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特許7152641トレーニング器具、及び筋力トレーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】トレーニング器具、及び筋力トレーニング方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/02 20060101AFI20221005BHJP
   A63B 22/06 20060101ALI20221005BHJP
   A63B 22/10 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A63B23/02 Z
A63B22/06 Z
A63B22/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018156447
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020028502
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】518302036
【氏名又は名称】相川 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】相川 浩一
【審査官】石原 豊
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3144423(JP,U)
【文献】特開2013-154000(JP,A)
【文献】特開平10-305113(JP,A)
【文献】登録実用新案第3202972(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0128231(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0132706(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B1/00-26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上背部から骨盤にかけての連動性を高めるためのトレーニング器具であって、
前端部と後端部とを有する平坦で非可動な座面のベンチであって、トレーニング者が前記ベンチ上で腹ばいとなり、自身の頭部を前記前端部に位置させた場合に、前記トレーニング者の腰部が前記後端部に位置するベンチと、
前記ベンチの前方に配置され、前記ベンチ上に腹ばいとなったトレーニング者から見て自身の頭上に位置しており、前記トレーニング者が前記ベンチの前方に両手を伸ばして握るための一対の固定ハンドルと、
を備えるトレーニング器具。
【請求項2】
上背部から骨盤にかけての連動性を高めるためのトレーニング器具であって、
前端部と後端部とを有する平坦で非可動な座面のベンチであって、トレーニング者が前記ベンチ上で腹ばいと
なり、自身の頭部を前記前端部に位置させた場合に、前記トレーニング者の腰部が前記後端部に位置するベンチと、
前記ベンチの前方に配置され、前記ベンチ上に腹ばいとなったトレーニング者から見て自身の頭上に位置しており、前記トレーニング者が前方に手を伸ばして握るための一対の手こぎハンドルと、
を備えるトレーニング器具。
【請求項3】
上背部から骨盤にかけての連動性を高めるためのトレーニング器具であって、
前端部と後端部とを有する平坦で非可動な座面のベンチであって、トレーニング者が前記ベンチ上で腹ばいとなり、自身の頭部を前記前端部に位置させた場合に、前記トレーニング者の腰部が前記後端部に位置するベンチと、
前記ベンチの前方に配置され、前記ベンチ上に腹ばいとなったトレーニング者が前記ベンチの前方に両手を伸ばして握るための一対の固定ハンドルと、
前記ベンチの前方に配置され、前記ベンチ上に腹ばいとなったトレーニング者から見て自身の頭上に位置しており、前記トレーニング者が前方に手を伸ばして握るための一対の手こぎハンドルと、
を備えるトレーニング器具。
【請求項4】
平坦で非可動な座面の ベンチの上で腹ばいとなり、前記ベンチの前端部に頭部が位置するとともに、前記ベンチの後端部に腰部が位置するトレーニング姿勢において、脚部を空中に浮かせて、内転筋と脊柱起立筋を連動して緊張させ、かつ、前記トレーニング姿勢において、前記ベンチの前方に配置され、前記ベンチ上に腹ばいとなったトレーニング者から見て自身の頭上に位置しており、前記トレーニング者が前記ベンチの前方に両手を伸ばして握るための手こぎハンドルを両手で回転させることで、肩甲骨周りの筋肉に動きと緊張をもたらす
