(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/66 20060101AFI20221005BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20221005BHJP
A47C 7/46 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60N2/66
B60N2/22
A47C7/46
(21)【出願番号】P 2021076341
(22)【出願日】2021-04-28
(62)【分割の表示】P 2019213665の分割
【原出願日】2011-12-20
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】大森 倉作
(72)【発明者】
【氏名】菊池 眞仁
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-279488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/66
B60N 2/22
A47C 7/46
B60N 2/64
A47C 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部およびシートバックを有するシート部と、前記シート部内に設けられ、膨張または収縮することで乗員のサポート位置を変更する空気袋と、を備えた乗物用シートであって、
前記シート部は、
左右のフレームを構成する長尺状の左右のサイドフレームと、
前記空気袋と前記サイドフレームの間に配置されたプレート部材
であって、左右方向に直交する、前記サイドフレームの短手方向の乗員側の端部よりも前記短手方向の乗員側に突出するプレート部材と、を備え、
前記プレート部材は、
第1支持面を有する第1部分と、
前記第1部分から
前記短手方向の乗員側に延びる第2部分とを有し、
前記第2部分は、前記第1支持面から延びる第2支持面であって、前記第1支持面に対して前記第1支持面から離れるにつれて左右方向外側に位置するように傾斜した第2支持面を有し、
前記空気袋が膨張した場合に
前記第2支持面に接触することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記第2部分は、前記プレート部材を前記サイドフレームに固定するための爪部を有することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第2部分は、前記爪部と対向する位置に形成された貫通穴を有することを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記爪部は、前記サイドフレームへの取り付け方向が異なる第1爪部と第2爪部を含むことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第1部分は、前記空気袋を取り付けるための係合部を有することを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記係合部は、前記サイドフレームの長手方向における前記第1部分の一端部に形成された第1係合部と、前記長手方向における前記第1部分の他端部に形成された第2係合部とを含み、
前記第1係合部と前記第2係合部との間の距離は、前記第1爪部と前記第2爪部との間の距離よりも長いことを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記爪部の左右方向の外側の端部は、前記係合部の左右方向の外側の端部よりも左右方向の外側に位置することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記第2支持面の一部は、前記サイドフレームの長手方向の長さが、前記第1支持面よりも短いことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記空気袋の前端短手方向の乗員側の端部は、前記第2部分の前記短手方向の乗員側の端部よりも前記短手方向の乗員側に位置することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記シートバックは、乗員からの荷重を受ける受圧部材を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張または収縮することで乗員のサポート位置を変更する空気袋を備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シートの内部に設けられた空気袋の空気圧を調整することで、乗員の腰部のサポート位置を調整することができるサポート装置を備えた車両用のシートが知られている(特許文献1参照)。特許文献1のシートでは、空気袋に空気を供給するポンプがシートクッション部の下側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乗員のサポート位置を調整可能な乗物用シートにおいては、乗員を好適にサポートできることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、乗員を好適にサポートすることができる乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、乗物用シートは、着座部およびシートバックを有するシート部と、前記シート部内に設けられ、膨張または収縮することで乗員のサポート位置を変更する空気袋と、を備えた乗物用シートであって、前記シート部は、左右のフレームを構成する長尺状の左右のサイドフレームと、前記空気袋と前記サイドフレームの間に配置されたプレート部材と、を備え、前記プレート部材は、第1支持面を有する第1部分と、前記第1支持面から延びる第2支持面であって、前記第1支持面に対して傾斜した第2支持面を有する第2部分とを有し、前記空気袋が膨張した場合に前記第1支持面と前記第2支持面とで前記空気袋を支持することを特徴とする。
