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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】回転電機およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/173 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
H02K5/173
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018153378
(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公開番号】P2020028203
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505336622
【氏名又は名称】株式会社TOP
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】上野 清香
(72)【発明者】
【氏名】松前 太郎
(72)【発明者】
【氏名】河口 隆之
(72)【発明者】
【氏名】三好 広之
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-077069(JP,A)
【文献】実開昭54-056105(JP,U)
【文献】特開昭55-034859(JP,A)
【文献】実開昭54-152913(JP,U)
【文献】実開昭55-062149(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸まわりに回転する回転軸を有する回転子と、
底部と、前記底部と対向する開口部との間に設けられ前記開口部と対向する第1の支持面を含む段部と、前記底部と前記段部との間に設けられ前記回転子を収容するモータ室とを有する筒状のケーシングと、
前記回転軸を回転可能に支持するベアリングと、
前記第1の支持面に当接する第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面と、前記第2の面に設けられ前記一軸方向に突出する複数の突起部と、前記ベアリングを保持する保持部とを有するベアリングホルダと、
前記ケーシングに圧入される外周面と、前記第2の面に当接し前記複数の突起部が食い込む第2の支持面とを有する圧入リングと
を具備する回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記複数の突起部は、前記第2の面の周縁部に等角度間隔で設けられる
回転電機
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転電機であって、
前記ベアリングホルダは、前記圧入リングより硬い
回転電機。
【請求項4】
請求項1または3に記載の回転電機であって、
前記圧入リングの第2の支持面は、平面である
回転電機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の回転電機であって、
前記突起部は、半球状、三角柱状または直方体状に形成される
回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機であって、
前記突起部は半球状であり、その半球の半径は0.03mm以上0.3mm以下である
回転電機。
【請求項7】
請求項6に記載の回転電機であって、
前記突起部は三角柱状または直方体状であり、前記突起部の高さは0.15mm以上1.5mm以下である
回転電機。
【請求項8】
ケーシングの内周面に形成された段部に、回転子の回転軸を支持するベアリングを保持するベアリングホルダの周縁部を載置し、
前記ベアリングホルダの周縁部を前記段部に向けて押し付ける圧入リングを前記ケーシングに圧入し、
前記ベアリングホルダの周縁部に形成された突起部を前記圧入リングに食い込ませる
回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関し、特にベアリングホルダを備えた回転電機およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機の回転子の回転軸を支持するために複数のベアリングが用いられ、それらのベアリングの1つを保持するために、ベアリングホルダがケーシングに収容される。
【0003】
一般的に、このベアリングホルダがケーシング内で径方向および軸方向に移動してベアリングに負荷をかけることがないように、ベアリングホルダ自体がケーシングに圧入され、固定される。あるいは、圧入リングと、ケーシング内に形成された円環状の段部とで、ベアリングホルダが回転軸方向に挟持(保持)される。
ここで、ベアリングホルダと圧入リングとの間で線膨張係数が異なる場合、回転電機の温度変化によって挟持が緩みやすい。
【0004】
