(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20221005BHJP
F16H 19/04 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60N2/07
F16H19/04 E
F16H19/04 J
(21)【出願番号】P 2018234649
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良啓
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0145323(US,A1)
【文献】特開平10-138805(JP,A)
【文献】特開2017-030527(JP,A)
【文献】特開2006-288165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
B60N 2/06
A47C 1/023
H02N 2/00
F16H 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に固定されて、複数の係合穴がスライド方向に沿って等間隔に形成されるロアレールと、
シートに固定されるとともに前記ロアレールに対しスライド可能に設けられるアッパーレールと、
スライド時に回転駆動するモータと、
前記アッパーレールに組み付けられて、前記モータの回転力に応じて前記アッパーレールを前記ロアレールに対してスライドさせるスライド機構と、
を備えるシートスライド装置であって、
前記スライド機構は、
前記モータの回転力に応じて回転する入力側ギヤと、
同軸的に円弧状の第1スライドギヤが設けられる第1ギヤと、
同軸的に第2スライドギヤが設けられる第2ギヤと、
同軸的に円弧状の第3スライドギヤが設けられる第3ギヤと、
同軸的に第4スライドギヤが設けられる第4ギヤと、
前記第1スライドギヤ及び前記第2スライドギヤに噛合可能な第1ラックと前記係合穴に係合可能な所定数の第1係合爪とが一側に形成される第1ロック部と、
前記第3スライドギヤ及び前記第4スライドギヤに噛合可能な第2ラックと前記係合穴に係合可能な所定数の第2係合爪とが一側に形成される第2ロック部と、
前記第1ラックを前記第1スライドギヤ及び前記第2スライドギヤのいずれか一方に押し付ける方向であって、前記第1係合爪を前記係合穴に係合させる方向に、前記第1ロック部を付勢する第1付勢部と、
前記第2ラックを前記第3スライドギヤ及び前記第4スライドギヤのいずれか一方に押し付ける方向であって、前記第2係合爪を前記係合穴に係合させる方向に、前記第2ロック部を付勢する第2付勢部と、
を備え、
前記第1ギヤ及び前記第2ギヤのうちの一方は、他方と前記入力側ギヤとの双方に噛合し、
前記第3ギヤ及び前記第4ギヤのうちの一方は、他方と前記入力側ギヤとの双方に噛合し、
前記第1ラックは、前記第1スライドギヤが円弧状に形成されることで、前記第1付勢部の付勢力に応じて、前記第1スライドギヤに噛合する第1噛合状態と、前記第1スライドギヤに噛合していない状態にて前記第2スライドギヤに噛合する第2噛合状態と、のいずれかの状態に維持され、
前記第2ラックは、前記第3スライドギヤが円弧状に形成されることで、前記第2付勢部の付勢力に応じて、前記第3スライドギヤに噛合する第3噛合状態と、前記第3スライドギヤに噛合していない状態にて前記第4スライドギヤに噛合する第4噛合状態と、のいずれかの状態に維持され、
前記第1スライドギヤは、前記第1噛合状態中に、前記第1係合爪と前記係合穴との係合が解除されて、前記第1係合爪が次の前記係合穴に対して係合可能な位置まで前記第1ロック部が前記スライド方向に沿って所定距離にて当該第1スライドギヤに対して相対移動するように形成され、
前記第2スライドギヤは、前記第2噛合状態中に、前記第1係合爪と前記係合穴とが係合した状態で、当該第2スライドギヤが前記スライド方向に沿って前記所定距離にて前記第1ロック部に対して相対移動するように形成され、
前記第3スライドギヤは、前記第3噛合状態中に、前記第2係合爪と前記係合穴との係合が解除されて、前記第2係合爪が次の前記係合穴に対して係合可能な位置まで前記第2ロック部が前記スライド方向に沿って前記所定距離にて当該第3スライドギヤに対して相対移動するように形成され、
前記第4スライドギヤは、前記第4噛合状態中に、前記第2係合爪と前記係合穴とが係合した状態で、当該第4スライドギヤが前記スライド方向に沿って前記所定距離にて前記第2ロック部に対して相対移動するように形成されることを特徴とするシートスライド装置。
【請求項2】
床面に固定されて、複数の係合穴がスライド方向に沿って等間隔に形成されるロアレールと、
シートに固定されるとともに前記ロアレールに対しスライド可能に設けられるアッパーレールと、
スライド時に回転駆動するモータと、
前記アッパーレールに組み付けられて、前記モータの回転力に応じて前記アッパーレールを前記ロアレールに対してスライドさせるスライド機構と、
を備えるシートスライド装置であって、
前記スライド機構は、
前記モータの回転力に応じて回転する入力側ギヤと、
同軸的に円弧状の第1スライドギヤが設けられる第1ギヤと、
同軸的に第2スライドギヤが設けられる第2ギヤと、
同軸的に円弧状の第3スライドギヤが設けられる第3ギヤと、
同軸的に第4スライドギヤが設けられる第4ギヤと、
一側に前記第1スライドギヤ及び前記第2スライドギヤに噛合可能な第1ラックが形成され、他側に前記係合穴に係合可能な所定数の第1係合爪が形成される第1ロック部と、
一側に前記第3スライドギヤ及び前記第4スライドギヤに噛合可能な第2ラックが形成され、他側に前記係合穴に係合可能な所定数の第2係合爪が形成される第2ロック部と、
前記第1ラックを前記第1スライドギヤ及び前記第2スライドギヤのいずれか一方に押し付ける方向であって、前記第1係合爪と前記係合穴との係合を解除する方向に、前記第1ロック部を付勢する第1付勢部と、
前記第2ラックを前記第3スライドギヤ及び前記第4スライドギヤのいずれか一方に押し付ける方向であって、前記第2係合爪と前記係合穴との係合を解除する方向に、前記第2ロック部を付勢する第2付勢部と、
を備え、
前記第1ギヤ及び前記第2ギヤのうちの一方は、他方と前記入力側ギヤとの双方に噛合し、
前記第3ギヤ及び前記第4ギヤのうちの一方は、他方と前記入力側ギヤとの双方に噛合し、
前記第1ラックは、前記第1スライドギヤが円弧状に形成されることで、前記第1付勢部の付勢力に応じて、前記第1スライドギヤに噛合する第1噛合状態と、前記第1スライドギヤに噛合していない状態にて前記第2スライドギヤに噛合する第2噛合状態と、のいずれかの状態に維持され、
前記第2ラックは、前記第3スライドギヤが円弧状に形成されることで、前記第2付勢部の付勢力に応じて、前記第3スライドギヤに噛合する第3噛合状態と、前記第3スライドギヤに噛合していない状態にて前記第4スライドギヤに噛合する第4噛合状態と、のいずれかの状態に維持され、
前記第2スライドギヤは、前記第2噛合状態中に、前記第1係合爪と前記係合穴との係合が解除されて、前記第1係合爪が次の前記係合穴に対して係合可能な位置まで前記第1ロック部が前記スライド方向に沿って所定距離にて当該第1スライドギヤに対して相対移動するように形成され、
前記第1スライドギヤは、前記第1噛合状態中に、前記第1係合爪と前記係合穴とが係合した状態で、当該第1スライドギヤが前記スライド方向に沿って前記所定距離にて前記第1ロック部に対して相対移動するように形成され、
前記第4スライドギヤは、前記第4噛合状態中に、前記第2係合爪と前記係合穴との係合が解除されて、前記第2係合爪が次の前記係合穴に対して係合可能な位置まで前記第2ロック部が前記スライド方向に沿って前記所定距離にて当該第4スライドギヤに対して相対移動するように形成され、
前記第3スライドギヤは、前記第3噛合状態中に、前記第2係合爪と前記係合穴とが係合した状態で、当該第3スライドギヤが前記スライド方向に沿って前記所定距離にて前記第2ロック部に対して相対移動するように形成されることを特徴とするシートスライド装置。
【請求項3】