前記した乗物用シートにおいて、前記第2部分は、前記プレート部材を前記サイドフレームに固定するための爪部を有する構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記第2部分は、前記爪部と対向する位置に形成された貫通穴を有する構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記爪部は、前記サイドフレームに固定されたロッド部材に引っ掛かる第1爪部と第2爪部とを有し、前記第1爪部と前記第2爪部は、前記ロッド部材に引っ掛かる方向が異なる構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記第1部分は、前記空気袋を取り付けるための係合穴を有する構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記第1爪部と前記第2爪部は、前記サイドフレームの長手方向に間隔をあけて設けられ、前記係合穴は、前記長手方向に間隔をあけて設けられた第1係合穴と第2係合穴とを有し、前記第1係合穴と前記第2係合穴との間の距離は、前記第1爪部と前記第2爪部との間の距離よりも長い構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記爪部は、左右方向において、前記係合穴よりも外側に位置する構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記第2部分は、前記サイドフレームの長手方向における大きさが、前記第1部分よりも小さい部分を有する構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記第1部分は、前記空気袋を取り付けるための係合穴と、前記プレート部材を前記サイドフレームに固定するためのフレーム固定部とを有し、前記係合穴は、前記サイドフレームの長手方向に間隔をあけて設けられた第1係合穴と第2係合穴とを有し、前記フレーム固定部は、前記第1係合穴と前記第2係合穴の間に設けられている構成とすることができる。
また、乗物用シートは、着座部およびシートバックを有するシート部と、前記シート部内に設けられ、膨張または収縮することで乗員のサポート位置を変更する空気袋と、を備えた乗物用シートであって、前記シート部は、左右のフレームを構成する長尺状の左右のサイドフレームを備え、前記空気袋は、プレート部材を介して前記サイドフレームに固定され、前記サイドフレームの長手方向に沿った端部に凹部が形成された第1空気袋を含み、前記第1空気袋は、前記プレート部材に固定される取付部を有し、前記取付部は、前記長手方向に離間して形成された第1取付部と第2取付部を有し、前記乗物用シートは、前記第1空気袋に連結され、前記第1空気袋へガスを供給するためのホースをさらに備え、前記凹部は、前記長手方向において前記第1空気袋と前記ホースとの連結部分と異なる位置に設けられており、前記第1空気袋と前記ホースとの連結部分は、前記長手方向において前記第1取付部と前記第2取付部の間に位置することを特徴とする。
前記した乗物用シートにおいて、前記第1空気袋は、前記取付部がクリップによって固定されている構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記凹部は、前記長手方向において前記第1取付部と前記第2取付部の間に設けられている構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記第1取付部と前記第2取付部は、前記第1空気袋の前記凹部が形成された側に形成されている構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記凹部は、前記取付部よりも前に設けられている構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記取付部は、前記第1空気袋の下端に形成されている取付部を含む構成とすることができる。
前記した乗物用シートは、前記左右のサイドフレームの間に配置された受圧部材を備え、前記凹部は、前記長手方向において前記受圧部材と重なる位置に設けられている構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記空気袋は、前記受圧部材に取り付けられた第2空気袋を含む構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記第1空気袋は、左右方向から見て、前記サイドフレームと重なるように配置されている構成とすることができる。
また、乗物用シートは、着座部およびシートバックを有するシート部と、前記シート部内に設けられた乗員の腰部のサポート位置を調整可能なサポート装置とを備えた乗物用シートであって、前記着座部の左右のフレームを構成する左右の着座部サイドフレームと、左右方向に延びて前記左右の着座部サイドフレームを連結する連結部材と、前記サポート装置を構成し、膨張または収縮することで前記サポート位置を変更する空気袋と、前記空気袋にガスを供給するポンプと、前記ポンプを前記連結部材に取り付けるための左右方向に延びるブラケットと、を備え、前記ブラケットは、下から上に向けて凹む形状をなす凹部を有し、前記ポンプは、中心軸線が前記ブラケットの凹部の下端よりも上に入り込んだ状態で前記ブラケットに取り付けられ、前記連結部材は、下から上に向けて凹む形状をなす凹部を有し、前記ブラケットは、前記連結部材の凹部に入り込んだ状態で前記連結部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、連結部材やブラケットが全体として凹凸形状をなすことになるので、連結部材やブラケットの剛性を向上させることができる。これにより、ポンプの取付剛性を向上させることができる。
【0008】
前記した乗物用シートにおいて、前記ポンプは、ガスの送出口が前記ブラケットの凹部の下端よりも上に入り込んだ状態で配置されている構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記ポンプは、全体が前記ブラケットの凹部の下端よりも上に入り込んだ状態で配置されている構成とすることができる。
【0009】
前記した乗物用シートにおいて、前記ブラケットは、当該ブラケットの凹部の裏側に形成される凸部が、前記連結部材の凹部に入り込んだ状態で前記連結部材に取り付けられ、前記ブラケットの凹部の底壁の左右方向の長さが、前記ブラケットの凹部の開口縁から左右方向外側に延びる壁の左右方向の長さよりも長い構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記ポンプは、前記連結部材の凹部を形成する前後方向に対向した一対の壁の間に配置されている構成とすることができる。