そこで特許文献1においては、この緩みによりベアリングホルダが径方向に揺動するのを防止するために、圧入リングの凸部とベアリングホルダの凹部とを嵌合させる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-77069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上記のような凹凸嵌合構造では、圧入リング及びベアリングホルダの形状および加工が複雑になり製造コストが上がってしまう。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、ケーシングに対してより簡素な構造でベアリングホルダを固定できる回転電機およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る回転電機は、回転子と、筒状のケーシングと、ベアリングと、ベアリングホルダと、圧入リングとを具備する。
上記回転子は、一軸まわりに回転する回転軸を有する。
上記筒状のケーシングは、底部と、上記底部と対向する開口部との間に設けられ上記開口部と対向する第1の支持面を含む段部と、上記底部と上記段部との間に設けられ上記回転子を収容するモータ室とを有する。
上記ベアリングは、上記回転軸を回転可能に支持する。
上記ベアリングホルダは、上記第1の支持面に当接する第1の面と、上記第1の面とは反対側の第2の面と、上記第2の面に設けられ上記一軸方向に突出する複数の突起部と、上記ベアリングを保持する保持部とを有する。
上記圧入リングは、上記ケーシングに圧入される外周面と、上記第2の面に当接し上記複数の突起部が食い込む第2の支持面とを有する。
【0009】
上記の回転電機では、上記複数の突起部は、上記第2の面の周縁部に等角度間隔で設けられてもよい。
【0010】
上記の回転電機では、上記ベアリングホルダは、上記圧入リングより硬くてもよい。
【0011】
上記の回転電機では、上記圧入リングの第2の支持面は、平面であってもよい。
【0012】
上記の回転電機では、上記突起部は、半球状、三角柱状または直方体状に形成されてもよい。
【0013】
上記の回転電機では、上記突起部が半球状の場合、その半球の半径は0.03mm以上0.3mm以下であり、上記突起部が三角柱状または直方体状の場合、上記突起部の高さは0.15mm以上1.5mm以下であってもよい。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る回転電機の製造方法は、ケーシングの内周面に形成された段部に、回転子の回転軸を支持するベアリングを保持するベアリングホルダの周縁部を載置し、
上記ベアリングホルダの周縁部を上記段部に向けて押し付ける圧入リングを上記ケーシングに圧入し、
上記ベアリングホルダの周縁部に形成された突起部を上記圧入リングに食い込ませる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、ケーシングに対してより簡素な構造でベアリングホルダを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る電子機器としての回転電機の構成例を示す分解斜視図である。
図2】上記回転電機の要部の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るベアリングホルダを示す斜視図である。
図4】上記ベアリングホルダにおける軸方向突起部を示す斜視図である。
図5】上記ベアリングホルダの固定構造を説明する上記回転電機の要部の断面部である。
図6】上記軸方向突起部の他の実施形態を示す斜視図である。
図7】上記軸方向突起部のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
<電子機器の構成>
図1は本発明の一実施形態に係る電子機器としての回転電機100の構成例を示す分解斜視図であり、図2は回転電機100の要部の断面図である。
【0019】
回転電機100は、ケーシング10と、部品実装体20と、モータ30と、バスバーユニット40と、ベアリングホルダ50と、圧入リング60と、を有する。
【0020】
[ケーシング]
ケーシング10は、開口部11と、開口部11に対向する底部12とを有する概略円筒形状(筒状)に形成される。ケーシング10は形状およびコストを考慮すると、アルミダイカスト、アルミニウム等の金属材料から構成され、図2に示すように、モータ30やバスバーユニット40等を収容する。
【0021】
底部12と開口部11との間には、開口部11から挿入されるベアリングホルダ50をZ軸(駆動軸321)方向に落下しないようにするための段状の段部15が形成されている(図2参照)。
【0022】
この段部15は、開口部11と対向する第1の支持面15Sを有する。第1の支持面15Sは、後述するように、ベアリングホルダ50の周縁部を支持する。
ケーシング10は、底部12と段部15との間に設けられ、後述するロータ(回転子)32を収容するモータ室10M(図2参照)を有する。
【0023】
[部品実装体]
部品実装体20は、図2に示すように、モータ30、バスバーユニット40及びベアリングホルダ50よりも上方においてケーシング10の上端部に保持される。部品実装体20は、部品実装基板21と、ヒートシンク23とを有する。
【0024】