筋力トレーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーニング器具、及びその器具を使用した筋力トレーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長寿社会になり、健康であることは、本人のためだけでなく、保険医療費の節約などに重要である。そして、健康を維持するため、加齢による筋肉の衰えを防止し、増強することが重要である。とりわけ、内転筋と脊柱起立筋を鍛えることは、人の体軸・体幹を維持するために必要である。また、同様に、肩甲骨周りの筋肉を鍛えることも重要である。
【0003】
従来、内転筋を鍛えるトレーニングマシンがある(例えば、特許文献1)。また、脊柱規律筋を鍛えるトレーニングマシンがある(例えば、特許文献2)。また、肩胛骨周りの運動のための用具がある(例えば、特許文献3)。また、緊締具を筋肉の所定部位に巻き付けて筋肉を増大させる筋肉トレーニング方法がある(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-122499号公報
【文献】特開2006-296863号公報
【文献】特開2011-010767号公報
【文献】特許第2670421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、内転筋や脊柱起立筋、さらに、肩甲骨周りの筋肉を効果的に鍛えるためのトレーニング器具及び筋力トレーニング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、長年ボディビルダーとして筋力トレーニングの研究に携わって来た者であり、その中で経験的に以下のような事実を見出した。加齢に伴い、背中側の筋肉の衰えが目立ち、また、肩甲骨と肩の連動性の低下がみられて三角筋前部及び肩甲骨まわりの硬化が生じる。このため、上背部から骨盤にかけての連動性を高めることが、姿勢や体軸の維持強化に直接作用する。また、肩甲骨周りの筋肉を鍛えることが重要である。そのため、以下のような発明をした。
【0007】
<第1のトレーニング器具>
本発明の態様の一つは、トレーニング器具であり、以下のような、第1のトレーニング器具を含む。
上背部から骨盤にかけての連動性を高めるためのトレーニング器具であって、
前端部と後端部とを有するベンチであって、トレーニング者が前記ベンチ上で腹ばいとなり、自身の頭部を前記前端部に位置させた場合に、前記トレーニング者の腰部が前記後端部に位置するベンチと、
前記ベンチの前方に配置され、前記ベンチ上に腹ばいとなった前記トレーニング者が前記ベンチの前方に両手を伸ばして握るための一対の固定ハンドルとを備える、
トレーニング器具である。
前記一対の固定ハンドルは、前記ベンチの前方に配置された支持台に設けられていてもよく、支持台以外のものに取り付けられていてもよい。
【0008】
また、第1のトレーニング器具は、以下の構成を採用してもよい。
上背部から骨盤にかけての連動性を高めるためのトレーニング器具であって、
前端部と後端部とを有するベンチであって、トレーニング者が前記ベンチ上で腹ばいとなり、自身の頭部を前記前端部に位置させた場合に、前記トレーニング者の腰部が前記後端部に位置するベンチと、
前記ベンチの前方に配置され、前記ベンチ上に腹ばいとなったトレーニング者が前方に手を伸ばして握るための一対の手こぎハンドルとを備える、
前記一対の手こぎハンドルは、前記ベンチの前方に配置された支持台に設けられていてもよく、支持台以外のものに取り付けられていてもよい。また、前記一対の手こぎハンドルは、回転軸を中心として前後方向に回転可能なペダル状の手こぎハンドルであるのが好ましい。
【0009】
なお、第1のトレーニング器具において、支持台に、前記固定ハンドルと手こぎハンドルとの双方を設けてもよい。また、腹ばいになったとき、前記前端部の顔の位置に相当する部位に、ヘッドレストを設けてもよい。ヘッドレストとしては、ベンチに穴を設けて、その周囲に顔を埋める形態や、ベンチの前方端に、ドーナツ状のヘッドレストを追加してもよい。
【0010】
<第2のトレーニング器具>
また、本発明に係るトレーニング器具は、以下のような、第2のトレーニング器具を含む。すなわち、第2のトレーニング器具は、手のひらに収まる大きさの2つの球状体を伸縮可能な紐状体で連結した器具である。
【0011】
<第1の筋力トレーニング方法>
本発明の態様の一つは、筋力トレーニング方法であり、筋力トレーニング方法は、以下のような、第1の筋力トレーニング方法を含む。