【0010】
前記した乗物用シートは、前記左右の着座部サイドフレームの間に設けられたサブマリン規制部材を備え、前記サブマリン規制部材は、前記連結部材の凹部に入り込んだ状態で配置されている構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記ポンプは、前記サブマリン規制部材よりも前方に配置されている構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記ポンプは、前記サブマリン規制部材の左右方向に延びる部分と平行に配置されている構成とすることができる。
【0011】
前記した乗物用シートにおいて、前記ポンプは、中心軸線が前記連結部材の凹部に入り込んだ状態で配置されている構成とすることができる。
前記した乗物用シートにおいて、前記ポンプは、ガスの送出口が設けられていない長手方向の一端部が前記左右の着座部サイドフレームの間の左右方向の端寄りに配置され、ガスの送出口が設けられた長手方向の他端部が前記左右の着座部サイドフレームの間の左右方向中央寄りに配置されるように設けられている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、乗員を好適にサポートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【
図6】シートバックフレームを前から見た図(a)と、(a)のC-C断面図(b)である。
【
図7】受圧部材とシートバックサイドフレームを右斜め前から見た斜視図である。
【
図8】受圧部材とシートバックサイドフレームを後から見た図である。
【
図10】左のシートバックサイドフレームとサイドブラケットを左右方向内側から見た図である。
【
図11】シートバックフレーム、乗員の後方に配置される空気袋および受圧部材を前から見た図である。
【
図12】前側空気袋の正面図(a)と、後側空気袋の正面図(b)である。
【
図13】前側空気袋が膨張した状態を示す斜視図である。
【
図14】左のシートバックサイドフレームと空気袋を左右方向内側から見た図である。
【
図15】左のシートバックサイドフレーム、サイドブラケット、プレート部材および空気袋の斜視図(a)と、プレート部材の爪部を示す図(b),(c)である。
【
図16】乗員の左方に配置される空気袋とプレート部材を上から見た図であり、収縮した状態を示す図(a)と、膨張した状態を示す図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明において、前後、左右および上下は、シートに座る乗員を基準とする。
【0015】
<車両用シートの概略構成>
図1に示すように、乗物用シートの一例としての車両用シート1は、シート部2と、シート部2内に設けられたサポート装置3(
図2参照)とを主に備えている。そして、シート部2は、乗員が着座する着座部4と、着座部4にリクライニング機構を介して固定されたシートバック5と、ヘッドレスト(図示省略)とを主に有している。
【0016】
着座部4およびシートバック5は、着座部フレーム40およびシートバックフレーム50の外側に、ウレタンフォームなどからなるクッション材(図示省略)と、合成皮革や布地などからなる表皮材(図示省略)を被せることで構成されている。また、
図1および
図2に示すように、サポート装置3は、4つの空気袋31A,31B,31L,31Rと、空気袋31A,31B,31L,31Rに空気(ガス)を供給するポンプ32と、空気袋31A,31B,31L,31Rの膨らみ量を調整する制御ユニット33と、可撓性を有するホース34~37とを主に備えて構成されている。
【0017】
空気袋31A,31Bは、車両用シート1に着座した乗員の腰部を後方から支持する部材であり、左右のシートバックサイドフレーム51の間に配置されている。また、空気袋31L,31Rは、乗員の腰部を左方または右方から支持するサポート部材であり、それぞれ、左または右のシートバックサイドフレーム51の内側に配置されている。制御ユニット33は、左のシートバックサイドフレーム51の外側の面に取り付けられており、開閉可能なバルブユニットやリリーフバルブ、バルブユニットの開閉量を制御する制御基板など(いずれも図示省略)を有している。
【0018】
ホース34は、ポンプ32と制御ユニット33を接続し、ホース35は、空気袋31Aと制御ユニット33を接続し、ホース36は、空気袋31Bと制御ユニット33を接続している。また、ホース37は、一端が制御ユニット33に接続され、途中で分岐して、それぞれの端部が空気袋31Lまたは空気袋31Rに接続されている。これにより、本実施形態においては、空気袋31Aと、空気袋31Bと、空気袋31L,31Rの膨らみ量を個別に調整することができるようになっている。
【0019】
このサポート装置3は、通常時は、制御ユニット33のバルブユニットが閉じられている。そして、乗員がコントローラ(図示省略)を操作することで、バルブユニットが開き、ポンプ32から空気が供給されることで空気袋31A,31B,31L,31Rが膨張変形し、また、バルブユニットが開いた状態で空気袋31A,31B,31L,31Rに対し乗員から圧力がかかることで空気袋31A,31B,31L,31Rが収縮変形する。これにより、乗員の腰部のサポート位置を変更(調整)することができるようになっている。なお、ポンプ32から制御ユニット33に供給された余分な空気や、空気袋31A,31B,31L,31Rから押し出された空気は、制御ユニット33のリリーフバルブによって外部に排気される。
【0020】
<着座部の詳細構成>
図1に示すように、着座部フレーム40は、着座部4の左右のフレームを構成する左右の着座部サイドフレーム41と、連結部材としてのパンフレーム42と、サブマリン規制部材としてのサブマリンパイプ43(
図3,4参照)と、リア連結パイプ44と、ブラケットとしてのポンプ取付ブラケット6(
図3~5参照)とを主に備えている。各着座部サイドフレーム41およびパンフレーム42は、それぞれ、金属板をプレス加工するなどして形成されている。
【0021】
パンフレーム42は、左右方向に延びて左右の着座部サイドフレーム41の前部を連結する部材であり、
