(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】給湯装置及び空調給湯設備
(51)【国際特許分類】
F24H 15/375 20220101AFI20221005BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20221005BHJP
F24H 4/02 20220101ALI20221005BHJP
F24H 15/156 20220101ALI20221005BHJP
F24H 15/223 20220101ALI20221005BHJP
F25B 30/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F24H15/375
F24H1/18 G
F24H4/02 F
F24H15/156
F24H15/223
F25B30/02 H
(21)【出願番号】P 2018206710
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年7月18日 OMソーラー株式会社のウェブサイト(https://omsolar.jp/omx/omx/)にて公開、平成30年9月22日 日経ホームビルダー2018年10月号の第58~63ページにて公開、平成30年7月11日 朝日新聞2018年7月11日付朝刊第32面にて公開、平成30年6月14日 日本経済新聞2018年6月14日付朝刊第37面にて公開、平成30年5月21日 株式会社長府製作所が空調給湯設備(空調貯湯設備)を本社工場から出荷、平成30年8月8日 新丸ビルコンファレンススクエア901において開催された株式会社長府製作所2018年12月期第2四半期決算説明会で発表、平成30年8月23日 株式会社長府製作所のウェブサイト(https://www.irmovie.jp/nir/?conts=chofu_ir , https://www.irmovie.jp/nir/chofu_ir/pdf/chofu_201808.pdf)にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】390002886
【氏名又は名称】株式会社長府製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】510193256
【氏名又は名称】OMソーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 望
(72)【発明者】
【氏名】西田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】盧 ▲ヒョン▼佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真弘
(72)【発明者】
【氏名】相曽 一浩
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-218554(JP,A)
【文献】特開2017-172901(JP,A)
【文献】特開2018-159526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/00 - 15/493
F24H 1/18
F24H 4/02
F25B 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンク及び該貯湯タンクの湯を沸かす湯沸し運転を行う加熱機構を有する給湯装置において、
前記加熱機構は、当日の夕方の時間帯を含む第1の時間帯域で、前記湯沸し運転を開始する条件を、当日の夜中から朝までの時間帯を含む、前記第1の時間帯域前の第2の時間帯域では、前記湯沸し運転の開始条件と
せず、前記第1の時間帯域で、当日前記貯湯タンク内に与えた累積熱量が、前記湯沸し運転で当日前記貯湯タンク内に与える予定にしていた付与予定熱量未満であることを、前記湯沸し運転の開始条件とし、前記第2の時間帯域では、前記累積熱量が前記付与予定熱量未満であることを、前記湯沸し運転の開始条件としないことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
