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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/00 20060101AFI20221005BHJP
   F26B 13/10 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F26B21/00 B
F26B13/10 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018131506
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2020008242
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】511254284
【氏名又は名称】ヒューグル開発株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】秋田 靖浩
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-030657(JP,A)
【文献】特開2014-100622(JP,A)
【文献】特開昭58-159883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0233637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 21/00
F26B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥対象物の被乾燥面に対向して配置され、前記被乾燥面を乾燥させる乾燥装置であって、
前記被乾燥面に対向配置されて、気体供給源から供給される気体を前記被乾燥面に向けて噴出する噴出口を有する気体噴出ヘッド部を有し、
前記気体噴出ヘッド部は、
前記気体供給源から供給される気体の前記噴出口に至る流路内に設けられ、前記流路内の気体の流れを遮る仕切り板を有し、
前記仕切り板には、オリフィスが形成され、
前記気体の前記オリフィスの前、中、後の絞り及び広がりによって当該気体を超音波振動させる構成とし、
前記流路内を流れて前記仕切り板の前記オリフィスを通過して超音波振動状態の気体が前記噴出口から噴出するようにした、乾燥装置。
【請求項2】
前記オリフィスの開口最大幅は、前記噴出口の開口最大幅より小さい、請求項1記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記気体噴出ヘッド部の前記流路内に設けられた前記仕切り板の前記オリフィスの面と、前記噴出口の面とは平行である、請求項1または2記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記被乾燥面に対向配置されるとともに前記気体噴出ヘッド部に隣接して設けられ、吸引機構に結合される吸気ヘッド部を有し、
前記吸気ヘッド部は、
前記気体噴出ヘッド部の前記噴出口から噴出する気体に向けた方向に傾く吸引孔を有し、
前記吸引機構の吸気作用により、前記吸引孔を通して前記被乾燥面上の気体を吸引するようにした、請求項1乃至3のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記被乾燥面に対向配置されるとともに前記気体噴出ヘッド部を挟むように設けられ、それぞれ吸引機構に結合される第1吸気ヘッド部と第2吸気ヘッド部とを有し、
前記第1吸気ヘッド部は、
前記気体噴出ヘッド部の前記噴出口から噴出する気体に向けた方向に傾く第1吸引孔を有し、
前記第2吸気ヘッド部は、
前記第1吸引孔の傾きと逆方向であって、前記気体噴出ヘッド部の前記噴出口から噴出する気体に向けた方向に傾く第2吸引孔を有し、