図3に示すように、その下面に下から上に向けて凹む形状をなす凹部42Aが形成されている。また、パンフレーム42の上面(凹部42Aの底に相当する部分)には、フック部42Hが形成されている。パンフレーム42に形成されたフック部42Hとリア連結パイプ44との間には、着座部4に着座する乗員を支持する乗員支持部材としてのシートスプリング45が張設されている(
図1も参照)。
【0022】
サブマリンパイプ43およびリア連結パイプ44(
図1参照)は、左右方向に延びる金属製のパイプであり、左右の着座部サイドフレーム41の間にそれぞれ設けられている。サブマリンパイプ43は、車両の衝突時(前突時)に乗員が着座部4に沈み込みながら前方へ移動しようとするいわゆるサブマリン現象を規制する部材であり、左右の着座部サイドフレーム41の前部を連結するように設けられている。このサブマリンパイプ43は、パンフレーム42の下、より詳細には、パンフレーム42に形成された凹部42A内の後寄りにおいて当該凹部42Aに入り込んだ状態で配置されている。
図1に示すように、リア連結パイプ44は、左右の着座部サイドフレーム41の後部を連結するように設けられている。
【0023】
図5に示すように、ポンプ取付ブラケット6は、左右方向に延びる板状の部材であり、下から上に向けて凹む形状をなす凹部6Aが形成されている。このポンプ取付ブラケット6は、当該ポンプ取付ブラケット6の凹部6Aの裏側に形成される凸部6Bが、
図3に示すように、パンフレーム42の凹部42Aに入り込んだ状態でパンフレーム42に取り付けられている。
ポンプ32は、クッション性を有する革袋61(
図4参照)に入れられ、ポンプ取付ブラケット6の凹部6Aに入り込んだ状態でポンプ取付ブラケット6に取り付けられている(
図5も参照)。これにより、ポンプ32は、パンフレーム42の凹部42Aに入り込んだ状態で、パンフレーム42の下に配置されている。
【0024】
また、ポンプ32は、パンフレーム42の凹部42A内の前寄り、言い換えると、凹部42A内に配置されたサブマリンパイプ43よりも前方に配置されている。詳細には、ポンプ32とサブマリンパイプ43は、パンフレーム42の凹部42Aに入り込んだ状態で前後方向に並べて、すなわち、前後方向から見て少なくとも一部同士が重なり合うように配置されている。
【0025】
さらに、ポンプ32は、
図4に示すように、その長手方向(円筒の軸線が延びる方向)が左右方向を向くようにして、左右の着座部サイドフレーム41の間の左側に寄せられた状態で、サブマリンパイプ43の左右方向中央部分と略平行に配置されている。ポンプ32は、空気の出口である送出口32Aを有しており、この送出口32Aが左右の着座部サイドフレーム41の間の左右方向中央寄りに位置するような向きに取り付けられている。すなわち、ポンプ32は、送出口32Aが設けられていない長手方向の一端部(左端部)が左右の着座部サイドフレーム41の間の左右方向の端寄りに配置され(左の着座部サイドフレーム41に対面して配置され)、送出口32Aが設けられた長手方向の他端部(右端部)が左右の着座部サイドフレーム41の間の左右方向中央寄りに配置されるように設けられている。
【0026】
パンフレーム42やシートスプリング45などの下では、ポンプ32の送出口32Aに接続されたホース34や、コントローラと制御ユニット33を接続するハーネス38などが、結束バンド91によって数箇所でポンプ取付ブラケット6やシートスプリング45などに留められており、垂れ下がったり、振動や空気が供給されるときの圧力などで動いたりしないようになっている。
【0027】
<シートバックの詳細構成>
図1に示すように、シートバックフレーム50は、シートバック5の左右のフレームを構成する左右のシートバックサイドフレーム51と、接続部材としてのメンバーフレーム52と、左右のシートバックサイドフレーム51の上部同士を連結する略U形状のパイプフレーム53とを主に備えている。また、左右のシートバックサイドフレーム51の間には、空気袋取付部材としての受圧部材56が配置されている。
【0028】
なお、念のために述べておくと、以下の説明において、前後および上下は、シートバック5がリクライニング機構によって倒されていない車両用シート1に着座している乗員を基準とする。
【0029】
メンバーフレーム52は、左右のシートバックサイドフレーム51の下部の間に渡されるように配置されて、左右のシートバックサイドフレーム51を接続する板状の部材である。
図6(a),(b)に示すように、メンバーフレーム52は、後壁部52Aと、後壁部52Aの上端から上斜め前方に向けて延びるフランジ部52Bとを有している。
【0030】
図7に示すように、受圧部材56は、樹脂などからなる略矩形板状の部材であり、主に、上部連結ワイヤ57と下部連結ワイヤ58を介して、シートバックサイドフレーム51やパイプフレーム53に取り付けられている。詳細には、
図8において後から示すように、上部連結ワイヤ57と下部連結ワイヤ58は、複数の爪部56Dで受圧部材56と係合しており、受圧部材56から延び出た左右両端が屈曲した後、上部連結ワイヤ57は、パイプフレーム53に固定された支持舌片53Aに取り付けられ、取付部材としての下部連結ワイヤ58は、シートバックサイドフレーム51の内面に固定されたサイドブラケット7(
図7参照)に取り付けられている。
【0031】
以上のように取り付けられた受圧部材56は、車両が後部から追突されたり、後退走行時に衝突したりする後突時に、乗員から後方に向けて所定以上の荷重がかかって上部連結ワイヤ57や下部連結ワイヤ58の屈曲部分が撓むことで、シートバックサイドフレーム51に対して後退移動することができる。これにより、乗員の上体が後方に移動してシートバック5に沈み込むことになるので、乗員に対する後突時の荷重の影響を緩和することができるようになっている。
【0032】
なお、上部連結ワイヤ57は、受圧部材56の後ろを、後述する凹部56Bの裏側となる凸部56Jを避けるように屈曲して通されており、凸部56Jの下方で、当該凸部56Jの頂部から下方に向けて延びるように設けられた爪部56D(
図9も参照)に係合している。
【0033】
図7および
図9に示すように、受圧部材56は、後述する空気袋31A,31Bが取り付けられる被取付部56Aを有している。被取付部56Aは、受圧部材56の上部において、左右方向に所定の間隔をあけて並ぶように2つ配設されている。各被取付部56Aは、受圧部材56の上部に形成された後方へ向けて凹む凹部56Bの底から前方に向けて突出する凸部56Cの頂部に設けられており、空気袋31A,31Bを留めるためのネジ92が螺合する貫通穴(符号省略)を有している。
