(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】断熱用インソール
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20221005BHJP
A43B 13/02 20220101ALI20221005BHJP
【FI】
A43B17/00 A
A43B13/02 Z
(21)【出願番号】P 2018039516
(22)【出願日】2018-03-06
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591025901
【氏名又は名称】株式会社村井
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】村井 ▲隆▼
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-160827(JP,A)
【文献】国際公開第2017/157357(WO,A2)
【文献】登録実用新案第3057984(JP,U)
【文献】実開昭49-039650(JP,U)
【文献】実開昭59-066409(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 17/00 - 17/18
A43B 13/00 - 13/42
A43B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯となるコルク部材層(11)の
表面に上層ウレタン部材層(12)
を、この上層ウレタン部材層(12)の
表面に表皮
を、前記コルク部材層
(11)の裏面にウレタンスポンジシートを重ねて、熱圧着成型された多層構造の断熱用インソールであって、
前記コルク部材層(11)は、
粉砕されたコルク樫の表皮を接着材と共に前記上層ウレタン部材層(12)の前足部対応領域の厚み以上の一定厚みの板状の圧縮コルクで成型しており、
中足部対応領域及び後足部対応領域は、内側縁及び外側縁が立ち上げられたコーナ部を形成しており、
前記上層ウレタン部材層(12)は、
横アーチ用凸部(12SA)と、内側縦アーチ用凸部(12SB)と、外側縦アーチ用凸部(12SC)とが形成されて、前記コルク部材層(11)の表面全面に渡って圧着されており、
前記ウレタンスポンジシートは、
前記コルク部材層(11)の前記コーナ部の裏面を含んで裏面全面に前記表皮と同程度の薄さで圧着されており、
さらに、
前記上層ウレタン部材層(12)は、
前足部対応領域の厚みが、前記コルク部材層(11)の厚み以下であり、
後足部対応領域に含まれる踵部対応領域の厚みは、前足部対応領域
の厚み程度の薄さにされており、
足の第5中足
骨に対応する領域は、
前記踵部対応領域の上層ウレタン部材層(12)の厚み程度の薄さにされている、ことを特徴とする断熱用インソール。
【請求項2】
さらに、
前記コルク部材層(11)は、
内側縁は、母
趾球付近に対応する箇所から次第に立ち上がり、前記横アーチ用凸部(12SA)の中央付近に対向する箇所で最大高さとなって、踵側に向かって略フラットになっており、
さらに、
外側縁は小
趾球付近に対応する箇所から次第に立ち上がって前記後足部対応領域の先端付近で前記最大高さとなって踵側に向かって略フラットになっている、ことを特徴とする請求項1記載の断熱用インソール。
【請求項3】
前記コルク部材層(11)、上層ウレタン部材層(12)、表皮、
ウレタンスポンジシートは二股の地下足袋型形状であることを特徴とする、請求項1又は2記載の断熱用インソール。
【請求項4】
前記前足部対応領域における前記コルク部材層(11)と前記上層ウレタン部材層(12)と前記
ウレタンスポンジシートと表皮とを圧着した厚みは、5.5mm程度であり、
前記コーナ部に含まれる踵コーナの高さは15mm程度であることを特徴とする、請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の断熱用インソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱用インソールに関する。
【背景技術】
【0002】
道路の舗装工事の現場においては、作業靴として、高い断熱性能を備えた耐熱性の安全靴が用いられる。なぜなら、道路の舗装工事、特に、アスファルトの舗設作業においては、舗設用のアスファルトが冷えて固まる前の高温度のうちに作業する必要があるが、アスファルトは舗設の直後から20分程度経過した後の温度が大よそ100~120℃にもなる。
【0003】
耐熱性の安全靴としては、断熱効果(耐熱性)に優れたゴム底靴が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。また、付属のインソールを装着するようにした専用の安全靴も市販されている。