前記第1スライドギヤと前記第2スライドギヤと前記第3スライドギヤと前記第4スライドギヤとが同じ形状となるように、前記第1ギヤと前記第2ギヤと前記第3ギヤと前記第4ギヤとが同じ形状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のシートを前後にスライドさせるためのシートスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のシートを前後にスライドさせるシートスライド装置として、例えば、特許文献1に開示されるシートスライド装置が知られている。このシートスライド装置は、車体側に固定されるロアレール部材と、このロアレール部材に対して摺動自在にシート側に固定されるアッパーレール部材と、このアッパーレール部材の内部において後方へ延びるスクリューシャフトと、を備えている。また、シートスライド装置は、スクリューシャフトを挿通させて回動可能に支持し、ボルトを用いてアッパーレール部材に固定されるブラケットを備えている。そして、スクリューシャフトをロアレール部材に固定されたナット部材に螺合させ、スクリューシャフトの回動方向に応じて、アッパーレール部材をロアレール部材に対して前後にスライドさせる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような構成では、スライド量に応じて必要となるスクリューシャフトの長さが変わるため、要求されるスライド量ごとにそのスライド量に応じた長さのスクリューシャフトを用意する必要があり、スクリューシャフト等の部品の標準化が困難であるという問題がある。また、スライド量が増えるほど、スクリューシャフトが長くなるために、シートスライド装置の軽量化が困難であるという問題も生じる。また、例えば、ラックとピニオンとを利用したシートスライド装置であっても、スライド量に応じた長さのラックを用意する必要があり、標準化及び軽量化が困難であるという同様な問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、スライド量にかかわらず同じスライド機構を採用可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
床面に固定されて、複数の係合穴(27)がスライド方向に沿って等間隔に形成されるロアレール(20)と、
シートに固定されるとともに前記ロアレールに対しスライド可能に設けられるアッパーレール(30)と、
スライド時に回転駆動するモータ(41)と、
前記アッパーレールに組み付けられて、前記モータの回転力に応じて前記アッパーレールを前記ロアレールに対してスライドさせるスライド機構(50)と、
を備えるシートスライド装置(10)であって、
前記スライド機構は、
前記モータの回転力に応じて回転する入力側ギヤ(61)と、
同軸的に円弧状の第1スライドギヤ(62a)が設けられる第1ギヤ(62)と、
同軸的に第2スライドギヤ(63a)が設けられる第2ギヤ(63)と、
同軸的に円弧状の第3スライドギヤ(64a)が設けられる第3ギヤ(64)と、
同軸的に第4スライドギヤ(65a)が設けられる第4ギヤ(65)と、
前記第1スライドギヤ及び前記第2スライドギヤに噛合可能な第1ラック(71a)と前記係合穴に係合可能な所定数の第1係合爪(72a)とが一側に形成される第1ロック部(70a)と、
前記第3スライドギヤ及び前記第4スライドギヤに噛合可能な第2ラック(71b)と前記係合穴に係合可能な所定数の第2係合爪(72b)とが一側に形成される第2ロック部(70b)と、
前記第1ラックを前記第1スライドギヤ及び前記第2スライドギヤのいずれか一方に押し付ける方向であって、前記第1係合爪を前記係合穴に係合させる方向に、前記第1ロック部を付勢する第1付勢部(80a)と、
前記第2ラックを前記第3スライドギヤ及び前記第4スライドギヤのいずれか一方に押し付ける方向であって、前記第2係合爪を前記係合穴に係合させる方向に、前記第2ロック部を付勢する第2付勢部(80b)と、
を備え、
前記第1ギヤ及び前記第2ギヤのうちの一方は、他方と前記入力側ギヤとの双方に噛合し、
前記第3ギヤ及び前記第4ギヤのうちの一方は、他方と前記入力側ギヤとの双方に噛合し、
前記第1ラックは、前記第1スライドギヤが円弧状に形成されることで、前記第1付勢部の付勢力に応じて、前記第1スライドギヤに噛合する第1噛合状態と、前記第1スライドギヤに噛合していない状態にて前記第2スライドギヤに噛合する第2噛合状態と、のいずれかの状態に維持され、
前記第2ラックは、前記第3スライドギヤが円弧状に形成されることで、前記第2付勢部の付勢力に応じて、前記第3スライドギヤに噛合する第3噛合状態と、前記第3スライドギヤに噛合していない状態にて前記第4スライドギヤに噛合する第4噛合状態と、のいずれかの状態に維持され、
前記第1スライドギヤは、前記第1噛合状態中に、前記第1係合爪と前記係合穴との係合が解除されて、前記第1係合爪が次の前記係合穴に対して係合可能な位置まで前記第1ロック部が前記スライド方向に沿って所定距離にて当該第1スライドギヤに対して相対移動するように形成され、
前記第2スライドギヤは、前記第2噛合状態中に、前記第1係合爪と前記係合穴とが係合した状態で、当該第2スライドギヤが前記スライド方向に沿って前記所定距離にて前記第1ロック部に対して相対移動するように形成され、
前記第3スライドギヤは、前記第3噛合状態中に、前記第2係合爪と前記係合穴との係合が解除されて、前記第2係合爪が次の前記係合穴に対して係合可能な位置まで前記第2ロック部が前記スライド方向に沿って前記所定距離にて当該第3スライドギヤに対して相対移動するように形成され、
前記第4スライドギヤは、前記第4噛合状態中に、前記第2係合爪と前記係合穴とが係合した状態で、当該第4スライドギヤが前記スライド方向に沿って前記所定距離にて前記第2ロック部に対して相対移動するように形成されることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、
床面に固定されて、複数の係合穴(27)がスライド方向に沿って等間隔に形成されるロアレール(20)と、
シートに固定されるとともに前記ロアレールに対しスライド可能に設けられるアッパーレール(30)と、
スライド時に回転駆動するモータ(41)と、
前記アッパーレールに組み付けられて、前記モータの回転力に応じて前記アッパーレールを前記ロアレールに対してスライドさせるスライド機構(50)と、
を備えるシートスライド装置(10)であって、
前記スライド機構は、
前記モータの回転力に応じて回転する入力側ギヤ(61)と、
同軸的に円弧状の第1スライドギヤ(62a)が設けられる第1ギヤ(62)と、
同軸的に第2スライドギヤ(63a)が設けられる第2ギヤ(63)と、
同軸的に円弧状の第3スライドギヤ(64a)が設けられる第3ギヤ(64)と、
同軸的に第4スライドギヤ(65a)が設けられる第4ギヤ(65)と、
一側に前記第1スライドギヤ及び前記第2スライドギヤに噛合可能な第1ラック(71a)が形成され、他側に前記係合穴に係合可能な所定数の第1係合爪(72a)が形成される第1ロック部(70c)と、
一側に前記第3スライドギヤ及び前記第4スライドギヤに噛合可能な第2ラック(71b)が形成され、他側に前記係合穴に係合可能な所定数の第2係合爪(72b)が形成される第2ロック部(70d)と、
前記第1ラックを前記第1スライドギヤ及び前記第2スライドギヤのいずれか一方に押し付ける方向であって、前記第1係合爪と前記係合穴との係合を解除する方向に、前記第1ロック部を付勢する第1付勢部(80a)と、
前記第2ラックを前記第3スライドギヤ及び前記第4スライドギヤのいずれか一方に押し付ける方向であって、前記第2係合爪と前記係合穴との係合を解除する方向に、前記第2ロック部を付勢する第2付勢部(80b)と、
を備え、
前記第1ギヤ及び前記第2ギヤのうちの一方は、他方と前記入力側ギヤとの双方に噛合し、
前記第3ギヤ及び前記第4ギヤのうちの一方は、他方と前記入力側ギヤとの双方に噛合し、
前記第1ラックは、前記第1スライドギヤが円弧状に形成されることで、前記第1付勢部の付勢力に応じて、前記第1スライドギヤに噛合する第1噛合状態と、前記第1スライドギヤに噛合していない状態にて前記第2スライドギヤに噛合する第2噛合状態と、のいずれかの状態に維持され、