請求項
1記載の給湯装置において、前記加熱機構は、前記第2の時間帯域での前記湯沸し運転の終了条件を、前記第1の時間帯域での前記湯沸し運転の終了条件としないことを特徴とする給湯装置。
【請求項3】
屋内に設けられた第1の熱交換器、減圧弁、外気と冷媒を熱交換する第2の熱交換器、及び、圧縮機の順に前記冷媒が循環して屋内を暖房する循環回路と、前記循環回路からの前記冷媒の流入を可能にする開状態と不可能にする閉状態が切り替えられる開閉弁が設けられたバイパス路と、前記循環回路から前記バイパス路に流入する前記冷媒の熱が湯沸し回路を介して与えられて、湯が沸き上げられる貯湯タンクとを有する空調給湯設備であって、
前記第1の熱交換器を収容する筺体を具備し、集熱器の近傍に設けられた集熱近傍空間から該集熱器の発熱により温められた空気を前記筺体内に取り込み、室内に対し該筺体から送り出す屋内ユニットと、
前記開閉弁の開閉状態の切り替え及び前記圧縮機の動作を制御して、前記貯湯タンクの湯沸し運転を行わせる制御手段とを備え、
前記制御手段は、当日の夕方の時間帯を含む第1の時間帯域で、前記湯沸し運転を開始する条件を、当日の夜中から朝までの時間帯を含む、前記第1の時間帯域前の第2の時間帯域では、前記湯沸し運転の開始条件と
せず、前記第1の時間帯域で、当日前記貯湯タンク内に与えた累積熱量が、前記湯沸し運転で当日前記貯湯タンク内に与える予定にしていた付与予定熱量未満であることを、前記湯沸し運転の開始条件とし、前記第2の時間帯域では、前記累積熱量が前記付与予定熱量未満であることを、前記湯沸し運転の開始条件としないことを特徴とする空調給湯設備。
【請求項4】
請求項
3記載の空調給湯設備において、前記制御手段は、前記第2の時間帯域での前記湯沸し運転の終了条件を、前記第1の時間帯域での前記湯沸し運転の終了条件としないことを特徴とする空調給湯設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンク内の湯を外部に供給する給湯機能を備えた給湯装置及び給湯機能に加えて屋内の温度調整も行うことが可能な空調給湯設備に関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯タンク内に貯えた湯を浴槽等に供給する給湯装置は、電力使用料金が安価な夜間時間帯にヒートポンプを作動させて、次の夜間時間帯が始まるまでに使用されると予測した量の湯を貯湯タンク内に沸き上げる(特許文献1、2参照)。これは、日中に電力消費を伴った湯の沸き上げを回避して、消費者が支払う電気料金を安価にしようという考えに基づくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-237149号公報
【文献】特開2013-250012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、貯湯タンク内の湯から放熱により失われる熱量は、沸き上げた湯が使用されるまでの時間が長くなるほど大きくなる。この点、一般家庭では夕方から夜にかけて多くの湯が使用される傾向があることから、夜間時間帯に沸き上げられた湯の多くが夕方まで貯湯タンク内で放熱し続ける。
また、近年、屋内の温度調整を行うために設けられた冷媒循環回路の一部を、貯湯タンク内の湯の沸き上げを行う回路に利用して、給湯用の湯の沸き上げと屋内の温度調整とを行う空調給湯設備が注目されている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、貯湯タンク内の湯から放熱により失われる熱量を抑制する給湯装置及び空調給湯設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る給湯装置は、貯湯タンク及び該貯湯タンクの湯を沸かす湯沸し運転を行う加熱機構を有する給湯装置において、前記加熱機構は、当日の夕方の時間帯を含む第1の時間帯域で、前記湯沸し運転を開始する条件を、当日の夜中から朝までの時間帯を含む、前記第1の時間帯域前の第2の時間帯域では、前記湯沸し運転の開始条件とせず、前記第1の時間帯域で、当日前記貯湯タンク内に与えた累積熱量が、前記湯沸し運転で当日前記貯湯タンク内に与える予定にしていた付与予定熱量未満であることを、前記湯沸し運転の開始条件とし、前記第2の時間帯域では、前記累積熱量が前記付与予定熱量未満であることを、前記湯沸し運転の開始条件としない。