【0004】
なお、断熱効果を特徴としたインソールとしては、これまでフラットタイプの防寒(保温)用のものが主流となっており、寒冷地などでの暖かさを確保するものであった(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、インソールとしては、芯材にコルク材を用いた平板状の靴用中敷き構造も、これまでに提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-201768号公報
【文献】特開2001-299409号公報
【文献】特開平10-234417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これまでのインソールは、芯材にコルク材を用いたものであっても、フラットタイプのものが主流であった。そのため、防寒用のものも含め、靴内での足の位置の滑りによる変化などに起因して、足が疲労しやすいといった問題があった。
【0008】
足の疲労は、長い時間にわたって連続して作業する場合など、現場での作業性を著しく悪化させる。
【0009】
本発明は、足裏への熱の伝わりが懸念されるような現場での作業性を改善できると共に、足への負担を軽減することができ、長時間の連続した作業を容易に可能とする断熱用インソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、芯となるコルク部材層(11)の表面に上層ウレタン部材層(12)を、この上層ウレタン部材層(12)の表面に表皮を、前記コルク部材層(11)の裏面にウレタンスポンジシートを重ねて、熱圧着成型された多層構造の断熱用インソールであって、
前記コルク部材層(11)は、
粉砕されたコルク樫の表皮を接着材と共に前記上層ウレタン部材層(12)の前足部対応領域の厚み以上の一定厚みの板状の圧縮コルクで成型しており、
中足部対応領域及び後足部対応領域は、内側縁及び外側縁が立ち上げられたコーナ部を形成しており、
前記上層ウレタン部材層(12)は、
横アーチ用凸部(12SA)と、内側縦アーチ用凸部(12SB)と、外側縦アーチ用凸部(12SC)とが形成されて、前記コルク部材層(11)の表面全面に渡って圧着されており、
前記ウレタンスポンジシートは、
前記コルク部材層(11)の前記コーナ部の裏面を含んで裏面全面に前記表皮と同程度の薄さで圧着されており、
さらに、
前記上層ウレタン部材層(12)は、
前足部対応領域の厚みが、前記コルク部材層(11)の厚み以下であり、
後足部対応領域に含まれる踵部対応領域の厚みは、前足部対応領域の厚み程度の薄さにされており、
足の第5中足骨に対応する領域は、前記踵部対応領域の上層ウレタン部材層(12)の厚み程度の薄さにされている、ことを特徴とする。
【0011】
さらに、
前記コルク部材層(11)は、
内側縁は、母趾球付近に対応する箇所から次第に立ち上がり、前記横アーチ用凸部(12SA)の中央付近に対向する箇所で最大高さとなって、踵側に向かって略フラットになっており、
さらに、外側縁は小趾球付近に対応する箇所から次第に立ち上がって前記後足部対応領域の先端付近で前記最大高さとなって踵側に向かって略フラットになっている、ことを特徴とする。
【0012】
また、前記コルク部材層(11)、上層ウレタン部材層(12)、表皮、ウレタンスポンジシートは二股の地下足袋型形状であることを特徴とする。
【0013】
前記前足部対応領域における前記コルク部材層(11)と前記上層ウレタン部材層(12)と前記ウレタンスポンジシートと表皮とを圧着した厚みは、5.5mm程度であり、
前記コーナ部に含まれる踵コーナの高さは15mm程度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、圧縮によってコルク部材の足裏の中足部から後足部に対応する領域の周縁を部分的に立ち上げて形成し、さらに、そのコルク部材の上にクッション部材を配置するようにしたので、軽量でありながら、断熱効果の向上と、靴内での足の位置が滑りにより変化するのを抑制することが容易に可能となり、過酷な作業現場においても、足への負担を軽減できると共に、長時間の連続した作業をしても足が疲労しにくい断熱用インソールを提供できる。
【0015】
特に、足底(足裏)への高温の熱(高温熱)の伝わりを断熱することに限らず、例えば、足裏への冷えの伝わりをも断熱(断冷ともいう)できるようにすることは、過酷な作業現場での作業性を格段に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る断熱用インソールを舗装工事靴用とした場合を例に示す概略構成図である。
【
