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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】シートレール装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B60N2/07
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018125728
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020001649
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】今村 友亮
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良啓
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189167(JP,A)
【文献】実開平04-039129(JP,U)
【文献】実開平05-007532(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されるロアレールとシートに固定されるアッパーレールとを有し、前記アッパーレールに支持される複数のローラーが前記ロアレールにそれぞれ案内されることで前記アッパーレールが前記ロアレールに対してスライド可能に組み付けられるシートレール装置であって、
前記ローラーは、前記アッパーレールのスライド方向に沿う一側面に連なる一側支持部と前記一側面の裏面側となる他側面に連なる他側支持部とにそれぞれ支持され、
前記ロアレールは、底壁を介して対向し当該底壁に対してスライド方向に伸びるように連結する一側案内部及び他側案内部にて、前記複数のローラーを案内するように形成され、
前記一側案内部及び前記他側案内部には、前記ローラーが転がり接触する上面の内側端から垂下する内壁部がそれぞれ設けられ、
前記アッパーレールに組み付けられて、前記一側面と当該一側面に対向する前記一側案内部の前記内壁部との間に介在し当該内壁部との間に隙間が設けられる一側片部と、前記他側面と当該他側面に対向する前記他側案内部の前記内壁部との間に介在し当該内壁部との間に隙間が設けられる他側片部と、を有するスペーサーを備え
前記スペーサーは、前記一側案内部の前記内壁部の下方と前記他側案内部の前記内壁部の下方とに入り込まないように形成され ることを特徴とするシートレール装置。
【請求項2】
前記一側案内部及び前記他側案内部に対して等距離であってスライド方向に沿った中央線に向けて、前記一側案内部の上部から薄板状に延出する一側カバーと前記他側案内部の上部から薄板状に延出する他側カバーとを備え、
前記一側カバー及び前記他側カバーは、弾性部材からなり、
前記スペーサーは、少なくとも前記一側片部と前記他側片部とを連結する連結部が前記アッパーレールよりも剛性の低い部材により形成されて、当該連結部がスライド時に前記一側カバーの延出端と前記他側カバーの延出端とを押し分けるように前記アッパーレールに組み付けられることを特徴とする請求項1に記載のシートレール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のシートを前後にスライドさせるためのシートレール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のシートを前後にスライドさせるためのシートレール装置として、例えば、下記特許文献1に開示されるシートレール装置が知られている。このシートレール装置は、アッパーレールを構成する第1アッパーレール及び第2アッパーレールのそれぞれに設けられるローラーがロアレールに設けられる一対の案内部により案内されるようにして、アッパーレールがロアレールに対してスライドする。これにより、アッパーレールが固定される車両用のシートを、ロアレールが固定される車両用フロアに対して前後方向にスライド可能に支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-186984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような構成では、図9(A)に例示するように、シートレール装置に対して衝突等の外力が作用すると、アッパーレール120がロアレール110から剥離しようとしてローラー121等が案内部111,112を押し上げるため、一対の案内部111,112に対して互いに離れる方向に力Fが作用する。シートレール装置としては、上記力Fによる変形を抑制するように剥離強度を向上させる必要がある。
【0005】
上記変形を抑制する構成として、例えば、図9(B)に例示するように、ロアレール110に対して下方側から覆う補強部材130を組み付ける構成が考えられる。しかしながら、剥離時におけるロアレール110の変形方向と補強部材130の変形方向とが同じ方向となり(図9(A)の矢印F参照)、補強部材130の断面形状に関して上記力Fに対して剛性の高い形状を採用し難いという問題がある。このため、補強部材130の板厚を厚くすると、装置自体の重量が増加するだけでなく、コストも増大してしまう。特に、補強部材130をロアレール110に対してアッパーレール120がスライドする範囲に組み付ける必要があるため、スライド量が多くなるほど重量増加やコスト増大も顕著になってしまう。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ロアレールの変形を抑制する補強構成の軽量化を容易に図り得るシートレール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