【0006】
前記目的に沿う第2の発明に係る空調給湯設備は、屋内に設けられた第1の熱交換器、減圧弁、外気と冷媒を熱交換する第2の熱交換器、及び、圧縮機の順に前記冷媒が循環して屋内を暖房する循環回路と、前記循環回路からの前記冷媒の流入を可能にする開状態と不可能にする閉状態が切り替えられる開閉弁が設けられたバイパス路と、前記循環回路から前記バイパス路に流入する前記冷媒の熱が湯沸し回路を介して与えられて、湯が沸き上げられる貯湯タンクとを有する空調給湯設備であって、前記第1の熱交換器を収容する筺体を具備し、集熱器の近傍に設けられた集熱近傍空間から該集熱器の発熱により温められた空気を前記筺体内に取り込み、室内に対し該筺体から送り出す屋内ユニットと、前記開閉弁の開閉状態の切り替え及び前記圧縮機の動作を制御して、前記貯湯タンクの湯沸し運転を行わせる制御手段とを備え、前記制御手段は、当日の夕方の時間帯を含む第1の時間帯域で、前記湯沸し運転を開始する条件を、当日の夜中から朝までの時間帯を含む、前記第1の時間帯域前の第2の時間帯域では、前記湯沸し運転の開始条件とせず、前記第1の時間帯域で、当日前記貯湯タンク内に与えた累積熱量が、前記湯沸し運転で当日前記貯湯タンク内に与える予定にしていた付与予定熱量未満であることを、前記湯沸し運転の開始条件とし、前記第2の時間帯域では、前記累積熱量が前記付与予定熱量未満であることを、前記湯沸し運転の開始条件としない。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明に係る給湯装置及び第2の発明に係る空調給湯設備は、当日の夕方の時間帯を含む第1の時間帯域で、湯沸し運転を開始する条件を、当日の夜中から朝までの時間帯を含む、第1の時間帯域前の第2の時間帯域では、湯沸し運転の開始条件としないので、夕方から夜にかけて貯湯タンクから浴槽や台所等に供給される湯を沸き上げる余地を第1の時間帯域に残すことができ、沸き上げによって当日貯湯タンクに与える予定にしていた熱量の全てを朝(即ち、夜間時間帯が終了する時刻)までに与え終える場合に比べ、貯湯タンク内の湯から放熱により失われる熱量を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る給湯装置及びその給湯装置を具備する空調給湯設備の説明図である。
【
図4】室内を暖房する際の様子を示す説明図である。
【
図5】室内を冷房する際の様子を示す説明図である。
【
図6】沸き上げ運転の際の様子を示す説明図である。
【
図7】室内の冷房と共に沸き上げ運転を行う際の様子を示す説明図である。
【
図8】室内の冷房と共に沸き上げ運転を行う際の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る給湯装置10は、貯湯タンク11及び貯湯タンク11の湯を沸かす湯沸し運転を行う加熱機構12を有する装置である。以下、詳細に説明する。
【0010】
給湯装置10は、
図1、
図2に示すように、鉛直方向に長い貯湯タンク11と、貯湯タンク11に湯沸し回路13を介して連結された熱交換器14(第3の熱交換器)、減圧弁15、熱交換器16(第2の熱交換器)及び圧縮機17を有するヒートポンプユニット18と、建屋S内(屋内)に設けられた熱交換器19(第1の熱交換器)及び熱交換器19を収容する筺体20を具備する屋内ユニット21とを備えている。
【0011】