すなわち、第1の筋力トレーニング方法は、トレーニング者が、ベンチの前端部に頭部を位置させ、前記ベンチの後端部に腰部を載せて腹ばいになったトレーニング姿勢において、脚部を空中に浮かせて、内転筋と脊柱起立筋を連動して緊張させ、かつ、前記トレーニング姿勢において、前記ベンチの前方に配置された手こぎハンドルを両手で回転させることで、肩甲骨周りの筋肉に動きと緊張をもたらす筋力トレーニング方法である。
【0012】
第1の筋力トレーニング方法では、例えば、前後方向に長いベンチに腹ばいになり、ベンチの後端部に骨盤の腸骨部分に相当する部位を乗せて、両足を空中に浮かせる方法であり、これを複数回繰り返す。この時、固定ハンドルを握るとよい。身体は固定源がある程、力を発揮しやすく、固定ハンドルを握ることで、上体も含めた身体の背面の緊張、すなわち、三角筋、僧帽筋、広背筋、大円筋や菱形筋などの上背部諸筋群の緊張を引き出す。両足を空中に浮かせる姿勢を維持することで内転筋と脊柱起立筋の強い連動性ある収縮で骨盤含め、体の軸を強化することが可能となる。
【0013】
両足を空中に浮かせるにあたり、股の間にボールなどの被挟持物を挟むと効果的である。ボール等を挟む事で更に脊柱起立筋に力が込めやすくなり、同時に大腿部の内側にある内転筋への神経の促通も行われ、身体の軸の強化が得られる。
【0014】
さらに、両足を空中に浮かせながら、両手で手こぎハンドルを握り、前後に回転させる。これにより、上体の中でも使いにくい肩甲骨周りの稼働をあげることができる。すなわち、この回転運動により、ローテーターカフ筋群として棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)、小円筋(しょうえんきん)を働かすことができ、鍛えることが可能となる。
そして、上体の稼働と腰部緊張は常にシンクロしているため、ボールなどの挟み運動とあわせ、大腿部内転筋からのボール挟み力がキープできれば、同時収縮の脊柱起立筋はじめ、腰部は理想的に鍛えられる。
【0015】
<第2の筋力トレーニング方法>
本発明に係る筋力トレーニング方法は、以下のような、第2の筋力トレーニング方法を含む。
第2の筋力トレーニング方法は、第2のトレーニング器具を用いる。まず、紐状体を柱などに引っ掛ける。次いで、手のひらに収まる大きさの2つの球状体を左右の手で包み込むように持つ。その際、球状体を指先でつまむように持ち、その後、その伸縮可能な紐状体を引っ張り、その縮もうとする力を感じながら左右の肩甲骨を近づけるように寄せる。
この状態を維持しながら、球状体を持った手を体の左右方向に、内側あるいは外側に回転させる。
【0016】
すなわち、第2の筋力トレーニング方法は、球状体をつまんだ両手に前方へと引っ張る引っ張り力を加えながら、左右の肩甲骨を寄せた状態を維持しつつ、両手を左右方向に回転させることで、ローテーターカフ筋群を鍛える方法である。
【0017】
この運動により、肩甲骨と肩の連動性を回復する。球状体を包み込むように握ることで、前腕の関与を軽減し、感覚の薄れた肩甲骨周りの筋肉(菱形筋など)を意識しやすくする。また、伸縮自在な紐状体を引くことで、前方へと引っ張る引っ張り力が手に加わり、容易に菱形筋で肩甲骨を寄せた位置に持っていくことができる。なお、引くことで菱形筋と三角筋後部、僧帽筋が緊張し、さらに脊柱起立筋も働く。これにより三角筋前部が緩むことで、肩甲骨と肩の連動性を回復しやすくする。
【0018】
この運動は、先の手こぎハンドルでの回転運動と同様に、ローテーターカフ筋群、すなわち、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋を鍛えることができる。
【0019】
<第1、第2の筋力トレーニング方法の併用>
第1、第2の筋力トレーニング方法を併用してもよい。そのようにすることで、上背部、下背部の筋肉群の連動性ある収縮で体の軸をより強化することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、体幹、体軸の維持のために必要な、脊柱起立筋を始めとして、大腿部内転筋、肩甲骨周りの菱形筋と三角筋後部、僧帽筋などを効果的に鍛えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る、第1のトレーニング器具を示した斜視図である。
図2】第1のトレーニング器具の右側面図である。
図3】実施形態に係る、第1のトレーニング器具の第1の使用態様を示した側面図である。
図4】第1のトレーニング器具の第2の使用態様を示した側面図である。
図5】実施形態に係る、第2のトレーニング器具を示した図である。
図6】第2のトレーニング器具の使用態様を示した斜視図である。