車体に固定されるロアレール(20)とシートに固定されるアッパーレール(30)とを有し、前記アッパーレールに支持される複数のローラー(51)が前記ロアレールにそれぞれ案内されることで前記アッパーレールが前記ロアレールに対してスライド可能に組み付けられるシートレール装置(10)であって、
前記ローラーは、前記アッパーレールのスライド方向に沿う一側面に連なる一側支持部(31a)と前記一側面の裏面側となる他側面に連なる他側支持部(32a)とにそれぞれ支持され、
前記ロアレールは、底壁(21)を介して対向し当該底壁に対してスライド方向に伸びるように連結する一側案内部(22a)及び他側案内部(22b)にて、前記複数のローラーを案内するように形成され、
前記一側案内部及び前記他側案内部には、前記ローラーが転がり接触する上面(23)の内側端から垂下する内壁部(26)がそれぞれ設けられ、
前記アッパーレールに組み付けられて、前記一側面と当該一側面に対向する前記一側案内部の前記内壁部との間に介在し当該内壁部との間に隙間(G1)が設けられる一側片部(41)と、前記他側面と当該他側面に対向する前記他側案内部の前記内壁部との間に介在し当該内壁部との間に隙間(G2)が設けられる他側片部(42)と、を有するスペーサー(40)を備え
前記スペーサーは、前記一側案内部の前記内壁部の下方と前記他側案内部の前記内壁部の下方とに入り込まないように形成されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、ロアレールは、底壁を介して対向し当該底壁に対してスライド方向に伸びるように連結する一側案内部及び他側案内部にて、アッパーレールの一側支持部と他側支持部とにそれぞれ支持される複数のローラーを案内するように形成される。また、一側案内部及び他側案内部には、ローラーが転がり接触する上面の内側端から垂下する内壁部がそれぞれ設けられる。そして、アッパーレールに組み付けられて、一側面と内壁部との間に介在し当該内壁部との間に隙間が設けられる一側片部と、他側面と内壁部との間に介在し当該内壁部との間に隙間が設けられる他側片部と、を有するスペーサーが設けられ、スペーサーは、一側案内部の内壁部の下方と他側案内部の内壁部の下方とに入り込まないように形成される。
【0009】
このような補強構成を採用することで、衝突等の外力の作用によりローラーが一側案内部及び他側案内部を押し上げる際には、一側案内部の変形に応じてその内壁部が変動して一側片部に押し付けられるとともに、他側案内部の変形に応じてその内壁部が変動して他側片部に押し付けられる。このため、一側面に押し付けられた一側片部により一側案内部における内壁部の更なる変動が抑制されるとともに、他側面に押し付けられた他側片部により他側案内部における内壁部の更なる変動が抑制されるので、一側案内部及び他側案内部の変形を抑制することができる。特に、一側片部及び他側片部には、内壁部から受ける力が圧縮力として作用するため、例えば、樹脂製の部材などの比較的剛性が低い部材であっても採用できるので、ロアレールの変形を抑制する補強構成の軽量化を容易に図ることができる。さらに、スペーサーは、アッパーレールに組み付けられるため、ロアレールに対してアッパーレールとともにスライドすることから、スライド量が多くなってもスライド方向の長さを変える必要が無く、この点からも補強構成の軽量化を容易に図ることができる。
【0010】
請求項2の発明では、一側案内部及び他側案内部に対して等距離であってスライド方向に沿った中央線に向けて、一側案内部の上部から薄板状に延出する一側カバーと他側案内部の上部から薄板状に延出する他側カバーとが設けられ、これら一側カバー及び他側カバーは、弾性部材からなる。そして、スペーサーは、少なくとも一側片部と他側片部とを連結する連結部がアッパーレールよりも剛性の低い部材により形成されて、当該連結部がスライド時に一側カバーの延出端と他側カバーの延出端とを押し分けるようにアッパーレールに組み付けられる。
【0011】
一側カバー及び他側カバーは、一側案内部と他側案内部との隙間にコイン等が落ち込まないようにするためのカバーとして機能し、スライドするアッパーレールにより押し分けられるように弾性部材からなる。そして、アッパーレールのスライド時にはアッパーレールよりも剛性の低い部材により形成される連結部によって一側カバー及び他側カバーが押し分けられるので、金属等の合成の高い部材、例えば、アッパーレールそのものによって押し分けられる場合と比較して、一側カバー及び他側カバーの削れ等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係るシートスライド装置を示す説明図であり、図1(A)は、平面図を示し、図1(B)は、側面図を示す。
図2図1のシートスライド装置のスペーサー近傍を後側から見た状態を拡大して示す拡大図である。