貯湯タンク11は、下部に接続された給水管22から水が供給され、上部に連結された出湯管23から浴槽Kや台所等に供給する湯を送り出す。貯湯タンク11の上部及び下部には、
図2に示すように、熱交換器14、ポンプ24及び温度センサ25が設けられた湯沸し回路13の両端がそれぞれ連結されている。貯湯タンク11の下部の水は、ポンプ24の作動によって湯沸し回路13に流入し熱交換器14を通過して貯湯タンク11の上部に送られる。
そして、貯湯タンク11には、貯湯タンク11内の湯を計測する温度センサ26、27、28、29、30が高い位置から低い位置に向かって間隔を有して順に設けられている。
【0012】
熱交換器19、減圧弁15、熱交換器16及び圧縮機17は、冷媒が循環する循環回路31によって接続されている。冷媒は圧縮機17の作動によって循環回路31を循環し、循環回路31に冷媒が循環することによって、熱交換器19は筺体20内の空気と冷媒を熱交換し、減圧弁15は冷媒を減圧し、熱交換器16は外気と冷媒を熱交換し、圧縮機17は冷媒を圧縮して高圧状態にする。
循環回路31には、熱交換器19、減圧弁15、熱交換器16、圧縮機17に加え、電磁弁32、冷媒の流れる向きを切り替える四方弁33、電磁弁34が設けられている。
なお、
図2においては、循環回路31を太線で記載している。
【0013】
四方弁33は、
図3に示すように、マイクロコンピュータ等によって設計可能な制御手段35に接続されており、制御手段35は、指令信号を送信して、四方弁33を、圧縮機17から出て四方弁33に流入した冷媒の送り先を、電磁弁32とする第1状態にするか、電磁弁34とする第2状態にするかを切り替え可能である。
四方弁33に加え、減圧弁15、圧縮機17、ポンプ24、温度センサ25~30、電磁弁32、34、及び、熱交換器16に空気を供給して熱交換器16の熱交換を促進するファン36が、制御手段35に接続されている。減圧弁15は、制御手段35からの信号発信によって、冷媒を実質的に減圧しない全開状態と冷媒を減圧する絞り状態とが切り替えられ、圧縮機17及びポンプ24は、制御手段35からの信号発信によって作動を開始又は停止する。
【0014】
制御手段35は、
図2に示すように、電磁弁34を、冷媒が熱交換器19側から四方弁33側に通過させるが四方弁33側から熱交換器19側に通過させないOFF状態とするか、冷媒が熱交換器19側から四方弁33側及び四方弁33側から熱交換器19側に通過できるON状態とするかを切り替え可能であり、電磁弁32を、冷媒が熱交換器16側から四方弁33側に通過させるが四方弁33側から熱交換器16側に通過させないOFF状態とするか、冷媒が熱交換器16側から四方弁33側及び四方弁33側から熱交換器16側に通過できるON状態とするかを切り替え可能である。
【0015】
また、熱交換器14には、一端が循環回路31の圧縮機17の冷媒の出側(本実施の形態では、圧縮機17と四方弁33の間の領域)に連結され、他端が熱交換器16及び減圧弁15の間で循環回路31に連結されたバイパス路38が接続されている。バイパス路38には、一端から他端に向かって順に、電磁弁39(開閉弁の一例)、冷媒を貯留可能なマフラ40、減圧弁41、及び、バイパス路38の他端から減圧弁41に向かって冷媒が流れるのを防止する逆止弁42が設けられている。バイパス路38は、電磁弁39及びマフラ40の間の領域が、熱交換器14に接続されている。
【0016】
電磁弁39は、
図3に示すように、制御手段35に接続されており、制御手段35からの信号発信によって、循環回路31からの冷媒の流入を可能にするON状態(開状態)と不可能にするOFF状態(閉状態)が切り替えられる。
制御手段35に接続された減圧弁41は、制御手段35から信号が送信されて、冷媒を実質的に減圧しない全開状態と冷媒を減圧する絞り状態と冷媒を通過させない閉状態とが切り替えられる。
【0017】
循環回路31及びバイパス路38には、
図2に示すように、分岐路43が接続されている。分岐路43は、一端がバイパス路38の熱交換器14及び減圧弁41の間(本実施の形態では、マフラ40及び減圧弁41の間)の領域に連結され、他端が循環回路31の電磁弁32及び熱交換器16の間の領域に連結されている。分岐路43には、