【0034】
図10に示すように、サイドブラケット7は、後述する空気袋31L(または31R)が取り付けられる金属製の板状部材であり、側面視において上部が後方に向けて延出する略L形状をなしている。サイドブラケット7の上端部7A、前下端部7Bおよび後下端部7Cは、それぞれ、左右方向外側(シートバックサイドフレーム51)に向けて折り曲げられている。
【0035】
サイドブラケット7は、各シートバックサイドフレーム51(一方のみ図示)の内面の下部付近において、上端部7Aの前端、前下端部7Bおよび後下端部7Cの3箇所が、それぞれ、シートバックサイドフレーム51に溶接により固定されている。溶接部分である第1固定部W1と第2固定部W2は、上下方向に並んで設けられ、溶接部分である第3固定部W3は、上下方向(第1固定部W1と第2固定部W2が並ぶ方向)における第1固定部W1と第2固定部W2の間で、かつ、前後方向(第1固定部W1と第2固定部W2が並ぶ方向に直交する方向)、具体的には、後方にずれて設けられている。すなわち、第1固定部W1、第2固定部W2および第3固定部W3は、三角形状(鎖線参照)をなすように設けられている。なお、本実施形態において、第1固定部W1は、シートバックサイドフレーム51の内面に設けられた左右方向内側に向けて突出する凸部51Aに一部がかかるように設けられている。これにより、サイドブラケット7の取付剛性が向上するので、空気袋31L,31Rや受圧部材56をより安定して支持することができるようになっている。
【0036】
サイドブラケット7には、下部連結ワイヤ58の端部58Bが係合する取付部材係合部としての長穴71と、空気袋31L,31Rが後述するプレート部材8(
図15(a)参照)を介して固定される空気袋固定部としての固定穴72とが主に設けられている。
長穴71は、サイドブラケット7の上部において、第1固定部W1と第2固定部W2の間から、第3固定部W3が設けられた後側に向けて、前後方向に延びるように形成されている。そして、この長穴71は、後斜め下方に向けて傾斜している。
固定穴72は、円形の穴であり、サイドブラケット7の上部において、長穴71と第3固定部W3の間の下寄り(第3固定部W3寄り)に形成されている。
【0037】
詳細な説明は省略するが、右のシートバックサイドフレーム51に固定された右のサイドブラケット7は、
図10を参照して説明した左のサイドブラケット7と左右対称に形成されている。
【0038】
<サポート装置の詳細構成>
図11に示すように、空気袋31A,31Bは、空気袋31Aを前側に、空気袋31Bを後側にして重ねた状態で受圧部材56の被取付部56Aに取り付けられている。以下の説明においては、空気袋31Aを「前側空気袋31A」といい、空気袋31Bを「後側空気袋31B」ということがある。
【0039】
図12(a),(b)に示すように、前側空気袋31Aおよび空気袋31Bは、それぞれ、2枚の樹脂製のシート状部材を溶着などで貼り合わせることで形成されており、ポンプ32から供給された空気が入るエア室31Cと、取付部としての取付穴31Dとを主に有している。
【0040】
エア室31Cは、2枚のシート状部材を、
図12に示すように正面から見て、上部の左右方向中央部に下方に向けて凹むような凹部を有する略U形状の輪郭で溶着することで形成されている(溶着部W4参照)。これにより、各空気袋31A,31Bは、
図13(前側空気袋31Aのみ図示)に示すように、膨張した状態において、エア室31Cが、その上部の左右方向中央部を下方に向けて凹むような形状とする凹部31Eを有する構成となっている。言い換えると、各空気袋31A,31Bは、エア室31Cの上端から下の所定領域Hでは、左右方向両端部だけにエア室31Cが形成されている。このような構成により、各空気袋31A,31Bは、所定領域Hにおいて、膨張した状態の前後方向の厚みが、左右方向両端部の厚みD2よりも左右方向中央部の厚みD1の方が薄くなっている。
【0041】
図12(a),(b)に示すように、後側空気袋31Bは、上下方向におけるエア室31Cの上端から取付穴31Dの下端までの長さL2が、前側空気袋31Aの上下方向におけるエア室31Cの上端から取付穴31Dの下端までの長さL1よりも長くなっている。そのため、前側空気袋31Aと後側空気袋31Bを受圧部材56に取り付けたとき(
図11参照)、前側空気袋31Aのエア室31Cと後側空気袋31Bのエア室31Cとは、前方から見て、一部が重なりつつも上下方向にずれて配置されることとなる。
【0042】
取付穴31Dは、空気袋31A,31Bの上部に(エア室31Cの上方で)左右方向に並ぶように2箇所設けられている。
図11に示すように、各空気袋31A,31Bは、その上端部を揃えて前後に重ねられた状態で、取付穴31Dにネジ92が通され、受圧部材56に設けられた被取付部56Aに固定されることで、受圧部材56に取り付けられている(
図9も参照)。
【0043】
前側空気袋31Aのエア室31Cには、管状のコネクタ35Cを介してホース35が接続され、後側空気袋31Bのエア室31Cには、管状のコネクタ36Cを介してホース36が接続されている。より具体的に、ホース35,36は、それぞれ、
図13に示すように、エア室31Cとの接続部分となる部位の上方(
図13のコネクタ35Cの上方)において2枚のシート状部材の間に入り、2箇所のネジ92(取付穴31D)の間を通って、エア室31Cの上部に形成された凹部31Eの底の部分でコネクタ35C,36Cを介してエア室31Cに接続されている。なお、前側空気袋31Aのコネクタ35Cと後側空気袋31Bのコネクタ36Cは、前方から見たとき、左右方向にずれて配置されている。これにより、受圧部材56の前側において、ホース35とホース36が前後に重なりにくくなるため、ホース35,36に不要な荷重がかかることを抑制することができる。
【0044】
図1に示すように、空気袋31L,31Rは、それぞれ、プレート部材8(
図15(a)参照)を介して左または右のシートバックサイドフレーム51に取り付けられている。
図14に示すように、左の空気袋31Lは、空気袋31A,31Bと同様に、2枚の樹脂製のシート状部材を溶着することで形成されている。そして、空気袋31Lは、ポンプ32から供給された空気が入るエア室31Sと、プレート部材8(シートバックサイドフレーム51)との取付部分である取付部31Tと、逃げ部31Uとを主に有している。