図3図1からロアレールを除いた状態を示す斜視図である。
図4図3に対して異なる方向から見た状態を示す斜視図である。
図5】スペーサーを示す斜視図である。
図6】スペーサーの詳細形状を説明する説明図であり、図6(A)は、平面図を示し、図6(B)は、正面図を示し、図6(C)は、後側からの側面図を示す。
図7】スペーサーの一側片部及び他側片部により内壁部の更なる変動が抑制された状態を説明する説明図である。
図8】第2実施形態に係るシートスライド装置の要部を示す説明図である。
図9図9(A)は、従来のシートレール装置におけるアッパーレールの剥離時の状態を説明する説明図であり、図9(B)は、ロアレールを補強部材で覆った状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るシートレール装置について図を参照して説明する。
本実施形態に係るシートレール装置10は、車両用シート(図示略)を前後スライド可能に車両フロア(図示略)に固定する装置である。このシートレール装置10は、図1及び図2に示すように、主に、車両フロアに固定されるロアレール20と、車両用シートに固定されるアッパーレール30と、スペーサー40と、ロアレール20とアッパーレール30とを相対移動不能に固定(ロック)可能なロック部材60と、をそれぞれ左右一対備えるように構成されている。また、シートレール装置10は、一対のロック部材60によるロアレール20とアッパーレール30とのロック状態とそのロック状態を解除するロック解除状態とを切り替えるために操作される操作部(図示略)を備えている。以下、シートレール装置10の長手方向(図1の左右方向)を前後方向として、シートレール装置10を構成する各要素について詳述する。なお、図1では、一方のロアレール20及びアッパーレール30等を図示しており、他方のロアレール20及びアッパーレール30等は、便宜上、図示を省略している。
【0014】
ロアレール20は、長尺のレール状に形成されており、図1及び図2に示すように、車両フロアに固定される底壁21と、この底壁21の両側にそれぞれ設けられる一側案内部22a及び他側案内部22bとを有するように形成される。一側案内部22a及び他側案内部22bは、後述するローラー51及びサイドローラー52を囲うようにして案内するもので、一側案内部22a及び他側案内部22bには、対向するように配置されてローラー51が転がり接触する上面23及び底面24と、上面23及び底面24を連結する連結面25とがそれぞれ形成されている。また、一側案内部22a及び他側案内部22bには、それぞれ上面23の内側端から垂下するように内壁部26が連なっている。一側案内部22aに連なる内壁部26には、ロック部材60のロック片61と嵌合する複数のロック部材嵌合用孔(図示略)が長手方向に沿って形成されている。
【0015】
アッパーレール30は、左右一対として配置される第1アッパーレール31及び第2アッパーレール32と、第1アッパーレール31及び第2アッパーレール32に対して前後方向から組み付けられる前側連結部33及び後側連結部34とを備えるように構成されている。
【0016】
第1アッパーレール31には、スライド方向に沿う一側面の下端に対してL字状に連なる一側支持部31aが設けられており、この一側支持部31aは、一側案内部22a内に入り込むように配置されている。この一側支持部31aには、ロアレール20との組み付け時に一側案内部22aの上面23及び底面24に対して転がり接触するローラー51が前側及び後側の2箇所にて回転自在に支持されている。
【0017】
同様に、第2アッパーレール32には、スライド方向に沿う他側面の下端に対してL字状に連なる他側支持部32aが設けられており、この他側支持部32aは、他側案内部22b内に入り込むように配置されている。この他側支持部32aには、ロアレール20との組み付け時に他側案内部22bの上面23及び底面24に対して転がり接触するローラー51が前側及び後側の2箇所にて回転自在に支持されている。
【0018】
また、第1アッパーレール31の一側支持部31aの長手方向中間部位には、一部が切り倒されるようにして支持片31bが形成されており、この支持片31bには、一側案内部22aの連結面25に転がり接触するサイドローラー52が回転自在に支持されている。また、第2アッパーレール32の他側支持部32aの前側と後側とには、それぞれ一部が切り倒されるようにして支持片32b,32cが形成されており、両支持片32b,32cには、他側案内部22bの連結面25に転がり接触するサイドローラー52がそれぞれ回転自在に支持されている。
【0019】
また、第1アッパーレール31及び第2アッパーレール32には、前側連結部33及び後側連結部34を利用した組み付け時に面接触する連結片31d~31g及び連結片32d~32gがそれぞれ設けられている。
【0020】
前側連結部33には、車両用シートを固定するための固定部33aと、面接触した連結片31d及び連結片32dが嵌まり込む係合穴と、面接触した連結片31e及び連結片32eが嵌まり込む係合穴とが形成されている。また、後側連結部34には、車両用シートを固定するための固定部34aと、面接触した連結片31f及び連結片32fが嵌まり込む係合穴と、面接触した連結片31g及び連結片32gが嵌まり込む係合穴とが形成されている。
