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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】同期撮影システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20221005BHJP
   G04G 15/00 20060101ALI20221005BHJP
   G03B 17/00 20210101ALI20221005BHJP
   G03B 17/38 20210101ALI20221005BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20221005BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221005BHJP
【FI】
H04N5/232 060
G04G15/00 A
G03B17/00 Q
G03B17/38 B
G03B17/02
G03B15/00 R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018219586
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2020088572
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】500033117
【氏名又は名称】株式会社ミクシィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳登
(72)【発明者】
【氏名】橋口 昂矢
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-296323(JP,A)
【文献】特開2013-187826(JP,A)
【文献】特開2012-123131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G04G 15/00
G03B 17/00
G03B 17/38
G03B 17/02
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに通信可能に構成された親装置と子装置を含む同期撮影システムであって、
前記親装置は、遅延時間取得部と、同期撮影制御部を備え、
前記遅延時間取得部は、前記親装置と前記子装置の通信に伴う遅延時間を取得し、
前記同期撮影制御部は、前記親装置と前記子装置の時刻合わせを行うことなく、前記遅延時間に基づいて、前記親装置及び前記子装置の撮影開始のタイミングが一致するように、前記親装置及び前記子装置の撮影開始の制御を行い、
前記同期撮影制御部は、
前記親装置の待機時間である親待機時間が経過した後に前記親装置での撮影を開始するように制御し、
前記親待機時間と、前記遅延時間と、前記子装置の内部時刻とに基づいて算出される時刻での撮影開始を前記子装置に指示する、 同期撮影システム。
【請求項2】
互いに通信可能に構成された親装置と子装置を含む同期撮影システムであって、
前記子装置は、第1及び第2子装置を含み、
前記親装置は、遅延時間取得部と、同期撮影制御部を備え、
前記遅延時間取得部は、前記親装置と第1子装置の通信に伴う第1遅延時間と、前記親装置と第2子装置の通信に伴う第2遅延時間を取得し、
前記同期撮影制御部は、前記親装置と第1及び第2子装置の時刻合わせを行うことなく、第1及び第2遅延時間に基づいて、第1及び第2子装置の撮影開始のタイミングが一致するように、第1及び第2子装置の撮影開始の制御を行い、
前記同期撮影制御部は、
第1遅延時間と、第1子装置の内部時刻とに基づいて決定される時刻での撮影開始を第1子装置に指示し、