図7】第2のトレーニング器具の使用態様における、右手部分を拡大して示す図である。
図8】第2のトレーニング器具の使用態様を背後から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であ
り、本発明は、実施形態の構成に限定されない。
【0023】
<第1のトレーニング器具>
図1は、実施形態に係る、第1のトレーニング器具100を示した斜視図であり、図2は、第1のトレーニング器具100の右側面図である。第1のトレーニング器具100は、上背部から骨盤にかけての連動性を高めるためのトレーニング器具であり、ベンチ1と支持台2とを備える。
【0024】
ベンチ1は、逆T字形の2本の脚3で支えられた矩形状(直方体状)の座部4を有し、逆T字形の2本の脚3は、中樌5で相互に連結されている。このベンチ1の、床面から座部4の上面(座面)までの高さは40cm~50cmである。座部4の幅は30cm程度で、座部4の長さは90cm前後である。ベンチ1は、その長さ方向を第1のトレーニング器具100の前後方向としたとき、前端部8aと後端部8bとを有する。座部4の前端部8bには、穴6が形成されている。使用者が前方を向いて座面上に腹ばいとなり、顔を座面に埋めるようにしたときに、穴6は顔の前面を解放する部分として使用される。このとき、座部4の前端部8aは頭部(額)を載せるヘッドレスト7となっている。第1のトレーニング器具100の利用者(トレーニング者)が腹ばいとなり、穴6に顔を入れてヘッドレスト7に頭部を載せたとき、ベンチ1の座部4の上面で、トレーニング者の胸から腰の部位が支えられる(図3参照)。このような状態(トレーニング姿勢という)では、ベンチ1の後端部8bにトレーニング者の腰の骨盤部分が位置する。このように、ベンチ1は、前端部8aと後端部8bとを有し、トレーニング者がその上で腹ばいとなりその頭部を前端部8aに位置させた場合に、トレーニング者の腰部が後端部8bに位置する(支持される)構成となっている。
【0025】
ベンチ1の前方には支持台2が配置されている。この支持台2は、逆T字形をした支柱10を有し、支柱10の左右の側面には、一対の固定ハンドル9が設けられている。固定ハンドル9は、ベンチ1の座面の高さとほぼ等しい高さに位置し、水平方向に伸びている。固定ハンドル9は、ベンチ1上でトレーニング姿勢をとったトレーニング者が前方に手を伸ばして握るためのものである。
【0026】
また、支持台2の上部には、ペダル状の手こぎハンドル11が設けられている。手こぎハンドル11は、支柱10の上端に設けた回転軸受け12に挿通された回転軸13と、その回転軸13の両端にそれぞれ反対方向に伸びるように設けられた一対のクランク14と、各クランク14の先端に設けたハンドル軸15とからなる。手こぎハンドル11は、ベンチ1上でトレーニング姿勢をとったトレーニング者が前方に手を伸ばして握ることが可能であるとともに、回転軸13を中心としてベンチ1の長手方向(第1のトレーニング器具100の前後方向)に回転可能となっている。
【0027】
さらに、支持台2の支柱10は、ベンチ1の前側の脚3に連結樌16を介して連結されている。この連結樌16は、中空の外側の角形パイプ16aと、その内に挿入される内側の角形パイプ16bとからなり、外側の角形パイプ16a内で内側の角形パイプ16bとが出入り可能な構成を有し、これにより、支持台2とベンチ1との間の距離を調節可能としている。内側の角形パイプ16bには、その軸方向に複数の調節穴17が設けられ、これに対応して、外側の角形パイプ16aにも連結穴18が設けられ、この連結穴18と調節穴17を一致させて連結ピン19を挿入することで、内側の角形パイプ16bと外側の角形パイプ16aとを結合している。
【0028】
なお、第1のトレーニング器具100は、固定ハンドル9と手こぎハンドル11とのうち、いずれか一方のみを備える構成であってもよい。また、固定ハンドル9と手こぎハンドル11との夫々は、支持台2に設けられる代わりに、柱や壁に取り付けられていたり、懸下されていたりしてもよい。但し、実施形態で説明した構成を有することで、トレーニング器具100を一体のものとして扱うことができ、別体より搬送や設置が容易、の利点がある。
【0029】
<第1の筋力トレーニング方法>