図2】断熱用インソールと舗装工事用安全靴と足骨格との関係を説明するための概略斜視図である。
【
図3】断熱用インソールと舗装工事用安全靴と足骨格との関係を説明するための概略側面図である。
【
図6】断熱用インソールと足骨格との関係を説明するための概略底面図である。
【
図7】断熱用インソールの一例を示す概略平面図である。
【
図8】
図7に示す断熱用インソールの長さ方向の概略断面図である。
【
図9】
図7に示す断熱用インソールの幅方向の概略断面図である。
【
図10】断熱用インソールの一例を示す概略底面図である。
【
図11】断熱用インソールの一例を示す概略(内)側面図である。
【
図12】断熱用インソールの一例を示す概略(外)側面図である。
【
図13】断熱用インソールの温度特性を説明するためにシミュレーションした結果を示す概略図である。
【
図14】断熱用インソールの温度特性を説明するためにしたシミュレーションの結果を示す概略図である。
【
図15】本発明の他の実施形態に係る断熱用インソールを例示する概略構成図である。
【
図16】本発明の、さらに別の実施形態に係る断熱用インソールを例示する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係る断熱用インソールが適用された舗装工事靴用インソールの構成例を示すものである。なお、
図1(a)は、舗装工事靴用インソールの表面(上面)側の概略斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)のb-b線に沿う概略断面図である。また、舗装工事靴用インソールは、後述する舗装工事用安全靴などの作業靴中に挿入された状態で使用されるものであって、通常は左足用及び右足用の一対で用いられるが、左右の構造はほぼ同一(左右対称)なので、ここでは右足(RF)のための舗装工事靴用インソール10Rを例示して説明する。
【0019】
舗装工事靴用インソール10Rは、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、足底とも称する足裏の平面とほぼ同一形状の、コルク材層11(圧縮コルク材ともいう)と、このコルク材層11の上面(表面部)側に熱圧着された、例えばウレタン層12(圧縮ウレタン材ともいう)とを備えて構成されている。
【0020】
コルク材層11としては、例えば、粉砕されたコルクガシの樹皮を接着剤と共に薄板状に圧縮成型した圧縮コルク材(圧搾コルク)が用いられる。
【0021】
また、舗装工事靴用インソール10Rは、その裏面部10B側において、コルク材層11の下面の、後述する足裏の前足部から後足部に対応する領域が全面的にフラットな平面形状(平板状)とされている。そして、この舗装工事靴用インソール10Rは、少なくとも足裏の中足部及び後足部に対応する領域(後述する)の、その周縁部分に、壁状の周縁立上部11Wが設けられている。周縁立上部11Wは、コルク材層11とウレタン層12とによって、例えば裏面部10B側の底面からの高さが最大で15mm程度とされている。
【0022】
一方、舗装工事靴用インソール10Rは、その表面部10S側において、ウレタン層12の上面の、足裏の前足部に対応する領域がフラットな平面形状とされている。また、舗装工事靴用インソール10Rの表面部10S側には、足裏の3アーチを保持するための凹凸形状(凸形状部12S)が設けられると共に、後足部に対応する領域に、足裏の踵部分をホールドするためのヒールカップ部10C(凹形状部)が設けられている(詳細については後述する)。
【0023】
凸形状部12Sは、足裏の3アーチのうち、後述する横アーチにほぼ対応する横アーチ用凸部12SAと、後述する内側縦アーチにほぼ対応する内側縦アーチ用凸部12SBと、後述する外側縦アーチにほぼ対応する外側縦アーチ用凸部12SCと、を含んでいる。なお、横アーチ用凸部12SAは、舗装工事靴用インソール10Rの裏面部10B側の底面からの高さが最大で10mm程度の所定の形状とされている。
【0024】
即ち、本実施形態の舗装工事靴用インソール10Rは、コルク材層11によって耐熱性のコルク部材(芯材)が構成されると共に、ウレタン層12によってクッション部材(軟質の合成樹脂層)が構成されている。
【0025】
そして、この舗装工事靴用インソール10Rは、さらに、コルク材層11の下面(底面)側に全面的に補強用シートとしての不織布13が熱圧着されている。不織布13は、保温性を有すると共に、コルク材層11の形状を保持するために設けられたものであって、特に、周縁立上部11Wの縁部分が欠損したりするのを防止する。不織布13には、素材として、例えばコットンや麻、ウールなどの天然素材、合成繊維、再生繊維、パルプ、ポリエステルなどが用いられる。また、不織布13に代えて、ウレタンスポンジシートを採用しても良い。
【0026】
