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特許7152748距離計及び距離測定方法並びに光学的三次元形状測定機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】距離計及び距離測定方法並びに光学的三次元形状測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02 20220101AFI20221005BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20221005BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20221005BHJP
   G01S 17/32 20200101ALI20221005BHJP
【FI】
G01B9/02
G01B11/24 D
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G01S17/32
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018132936
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020012641
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503249810
【氏名又は名称】株式会社XTIA
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】興梠 元伸
(72)【発明者】
【氏名】今井 一宏
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-072136(JP,A)
【文献】特許第5231883(JP,B2)
【文献】特開2014-102258(JP,A)
【文献】特開2014-196999(JP,A)
【文献】特開2016-020872(JP,A)
【文献】特開2001-343234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/02
G01B 11/24
G01C 3/06
G01S 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある測定光と基準光と出射する第1及び第2の光源と、
上記第1の光源から出射された測定光を第1の測定光と第2の測定光に分離する第1の分離光学系と、
上記第2の光源から出射された基準光を第1の基準光と第2の基準光に分離する第2の分離光学系と、
上記第1の測定光と上記第1の基準光との干渉光を生成する第1の干渉光学系と、
上記第1の干渉光学系を介して得られる上記第1の基準光と上記第1の測定光との干渉光を検出する基準光検出器と、
上記第2の測定光を測定面に照射して、該測定面により反射された上記第2の測定光の反射光と、上記第2の基準光との干渉光を生成する第2の干渉光学系と、
上記第2の干渉光学系を介して得られる上記測定面により反射された上記第2の測定光の反射光と上記第2の基準光との干渉光を検出する測定光検出器と、
上記第1の干渉光学系に入射される上記第1の測定光が通過する光路長と上記第1の基準光が通過する光路長との光路長差ΔAと、上記測定面による反射光として上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の測定光が通過する光路長と、上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の基準光の光路長との光路長差ΔBとにより、上記第2の測定光が通過する光路上の任意の基準点位置からの距離Lを規定する基準光路と、
上記基準光検出器により検出された干渉信号と上記測定光検出器により検出された干渉信号の時間差から、上記基準点位置からの距離Lと該基準点位置から上記測定面による上記第2の測定光の反射光が上記第2の干渉光学系に入射されるまでの距離Lとの距離差(L-L)を上記測定面までの測定距離Dとして求める信号処理部と
を備える距離計。
【請求項2】
上記第1の分離光学系及び第1の干渉光学系として機能する第1の光分離・合波素子を備え、
上記基準光路は、上記光路長差ΔAに等しい光路長a21を有する第1の基準光路と、上記第1の分離光学系と上記第2の干渉光学系との間の光路長b12を有する第2の基準光路と、上記第2の分離光学系と上記第2の干渉光学系との間の光路長c22を有する第3の基準光路とからなることを特徴とする請求項1記載の距離計。
【請求項3】
上記基準光路は、光路長差(c22-a21+b12)を上記距離Lとすることにより、上記第1の光分離・合波素子の位置に上記基準点位置を規定することを特徴とする請求項2記載の距離計。
【請求項4】
上記基準光路は、光路長差(c22-a21-b12)を上記距離Lとすることにより、上記第2の干渉光学系の位置に上記基準点位置を規定することを特徴とする請求項2記載の距離計。
【請求項5】
上記基準光路は、上記基準点位置からの距離Lと該基準点位置から上記測定面による上記第2の測定光の反射光が上記第2の干渉光学系に入射されるまでの距離Lと略等しいことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の距離計。
【請求項6】
上記基準光路は、上記第3の基準光路の光路長c22を可変する光路長可変手段を備え、規定する基準点位置を可変自在としたことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の距離計。
【請求項7】
上記第1の光源から出射された測定光が入射される上記第1の分離光学系として機能する第1の光カプラと、
上記第2の光源から出射された基準光が入射される上記第2の分離光学系として機能する第2の光カプラと、
上記第1の光カプラにより分離された第1の測定光と上記第2の光カプラにより分離された第1の基準光が入射される上記第1の干渉光学系として機能する第3の光カプラと、
上記第2の基準光と上記測定面により反射された上記第2の測定光とが入射される上記第2の干渉光学系として機能する第4の光カプラと、
上記第1の光カプラにより分離された第2の測定光が入射され、該第2の測定光を透過してコリメータを介して上記測定面に照射し、該測定面により反射された第2の測定光の反射光が上記コリメータを介して入射され、該第2の測定光の反射光を透過して出射する第5の光カプラ又は光サーキュレータとを備え、
上記基準光路は、
上記第1の光カプラにより分離された第1の測定光を上記第3の光カプラに伝搬する光路長a11の第1の光ファイバケーブルと、
上記第2の光カプラにより分離された第1の基準光を上記第3の光カプラに伝搬する光路長a21の第2の光ファイバケーブルと、
上記第1の光カプラにより分離された第2の測定光を上記第5の光カプラに伝搬する光路長bの第3の光ファイバケーブルと、
上記第2の光カプラにより分離された第2の基準光を上記第4の光カプラに伝搬する光路長c22の第4の光ファイバケーブルと、
上記第5の光カプラを透過した上記測定面により反射された第2の測定光の反射光を上記第4の光カプラに伝搬する光路長b12’の第5の光ファイバケーブルとからなり、
上記第5の光カプラを透過した上記測定面により反射された第2の測定光の反射光を上記第4の光カプラに入射させる光路長b12’の第5の光ファイバケーブルとからなることを特徴とする請求項1記載の距離計。
【請求項8】
上記コリメータと上記測定面の間に1/4波長板又はファラデーローテータを備えることを特徴とする請求項7記載の距離計。
【請求項9】
上記基準光路は、
上記第3の光カプラに入射される上記第1の測定光が通過する光路長a11と上記第1の基準光が通過する光路長a21との光路長差ΔA
ΔA=a11-a21
と、
上記測定面による反射光として上記第4の光カプラに入射される上記第2の測定光が通過する光路長(b+b12’)と上記第4の光カプラに入射される上記第2の基準光の光路長c22との光路長差ΔB
ΔB=b+b12’-c22
との差分の光路長ΔA-ΔB
ΔA-ΔB=(a11-a21)-(b+b12’-c22
に基づき、基準点位置からの距離Lを、
=-b+(ΔA-ΔB)
とすることにより、上記第1の光カプラの位置に上記基準点位置を規定することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の距離計。
【請求項10】
上記基準光路は、
上記第3の光カプラに入射される上記第1の測定光が通過する光路長a11と上記第1の基準光が通過する光路長a21との光路長差ΔA
ΔA=a11-a21
と、
上記測定面による反射光として上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の測定光が通過する光路長(b+b12’)と上記第2の干渉光学系第4の光カプラに入射される上記第2の基準光の光路長c22との光路長差ΔB
ΔB=b+b12’-c22
との差分の光路長ΔA-ΔB
ΔA-ΔB=(a11-a21)-(b+b12’-c22
に基づき、基準点位置からの距離Lを、
=ΔA-ΔB
とすることにより、上記第5の光カプラの位置に上記基準点位置を規定することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の距離計。
【請求項11】
上記基準光路は、上記第2の干渉光学系の位置から測定面までの距離Lの2倍の距離2Lに略等しい上記光路長差(ΔA-ΔB)を有することにより、上記測定面の近傍位置に基準点位置を規定することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の距離計。
【請求項12】
それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある測定光と基準光とを発生し、
上記測定光を第1の測定光と第2の測定光に分離するとともに、上記基準光を第1の基準光と第2の基準光に分離し、
第1の干渉光学系により上記第1の測定光と上記第1の基準光との干渉光を生成するとともに、上記第2の測定光を測定面に照射して、該測定面により反射された上記第2の測定光の反射光と上記第2の基準光との干渉光を第2の干渉光学系により生成し、
上記第1の干渉光学系を介して得られる干渉光を基準光検出器により検出するとともに、上記第2の干渉光学系を介して得られる干渉光を測定光検出器により検出し、
基準光路における上記第1の干渉光学系に入射される上記第1の測定光が通過する光路長と上記第1の基準光が通過する光路長との光路長差ΔAと、上記測定面による反射光として上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の測定光通過する光路長と上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の基準光の光路長との光路長差ΔBとにより上記第2の測定光が通過する光路上の任意の基準点位置からの距離Lを規定し、
上記基準光検出器により検出された干渉信号と上記測定光検出器により検出された干渉信号の時間差から、上記測定面までの測定距離Dとして、上記基準点位置からの距離Lと該基準点位置から上記測定面により反射された第2の測定光の反射光が上記第2の干渉光学系に入射されるまでの距離Lとの距離差(L-L)を求める
ことを特徴とする距離測定方法。
【請求項13】
それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある測定光と基準光と出射する第1及び第2の光源と、上記第1の光源から出射された測定光を第1の測定光と第2の測定光に分離する第1の分離光学系と、上記第2の光源から出射された基準光を第1の基準光と第2の基準光に分離する第2の分離光学系と、上記第1の測定光と上記第1の基準光との干渉光を生成する第1の干渉光学系と、上記第1の干渉光学系を介して得られる上記第1の基準光と上記第1の測定光との干渉光を検出する基準光検出器と、上記第2の測定光を測定面に照射して、該測定面により反射された上記第2の測定光の反射光と、上記第2の基準光との干渉光を生成する第2の干渉光学系と、上記第2の干渉光学系を介して得られる上記測定面により反射された上記第2の測定光の反射光と上記第2の基準光との干渉光を検出する測定光検出器と、上記第1の干渉光学系に入射される上記第1の測定光が通過する光路長と上記第1の基準光が通過する光路長との光路長差ΔAと、上記測定面による反射光として上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の測定光が通過する光路長と、上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の基準光の光路長との光路長差ΔBとにより上記第2の測定光が通過する光路上の任意の基準点位置からの距離Lを規定する基準光路と、上記基準光検出器により検出された干渉信号と上記測定光検出器により検出された干渉信号の時間差から、上記測定面までの測定距離Dとして、上記基準点位置からの距離Lと該基準点位置から上記測定面による上記第2の測定光の反射光が第2の干渉光学系に入射されるまでの距離Lとの距離差(L-L)を求める信号処理部とを備える距離計と、
上記距離計から出射される測定光で対象物体を走査し、上記対象物体により反射された上記測定光を上記距離計に戻す光学スキャン装置と、
上記光学スキャン装置を制御してレーザービームを走査すると同時に上記距離計が計測する絶対距離情報を取得して、ビーム照射位置とその場所まで絶対距離を複数の点について蓄積することにより非接触で物体の三次元形状を測定する信号処理装置と
を備えることを特徴とする光学的三次元形状測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する距離計及び距離測定方法並びに光学的三次元形状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、精密なポイントの距離計測が可能なアクティブ式距離計測方法として、レーザ光を利用する光学原理による距離計測が知られている。レーザ光を用いて対象物体までの距離を測定するレーザ距離計ではレーザ光の発射時刻と、測定対象に当たり反射してきたレーザ光を受光素子にて検出した時刻との差に基づいて、測定対象物までの距離が算出される(たとえば特許文献1参照)。また、例えば、半導体レーザの駆動電流に三角波等の変調をかけ、対象物での反射光を半導体レーザ素子の中に埋め込まれたフォトダイオードを使用して受光し、フォトダイオード出力電流に現れた鋸歯状波の主波数から距離情報を得ている。
【0003】
ある点から測定点までの絶対距離を高精度で測定する装置としてレーザ距離計が知られている。たとえば、特許文献1には、測定光の干渉信号と基準光の干渉信号の時間差から距離を測定する距離計が記載されている。
【0004】
従来の絶対距離計では、長い距離を高精度で測れる実用的な絶対距離計を実現することが難しく、高い分解能を得るためにはレーザ変位計のように原点復帰が必要なため絶対距離測定に適さない方法しか手段がなかった。
【0005】
本件発明者等は、基準面に照射される基準光と測定面に照射される測定光との干渉光を基準光検出器により検出するとともに、上記基準面により反射された基準光と上記測定面により反射された測定光との干渉光を測定光検出器により検出して、上記基準光検出器と測定光検出器により得られる2つ干渉信号の時間差から、上記基準面までの距離と上記測定面までの距離の差を求めることにより、高精度で、しかも短時間に行うことの可能な距離計及び距離測定方法並びに光学的三次元形状測定機を先に提案している(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-343234号公報
【文献】特許第5231883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の手法では、基準面に照射される基準光と測定面に照射される測定光との干渉光を基準光検出器により検出するとともに、上記基準面により反射された基準光と上記測定面により反射された測定光との干渉光を測定光検出器により検出するために、基準光を反射する基準面を含む基準光の光路を設ける必要があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の実情に鑑み、測定面までの距離の基準点位置を、測定光が通過する基準光路の光学的光路長と基準光が通過する基準光路の光学的光路長により規定して、長距離測定を高精度で、しかも短時間に行うことの可能な距離計及び距離測定方法並びに光学的三次元形状測定機を提供することにある。
【0009】
ここで、明細書において、距離や光路長は、測定光や基準光が伝搬される光路の物理的な距離と媒質の屈折率との積にて表される光学的距離を意味する。
【0010】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、距離計であって、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある測定光と基準光と出射する第1及び第2の光源と、上記第1の光源から出射された測定光を第1の測定光と第2の測定光に分離する第1の分離光学系と、上記第2の光源から出射された基準光を第1の基準光と第2の基準光に分離する第2の分離光学系と、上記第1の測定光と上記第1の基準光との干渉光を生成する第1の干渉光学系と、上記第1の干渉光学系を介して得られる上記第1の基準光と上記第1の測定光との干渉光を検出する基準光検出器と、上記第2の測定光を測定面に照射して、該測定面により反射された上記第2の測定光の反射光と、上記第2の基準光との干渉光を生成する第2の干渉光学系と、上記第2の干渉光学系を介して得られる上記測定面により反射された上記第2の測定光の反射光と上記第2の基準光との干渉光を検出する測定光検出器と、上記第1の干渉光学系に入射される上記第1の測定光が通過する光路長と上記第1の基準光が通過する光路長との光路長差ΔAと、上記測定面による反射光として上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の測定光が通過する光路長と、上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の基準光の光路長との光路長差ΔBとにより、上記第2の測定光が通過する光路上の任意の基準点位置からの距離Lを規定する基準光路と、上記基準光検出器により検出された干渉信号と上記測定光検出器により検出された干渉信号の時間差から、上記基準点位置からの距離Lと該基準点位置から上記測定面による上記第2の測定光の反射光が上記第2の干渉光学系に入射されるまでの距離Lとの距離差(L-L)を上記測定面までの測定距離Dとして求める信号処理部とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る距離計は、例えば、上記第1の分離光学系及び第1の干渉光学系として機能する第1の光分離・合波素子を備え、上記基準光路は、上記光路長差ΔAに等しい光路長a21を有する第1の基準光路と、上記第1の分離光学系と上記第2の干渉光学系との間の光路長b12を有する第2の基準光路と、上記第2の分離光学系と上記第2の干渉光学系との間の光路長c22を有する第3の基準光路とからなるものとすることができる。
【0013】
本発明に係る距離計において、上記基準光路は、例えば、光路長差(c22-a21+b12)を上記距離Lとすることにより、上記第1の光分離・合波素子の位置に上記基準点位置を規定するものとするこができる。
【0014】
また、本発明に係る距離計において、上記基準光路は、例えば、光路長差(c22-a21-b12)を上記距離Lとすることにより、上記第2の干渉光学系の位置に上記基準点位置を規定するものとすることができる。
【0015】
また、本発明に係る距離計において、上記基準光路は、例えば、上記基準点位置からの距離Lと該基準点位置から上記測定面による上記第2の測定光の反射光が上記第2の干渉光学系に入射されるまでの距離Lと略等しいものとすることができる。
【0016】
また、本発明に係る距離計において、上記基準光路は、例えば、上記第3の基準光路の光路長c22を可変する光路長可変手段を備え、規定する基準点位置を可変自在としたものとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る距離計は、例えば、上記第1の光源から出射された測定光が入射される上記第1の分離光学系として機能する第1の光カプラと、上記第2の光源から出射された基準光が入射される上記第2の分離光学系として機能する第2の光カプラと、上記第1の光カプラにより分離された第1の測定光と上記第2の光カプラにより分離された第1の基準光が入射される上記第1の干渉光学系として機能する第3の光カプラと、上記第2の基準光と上記測定面により反射された上記第2の測定光とが入射される上記第2の干渉光学系として機能する第4の光カプラと、上記第1の光カプラにより分離された第2の測定光が入射され、該第2の測定光を透過してコリメータを介して上記測定面に照射し、該測定面により反射された第2の測定光の反射光が上記コリメータを介して入射され、該第2の測定光の反射光を透過して出射する第5の光カプラ又は光サーキュレータとを備え、上記基準光路は、上記第1の光カプラにより分離された第1の測定光を上記第3の光カプラに入射させる光路長a11の第1の光ファイバケーブルと、上記第2の光カプラにより分離された第1の基準光を上記第3の光カプラに入射させる光路長a21の第2の光ファイバケーブルと、上記第1の光カプラにより分離された第2の測定光を上記第5の光カプラに入射させる光路長bの第3の光ファイバケーブルと、上記第2の光カプラにより分離された第2の基準光を上記第4の光カプラに入射させる光路長c22の第4の光ファイバケーブルと、上記第5の光カプラを透過した上記測定面により反射された第2の測定光の反射光を上記第4の光カプラに入射させる光路長b12’の第5の光ファイバケーブルとからなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る距離計は、例えば、上記コリメータと上記測定面の間に1/4波長板又はファラデーローテータを備えるものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る距離計において、上記基準光路は、例えば、上記第3の光カプラに入射される上記第1の測定光が通過する光路長a11と上記第1の基準光が通過する光路長a21との光路長差ΔA
ΔA=a11-a21
と、上記測定面による反射光として上記第4の光カプラに入射される上記第2の測定光が通過する光路長(b+b12’)と上記第4の光カプラに入射される上記第2の基準光の光路長c22との光路長差ΔB
ΔB=b+b12’-c22
との差分の光路長ΔA-ΔB
ΔA-ΔB=(a11-a21)-(b+b12’-c22
に基づき、基準点位置からの距離Lを、
=-b+(ΔA-ΔB)
とすることにより、上記第1の光カプラの位置に上記基準点位置を規定するものとすることができる。
【0020】
また、本発明に係る距離計において、上記基準光路は、例えば、上記第3の光カプラ(第1の干渉光学系)に入射される上記第1の測定光が通過する光路長a11と上記第1の基準光が通過する光路長a21との光路長差ΔA
ΔA=a11-a21
と、上記測定面による反射光として上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の測定光が通過する光路長(b+b12’)と上記第2の干渉光学系第4の光カプラに入射される上記第2の基準光の光路長c22との光路長差ΔB
ΔB=b+b12’-c22
との差分の光路長ΔA-ΔB
ΔA-ΔB=(a11-a21)-(b+b12’-c22
に基づき、基準点位置からの距離Lを、
=ΔA-ΔB
とすることにより、上記第5の光カプラの位置に上記基準点位置を規定するものとすることができる。
【0021】
さらに、本発明に係る距離計において、上記基準光路は、例えば、上記第2の干渉光学系の位置から測定面までの距離Lの2倍の距離2Lに略等しい上記光路長差(ΔA-ΔB)を有することにより、上記測定面の近傍位置に上記基準点位置を規定するものとすることができる。