前記吸引機構の吸気作用により、前記第1吸引孔及び前記第2吸引孔を通して前記被乾燥面上の気体を吸引するようにした、請求項1乃至3のいずれかに記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板や金属製基板、樹脂製フィルム、立体物等の乾燥対象物の被乾燥面を乾燥させる乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、超音波発生装置を備えた乾燥システムが開示されている。たとえば、特許文献1の段落[0009]には、「超音波発生装置7は通常加熱された空気に混在せしめられて、最も効率よく乾燥対象物5に照射せしめられる。超音波発生装置7の細孔7aには、加熱されたエア10が誘導され、障壁11で混在されて一旦逆戻りして出口8から吹付けられる。超音波は18,000ヘルツ以上の周波数を有するものが好ましく、乾燥時間の短縮化に寄与する。」という内容が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-91827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の乾燥システムは、超音波発生装置7を備えることを前提としており、流路を流れるエアに外部から超音波を混在させる構成を採用している。そして、ノズル3の先端に形成されている出口8からエアを吹き出す仕組みになっている。そのため、エアが吹き付けられる面積が狭く、対象物の被乾燥面の全体を乾燥させるためには、2次元的に対象物を動かさなければならず、手間がかかってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡単な構造にて、超音波を利用した乾燥が可能となる乾燥装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乾燥装置は、乾燥対象物の被乾燥面に対向して配置され、前記被乾燥面を乾燥させる乾燥装置であって、前記被乾燥面に対向配置されて、気体供給源から供給される気体を前記被乾燥面に向けて噴出する噴出口を有する気体噴出ヘッド部を有し、前記気体噴出ヘッド部は、前記気体供給源から供給される気体の前記噴出口に至る流路内に設けられ、前記流路内の気体の流れを遮る仕切り板を有し、前記仕切り板には、オリフィスが形成され、前記気体の前記オリフィスの前、中、後の絞り及び広がりによって当該気体を超音波振動させる構成とし、前記流路内を流れて前記仕切り板の前記オリフィスを通過して超音波振動状態の気体が前記噴出口から噴出するようにした、構成となる。

【0007】
このような構成によれば、気体噴出ヘッド部の流路内にオリフィスが形成された仕切り板を設けることで、前記流路内を流れる気体が、オリフィスを通過してから噴出口に至り、その噴出口から乾燥対象物の被乾燥面に向けて噴出される。その過程で、前記気体の流れのオリフィスの前、中、後の絞り及び広がりにより、前記気体が乱流化して超音波振動し得る。このため、超音波振動状態の気体を前記乾燥対象物の被乾燥面に吹き付けることができるようになる。この超音波振動状態の気体により前記乾燥対象物の前記被乾燥面の乾燥が行われる。
【0008】
本発明に係る乾燥装置において、オリフィスの開口最大幅を、噴出口の開口最大幅より小さい、構成とすることができる。
【0009】
このような構成によれば、気体噴射ヘッド部の流路内において、仕切り板で絞られた気体の流れが噴出口に向かって広がりながら進むようになり、その気体の流れの絞り、広がりにより、前記気体が超音波振動状態なり得る。
【0010】
本発明に係る乾燥装置において、前記気体噴出ヘッド部の前記流路内に設けられた前記仕切り板の前記オリフィスの面と、前記噴出口の面とは平行である、構成とすることができる。
【0011】
このような構成によれば、気体噴出ヘッド部において、仕切り板のオリフィスの面と噴出口の面とが平行であるので、気体噴出ヘッド部の構造をより簡単なものとすることができる。
【0012】
本発明に係る乾燥装置において、前記被乾燥面に対向配置されるとともに前記気体噴出ヘッド部に隣接して設けられ、吸引機構に結合される吸気ヘッド部を有し、前記吸気ヘッド部は、前記気体噴出ヘッド部の前記噴出口から噴出する気体に向けた方向に傾く吸引孔を有し、前記吸引機構の吸気作用により、前記吸引孔を通して前記被乾燥面上の気体を吸引するようにした、構成とすることができる。
【0013】
このような構成によれば、気体噴出ヘッド部に隣接して設けられた吸気ヘッド部は、前記気体噴出ヘッド部の前記噴出口から噴出する気体に向けた方向に傾く吸気孔を有しているので、前記噴出口から超音波振動状態の気体が乾燥対象物の被乾燥面に噴出している状態において、前記吸気ヘッド部の前記吸引孔を通して、前記噴出口から噴出する気体を効率よく吸引することができる。その結果、前記被乾燥面における前記気体噴出ヘッド部の前記噴出口に対向した部分を効率的に乾燥させることができる。
【0014】