前記第2ラックは、前記第3スライドギヤが円弧状に形成されることで、前記第2付勢部の付勢力に応じて、前記第3スライドギヤに噛合する第3噛合状態と、前記第3スライドギヤに噛合していない状態にて前記第4スライドギヤに噛合する第4噛合状態と、のいずれかの状態に維持され、
前記第2スライドギヤは、前記第2噛合状態中に、前記第1係合爪と前記係合穴との係合が解除されて、前記第1係合爪が次の前記係合穴に対して係合可能な位置まで前記第1ロック部が前記スライド方向に沿って所定距離にて当該第1スライドギヤに対して相対移動するように形成され、
前記第1スライドギヤは、前記第1噛合状態中に、前記第1係合爪と前記係合穴とが係合した状態で、当該第1スライドギヤが前記スライド方向に沿って前記所定距離にて前記第1ロック部に対して相対移動するように形成され、
前記第4スライドギヤは、前記第4噛合状態中に、前記第2係合爪と前記係合穴との係合が解除されて、前記第2係合爪が次の前記係合穴に対して係合可能な位置まで前記第2ロック部が前記スライド方向に沿って前記所定距離にて当該第4スライドギヤに対して相対移動するように形成され、
前記第3スライドギヤは、前記第3噛合状態中に、前記第2係合爪と前記係合穴とが係合した状態で、当該第3スライドギヤが前記スライド方向に沿って前記所定距離にて前記第2ロック部に対して相対移動するように形成されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、同軸的に円弧状の第1スライドギヤが設けられる第1ギヤと同軸的に第2スライドギヤが設けられる第2ギヤとのうちの一方は、他方と入力側ギヤとの双方に噛合している。また、同軸的に円弧状の第3スライドギヤが設けられる第3ギヤと同軸的に第4スライドギヤが設けられる第4ギヤとのうちの一方は他方と入力側ギヤとの双方に噛合している。また、第1スライドギヤ及び第2スライドギヤに噛合可能な第1ラックと、ロアレールの係合穴に係合可能な所定数の第1係合爪とが一側に形成される第1ロック部は、第1ラックが第1スライドギヤ及び第2スライドギヤのいずれか一方に押し付けられる方向であって、第1係合爪を係合穴に係合させる方向に、第1付勢部により付勢される。また、第3スライドギヤ及び第4スライドギヤに噛合可能な第2ラックと、ロアレールの係合穴に係合可能な所定数の第2係合爪とが一側に形成される第2ロック部は、第2ラックが第3スライドギヤ及び第4スライドギヤのいずれか一方に押し付けられる方向であって、第2係合爪を係合穴に係合させる方向に、第2付勢部により付勢される。そして、第1ラックは、第1スライドギヤが円弧状に形成されることで、第1付勢部の付勢力に応じて、第1スライドギヤに噛合する第1噛合状態と、第1スライドギヤに噛合していない状態にて第2スライドギヤに噛合する第2噛合状態と、のいずれかの状態に維持される。また、第2ラックは、第3スライドギヤが円弧状に形成されることで、第2付勢部の付勢力に応じて、第3スライドギヤに噛合する第3噛合状態と、第3スライドギヤに噛合していない状態にて第4スライドギヤに噛合する第4噛合状態と、のいずれかの状態に維持される。また、第1スライドギヤは、第1噛合状態中に、第1係合爪と係合穴との係合が解除されて、第1係合爪が次の係合穴に対して係合可能な位置まで第1ロック部がスライド方向に沿って所定距離にて当該第1スライドギヤに対して相対移動するように形成され、第2スライドギヤは、第2噛合状態中に、第1係合爪と係合穴とが係合した状態で、当該第2スライドギヤがスライド方向に沿って所定距離にて第1ロック部に対して相対移動するように形成される。また、第3スライドギヤは、第3噛合状態中に、第2係合爪と係合穴との係合が解除されて、第2係合爪が次の係合穴に対して係合可能な位置まで第2ロック部がスライド方向に沿って所定距離にて当該第3スライドギヤに対して相対移動するように形成され、第4スライドギヤは、第4噛合状態中に、第2係合爪と係合穴とが係合した状態で、当該第4スライドギヤがスライド方向に沿って所定距離にて第2ロック部に対して相対移動するように形成される。
【0009】
これにより、第2スライドギヤ及び第4スライドギヤが第1スライドギヤ及び第3スライドギヤに対して逆回転の関係となる。そして、第2噛合状態及び第3噛合状態では、係合解除状態の第2係合爪が次の係合穴に対して係合可能な位置まで第2ロック部がスライド方向に沿って所定距離にて第3スライドギヤに対して相対移動するとともに、第1係合爪が係合穴に係合した状態で第2スライドギヤがスライド方向に沿って上記所定距離にて第1ロック部に対して相対移動する。その後の第1噛合状態及び第4噛合状態では、係合解除状態の第1係合爪が次の係合穴に対して係合可能な位置まで第1ロック部がスライド方向に沿って所定距離にて第1スライドギヤに対して相対移動するとともに、第2係合爪が係合穴に係合した状態で第4スライドギヤがスライド方向に沿って上記所定距離にて第2ロック部に対して相対移動する。このため、入力側ギヤ、第1ギヤ、第2ギヤ、第3ギヤ及び第4ギヤをギヤ部とするとき、第1スライドギヤ及び第3スライドギヤが一回転するごとに、ロアレールに対して、スライド機構のうち、第2噛合状態及び第3噛合状態にて第2ロック部がギヤ部を基準にスライド方向に所定距離移動する際にギヤ部が係合状態の第1ロック部を基準にスライド方向に上記所定距離移動し、その後の第1噛合状態及び第4噛合状態にて第1ロック部がギヤ部を基準にスライド方向に上記所定距離移動する際にギヤ部が係合状態の第2ロック部を基準にスライド方向に上記所定距離移動する。すなわち、係合状態の第1ロック部を基準とするギヤ部及び第2ロック部の相対移動と、係合状態の第2ロック部を基準とするギヤ部及び第1ロック部の相対移動とが交互に繰り返されるようにして、スライド機構がロアレールに対してスライド方向に移動するので、スライド量が比較的長いシートスライド装置やスライド量が比較的短いシートスライド装置に同じスライド機構を採用することができる。したがって、スライド量が長くなるためにスライド機構が重くなることもなく、スライド量にかかわらず同じスライド機構を採用可能なシートスライド装置を実現することができる。
【0010】
請求項2の発明では、同軸的に円弧状の第1スライドギヤが設けられる第1ギヤと同軸的に第2スライドギヤが設けられる第2ギヤとのうちの一方は、他方と入力側ギヤとの双方に噛合している。また、同軸的に円弧状の第3スライドギヤが設けられる第3ギヤと同軸的に第4スライドギヤが設けられる第4ギヤとのうちの一方は他方と入力側ギヤとの双方に噛合している。また、一側に第1スライドギヤ及び第2スライドギヤに噛合可能な第1ラックが形成され、他側にロアレールの係合穴に係合可能な所定数の第1係合爪が形成される第1ロック部は、第1ラックが第1スライドギヤ及び第2スライドギヤのいずれか一方に押し付けられる方向であって、第1係合爪と係合穴との係合を解除する方向に、第1付勢部により付勢される。また、一側に第3スライドギヤ及び第4スライドギヤに噛合可能な第2ラックが形成され、他側にロアレールの係合穴に係合可能な所定数の第2係合爪が形成される第2ロック部は、第2ラックが第3スライドギヤ及び第4スライドギヤのいずれか一方に押し付けられる方向であって、第2係合爪と係合穴との係合を解除する方向に、第2付勢部により付勢される。そして、第1ラックは、第1スライドギヤが円弧状に形成されることで、第1付勢部の付勢力に応じて、第1スライドギヤに噛合する第1噛合状態と、第1スライドギヤに噛合していない状態にて第2スライドギヤに噛合する第2噛合状態と、のいずれかの状態に維持される。また、第2ラックは、第3スライドギヤが円弧状に形成されることで、第2付勢部の付勢力に応じて、第3スライドギヤに噛合する第3噛合状態と、第3スライドギヤに噛合していない状態にて第4スライドギヤに噛合する第4噛合状態と、のいずれかの状態に維持される。また、第2スライドギヤは、第2噛合状態中に、第1係合爪と係合穴との係合が解除されて、第1係合爪が次の係合穴に対して係合可能な位置まで第1ロック部がスライド方向に沿って所定距離にて当該第2スライドギヤに対して相対移動するように形成され、第1スライドギヤは、第1噛合状態中に、第1係合爪と係合穴とが係合した状態で、当該第1スライドギヤがスライド方向に沿って上記所定距離にて第1ロック部に対して相対移動するように形成される。また、第4スライドギヤは、第4噛合状態中に、第2係合爪と係合穴との係合が解除されて、第2係合爪が次の係合穴に対して係合可能な位置まで第2ロック部がスライド方向に沿って上記所定距離にて当該第4スライドギヤに対して相対移動するように形成され、第3スライドギヤは、第3噛合状態中に、第2係合爪と係合穴とが係合した状態で、当該第3スライドギヤがスライド方向に沿って上記所定距離にて第2ロック部に対して相対移動するように形成される。