【0021】
スペーサー40は、第1アッパーレール31及び第2アッパーレール32よりも剛性の低い部材、具体的には、合成樹脂により形成されて、アッパーレール30の後側に組み付けられており、アッパーレール30とともにロアレール20に対してスライドする。このスペーサー40は、衝突等の外力がシートレール装置10に対して作用する際のロアレール20の変形を抑制するための部材であって、スライド方向に長く略薄板状に形成される一側片部41及び他側片部42と、これらを連結する連結部43を備えている。
【0022】
図2に示すように、一側片部41は、アッパーレール30への組み付け時に、第1アッパーレール31の一側面と当該一側面に対向する一側案内部22aの内壁部26との間に介在し、第1アッパーレール31の一側面に接触して内壁部26との間に隙間G1が設けられるように形成されている。この一側片部41は、その厚みt1が第1アッパーレール31の板厚よりも大きくなり、上記隙間G1が第1アッパーレール31の板厚よりも小さくなるように形成されている。一側片部41の内側面には、第1アッパーレール31に対する位置決め用の係合部41aが複数形成されている。
【0023】
他側片部42は、アッパーレール30への組み付け時に、第2アッパーレール32の他側面と当該他側面に対向する他側案内部22bの内壁部26との間に介在し、第2アッパーレール32の他側面に接触して内壁部26との間に隙間G2が設けられるように形成されている。この他側片部42は、その厚みt2が第2アッパーレール32の板厚よりも大きくなり、上記隙間G2が第2アッパーレール32の板厚よりも小さくなるように形成されている。他側片部42の内側面には、第2アッパーレール32に対する位置決め用の係合部42aが複数形成されている。
【0024】
連結部43は、一側片部41における上端の長手方向の中間部位と他側片部42における上端の長手方向の中間部位とにそれぞれ連結するように形成されている。この連結部43は、前側にて第1アッパーレール31の一側面後端と第2アッパーレール32の他側面後端とを挟持するとともに、後側連結部34の下端部を隠すように形成されている。また、連結部43は、その後端面43aが滑らかに湾曲して後側ほど高さが低くなるように形成されている。
【0025】
次に、上述のように形成されるスペーサー40による変形抑制効果について説明する。
衝突等の外力の作用によりローラー51が一側案内部22a及び他側案内部22bを押し上げる際には、一側案内部22aの変形に応じてその内壁部26が内側に変動するとともに、他側案内部22bの変形に応じてその内壁部26が内側に変動する。その際、図7に示すように、一側案内部22aの内壁部26は、一側片部41に押し付けられ、他側案内部22bの内壁部26は、他側片部42に押し付けられる。このような押し付けに応じて、一側片部41は、第1アッパーレール31の一側面に押し付けられるとともに、他側片部42は、第2アッパーレール32の他側面に押し付けられる。
【0026】
このため、一側面に押し付けられた一側片部41により一側案内部22aにおける内壁部26の更なる変動が抑制されるとともに、他側面に押し付けられた他側片部42により他側案内部22bにおける内壁部26の更なる変動が抑制されるので、一側案内部22a及び他側案内部22bの変形を抑制することができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態に係るシートレール装置10では、ロアレール20は、底壁21を介して対向し当該底壁21に対してスライド方向に伸びるように連結する一側案内部22a及び他側案内部22bにて、アッパーレール30の一側支持部31aと他側支持部32aとにそれぞれ支持される複数のローラー51を案内するように形成される。また、一側案内部22a及び他側案内部22bには、ローラー51が転がり接触する上面23の内側端から垂下する内壁部26がそれぞれ設けられる。そして、アッパーレール30に組み付けられて、第1アッパーレール31の一側面と内壁部26との間に介在し当該内壁部26との間に隙間G1が設けられる一側片部41と、第2アッパーレール32の他側面と内壁部26との間に介在し当該内壁部26との間に隙間G2が設けられる他側片部42と、を有するスペーサー40が設けられる。
【0028】
これにより、衝突等の外力の作用によりローラー51が一側案内部22a及び他側案内部22bを押し上げる際に内壁部26が内側に変動しても、一側片部41や他側片部42により内壁部26の更なる変動が抑制されるので、一側案内部22a及び他側案内部22bの変形を抑制することができる。特に、一側片部41及び他側片部42には、内壁部26から受ける力が圧縮力として作用するため、スペーサー40として、合成樹脂製の部材などの比較的剛性が低い部材であっても採用できるので、ロアレール20の変形を抑制する補強構成の軽量化を容易に図ることができる。さらに、スペーサー40は、アッパーレール30に組み付けられるため、ロアレール20に対してアッパーレール30とともにスライドすることから、スライド量が多くなってもスライド方向の長さを変える必要が無く、この点からも補強構成の軽量化を容易に図ることができる。
【0029】