本実施形態の部品実装基板21は、電動パワーステアリング装置(EPS:Electronic Power Steering)のECU(Electronic Control Unit)を構成する各種電子機器(図示略)を含む回路基板である。当該電子機器としては、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等を含む。部品実装基板21は、複数のネジ部(図示せず)を介してヒートシンク(蓋部)23に固定される。
【0025】
ヒートシンク23は、シールリングS(図2参照)を介してケーシング10の開口部11に組み付けられることで、ケーシング10の内部を密閉する蓋部を構成する。図1に示すように、ヒートシンク23の上面には、部品実装基板21と図示しない電源ユニットとの間を電気的に接続する外部接続端子23aが設けられている。ヒートシンク23の周縁部には、ネジ挿通孔を有する複数のブラケット23bが設けられており、これらのブラケット23bを介してヒートシンク23の開口部11の周縁部に設けられた複数の固定ブラケット14にネジ固定される。
【0026】
[モータ]
モータ30は、図2に示すようにケーシング10内のモータ室10Mに収容され、ステータ(固定子)31と、ロータ(回転子)32とを有する。
【0027】
ステータ31は、ケーシング10の内側に円環状に配置された複数のティース(ステータコア)と、複数のティースにそれぞれ巻回されたコイル(ステータコイル)を含む。ティースは、磁性材からなり、例えば複数の磁性鋼板の積層体で構成される。ステータ31は、ケーシング10の内周に嵌合されることによりケーシング10に固定される。コイルは、U相、V相及びW相の三相電磁コイルを形成するように、それらの両端部(図示せず)がバスバーユニット40に電気的に接続される。
【0028】
ロータ32は、一軸(Z軸)まわりに回転する駆動軸(回転軸)321と、駆動軸321に取り付けられるロータコア322とを有する。駆動軸321は、ケーシング10の軸心に沿って配置され、ロータコア322の中央に形成された貫通孔に圧入される。駆動軸321は、ベアリングB1(第1のベアリング)及びベアリングB2(第2のベアリング)を介してケーシング10に回転自在に支持される。ロータコア322は、周方向に配列された複数の磁極を有する。ロータ32は、ステータ31の内側に配置され、ステータ31との電磁作用により駆動軸321をその軸まわりに回転させる。
【0029】
駆動軸321の一端(図1及び図2において下端)は、ケーシング10の底部12を貫通し、その先端部にギヤ部323を有する。ギヤ部323は、ステアリングシャフトに連絡する相手側ギヤ(図示略)に噛み合い、駆動軸321の回転を上記ステアリングシャフトに伝達する。
【0030】
一方のベアリングB1(第1のベアリング)は、ケーシング10の底部12に取り付けられ、駆動軸321の一端側を回転可能に支持する。他方のベアリングB2(第2のベアリング)は、駆動軸321の他端側を回転可能に支持する。
ベアリングB2は、ロータコア322とヒートシンク23との間に配置され、ベアリングホルダ50を介してケーシング10に固定される。ベアリングホルダ50に関しては後に詳述する。
【0031】
[バスバーユニット]
バスバーユニット40は、導電材からなる複数のバスバー41と、これらバスバー41を内包する電気絶縁性のバスバーホルダ42とを有する(図2参照)。バスバーホルダ42は、円環状の成形体で構成され、複数のバスバー41は、バスバーホルダ42の外周面から径外方へ突出する複数の接続端子41aと、バスバーホルダ42の天面から一軸方向に延び、U相、V相及びW相のそれぞれに対応した複数の電源端子41bとを有する(図1参照)。
【0032】
バスバーユニット40は、ケーシング10の内部に配置され、駆動軸321と同心的に、ステータコイルに接続される。複数の接続端子41aは、U相、V相及びW相のステータコイル312の一端にそれぞれ電気的に接続され、複数の電源端子41bは、ヒートシンク23に固定された部品実装基板21上のコネクタ部品22と電気的に接続される(図2参照)。
【0033】
[圧入リング]
圧入リング60は、図1に示されているような円環状のものである。圧入リング60は、段部15とでベアリングホルダ50をZ軸方向に挟持するように、ケーシング10に開口部11から圧入される。圧入リング60は、開口部11の内周面110に圧入される外周面60Aと、ベアリングホルダ50の周縁部に当接する第2の支持面60Bとを有する(図5参照)。第2の支持面60Bは、平面である。
【0034】
圧入リング60は、ケーシング10と同一の材料(アルミダイカスト、アルミニウム等)または、ケーシング10と同程度の線膨張係数を有する材料(例えば黄銅やマグネシウム合金)から成る。これにより、回転電機100の温度変化による、圧入リング60のケーシング10への圧入固定緩みを防止することができる。
【0035】
[ベアリングホルダ]
図3は、ベアリングホルダ50を示す斜視図である。図4および図5は、圧入リング60によるベアリングホルダ50の固定構造を説明する回転電機100の要部の斜視図および断面図である。
【0036】
ベアリングホルダ50は、ベアリングB2をケーシング10内に位置決め保持するためのものであり、金属板のプレス成形体で構成される。本実施形態においてベアリングホルダ50は、金属板を立体形状に深絞り加工及び折り曲げ加工することで作製される。