【0011】
このようにしても、請求項1の発明と同様に、係合状態の第1ロック部を基準とするギヤ部及び第2ロック部の相対移動と、係合状態の第2ロック部を基準とするギヤ部及び第1ロック部の相対移動とが交互に繰り返されるようにして、スライド機構がロアレールに対してスライド方向に移動するので、スライド量が比較的長いシートスライド装置やスライド量が比較的短いシートスライド装置に同じスライド機構を採用することができる。したがって、スライド量が長くなるためにスライド機構が重くなることもなく、スライド量にかかわらず同じスライド機構を採用可能なシートスライド装置を実現することができる。
【0012】
請求項3では、第1スライドギヤと第2スライドギヤと第3スライドギヤと第4スライドギヤとが同じ形状となるように、第1ギヤと第2ギヤと第3ギヤと第4ギヤとが同じ形状に形成される。各ギヤの歯数やピッチ円径、回転中心位置等を調整することで、各スライドギヤ及び各ギヤを同じ形状としても、係合状態の第1ロック部を基準とするギヤ部及び第2ロック部の相対移動と、係合状態の第2ロック部を基準とするギヤ部及び第1ロック部の相対移動とを交互に繰り返すようにスライドするスライド機構を実現することができる。これにより、ギヤ部に関して更なる標準化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るシートスライド装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、
図1に示すシートスライド装置の平面図であり、
図2(B)は、
図1に示すシートスライド装置の側面図である。
【
図3】
図1に示すシートスライド装置を後側から見た状態を拡大して示す説明図である。
【
図4】シートスライド装置の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【
図5】
図1からロアレールを除いたアッパーレール等を示す説明図であり、
図5(A)は、平面図を示し、
図5(B)は、側面図を示す。
【
図6】
図4に示すアッパーレール等を後側から見た状態を拡大して示す説明図である。
【
図7】
図5(B)のX-X断面を示す断面図である。
【
図8】ロック部の説明図であり、
図8(A)は、正面図を示し、
図8(B)は、側面図を示し、
図8(C)は、底面図を示す。
【
図9】スライド機構を利用したスライドの作動原理を説明するタイミングチャート図の一部である。
【
図10】スライド機構を利用したスライドの作動原理を説明するタイミングチャート図の一部である。
【
図11】第2実施形態に係るシートスライド装置の要部を説明する説明図である。
【
図12】ギヤ部の変形例を説明する説明図であって、
図12(A)は、第1噛合状態及び第4噛合状態にて係合状態の第1ロック部を基準としてギヤ部及び第2ロック部が相対移動する状態を示し、
図12(B)は、第2噛合状態及び第3噛合状態にて係合状態の第2ロック部を基準としてギヤ部及び第1ロック部が相対移動する状態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るシートスライド装置について図を参照して説明する。
本実施形態に係るシートスライド装置10は、電動式スライドシートとして構成される車両用シート(図示略)を前後スライド可能に車両フロア等の床面(図示略)に固定する装置である。このシートスライド装置10は、
図1~
図3に示すように、主に、床面に固定されるロアレール20と、車両用シートに固定されるアッパーレール30と、アッパーレール30をロアレール20に対してスライドさせるためのスライド機構50とをそれぞれ左右一対備えるように構成されている。
【0015】
また、シートスライド装置10は、
図4に示すように、一対のスライド機構50を駆動するためのモータ41と、ロアレール20に対するアッパーレール30のスライド位置を調整する際に操作される操作部42と、操作部42の操作に応じてモータ41を回転駆動させる制御部43とを備えている。以下、シートスライド装置10の長手方向(
図2の左右方向)を前後方向として、シートスライド装置10を構成する各要素について詳述する。なお、
図1及び
図2では、一組のロアレール20及びアッパーレール30等を備える一方のレールを図示しており、他方のレールに関しては、便宜上、図示を省略している。
【0016】
ロアレール20は、長尺のレール状に形成されており、
図2及び
図3に示すように、床面に固定される底壁21と、この底壁21の両側にそれぞれ設けられる一側案内部22a及び他側案内部22bとを有するように形成される。一側案内部22a及び他側案内部22bは、アッパーレール30に支持されるローラー33を囲うようにして案内するもので、一側案内部22a及び他側案内部22bには、対向するように配置されてローラー33が転がり接触する上面23及び底面24と、上面23及び底面24を連結する連結面25とがそれぞれ形成されている。また、一側案内部22a及び他側案内部22bには、それぞれ上面23の内側端から垂下するように内壁部26が連なっている。一側案内部22aに連なる内壁部26には、後述する第1ロック部70aの各第1係合爪72aや第2ロック部70bの各第2係合爪72bと係合可能な複数の係合穴27が長手方向に沿って等間隔にて形成されている。
【0017】
アッパーレール30は、電動式スライドシート用のアッパーレールであって、モータ41の回転駆動を利用してスライド制御を行なうためのスライド機構50が組み付けられている。このアッパーレール30は、
図5及び
図6に示すように、左右一対として配置される第1アッパーレール31及び第2アッパーレール32を備え、第1アッパーレール31及び第2アッパーレール32の前後にローラー33がそれぞれ回転可能に支持されている。
【0018】
第1アッパーレール31と第2アッパーレール32との間には、第1ロック部70a及び第2ロック部70bをスライド方向に案内するため前後に2つずつ計4つの略円柱状の案内部34が設けられている。また、第1アッパーレール31には、
図5(B)及び
図6に示すように、案内部34により案内される第1ロック部70a及び第2ロック部70bのそれぞれの一部が挿通する開口31a,31b,31cがスライド方向に長くなるように形成されている。
【0019】
スライド機構50は、ギヤ部60と、前後一対の第1ロック部70a及び第2ロック部70bと第1付勢部80a及び第2付勢部80bとを備えている。ギヤ部60は、
図7に示すように、モータ41の回転力に応じて回転する入力側ギヤ61と、第1ギヤ62及び第2ギヤ63と、第3ギヤ64及び第4ギヤ65と、アッパーレール30に組み付けられて各ギヤ61~65を回転可能に支持するギヤケース66とを備えている。第1ギヤ62及び第3ギヤ64は、同じ形状であって、第1ギヤ62には、同軸的に円弧状の第1スライドギヤ62aが設けられ、第3ギヤ64には、同軸的に第1スライドギヤ62aと同じ形状の第3スライドギヤ64aが設けられている。第2ギヤ63及び第4ギヤ65は、同じ形状であって、第2ギヤ63には、同軸的に円状の第2スライドギヤ63aが設けられ、第4ギヤ65には、同軸的に第2スライドギヤ63aと同じ形状の第4スライドギヤ65aが設けられている。第2ギヤ63は、第1ギヤ62と入力側ギヤ61との双方に噛合しており、第1ギヤ62と第2ギヤ63とが逆回転の関係となる。第4ギヤ65は、第3ギヤ64と入力側ギヤ61との双方に噛合しており、第3ギヤ64と第4ギヤ65とが逆回転の関係となる。なお、
図7及び後述する
図9,
図10では、便宜上、ギヤ部60における各ギヤの歯を省略し円状又は円弧状のピッチ円にて図示している。
【0020】