本発明に係る乾燥装置において、前記被乾燥面に対向配置されるとともに前記気体噴出ヘッド部を挟むように設けられ、それぞれ吸引機構に結合される第1吸気ヘッド部と第2吸気ヘッド部とを有し、前記第1吸気ヘッド部は、前記気体噴出ヘッド部の前記噴出口から噴出する気体に向けた方向に傾く第1吸引孔を有し、前記第2吸気ヘッド部は、前記第1吸引孔の傾きと逆方向であって、前記気体噴出ヘッド部の前記噴出口から噴出する気体に向けた方向に傾く第2吸引孔を有し、前記吸引機構の吸気作用により、前記第1吸引孔及び前記第2吸引孔を通して前記被乾燥面上の気体を吸引するようにした、構成となる。
【0015】
このような構成によれば、気体噴出ヘッド部を挟んで設けられた第1吸気ヘッド部及び第2吸気ヘッド部は、前記気体噴出ヘッド部の前記噴出口から噴出する気体に向けた方向に傾く第1吸気孔及び第2吸気孔を有しているので、前記噴出口から超音波振動状態の気体が乾燥対象物の被乾燥面に噴出している状態において、前記第1吸気ヘッド部及び第2吸気ヘッド部の前記第1吸引孔及び第2吸引孔のそれぞれを通して、前記噴出口から噴出する気体を更に効率よく吸引することができる。その結果、前記被乾燥面における前記気体噴出ヘッド部の前記噴出口に対向した部分を更に効率的に乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、気体噴出ヘッド部において、流路内を流れる気体が、オリフィスを通過してから噴出口に至り、その噴出口から更に乾燥対象物の被乾燥面に向けて噴出される過程で、前記気体の流れのオリフィスの前、中、後の絞り及び広がりにより、前記気体が乱流化して超音波振動し得るようになるので、簡単な構造にて、超音波を利用した乾燥が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の乾燥装置500を備えた乾燥システム1000の概略構成を示す構成図である。
図2】本発明の実施形態の乾燥装置を示す図であり、図2(a)は下カバーの平面図、図2(b)は全体の正面図である。
図3図2(b)のA-A拡大断面図である。
図4図3の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。まず、図1は、本発明の実施形態に係る乾燥装置500を備えた乾燥システム1000の概略構成を示す構成図である。また、図2図4は、本発明の実施形態の乾燥装置500を示す図であり、図2(a)は下カバーの平面図、図2(b)は全体の正面図、図3図2(b)のA-A拡大断面図、図4図3の一部拡大断面図である。
【0019】
図1に示すように、乾燥システム1000は、ブロア600、HEPAフィルタ700、ヒーターユニット800、及び、ガス分離ユニットを備えている。ブロア600は、乾燥装置500にエア(気体)を供給するものである。HEPAフィルタ700は、ブロア600から供給されたエアから塵埃を取り除くものである。ブロア600及びHEPAフィルタ700で気体供給源を構成する。なお、ヒーターユニット800が発塵する可能性があり、乾燥エアに清浄度を求める場合は、HEPAフィルタ700を、ヒーターユニット800と乾燥装置500との間に配置してもよい。
【0020】
ヒーターユニット800は、ブロア600から供給されたエアを加熱するものである。なお、ヒーターユニット800には、温度コントローラー801が付設されており、エアの温度が調整可能に構成されている。乾燥装置500は、図2図4を基に以下で説明する。ガス分離ユニット900は、乾燥装置500から廃棄されたエアから水分だけでなく、揮発成分や有害物質、乾燥とともに集塵した微粒子などを分離して取り除くものである。
【0021】
すなわち、乾燥システム1000は、吸引したエアを一般排気可能なレベルまで濾すことが可能であると同時に、吸引したガスが有害な場合の処理や、回収した微粒子が高価な場合の再利用が可能に構成されている。
【0022】
図2(a),(b)において、110は角筒状の下カバー、210は下カバー110の上端部に取り付けられる上カバーであり、これらの下カバー110及び上カバー210は、図2(b)の矢印X方向に相対的にスライドさせることによって連結可能となっている。なお、両カバー110,210をスライドさせるための構造については後述する。また、下カバー110及び上カバー210を一体的に連結した状態において、長手方向の両端部には端部カバー310,320が取り付けられ、固定される。
【0023】