【0022】
本発明は、距離測定方法であって、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある測定光と基準光とを発生し、上記測定光を第1の測定光と第2の測定光に分離するとともに、上記基準光を第1の基準光と第2の基準光に分離し、第1の干渉光学系により上記第1の測定光と上記第1の基準光との干渉光を生成するとともに、上記第2の測定光を測定面に照射して、該測定面により反射された上記第2の測定光の反射光と上記第2の基準光との干渉光を第2の干渉光学系により生成し、上記第1の干渉光学系を介して得られる干渉光を基準光検出器により検出するとともに、上記第2の干渉光学系を介して得られる干渉光を測定光検出器により検出し、基準光路における上記第1の干渉光学系に入射される上記第1の測定光が通過する光路長と上記第1の基準光が通過する光路長との光路長差ΔAと、上記測定面による反射光として上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の測定光通過する光路長と上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の基準光の光路長との光路長差ΔBとにより上記第2の測定光が通過する光路上の任意の基準点位置からの距離Lを規定し、上記基準光検出器により検出された干渉信号と上記測定光検出器により検出された干渉信号の時間差から、上記測定面までの測定距離Dとして、上記基準点位置からの距離Lと該基準点位置から上記測定面により反射された第2の測定光の反射光が上記第2の干渉光学系に入射されるまでの距離Lとの距離差(L-L)を求めることを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明は、光学的三次元形状測定機であって、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある測定光と基準光と出射する第1及び第2の光源と、上記第1の光源から出射された測定光を第1の測定光と第2の測定光に分離する第1の分離光学系と、上記第2の光源から出射された基準光を第1の基準光と第2の基準光に分離する第2の分離光学系と、上記第1の測定光と上記第1の基準光との干渉光を生成する第1の干渉光学系と、上記第1の干渉光学系を介して得られる上記第1の基準光と上記第1の測定光との干渉光を検出する基準光検出器と、上記第2の測定光を測定面に照射して、該測定面により反射された上記第2の測定光の反射光と、上記第2の基準光との干渉光を生成する第2の干渉光学系と、上記第2の干渉光学系を介して得られる上記測定面により反射された上記第2の測定光の反射光と上記第2の基準光との干渉光を検出する測定光検出器と、上記第1の干渉光学系に入射される上記第1の測定光が通過する光路長と上記第1の基準光が通過する光路長との光路長差ΔAと、上記測定面による反射光として上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の測定光が通過する光路長と、上記第2の干渉光学系に入射される上記第2の基準光の光路長との光路長差ΔBとにより上記第2の測定光が通過する光路上の任意の基準点位置からの距離Lを規定する基準光路と、上記基準光検出器により検出された干渉信号と上記測定光検出器により検出された干渉信号の時間差から、上記測定面までの測定距離Dとして、上記基準点位置からの距離Lと該基準点位置から上記測定面による上記第2の測定光の反射光が第2の干渉光学系に入射されるまでの距離Lとの距離差(L-L)を求める信号処理部とを備える距離計と、上記距離計から出射される測定光で対象物体を走査し、上記対象物体により反射された上記測定光を上記距離計に戻す光学スキャン装置と、上記光学スキャン装置を制御してレーザービームを走査すると同時に上記距離計が計測する絶対距離情報を取得して、ビーム照射位置とその場所まで絶対距離を複数の点について蓄積することにより非接触で物体の三次元形状を測定する信号処理装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、測定面までの距離を測定するための基準点位置を、測定光が通過する基準光路の光学的光路長と基準光が通過する基準光路の光学的光路長により規定して、長距離測定を高精度で、しかも短時間に行うことの可能な距離計及び距離測定方法並びに光学的三次元形状測定機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明を適用したレーザ距離計の構成を示すブロック図である。
図2】上記レーザ距離計における基準光路を構成している各光路の光路長を示したブロック図である。
図3】測定距離に比例する基準光パルスと測定光パルスの時間の測定を、互いに変調周期の異なる干渉性のある2台のパルス光源の干渉によって行う場合の模式図である。
図4】光スペクトル及びビート信号スペクトルの模式図である。
図5】上記レーザ距離計における光源として使用される光周波数コム発生器の構造を模式的に示す断面図である。
図6】上記光周波数コム発生器の出力を模式的に示す図である。
図7】上記レーザ距離計において2台の光周波数コム発生器を用いた光源の構成を模式的に示すブロック図である。
図8】上記光源を構成している2台の光周波数コム発生器の出力を模式的に示す図である。
図9】上記レーザ距離計における測定距離が付近の干渉波形の例を示す図である。
図10】上記レーザ距離計の信号処理部の構成例を示すブロック図である。
図11】本発明に係るレーザ距離計の他の構成例を示すブロック図である。
図12】上記レーザ距離計における基準光路を構成している各光路の光路長を示したブロック図である。
図13】本発明に係るレーザ距離計の他の構成例を示すブロック図である。
図14】本発明に係るレーザ距離計の他の構成例を示すブロック図である。
図15】上記レーザ距離計における基準光路を構成している各光路の光路長を示したブロック図である。
図16】本発明に係るレーザ距離計の他の構成例を示すブロック図である。
図17】上記レーザ距離計における基準光路を構成している各光路の光路長を示したブロック図である。
図18】本発明に係るレーザ距離計の他の構成例を示すブロック図である。
図19】本発明に係るレーザ距離計を用いた光学的三次元形状測定機の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、共通の構成要素については、共通の指示符号を図中に付して説明する。また、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0027】
本発明に係るレーザ距離計は、例えば図1のブロック図に示すレーザ距離計10Aにように、測定光Sを出射する第1の光源1と、基準光Sを出射する第2の光源2と、第1の光源1から出射された測定光Sを第1の測定光S11と第2の測定光S12に分離する第1の分離光学系41と、第2の光源2から出射された基準光Sを第1の基準光S21と第2の基準光S22に分離する第2の分離光学系42と、第1の測定光S11と第1の基準光S21とを合波して干渉光Sを生成する第1の干渉光学系43と、上記干渉光Sが入射される基準光検出器3と、第2の測定光S12を測定対象の測定面5に照射して、該測定面5により反射された上記第2の測定光S12の反射光S12’と第2の基準光S22とを合波して干渉光Sを生成する第2の干渉光学系44と、上記第2の干渉光学系44を介して得られる上記測定面5により反射された上記第2の測定光S12の反射光S12’と上記第2の基準光S22との干渉光Sを検出する測定光検出器6とを備え、基準光検出器3により検出された干渉信号fb1と測定光検出器6により検出された干渉信号fb2が信号処理部7に供給されるようになっている。
【0028】
上記第1及び第2の光源1,2は、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある測定光Sと基準光Sを出射するものであって、それぞれ周期的に強度又は位相を変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある測定光Sと基準光Sを出射するための光変調器を備える2台の光源、光周波数コムモード間隔が異なる2台の光周波数コム発生器、或いは、光パルス繰り返し周波数が異なる2台のパルス光源からなる。
【0029】
このレーザ距離計10Aにおいて、第1の光源1から出射された測定光Sは、第1の分離光学系41により基準光検出器3に向かう第1の測定光S11と測定対象に向かう第2の測定光S12に分離される。また、第2の光源2から出射された基準光Sは、基準光検出器3に向かう第1の基準光S21と測定光検出器6に向かう第2の基準光S22に分離される。
【0030】
第1の分離光学系41により分離された第1の測定光S11が第1の分離光学系41が全反射鏡などの第1の全反射光学系41Aにより反射されて第1の干渉光学系43に入射されるとともに、第2の分離光学系42により分離された第1の基準光S21が第1の干渉光学系43に入射されることにより、第1の干渉光学系43において第1の測定光S11と第1の基準光S21とが合波され、第1の測定光S11と第1の基準光S21との干渉光Sが第1の干渉光学系43を介して基準光検出器3に入射されるようになっている。
【0031】
基準光検出器3は、第1の干渉光学系43を介して得られる第1の測定光S11と第1の基準光S21との干渉光Sを検出する。
【0032】
また、第1の分離光学系41により分離された第2の測定光S12が第3の分離光学系45を通過して測定対象の測定面5に照射され、測定面5による第2の測定光S12の反射光S12’が第3の分離光学系45に戻される。第2の測定光S12の反射光S12’は、第3の分離光学系45により反射され、さらに全反射鏡などの第3の全反射光学系45Aにより反射されて第2の干渉光学系44に入射される。そして、第2の分離光学系42により分離された第2の基準光S22が全反射鏡などの全反射光学系42Aにより反射されて第2の干渉光学系44に入射されることにより、第2の干渉光学系44において測定面5による第2の測定光S12の反射光S12’と第2の基準光S22とが合波され、第2の測定光S12の反射光S12’と第2の基準光S22との干渉光Sが第2の干渉光学系44を介して測定光検出器6に入射されるようになっている。
【0033】
測定光検出器6は、第2の干渉光学系44を介して得られる測定面5により反射された第2の測定光S12の反射光S12’と第2の基準光S22との干渉光Sを検出する。
【0034】
ここで、このレーザ距離計10Aにおける基準光路4Aを構成している各光路の光路長を図2のブロック図に示す。
【0035】
このレーザ距離計10Aにおいて、基準光検出器3により検出される干渉光Sに含まれる第1の測定光S11と第1の基準光S21とが第1,第2の分離光学系41、42により分離されて第1の干渉光学系43に入力されるまでに通過する光路の光路長差ΔAは、第1の分離光学系41から第1の全反射光学系41Aまでの光路長a11aと第1の全反射光学系41Aから第1の干渉光学系43までの光路長a11bの和で示される第1の測定光S11の光路長a11、すなわち、a11=a11a+a11bと、第2の分離光学系42により分離されて第1の干渉光学系43に入力されるまでの第1の基準光S21の光路長a21との差であり、
ΔA=a11-a21
=a11a+a11b-a21
となっている。
【0036】
すなわち、このレーザ距離計10Aにおいて、基準光検出器3は、基準光路4Aにおける光路長差ΔA=a11-a21に対応する時間差ΔT
ΔT=ΔA/c
をもって干渉光学系43に入力される第1の測定光S11と第1の基準光S21との干渉光Sを検出している。
【0037】
ここで、cは真空中の光速である。
【0038】
このレーザ距離計10Aにおいて、基準光検出器3の役割は、遅延時間計測の基準を生成することである。
【0039】
基準光検出器3によって干渉光Sから得られる干渉信号fb1は、キャリア周波数が第1及び第2の光源1、2から出射されて分離された第1の測定光S11と第1の基準光S21のキャリア光周波数の差であり、上記第1の測定光S11と第1の基準光S21の光パルス繰り返し周波数の差の周波数で同じ干渉波形が繰り返される。