【0045】
エア室31Sは、2枚のシート状部材を、
図14に示すように左右方向内側から見て、後部の上下方向中央部に前方に向けて凹むような凹部を有する略U形状に溶着することで形成されている(溶着部W5参照)。
取付部31Tは、空気袋31Lをプレート部材8に取り付けるためのタグ状の部分であり、空気袋31Lの後部の上端と下端からそれぞれ後方に向けて延びるように形成されている。空気袋31Lは、この取付部31T(後端部)がピン状のクリップ93によってプレート部材8に固定され、プレート部材8がシートバックサイドフレーム51に固定されることで、シートバックサイドフレーム51に取り付けられている。
【0046】
逃げ部31Uは、空気袋31Lの後部に形成された前方に向けて凹む形状の凹部であり、上側の取付部31Tの下方であって、かつ、下側の取付部31Tの上方(すなわち、2つの取付部31Tの間)に設けられている。別の言い方をすれば、空気袋31Lは、取付部31Tを、逃げ部31Uの上方と下方にそれぞれ有している。この逃げ部31Uには、車両用シート1が組み立てられたとき、サイドブラケット7の長穴71に係合する、他部材(空気袋31L,31Rおよびプレート部材8とは別の部品)としての下部連結ワイヤ58が入り込んだ状態で配置されることとなる。
【0047】
エア室31S(空気袋31L)には、金属や樹脂などから形成された管状のコネクタ37Cを介して、ホース37の端部が連結されている。これにより、ホース37からの空気を空気袋31L(エア室31S)内に供給可能としている。ホース37の端部は、クリップ付きの結束バンド94によって、コネクタ37Cが差し込まれた差込部分でコネクタ37Cとともに、プレート部材8の後述するホース固定部82に固定されている。そして、ホース37は、プレート部材8がシートバックサイドフレーム51に取り付けられることで、シートバックサイドフレーム51に固定されている。
【0048】
詳細な説明は省略するが、右のシートバックサイドフレーム51に取り付けられる右の空気袋31Rは、
図14を参照して説明した左の空気袋31Lと左右対称に形成されている。
【0049】
ここで、ホース34~37の配置(配管)について詳細に説明する。
図4に示すように、ポンプ32から制御ユニット33へ空気を供給するためのホース34は、一端がポンプ32の送出口32Aに接続され、パンフレーム42やシートスプリング45、リア連結パイプ44(
図1参照)の下を通って後方へ向かい、
図8に示すように、シートバックフレーム50の後を通って他端が制御ユニット33に接続されている。
【0050】
制御ユニット33から空気袋31A,31Bに空気を供給するためのホース35,36は、一端が制御ユニット33に接続され、左のシートバックサイドフレーム51に沿って上方へ向かい、受圧部材56の上を通って受圧部材56の前側に引き出され、
図11に示すように、他端が、それぞれ、空気袋31Aまたは空気袋31Bに接続されている。
図8に示すように、ホース35,36は、束ねられて受圧部材56の左斜め後部に保持されている。受圧部材56の上端部56Tは、左右方向中央部が両端部に対して下方に向けて凹む凹形状をなしているため、受圧部材56の上を左斜め後方から左右方向中央に向けて通されるホース35,36を、滑らかに曲げつつ左右方向中央付近で上端部56Tに近づけることが可能となっている。これにより、ホース35,36を上下方向にコンパクトに配置することができている。さらに、
図11(
図7も参照)に示すように、受圧部材56の前面上部の左右方向中央(凹部56Bの間)には、後方へ向けて凹む凹部56Kが形成されているため、受圧部材56と、受圧部材56の前方に引き出されたホース35,36との干渉を抑制することができるようになっている。
【0051】
図6(a)に示すように、制御ユニット33から左右の空気袋31L,31Rへ空気を供給するためのホース37は、一端が制御ユニット33に接続され、メンバーフレーム52に沿って配設されて、分岐した2つの他端が、それぞれ、空気袋31Lまたは空気袋31Rに接続されている。より詳細に、制御ユニット33から延び出したホース37(「導入管37A」とする。)は、左のシートバックサイドフレーム51に沿って下方に向けて延びた後、後壁部52Aの前面に沿って左右方向中央に向けて延びるように配置されている。そして、ホース37は、左右方向における、後壁部52A(左右のシートバックサイドフレーム51の間)の中央部付近、具体的には、後壁部52Aの左右方向中央よりもやや右側で左右に分岐している。分岐部37Bと空気袋31Lを接続する左供給管37Lは、分岐部37Bから導入管37Aの下を通って後壁部52Aの前面を左斜め上方に向けて延びるように配置されている。また、分岐部37Bと空気袋31Rを接続する右供給管37Rは、分岐部37Bから後壁部52Aの前面に沿って右斜め上方に向けて延びるように配置されている。
【0052】
図6(b)に示すように、ホース37(導入管37A、左供給管37Lおよび
図6(b)では図示しない右供給管37R)は、メンバーフレーム52の左右方向中央部付近においては、後壁部52Aとフランジ部52Bとにより形成される屈曲部分の隅部52Cに沿って配置されている。これにより、ホース37は、後壁部52Aにより後が覆われ、特にメンバーフレーム52の左右方向中央部付近においては、フランジ部52Bにより上が覆われるので、メンバーフレーム52によって保護されることとなる。
【0053】
図6(a)に示すように、ホース37は、結束バンド95A~95Cによって、数箇所がメンバーフレーム52に固定されている。具体的に、導入管37Aは、結束バンド95Aによって、フランジ部52Bの下面の左右方向中央に固定されている。また、当該固定部分の左下では導入管37Aと左供給管37Lが、1つの結束バンド95Bによって、束ねられた状態で後壁部52Aの前面に固定されている。さらに、導入管37Aと左供給管37L、および、右供給管37Rは、それぞれ、下部連結ワイヤ58の屈曲部58Aの下方で、結束バンド95Cによって、後壁部52Aの前面に固定されている。
結束バンド95Cは、メンバーフレーム52の上端、言い換えると、屈曲部58Aの下部近くに設けられている。これによれば、結束バンド95Cを屈曲部58Aから遠い位置、例えば、メンバーフレーム52の下端に設ける場合と比較して、ホース37(左供給管37Lおよび右供給管37R)の長さを短くすることができる。