第2遅延時間と、第2子装置の内部時刻とに基づいて決定される時刻での撮影開始を第2子装置に指示する、 同期撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台の装置を用いた同期撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数台のカメラで同期撮影するシステムが開示されている。このシステムは、全てのカメラの時刻合わせを行った上で、同時刻に撮影を開始させることによって、同期撮影を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-066898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、スマートフォンのようなカメラ付き携帯情報端末が普及し、このような端末を用いて同期撮影をすることが所望されている。しかし、携帯情報端末には、カメラ用アプリケーション以外にも様々なアプリケーションがインストールされており、複数台の携帯情報端末の時刻合わせを行うと、カメラ用アプリケーション以外のアプリケーションに予期せぬ誤動作・不具合を生じさせる虞がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、カメラ用アプリケーション以外のアプリケーションに予期せぬ誤動作・不具合を生じさせることなく、同期撮影を行うことを可能にする同期撮影システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、互いに通信可能に構成された親装置と子装置を含む同期撮影システムであって、前記親装置は、遅延時間取得部と、同期撮影制御部を備え、前記遅延時間取得部は、前記親装置と前記子装置の通信に伴う遅延時間を取得し、前記同期撮影制御部は、前記親装置と前記子装置の時刻合わせを行うことなく、前記遅延時間に基づいて、前記親装置及び前記子装置の撮影開始のタイミングが一致するように、前記親装置及び前記子装置の撮影開始の制御を行う、同期撮影システムが提供される。
【0007】
本発明では、同期撮影制御部は、親装置と子装置の時刻合わせを行うことなく、遅延時間に基づいて、親装置及び子装置の撮影開始のタイミングが一致するように、親装置及び子装置に対して撮影開始の指示を行う。このため、親装置及び子装置の内部時刻が変化しないので、カメラ用アプリケーション以外のアプリケーションに予期せぬ誤動作・不具合を生じさせることなく、同期撮影を行うことができる。なお、本明細書において、「時刻合わせ」とは、複数の装置の内部時刻を一致させる処理を意味する。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の同期撮影システムであって、前記同期撮影制御部は、前記親装置の待機時間である親待機時間が経過した後に前記親装置での撮影を開始するように制御し、前記親待機時間と、前記遅延時間と、前記子装置の内部時刻とに基づいて算出される時刻での撮影開始を前記子装置に指示する、同期撮影システムである。
好ましくは、前記記載の同期撮影システムであって、前記同期撮影制御部は、前記親装置の待機時間である親待機時間が経過した後に前記親装置での撮影を開始するように制御し、前記子装置の待機時間である子待機時間を指定して前記子装置に撮影開始を指示し、前記子待機時間は、前記親待機時間と前記遅延時間に基づいて決定される、同期撮影システムである。
【0009】
本発明の別の観点によれば、互いに通信可能に構成された親装置と子装置を含む同期撮影システムであって、前記子装置は、第1及び第2子装置を含み、前記親装置は、遅延時間取得部と、同期撮影制御部を備え、前記遅延時間取得部は、前記親装置と第1子装置の通信に伴う第1遅延時間と、前記親装置と第2子装置の通信に伴う第2遅延時間を取得し、前記同期撮影制御部は、前記親装置と第1及び第2子装置の時刻合わせを行うことなく、第1及び第2遅延時間に基づいて、第1及び第2子装置の撮影開始のタイミングが一致するように、第1及び第2子装置の撮影開始の制御を行う、同期撮影システムが提供される。。
好ましくは、前記記載の同期撮影システムであって、前記同期撮影制御部は、第1遅延時間と、第1子装置の内部時刻とに基づいて決定される時刻での撮影開始を第1子装置に指示し、第2遅延時間と、第2子装置の内部時刻とに基づいて決定される時刻での撮影開始を第2子装置に指示する、同期撮影システムである。
好ましくは、前記記載の同期撮影システムであって、前記同期撮影制御部は、第1子装置の待機時間である第1子待機時間を指定して第1子装置に撮影開始を指示し、第2子装置の待機時間である第2子待機時間を指定して第2子装置に撮影開始を指示し、第1及び第2子待機時間は、それぞれ、第1及び第2遅延時間に基づいて決定される、同期撮影システムである。
【0010】
好ましくは、前記記載の同期撮影システムであって、前記遅延時間取得部は、前記子装置を起点とする前記親装置と前記子装置の間の往復通信時間に基づいて前記遅延時間を取得する、同期撮影システムである。