【0040】
第1及び第2の光源1、2から出射された測定光Sと基準光Sは、繰り返し周波数が等しくないので、光源が動作を開始した時にタイミングがずれていても、少しずつタイミングがずれていき、必ずどこかで第1の測定光S11の光パルスと第1の基準光S21の光パルスが重なる瞬間が現れる。また、その重なる瞬間は第1の測定光S11と第1の基準光S21の繰り返し周波数の差の繰り返し周波数で周期的に現れる。この光パルスと光パルスの重なる瞬間が、遅延時間計測の基準となる。
【0041】
また、このレーザ距離計10Aにおいて、第2の干渉光学系44により合波される第2の測定光S12と第2の基準光S22は、次のように示される光路長差ΔCに対応する時間差ΔT
ΔT=ΔC/c
をもって第2の干渉光学系44に入射される。
【0042】
すなわち、第1の分離光学系41により分離された第2の測定光S12が、測定面5に照射され、測定面5により反射された反射光S12’として第2の干渉光学系44に入射されるまでに、基準光路4A内で通過する光路の光路長b12は、第1の分離光学系41から第3の分離光学系45までの光路の光路長をb、第3の分離光学系45から第3の全反射光学系45Aまでの光路の光路長をb12a’、第3の全反射光学系45Aから第2の干渉光学系44までの光路の光路長b12b’とすると、
12=b+b12a’+b12b
であり、また、第2の干渉光学系44に入射される第2の基準光S22が通過する基準光路4A内の光路の光路長c22は、第2の分離光学系42から第2の全反射光学系42Aまでの光路長c22aと第2の全反射光学系42Aから第2の干渉光学系44までの光路長c22bの和、すなわち、
22=c22a+c22b
にて示される。
【0043】
したがって、測定光検出器6は、第3の分離光学系45から測定面5までの距離をLとすると、第2の測定光S12が第3の分離光学系45と測定面5との間を往復する距離2Lと第2の測定光S12が基準光路4A内で通過する光路の光路長b12
12=b+b12a’+b12b
との和と、第2の基準光S22が通過する基準光路4A内の光路の光路長c22との光路長差ΔC、すなわち、
ΔC=b12+2L-c22
=2L+b+b12a’+b12b’-c22a-c22b
に対応する時間差ΔT
ΔT=(2L+b+b12a’+b12b’-c22a-c22b)/c
をもって第2の干渉光学系44に入射される第2の基準光S22と第2の測定光S12の反射光S12’の干渉光Sを検出する。
【0044】
この測定光検出器6によって得られる干渉信号fb2は、基準光検出器3によって得られる干渉信号fb1と同じくキャリア周波数が第2の測定光S12と第2の基準光S22のキャリア光周波数の差であり、第2の測定光S12と第2の基準光S22の光パルス繰り返し周波数の差と同じ繰り返し周波数を持つ。
【0045】
ここで、基準光検出器3により検出される第1の干渉光Sは、基準光路4Aにおける第1、第2の分離光学系41、42と第1の干渉光学系43との間の光路長差ΔA
ΔA=a11-a21
に相当する時間差ΔTが付与された第1の測定光S11と第1の基準光S21の干渉光であるのに対し、測定光検出器6により検出される第2の干渉光Sは、基準光路4Aにおける第1、第2、第3の分離光学系41、42、45と第2の干渉光学系44との間の光路長差ΔB
ΔB=b12-c22
に第3の分離光学系45と測定面5と間を第2の測定光S12が往復する距離2Lを加えた光路長差ΔC
ΔC=b12+2L-c22
に相当する時間差ΔTが付与された第2の測定光S12と第1の基準光S22の干渉光である。
【0046】
演算処理部7では、基準光検出器3により干渉光Sを検出して得られる干渉信号fb1に含まれる第1の測定光S11と第1の基準光S21との時間差ΔT
ΔT=ΔA/c
と、上記測定光検出器6により干渉光Sを検出して得られる干渉信号fb2に含まれる第2の測定光S12と第2の基準光S22との時間差ΔT
ΔT=ΔC/c
から、基準光路4における光路長差ΔAと光路長差ΔBの差分に相当する距離ΔA-ΔB、すなわち、
ΔA-ΔB=(a11-a21)-(b12-c22
=(a11+c22)-(a21+b12
に基づき、上記第2の測定光S12が通過する光路上の任意の基準点位置P(例えばP,P)からの距離L
=ΔA-ΔB
を規定して、基地点位置Pからの距離Lと基地点位置Pから測定面5による第2の測定光S12の反射光S12’が第2の干渉光学系44に入射されるまでの距離Lの距離差(L-L)の絶対値を測定面5までの測定距離Dとして求める処理を行う。
【0047】
すなわち、
ΔT=ΔA/c
ΔT=ΔC/c
ΔT-ΔT=ΔC/c-ΔA/c
=(ΔC-ΔA)/c
=(2L+ΔB-ΔA)/c
であるから、測定距離Dは、
【0048】
D=(ΔT-ΔT)・c
=2L-(ΔA-ΔB)
にて求めることができる。
【0049】
ここで、このレーザ距離計10Aにおける距離測定の原理について説明する。
【0050】
距離測定の原理は、光パルスの時間遅延から距離を求める距離計に準ずる。
【0051】
すなわち、時間遅延ΔT=D/cを計測して、真空中の光速cから測定距離Dを計算する。
【0052】
包絡線波形f(t)、キャリア周波数ω=2πfの光パルスは、次のように表わすことができる。
【数1】
【0053】
この光パルスを基準パルスとすると、基準パルスのフーリエ変換は、包絡線パルスf(t)のフーリエ変換F(ω)を用いて、次の(1)式で表わされる。
【数2】
【0054】
フーリエ変換の演算をFFT[ ]で表した。そして、基準パルスが、測定距離の伝搬による遅延の影響を受けたとすると、遅延パルスの波形とそのフーリエ変換は、次の(2)式の形で表わされる。
【数3】
【0055】
ここで、時間ΔTは遅延時間である。絶対距離を測るためには時間軸の包絡線の時間波形f(t-ΔT)からΔTを求めるか、(2)式の右辺のB項で示される周波数軸の位相特性e-jBを求めればよい。ωは角周波数でありfを周波数としてω=2πfの関係がある。(2)式の左辺のjA項は、キャリア成分の位相シフトを表す。この項は、光の半波長の距離で2πラジアン変化する感度の高い成分であり、変位測定に用いられる。
【0056】
距離測定の分解能を1μmより高めるためには、包絡線の時間波形f(t-ΔT)又は周波数軸の位相特性e-jBから遅延時間ΔTを求めるための時間分解能をフェムト秒のオーダーに高めなければならない。電気回路の周波数帯域の上限が数十GHzであることを考えると困難である。そこで、互いに変調周期が異なる干渉性のある基準光Sと測定光Sを発生する2つの光源を用意して干渉させ、電気的に処理が可能な周波数に落として遅延時間ΔTを計測するのがレーザ距離計10Aによる距離測定の方法である。
【0057】
測定距離(L-L)に比例する測定光パルスPと基準光パルスPの時間ΔTの測定を、互いに変調周期の異なる干渉性のある2台のパルス光源の干渉によって行う場合について、図3の(A),(B)に示す模式図を参照して説明する。
【0058】
図3の(A)は基準光検出器3が受光する光パルス列を表す。S11,S21は、それぞれ測定光パルスと基準光パルスの包絡線の時間波形である。繰り返し周波数は測定光パルスS11がf、基準光パルスS21がf+Δfであると仮定する。繰り返し周期はS21がT’=1/(f+Δf)、S11がT=1/fである。重なったパルスを基準に計測した時刻をそれぞれの繰り返し周期で規格化した値をNとすると、S11とS21のパルスはそれぞれのNが整数の時刻にN番目のパルスが検出器に到着することになる。S11とS21のN番目のパルスの到着時刻を比較すると、パルス列の周期の違い(T-T’)のN倍の時間だけ基準光パルスS21が先に到着する。パルス到着時間のずれはNに比例して大きくなり、あるN番目のパルスでは、(T-T’)N=Tとなり、N番目の測定光パルスS11がN-1番目の測定光パルスS11に追い付いて同じ時刻に到着する。
【0059】
11、S21のタイミングが一致するまでのパルスの個数Nは、次の(3)式により求められる。
【数4】
【0060】
11とS21の干渉信号は、互いのパルスが重なり合うタイミングで発生する。したがって、干渉信号の周期Tは、次の(4)式で表され、2つのパルス列の繰り返し周波数差Δfの逆数に等しい。
【数5】
【0061】
また、S11,S21はそれぞれ一定の繰り返し周波数を持つパルス列であるから、干渉信号も一定の周期Tで同じ波形を繰り返す。繰り返し周波数差Δfが大きすぎると光パルスが重なり合う時間が短くなるため干渉信号がとりにくくなる。それを避けるためΔf<<fのように繰り返し周波数差を設定する。
【0062】
また、図3の(B)は、測定光検出器6が受光するパルス列を表す。図3の(A)に示すパルスと比較して、測定光パルスS12の反射光S12’が光路長(L-L)を通過したことによる時間ΔTだけ遅れて到着している。この場合、S12’とS22のパルスが重なる番号N’は、N’に比例して大きくなる周期のずれとΔTの和が測定光パルスの周期Tに一致した瞬間であり、次の(5)式で表わすことができる。
【数6】
【数7】
【0063】
したがって、N’は、次の(6)式で与えられる。
【0064】
ただし、δ=ΔTfである。ΔTが0から測定光パルスの繰り返し周期Tまで変化する間にδは0~1まで直線的に変化する。
【0065】
測定光検出器6の受光パルスS12’,S22が重なる時間を基準光検出器3が受光するパルスが重なるN=0の時刻を基準に計測するとその時刻は次の(7)式で示されるN’T’で与えられる。
【数8】
【0066】
δが測定光パルスの1周期の間で0から1まで変化するとN’T’はTb~0まで直線的に変化する。遅延時間ΔTがあっても、0~Tbまでの間に必ず1か所S12パルスがS22’パルスを追い越していく時刻が存在するため、0~Tbの間で必ず干渉信号が得られる。N=0の時刻で発生する基準光検出器3の干渉信号Sと遅延時間ΔTのために遅れて発生する測定光検出器6の干渉信号Sの時刻を比較することによって遅延時間ΔTが求められる。
【0067】
例えば、基準光パルスの繰り返し周波数を25GHz+100kHz、測定光パルスの繰り返し周波数を25GHzとすると、ΔTが0~40psの範囲で変化すると、干渉信号の発生時刻は10μs~0の間で変化する。40psの時間内で起こる変化を10μsの時間幅に引き伸ばして計測できる。1フェムト秒の時間差であっても250psとして観測できるため、直接フェムト秒の分解能で時間計測を行うよりもはるかに低い周波数帯域の電気回路で取り扱うことができる。
【0068】
測定光パルスに与えられる時間遅延の符号とビート信号の時間遅延の符号の関係は、S12とS22の繰り返し周波数とキャリア周波数の大小関係に依存する。
【0069】
図4の(A)は、光スペクトルの模式図である。S12は測定光のスペクトル、S22は基準光のスペクトルを表す。S12、S22は光パルスの繰り返し周波数に一致したコム状のモードを持っており、モード間隔はそれぞれS12がf、S22がf+Δfである。図4の(A)では、スペクトル中央のモードを中心にモード番号を付け、N=0のモード間の干渉信号の周波数をfと仮定している。S12とS22の干渉波形にはさまざまなモード間の差周波数が含まれるが、同じモード番号間の差周波数が最も低い周波数帯に現れるため、適当な周波数帯域の光検出器を使用すると高い差周波数成分は検出信号から除外される。この場合、同じモード番号の干渉波形だけがビート信号として光検出器から取り出される。
【0070】
また、図4の(B)は、ビート信号スペクトルの模式図である。周波数fを中心にΔf間隔のコム状の電気信号スペクトルが得られる。ビート信号の時間波形は各周波数成分を重ね合わせたものである。周波数軸の位相特性e-jBを求めるためには、基準光検出器3の出力ビート信号のスペクトルから基準となる位相特性を求め、同時に測定光検出器6の出力ビート信号スペクトルから求められる位相特性を求め、それらを比較する。比較によって得られる位相特性の違いは測定距離(L-L)の伝搬によるものである。測定光スペクトルと基準光スペクトルの各モードの位相差情報が、ビート信号スペクトルの各モード番号の位相に反映される。ビート信号スペクトルのモード番号と位相の関係を測定光スペクトルのモード番号と位相差の関係に置き換えて光周波数と位相差の関係ωΔTを求め、その直線をωで微分して得られる係数からΔTを求める。