特に、ロアレール20の変形を抑制する補強構成を必要なシートレール装置であれば、上記スペーサー40を採用して、ロアレール20の変形の抑制に関する要求が低いシートレール装置であれば、上記スペーサー40を取り除くこともでき、スペーサー40を除く部品に関して共通化を図りやすくすることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、スペーサー40は、合成樹脂により形成されることに限らず、使用環境等によっては、例えば、アッパーレール30と同じ金属部材により形成されてもよい。
【0031】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るシートレール装置について、図8を参照して説明する。
本第2実施形態では、ロアレール20上にリップカバーが配置される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
ロアレール20は、上方から見て一側案内部22aと他側案内部22bとの間に隙間があることから、その隙間にコイン等が落ち込まないようにする必要がある。このため、本実施形態では、図8に示すように、上記隙間を覆うように、ロアレール20上にリップカバー70が配置されている。
【0033】
リップカバー70は、ゴム等の弾性変形可能な樹脂により弾性部材として形成されて、一側案内部22aの上部から薄板状に延出する一側カバー71と、他側案内部22bの上部から薄板状に延出する他側カバー72とを備えるように構成されている。一側カバー71及び他側カバー72は、延出端71a及び延出端72aにて、一側案内部22a及び他側案内部22bに対して等距離であってスライド方向に沿った中央線Lに向けて延出するように配置されている。
【0034】
そして、一側カバー71は、内側係合部71b及び外側係合部71cにて一側案内部22aの上部を挟持するようにして一側案内部22aに組み付けられている。また、他側カバー72は、内側係合部72b及び外側係合部72cにて他側案内部22bの上部を挟持するようにして他側案内部22bに組み付けられている。
【0035】
このように形成されるリップカバー70がロアレール20に組み付けられる本実施形態では、図8に示すように、一側カバー71及び他側カバー72のスライド方向(長手方向)中間部位にて、一側カバー71と他側カバー72との間にアッパーレール30が介在した状態となる。特に、アッパーレール30の後側では、スペーサー40の連結部43により、一側カバー71における延出端71aの一部と他側カバー72における延出端72aの一部とが押し分けられた状態となる。
【0036】
そして、アッパーレール30が後側にスライドする際には、スペーサー40の連結部43が一側カバー71の延出端71aと他側カバー72の延出端72aとを押し分けるようにスライドするため、樹脂と樹脂との接触となり、一側カバー71や他側カバー72に削れが生じ難くなる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係るシートレール装置10では、スペーサー40は、連結部43がアッパーレール30よりも剛性の低い合成樹脂により形成されて、当該連結部43がスライド時に一側カバー71の延出端71aと他側カバー72の延出端72aとを押し分けるようにアッパーレール30に組み付けられる。
【0038】
これにより、アッパーレール30のスライド時にはアッパーレール30よりも剛性の低い部材により形成されるスペーサー40の連結部43によって一側カバー71及び他側カバー72が押し分けられるので、金属等の合成の高い部材、例えば、アッパーレール30そのものによって押し分けられる場合と比較して、一側カバー71及び他側カバー72の削れ等を抑制することができる。
【0039】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記各実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)スペーサー40は、アッパーレール30の後側に組み付けられることに限らず、使用環境等に応じて、アッパーレール30の前側に組み付けられてもよいし、アッパーレール30の前側及び後側のそれぞれに組み付けられてもよい。
【0040】
(2)スペーサー40は、一側片部41及び他側片部42と連結部43とが一体となるように形成されることに限らず、連結部43に対して一側片部41及び他側片部42を組み付けるように形成されてもよい。この構成では、内壁部26の更なる変動を抑制するとともに一側カバー71及び他側カバー72の削れ等を抑制するため、例えば、連結部43は、一側片部41及び他側片部42よりも剛性の低い部材により形成されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…シートレール装置
20…ロアレール
21…底壁
22a…一側案内部
22b…他側案内部
23…上面
26…内壁部
30…アッパーレール
31…第1アッパーレール
31a…一側支持部
32…第2アッパーレール
32a…他側支持部
40…スペーサー
41…一側片部
42…他側片部
43…連結部
51…ローラー
52…サイドローラー
70…リップカバー
71…一側カバー
72…他側カバー
G1,G2…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9