【0054】
図15(a)に示すように、プレート部材8は、空気袋31Lが膨らむ方向を規制する略板状の部材であり、空気袋31Lの左右方向外側に隣接して配置されている。このプレート部材8は、樹脂から形成されており、本体部81と、ホース固定部82と、フレーム固定部83と、爪部84,85とを主に有している。
【0055】
本体部81の後部の上端と下端には、空気袋31L(取付部31T)を取り付けるためのクリップ93が係合する上下方向に長い係合穴81Aがそれぞれ設けられている。また、本体部81の後部、具体的には、上下の係合穴81Aの間には、空気袋31Lの逃げ部31Uと対応して、前方に向けて凹む形状の逃げ部81Bが設けられている。この逃げ部81Bは、
図14に示すように、プレート部材8に取り付けられた空気袋31Lの逃げ部31Uと略重なるように形成されており、左右方向内側から見て、サイドブラケット7に設けられた長穴71の後端を臨ませている。逃げ部81Bには、空気袋31Lの逃げ部31Uと同様に、車両用シート1が組み立てられたとき、サイドブラケット7の長穴71に係合する下部連結ワイヤ58が入り込んだ状態で配置される。
【0056】
図15(a)に示すように、本体部81の左右方向内側(右側)の面の前部には、略前後方向に延びる後部に対して、左右方向外側(左のプレート部材8について言えば、左斜め前方)に向けて延びる傾斜面81Cが設けられている。
ホース固定部82は、ホース37の端部とコネクタ37Cを固定する結束バンド94(
図14参照)が取り付けられる部分であり、逃げ部81Bの底の上下方向における下側の部分から後方に向けて延出するように形成されている。このホース固定部82には、結束バンド94のクリップ部分が係合する貫通穴(符号省略)が設けられている。
【0057】
フレーム固定部83および爪部84,85は、プレート部材8をシートバックサイドフレーム51に固定するための部分である。フレーム固定部83は、逃げ部81Bの底のうち、ホース固定部82の上側の部分から後方に向けて延びる略板状に形成されており、ネジ96が挿通される貫通穴(符号省略)が設けられている。爪部84は、本体部81の左右方向外側の面の前部上端から左右方向外側に向けて延び出し、下方に向けて屈曲するように形成されている(
図15(b)も参照)。また、爪部85は、本体部81の左右方向外側の面の前端下部から左右方向外側に向けて延び出し、後方に向けて屈曲するように形成されている(
図15(c)も参照)。
【0058】
これらの爪部84,85は、プレート部材8をシートバックサイドフレーム51に取り付けるとき、シートバックサイドフレーム51の前面に溶接などにより固定されたロッド部材55に引っ掛かるようになっている。より詳細に、爪部84は、ロッド部材55の略前後方向に延びる第1延出部55Aに上から引っ掛かり、爪部85は、ロッド部材55の略上下方向に延びる第2延出部55Bに前から引っ掛かるようになっている。
【0059】
空気袋31Lをシートバックサイドフレーム51に取り付けるときには、まず、空気袋31L(取付部31T)をクリップ93によってプレート部材8(係合穴81A)に取り付ける。その後、空気袋31Lが取り付けられたプレート部材8の爪部84,85を、シートバックサイドフレーム51に固定されたロッド部材55にそれぞれ引っ掛ける。そして、ネジ96を、フレーム固定部83の貫通穴に通し、シートバックサイドフレーム51に固定されたサイドブラケット7の固定穴72に螺合することにより、空気袋31Lがシートバックサイドフレーム51に固定されることとなる。
【0060】
詳細な説明は省略するが、右のシートバックサイドフレーム51に取り付けられる右のプレート部材8は、
図14,15を参照して説明した左のプレート部材8と左右対称に形成されている。
【0061】
<サポート装置の作用>
次に、サポート装置3の作用について説明する。
空気袋31A,31Bによるサポート位置が調整された車両用シート1に乗員が着座すると、乗員の上体(腰部)は、
図13に示すように、後方に配置された空気袋31A,31Bの左右方向中央部の厚みが薄い部分、すなわち、左右方向両端部に対して凹み状となる部分に収まるとともに、左右方向両端部(エア室31C)によって左右から包み込まれるように支持されることとなる。特に、本実施形態においては、所定領域Hでは、左右方向両端部だけにエア室31Cが形成されているので、所定領域H内に位置する左右のエア室31Cの可動範囲が大きくなっているため、空気袋31A,31Bは、乗員の上体に沿った形状に変形しやすい。これにより、乗員の腰部を後方から好適にサポートすることができる。
【0062】
また、コントローラ(図示省略)を操作して、腰部の左右のサポート位置を調整するとき、特に、空気袋31L,31Rを膨張させるとき、空気袋31L,31Rは、左右両側に膨らもうとするが、
図16(a)から
図16(b)に示すように(空気袋31Lのみ図示)、プレート部材8によって左右方向外側への膨張が規制される結果、左右方向内側に向けて膨らむ。そして、空気袋31L,31Rは、図示しないクッション材や表皮材によって覆われているため、膨らんでいくとクッション材などに押さえられて、次第にその前部がプレート部材8の傾斜面81Cに沿っていく。これにより、空気袋31L,31Rは、最終的に、左右方向内側の斜め前方(矢印参照)に向けて膨らんでいくこととなるため、乗員の腰部を左右方向斜め後ろから好適にサポートすることができる。
【0063】
<効果>
以上説明した車両用シート1によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
【0064】
図1に示したように、ポンプ32が左右の着座部サイドフレーム41を連結する剛性の高いパンフレーム42の下に配置されているので、乗員が着座部4に着座したときにシートスプリング45やクッション材などが撓んで下に下がっても、シートスプリング45などとポンプ32との干渉を抑制することができる。
【0065】
また、
図3に示したように、ポンプ32がサブマリンパイプ43よりも前方に配置されているので、車両の衝突時にサブマリン現象が発生しても、乗員やシートスプリング45などはサブマリンパイプ43によって支持されることになるので、シートスプリング45などとポンプ32との干渉を抑制することができる。また、サブマリン現象が発生したときには、乗員からの荷重はサブマリンパイプ43が受け止めることになるので、ポンプ32に荷重がかかることを抑制することができる。