下カバー110の内部には、その長手方向のほぼ全長にわたり、後述の図3に示す内部ダクト150が配置されており、図2(b)の端部カバー310の外側には、内部ダクト150に連通する給気ダクト100が取り付けられている。また、給気ダクト100の上方には、上カバー210の内部に形成された空気溜まり220に連通する排気ダクト200が取り付けられている。
【0024】
給気ダクト100及び排気ダクト200は、図1に示すブロア600やHEPAフィルタ700からなる気体供給源に接続されており、エアが給気ダクト100から内部ダクト150に供給され、乾燥後のエアが、空気溜まり220を介して排気ダクト200から排気されるようになっている。
【0025】
また、図2(a)に示すように、下カバー110の天板120には、給気ダクト100及び排気ダクト200からの距離が遠いほど、開口面積が大きい(下カバー110の長手方向に沿った長さが長い)各一対の排気口121,122,123,124がそれぞれ設けられている。なお、これらの排気口の数や形状は、図示例に何ら限定されるものではない。
【0026】
次に、乾燥装置500の内部構造を図3及び図4に基づいて詳述する。図3及び図4に示すように、乾燥装置500は、乾燥対象物Gの一方の表面である被乾燥面G1に対向して配置され、被乾燥面G1を乾燥させるものである。
【0027】
乾燥装置500は、気体噴出ヘッド部501を有している。気体噴出ヘッド部501は、被乾燥面G1に対向配置され、気体供給源から供給される気体を被乾燥面G1に向けて噴出する噴出口156を有する。噴出口156と被乾燥面G1との間のギャップはたとえば4mm以下となっている。また、気体噴出ヘッド部501は、気体供給源から供給される気体の噴出口156に至る流路155内に設けられ、流路155内の気体の流れを遮る仕切り板153を有している。なお、噴出口156と被乾燥面G1との間のギャップは、4mm以下が好ましいが、これに限定するものではなく、4mmよりも大きくてもよい。
【0028】
仕切り板153には、オリフィス153aが形成されている。オリフィス153aの開口最大幅は、噴出口156の開口最大幅より小さく設計されている。これにより、仕切り板153のオリフィス153aで絞られたエアの流れが噴出口156に向かって広がりながら進むようになり、そのエアの流れの絞り、広がりにより、エアが超音波振動状態となる。なお、オリフィス153aと噴出口156との間の流路の幅が一定であってもよく、変化したとしてもよい。また、オリフィス153aの形成された仕切り板153は、流路155内に、複数設けられるようにしてもよい。
【0029】
また、仕切り板153のオリフィス153aの面と、噴出口156の面とは平行となっている。そのため、気体噴出ヘッド部501において、仕切り板153のオリフィス153aの面と噴出口156の面とが平行であるので、複雑な構造を採用することなく、気体噴出ヘッド部501の構造をより簡単なものにできる。
【0030】
また、乾燥装置500は、それぞれ吸引機構に結合される第1吸気ヘッド部502aと第2吸気ヘッド部502bとを有している。第1吸気ヘッド部502a及び第2吸気ヘッド部502bは、断面視した状態において気体噴出ヘッド部501に隣接する、つまり気体噴出ヘッド部501を挟むように被乾燥面G1に対向配置して設けられている。
【0031】
第1吸気ヘッド部502aは、気体噴出ヘッド部501の噴出口156に隣接するように配置された第1吸引孔154aを有している。第1吸引孔154aは、内部ダクト150の底板154に形成されている。具体的には、第1吸気ヘッド部502aは、気体噴出ヘッド部501の噴出口156から噴出する気体に向けた方向に傾く第1吸引孔154aを有している。第1吸引孔154aは、底板154の長手方向に沿って開口したスリット状に形成してもよく、断面形状を円形状又は楕円形状に形成してもよい。
【0032】
第2吸気ヘッド部502bは、気体噴出ヘッド部501の噴出口156に隣接するように配置された第2吸引孔154bを有している。第2吸引孔154bは、内部ダクト150の底板154に形成されている。具体的には、第2吸気ヘッド部502bは、第1吸引孔154aの傾きと逆方向であって、気体噴出ヘッド部501の噴出口156から噴出する気体に向けた方向に傾く第2吸引孔154bを有している。第2吸引孔154bは、底板154の長手方向に沿って開口したスリット状に形成してもよく、断面形状を円形状又は楕円形状に形成してもよい。
【0033】
