられる。第2実施形態のフィンガ支持部8は、支持筒81、一対のフィンガ82、および、操作部材に相当する操作軸83などで構成される。支持筒81は、自転支持部4の内側に、自転可能に嵌合されている。支持筒81の下部に、一対のフィンガ82が設けられる。
【0038】
一対のフィンガ82は、開閉動作を行う開閉タイプに形成されている。詳述すると、一対のフィンガ82は、交差するように左右に配置され、開閉動作可能に支持される。操作軸83は、支持筒81の内部に上下動可能に設けられる。操作軸83は、フィンガ駆動部7のグリップレバー72により下降駆動されると、フィンガ82を開操作する。操作軸83は、図略の付勢ばねによって上方に付勢されている。したがって、一対のフィンガ82は、常時閉じる方向に付勢され、誤ってワークWを解放することがない。
【0039】
図6は、排出工程85の構成例を示すとともに、第2実施形態のトランスファ装置1Aの作用を説明する図である。排出工程85は、第5圧造工程の下流側に配置される。排出工程85は、排出コンベア86および図略のコンベア駆動部を用いて構成される。排出コンベア86は、ワークWが載置される環状のコンベアベルトで形成され、搬送路を往復するように配置される。
【0040】
コンベア駆動部は、排出コンベア86を輪転駆動する。排出コンベア86は、一定速度で輪転して、ワークWを搬送する。あるいは、排出コンベア86は、ラム24の往復動作に同期する間欠動作で輪転して、ワークWを搬送する。これにより、ワークWは、多工程圧造機10の機外に排出され、下流側の検査機87へ搬送される。
【0041】
第2実施形態において、ワーク回転部6は、ワークWを縦向き姿勢から横向き姿勢へと回転させる。ワークWは、
図6に示されるように、排出コンベア86上に長手方向に一列に整列するように載置されて排出される。したがって、検査機87において、ワークWの搬入が自動的に行われ、大きな省力化の効果が発生する。さらに、ワークWの長手方向と排出コンベア86の搬送方向が一致しているので、ワークWが転動して衝突し合うことが無い。したがって、ワークWに衝突痕が発生しない。
【0042】
なお、第1および第2実施形態において、リンク支持座65の位置を前後方向に変化させることにより、ワークWの回転角度を90°以外にすることが可能である。また、リンク支持座65の位置は、必ずしも上流側工程P1および下流側工程P2から等距離である必要はない。
【0043】
また、第1実施形態と第2実施形態を併用することができる。さらに、トランスファ装置(1、1A)は、2種類のフィンガ支持部3およびフィンガ支持部8の交換が可能とされている。加えて、トランスファ装置(1、1A)は、ワーク回転部6を取り外すことによってワークWを回転させずに搬送し、または180°回転させて搬送する従来の構成を含むようにすることも可能である。したがって、1台のトランスファ装置(1、1A)の中で、ワークWの多様な搬送方法を実現できる。
【0044】
また、3個以上のフィンガ(32、82)を用いてワークWを把持してもよい。さらに、第2実施形態において、排出工程85におけるワークWの搬送先は、検査機87以外の機器、例えば、ワークWを梱包する出荷装置やワークWを使用する組立ラインに変更することができる。変更態様においても、省力化の効果および衝突痕が発生しない効果は、同様に発生する。本発明は、その他にも様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1、1A:トランスファ装置 21:フレーム
3:フィンガ支持部 31:支持ロッド 32:フィンガ
4:自転支持部
5:旋回駆動部 53:セクタギヤ 54:ラックギヤ
6:ワーク回転部 61:リンク部材 65:リンク支持座
7:フィンガ駆動部
8:フィンガ支持部 81:支持筒 82:フィンガ 83:操作軸
85:排出工程 86:排出コンベア
10:多工程圧造機
W:ワーク P1:上流側工程 P2:下流側工程