【0071】
光コム干渉による距離測定をビート信号の周波数解析により行うと、光スペクトルが持つ広い帯域をΔf/fに圧縮して電気的に解析できるため、光パルスの往復時間を計測する距離計でありながら高い分解能を得ることができる。
【0072】
計測に必要な時間は、干渉信号の1周期TbであるΔfを100kHzとすると周期Tbは10μsであり、短時間に距離を測定することができる。
【0073】
ここで、上記レーザ距離計1における第1及び第2の光源10A,10Bとしては、例えば、モード周波数間隔が異なる2台の光周波数コム発生器、あるいは、それぞれ周期的に強度又は位相が変調されかつキャリア周波数が安定化された2台の光源などを用いることができる。
【0074】
距離計としての性能は、測定光Sと基準光Sほぼ出射する第1及び第2の光源1、2の性能で決定される。距離測定の分解能は光スペクトル幅または光パルス幅に依存しており、光スペクトルの幅が広い、または光パルスの幅が狭いほど距離測定の分解能を高くすることができる。また、絶対距離測定の確度は光コムモードの周波数間隔または光パルスの繰り返し周波数の確度に依存している。マイクロ波の絶対周波数確度が高いほど絶対距離測定の確度を高めることができる。さらに測定値のばらつきはfやf+Δfの安定度に依存する。
【0075】
また、上記レーザ距離計10Aでは、2台の光源から出射される光の干渉を使って距離の測定を行うので、上記第1及び第2の光源1、2には、光コムモード間隔または光パルス繰り返し周波数または変調周期が異なりかつ干渉性の良いものが用いられる。
【0076】
独立に発振するパルスレーザは、通常レーザ発振の中心周波数や繰り返し周波数がばらばらであり、その変動に相関がない。したがって2台の独立したパルスレーザを使用して距離計測を行う場合、精度を高めるためには、発振波長や光位相、パルスの繰り返し周波数を相対的に固定することが重要である。
【0077】
外部変調された2台の光源または2台の光周波数コム発生器を使用すると距離計の要求を満たす光源を比較適容易に実現できる。特に、2台の発振器の同期をとった光周波数コム発生器は、互いに干渉性が良い、繰り返し周波数が安定、スペクトルの広がりが大きくパルス幅が短い、といった特徴を持つため、このレーザ距離計10Aに最適な光源である。
【0078】
なお、光周波数コム発生器20は、例えば、図5に示すように、一対の反射鏡21A,21Bで構成される光共振器21の内部に光位相変調器22を挿入してなるもので、単一周波数の連続波(周波数:ν)の光を入力し、光共振器21の自由スペクトル域(FSR)の整数倍に一致した周波数で光位相変調器22を駆動すると、光共振器21内の多重往復の周期と変調信号周期の同期がとれるため共振器のない光位相変調器と比べて極めて効率の良い変調が行われ、サイドバンドの本数は数百から数千本に達し、数テラヘルツのスペクトル広がりを持つ光周波数コムを出力として得ることができる。光周波数コム発生器20では、時間的にも短いパルスを発生することが可能で、時間幅1ピコ秒以下の光パルスを発生することができる。光周波数コム発生器20の出力は、中心周波数が入力周波数と等しく周波数間隔が変調周波数に等しいコム(櫛)状の光であり、図6に示すように、時間軸では、繰り返し周波数がfmであるパルス列である。変調指数を上げてスペクトルの広がりを大きくするほど時間幅の短いパルスを得ることができる。
【0079】
ここで、上記レーザ距離計10Aにおける第1、第2の光源1、2として2台の光周波数コム発生器を使用する場合、例えば、図7に示すような構成の光源100とされる。
【0080】
すなわち、この光源100では、1台の単一周波数発振のレーザ光源101から出射されるレーザ光がビームスプリッタ102により分割されて2台の光周波数コム発生器(OFCG1、OFCG2)20A,20Bに入力されるようになっている。
【0081】
2台の光周波数コム発生器20A,20Bは、互いに異なる周波数f+Δfと周波数fで発振する発振器103A,103Bにより駆動される。それぞれの発振器103A,103Bは、共通の基準発振器104により位相同期されることにより、f+Δfとfの相対周波数が安定になる。光周波数コム発生器(OFCG1)20Aの前には、音響光学周波数シフタ(AOFS)のような周波数シフタ105を設けて、入力されたレーザ光にこの周波数シフタ105により周波数fの光周波数シフトを与えるようになっている。これにより、キャリア周波数間のビート周波数が直流信号ではなく周波数fの交流信号になる。その結果、キャリア周波数の高周波側サイドバンドのビート信号と低周波側サイドバンドのビート信号がビート信号のキャリア周波数間のビート周波数fを挟んで相対する周波数領域に発生するため位相比較に都合が良い。
【0082】
上記光源100を構成している2台の光周波数コム発生器(OFCG1、OFCG2)20A,20Bは、図8の(A),(B)に示すような周波数の光周波数コムを出力する。
【0083】
すなわち、光周波数コム発生器(OFCG1)20Aの出力は、図8の(B)に示すように、中心にfの周波数間隔でコム状のモードが並ぶ。光周波数コム発生器(OFCG2)20Bの出力は、図8の(A)に示すように、周波数ν+fを中心にf+Δfの周波数間隔でコム状のモードが並ぶ。
【0084】
このような構成の光源100を上記第1、第2の光源1、2として備えたレーザ距離計10Aにおいて、基準光検出器3の入力前で重ね合わされたn次モードの電界の振幅e(t)は、次の(8)式で表される。
【数9】
【0085】
ここで、ERは、光周波数コム発生器(OFCG2)20Bから出射される基準光S2の電界を表し、ETは、光周波数コム発生器(OFCG1)20Aから出射される測定光S1の電界を表す。次数の異なるモード間の干渉信号は、変調周波数fとその周辺に現れる。したがって、光検出器の帯域をfやΔfに比べて十分広いがfより小さくとるか、フィルタを使用して高周波成分を取り除くと、同じ次数のモード間のビート周波数だけが残る。θはn次モードの位相差である。基準光n次モードの位相を基準にした測定光n次モードの相対位相を表している。
【0086】
また、光検出器の出力電流i(t)は、aを係数として、次の(9)式にて表すことができる。
【数10】
【0087】
(9)式のθを与える時間遅延は、基準光検出器3の場合、第1、第2の分離光学系41,42で光を分離してから干渉光学系43で重ね合わせられるまでの光路差や信号ケーブルの長さに依存する。測定光検出器6の出力のθから基準光検出器3の出力のθを差し引くことにより取り除かれる。光検出器からの出力電流の時間波形は、すべてのn次の電流を重ねた結果でありΣin(t)にて表すことができる。出力電流の波形は、キャリア周波数faの信号がΔfの周期で変調された波形であり、θは包絡線の時刻を決める。時間的には、基準光検出器3の出力のビート信号の発生時刻と測定光検出器6の出力のビート信号の発生時刻を比較することによってθの影響を取り除くことができる。測定光検出器6の出力のθをθ’とすると、基準光検出器3と測定光検出器6による検出として得られる各干渉信号fb1、fb2の時間差は、周波数軸では(θ’-θ)のnに対する変化率である。したがって、(θ’-θ)を各モードに対して求めると距離(L-L)を求めることができる。
【0088】
ここで、基準光検出器3による検出として得られる干渉信号fb1を波形観測して得られた波形例を図9に示す。fm=25GHz、Δf=100kHz、fa=40MHzの光コム発生器(OFCG1、OFCG2)20A、20Bを使用した場合である。周期Tbが10μsecで40MHzのキャリアが強度変調された波形の干渉信号となっている。
【0089】
このレーザ距離計10Aにおいて、距離(L-L)が変化すると、基準光検出器3による検出出力として得られた干渉信号fb1に対する測定光検出器6による検出出力として得られた干渉信号fb2のタイミングが変化するので、その時間差を測れば距離(L-L)を求めることができる。
【0090】
したがって、信号処理部7では、ピーク検出回路を用いて信号のピークの時間差を求めるか、信号を高速フーリエ変換して周波数と位相の関係を求めてもよい。信号の繰り返しが早いので短時間に距離測定を行うことができる。
【0091】
すなわち、基準光検出器3と測定光検出器6による検出として得られる各干渉信号fb1、fb2は、上記基準光Sと測定光Sのキャリア周波数の差で振動する信号がパルス状に変調された形になっている。パルスの包絡線の時間差が測定距離を表すので、時間的には、包絡線のピークを求め、ピークの時間差から距離を求めることができる。したがって、信号処理部7では、例えば、図10の(A)に示すように、例えばダイオードと低域透過フィルタにより構成される包絡線検波部71,72を使用するとキャリア成分の無い包絡線の信号に変換することができる。基準光検出器3による検出として得られる干渉信号fb1と測定光検出器6による検出として得られる干渉信号fb2に対して、それぞれ包絡線検波を行い、さらに、時間差測定部73において、ピーク検出回路を用いて包絡線がピークになる時間を検出し時間差を求めることにより遅延時間を求めることができ、距離計算部74において上記時間差から、基準光路4Aにより規定される基地点位置Pからの距離Lと基地点位置Pから測定面5による第2の測定光S12の反射光S12’が第2の干渉光学系44に入射されるまでの距離Lの距離差(L-L)の絶対値を測定距離Dとして求めることができる。
【0092】
また、上記信号処理部7では、光周波数コムの周波数的な安定性を利用して周波数軸での解析を行うことにより高度な解析を行うようにすることもできる。基準光検出器3に入力される干渉光Sと測定光検出器6に入力される干渉光Sを同期させ、それぞれn次モードの相対位相θを一括して求め、周波数とθの関係を基準光検出器3による検出として得られる干渉信号fb1と測定光検出器6による検出として得られる干渉信号比較することにより遅延時間を求めることができる。
【0093】
すなわち、上記信号処理部7は、例えば、図10の(B)に示すように、上記基準光検出器3により検出された干渉信号をフーリエ変換部75により周波数解析して多数の光周波数コムの位相情報を一括して取得するとともに、上記測定光検出器6により検出された干渉信号をフーリエ変換部76により周波数解析して多数の光周波数コムの位相情報を一括して取得し、位相差測定部77によりそれぞれの位相特性の周波数に対する変化率を求め、距離計算部78において、その傾きの差から、基準光路4Aにより規定される基地点位置Pからの距離Lと基地点位置Pから測定面5による第2の測定光S12の反射光S12’が第2の干渉光学系44に入射されるまでの距離Lの距離差(L-L)の絶対値を測定距離Dとして求めることができる。
【0094】
上記レーザ距離計10Aでは、基準光路4Aにおける光路長差ΔA
ΔA=a11-a21
に相当する時間差ΔTが付与された第1の測定光S11と第1の基準光S21の干渉光Sを基準光検出器3により検出し、基準光路4Aにおける第1、第2、第3の分離光学系41、42、45と第2の干渉光学系44との間の光路長差ΔB
ΔB=b12-c22
に第2の干渉光学系44と測定面5の間を第2の測定光S12が往復する距離2Lを加えた光路長差ΔC
ΔC=ΔB+2L
に相当する時間差ΔTが付与された第2の測定光S12の反射光S12’と第2の基準光S22の干渉光Sを測定光検出器6により検出するので、信号処理部7おいて、基準光検出器3による干渉光Sの検出出力として得られる干渉信号fb1に含まれる第1の測定光S11と第1の基準光S21との時間差ΔT
ΔT=ΔA/c
と、測定光検出器6による干渉光Sの検出出力として得られるにより検出された干渉信号fb2の時間差に含まれる第2の測定光S12と第2の基準光S22との時間差ΔT
ΔT=ΔC/c
から求められる計測距離Dは、
D=(ΔT-ΔT)・c
=2L-(ΔA-ΔB)
であるから、例えば、第1の分離光学系41の位置を基準点位置Pに規定する場合、
D=2L+b―b―(ΔA-ΔB)
=2L+b―(2b+ΔA-ΔB)
=2L+b―(2b+ΔA-ΔB)
=L―L
となり、基準点位置Pからの距離L
=2b+ΔA-ΔB
=2b+(a11-a21)-(b12-c22
=2b+(a11-a21)-(b+b12’-c22