これに対し、ウレタン層12上には、その全面に、速乾性を有する表層部材14が熱圧着されている。表層部材14としては、靴下などとの静摩擦力が大きくて滑り難いストッパー材(例えば、メッシュシート)が用いられる。消臭効果や抗菌効果を有する部材を、表層部材14として採用することも可能である。
【0027】
本実施形態に係る舗装工事靴用インソール10Rによれば、コルク材層11とウレタン層12との積層構造により、軽量化できると共に、コルク材層11によって、舗装工事靴用インソール10Rとしての高い断熱効果(断熱性)を確保できる。
【0028】
また、凸形状部12Sにより足裏の3アーチを十分にサポートできるようになると共に、ヒールカップ部10Cや周縁立上部11Wによる靴内での足の位置の滑りによる変化を適度に抑制できるようになる結果、足への負担や疲労を効果的に軽減することが可能となっている。
【0029】
従って、足裏への熱の伝わりが懸念されるような過酷な現場での作業性を向上でき、長時間の連続した作業を容易に可能にする。
【0030】
しかも、コルク材層11を不織布13によって保護するようにしたので、周縁立上部11Wが変形したり、コルク材層11が欠損したりするのを防ぐことが可能となる。
【0031】
また、本実施形態の舗装工事靴用インソール10Rにおいては、
図1(a)中に拡大して示す要部11Wexのように、周縁立上部11Wをもコルク材層11とウレタン層12との積層構造としたことにより、足裏への熱のまわり込をも効果的に抑制することが可能となっている。
【0032】
なお、以下の記載においては、ヒールカップ部10Cに対して、足の内側(親指側)に対応する領域の周縁立上部11Wを内側周縁立上部11WIとも称し、足の外側(小指側)に対応する領域の周縁立上部11Wを外側周縁立上部11WOとも称する(例えば、
図6参照)。
【0033】
ここで、舗装工事靴用インソール10Rと舗装工事用安全靴ASと足骨格FBとの関係について説明する。
【0034】
図2は、舗装工事用安全靴ASを履いた状態を、右足RF用を例に示す概略斜視図であり、
図3は、その概略側面図である。なお、
図2及び
図3においては、舗装工事靴用インソール10Rと右足RFの足骨格FBとを、舗装工事用安全靴ASを透過した状態で示している。また、
図4、
図5はいずれも足骨格FBについて示すもので、
図4は右足RFを例に足裏FTの3アーチを示す概略斜視図、
図5は右足RFの足骨格FBを示す概略側面図である。
図6は、舗装工事靴用インソール10Rと足骨格FBの足裏FTとの関係を説明するための概略底面図である。
【0035】
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る舗装工事靴用インソール10Rは、例えばレザー製のアッパー20を備えた舗装工事用安全靴AS内に挿入され、表面部10S側に対向する裏面部10B側が舗装工事用安全靴ASの中底22に沿うようにして装着される。舗装工事靴用インソール10Rは、市販の舗装工事用安全靴ASに対して着脱可能な状態で使用される。舗装工事用安全靴ASは、アスファルトなどが舗設された舗設面に余計な靴跡を残さないようにするために、例えば、舗設面と接触する本底(アウトソール)の靴底21が平坦なゴム底によって形成されている。ゴム底は、適度な耐熱効果を有する。
【0036】
そして、この舗装工事用安全靴ASを工事関係者である作業者が履くことによって、作業者の足裏FTが、図示していない靴下を介して、舗装工事靴用インソール10Rの表面部10Sに当接される。これにより、舗装工事靴用インソール10Rが断熱用インソールとして機能し、靴底21の耐熱効果と相まって、より一層の断熱性能を確保可能となる(詳細については後述する)。
【0037】
次に、足骨格FBの各部の名称について説明する。
【0038】
足骨格FBは、
図4、
図5に示すように、前足部120と、中足部122と、後足部123とから構成されている。なお、本実施形態では解剖学的な名称を用いないで、義肢装具などの製造業界で使われている名称を用いて説明する。また、ここでは、足首から先(つま先側)の部分を「足」と称し、右足RFを例示している。
【0039】
前足部120は、
図4、
図5に示すように、第1末節骨127と第2末節骨128と第3末節骨129と第4末節骨130と第5末節骨131、並びに、中節骨135、136、137、138と、第1基節骨141と第2基節骨142と第3基節骨143と第4基節骨144と第5基節骨145とからなる範囲をいう。
【0040】
中足部122は、
図4、
図5に示すように、第1中足骨151と第2中足骨152と第3中足骨153と第4中足骨154と第5中足骨155と第1楔状骨161と第2楔状骨162と第3楔状骨163と立方骨171と舟状骨173とからなる範囲をいう。