図2、
図3に示すように、制御手段35に接続された電磁弁44と分岐路43の他端から分岐路43に冷媒が流入するのを防止する逆止弁45が設けられている。電磁弁44は、制御手段35から指令信号が送信されて、分岐路43の一端側から他端側に冷媒が流れるON状態と分岐路43の一端側から他端側に冷媒が流れないOFF状態とが切り替えられる。
【0018】
循環回路31及びバイパス路38には、更に、
図2に示すように、一端が循環回路31の熱交換器19と電磁弁34の間の領域に連結され、他端がバイパス路38の熱交換器14と減圧弁41の間(本実施の形態では、マフラ40と減圧弁41の間)の領域に連結された流路46が接続されている。流路46には、
図2、
図3に示すように、制御手段35に接続された電磁弁47及び流路46の一端側から冷媒が流路46内に流入するのを防止する逆止弁48が設けられている。電磁弁47は、制御手段35から指令信号が送信されて、流路46の他端側から逆止弁48に向かって冷媒が流れないようにするOFF状態と流路46の他端側から逆止弁48に向かって冷媒が流れるようにするON状態を切り替える。
【0019】
また、屋内ユニット21が設けられた建屋Sの屋根には、
図1に示すように、PVTパネル(集熱器の一例)Pが固定されている。PVTパネルPは太陽光発電及び太陽熱の集熱を行う板状物であり、主に太陽熱を集熱する際に温度が上昇する。建屋Sには、PVTパネルPの近傍(本実施の形態ではPVTパネルPが固定されている屋根の下側)に屋外に連通したパネル近傍空間(集熱近傍空間の一例)Qが設けられている。
【0020】
屋内ユニット21の筺体20には、それぞれ一端が室内Rに配されたダクト50、51、52、53の他端と、一端がパネル近傍空間Qに連結されたダクト54の他端と、一端がダクト54に連結されたダクト55の他端と、それぞれ一端が屋外に連通したダクト56、57の他端が連結されている。
屋内ユニット21は、筺体20内に複数のファン及びダンパを具備し、制御手段35によりこれらのファン及びダンパを作動することによって、ダクト57から取り込んだ外気及びダクト52から取り込んだ室内Rの空気が、熱交換器19を通過して温度調整され、ダクト50、51を介して室内Rに供給されるようにすると共に、ダクト53から取り込んだ室内Rの空気をダクト55に送り出し、ダクト55、54、パネル近傍空間Q経由で屋外に排出されるようにする。これにより、室内Rの温度調整(冷房や暖房)及び換気を行う。
【0021】
本実施の形態では、貯湯タンク11内の湯を沸かす湯沸し運転を行う加熱機構12が、主として、湯沸し回路13、循環回路31、バイパス路38、分岐路43、熱交換器14、16、19、減圧弁15、41、圧縮機17、ポンプ24、電磁弁32、34、39、44、四方弁33、温度センサ25~30、制御手段35、ファン36によって構成されている。そして、室内R(屋内)の冷暖房及び貯湯タンク11内に給湯用の湯を蓄える空調給湯設備60が、主として、貯湯タンク11、加熱機構12、筺体20、ダクト50~57によって構成されている。
【0022】
貯湯タンク11内の湯を沸き上げずに室内R(屋内)を暖房する際、制御手段35は、電磁弁34をON状態、電磁弁32をOFF状態、電磁弁39をOFF状態、電磁弁44をON状態、電磁弁47をOFF状態にし、減圧弁15、41を絞り状態及び全開状態にそれぞれし、四方弁33を第2状態にして、圧縮機17を作動させ、冷媒が、
図4に示すように、熱交換器19、減圧弁15、熱交換器16、電磁弁32、四方弁33、圧縮機17、四方弁33、電磁弁34を順に通過して熱交換器19に戻る(冷媒がそのように循環回路31を循環する)ようにし、バイパス路38及び分岐路43に冷媒が流れないようにする。これによって、循環回路31を循環する冷媒が、熱交換器19を通過の際に凝縮して筺体20内の空気を加熱し、熱交換器16を通過の際に蒸発して外気から熱を吸収するようにする。
【0023】