=a11-a21+b-b12’+c22
にすることによって、基準点位置Pからの測定面5までの距離L
=2L+b
になる。そして、基準光路4Aにおける光路長差が、
【0095】
11-a21-b12’+c22=b
であれば、信号処理部7により得られる計測距離Dは、
D=L―L
=2L
となる。
【0096】
また、第3の分離光学系45の位置を基準点位置Pとする場合、
測定面5までの測定距離Dは、
D=2L-(ΔA-ΔB)
であるから、例えば
基準点位置Pからの距離L
=ΔA-ΔB
とすることにより、基準点位置Pから測定面5までの距離L
と基準点位置Pからの距離Lとの差分(L-L)が測定面5までの測定距離Dとなる。
【0097】
すなわち、この場合、基準光路4Aの光路長が
ΔA=ΔB
であれば、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
D=L-L
=2L
となる。
【0098】
すなわち、このレーザ距離計10Aでは、基準光路4Aにおける光路長差ΔAと光路長差ΔBの差分に対応する光路長に相当する基地点位置Pからの距離Lを規定することにより、演算処理部7において、基準光検出器3により干渉光Sを検出して得られる干渉信号fb1と測定光検出器6により干渉光Sを検出して得られる干渉信号fb2の時間差から、上記測定面5までの測定距離Dとして、基地点位置Pから測定面5までの距離Lと基準点位置Pからの距離Lとの距離差(L-L)の絶対値を求める処理を行うことができる。
【0099】
基準光路4Aは、図2に示すように、第1の干渉光学系43に入射される第1の測定光S11が通過する光路の光路長a11と第1の基準光S21が通過する光路の光路長a21との光路長差ΔA
ΔA=a11-a21
と、測定面5による反射光S12’として第2の干渉光学系44に入射される第2の測定光S12が通過する光路の光路長b12=b+b12’と第2の干渉光学系44に入射される第2の基準光S22が通過する光路の光路長c22の光路長差ΔB
ΔB=b12-c22
により基準点位置Pからの距離Lを規定する。
【0100】
基準光路4Aは、基準点位置Pを光路長差ΔA
ΔA=a11-a21
と光路長差ΔB
ΔB=b12-c22
により任意に規定することができる。
【0101】
ここで、このレーザ距離計10Aにおける第1の分離光学系41、第1の全反射光学系41A、及び第1の干渉光学系43は、1つの光学系により実現することができ、また、第3の分離光学系45、第3の全反射光学系45A、及び第2の干渉光学系44は、1つの光学系により実現することができ、例えば、図11のブロック図に示すレーザ距離計10Bのように、第1の光分離・合波素子43Aにより測定光Sを第1の測定光S11と第2の測定光S12に分離するとともに、第1の測定光S11と第1の基準光S21とを合波し、第2の光分離・合波素子44Aにより第2の測定光S12は通過させ、測定対象の測定面5により反射された第2の測定光S12の反射光S12’と第2の基準光S22とを合波する構成とすることができる。
【0102】
このレーザ距離計10Bでは、レーザ距離計10Aにおける第1の分離光学系41及び第1の干渉光学系43の機能を1つの光学系(第1の光分離・合波素子43A)により実現することによって、第1の分離光学系41と第1の干渉光学系43との間の光路長は0、すなわち、第2の分離光学系42に入射される第1の測定光S11が基準光路4Bを通過する光路長a11は0となる。また、レーザ距離計10Aにおける第3の分離光学系45、第3の全反射光学系45A、及び第2の干渉光学系44の機能を1つの光学系(第2の光分離・合波素子44A)により実現することによって、第3の分離光学系45と第2の干渉光学系44との間の光路長は0、すなわち、第2の分離光学系42に入射される測定面5により反射された第2の測定光S12の反射光S12’が基準光路4Bを通過する光路長は0となる。
【0103】
すなわち、このレーザ距離計10Bにおける基準光路4Bを構成している各光路の光路長を図12のブロック図に示すように、第1の光源1から出射された測定光Sが第1の光分離・合波素子43Aにより第1の測定光S11と第2の測定光S12に分離され、また、第2の光源2から出射された基準光Sが第2の分離光学系42により第1の基準光S21と第2の基準光S22に分離され、第1の光分離・合波素子43Aにおいて第1の測定光S11と第1の基準光S21が合波されるまでの間に、第1の測定光S11と第1の基準光S21とが通過する基準光路4Bにおける各光路間の光路長差ΔAは、第2の分離光学系42と第1の光分離・合波素子43Aとの間の光路長-a21である。
【0104】
また、第1の光分離・合波素子43Aにより分離された第2の測定光S12が測定面5に照射され、該測定面5により反射された第2の測定光S12の反射光S12’として第2の光分離・合波素子44Aにおいて第2の基準光S22と合波されるまでの間に第2の測定光S12と第2の基準光S22とが通過する光路の光路長差ΔCは、第2の光分離・合波素子44Aから測定面5までの距離をLとして、
ΔC=b12+2L-c22
であり、第2の測定光S12と第2の基準光S22の基準光路4Bにおける光路長差ΔBは、
ΔB=b12-c22
22=c22a+c22b
である。
【0105】
したがって、このレーザ距離計10Bでは、第1の光分離・合波素子43Aに入射される第1の測定光S11と第1の基準光S21との光路長差ΔAを
ΔA=-a21
とし、第2の光分離・合波素子44Aに入射される第2の測定光S12の反射光S12’と第2の基準光S22との光路長差ΔBをΔB=b12-c22とする基準光路4Bにより、例えば、第1の光分離・合波素子43Aの位置を基準点位置Pとして規定する場合、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
【0106】
D=(ΔC-ΔA)
=2L+(a21+b12-c22
=2L+b12+(a21+b12-c22)-b12
=2L+b12-(-a21-b12+c22)-b12
=2L+b12-((ΔA-ΔB)+b12
=L-L
すなわち、基準点位置Pからの距離Lと基準点位置Pから測定面5まで距離Lは、
=(ΔA-ΔB)+b12
=(-a21-b12+c22)+b12
=c22-a21-b12+2b12
=c22-a21+b12
=2L+b12
となり、
22=a21-b12
であれば、
=0
であるから、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
D=L-L
=2L+b12
となる。
【0107】
そして、基準光路4Bに光路長差c22-a21が、
22-a21=b12
であれば、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
D=L-L
となる。
【0108】
また、第2の光分離・合波素子44Aの位置を基準点位置Pとする場合、
測定面5までの測定距離Dは、
D=2L-(ΔA-ΔB)
であるから、例えば
基準点位置Pからの距離L
=ΔA-ΔB
とすることにより、基準点位置Pから測定面5までの距離L
=2L
と基準点位置Pからの距離Lとの差分(L-L)が測定面5までの測定距離Dとなる。
【0109】
すなわち、この場合、基準光路4Bの光路長が
ΔA=ΔB
であれば、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
D=L-L
となる。
【0110】
ここで、このレーザ距離計10Bにおいて、第1、第2の光分離・合波素子43A,44Aには、半透鏡又は偏光ビームスプリッタを用いることができる。
【0111】
また、レーザ距離計10A、10Bにおける基準光路4A、4Bは、基準点位置Pを任意に設定することができ、基準点位置を調整するための基準光路調整器が含まれる場合もある。また、基準光路4A、4Bには、不要な干渉信号を発生させないため光の進行を単一方向にするアイソレータを挿入する場合もある。
【0112】
例えば、図13のブロック図に示すレーザ距離計10Cのように、光路長調整器45を設けた基準光路4Cを備えることにより、基準点位置Pを可変自在とすることができる。
【0113】
このレーザ距離計10Cでは、光路長調整器45により、第2の分離光学系42から第2の全反射光学系42Aまでの光路の光路長c22aを可変して、信号処理部7により算出される測定距離D=L-Lにおける距離L、Lの基準点位置Pを任意に設定することができ、第2の基準光S22が通過する基準光路4Cの光路長c22
22=c22a+c22b
が、例えば、c22-a21-b12=2Lとなるように、基準光路4Cの光路長c22aを調整することにより、基準点位置Pを測定対象上に持ってくることができる。
【0114】
すなわち、本件発明者等が先に提案した特許文献2の手法では、基準面に照射される基準光と測定面に照射される測定光との干渉光を基準光検出器により検出することにより時間基準を与える干渉信号を得るようにしていたが、このレーザ距離計10A、10B、10Cでは、第1、第2の測定光S11、S12と第1、第2の基準光S21,S22が通過する基準光路4A、4B、4Cの光路長差ΔA、ΔBによって基準点位置Pからの距離Lを規定することにより、基準光検出器3による検出する干渉光Sと測定光検出器6による検出する干渉光Sの時間差に基づいて、測定面5までの測定距離Dとして、基準点位置Pから測定面5による第2の測定光S12の反射光S12’が第2の干渉光学系44・第2の光分離・合波素子44Aに入射されるまでの距離Lと基準点位置Pからの距離Lとの距離差(L-L)を演算処理部7により求めるようにしている。
【0115】
ここで、レーザ距離計10A、10B、10Cでは、第2の測定光S12を透過して、測定面5による第2の測定光S12の反射光S12’が入射される第2の干渉光学系44を備えるものとしたが、第2の干渉光学系44を、図14に示すレーザ距離計10Dのように、第2の測定光S12を透過して、測定面5による第2の測定光S12の反射光S12’を反射する第3の分離光学系44Bと第2の干渉光学系44にて構成するようにしてもよい。
【0116】
このレーザ距離計10Dにおける基準光路4Dを構成している各光路の光路長を図15のブロック図に示すように、このレーザ距離計10Dでは、測定面5による第2の測定光S12の反射光S12’が第3の分離光学系44Bにより反射されて光路長c12’の光路を介して第2の干渉光学系44に入射され、第2の干渉光学系44には第2の分離光学系42により分離された第2の基準光S22が光路長c22の光路を介して入射される。
【0117】
したがって、第1の光分離・合波素子43Aにより分離された第2の測定光S12が測定面5に照射され、該測定面5により反射された第2の測定光S12の反射光S12’として第2の基準光S22と第2の干渉光学系44において合波されるまでの光路間の光路長差ΔCは、第3の分離光学系44Bから測定面5までの距離をL、第3の分離光学系44Bと第2の干渉光学系44との間の光路の光路長をb12’とすると、第2の干渉光学系44に入射されるまで第2の測定光S12、反射光S12’が通過する光路の光路長はb+2L+b12’であり、第2の基準光S22が通過する光路の光路長はc22であるから、
ΔC=b+2L+b12’-c22
となる。
【0118】
このレーザ距離計10Dにおける基準光路4D内での第1の測定光S11と第1の基準光S21の光路長差ΔAは、
ΔA=-a21
であり、また、第2の測定光S12と第2の基準光S22の基準光路4内での光路長差ΔBは、
ΔB=b12-c22
12=b+b12
となっている。
【0119】
例えば、第1の光分離・合波素子43Aの位置を基準点位置Pとして規定する場合、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
D=ΔC-ΔA
=(b+2L+b12’-c22)-(-a21
=L+b+(b+b12’-c22+a21)-b
=L+b-(-b-b12’+c22-a21)-b
=L+b-((ΔA-ΔB)+b12
=L-L
すなわち、基準点位置Pからの距離Lと基準点位置Pから測定面5まで距離Lは、
【0120】
=(ΔA-ΔB)+b12
=(-a21-b12+c22+b12
=c22-a21-b12+2b12