【0041】
なお、前述の前足部120と中足部122との接続部分を踏付部126と称する。この踏付部126は、
図4、
図5に示すように、第1基節骨141、第2基節骨142、第3基節骨143、第4基節骨144、第5基節骨145の各々の骨底付近と、第1中足骨151、第2中足骨152、第3中足骨153、第4中足骨154、第5中足骨155の各々の骨頭付近とからなる範囲である。
【0042】
即ち、前足部120は、足の先端から踏付部126の中央付近までの範囲である。よって、この踏付部126の中央付近を、前足部120から視て、前足部後端とも称する。また、中足部122は、踏付部126の中央付近から後足部123の先端までの範囲である。よって、踏付部126の中央付近を、中足部122から視て、中足部先端とも称する。
【0043】
後足部123は、
図4、
図5に示すように、距骨175と踵骨177とからなる範囲である。
【0044】
そして、足というのは、
図4に示すように、足骨格FBの横アーチ181と内側縦アーチ183と外側縦アーチ186とからなるアーチ構造(足裏FTの3アーチ188)をしっかりと保つことが重要である。
【0045】
横アーチ181は、第1中足骨151、第2中足骨152、第3中足骨153、第4中足骨154、第5中足骨155を結ぶ盛り上がりライン(横アーチラインとも称する)である。
【0046】
内側縦アーチ183は、第1中足骨151、第1楔状骨161、舟状骨173、距骨175、踵骨177を結ぶ盛り上がりライン(内側縦アーチラインIAとも称する)である。
【0047】
外側縦アーチ186は、第5中足骨155、立方骨171、踵骨177を結ぶ盛り上がりライン(外側縦アーチラインOAとも称する)である。
【0048】
なお、
図6に示すように、足裏FTにおいて、踏付部126に対応する踏付部対応領域226の、足の親指の付け根あたり(第1中足骨151の骨頭付近)を「母趾球MB」と称し、これに対して、足の小指の付け根あたり(第5中足骨155の骨頭付近)を「小趾球LB」と称する。また、内側とは足の親指側を指し、外側とは足の小指側を指す。
【0049】
本実施形態の舗装工事靴用インソール10Rは、例えば足囲(足幅周り)の測定に利用される、母趾球MB及び小趾球LBのほぼ中心を結んだc-c線の延長線付近に、周縁立上部11Wにおける内側周縁立上部11WIの内側周縁立上位置11WISと、外側周縁立上部11WOの外側周縁立上位置11WOSとが対応するように設計されている。
【0050】
図6において、舗装工事靴用インソール10Rは、舗装工事用安全靴ASの装着に伴って作業者の足裏FTと接触する。これにより、作業中は、前足部120に対応する領域220(前足部対応領域)と、中足部122に対応する領域222(中足部対応領域)と、後足部123に対応する領域223(後足部対応領域)とによって、足裏FTが全体的に保持される。
【0051】
特に、足裏FTの3アーチ188における横アーチ181が、主に横アーチ181を整える凸形状部12Sの横アーチ用凸部12SAによって、内側縦アーチ183が、主に内側縦アーチ183を整える凸形状部12Sの内側縦アーチ用凸部12SBによって、外側縦アーチ186が、主に外側縦アーチ186を整える凸形状部12Sの外側縦アーチ用凸部12SCによって、それぞれ保持される。これにより、足裏FTの形状を、舗装工事靴用インソール10Rによって十分にサポートできるようになる。従って、長時間の作業によっても、作業者の足への負担や疲れを抑え、足裏FTの3アーチ188を常に良好な状態に保つことが可能となる。
【0052】
そして、足の踵部分が、舗装工事靴用インソール10Rのヒールカップ部10Cによって保持される。また、主に右足RFの内側の部分が周縁立上部11Wの内側周縁立上部11WIによって、主に右足RFの外側の部分が周縁立上部11Wの外側周縁立上部11WOによって、それぞれ保持される。これにより、舗装工事用安全靴AS内において、作業者の足が横方向又は縦方向に滑るといった位置ずれなどの位置の変化を抑制することが可能となる。従って、長時間の作業によっても、作業者の足への負担や疲れを抑えることが可能となる。
【0053】
しかも、この舗装工事靴用インソール10Rによれば、靴底21がゴム底からなる舗装工事用安全靴ASだけの場合よりも、作業中の作業者の足裏FTを高温熱から効果的に保護できるようになる。従って、道路などの舗装工事における作業効率を改善することが可能となり、作業性の向上が図れる。
【0054】
次に、本実施形態に係る舗装工事靴用インソール10Rについて、
図7~
図12を参照して、さらに説明する。
【0055】
即ち、
図7は、右足RF用の舗装工事靴用インソール10Rを例に示す概略平面(上面)図であり、
図8は、