ギヤケース66には、第1スライドギヤ62a及び第2スライドギヤ63aを第1アッパーレール31側に露出させるための開口66aが形成されている。第1ギヤ62及び第2ギヤ63は、開口66aを介して、第1スライドギヤ62a及び第2スライドギヤ63aが第1アッパーレール31の開口31aに対向するように、ギヤケース66に支持されている。特に、第1ギヤ62及び第2ギヤ63は、
図7からわかるように、第1スライドギヤ62aを円状としたときのピッチ円が第2スライドギヤ63aのピッチ円よりも第1アッパーレール31側となるように、ギヤケース66に支持されている。
【0021】
また、ギヤケース66には、第3スライドギヤ64a及び第4スライドギヤ65aを第1アッパーレール31側に露出させるための開口66bが形成されている。第3ギヤ64及び第4ギヤ65は、開口66bを介して、第3スライドギヤ64a及び第4スライドギヤ65aが第1アッパーレール31の開口31aに対向するように、ギヤケース66に支持されている。特に、第3ギヤ64及び第4ギヤ65は、
図7からわかるように、第3スライドギヤ64aを円状としたときのピッチ円が第4スライドギヤ65aのピッチ円よりも第1アッパーレール31側となるように、ギヤケース66に支持されている。
【0022】
第1ロック部70a及び第2ロック部70bは、同じ形状であり、第1ロック部70aを例に、
図8を参照して説明する。
図8に示すように、第1ロック部70aは、第1スライドギヤ62a及び第2スライドギヤ63aに噛合可能な第1ラック71aと、ロアレール20の係合穴27に係合可能な所定数の第1係合爪72aと、第1ラック71aと各第1係合爪72aとを連結する連結部73とを備えている。第1ラック71a及び各第1係合爪72aは、連結部73における一側の上端及び下端から同じ方向に延出するように形成されている。各第1係合爪72aは、第1ラック71aが第2スライドギヤ63aに噛合する際に、ロアレール20の係合穴27に係合するように形成されている。特に、各第1係合爪72aは、係合穴27に対して円滑に係合するため、先端側ほど幅が狭くなるように形成されている。連結部73には、アッパーレール30への組み付け時に2つの案内部34が挿通する開口74が、スライド方向に長くなるように形成されている。
【0023】
第2ロック部70bは、
図8からわかるように、第1ラック71a及び各第1係合爪72aと同じ形状となる第2ラック71b及び各第2係合爪72bが、連結部73における一側の上端及び下端から同じ方向に延出するように形成されている。第2ロック部70bの第2ラック71bは、第3スライドギヤ64a及び第4スライドギヤ65aに噛合可能に形成され、各第2係合爪72bは、第2ラック71bが第4スライドギヤ65aに噛合する際に、ロアレール20の係合穴27に係合するように形成されている。
【0024】
このように構成される第1ロック部70a及び第2ロック部70bは、
図6に示すように、連結部73の開口74に両案内部34が挿通し、第1ラック71a及び第2ラック71bが開口31aに挿通し、各第1係合爪72a及び各第2係合爪72bが開口31bに挿通するように、それぞれアッパーレール30に組み付けられている。
【0025】
この組み付け状態では、第1ロック部70a及び第2ロック部70bは、それぞれ開口74を挿通する両案内部34によってスライド方向に案内可能な状態となる。また、第1ロック部70aの第1ラック71aは、アッパーレール30に組み付けられたギヤ部60の第1スライドギヤ62a及び第2スライドギヤ63aに対向した状態となる。また、第2ロック部70bの第2ラック71bは、アッパーレール30に組み付けられたギヤ部60の第3スライドギヤ64a及び第4スライドギヤ65aに対向した状態となる。
【0026】
第1付勢部80aは、コイルスプリングとして構成されており、第2アッパーレール32に組み付けられた状態で、第1ロック部70aの連結部73を第1アッパーレール31に向けて付勢するように配置されている。このため、第1付勢部80aは、第1ロック部70aの第1ラック71aを第1スライドギヤ62a及び第2スライドギヤ63aのいずれか一方に押し付ける方向であって、各第1係合爪72aを対向する係合穴27に係合させる方向に、第1ロック部70aを付勢するように機能する。
【0027】
第2付勢部80bは、第1付勢部80aと同様にコイルスプリングとして構成されており、第2アッパーレール32に組み付けられた状態で、第2ロック部70bの連結部73を第1アッパーレール31に向けて付勢するように配置されている。このため、第2付勢部80bは、第2ロック部70bの第2ラック71bを第3スライドギヤ64a及び第4スライドギヤ65aのいずれか一方に押し付ける方向であって、各第2係合爪72bを対向する係合穴27に係合させる方向に、第2ロック部70bを付勢するように機能する。
【0028】
このような付勢状態では、円弧状に形成される第1スライドギヤ62aが円状に形成される第2スライドギヤ63aよりも第1ラック71a側に位置する場合があるため、第1ロック部70aの第1ラック71aが第1スライドギヤ62aに噛合する噛合状態(以下、第1噛合状態ともいう)と、第1ラック71aが第1スライドギヤ62aに噛合していない状態にて第2スライドギヤ63aに噛合する噛合状態(以下、第2噛合状態ともいう)と、のいずれかの状態に維持される。
【0029】
同様に、円弧状に形成される第3スライドギヤ64aが円状に形成される第4スライドギヤ65aよりも第2ラック71b側に位置する場合があるため、第2ロック部70bの第2ラック71bが第3スライドギヤ64aに噛合する噛合状態(以下、第3噛合状態ともいう)と、第2ラック71bが第3スライドギヤ64aに噛合していない状態にて第4スライドギヤ65aに噛合する噛合状態(以下、第4噛合状態ともいう)と、のいずれかの状態に維持される。
【0030】
そして、上述のように構成されるスライド機構50が組み付けられたアッパーレール30は、各ローラー33が一側案内部22a及び他側案内部22bに案内されるようにしてロアレール20に組み付けられる。この組み付け状態では、第1付勢部80aにより付勢された第1ロック部70aの第1ラック71aが第2スライドギヤ63aに噛合するか、第2付勢部80bにより付勢された第2ロック部70bの第2ラック71bが第4スライドギヤ65aに噛合して、開口31bを挿通した第1係合爪72aが係合穴27に係合するか、開口31bを挿通した第2係合爪72bが係合穴27に係合することで、アッパーレール30がロアレール20に対してスライド不能なロック状態となる。
【0031】
次に、本実施形態の特徴的構成について詳述する。
本実施形態では、第1スライドギヤ62aは、第1噛合状態中に、第1ロック部70aの第1ラック71aを第1付勢部80aによる付勢力に抗してロック解除方向に所定量以上押し込むことで、第1係合爪72aとロアレール20の係合穴27との係合が解除されるように配置されている。さらに、第1スライドギヤ62aは、1回転中の第1噛合状態時において、第1ラック71aの押し込み量が上記所定量以上となる間、第1ロック部70aが、スライド方向に沿って所定距離にて当該第1スライドギヤ62aに対して相対移動し、第1ラック71aの押し込み量が上記所定量未満に変わったときに、第1係合爪72aが次の係合穴27に噛合するように形成されている。すなわち、第1スライドギヤ62aは、上記所定距離が、係合している係合穴27から次に係合する予定の係合穴27までのスライド方向の距離となるように調整されている。なお、この調整は、第1スライドギヤ62aの歯数やピッチ円径、回転中心位置等に応じて行うことができる。
【0032】
また、第2スライドギヤ63aは、第2噛合状態時に、第1ロック部70aの第1係合爪72aとロアレール20の係合穴27との係合状態が維持されるように配置されている。さらに、第2スライドギヤ63aは、1回転中の第2噛合状態時に、ロアレール20に係合している第1ロック部70aに対して、スライド方向に沿って上記所定距離にて相対移動するように調整されている。なお、この調整は、第2スライドギヤ63aの歯数やピッチ円径、回転中心位置等に応じて行うことができる。
【0033】
