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  • 特許-野縁受けハンガー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】野縁受けハンガー
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
E04B9/18 N
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018176598
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020045719
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591020685
【氏名又は名称】株式会社能重製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】能重 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】八百板 潤
(72)【発明者】
【氏名】前川 伸哉
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-013682(JP,A)
【文献】実開昭62-135721(JP,U)
【文献】実開平06-071624(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00 - 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体天井部に設けられた吊りボルトに固定される固定部と、横断面形状がC字状をなしていて側方に開口部を有する野縁受けを支持可能であって該固定部に連結する支持部と、を備える野縁受けハンガーであって、
前記支持部は、前記固定部から下方に向けて延在する第一側壁と、該第一側壁の下部に連結する底壁と、該底壁から上方に向けて延在して該第一側壁に対向し、前記野縁受けを支持した際に前記開口部が面する第二側壁と、を備え、
前記第二側壁は、該第二側壁よりも幅狭で、且つ下方に向かうにつれて前記第一側壁に近づく向きに傾き、該第一側壁から離反する向きに撓み可能な傾斜保持片を有し、
前記傾斜保持片は、前記野縁受けを前記支持部に嵌め込んだ際、該野縁受けの下端部を該傾斜保持片の下端部と前記底壁との間で挟み込んで該野縁受けを保持する野縁受けハンガー。
【請求項2】
前記第一側壁は、前記第二側壁に向けて突出し、支持した前記野縁受けに係合する突起を有する請求項1に記載の野縁受けハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井パネルが取り付けられる天井下地において、躯体天井部に設けられた吊りボルトに固定され、天井パネルを固定する野縁が取り付けられる野縁受けを支持する野縁受けハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井パネルが取り付けられる天井下地は一般に、躯体天井部から垂下するように設けられる複数の吊りボルトと、吊りボルトのそれぞれに固定される野縁受けハンガーと、側方に開口部を有する(横断面形状がC字状(コ字状)になる)とともに長尺状に形成され、隣り合う野縁受けハンガーに架け渡すように支持される野縁受けと、野縁受けに保持されるクリップと、クリップによって野縁受けに対して井桁状になるように支持されるとともに、ビス止め等によって天井パネルが取り付けられる野縁と、によって構成されている。このような天井下地は、例えば特許文献1の図22に示されている。
【0003】
また従来の野縁受けハンガーは、特許文献1の図27に示されているように、野縁受けを取り付けた後にボルト止めを行うものの他、同文献の図23に示されているように、ボルトは使用せず、野縁受けを手で押し込んでこれを取り付けることができるものがある。
【0004】
ここで、手で押し込んで野縁受けを取り付けることが可能な従来の野縁受けハンガーについて、図5図6を参照しながら説明する。従来の野縁受けハンガー101は、躯体天井部に設けられた吊りボルト(不図示)に固定される固定部102と、側面視においてU字状をなし、野縁受けNを支持可能であって固定部102に連結する支持部103とで構成されている。固定部102は、吊りボルトに固定された状態で水平方向に延在する固定壁104と、固定壁104を貫通する円形の孔105とにより構成されている。また支持部103は、固定壁104の端部から下方に向けて延在する第一側壁106と、第一側壁106の下端部に連結して水平方向に延在する底壁107と、底壁107の端部から上方に向けて延在して第一側壁106に対向する第二側壁108と、第二側壁108の上端部に連結し、上方に向かうにつれて第一側壁106から離れる向きに傾く傾斜壁109と、第二側壁108と傾斜壁109が連結する付近に設けられ、第一側壁106に向けて突出する切り起こし110で構成されている。
【0005】