具体的には、第1吸引孔154a及び第2吸引孔154bは、図3及び図4に示すように、断面視した状態において乾燥装置500の中心線に対して紙面上側に向かって互いに離れる方向に傾斜するように形成されている。つまり、第1吸引孔154a及び第2吸引孔154bは、噴出口156から噴出されたエアのガイドとしての機能を有し、エア吸引室180への導入をサポートしている。
【0034】
以上のように、内部ダクト150の下方中央部に配置された仕切り板153にはオリフィス153aが形成されていると共に、内部ダクト150の底板154には、噴出口156の両側に位置するように第1吸引孔154a及び第2吸引孔154bが形成されているので、流路155を直進的に流れ、噴出口156から噴出され、被乾燥面G1を乾燥した超音波振動状態のエアは、吸引機構の吸気作用により、第1吸引孔154a及び第2吸引孔154bのそれぞれを通して吸引される。つまり、オリフィス153aによりエアを乱流化でき、第1吸引孔154a及び第2吸引孔154bによりエアを更に効率よく吸引することができるので、被乾燥面G1における気体噴出ヘッド部501の噴出口156に対向した部分を更に効率的に乾燥させることができる。なお、第1吸気ヘッド部502b及び第2吸気ヘッド部502bは乾燥装置500に必須な構成ではなく、またいずれか1つだけを乾燥装置500の構成としてもよい。
【0035】
また、図3に示すように、下カバー110と上カバー210とは、下カバー110の上端部両側及び上カバー210の下端部両側にそれぞれ形成された凹凸構造からなるスライドガイド161により、紙面の表裏方向に相対的にスライド可能となっている。なお、下カバー110の内部に配置された内部ダクト150も、上記同様の凹凸構造からなるスライドガイド162により、下カバー110に対して相対的にスライド可能である。
【0036】
内部ダクト150の内部空間はエア噴射室170を形成しており、このエア噴射室170は給気ダクト100に連通している。また、下カバー110の内面と内部ダクト150の外面とによって形成される空間は、エア吸引室180として前記排気口121を介し上カバー210の空気溜まり220に連通し、更に排気ダクト200に連通している。
【0037】
また、下カバー110の側板130の内面の適宜な位置には空気抵抗を大きくするための突起131が複数形成され、内部ダクト150の内外面の適宜な位置にも突起151,152が形成されている。これらの突起の数や形状は、図示例に何ら限定されるものではない。
【0038】
次に、この実施形態の動作を説明する。内部ダクト150、下カバー110及び上カバー210を互いにスライドさせて連結すると共に端部カバー310,320を取り付け、更に給気ダクト100及び排気ダクト200を取り付けることにより、図2(b)及び図3に示すように乾燥装置全体が組み立てられる。
【0039】
この状態で外部の気体供給源から給気ダクト100に供給されたエアは、内部ダクト150内のエア噴射室170からオリフィス153aを介して乾燥対象物Gの表面、つまり被乾燥面G1に噴出される。図4に示すように、エア噴射室170から噴出口156に至る流路155を流れるエアは、オリフィス153aを介して直進して被乾燥面G1に向けて噴出される。そして、エアにより乾燥対象物Gの表面が乾燥される。このエアは、第1吸引孔154a及び第2吸引孔154bを介してエア吸引室180→排気口121→空気溜まり220→排気ダクト200の経路で吸引、排気される。
【0040】
上述した一連の給気-排気工程において、エアはエア噴射室170の狭窄した下端部により高圧エアとなってオリフィス153aから乾燥対象物G方向に噴出され、乾燥対象物Gの表面を乾燥させる。エアは、エア噴射室170→オリフィス153a→噴出口156を順に通過して(矢印A1)、乾燥対象物Gの被乾燥面G1に向けて噴出することになる。このとき、エアは、通路幅が異なる部分を経由することによって振動させられる。つまり、エアは、オリフィス153aの前、中、後の絞り及び広がりにより、乱流化して超音波振動し得る。このため、超音波振動状態のエアを乾燥対象物Gの被乾燥面G1に吹き付けることができるようになる。
【0041】
この超音波振動状態のエアにより乾燥対象物Gの被乾燥面G1の乾燥が行われる。エアを超音波振動させることで、水分の揮発が促進され、乾燥対象物Gを均一にかつ短時間で乾燥させることが可能になる。したがって、乾燥装置500によれば、超音波振動子(圧電素子等)の超音波発生装置を設けることなく、またエアを反転させる構成も必要なく、気体を超音波振動することができ、乾燥対象物Gの乾燥をより効果的に行うことができる。なお、乾燥対象物Gの被乾燥面G1に存在する水分には、水だけでなく、薬品など揮発成分を含んだ材料も含まれる場合がある。