=c22-a21+b12
=2L+b12
となり、
22=a21-b12
であれば、
=0
であるから、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
D=L-L
=2L+b12
となる。
【0121】
そして、基準光路4Bに光路長差c22-a21が、
22-a21=b12
=b+b12
であれば、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
【0122】
D=L-L
=2L
となる。
【0123】
また、例えば、第3の分離光学系44Bの位置を基準点位置Pとして規定する場合、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
D=ΔC-ΔA
=(b+2L+b12’-c22)-(-a21
=2L+(b+b12’-c22+a21
=2L-(-b-b12’+c22-a21
=2L-(ΔA-ΔB)
=L-L
すなわち、基準点位置Pからの距離Lと基準点位置Pから測定面5まで距離Lは、
=(ΔA-ΔB)
=-a21-b12+c22
=L
となり、
ΔA=ΔB
であれば、
=0
であるから、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
D=L-L
=2L
となる。
【0124】
すなわち、このレーザ距離計10Dにおける基準光路4Dは、ΔA=ΔBとすることにより、第3の分離光系44Bの位置を基準点位置Pとして規定することができる。
【0125】
なお、本発明を適用したレーザ距離計10A~10Dにおいて、基準光検出器3は、測定光Sを第1、第2の測定光S11,S12に分離する第1の分離光学系41や基準光Sを第1、第2の基準光S21,S22を分離する第2の分離光学系42に偏光ビームスプリッタを用いる場合には、同一射影成分を抽出するための偏光子を内蔵する。
【0126】
そして、第1の分離光学系41に偏光ビームスプリッタを用いる場合には透過、反射両方の成分が発生するように第1の光源1の偏光を適切な角度に傾ける。また、第2の分離光学系42に偏光ビームスプリッタを用いる場合には、透過、反射両方の成分が発生するように第2の光源2の偏光を適切な角度に傾ける。第2の分離光学系42で反射した光が第1の光分離・合波素子43Aを透過するように基準光路に波長板のような偏光を調整する素子(例えば、1/2波長板)を挿入することが好ましい。
【0127】
また、測定光検出器6は、第2の干渉光学系44に偏光ビームスプリッタを使用する場合には、同一射影成分を抽出するための偏光子を内蔵する。またその場合には、第2の干渉光学系44と測定対象の間に偏光を90度回転させるための光学素子(1/4波長板やファラデー素子)を挿入する必要がある。
【0128】
以上説明したレーザ距離計10A~10Dは、第1、第2の光源1、2により発生された測定光Sと基準光Sが空間伝播する基準光路4A~4Dを備えるものであるが、本発明に係るレーザ距離計は、例えば、図16に示すレーザ距離計10Eのように、光ファイバケーブルにより基準光路を構成することもできる。
【0129】
図16に示すレーザ距離計10Eは、第1の光源1から出射された測定光Sが入射される第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1と、第2の光源2から出射された基準光Sが入射される第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2と、第1の干渉光S3を基準光検出器3に出射する第3の2分岐光ファイバケーブルカプラFC3と第2の干渉光S4を測定光検出器6に出射する第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC4と、第2の測定光S12を測定面5に向けて出射する第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5の5つの光カプラを備える。
【0130】
このレーザ距離計10Eにおいて、第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1は、2本の光ファイバケーブルFB1、FB2を介して第3の2分岐光ファイバケーブルカプラFC3と第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC3に接続されており、第1の光源1から出射された測定光Sを第1の測定光S11と第2の測定光S12に分離して出射する第1の分離光学系として機能する。
【0131】
この第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1により分離された第1の測定光S11は、光ファイバケーブルFB1を介して第3の2分岐光ファイバケーブルカプラFC3に伝搬され、また、第2の測定光S12は、光ファイバケーブルFB2を介して第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC3に伝搬される。
【0132】
また、第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2は、2本の光ファイバケーブルFB3、FB4を介して第3、第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC3、FC4に接続されており、第2の光源2から出射された基準光Sを第1の基準光S21と第2の基準光S22に分離して出射する第2の分離光学系として機能する。
【0133】
この第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2により分離された第1の基準光S21は、光ファイバケーブルFB3を介して第3の2分岐光ファイバケーブルカプラFC3に伝搬され、また、第2の基準光S22は、光ファイバケーブルFB4を介して第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC4に伝搬される。
【0134】
第3の2分岐光ファイバケーブルカプラFC3は、2本の光ファイバケーブルFB1、FB3を介して第1、第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1、FC2に接続されており、第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1により分離された第1の測定光S11と第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2により分離された第1の基準光S21とを合波し、第1の測定光S11と第1の基準光S21とを合波するより得られる第1の干渉光S3を基準光検出器3に入射させる第1の干渉光学系として機能する。
【0135】
第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5は、2本の光ファイバケーブルFB2、FB5を介して第1、第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1、FC4に接続されおり、第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1により分離された第2の測定光S12を測定面5に向けて出射して、測定面5に照射した第2の測定光S12が測定面5により反射された反射光S12’として戻されることにより、入射された反射光S12’を光ファイバケーブルFB5を介して第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC4に入射させる第3の分離光学系として機能する。
【0136】
このレーザ距離計10Eでは、第3の分離光学系として機能する第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5と測定対象の測定面5との間にコリメータ8が挿入されており、第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5から出射された第2の測定光S12は、コリメータ8を介して測定面5に照射され、測定面5により反射された反射光12’がコリメータ8を介して第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5に戻されるようになっている。
【0137】
なお、第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFB5は、光サーキュレータに置き換えることができる。
【0138】
そして、第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC4は、2本の光ファイバケーブルFB4、FB5を介して第2、第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2、FC5に接続されおり、第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2から光ファイバケーブルFB4を介して入射される第2の基準光S22と第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5から光ファイバケーブルFB5を介して入射される第2の測定光S12の反射光S12’とを合波し、
第2の測定光S12の反射光S12’と第2の基準光S22と合波することにより得られる第2の干渉光S4を測定光検出器6に入射させる第2の干渉光学系として機能する。
【0139】
このレーザ距離計1Eにおける基準光路4Eを構成している各光路の光路長を図17のブロック図に示すように、第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1により分岐された第1の測定光S11が第1の光ファイバケーブルFB1を介して第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2まで伝搬される光路長a11の光路と、第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2により分岐された第1の基準光S21が第2の光ファイバケーブルFB2を介して第3の2分岐光ファイバケーブルカプラFC3まで伝搬される光路長a21の光路と、第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1により分岐された第2の測定光S12が第3の光ファイバケーブルFB3を介して第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5まで伝搬される光路長a12の光路と、第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2により分岐された第2の基準光S22が第4の光ファイバケーブルFB4を介して第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC4まで伝搬される光路長a22の光路と、第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5に入射された測定面5による第2の基準光S22の反射光S22’が第5の光ファイバケーブルFB5を介して第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC4まで伝搬される光路長a22’の光路とにより、基準光路4Eが構成されている。
【0140】
すなわち、このレーザ距離計10Eにおいて、基準光検出器3では、第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1から第1の光ファイバケーブルFB1を介して第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC13に伝搬される第1の測定光S11の光路の光路長a11と、第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2から第3の光ファイバケーブルFB3を介して第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2に伝搬される第1の基準光S21の光路の光学的光路長a21との光路長差ΔA