【0037】
ベアリングホルダ50が金属材料で構成されることにより、ベアリングホルダ50を介してベアリングB2で生じる摩擦熱を効率よくケーシング10へ逃がすことができ、ベアリングB2の放熱性が向上する。
【0038】
図3に示されているように、ベアリングホルダ50は、概略円盤形状を有し、その中心部には駆動軸321が貫通する軸穴501が設けられている。
この軸穴501を包囲するように、第2のベアリングB2を圧入保持するためのベアリング保持部502が設けられている。
【0039】
ベアリング保持部502は、ベアリングB2のアウタレースとの嵌合あるいは嵌着作用によってベアリングB2を一体的に保持する。この際、ベアリング保持部502の開口下端部をカシメることで、ベアリングB2との一体的結合が得られるようにしてもよい。
【0040】
ベアリングホルダ50は、複数の電源端子41bを通すための複数の端子用穴503をさらに備え、必要に応じて複数の位置決め用穴504を備えてもよい。位置決め用穴504は肉抜き用の穴であってもよい。
【0041】
さらにベアリングホルダ50は、ケーシング10の段部15(第1の支持面15S)に当接する第1の面51Bとその反対側の第2の面51Tとを有する周縁部51を有する(図5参照)。周縁部51は、その外周端部から径方向に突出するように形成された複数の径方向突起部505を備える。これらの径方向突起部505は、ケーシング10の内周面に接触あるいは近接することで、ケーシング10に対するベアリングホルダ50の位置決め精度を高めるためのものである。
【0042】
径方向突起部505は、これに限定されないが、直方体状に周方向に8個等間隔で(換言すると、45°の等角度で)配置される。径方向突起部505は、少なくとも径方向に対向するように2個配置されればよい。
【0043】
ベアリングホルダ50は、周縁部51の外周端部からZ軸方向に突出するように形成された複数の軸方向突起部506をさらに備える。これらの軸方向突起部506は、第2の面51Tに設けられ、圧入リング60に食い込むことで、ベアリングホルダ50が径方向に揺動することを抑制する。
【0044】
軸方向突起部506は、これに限定されないが、ベアリングホルダ50の周方向に8個等間隔で(換言すると、45°の等角度で)配置される。ここで、径方向突起部505は、各軸方向突起部506の周方向における中間に配置されている。
軸方向突起部506は、少なくとも径方向に対向するように2個配置されればよい。
【0045】
軸方向突起部506は、圧入リング60へ食い込む時(食い込みに関しては後述する)に反力を受ける。この反力によるベアリングホルダ50の変形を防止するために、軸方向突起部506は、ケーシング10の段部15に載置されるベアリングホルダ50の外周縁部上に配置される。
【0046】
本実施形態において軸方向突起部506は、半球状あるいは部分半球状に形成される。軸方向突起部506は、例えばベアリングホルダ50の外周端部を第1の面51B側からポンチで目打ちすることで形成される。軸方向突起部506の先端形状は曲面状に限られず、平面状でもよいし、錐体状であってもよい。
【0047】
圧入リング60への食い込みを効果的に実現するためには、軸方向突起部506の半球(先端R)の半径は0.03mm以上0.3mm以下であるのが望ましい。
これらの範囲の最小値未満であると、軸方向突起部506が低すぎて食い込みが実現されにくい。
あるいは、これらの範囲の最大値を超えると、軸方向突起部506が高すぎて安定した食い込みが実現されにくい。
【0048】
ベアリングホルダ50を構成する金属板は、圧入リング60の構成材料よりも硬質の材料であれば特に限定されないが、形状およびコストを考慮すると例えば鋼板が好ましい。必要な強度が確保されつつ、軸方向突起部506を形成し得る程度の厚みで構成される。
【0049】
ベアリングホルダ50は、磁性材料で構成されてもよいし、非磁性材料で構成されてもよい。ベアリングホルダ50が磁性材料で構成されることにより、ステータ31やロータ32から発生する電磁場の影響から部品実装基板21上の電子部品を保護するというシールド効果が得られる。このような材料として、例えばSPCC(冷間圧延鋼板)が挙げられるが、勿論これに限られない。
【0050】
[ベアリングホルダの固定方法]
従来、ベアリングホルダを直接的にケーシングに圧入固定しようとしても、上記のようなプレス加工ではベアリングホルダの外径公差が大きいため、圧入が困難であった。
直接的に圧入できたとしても、鉄(ベアリングホルダ)とアルミダイカスト(ケーシング10)との間の線膨張係数における差異により、圧入リングによるベアリングホルダの保持力が低下して、ベアリングホルダが径方向や軸方向に移動するという課題もあった。
【0051】
これらの困難や課題を回避するために、本実施形態では、ケーシング10と線膨張係数が等しい材料から成る圧入リング60の圧入により、ベアリングホルダ50がケーシング10の段部15とで挟持される。
この圧入リング60の圧入する(段部15と圧入リング60との間で挟み込む)力により、ベアリングホルダ50が、軸方向および径方向に移動しないように保持される。
【0052】