貯湯タンク11内の湯を沸き上げずに室内Rを冷房する際、制御手段35は、電磁弁34をOFF状態、電磁弁32をON状態、電磁弁39をOFF状態、電磁弁44をOFF状態、電磁弁47をON状態にし、減圧弁15、41を絞り状態及び全開状態にそれぞれし、四方弁33を第1状態にして、圧縮機17を作動させ、冷媒が、
図5に示すように、熱交換器19、電磁弁34、四方弁33、圧縮機17、四方弁33、電磁弁32、熱交換器16、減圧弁15を順に通過して熱交換器19に戻るようにし、バイパス路38及び分岐路43に冷媒が流れないようにする。これによって、循環回路31を循環する冷媒が、熱交換器19を通過の際に蒸発して筺体20内の空気を冷却し、熱交換器16を通過の際に凝縮して外気に放熱するようにする。電磁弁47をON状態にしているのは、バイパス路38から流路46に冷媒が流入可能にして、バイパス路38に高圧状態となる領域が生じるのを抑制するためである。
【0024】
室内Rの冷房をせずに貯湯タンク11の湯を沸き上げる際、制御手段35は、電磁弁34をOFF状態、電磁弁32をOFF状態、電磁弁39をON状態(開状態)、電磁弁44をOFF状態、電磁弁47をOFF状態にし、減圧弁15、41を全開状態及び絞り状態にそれぞれし、四方弁33を第2状態にして、圧縮機17及びポンプ24を作動させる。
【0025】
これによって、冷媒が、
図6に示すように、蒸発器として機能する熱交換器16、電磁弁32、四方弁33、圧縮機17、熱交換器14、マフラ40、減圧弁41、逆止弁42を順に通過して熱交換器16に戻り、貯湯タンク11の下部から水が湯沸し回路13に流入し、熱交換器14を通過の際にバイパス路38を流れている冷媒から吸熱して貯湯タンク11の上部に流入し、貯湯タンク11の湯が沸き上げられる。従って、制御手段35は、電磁弁39の状態を切り替え及び圧縮機17の動作等を制御して、圧縮機17、熱交換器14、16、減圧弁41、ポンプ24等に貯湯タンク11の湯沸し運転を行わせることとなる。
【0026】
このとき、冷媒は熱交換器19を通過しないので、熱交換器19は筐体20内の空気の加熱及び冷却を行わない。この点、空調給湯設備60は、所定の条件の基で、冷媒が熱交換器19を通過しない状態で、PVTパネルPの発熱により温められるパネル近傍空間Q内の空気を用いて室内Rを暖房することができる。制御手段35は図示しない温度センサから取得する外気温度等を基に、パネル近傍空間Q内の空気が室内Rの暖房を行える温度であることを検出すると、屋内ユニット21に筺体20内のファン等を作動させて、パネル近傍空間Q内の温められた空気をダクト54経由で筐体20内に取り込ませ、室内Rに対し筐体20から送り出して、ダクト50、51経由で室内Rに供給させ、室内Rを暖房される。このパネル近傍空間Q内の空気を用いた室内Rの暖房は、貯湯タンク11の湯の沸き上げと同時に行うことができる。
【0027】
また、本実施の形態では、室内Rの冷房と共に貯湯タンク11内の湯の沸き上げを行うことが可能であり、熱交換器19のみを蒸発器として機能させるモードと、熱交換器19、16を蒸発器として機能させるモードとが存在する。
熱交換器19のみを蒸発器として機能させるモードでは、制御手段35が、電磁弁34をOFF状態、電磁弁32をOFF状態、電磁弁39をON状態(開状態)、電磁弁44をOFF状態、電磁弁47をOFF状態にし、減圧弁15、41を全開状態及び絞り状態にそれぞれし、四方弁33を第1状態にして、圧縮機17及びポンプ24を作動させる。
【0028】
これによって、制御手段35は、
図7に示すように、蒸発器として機能する(即ち、筐体20内の空気を冷却する)熱交換器19を出た冷媒が、電磁弁34、四方弁33、圧縮機17、電磁弁39、熱交換器14、マフラ40、減圧弁41、逆止弁42、減圧弁15を順に通過して熱交換器19に戻るようにし、貯湯タンク11の下部から水が、湯沸し回路13に流入して熱交換器14を通過し貯湯タンク11の上部に流入するようにする。これによって、バイパス路38を流れている冷媒の熱が、熱交換器14を通過の際に、湯沸し回路13を流れている貯湯タンク11内の水に与えられて、当該水を加熱する(即ち、循環回路31からバイパス路38に流入する冷媒の熱が湯沸し回路13を介して当該水に与えられて、貯湯タンク11内の湯が沸き上げられる)。このとき、電磁弁44はOFF状態のため分岐路43には冷媒が流れない。