好ましくは、前記記載の同期撮影システムであって、前記親装置と前記子装置は、複数のアプリケーションプログラムをインストール可能な携帯情報端末である、同期撮影システムである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の同期撮影システム1のハードウェア構成図である。
図2】携帯情報端末10の電気的構成を示す機能ブロック図である。
図3】同期撮影システム1の同期撮影機能に関する機能ブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態の同期撮影方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図5】本発明の第1実施形態の同期撮影方法の時間の流れを示すタイムチャートである。
図6】本発明の第2実施形態の同期撮影方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態の同期撮影方法の時間の流れを示すタイムチャートである。
図8】本発明の第3実施形態の同期撮影方法の時間の流れを示すタイムチャートである。
図9】本発明の第4実施形態の同期撮影方法の時間の流れを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0013】
1.第1実施形態
図1に示すように、本発明の第1実施形態の同期撮影システム1は、親装置2と、子装置3を備える。親装置2と子装置3は、どちらも、複数のアプリケーションプログラムをインストール可能な、スマートフォンやタブレットなどの携帯情報端末10によって構成される。親装置2と子装置3を構成する携帯情報端末10は、サイズや性能などの仕様が同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0014】
1-1.携帯情報端末10の構成
携帯情報端末10の筐体12には、その正面12Aに、画面に画像を表示する画像表示手段であるタッチパネルディスプレイ14が備えられる。タッチパネルディスプレイ14は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)及びタッチセンサを備える。LCDは、各種画像を表示し、タッチセンサは、指、スタイラス、又はペン等の指示体を用いて行われる各種入力操作を受け付ける。
【0015】
また、携帯情報端末10の正面12Aには、音が入力されるマイクロフォン16、音を出力するスピーカ18、及び被写体を撮像するカメラ20が備えられる。カメラ20は、筐体12の正面12Aだけでなく筐体12の背面にも備えられる。さらに、筐体12の側面12Bには、携帯情報端末10を起動又は停止させるための電源ボタンやスピーカ18が出力する音のボリューム調整ボタン等の操作ボタン22が備えられる。
【0016】
また、携帯情報端末10の筐体12には、メモリカードが挿入されるスロットやUSB(Universal Serial Bus)端子等が備えられる。
【0017】
図2は、携帯情報端末10の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【0018】
携帯情報端末10は、上記構成に加え、主制御部24、主記憶部26、補助記憶部28、通信部30を備える。
【0019】
主制御部24は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マイクロプロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)等であり、携帯情報端末10の全体の動作を制御する。
【0020】
主記憶部26は、例えば、RAM(Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成されており、主制御部24による各種プログラムに基づく処理の実行時のワークエリア等として用いられる。
【0021】
補助記憶部28は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、画像等の各種データ及び主制御部24の処理に利用されるプログラム等を保存する。補助記憶部28に記憶されるプログラムは、例えば、携帯情報端末10の基本的な機能を実現するためのOS(Operating System)、各種ハードウェア制御するためのドライバ、電子メールやウェブブラウジング、その他各種機能を実現するためのアプリケーションプログラム等である。また、補助記憶部28には、詳細を後述する本実施形態に係る同期撮影処理を実行するためのプログラムが予め記憶されている。