ここで、ベアリングホルダ50はプレス加工されているので、実際にはある程度の表面粗さを有している。そのため、この圧入リング60の挟み込み面も実際は点接触となり、径方向の挟持力は、所望の挟持力より小さくなり、ベアリングホルダ50がケーシング10内で径方向に移動あるいは揺動してしまうことがあった。
【0053】
これに対し本実施形態では、図4に示されているように、回転電機100のアセンブリ時に、圧入リング60をベアリングホルダ50の複数の軸方向突起部506に食い込ませて、この径方向の揺動を防止する。
本実施形態のベアリングホルダの固定方法として、圧入リング60は、段部15とで複数の軸方向突起部506に食い込むまで圧入される。
【0054】
すなわち本実施形態の回転電機100の製造方法は、ケーシング10の内周面に形成された段部15(第1の支持面15S)に、ベアリングホルダ50の周縁部51を載置するステップと、ベアリングホルダ50の周縁部51を段部15に向けて押し付ける圧入リング60をケーシング10に圧入するステップと、ベアリングホルダ50の周縁部51に形成された軸方向突起部506を圧入リング60(第2の支持面60B)に食い込ませて、圧入リングを塑性変形させるステップとを有する。
【0055】
図5に示すように、圧入リング60がケーシング10の内周面110に圧入されると、ベアリングホルダ50の下面(第1の面51B)は、段部15の第1の支持面15Sに当接する(圧接される)。このとき、圧入リング60の下面(第2の支持面60B)は、ベアリングホルダ50の上面(第2の面51T)に設けられた一軸方向に突出した複数の突起部506に食い込まれることで、塑性変形した状態になる。結果、圧入リング60の第2の支持面60Bには、突起部506の食い込みによる圧痕60Bcが形成される(図5参照)。圧入リング60の第2の支持面60Bとベアリングホルダ50の第2の面51Tとは互いに接触していてもよいし、僅かな隙間をあけて対向していてもよい。
【0056】
ここで、圧入リング60がベアリングホルダ50に押圧されたときに、圧入リング60に対して複数の軸方向突起部506が食い込むことができるように、圧入リング60と複数の突起部との間の硬度差を設定する必要がある。換言すると、複数の突起部は、圧入リング60より硬い。
【0057】
複数の軸方向突起部506が圧入リング60に食い込むことによって、ケーシング10に対するベアリングホルダ40の径方向の揺動が規制される。食い込みによる物理的な固定なので、ベアリングホルダ50と圧入リング60との間の線膨張係数が異なっても挟持力が低下しにくい。また、挟持力が低下したとしても、圧入リング60に形成された圧痕60Bcと軸方向突起部506との間の係合作用によって、ベアリングホルダ50の径方向の移動を規制することができる。
【0058】
上述したようにベアリングホルダ50に複数の軸方向突起部506を設けて、回転電機100のアセンブリ時に圧入リング60に食い込ませることにより、(簡素な構造で)ベアリングホルダ50を径方向に固定することができる。
【0059】
これにより製造性が向上し、製造コストを削減することが可能になった。また、ベアリングB1およびB2の寿命が向上し、ベアリングホルダ50の径方向(ベアリングB2)の揺動による騒音を抑制できるとともに、ベアリングB2の負荷を低減してその耐久性を向上させることができる。
【0060】
本実施形態のベアリングホルダの固定方法は、ベアリングホルダ50と圧入リング60との間の線膨張係数が異なっても挟持力が低下しにくいので、広い温度適用範囲が必要な車載用に適している。
【0061】
<他の実施形態>
ベアリングホルダ50の軸方向突起部506の形状は、上述のように半球状あるいは部分半球状に限られない。
例えば、図6に示されているように軸方向突起部506は三角柱状に形成されてもよい。この場合、例えば径方向突起部505上に形成された、径方向に直交する方向に略平行な2直線状の切り込みの中央部を突起状に折り曲げ加工して(切り起こして)、軸方向突起部506Bが形成されてもよい。
【0062】
あるいは、図6に示されているように軸方向突起部506は直方体状に形成されてもよい。この場合、例えば径方向突起部505の一部を約90°突起状に折り曲げ加工して、軸方向突起部506Cが形成されてもよい。
【0063】
軸方向突起部506B,506Cの高さは特に限定されないが、0.15mm以上1.5mm以下であるのが望ましい。
【0064】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0065】
また以上の実施形態では、電子機器として、車両の電動パワーステアリング装置に用いられる回転電機100を例に挙げて説明したが、他の用途の回転電機(モータ)にも適用可能である。さらに、本発明に係る電子機器は、モータだけでなく、発電機等の他の回転電機にも適用可能であり、加えて、回転電機以外の他の電子機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
10…ケーシング
15…段部
30…モータ
32…ロータ(回転子)
40…バスバーユニット
50…ベアリングホルダ
60…圧入リング
506…軸方向突起部
100…回転電機
B1,B2…ベアリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7