このような野縁受けハンガー101は、孔105に吊りボルトを挿通させるとともに、吊りボルトに螺合する一対のナット(不図示)によって固定壁104を挟持するようにして、吊りボルトに固定される。そして、吊りボルトに固定された野縁受けハンガー101に対し、図5に示すように支持部103の上方から野縁受けNを下方に向けて手で押し込むことにより、図5(b)に二点鎖線で示すように、第二側壁108を第一側壁106から離反する向きに撓ませて、野縁受けNを支持部103に嵌め込んでいる(図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-13682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の野縁受けハンガー101は、野縁受けNを取り付けるにあたり、比較的強い力で押し込まなければ第二側壁108を撓ませることができなかった。また通常、取り付け作業は腕を上げた状態で行われるため、この状態で野縁受けNに強い力を加えることは、作業者にとってかなりの負担になっていた。特に、サイズが小さい野縁受けNを使用する場合は、底壁107を起点として第二側壁108が延在する長さも短くなるため、野縁受けNを嵌め込む際は第二側壁108を大きく撓ませなければならない。このため、取り付けにあたって特に過大な力を要していて、施工性に難があった。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであって、野縁受けを取り付ける際の力が少なくて済み、施工性に優れる野縁受けハンガーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の野縁受けハンガーは、躯体天井部に設けられた吊りボルトに固定される固定部と、横断面形状がC字状をなしていて側方に開口部を有する野縁受けを支持可能であって該固定部に連結する支持部と、を備え、前記支持部は、前記固定部から下方に向けて延在する第一側壁と、該第一側壁の下部に連結する底壁と、該底壁から上方に向けて延在して該第一側壁に対向し、前記野縁受けを支持した際に前記開口部が面する第二側壁と、を備え、前記第二側壁は、下方に向かうにつれて前記第一側壁に近づく向きに傾き、該第一側壁から離反する向きに撓み可能な傾斜保持片を有し、前記傾斜保持片は、前記野縁受けを前記支持部に嵌め込んだ際、該野縁受けの下端部を該傾斜保持片の下端部と前記底壁との間で挟み込んで該野縁受けを保持するものである。
【0010】
このような野縁受けハンガーにおいて、前記第一側壁は、前記第二側壁に向けて突出し、支持した前記野縁受けに係合する突起を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従う野縁受けハンガーは、支持部に対して野縁受けを上方から押し込むことによって、第二側壁よりも幅狭の傾斜保持片が撓むため、野縁受けを取り付ける際に要する押し込み力が少なくて済み、優れた施工性を得ることができる。また傾斜保持片は、下方に向かうにつれて第一側壁に近づく向きに傾くものであって、野縁受けを嵌め込んだ後は撓んでいた状態から復元して野縁受けの開口部の内側に迫り出すため、底壁との間で野縁受けを保持することができる。
【0012】
そして第一側壁に、第二側壁に向けて突出して野縁受けの上端部に係合する突起を設ける場合は、傾斜保持片と突起の両方で野縁受けを保持することができるため、野縁受けハンガーから野縁受けが脱落するなどの不具合がより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従う野縁受けハンガーの一実施形態を示す、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
図2】(a)は図1に示した野縁受けハンガーの平面図であり、(b)はその正面図であり、(c)はその背面図である。
図3図1の野縁受けハンガーに野縁受けを取り付ける状況について説明する図であって、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
図4図1の野縁受けハンガーに野縁受けを取り付けた状態を示す、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
図5】従来の野縁受けハンガーに野縁受けを取り付ける状況について説明する図であって、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
図6図5の野縁受けハンガーに野縁受けを取り付けた状態を示す、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
図7】取り付けた野縁受けの外れ難さについて説明する図であって、(a)は図5に示した従来の野縁受けハンガーを使用した場合の側面図であり、(b)は図1に示した野縁受けハンガーを使用した場合の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従う野縁受けハンガーの一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書等における「上」、「下」の位置関係は、躯体天井部から垂下される吊りボルトに野縁受けハンガーを固定した状態での向きをいう。
【0015】
まず、図3を参照しながら本実施形態の野縁受けハンガーで支持する野縁受けNについて説明する。図示したように野縁受けNは、横断面形状がC字状(コ字状)をなし、長尺状に形成されているものである。本実施形態においては、開口部N1を側方に向けた状態で高さが19mmになるC形チャンネル材を使用している。
【0016】
次に、図1図2を参照しながら本実施形態の野縁受けハンガー1について説明する。図示した野縁受けハンガー1は、所定の形状及び厚みとなる板材を、所定の位置で折り曲げることによって形成したものである。野縁受けハンガー1は、躯体天井部に設けられた吊りボルト(不図示)に固定される固定部2と、側面視においてU字状をなし、固定部2に連結するとともに野縁受けNを支持する支持部3とで構成されている。
【0017】
固定部2は、吊りボルトに固定された状態で水平方向に延在する矩形状の固定壁4と、固定壁4を貫通する円形の孔5とを備えている。また支持部3は、固定壁4の端部から下方に向けて延在する矩形状の第一側壁6と、第一側壁6の下端部に連結し、第一側壁6と同幅で水平方向に延在する底壁7と、底壁7と同幅で、底壁7の端部から上方へ向かうにつれて第一側壁6に近づく向きに若干傾いて延在して、第一側壁6に対向する第二側壁8と、第二側壁8の上端部に連結し、上方に向かうにつれて第一側壁6から離れる向きに傾く傾斜壁9とを備えている。
【0018】