【0066】
また、
図4に示したように、ポンプ32は長手方向が左右方向を向くように配置されているので、ポンプ32を、左右方向に延びるサブマリンパイプ43に沿うように、かつ、近づけて配置することが可能となるので、ポンプ32とサブマリンパイプ43を前後方向にコンパクトに配置することができる。これにより、車両用シート1を前後方向に小型化することが可能となる。
【0067】
また、空気の送出口32Aが設けられた端部が左右方向中央寄りに配置されるようにポンプ32が設けられているので、送出口32Aは左右方向中央寄りに位置することになる。これにより、制御ユニット33などが左右のどちらに配置されていても、ホース34の長さを略等しくすることができる。また、送出口32Aが左右方向中央寄りに位置することで、送出口32Aが左右方向の端寄り(着座部サイドフレーム41の近く)に位置する場合と比較して、制御ユニット33に向かうホース34の曲げ具合を緩やかにすることができる。
【0068】
また、
図3,5に示したように、ポンプ32がポンプ取付ブラケット6の凹部6Aに入り込んだ状態で取り付けられ、ポンプ取付ブラケット6がパンフレーム42の凹部42Aに入り込んだ状態で取り付けられているので、ポンプ32、ポンプ取付ブラケット6およびパンフレーム42を上下方向にコンパクトに配置することができる。これにより、車両用シート1を上下方向に小型化することが可能となる。
【0069】
また、ポンプ32およびサブマリンパイプ43がパンフレーム42の凹部42Aに入り込んだ状態で前後方向に並べて配置されているので、ポンプ32、サブマリンパイプ43およびパンフレーム42を上下方向にコンパクトに配置することができる。これよっても車両用シート1を上下方向に小型化することが可能となる。また、ポンプ32とサブマリンパイプ43が上下方向に並べて配置される構成と比較して、ポンプ32やサブマリンパイプ43の組付作業性を向上させることができる。
【0070】
また、パンフレーム42とポンプ取付ブラケット6が、それぞれ、凹部42Aや凹部6A(凸部6B)を有することで、パンフレーム42やポンプ取付ブラケット6は、全体として凹凸形状をなすことになるので、パンフレーム42やポンプ取付ブラケット6の剛性を向上させることができる。これにより、ポンプ32の取付剛性を向上させることができる。
【0071】
さらに、
図4に示したように、本実施形態においては、ポンプ32がクッション性を有する革袋61に入れられた状態でポンプ取付ブラケット6に取り付けられているので、振動などによるポンプ32とポンプ取付ブラケット6などとの干渉を抑制することができる。これにより、例えば、着座部4からの異音の発生などを抑制することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0073】
前記実施形態では、ポンプ32がポンプ取付ブラケット6を介してパンフレーム42(連結部材)に取り付けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポンプは、前記実施形態の革袋61に入れるなどして干渉対策を行った上で、連結部材に直接取り付けられていてもよい。
【0074】
前記実施形態では、ポンプ32が左右の着座部サイドフレーム41の間の左側に寄せられた状態で配置されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポンプは、左右の着座部サイドフレームの間の右側に寄せられた状態で配置されていてもよい。
【0075】
また、前記実施形態では、ポンプ32は、長手方向が左右方向を向くように配置されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポンプは、長手方向が前後方向を向くように配置されていてもよい。
【0076】
なお、長手方向が前後方向を向くようにポンプを配置する場合、ポンプは、左右方向の一方(一方の着座部サイドフレーム)に寄せて配置することができる。このような構成においては、ポンプと制御ユニットを左右方向において同じ側に配置することで、逆側に配置した場合と比較して、ポンプから制御ユニットへガスを供給するためのホースを短くすることができる。
【0077】
前記実施形態では、連結部材としてパンフレーム42を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、連結部材は、前後方向に並んで配置され、左右の着座部サイドフレームの前部を連結する複数のパイプなどであってもよい。
【0078】
前記実施形態では、サブマリン規制部材としてサブマリンパイプ43(パイプ状の部材)を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、サブマリン規制部材は、金属板をプレス加工するなどして形成した部材や、エアバッグ装置などであってもよい。また、前記した連結部材(パンフレームなど)にサブマリン現象を規制する機能を持たせてもよい。
【0079】
前記実施形態では、乗物用シートの適用例として、自動車などの車両用シート1を示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物用シート、例えば、船舶用や航空機用のシートに適用することもできる。
【0080】
前記実施形態では、シート部2は、着座部4とシートバック5が別体として形成されていた(シートバック5が着座部4にリクライニング機構を介して固定されていた)が、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シート部は、着座部サイドフレームとシートバックサイドフレームとが一体に形成されたようなサイドフレームを有する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 車両用シート
2 シート部
3 サポート装置
4 着座部
5 シートバック
6 ポンプ取付ブラケット
6A 凹部
6B 凸部
31A 空気袋
31B 空気袋
31L 空気袋
31R 空気袋
32 ポンプ
32A 送出口
40 着座部フレーム
41 着座部サイドフレーム
42 パンフレーム
42A 凹部
43 サブマリンパイプ