【0022】
通信部30は、例えばNIC(Network Interface Controller)であり、携帯電話網等の通信網に接続する機能を有する。なお、通信部30は、NICに代えて又はNICと共に、無線LAN(Local Area Network)に接続する機能、無線WAN(Wide Area Network)に接続する機能、例えばBluetooth(登録商標)等の近距離の無線通信、及び赤外線通信等を可能とする機能を有してもよい。
【0023】
これら主制御部24、主記憶部26、補助記憶部28、通信部30、タッチパネルディスプレイ14、マイクロフォン16、スピーカ18、カメラ20、及び操作ボタン22は、システムバス33を介して相互に電気的に接続されている。従って、主制御部24は、主記憶部26及び補助記憶部28へのアクセス、タッチパネルディスプレイ14に対する画像の表示、ユーザーによるタッチパネルディスプレイ14や操作ボタン22に対する操作状態の把握、マイクロフォン16への音の入力、スピーカ18からの音の出力、カメラ20に対する制御、及び通信部30を介した各種通信網や他の情報処理装置へのアクセス等を行える。親装置2と子装置3は、それぞれの通信部30を通じて互いに通信可能に構成されている。
【0024】
1-2.本実施形態に係る同期撮影機能に関する機能ブロック図
図3は、本実施形態に係る同期撮影機能に関する機能ブロック図である。
【0025】
親装置2及び子装置3の主制御部24は、カメラ制御部2aと、撮影条件設定部2bと、遅延時間取得部2cと、同期撮影制御部2dと、問い合わせ部2eを備える。カメラ制御部2aは、カメラ20を制御して、フォーカスや絞りなどの撮影条件の設定を行ったり、撮影の開始及び終了を行ったりする機能を有する。撮影条件設定部2bは、カメラ制御部2aを介してフォーカスや絞りなどの撮影条件の設定を行う。遅延時間取得部2cは、親装置2と子装置3の間の通信に伴う遅延時間を取得する。同期撮影制御部2dは、親装置2と子装置3の同期撮影の制御を行う。問い合わせ部2eは、他の装置に対して問い合わせを行う。
【0026】
子装置3の主制御部24は、カメラ制御部3aと、撮影条件設定部3bと、同期撮影制御部3dと、応答部3fを備える。カメラ制御部3aと、撮影条件設定部3bと、同期撮影制御部3dは、親装置2の対応する機能ブロックと同様の機能を有する。応答部3fは、他の装置からの問い合わせに対して応答を行う。
【0027】
親装置2及び子装置3の主制御部24が備える各機能ブロックは、補助記憶部28に記憶されているプログラムによって実現される。
【0028】
1-3.同期撮影方法の詳細
図4図5を用いて、本実施形態の同期撮影システム1を用いた同期撮影方法について詳細に説明する。
【0029】
<ステップS1>
まず、親装置2が同期撮影開始の入力を受け付ける(ステップS1)。一例では、同期撮影用のアプリケーションを立ち上げると、タッチパネルディスプレイ14に「同期開始」のボタンが表示され、このボタンを押圧することによって、ステップS1が実行される。
【0030】
<ステップS2>
次に、親装置2が自身の撮影条件を設定する(ステップS2)。具体的には、撮影条件設定部2bがカメラ制御部2aを介してフォーカスや絞りなどの撮影条件の設定を行う。
【0031】
<ステップS3~S4>
次に、親装置2が子装置3に対して撮影条件の設定を指示すると(ステップS3)、子装置3が自身の撮影条件を設定する(ステップS4)。具体的には、撮影条件設定部2bが撮影条件設定部3bに対して撮影条件の設定を指示すると、撮影条件設定部3bがカメラ制御部3aを介してフォーカスや絞りなどの撮影条件の設定を行う。
【0032】
<ステップS5~S7>
次に、親装置2の問い合わせ部2eが子装置3に対してUptimeの問い合わせを行い(ステップS5)、子装置3が親装置2からのUptimeの問い合わせを受信すると(ステップS6)、応答部3fが即座に子装置3のUptimeであるc_uptimeを親装置2に対して送信する(ステップS7)。Uptimeとは、再起動時点からの連続稼働時間を示す時刻であり、子装置3に固有の内部時刻の一例である。