また第一側壁6における上部には、第二側壁8に向けて突出する突起10が設けられている。本実施形態の突起10は、図1(a)に示すように第一側壁6の幅方向に沿って延在していて、図1(b)に示すように側面視において半円をなすように突出するものである。
【0019】
そして第二側壁8には、図2(b)に示すように、上下方向に延在して第二側壁8を切り欠く2つの縦溝11と、2つの縦溝11と下方でつながるとともに底壁7と第二側壁8との連結部を切り欠く1つの横溝12とが設けられていて、2つの縦溝11の間には、第二側壁8よりも幅狭であって、下方に向かうにつれて第一側壁6に近づく向きに傾く傾斜保持片13が設けられている(図1(a)、(b)参照)。
【0020】
このように形成される野縁受けハンガー1は、躯体天井部に設けられた複数の吊りボルトのそれぞれに対し、吊りボルトの下端部を孔5に挿通させるとともに、吊りボルトに螺合する一対のナット(不図示)によって固定壁4を挟持するようにして、それぞれの吊りボルトに固定される。そして野縁受けNは、複数の野縁受けハンガー1に対し架け渡されるようにして取り付けられる。ここで、野縁受けNを野縁受けハンガー1に取り付けるにあたっては、図3に示すように、支持部3の上方から野縁受けNを下方に向けて手で押し込む。ここで野縁受けNは、図示したように開口部N1が第二側壁8に面する向きで押し込まれるものとする。なお、野縁受けハンガー1には傾斜壁9が設けられていて、支持部3の真上に位置しない状態から野縁受けNを押し込んでも、野縁受けNはこの傾斜壁9に誘導されるため、第一側壁6と第二側壁8の間に入り込ませることができる。すなわち、野縁受けNと支持部3との位置が視認できないような作業環境(例えば腕を上げて野縁受けNの取り付けを行うような状況)であっても、取り付けが行い易くなる。
【0021】
そして、第一側壁6と第二側壁8の間に野縁受けNが入り込むと、図3(b)に二点鎖線で示すように、野縁受けNの下端部によって傾斜保持片13が第一側壁6から離反する向きに撓むため、図4に示すように野縁受けNを支持部3に嵌め込むことができる。このように本実施形態の野縁受けハンガー1では、第二側壁8よりも幅狭の傾斜保持片13を撓ませるようにしているため、図5に示した従来の野縁受けハンガー101に比して、より小さな力で野縁受けNを取り付けることができる。そして傾斜保持片13は、撓んでいた状態から復元することによって開口部N1の内側に迫り出すため、底壁7と傾斜保持片13の下端部によって野縁受けNの下端部が挟み込まれる状態となり、野縁受けNは野縁受けハンガー1に保持される。なお、底壁7と傾斜保持片13の下端部によって野縁受けNの下端部が挟み込まれる状態とは、傾斜保持片13の下端部が野縁受けNの下端部に接触している状態のみを意味するものではなく、これらの間にわずかな隙間があいている状態も含む。
【0022】
また、野縁受けNが支持部3に嵌め込まれている状態においては、図4(b)に示すように第一側壁6に設けた突起10が、野縁受けNの上端部に係合する。すなわち、傾斜保持片13と突起10の両方で野縁受けNを強固に保持することができる。
【0023】
ところで、野縁受けハンガー1に取り付けられた野縁受けNの外れ難さを確認したところ、図5に示す従来の野縁受けハンガー101よりも、外れに対する強度が強いことが認められた。この点を、図7を参照しながら説明する。図7(a)は、従来の野縁受けハンガー101に取り付けた野縁受けNに対して上向きの力を加える状況を示し、図7(b)は、本実施形態の野縁受けハンガー1に取り付けた野縁受けNに対して上向きの力を加える状況を示している。図7(a)に示すように従来の野縁受けハンガー101では、上向きの力を加えられた野縁受けNによって切り起こし110が押圧され、これによって第二側壁108が第一側壁106から離反する向きに撓んでいき、撓み量が一定量を超えたところで野縁受けNは外れることになる。一方、本実施形態の野縁受けハンガー1では、図7(b)に示すように、野縁受けNの下端部によって傾斜保持片13に上向きの力が加わるものの、図中に実線で示す矢印のように、その力の大部分は傾斜保持片13に沿う向きに作用し、傾斜保持片13を撓ませる向きの力は小さくなる。また第二側壁8は、第一側壁6に設けた突起10によって野縁受けNで押圧され、これによって第二側壁8が第一側壁6から離反する向きに撓むものの、第二側壁8が撓むと、第二側壁8に対して上端部が連結する傾斜保持片13は、野縁受けNの開口部N1に対して更に内側に迫り出すことになる。このような作用によって本実施形態の野縁受けハンガー1では、従来の野縁受けハンガー101よりも野縁受けNが外れ難くなり、より強固に野縁受けNを保持しておくことができる。
【0024】
以上、本発明について具体的な実施形態を示しながら説明したが、本発明に従う野縁受けハンガーは上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含まれる。例えば必要な強度が確保できる場合、第一側壁6に設けた突起10は省略してもよい。また、傾斜保持片13の数は図示例のように1つに限られず、これを複数設けてもよい。また上述した野縁受けハンガー1は、野縁受けNとして高さが19mmになるC形チャンネル材を使用するものであったが、各部の寸法を適宜変更することによって、他のサイズの野縁受けを取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1:野縁受けハンガー
2:固定部
3:支持部
4:固定壁
5:孔
6:第一側壁
7:底壁
8:第二側壁
9:傾斜壁
10:突起
11:縦溝
12:横溝
13:傾斜保持片
101:野縁受けハンガー(従来例)
102:固定部
103:支持部
104:固定壁
105:孔
106:第一側壁
107:底壁
108:第二側壁
109:傾斜壁
110:切り起こし
N:野縁受け
N1:開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7