図7に示すr-r線に沿う、舗装工事靴用インソール10Rの長さ方向の概略断面図である。
図9は、舗装工事靴用インソール10Rの幅方向の概略断面図であって、
図9(a)には
図7のs-s線に沿う断面を、
図9(b)には
図7のt-t線に沿う断面を、
図9(c)には
図7のu-u線に沿う断面を、それぞれ示している。
【0056】
なお、
図7~
図12において、Ifは舗装工事靴用インソール10Rの前方(つま先)側を、Ibはその後方(踵)側を、Iiは舗装工事靴用インソール10Rの内側を、Ioはその外側を、Isは舗装工事靴用インソール10Rの表面部(10S)側を、Iuはその裏面部(10B)側を、それぞれ示す。
【0057】
また、
図10は、右足RF用の舗装工事靴用インソール10Rを例に示す概略底面(下面)図であり、
図11は、内側の概略側面図であり、
図12は、外側の概略側面図である。
【0058】
但し、
図7及び
図8においては、
図6に示した、右足RFの前足部120に対応する領域を前足部対応領域220とし、右足RFの中足部122に対応する領域を中足部対応領域222とし、右足RFの後足部123に対応する領域を後足部対応領域223として説明する。また、
図6に示した、中足部対応領域222及び後足部対応領域223の、右足RFの内側の周縁立上部11Wを内側周縁立上部11WIとし、中足部対応領域222及び後足部対応領域223の、右足RFの外側の周縁立上部11Wを外側周縁立上部11WOとして説明する。
【0059】
なお、図中の「11WIS」は、内側周縁立上部11WIの立上開始の位置を示す内側周縁立上位置であり、「11WOS」は、外側周縁立上部11WOの立上開始の位置を示す外側周縁立上位置である。また、
図7において、「CA」は中央縦アーチライン、「IA」は内側縦アーチライン、「OA」は外側縦アーチラインである。図中の「Sa」は、例えば、横アーチライン(図示省略)上における、横アーチ用凸部12SAの頂部の位置を、また、図中の「Sb」は、舗装工事靴用インソール10Rの表面部10Sにおける、特に低硬度な領域を、それぞれ示している。
【0060】
図7~
図12に示すように、本実施形態に係る舗装工事靴用インソール10Rは、例えば道路の舗装工事用安全靴ASの中敷きとして用いた場合に特に好適である。
【0061】
即ち、本実施形態の舗装工事靴用インソール10Rは、
図7~
図9に示すように、芯材としてのコルク材層11を用い、中足部対応領域222及び後足部対応領域223の周縁部分を表面部10S側に立ち上げてなる周縁立上部11Wを備える。また、舗装工事靴用インソール10Rは、表面部10S側にクッション性のウレタン層12を備え、足にかかる負担を軽減できると共に、余剰な疲労を解消することが可能な凸形状部12Sを有する。
【0062】
凸形状部12Sの横アーチ用凸部12SAは、
図4に示した、足裏FTの横アーチ181を整えるためのもので、主に、足裏FTの踏付部126に対応する踏付部対応領域226の後部分にフィットする、頂部Saの高さが10mm程度の所定の形状とされている。
【0063】
凸形状部12Sの内側縦アーチ用凸部12SBは、
図4に示した、足裏FTの内側縦アーチ183を整えるためのもので、主に、足裏FTの内側の部分(土踏まず部分)にフィットする、所定の形状とされている。
【0064】
凸形状部12Sの外側縦アーチ用凸部12SCは、
図4に示した、足裏FTの外側縦アーチ186を整えるためのもので、主に、足裏FTの外側又はアーチの部分にフィットする、所定の形状とされている。
【0065】
これら凸形状部12Sの、横アーチ用凸部12SA、内側縦アーチ用凸部12SB、及び、外側縦アーチ用凸部12SCは、
図8及び
図9に示すように、互いに滑らかな曲面(凹部)でつながっている。
【0066】
なお、本実施形態の舗装工事靴用インソール10Rにおいては、滑らかな曲面である、少なくとも横アーチ用凸部12SAと内側縦アーチ用凸部12SBとの間の領域(Sb)の硬度が、横アーチ用凸部12SA及び内側縦アーチ用凸部12SBの硬度よりも低く、例えば、C硬度計による計測値が21~24度程度とされている。
【0067】
即ち、舗装工事靴用インソール10Rの表面部10Sには、横アーチ用凸部12SAと内側縦アーチ用凸部12SBとの間に、他の領域よりも低硬度な領域Sbが配置されている。このように、内側縦アーチラインIAにほぼ対応する部分に低硬度な領域Sbを配置することで、衝撃吸収時の緩衝の効果を向上できる。
【0068】
周縁立上部11Wは、中足部122及び後足部123にほぼ対応する、右足RFの内側を主に保持する内側周縁立上部11WIと、右足RFの外側を主に保持する外側周縁立上部11WOとを有する。内側周縁立上部11WI及び外側周縁立上部11WOは、共に、最高位置(全高)が15mm程度の所定の形状とされている。
【0069】