【0033】
<ステップS8~S9>
次に、親装置2が子装置3からUptimeを受信すると(ステップS8)、問い合わせ部2eが即座に子装置3に対して、往復通信時間yの問い合わせを行う(ステップS9)。
【0034】
<ステップS10~S11>
次に、子装置3が親装置2からの往復通信時間yの問い合わせを受信すると(ステップS10)、応答部3fが即座に子装置3で取得した往復通信時間yを親装置2に対して送信する(ステップS11)。往復通信時間yは、ステップS7の時点でのタイムスタンプと、ステップS10の時点でのタイムスタンプの差分に基づいて算出される時間であり、子装置3を起点として、子装置3と親装置2の間の往復の通信にかかる時間である。
【0035】
<ステップS12~S13>
次に、親装置2が子装置3から往復通信時間yを受信すると(ステップS12)、親装置2の遅延時間取得部2cは、遅延時間zを取得する(ステップS13)。遅延時間zは、z=((x/2)+(y/2))/2によって算出される。xは、親装置2を起点として、親装置2と子装置3の間の往復の通信にかかる通信時間であり、ステップS5の時点でのタイムスタンプと、ステップS8の時点でのタイムスタンプの差分に基づいて算出される時間である。yは、ステップS12において子装置3から受信した通信時間である。往復通信時間x,yを2で割ることによって片道通信時間x/2,y/2を算出し、片道通信時間x/2,y/2を平均することによって、遅延時間zを算出している。そして、後述するように、遅延時間zに基づいて親装置2と子装置3の撮影開始のタイミングを一致させることによって同期撮影を行っている。
【0036】
ところで、上記の方法による同期撮影は、親装置2と子装置3の間の往復通信時間が一定であることを前提としているが、実際には、突発的な通信遅延によって親装置2と子装置3の間の往復通信時間が長くなる場合がある。そして、そのような往復通信時間に基づいて遅延時間zを算出して同期撮影を試みると、親装置2と子装置3の撮影開始のタイミングがずれてしまう。
【0037】
例えば、遅延時間zをz=(x/2)やz=(y/2)のように、1回の往復通信時間に基づいて算出する場合、通信遅延aが発生すると、遅延時間zは、a/2だけ長くなってしまう。一方、本実施形態のように、往復通信時間xと往復通信時間yに基づいて遅延時間zを算出すると、往復通信時間x,yの一方において通信遅延aが発生した場合には、遅延時間zは、a/4だけ長くなる。従って、通信遅延aの影響が低減される。
【0038】
また、複数の往復通信時間xに基づいて遅延時間zを算出することによっても通信遅延aの影響を低減することができる。しかし、この方法では、通信遅延aの原因が例えば子装置3での応答遅延である場合、往復通信時間xを複数回測定したとしても、その全てにおいて、通信遅延aが発生する蓋然性が高い。この場合、往復通信時間xを複数回測定したとしても、遅延時間zは、a/2だけ長くなってしまうので、通信遅延aの影響が低減されない。従って、往復通信時間xと往復通信時間yに基づいて遅延時間zを算出することが好ましい。
【0039】
また、別の観点では、往復通信時間xを用いずに、往復通信時間yに基づいて遅延時間zを算出してもよい。往復通信時間yに発生する通信遅延の原因としてはステップS8とステップS9の間の親装置2内での処理の遅延が考えられるが、この遅延は親装置2の処理の最適化によって低減可能である。このため、往復通信時間yには、往復通信時間xよりも通信遅延が発生しにくい。従って、往復通信時間xを用いずに往復通信時間yに基づいて遅延時間zを算出することによって、通信遅延の影響を低減できる場合がある。
【0040】
<ステップS14~S15>
次に、親装置2の同期撮影制御部2dは、時刻nでの撮影開始を子装置3の同期撮影制御部3dに指示し(ステップS14)、自身に対してステップS14から親待機時間Tが経過した後に撮影を開始する設定を行う(ステップS15)。Tは、ステップS14の時点から撮影開始までの親装置2の待機時間(親待機時間)である。時刻nは、親待機時間Tと、遅延時間zと、子装置3の内部時刻とに基づいて算出される時刻であり、本実施形態では、n=c_uptime+z+p+Tによって算出される。c_uptimeは、ステップS8において親装置2が受信した、子装置3のUptimeである。zは、ステップS13で取得した遅延時間である。pは、ステップS8の時点でのタイムスタンプと、ステップS14の時点でのタイムスタンプの差分に基づいて算出される経過時間である。図5に示すように、c_uptimeに対して、z+p+Tの合計時間を加えることによって得られた時刻nは、親装置2の撮影開始時刻と一致する。従って、時刻nに子装置3の撮影を開始させることによって、親装置2と子装置3の同期撮影が可能になる。