以下、第1のトレーニング器具100を利用した筋力トレーニング方法を説明する。図3は、実施形態に係る、第1のトレーニング器具100の第1の使用態様を示した側面図である。図3に示すように、トレーニング者は、ベンチ1に腹ばいになり、顔をヘッドレスト7の穴6に埋め、額をヘッドレスト7に載せて、トレーニング姿勢をとる。この状態で、支持台2の左右の固定ハンドル9を両手で握る。トレーニング姿勢をとると、ベンチ1の後端部8bに骨盤の腸骨部分に相当する部位を乗せた状態となる。この状態で、トレーニング者は両足を空中に浮かせる。このとき、固定ハンドル9を握ることで身体の固定源ができ、力を発揮しやすくなる。また、固定ハンドル9を握ることで、上体も含めた身体の背面の緊張、すなわち、三角筋、僧帽筋、広背筋、大円筋や菱形筋などの上背部諸筋群の緊張を引き出すことができる。これを複数回繰り返す。
【0030】
トレーニング姿勢において、両足を空中に浮かせる姿勢を維持することで内転筋と脊柱起立筋の強い連動性ある収縮で骨盤含め、体の軸を強化することが可能となる。両足を空中に浮かせるにあたり、股の間にボールなどの被挟持物を挟むと効果的である。ボール等を挟む事で更に脊柱起立筋に力が込めやすくなり、同時に大腿部の内側にある内転筋への神経の促通も行われ、身体の軸の強化が得られる。これにより、体幹、体軸の維持のために必要な、脊柱起立筋を始めとして、大腿部内転筋、肩甲骨周りの菱形筋と三角筋後部、僧帽筋などを効果的に鍛えることができる。
【0031】
図4は、第1のトレーニング器具100の第2の使用態様を示した側面図である。図4に示すように、両足を空中に浮かせた状態において、両手で手こぎハンドル11のハンドル軸15を握り、前後に回転させる。これにより、上体の中でも使いにくい肩甲骨周りの稼働を上げることができる。この手こぎハンドル11を回転させる運動により、ローテーターカフ筋群として棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋を働かすことができ、鍛えることが可能となる。特に、上体の稼働と腰部緊張は常にシンクロしているため、ボールなどの挟み運動とあわせ、大腿部内転筋からのボール挟み力を維持できれば、同時収縮の脊柱起立筋をはじめとして、トレーニング者の腰部は理想的に鍛えられる。
【0032】
第1の筋力トレーニング方法は、ベンチ1の前方に頭を向け、後端部に腰を乗せて腹ばいにさせることで脚部を空中に浮かせて、内転筋と脊柱起立筋を連動して緊張させ、かつ、両手で手こぎハンドル11を回転させることで、肩甲骨周りの筋肉に動きと緊張をもたらす筋力トレーニング方法である。
【0033】
なお、ヘッドレスト7としては、ベンチ1に穴6を設けず、ベンチ1の座部4の前方に、ドーナツ状のヘッドレストを追加しても良い。また、固定ハンドル9は、水平方向に伸びているが、これを上下方向に伸ばしてもよい(ハンドルの握り方は縦握りでも横握りでもよい)。また、固定ハンドル9や手こぎハンドル11の高さは、任意の高さに調節しるよう、支柱10に高さ調節機構を設けてもよい。また、固定ハンドル9は複数対、設けられていてもよい。手こぎハンドル11の回転軸を複数個設け、ペダルを付け替えて所望の高さで使うようになっていてもよい。
【0034】
<第2のトレーニング器具>
図5は、実施形態に係る、第2のトレーニング器具200を示した図である。第2のトレーニング器具200は、手のひらに収まる大きさの2つの球状体20a,20bを伸縮可能な紐状体21で連結した器具である。
【0035】
球状体20a,20bは、手のひらに収まる大きさであり、テニスボール位の大きさが好ましい。球状体20a,20bは、完全な球状体だけでなく、楕円体であってもよいし、タマゴ型であってもよい。紐状体21としては、ゴムチューブを利用できる。但し、紐状体21の材質や長さは適宜設定可能である。
【0036】
第2のトレーニング器具200の、図5に示した例においては、球状体20a,20bとして、木材から球状体20a,20bを削り出し、球状体20a,20bの一端から他端へと球状体の芯を貫通する貫通孔22を穿設してある。
【0037】
貫通孔22は、一端側で開口した開口22aと、他端側で開口した開口22bとを有し、開口22aの径は開口22bより大きく、開口22bの径は、紐状体21の径とほぼ同程度となっている。球状体20a,20bへの紐状体21の取り付け方は以下の通りである。例えば、一方の球状体20aの開口22aから開口22bへと紐状体21を挿通させて、開口22a側の紐状体21の端部に結び目をつける。さらに、球状体20aの開口22bから飛び出した紐状体21の先端部を、他方の球状体20bの開口22bに挿入し、開口22aから出てきた紐状体21の先端部に結び目を作る。これによって、紐状体21から球状体20a,20bが抜け落ちない状態となる。或いは、球状体20a、20bの夫々に、ヒートン或いはアイと呼ばれる、ネジの後端部に輪が形成された金具を取り付け(ネジの部分を球状体にねじ込み)、夫々の輪に紐状体21の端部をくくりつけてもよい。この場合、貫通孔は不要である。