コルク材層11は、
図8に示したように、前足部対応領域220の表面、及び、前足部対応領域220、中足部対応領域222、後足部対応領域223の全裏面が平面とされる共に、その裏面の全体に不織布13が圧着されている。これにより、保温性が高められると共に、コルク材層11が欠損し、使用時に周縁立上部11Wがぼろぼろになったり、周縁立上部11Wそのものが変形したりするのを保護(補強)できる。
【0070】
このような構成の舗装工事靴用インソール10Rは、
図2及び
図3に示したように、概ね、舗装工事用安全靴ASの中底22に応じたサイズと形状とを有する。例えば、舗装工事靴用インソール10Rとしては、
図10~
図12に示すように、足長に応じた全長(縦寸La)が約270.0mmの場合、この全長に対して、足幅に応じた全幅(横寸Wa)が約93.0mm、厚さ(Ha)が最低で約5.5mm、全高(Hb)が約15.0mmとされている。
【0071】
内側周縁立上部11WIは、例えば
図11に示すように、母趾球MBの近傍の内側周縁立上位置11WIS付近を起点として徐々に立ち上がり、後足部対応領域223において、外側周縁立上部11WOと同程度の高さとなるように形成されている。
【0072】
外側周縁立上部11WOは、例えば
図12に示すように、小趾球LBの近傍の外側周縁立上位置11WOS付近を起点として徐々に立ち上がり、後足部対応領域223において、内側周縁立上部11WIと同程度の高さとなるように形成されている。
【0073】
図11及び
図12に示したように、内側周縁立上部11WI及び外側周縁立上部11WOは徐々に立ち上がり、全体的になだらかな形状を有する場合に限らず、内側周縁立上位置11WISの付近又は外側周縁立上位置11WOSの付近を起点にして急峻に立ち上がるような形状としても良い(例えば、
図3参照)。
【0074】
図13は、本実施形態に係る舗装工事靴用インソール10Rの高温熱に対する温度特性を説明するためにしたシミュレーションの結果を比較例と対比して示すもので、
図13(a)は、加熱時間別表面温度の変化を表化して示すものであり、
図13(b)は、該加熱時間別表面温度の変化をグラフ化して示すものである。
【0075】
このシミュレーションにおいては、付属のインソールを装着するようにした専用の安全靴(図示省略)を採用し、これに付属のインソールを装着した場合を比較例(例えば、ミドリ安全社製VR235)とし、本実施形態に係る舗装工事靴用インソール10Rの試作品を装着した場合と比較した。試作品としては、例えば、補強用の不織布、3mm厚の断熱性コルクシート(CORK3mm)、クッション材(VF150)、サラッキー(商品名、CS0902C#101)を、下から順に積層して圧着したものを用いた。
【0076】
シミュレーションは、表面温度が150℃の金属板上に靴底が接触するように安全靴を置き、表面温度計(例えば、安立計器社製ID-1100E)を用いて、インソールの踏付部対応領域付近の表面温度を加熱の開始から20分が経過するまで5分間隔で測定した。また、参考例として、インソールの装着なしの場合(
図13中に×で示す)も測定した。表面温度の単位は、℃である。
【0077】
シミュレーションの結果、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、比較例(図中に△で示す)に対し、本実施形態に係る舗装工事靴用インソール10Rの試作品(図中に●で示す)の方が、平均で6℃~7℃も高い断熱効果が認められた。
【0078】
また、上述のシミュレーションで用いた試作品とは異なる試作品(例えば、補強用の不織布、3mm厚の断熱性コルクシート(CORK3mm)、クッション材(VF100)、サラッキー(商品名、CS0902C#101))を、付属のインソール(鹿の子生地+EVAカップインソール)を取り外した安全靴(例えば、ミドリ安全社製ISA-805)に装着した場合を対象に、フィット感、グリップ性、クッション性、及び、疲れ難さについての実験を行った。その結果、付属のインソールの場合よりも、総じて、本試作品を装着した場合の方が、フィット感やグリップ性及びクッション性に優れ、長時間の使用でも疲れ難いといった高評価が得られた。
【0079】
そして、この実験においては、コルクシートの破断や欠落などの欠損も生じず、十分な耐久性も確認できた。
【0080】
上記したように、本実施形態の舗装工事靴用インソールによれば、芯材に圧縮コルク材を用いた圧縮ウレタン材との積層構造としたことによって、高い断熱効果と共に、軽量化やクッション性のさらなる向上が図られる。
【0081】