【0029】
そして、熱交換器19、16を蒸発器として機能させるモードでは、制御手段35が、電磁弁34をOFF状態、電磁弁32をOFF状態、電磁弁39をON状態(開状態)、電磁弁44をON状態、電磁弁47をOFF状態にし、減圧弁15、41を絞り状態、閉状態にそれぞれし、四方弁33を第1状態にして、圧縮機17及びポンプ24を作動させる。これにより、制御手段35は、
図8に示すように、蒸発器として機能する熱交換器19を出た冷媒が、電磁弁34、四方弁33、圧縮機17、電磁弁39、熱交換器14、マフラ40、電磁弁44、逆止弁45、蒸発器として機能する熱交換器16、減圧弁15を順に通過して熱交換器19に戻るようにすると共に、貯湯タンク11内の下部から湯沸し回路13に流入した水が熱交換器14を通過の際に温度上昇して貯湯タンク11の上部に流入するようにする。
【0030】
本実施の形態では、制御手段35が、当日の夕方の時間帯を含む第1の時間帯域(本実施の形態では、当日の12:00~24:00)と、当日の夜中から朝までの時間帯を含む、第1の時間帯域の前の第2の時間帯域(本実施の形態では、当日の0:00~12:00)とで湯沸し運転の開始条件及び終了条件が異なっている場合と同じ場合とがある。以下、この点について説明する。
制御手段35は、第1、第2の時間帯域において、貯湯タンク11に取り付けられた温度センサ26~30の中で最も低い位置に配された温度センサ30の計測温度がT1℃(例えば、30℃)以上であるときは湯沸し運転を行わない。
【0031】
そして、制御手段35は、第1、第2の時間帯域の双方において、温度センサ30の計測温度がT1℃未満であるとき、貯湯タンク11内の湯水(湯及び水を意味する)の熱量が、貯湯タンク11内に確保すべき最小熱量として予め定められた値(以下、単に「最小熱量」とも言う)及び以下の式1のQStartの熱量のいずれよりも小さい場合、湯沸し運転を開始する。
【0032】
【0033】
QStartは、夜中から朝までの時間帯(本実施の形態では、0:00~9:00)に貯湯タンク11から外部に供給された湯の熱量が過去の所定期間中(本実施の形態では、過去7日間)で最大となった値に、当日、放熱によって貯湯タンク11から失われた熱量を加えた値である。
なお、本実施の形態では、最小熱量が20MJであり、貯湯タンク11内の湯水の熱量は温度センサ26~30の計測温度から算出される。
【0034】
そして、制御手段35は、第1の時間帯域で、温度センサ30の計測温度がT1℃未満であり、貯湯タンク11内の湯水の熱量が、最小熱量以上かつQStartの熱量以上である場合、当日の累積熱量が当日の付与予定熱量未満である際に湯沸し運転を開始し(累積熱量が付与予定熱量未満であることを湯沸し運転の開始条件とする)、当日の累積熱量が当日の付与予定熱量以上である際には湯沸し運転を開始しない。
【0035】
一方、制御手段35は、第2の時間帯域で、温度センサ30の計測温度がT1℃未満であり、貯湯タンク11内の湯水の熱量が、最小熱量以上かつQStartの熱量以上である場合、当日、湯沸し運転によって貯湯タンク11内に与えた累積熱量と、湯沸し運転で当日貯湯タンク11内に与える予定にしていた付与予定熱量との大小関係によることなく、湯沸し運転を開始しない。従って、制御手段35(加熱機構12)は、第1の時間帯域で、湯沸し運転を開始する条件を、第2の時間帯域では、湯沸し運転の開始条件としない。
【0036】
本実施の形態では、累積熱量Qbが以下に示す式2によって求められ、付与予定熱量Qnが以下に示す式3によって求められている。
【0037】
【0038】
【0039】
また、制御手段35は、以下の条件で湯沸し運転を終了する。