【0038】
<第2の筋力トレーニング方法>
図6図7図8は、第2のトレーンニング器具200を用いる第2の筋力トレーニング方法の説明図である。図6に示すように、第2のトレーニング器具200の紐状体21を柱などに引っ掛ける。次いで、2つの球状体20a,20bを左右の手で包み込むようにつかむ。その際、球状体20a,20bを強く握らないようにする。例えば、球状体20a, 20bを指先でつまむように持つ。このとき、手のひらに球状体20a, 20bが接触してもしなくてもよい。但し、手のひらに球状体20a, 20bが接触しないようにすると、指の第2関節の曲がり具合が浅くなり、強く握らない状態で球状体20a,20bを保持することができる。
【0039】
その後、球状体20a,20bを肩幅よりやや広げた位置で、各肘から先(腕)が上方に向く一方で、手首より先は、球状体20a,20bの開口22bが前方を向くように上記した状態で保持する。この状態で、紐状体21が柱等で折れ曲がってV字状になるように両肘を下げて紐状体21を引っ張る。紐状体21の伸張状態が不十分な場合は、立ち位置を後方に下げる。肘を後方に下げて紐状体21を引っ張るときには、紐状体21が縮もうとする力を感じながら左右の肩甲骨を近づけるように寄せる(図8参照)。この状態(体勢)を維持しながら、球状体20a, 20bを持った手を体の左右方向に、内側あるいは外側に回転させる。
【0040】
第2の筋力トレーニング方法は、球状体20a,20bをつかんだ両手に前方へ引っ張る引っ張り力を加えながら、その引っ張り力に抗して左右肩甲骨を寄せる方向に肩甲骨周りの筋肉を緊張させ、かつ、球状体20a,20bを持った手を体の左右方向の内側あるいは外側に回転させる筋力トレーニング方法である。
【0041】
第2の筋力トレーニング方法によれば、肩甲骨と肩の連動性を回復することができる。球状体を強く握りすぎないように軽くつかむように球状体20a,20bを握ることで、前腕の関与を軽減し、感覚の薄れた肩甲骨周りの筋肉(菱形筋など)を意識しやすくする。また、伸縮自在な紐状体21を引っ張ることで、体勢を菱形筋で肩甲骨を寄せた状態に持っていくことができる。なお、球状体20a,20bを介して紐状体21を引くことで、菱形筋と三角筋後部、僧帽筋が緊張し、さらに脊柱起立筋も働く。これにより三角筋前部が緩むことで、肩甲骨と肩の連動性を回復しやすくする。
【0042】
<第1、第2の筋力トレーニング方法の併用>
上述した第1及び第2の筋力トレーニング方法を併用することで、上背部、下背部の筋肉群の連動性ある収縮で体の軸をより強化することが可能となる。第1の筋力トレーニング方法では、手こぎハンドルで両手を前後方向に回転させる。一方、第2の筋力トレーニング方法では、両手を左右方向に回転させる。いずれも、ローテーターカフ筋群、すなわち、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋を鍛えることができるが、回転方向が異なるため、ローテーターカフ筋群の動きも異なり、よって、双方を行うことで、より効果的に鍛えることができる。実施形態の構成は、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明は,体幹、体軸の維持のために必要な、脊柱起立筋を始めとして、大腿部内転筋、肩甲骨周りの菱形筋と三角筋後部、僧帽筋などに緊張を与え、また、ローテーターカフ筋群に緊張をもたらし、それら筋肉群を鍛え、筋力の増強、あるいは、衰えを防止でき、いわゆるフィットネス,スポーツジム等の筋力トレーニングに関連する産業において利用できる。本願発明が、産業上利用可能性を具備する点は、特許文献4(特許第2670421号公報)に記載された、特許を受けた筋力トレーニング方法と同様である。なお、特許文献4には、本件発明とは異なる筋力トレーニング方法が記載されているが、知財高裁平成24年(行ケ)第10400号平成25年8月28日判決において、当該筋力トレーニング方法に産業上利用可能性が認められている。
【符号の説明】
【0044】
1・・ベンチ
2・・支持台
3・・脚
4・・座
5・・中樌
6・・穴
7・・ヘッドレスト
8・・ベンチの後端部
9・・固定ハンドル
10・・支柱
11・・手こぎハンドル
12・・回転軸受け
13・・回転軸
14・・クランク
15・・ハンドル軸
16・・連結樌
16a・・外側の角形パイプ
16b・・内側の角形パイプ
17・・調節穴
18・・連結穴
19・・連結ピン
20a, 20b・・球状体
21・・紐状体
22・・貫通孔
22a,22b・・開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8