即ち、安全靴内に装着された状態で使用される着脱式の舗装工事靴用インソールの芯材としてコルク材層を用い、そのコルク材層の中足部及び後足部に対応する領域の周縁が表面側に立ち上げられてなる周縁立上部を備えると共に、このコルク材層の上面にクッション部材としてのウレタン層を設けるようにしている。これにより、足裏に対する十分なクッション性を確保できると共に、アスファルトなどの舗設面からの、作業者の足裏への熱の伝わりを十分に抑制することが可能となる。従って、舗設から20分程度経過した後の温度が大よそ100~120℃にもなるアスファルトの高温熱より、作業中の作業者の足裏を効果的に保護できる。
【0082】
また、周縁立上部によって足の中足部及び後足部をしっかりと固定させることができるので、軽量でありながら、靴中での足の位置ずれや滑りを抑制することが可能となる。しかも、ウレタン層が凹凸形状を有しているので、適度なクッション性と共に、足裏の3アーチを効果的にサポートすることが可能となり、足への負担や疲労を軽減できる。
【0083】
その結果、より長い時間にわたって連続して作業することを可能にするなど、道路などの舗装工事における作業効率を改善することができ、現場での作業性を格段に向上できる。
【0084】
また、コルク材層の下面に不織布を形成するようにしたことによって、コルク材層を補強することができるので、周縁立上部の形状を維持し易く、特に、使用中に周縁立上部の縁部分が欠けてぼろぼろになったり、亀裂が入るといった欠損からコルク材層を容易に保護することが可能となる。
【0085】
また、速乾性を有する表層部材を設けた場合には、サラッとした履き心地と共に、快適なフィット感や適度なグリップ性を常に確保できる。
【0086】
なお、上記した実施形態においては、舗装工事靴用インソールを例示して説明したが、舗装工事靴に限らず、例えばゴム長とも称する靴底が平坦にされたゴム製の長靴(作業靴)にも適用できる。
【0087】
特に、本実施形態の断熱用インソールは、夏場において高温になりがちな砂浜やプールサイドのコンクリート面、屋根の上での作業時などに使用される各種の作業靴への適用も可能である。
【0088】
また、本実施形態の断熱用インソールは、溶けたガラスや鋳物などが床面に散乱すると危険な工房や工場など、足下からの高温熱の伝わりが問題となる過酷な現場での使用に好適である。
【0089】
また、本実施形態の断熱用インソールは、足下からの高温熱の伝わりが問題となる場合に限らず、雪上や氷上などのような足下からの冷えの伝わりが問題となる、例えば、雪かきや雪おろしなどの除雪作業、冬山登山、凍結湖でのワカサギ釣や氷上競技といったスポーツシーン、又は、氷の切り出しや冷凍庫内での作業のための作業靴にも適用できる。
【0090】
図14は、本実施形態に係る断熱用インソールの冷えに対する温度特性を説明するためにしたシミュレーションの結果を示すもので、
図14(a)は、冷却時間別表面温度の変化を表化して示すものであり、
図14(b)は、該冷却時間別表面温度の変化をグラフ化して示すものである。
【0091】
図14(a)及び
図14(b)では、
図13に示したシミュレーションの際に用いたインソールの試作品を、市販の長靴(図示省略)内に入れたインソールありの場合(図中に●で示す)と、長靴のみのインソールなしの場合(図中に×で示す)とを、対比して示している。表面温度の単位は、℃である。
【0092】
図14(a)及び
図14(b)は、例えば、図示していない保冷用冷却体(表面温度が約-13.1℃)上に、靴底が接触するようにして長靴を置き、表面温度計(例えば、安立計器社製ID-1100E)を用いて、インソールの踏付部対応領域付近の表面温度を冷却の開始から60分が経過するまで5分間隔で測定した結果である。
【0093】
インソールありの場合の方が、長靴だけ(インソールなし)の場合よりも、冷えの伝わりに対して高い断冷(保温)効果が認められた。
【0094】
また、他の実施形態に係る舗装工事靴用インソール10Rとしては、例えば
図15中に拡大して示す要部11Wexのように、周縁立上部11Wの、少なくとも足と強く接触する部分をウレタン層12のみの単層構造とすることも可能である。
【0095】
さらに、別の実施形態に係る舗装工事靴用インソール10Rとしては、例えば
図16に示すように、親指とその他の指とが切れ込み部19によって二股に分けられた地下足袋(作業靴)用インソールとすることも可能である。
【符号の説明】
【0096】
10R 舗装工事靴用インソール
11 コルク材層
11W 周縁立上部
11WI 内側周縁立上部
11WIS 内側周縁立上位置
11WO 外側周縁立上部
11WOS 外側周縁立上位置
12 ウレタン層
12S 凸形状部
13 不織布
14 表層部材
120 前足部
122 中足部
123 後足部
188 足裏の3アーチ
220 前足部対応領域
222 中足部対応領域
223 後足部対応領域
226 踏付部対応領域
AS 舗装工事用安全靴
FB 足骨格
FT 足裏