【0041】
<ステップS16~S17>
子装置3の同期撮影制御部3dは、親装置2から時刻nに撮影を開始する旨の指示を受信すると(ステップS16)、自身に対して時刻nに撮影を開始する設定を行う(ステップS17)。
【0042】
<ステップS18~S19>
親装置2の同期撮影制御部2dは、ステップS14から親待機時間Tが経過した後に、カメラ制御部2aに撮影開始を指示し、カメラ制御部2aは親装置2のカメラ20による撮影を開始する(ステップS18)。一方、子装置3の同期撮影制御部3dは、時刻nにカメラ制御部3aに撮影開始を指示し、カメラ制御部3aは子装置3のカメラ20による撮影を開始する(ステップS19)。
【0043】
以上の方法によって、親装置2と子装置3の時刻合わせを行うことなく、親装置2と子装置3の同期撮影が可能になる。
【0044】
上記撮影は、静止画の撮影であっても、動画の撮影であってもよい。また、動画の撮影である場合には、上記と同様の方法によって、撮影終了のタイミングを同期させてもよい。
【0045】
1-4.変形例
・上記実施形態では、同期撮影開始入力があった後に撮影撮影条件の設定を行っているが、撮影撮影条件の設定は、同期撮影開始入力の前に行っておいてもよい。
・上記実施形態では、同期撮影入力があった後に遅延時間zを取得しているが、遅延時間zの取得は、同期撮影開始入力の前に行っておいてもよい。
・上記実施形態では、子装置3の内部時刻としてUptimeを用いているが、子装置3の時計の時刻など、Uptime以外の時刻を子装置3の内部時刻として用いてもよい。
【0046】
2.第2実施形態
図6図7を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態と類似しており、同期撮影方法の違いが主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0047】
2-1.同期撮影方法の詳細
本実施形態では、ステップS1~S13を第1実施形態と同様に実行し、第1実施形態のステップS14~S19の代わりに、ステップS21~S26を実施する。以下、ステップS21~S26を説明する。
【0048】
<ステップS21~S24>
親装置2の同期撮影制御部2dは、子装置3の同期撮影制御部3dに対して待機時間(子待機時間)Tcを指定して撮影開始の指示を行い(ステップS21)、自身に対してステップS21から親待機時間Tが経過した後に撮影を開始する設定を行う(ステップS22)。子装置3の同期撮影制御部3dは、親装置2から撮影開始の指示を受信すると(ステップS23)、自身に対して子待機時間Tc後に撮影を開始する設定を行う(ステップS24)。
【0049】
子待機時間Tcは、親待機時間Tと遅延時間zに基づいて決定される。本実施形態では、子待機時間Tcは、Tc=T-zによって算出される。Tは、ステップS21の時点から撮影開始までの親装置2の待機時間(親待機時間)である。zは、ステップS13で取得した遅延時間である。図7に示すように、親待機時間Tは、遅延時間zと子待機時間Tcの和と一致する。従って、子装置3が撮影開始の指示を受信してから子待機時間Tc後に撮影開始するように指示することによって、親装置2と子装置3の同期撮影が可能になる。
【0050】
<ステップS25~S26>
親装置2の同期撮影制御部2dは、ステップS21から親待機時間Tが経過した後に、カメラ制御部2aに撮影開始を指示し、カメラ制御部2aは親装置2のカメラ20による撮影を開始する(ステップS25)。一方、子装置3の同期撮影制御部3dは、ステップS24から子待機時間Tcが経過した後に、カメラ制御部3aに撮影開始を指示し、カメラ制御部3aは子装置3のカメラ20による撮影を開始する(ステップS26)。
【0051】
以上の方法によって、親装置2と子装置3の時刻合わせを行うことなく、親装置2と子装置3の同期撮影が可能になる。
【0052】
2-2.変形例