また、第3スライドギヤ64aは、第3噛合状態中に、第2ロック部70bの第2ラック71bを第2付勢部80bによる付勢力に抗してロック解除方向に所定量以上押し込むことで、第2係合爪72bとロアレール20の係合穴27との係合が解除されるように配置されている。さらに、第3スライドギヤ64aは、1回転中の第3噛合状態時において、第2ラック71bの押し込み量が上記所定量以上となる間、第2ロック部70bが、スライド方向に沿って上記所定距離にて当該第3スライドギヤ64aに対して相対移動し、第2ラック71bの押し込み量が上記所定量未満に変わったときに、第2係合爪72bが次の係合穴27に噛合するように形成されている。すなわち、第3スライドギヤ64aは、上記所定距離が、係合している係合穴27から次に係合する予定の係合穴27までのスライド方向の距離となるように調整されている。なお、この調整は、第1スライドギヤ62aと同様に、第3スライドギヤ64aの歯数やピッチ円径、回転中心位置等に応じて行うことができる。
【0034】
また、第4スライドギヤ65aは、第4噛合状態時に、第2ロック部70bの第2係合爪72bとロアレール20の係合穴27との係合状態が維持されるように配置されている。さらに、第4スライドギヤ65aは、1回転中の第4噛合状態時に、ロアレール20に係合している第2ロック部70bに対して、スライド方向に沿って上記所定距離にて相対移動するように調整されている。なお、この調整は、第2スライドギヤ63aと同様に、第4スライドギヤ65aの歯数やピッチ円径、回転中心位置等に応じて行うことができる。
【0035】
特に、各ギヤ61~65は、第1ロック部70aと第2ロック部70bとの双方が同時にロック解除状態となることを避けるため、第1噛合状態と第3噛合状態とが同時に生じないように配置されている。
【0036】
このように構成されるスライド機構50を利用したスライドの作動原理について、モータ41の回転力に応じて入力側ギヤ61が所定方向に回転する場合を例に、
図9及び
図10に示すタイミングチャート図を参照して、以下に詳述する。
【0037】
図9(A)からわかるように、第2噛合状態及び第4噛合状態では、第1ロック部70aの各第1係合爪72aと第2ロック部70bの各第2係合爪72bとがそれぞれロアレール20の係合穴27に係合し、第2スライドギヤ63aが第1ロック部70aの第1ラック71aに噛合し、第4スライドギヤ65aが第2ロック部70bの第2ラック71bに噛合している。このため、ギヤ部60は、第2スライドギヤ63a及び第4スライドギヤ65aの回転に応じて、ロアレール20に係合している第1ロック部70a及び第2ロック部70bに対して、スライド方向に沿って相対移動する。
【0038】
そして、
図9(A)に示すように、第3スライドギヤ64aと第2ロック部70bの第2ラック71bとが噛合し始め、第4噛合状態から第3噛合状態に移行すると、第3スライドギヤ64aによって第2ラック71bが押し込まれ始め、第2ロック部70bが第2付勢部80bの付勢力に抗してロック解除方向に移動し始める。その一方で、第1ロック部70aでは、第2噛合状態が維持されているため、ギヤ部60は、第2スライドギヤ63aの回転に応じて、ロアレール20に係合している第1ロック部70aに対して、スライド方向に沿って相対移動する。
【0039】
その後、
図9(B)に示すように、第3スライドギヤ64aによって第2ラック71bが所定量以上押し込まれると、第2ロック部70bの第2係合爪72bとロアレール20の係合穴27との係合が解除される。この解除状態では、
図9(B)からわかるように、第3スライドギヤ64aの回転に応じて第2ロック部70bがスライド方向に沿って当該第3スライドギヤ64aに対して相対移動し始める。さらに、第3スライドギヤ64aが回転することで、第2ロック部70bがスライド方向に沿って当該第3スライドギヤ64aに対してさらに相対移動する。その一方で、第1ロック部70aでは、第2噛合状態が維持されているため、ギヤ部60は、第2スライドギヤ63aの回転に応じて、ロアレール20に係合している第1ロック部70aに対して、スライド方向に沿って相対移動する。
【0040】
そして、
図9(C)に示すように、第3スライドギヤ64aがさらに回転することで、第2ラック71bの押し込み量が減少し始めても、当該押し込み量が上記所定量以上である間、第2ロック部70bのスライド方向への相対移動が継続される。
【0041】
その後、第2ラック71bの押し込み量が上記所定量未満になると、第2ロック部70bがスライド方向に沿って上記所定距離(
図9の例では3つ隣の係合穴27までの距離に相当)にて相対移動しており、第2係合爪72bが次に係合する予定の係合穴27まで移動していることから、各第2係合爪72bが対向する係合穴27に係合し始める。
【0042】
そして、
図9(D)に示すように、第3スライドギヤ64aが第2ラック71bに噛合しない回転角度まで回転すると、第3噛合状態から第4噛合状態に移行する。この状態では、各第2係合爪72bがそれぞれ係合穴27への係合を完了した直後であり、第4スライドギヤ65aが噛合している第2ラック71bに対して当該第4スライドギヤ65aの回転に応じてスライド方向に沿って相対移動し始める。その一方で、第1ロック部70aでは、第2噛合状態が維持されている。すなわち、第1スライドギヤ62aが第1ラック71aに噛合し始めるまで、ギヤ部60が、第2スライドギヤ63a及び第4スライドギヤ65aの回転に応じて、ロアレール20に係合している第1ロック部70a及び第2ロック部70bに対して、スライド方向に沿って相対移動する。
【0043】
そして、
図9(E)に示すように、第1スライドギヤ62aと第1ロック部70aの第1ラック71aとが噛合し始め、第2噛合状態から第1噛合状態に移行すると、第1スライドギヤ62aによって第1ラック71aが押し込まれ始め、第1ロック部70aが第1付勢部80aの付勢力に抗してロック解除方向に移動し始める。その一方で、第2ロック部70bでは、第4噛合状態が維持されているため、ギヤ部60は、第4スライドギヤ65aの回転に応じて、ロアレール20に係合している第2ロック部70bに対して、スライド方向に沿って相対移動する。
【0044】
その後、
図10(A)に示すように、第1スライドギヤ62aによって第1ロック部70aの第1ラック71aが所定量以上押し込まれると、第1ロック部70aの第1係合爪72aとロアレール20の係合穴27との係合が解除される。この解除状態では、
図10(B)からわかるように、第1スライドギヤ62aの回転に応じて第1ロック部70aがスライド方向に沿って当該第1スライドギヤ62aに対して相対移動し始める。さらに、第1スライドギヤ62aが回転することで、第1ロック部70aがスライド方向に沿って当該第1スライドギヤ62aに対してさらに相対移動する。その一方で、第2ロック部70bでは、第4噛合状態が維持されているため、ギヤ部60は、第4スライドギヤ65aの回転に応じて、ロアレール20に係合している第2ロック部70bに対して、スライド方向に沿って相対移動する。
【0045】
そして、
図10(B)に示すように、第1スライドギヤ62aがさらに回転することで、第1ラック71aの押し込み量が減少し始めても、当該押し込み量が上記所定量以上である間、第1ロック部70aのスライド方向への相対移動が継続される。
【0046】
その後、第1ラック71aの押し込み量が上記所定量未満になると、第1ロック部70aがスライド方向に沿って上記所定距離にて相対移動しており、第1係合爪72aが次に係合する予定の係合穴27まで移動していることから、各第1係合爪72aが対向する係合穴27に係合し始める。
【0047】
そして、
図10(C)に示すように、第1スライドギヤ62aが第1ラック71aに噛合しない回転角度まで回転すると、第1噛合状態から第2噛合状態に移行する。この状態では、各第1係合爪72aがそれぞれ係合穴27への係合を完了した直後であり、第2スライドギヤ63aが噛合している第1ラック71aに対して当該第2スライドギヤ63aの回転に応じてスライド方向に沿って相対移動し始める。その一方で、第2ロック部70bでは、第4噛合状態が維持されている。すなわち、第3スライドギヤ64aが第2ラック71bに噛合し始めるまで、ギヤ部60が、第2スライドギヤ63a及び第4スライドギヤ65aの回転に応じて、ロアレール20に係合している第1ロック部70a及び第2ロック部70bに対して、スライド方向に沿って相対移動する。