まず、制御手段35は、第1、第2の時間帯域の双方において、湯沸し運転中に温度センサ25の計測温度がT2℃(例えば、45℃)以上になったのを検出すると湯沸し運転を停止し、湯沸し運転中に温度センサ25の計測温度がT2℃未満であり、貯湯タンク11内の湯水の熱量が以下の式4に示すQStop以上であり、当日の累積熱量が付与予定熱量以上であれば、湯沸し運転を停止する。
【0040】
【0041】
そして、制御手段35は、湯沸し運転中に温度センサ25の計測温度がT2℃未満であり、貯湯タンク11内の湯水の熱量が以下の式4に示すQStop以上であり、当日の累積熱量が、付与予定熱量未満である場合、第2の時間帯域では湯沸し運転を終了するが、第1の時間帯域では湯沸し運転を継続する。従って、制御手段35(加熱機構12)は、第2の時間帯域での湯沸し運転の終了条件を、第1の時間帯域での湯沸し運転の終了条件としない。
【0042】
本実施の形態では、熱交換器16、19に冷媒を通過させることによる室内Rの暖房と、湯沸し運転とを同時に行うことができない。そこで、制御手段35は、適宜、湯沸し運転と熱交換器16、19に冷媒を通過させることによる室内Rの暖房(以下、単に「室内Rの暖房」とも言う)のいずれか一方を優先するようにする。例えば、特定の時間帯では、原則、湯沸し運転を室内Rの暖房より優先して行うが、同時間帯で、室内Rの温度が特定の温度以下になった際には、室内Rの暖房を湯沸し運転よりも優先して行うようにする。
【0043】
これに対し、パネル近傍空間Q内の温かい空気を利用した室内Rの暖房は、湯沸し運転と同時に行えることから、当該暖房を行っている際に、上述した湯沸し運転の開始条件が全て満たされたタイミングで湯沸し運転が開始され、湯沸し運転中に、当該暖房を開始する際に、湯沸し運転を停止することはない。
なお、
図1、
図3に示すように、制御手段35には、空調用の操作がなされる操作盤61及び給湯用の操作がなされる操作盤62が接続されている。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、第1、第2の時間帯域がそれぞれ12:00~24:00、0:00~12:00である必要はない。例えば、第1、第2の時間帯域がそれぞれ11:00~24:00、0:00~11:00であってもよいし、それぞれ13:00~24:00、0:00~13:00であってもよいし、14:00~24:00、0:00~14:00であってもよい。そして、第1、第2の時間帯域以外に、第1、第2の時間帯域とは湯沸し運転の開始条件や湯沸し運転の終了条件が異なる時間帯域を設けてもよい。
【0045】
また、第1の時間帯域で湯沸し運転の開始条件とされ、第2の時間帯域で湯沸し運転の開始条件とされないのは、当日の累積熱量が当日の付与予定熱量未満であることに限定されず、例えば、当日の累積熱量が、過去の所定期間において一日で貯湯タンクに与えた熱量の平均値未満であることを当該条件としてもよい。
そして、第2の時間帯域で湯沸し運転の終了条件とされ、第1の時間帯域で湯沸し運転の終了条件とされないのは、当日の累積熱量が当日の付与予定熱量未満であることに限定されず、例えば、当日の累積熱量が過去の所定期間において一日で貯湯タンクに与えた熱量の最高値未満であることを当該条件としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10:給湯装置、11:貯湯タンク、12:加熱機構、13:湯沸し回路、14:熱交換器、15:減圧弁、16:熱交換器、17:圧縮機、18:ヒートポンプユニット、19:熱交換器、20:筺体、21:屋内ユニット、22:給水管、23:出湯管、24:ポンプ、25~30:温度センサ、31:循環回路、32:電磁弁、33:四方弁、34:電磁弁、35:制御手段、36:ファン、38:バイパス路、39:電磁弁、40:マフラ、41:減圧弁、42:逆止弁、43:分岐路、44:電磁弁、45:逆止弁、46:流路、47:電磁弁、48:逆止弁、50~57:ダクト、60:空調給湯設備、61、62:操作盤、K:浴槽、P:PVTパネル、Q:パネル近傍空間、R:室内、S:建屋