ΔA=a21-a11
に対応する時間差ΔT
ΔT=ΔA/c
が与えられた第1の測定光S11と第1の基準光S21の干渉光Sを検出している。
【0141】
また、第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1により分離された第2の測定光S12が測定面5に照射されて測定面5により反射された反射光S12’として第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC4に伝搬されるまでの光路の光路長Lsは、第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1から第3の光ファイバケーブルFB3を介して第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5に伝搬される第2の測定光S12の光路の光路長bと、第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5を介して第2の測定光S12が測定面5に照射されて測定面5により反射された反射光S12’として第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC15に入射されるまでの光路、すなわち、第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5Aから測定面5までの距離Lを往復する光路の光路長2Lと、第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5から第5の光ファイバケーブルFB5を介して第4の5分岐光ファイバケーブルカプラFC4に伝搬される反射光S12’の光路の光路長b12’との和として、
Ls=b+2L+b12
にて示される。すなわち、第2の測定光S12と反射光S12’が基準光路4E内を通過する光路長b12は、
12=b+b12
であり、第2の基準光S22が基準光路4E内を通過する光路長c22との光路長差ΔBは、
ΔB=b12-c22
である。
【0142】
そして、第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2から第4の光ファイバケーブルFB4を介して第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC4に伝搬される第2の基準光S22の光路の光路長c22との光路長差ΔCは、
ΔC=Ls-c22
=b+2L+b12’-c22
=b12+2L-c22
となる。
【0143】
したがって、測定光検出器6では、光路長差ΔC=b12+2L-c12に対応する時間差ΔT
ΔT=ΔC/c
が与えられた第2の測定光S12’と第2の基準光S22の干渉光Sを検出している。
【0144】
そして、このレーザ距離計10Eにおいて、基準光検出器3による干渉光Sの検出出力として得られる干渉信号fb1に含まれる第1の測定光S11と第1の基準光S21との時間差ΔT
ΔT=ΔA/c
と、測定光検出器6による干渉光Sの検出出力として得られるにより検出された干渉信号fb2の時間差に含まれる第2の測定光S12と第2の基準光S22との時間差ΔT
ΔT=ΔC/c
から信号処理部7により求められる計測距離Dは、
D=(ΔT-ΔT)・c
=2L-(ΔA-ΔB)
であり、基準光路4Eは、第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1により分離された第2の測定光S12が通過する光路上の任意の基準点位置P(例えばP,P)からの光路長L
=ΔA-ΔB
を規定することにより、計測距離Dとして、基準点位置Pから測定面5までの距離Lと基準点位置Pからの距離Lとの差分の距離(L-L)を得ることができるようにしている。
【0145】
すなわち、このレーザ距離計10Eにおいて、基準光路5Eは、例えば、第3の光カプラFC3に入射される第1の測定光S11が通過する光路長a11と第1の基準光S21が通過する光路長a21との光路長差ΔA
ΔA=a11-a21
と、測定面5による反射光S12’として第4の光カプラFC4に入射される上記第2の測定光S12が通過する光路長(b+b12’)と上記第4の光カプラFC4に入射される第2の基準光S22が通過する光路長c22との光路長差ΔB
ΔB=b+b12’-c22
との差分の光路長ΔA-ΔB
ΔA-ΔB=(a11-a21)-(b+b12’-c22
に基づき、基準点位置Pからの距離Lを、
=-b+(ΔA-ΔB)
とすることにより、第1の光カプラFC1の位置に上記基準点位置Pを規定することができる。
【0146】
この場合、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
D=(ΔC-ΔA)
=(b+2L+b12’-c22)-(-a21))
=2L+b+(b+b12’-c22+a21)-b
=2L+b-(-b-b12’+c22-a21)-b
=2L+b-((ΔA-ΔB)+b
=L-L
であるから、基準点位置Pからの距離Lと基準点位置Pから測定面5まで距離Lは、
=(ΔA-ΔB)+b
=(-b-b12’+c22-a21)+b
=-b-b12’+c22-a21+2b
=c22+b-b12’-a21
=2L+b
となる。
【0147】
また、信号処理部7により算出される測定面5までの測定距離Dは、
D=(ΔC-ΔA)
=(b+2L+b12’-c22)-(-a21
=2L+(b+b12’-c22+a21
=2L-(ΔA-ΔB)
=L-L
であるから、基準光路4Eは、
ΔA=ΔB
として、第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5の位置を基準点位置Pに規定することにより、
=ΔA-ΔB
=0
=2L
となる。
【0148】
このレーザ距離計10Eでは、コリメータ8までの全てを光ファイバケーブルで構成することで、製造が量産部品のファイバケーブル融着で可能になり、製造コスト削減が可能になる。
【0149】
なお、コリメータ8内部の反射が測定に影響することがあるので、第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5に偏光ビームスプリッタを用い、また、コリメータ8の外部に1/4波長板又はファラデーローテータを配設して、コリメータ8への入力の偏光と戻り光の偏光を直交させ、コリメータ8内のレンズ等による内部反射の測定への影響を減少させることが望ましい。
【0150】
また、また、このレーザ距離計10Eでは、基準光路4Eを構成している光ファイバケーブルFC1~FC5の光路長を
22-(a21-a11)>b12
とすることにより、基準点位置Pを第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5よりも測定面5側に位置させることができる。
【0151】
例えば、図18に示すレーザ距離計10Fのように、第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2から第2の基準光S22を遅延光ファイバケーブルFB4’を介して第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC4すなわち第2の干渉光学系に伝搬させるようにして、例えば、基準光路4Fの光路長を
22-(a21-a11)-b12=2L
とすることにより、基準点位置Pを測定対象上に持ってくることができる。
【0152】
このレーザ距離計10Fでは、第1の2分岐光ファイバケーブルカプラFC1から第3の2分岐光ファイバケーブルカプラFC3までの光学距離a11と第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2から第3の2分岐光ファイバケーブルカプラFC3までの光学距離a21の距離差ΔAは、ΔA=a11-a21、であり、第2の測定光S12と反射光S12’が基準光路4E内を通過する光路長b12=b+b12’と第2の基準光S22が基準光路4E内を通過する光路長c22との光路長差ΔBは、ΔB=b12-c22であるから、例えば、第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5の位置を基準点位置Pとして基準光路4Fにより規定し、基準点位置Pからの光路長L
=(ΔA-ΔB)
=(a11-a21)-(b12-c22
が、第5の2分岐光ファイバケーブルカプラFC5の位置を基準点位置Pとして基準点位置Pからコリメータ8の位置までの光学距離Lの2倍の光路長2Lに等しいものとした基準光路4Fを有するものとすることにより、
演算処理部7により求める測定距離D=L-Lは、
=2L
=2L
であるから、
D=2L-2L
となる。
【0153】
すなわち、このレーザ距離計10Fでは、基準点位置Pからコリメータ8の位置までの光学距離Lに等しい基準点位置Pからの光路長Lの基準光路4Eにより、コリメータ8の位置すなわち基準点位置Pから光路長Lを規定して、測定面5までの測定距離Dを
D=L-L
=2L-2L
を演算処理部7により求めることができる。
【0154】
なお、測定距離D=2L-2Lの値は、測定光S11、S12、S12’、基準光S21、S22が基準光路4Fを通過する経路の複雑さから、測定対象がコリメータ8の近傍であっても数mになることがある。この時、光ファイバケーブルの熱的屈折率変化で距離は変化してしまうが、第2の2分岐光ファイバケーブルカプラFC2と第4の2分岐光ファイバケーブルカプラFC4との間を接続している第4の光ファイバケーブルとして遅延光ファイバケーブルFB4’を挿入して、基準点位置Pをコリメータ8近傍にすることで、熱的不安定化は最小となる。また、基準光路4E、4Fを構成している光ファイバケーブルFB1~FB5,FB’を熱的結合させることはより安定になる。また基準点位置Pを位置測定対象近傍にすることで、第1、第2の光源1、2に線幅の狭いレーザ光源を使用しなくても、ばらつきの少ない計測が可能になる。
【0155】
また、本発明に係るレーザ距離計を使用して、例えば、図19に示すような光学的三次元形状測定機200を構成することができる。
【0156】
この光学的三次元形状測定機200は、本発明に係るレーザ距離計10における測定光Sで対象物体250を走査する光学スキャン装置220と、レーザ距離計10の基準光検出器3と測定光検出器6の各検出出力に基づいて、対象物体250の複数の点までの絶対距離を計測して立体像を得る信号処理装置230を備える。
【0157】
この光学的三次元形状測定機200では、レーザ距離計110からの測定光S2が光学スキャン装置220から対象物体250に向けて照射され、対象物体250からの反射光がレーザ距離計10に戻り、物体表面までの絶対距離が信号処理装置230により計測される。信号処理装置230は、光学スキャン装置220を制御してレーザービームを走査すると同時にレーザ距離計110が計測する絶対距離情報を取得して、ビーム照射位置とその場所まで絶対距離を複数の点について蓄積することにより非接触で物体の三次元形状を測定する。
【0158】
なお、光学スキャン装置220により光ビームを走査する代わりに対象物体250を移動させてもよい。
【符号の説明】
【0159】
1 第1の光源、2 第2の光源、3 基準光検出器、4A~4F 基準光路、5 測定面、6 測定光検出器、7 信号処理部、41 第1の分離光学系、41A 第1の全反射光学系、42 第2の分離光学系、42A 第2の全反射光学系、43 第1の干渉光学系、43A 第1の光分離・合波素子、44 第2の干渉光学系、44A 第2の光分離・合波素子、44B 第3の分離光学系、45 光路長調整器、FC1~FC5 第1乃至第5の光ファイバケーブルカプラ、FB1~FB5 第1乃至第5の光ファイバケーブル、FB4’ 遅延光ファイバケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19