【0048】
そして、
図10(D)に示すように、第3スライドギヤ64aと第2ロック部70bの第2ラック71bとが噛合し始めると、上述した
図9(A)にて示すように第4噛合状態から第3噛合状態に移行する噛合状態となる。
【0049】
このように、スライド機構50では、第2噛合状態及び第3噛合状態では、係合解除状態の第2係合爪72bが次の係合穴27に対して係合可能な位置まで第2ロック部70bがスライド方向に沿って所定距離にて第3スライドギヤ64aに対して相対移動するとともに、第1係合爪72aが係合穴27に係合した状態で第2スライドギヤ63aがスライド方向に沿って上記所定距離にて第1ロック部70aに対して相対移動する。その後の第1噛合状態及び第4噛合状態では、係合解除状態の第1係合爪72aが次の係合穴27に対して係合可能な位置まで第1ロック部70aがスライド方向に沿って上記所定距離にて第1スライドギヤ62aに対して相対移動するとともに、第2係合爪72bが係合穴27に係合した状態で第4スライドギヤ65aがスライド方向に沿って上記所定距離にて第2ロック部70bに対して相対移動する。このため、第1スライドギヤ62a及び第3スライドギヤ64aが一回転するごとに、ロアレール20に対して、スライド機構50のうち、第2噛合状態及び第3噛合状態にて第2ロック部70bがギヤ部60を基準にスライド方向に所定距離移動する際にギヤ部60が係合状態の第1ロック部70aを基準にスライド方向に上記所定距離移動し、その後の第1噛合状態及び第4噛合状態にて第1ロック部70aがギヤ部60を基準にスライド方向に上記所定距離移動する際にギヤ部60が係合状態の第2ロック部70bを基準にスライド方向に上記所定距離移動する。すなわち、係合状態の第1ロック部70aを基準とするギヤ部60及び第2ロック部70bの相対移動と、係合状態の第2ロック部70bを基準とするギヤ部60及び第1ロック部70aの相対移動とが交互に繰り返されるようにして、スライド機構50がロアレール20に対してスライド方向に移動する。このため、モータ41の回転に応じて、スライド機構50が組み付けられるアッパーレール30をロアレール20に対してスライドさせることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、第2ギヤ63が第1ギヤ62と入力側ギヤ61との双方に噛合し、第4ギヤ65が第3ギヤ64と入力側ギヤ61との双方に噛合するように構成されているが、第1ギヤ62が第2ギヤ63と入力側ギヤ61との双方に噛合し、第3ギヤ64が第4ギヤ65と入力側ギヤ61との双方に噛合するように構成されてもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係るシートスライド装置10では、同軸的に円弧状の第1スライドギヤ62aが設けられる第1ギヤ62と同軸的に第2スライドギヤ63aが設けられる第2ギヤ63とのうちの一方は、他方と入力側ギヤ61との双方に噛合している。また、同軸的に円弧状の第3スライドギヤ64aが設けられる第3ギヤ64と同軸的に第4スライドギヤ65aが設けられる第4ギヤ65とのうちの一方は他方と入力側ギヤ61との双方に噛合している。また、第1スライドギヤ62a及び第2スライドギヤ63aに噛合可能な第1ラック71aと、ロアレール20の係合穴27に係合可能な所定数の第1係合爪72aとが一側に形成される第1ロック部70aは、第1ラック71aが第1スライドギヤ62a及び第2スライドギヤ63aのいずれか一方に押し付けられる方向であって、第1係合爪72aを係合穴27に係合させる方向に、第1付勢部80aにより付勢される。また、第3スライドギヤ64a及び第4スライドギヤ65aに噛合可能な第2ラック71bと、ロアレール20の係合穴27に係合可能な所定数の第2係合爪72bとが一側に形成される第2ロック部70bは、第2ラック71bが第3スライドギヤ64a及び第4スライドギヤ65aのいずれか一方に押し付けられる方向であって、第2係合爪72bを係合穴27に係合させる方向に、第2付勢部80bにより付勢される。そして、第1ラック71aは、第1スライドギヤ62aが円弧状に形成されることで、第1付勢部80aの付勢力に応じて、第1スライドギヤ62aに噛合する第1噛合状態と、第1スライドギヤ62aに噛合していない状態にて第2スライドギヤ63aに噛合する第2噛合状態と、のいずれかの状態に維持される。また、第2ラック71bは、第3スライドギヤ64aが円弧状に形成されることで、第2付勢部80bの付勢力に応じて、第3スライドギヤ64aに噛合する第3噛合状態と、第3スライドギヤ64aに噛合していない状態にて第4スライドギヤ65aに噛合する第4噛合状態と、のいずれかの状態に維持される。また、第1スライドギヤ62aは、第1噛合状態中に、第1係合爪72aと係合穴27との係合が解除されて、第1係合爪72aが次の係合穴27に対して係合可能な位置まで第1ロック部70aがスライド方向に沿って所定距離にて当該第1スライドギヤ62aに対して相対移動するように形成され、第2スライドギヤ63aは、第2噛合状態中に、第1係合爪72aと係合穴27とが係合した状態で、当該第2スライドギヤ63aがスライド方向に沿って所定距離にて第1ロック部70aに対して相対移動するように形成される。また、第3スライドギヤ64aは、第3噛合状態中に、第2係合爪72bと係合穴27との係合が解除されて、第2係合爪72bが次の係合穴27に対して係合可能な位置まで第2ロック部70bがスライド方向に沿って所定距離にて当該第3スライドギヤ64aに対して相対移動するように形成され、第4スライドギヤ65aは、第4噛合状態中に、第2係合爪72bと係合穴27とが係合した状態で、当該第4スライドギヤ65aがスライド方向に沿って所定距離にて第2ロック部70bに対して相対移動するように形成される。
【0052】
これにより、係合状態の第1ロック部70aを基準とするギヤ部60及び第2ロック部70bの相対移動と、係合状態の第2ロック部70bを基準とするギヤ部60及び第1ロック部70aの相対移動とが交互に繰り返されるようにして、スライド機構50がロアレール20に対してスライド方向に移動する。このため、スライド量が比較的長いシートスライド装置やスライド量が比較的短いシートスライド装置に同じスライド機構を採用することができる。したがって、スライド量が長くなるためにスライド機構が重くなることもなく、スライド量にかかわらず同じスライド機構を採用可能なシートスライド装置を実現することができる。
【0053】
特に、各ギヤ61~65は、第1噛合状態と第3噛合状態とが同時に生じないように配置されるため、第1ロック部70aと第2ロック部70bとの双方が同時にロック解除状態となることを防止することができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るシートスライド装置について、
図11を参照して説明する。
本第2実施形態では、第1ロック部70a及び第2ロック部70bに代えて第1ロック部70c及び第2ロック部70dを採用する点が、上記第1実施形態と主に異なる。
具体的には、本実施形態に係る第1ロック部70cは、
図11からわかるように、連結部73における一側に第1ラック71aが形成され、この一側に対して反対側(裏側)となる他側に各第1係合爪72aが形成されている。同様に、第2ロック部70dは、連結部73における一側に第2ラック71bが形成され、他側に各第2係合爪72bが形成されている。このため、ロアレール20では、各係合穴27は、他側案内部22bに連なる内壁部26に対して長手方向に沿って等間隔にて形成される。また、開口31b,31cは、各係合穴27に応じて第2アッパーレール32に形成される。
【0055】
そして、第1付勢部80aは、第1ラック71aを第1スライドギヤ62a及び第2スライドギヤ63aのいずれか一方に押し付ける方向であって、第1係合爪72aと係合穴27との係合を解除する方向に、第1ロック部70cを付勢するように機能する。また、第2付勢部80bは、第2ラック71bを第3スライドギヤ64a及び第4スライドギヤ65aのいずれか一方に押し付ける方向であって、第2係合爪72bと係合穴27との係合を解除する方向に、第2ロック部70dを付勢するように機能する。