【0042】
加えて、内部ダクト150の内面に突出した突起152により空気抵抗の強弱が発生するので、噴出口156から噴出されるエアにさらに振動を与えることができ、乾燥対象物Gの表面である被乾燥面の乾燥をより効果的に行うことができる。
【0043】
また、エアは、第1吸引孔154a及び第2吸引孔154bを介してエア吸引室180に吸引されるが(矢印A2)、その際、下カバー110の内面及び内部ダクト150の外面に突出した突起131,151,152により空気抵抗の強弱が発生するので、これらの突起付近において、エア吸引室180を通過するエアの負圧が部分的に大きくなり、第1吸引孔154a及び第2吸引孔154bからのエアの吸引を一層強力に行うことができる。
【0044】
さらに、噴出口156から超音波振動状態の気体が乾燥対象物Gの被乾燥面G1に噴出している状態において、第1吸気ヘッド部502a及び第2吸気ヘッド部502bの第1吸引孔154a及び第2吸引孔154bのそれぞれを通して、噴出口156から噴出する気体を更に効率よく吸引することができる。その結果、被乾燥面G1における気体噴出ヘッド部501の噴出口156に対向した部分を更に効率的に乾燥させることができる。
【0045】
更に、下カバー110の天板120に形成された排気口121,122,123,124は、排気ダクト200からの距離が遠いほど(端部カバー320に近付くほど)開口面積が大きくなっているので、エアの吸引圧が高い端部カバー310側のエア流量と、エアの吸引圧が低い端部カバー320側のエア流量とをほぼ等しくすることができ、乾燥装置の長手方向の全長にわたって、上カバー210の空気溜まり220に吸引されるエア流量をほぼ均一にすることが可能である。これにより、乾燥装置の長手方向の全長にわたってほぼ均一な吸引力が得られ、乾燥対象物Gの表面全域をムラなく乾燥することができる。
【0046】
また、上カバー210によって形成された大容量の空気溜まり220は、各排気口121,122,123,124から個別に取り込んだ吸引エアを一括して排気ダクト200方向に搬送する機能を有し、この空気溜まり220も、エアの円滑な吸引に寄与するものである。なお、乾燥装置500を乾燥対象物Gに対して移動可能に構成してもよく、乾燥対象物Gを乾燥装置500に対して移動させる構成としてもよい。
【0047】
この実施形態によれば、複雑な構成を採用することなく、噴出口156から噴出される気体を乱流にできるので、部品の種類や点数を少なくすることができ、製造コストの低減が実現するとともに、噴出させる気体を超音波振動させることができ、被乾燥面をより早く乾燥させられる。
【0048】
なお、上述した乾燥装置1000では、超音波振動状態のエアを乾燥対象物Gに吹き付けるようにしたが、他の気体、例えば、窒素等を超音波振動状態にて乾燥対象物Gの被乾燥面G1に吹き付けるようにしてもよい。
【0049】
また、上述した乾燥装置1000は、ガラス基板、金属製基板、半導体基板、液晶基板等の平面状のものだけでなく、樹脂膜等の膜状のもの、球面状のもの等、他の形状のものを乾燥対象物Gとして、その被乾燥面G1の乾燥に適用することができる。
【0050】
また、本発明は、前述した実施の形態、各種実施例、その変形例及び応用例に限定されるものではない。本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から除外するものではない。
【符号の説明】
【0051】
100:給気ダクト
110:下カバー
120:天板
121,122,123,124: 排気口
130:側板
131:突起
150:内部ダクト
151,152:突起
153:仕切り板
153a:オリフィス
154:底板
154a:第1吸引孔
154b:第2吸引孔
155:流路
156:噴出口
161,162:スライドガイド
170:エア噴射室
180:エア吸引室
200:排気ダクト
210:上カバー
220:空気溜まり
310,320:端部カバー
500:乾燥装置
501:気体噴出ヘッド部
502a:第1吸気ヘッド部
502b:第2吸気ヘッド部
600:ブロア
700:HEPAフィルタ
800:ヒーターユニット
801:温度コントローラー
900:ガス分離ユニット
G:乾燥対象物
G1:被乾燥面
図1
図2
図3
図4