・本実施形態では、子装置3の内部時刻を用いずに同期撮影を行っている。従って、同期撮影にはUptimeは不要であり、ステップS5~S8では、Uptimeの問い合わせを行う代わりに、別のコマンド(例:ping)を送信することによって往復通信時間xを測定してもよい。
【0053】
3.第3実施形態
図8を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態と類似しており、親装置と複数の子装置間で同期撮影を行う点が主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0054】
本実施形態の同期撮影システムは、親装置2と、第1及び第2子装置31,32を備える。親装置2は、第1実施形態と同様の構成である。子装置31,32は、第1実施形態の子装置3と同様の構成である。
【0055】
3-1.同期撮影方法の詳細
本実施形態では、第1実施形態と同様に、ステップS1~S19を実行することによって、親装置2と子装置31,32による同期撮影を行う。但し、第1実施形態において子装置3が実行又は子装置3に対して実行したステップは、本実施形態では、子装置31,32のそれぞれが実行又は子装置31,32のそれぞれに対して実行する。
【0056】
ステップS5~S8では、子装置31からは、子装置31のUptimeであるc1_uptimeを受信し、子装置32からは、子装置32のUptimeであるc2_uptimeを受信する。
【0057】
ステップS12では、子装置31と親装置2の間の往復通信時間y1を子装置31から受信し、子装置32と親装置2の間の往復通信時間y2を子装置32から受信する。
【0058】
ステップS13では、子装置31と親装置2の間の遅延時間z1と、子装置32と親装置2の間の遅延時間z2を算出する。
【0059】
ステップS14では、時刻n1での撮影開始を子装置31に指示し、時刻n2での撮影開始を子装置32に指示する。時刻n1は、親待機時間Tと、遅延時間z1と、子装置31の内部時刻とに基づいて算出される時刻であり、本実施形態では、n1=c1_uptime+z1+p+Tによって算出される。時刻n2は、親待機時間Tと、遅延時間z2と、子装置32の内部時刻とに基づいて算出される時刻であり、本実施形態では、n2=c2_uptime+z2+p+Tによって算出される。
【0060】
図8に示すように、c1_uptimeに対して、z1+p+Tの合計時間を加えることによって得られた時刻n1と、c2_uptimeに対して、z2+p+Tの合計時間を加えることによって得られた時刻n2は、親装置2の撮影開始時刻と一致する。従って、時刻n1に子装置31の撮影を開始させ、時刻n2に子装置32の撮影を開始させることによって、親装置2と子装置31,32の同期撮影が可能になる。
【0061】
以上の方法によって、親装置2と子装置31,32の時刻合わせを行うことなく、親装置2と子装置31,32の同期撮影が可能になる。
【0062】
3-2.変形例
・本実施形態では、親装置2は撮影を行うことが必須ではない。従って、親装置2は撮影を行わずに、子装置31,32の同期撮影を制御する役割を有する装置であってもよい。この場合、時刻n1は、遅延時間z1,z2の何れよりも長い時間であるベース時間Bと、遅延時間z1と、子装置31の内部時刻とに基づいて算出され、時刻n2は、ベース時間Bと、遅延時間z2と、子装置32の内部時刻とに基づいて算出される。親待機時間Tは、ベース時間Bの一例である。
【0063】
4.第4実施形態
図9を用いて、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、第2及び3実施形態と類似しており、第3実施形態と同様の装置構成のシステムにおいて、第2実施形態と同様の方法で、親装置と複数の子装置間で同期撮影を行う。以下、相違点を中心に説明する。
【0064】
4-1.同期撮影方法の詳細
本実施形態では、第2実施形態と同様に、ステップS1~S13及びS21~S26を実行することによって、親装置2と子装置31,32による同期撮影を行う。ステップS13までは、第3実施形態と同様に行う。ステップS21~S26については、第2実施形態において子装置3が実行又は子装置3に対して実行したステップは、本実施形態では、子装置31,32のそれぞれが実行又は子装置31,32のそれぞれに対して実行する。
【0065】
<ステップS21~S24>