【0056】
また、第2スライドギヤ63aは、第2噛合状態中に、第1係合爪72aと係合穴27との係合が解除されて、第1係合爪72aが次の係合穴27に対して係合可能な位置まで第1ロック部70cがスライド方向に沿って所定距離にて当該第2スライドギヤ63aに対して相対移動するように形成される。また、第1スライドギヤ62aは、第1噛合状態中に、第1係合爪72aを係合穴27に係合させて、当該第1スライドギヤ62aがスライド方向に沿って上記所定距離にて第1ロック部70cに対して相対移動するように形成される。また、第4スライドギヤ65aは、第4噛合状態中に、第2係合爪72bと係合穴27との係合が解除されて、第2係合爪72bが次の係合穴27に対して係合可能な位置まで第2ロック部70dがスライド方向に沿って所定距離にて当該第4スライドギヤ65aに対して相対移動するように形成される。また、第3スライドギヤ64aは、第3噛合状態中に、第2係合爪72bを係合穴27に係合させて、当該第3スライドギヤ64aがスライド方向に沿って上記所定距離にて第2ロック部70dに対して相対移動するように形成される。
【0057】
すなわち、本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、同軸的に円弧状の第1スライドギヤ62aが設けられる第1ギヤ62と同軸的に第2スライドギヤ63aが設けられる第2ギヤ63とのうちの一方は、他方と入力側ギヤ61との双方に噛合している。また、同軸的に円弧状の第3スライドギヤ64aが設けられる第3ギヤ64と同軸的に第4スライドギヤ65aが設けられる第4ギヤ65とのうちの一方は他方と入力側ギヤ61との双方に噛合している。また、一側に第1スライドギヤ62a及び第2スライドギヤ63aに噛合可能な第1ラック71aが形成され、他側にロアレール20の係合穴27に係合可能な所定数の第1係合爪72aが形成される第1ロック部70cは、第1ラック71aが第1スライドギヤ62a及び第2スライドギヤ63aのいずれか一方に押し付けられる方向であって、第1係合爪72aと係合穴27との係合を解除する方向に、第1付勢部80aにより付勢される。また、一側に第3スライドギヤ64a及び第4スライドギヤ65aに噛合可能な第2ラック71bが形成され、他側にロアレール20の係合穴27に係合可能な所定数の第2係合爪72bが形成される第2ロック部70dは、第2ラック71bが第3スライドギヤ64a及び第4スライドギヤ65aのいずれか一方に押し付けられる方向であって、第2係合爪72bと係合穴27との係合を解除する方向に、第2付勢部80bにより付勢される。そして、第1ラック71aは、第1スライドギヤ62aが円弧状に形成されることで、第1付勢部80aの付勢力に応じて、第1スライドギヤ62aに噛合する第1噛合状態と、第1スライドギヤ62aに噛合していない状態にて第2スライドギヤ63aに噛合する第2噛合状態と、のいずれかの状態に維持される。また、第2ラック71bは、第3スライドギヤ64aが円弧状に形成されることで、第2付勢部80bの付勢力に応じて、第3スライドギヤ64aに噛合する第3噛合状態と、第3スライドギヤ64aに噛合していない状態にて第4スライドギヤ65aに噛合する第4噛合状態と、のいずれかの状態に維持される。また、第2スライドギヤ63aは、第2噛合状態中に、第1係合爪72aと係合穴27との係合が解除されて、第1係合爪72aが次の係合穴27に対して係合可能な位置まで第1ロック部70cがスライド方向に沿って所定距離にて当該第2スライドギヤ63aに対して相対移動するように形成され、第1スライドギヤ62aは、第1噛合状態中に、第1係合爪72aと係合穴27とが係合した状態で、当該第1スライドギヤ62aがスライド方向に沿って上記所定距離にて第1ロック部70cに対して相対移動するように形成される。また、第4スライドギヤ65aは、第4噛合状態中に、第2係合爪72bと係合穴27との係合が解除されて、第2係合爪72bが次の係合穴27に対して係合可能な位置まで第2ロック部70dがスライド方向に沿って上記所定距離にて当該第4スライドギヤ65aに対して相対移動するように形成され、第3スライドギヤ64aは、第3噛合状態中に、第2係合爪72bと係合穴27とが係合した状態で、当該第3スライドギヤ64aがスライド方向に沿って上記所定距離にて第2ロック部70dに対して相対移動するように形成される。そして、第1ロック部70cと第2ロック部70dとの双方が同時にロック解除状態となることを避けるため、第2噛合状態と第4噛合状態とが同時に生じないように、第1スライドギヤ62a及び第3スライドギヤ64aの円弧長さ等が調整されている。
【0058】
このようにしても、上記第1実施形態と同様に、係合状態の第1ロック部70cを基準とするギヤ部60及び第2ロック部70dの相対移動と、係合状態の第2ロック部70dを基準とするギヤ部60及び第1ロック部70cの相対移動とが交互に繰り返されるようにして、スライド機構がロアレールに対してスライド方向に移動するので、スライド量が比較的長いシートスライド装置やスライド量が比較的短いシートスライド装置に同じスライド機構を採用することができる。したがって、スライド量が長くなるためにスライド機構が重くなることもなく、スライド量にかかわらず同じスライド機構を採用可能なシートスライド装置を実現することができる。
【0059】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)第2スライドギヤ63a及び第4スライドギヤ65aは、円状に形成されることに限らず、円弧状に形成されてもよい。特に、
図12(A)(B)にて模式的に例示するギヤ部60aのように、第1スライドギヤ62aと第2スライドギヤ63aと第3スライドギヤ64aと第4スライドギヤ65aとが同じ半円弧形状となるように、第1ギヤ62と第2ギヤ63と第3ギヤ64と第4ギヤ65とが同じ形状に形成されても、各ギヤの歯数やピッチ円径、回転中心位置等を調整することで、上記第2実施形態と同様に、係合状態の第1ロック部70cを基準とするギヤ部60a及び第2ロック部70dの相対移動と、係合状態の第2ロック部70dを基準とするギヤ部60a及び第1ロック部70cの相対移動とを交互に繰り返すようにスライドするスライド機構50を実現することができる。
なお、
図12は、ギヤ部の変形例を説明する説明図であって、
図12(A)は、第1噛合状態及び第4噛合状態にて係合状態の第1ロック部70cを基準としてギヤ部60a及び第2ロック部70dが相対移動する状態を示し、
図12(B)は、第2噛合状態及び第3噛合状態にて係合状態の第2ロック部70dを基準としてギヤ部60a及び第1ロック部70cが相対移動する状態を示している。これにより、ギヤ部に関して更なる標準化を図ることができる。上記第1実施形態に係る第1ロック部70a及び第2ロック部70bについても同様な調整により上記効果を奏する。
【0060】
(2)第1スライドギヤ62a及び第3スライドギヤ64aの1回転に応じて各ロック部やギヤ部60がそれぞれスライドする上記所定距離は、
図9及び
図10に例示するように、現在係合している係合穴27を基準に3つ隣の係合穴27までの距離として設定されることに限らず、すぐ隣の係合穴27までの距離や2つ隣の係合穴27までの距離として設定されてもよいし、4つ以上隣の係合穴27までの距離として設定されてもよい。
【0061】
(3)本発明は、自動車や列車のような車両に搭載されるシート用のシートスライド装置として採用されることに限らず、飛行機や船等の乗り物に搭載されるシート用のシートスライド装置として採用されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…シートスライド装置
20…ロアレール
27…係合穴
30…アッパーレール
41…モータ
50…スライド機構
60,60a…ギヤ部
61…入力側ギヤ
62…第1ギヤ
62a…第1スライドギヤ
63…第2ギヤ
63a…第2スライドギヤ
64…第3ギヤ
64a…第3スライドギヤ
65…第4ギヤ
65a…第4スライドギヤ
70a,70c…第1ロック部
70b,70d…第2ロック部
71a…第1ラック
71b…第2ラック
72a…第1係合爪
72b…第2係合爪
80a…第1付勢部
80b…第2付勢部