親装置2の同期撮影制御部2dは、子装置31,32の同期撮影制御部3dに対して待機時間(子待機時間)Tc1,Tc2を指定して撮影開始の指示を行い、(ステップS21)、自身に対してステップS21から親待機時間Tが経過した後に撮影を開始する設定を行う(ステップS22)。子装置31,32の同期撮影制御部3dは、親装置2から撮影開始の指示を受信すると(ステップS23)、自身に対して子待機時間Tc1,Tc2後に撮影を開始する設定を行う(ステップS24)。
【0066】
子装置31の子待機時間Tc1は、親待機時間Tと遅延時間z1に基づいて決定される。本実施形態では、子待機時間Tc1は、Tc1=T-z1によって算出される。子装置32の子待機時間Tc2は、親待機時間Tと遅延時間z2に基づいて決定される。本実施形態では、子待機時間Tc2は、Tc2=T-z2によって算出される。Tは、ステップS21の時点から撮影開始までの親装置2の待機時間(親待機時間)である。z1,z2は、ステップS13で取得した遅延時間である。図9に示すように、親待機時間Tは、遅延時間z1と子待機時間Tc1の和と一致し、遅延時間z2と子待機時間Tc2の和とも一致する。従って、子装置31,32が撮影開始の指示を受信してから子待機時間Tc1,Tc2後に撮影開始するように指示することによって、親装置2と子装置31,32の同期撮影が可能になる。
【0067】
<ステップS25~S26>
親装置2の同期撮影制御部2dは、ステップS21から親待機時間Tが経過した後に、カメラ制御部2aに撮影開始を指示し、カメラ制御部2aは親装置2のカメラ20による撮影を開始する(ステップS25)。一方、子装置31,32の同期撮影制御部3dは、ステップS24から子待機時間Tc1,Tc2が経過した後に、カメラ制御部3aに撮影開始を指示し、カメラ制御部3aは子装置3のカメラ20による撮影を開始する(ステップS26)。
【0068】
以上の方法によって、親装置2と子装置31,32の時刻合わせを行うことなく、親装置2と子装置31,32の同期撮影が可能になる。
【0069】
4-2.変形例
・本実施形態では、親装置2は撮影を行うことが必須ではない。従って、親装置2は撮影を行わずに、子装置31,32の同期撮影を制御する役割を有する装置であってもよい。この場合、子待機時間Tc1,Tc2は、遅延時間z1,z2の何れよりも長い時間であるベース時間Bと、遅延時間z1,z2に基づいて決定される。親待機時間Tは、ベース時間Bの一例である。
【0070】
5.その他の実施形態
・遅延時間zは、3以上の往復通信時間に基づいて算出してもよい。
・複数の往復通信時間に基づいて遅延時間zを取得する場合、複数の往復通信時間のうちの値が小さい1又は複数の往復通信時間(好ましくは最小の往復通信時間)に基づいて遅延時間zを取得してもよい。この場合、突発的な通信遅延が発生したものは遅延時間zの算出には考慮されないので、通信遅延の影響をより確実に排除することができる。
・上記実施形態では、親装置2の撮影開始のタイミングは、親装置2が子装置3に対して撮影開始の指示を行う時点を起点とて決定されているが、別の時点を起点にして親装置2の撮影開始のタイミングを決定してもよい。例えば、ステップS6において親装置2が子装置3からUptimeを受信した時点を起点としてもよく、ステップS12において親装置2が子装置3から往復通信時間yを受信した時点を起点としてもよい。親装置2は、子装置3からのUptime又は往復通信時間yの返答を受信した時点(好ましくは最後の返答を受信した時点)から親待機時間T(遅延時間zより長い時間)経過後に撮影を開始するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 :同期撮影システム
2 :親装置
2a :カメラ制御部
2b :撮影条件設定部
2c :遅延時間取得部
2d :同期撮影制御部
2e :問い合わせ部
3 :子装置
3a :カメラ制御部
3b :撮影条件設定部
3d :同期撮影制御部
3f :応答部
10 :携帯情報端末
12 :筐体
12A :正面
12B :側面
14 :タッチパネルディスプレイ
16 :マイクロフォン
18 :スピーカ
20 :カメラ
22 :操作ボタン
24 :主制御部
26 :主記憶部
28 :補助記憶部
30 :通信部
31 :第1子装置
32 :第2子装置
33 :システムバス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9