(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】背負式作業機
(51)【国際特許分類】
B05B 9/08 20060101AFI20221005BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20221005BHJP
B05B 15/62 20180101ALI20221005BHJP
【FI】
B05B9/08
A01M7/00 M
B05B15/62
(21)【出願番号】P 2018212621
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】500270572
【氏名又は名称】株式会社麻場
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 優
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-122972(JP,A)
【文献】特開2017-012136(JP,A)
【文献】特開2014-030404(JP,A)
【文献】特開2017-029121(JP,A)
【文献】実開平02-055575(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第1675994(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A01M 1/00 - 99/00
B05B 1/00 - 3/18
B05B 7/00 - 9/08
B05B 12/16 - 12/36
B05B 14/00 - 16/80
A45F 3/00 - 3/00
A45F 3/02
A45F 3/04
A45F 3/06 - 3/12
A45F 3/14 - 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機本体部の左右上部に設けられた上部取付部に上部が取り付けられ、前記作業機本体部の左右下部に設けられた下部取付部に下部が取り付けられ、作業者の両肩にそれぞれ掛けられる左右一対の背負ベルトを有する背負式作業機において、
前記下部取付部が、前記作業機本体部の側壁から外方に突出して設けられ、後端側が高く前端側が低くなるように傾斜する取付片に形成され、
前記取付片に細長の挿通孔が形成され、
前記作業機本体部が、散布される薬液が収納される樹脂製のタンクと、前記タンク内の薬液を送出するポンプを含むポンプユニットを収納する樹脂製の収納ボックスを具備し、
前記取付片が前記タンクと前記収納ボックスの双方に設けられ、
前記タンクに設けられた前記取付片と前記収納ボックスに設けられた前記取付片とが、互いに各前記挿通孔を一致させて当接していて、
前記背負ベルトは前記下部が各前記挿通孔に挿通されると共に、下部先端側が各前記取付片の各前記挿通孔の縁片を巻き込むようにして折り返されて前記下部に固定されることにより、前記下部が前記作業機本体部の前方方向、かつ斜め上方を向くように、各前記取付片に取り付けられていることを特徴とする背負式作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体散布用の噴霧器等のような背負式作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
背負式作業機は、作業機本体部の左右上部に設けられた上部取付部に上部が取り付けられ、前記作業機本体部の左右下部に設けられた下部取付部に下部が取り付けられ、作業者の両肩にそれぞれ掛けられる左右一対の背負ベルトを有する。
この背負式作業機における背負ベルトは、その下部に金属製のナスカン(環状連結部)が取り付けられ、このナスカンを、下部取付部の係止孔に係止することにより、ワンタッチで作業機本体部に固定できるものが知られている(例えば特許文献1:特開2014-30404号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背負式作業機では、作業者の負担を軽減するため、出来る限りの軽量化が求められる。
この点、特許文献1のものでは、小さい部品とは言え、背負ベルトを固定するために金属製のナスカンを用いているため、その分重量が大きくなってしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、軽量化ができ、コストの低減が図れ、かつ背負い心地性のよい背負式作業機を提供することにある。
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、本発明に係る背負式作業機は、作業機本体部の左右上部に設けられた上部取付部に上部が取り付けられ、前記作業機本体部の左右下部に設けられた下部取付部に下部が取り付けられ、作業者の両肩にそれぞれ掛けられる左右一対の背負ベルトを有する背負式作業機において、前記下部取付部が、前記作業機本体部の側壁から外方に突出して設けられ、後端側が高く前端側が低くなるように傾斜する取付片に形成され、前記取付片に細長の挿通孔が形成され、前記作業機本体部が、散布される薬液が収納される樹脂製のタンクと、前記タンク内の薬液を送出するポンプを含むポンプユニットを収納する樹脂製の収納ボックスを具備し、前記取付片が前記タンクと前記収納ボックスの双方に設けられ、前記タンクに設けられた前記取付片と前記収納ボックスに設けられた前記取付片とが、互いに各前記挿通孔を一致させて当接していて、前記背負ベルトは前記下部が各前記挿通孔に挿通されると共に、下部先端側が各前記取付片の各前記挿通孔の縁片を巻き込むようにして折り返されて前記下部に固定されることにより、前記下部が前記作業機本体部の前方方向、かつ斜め上方を向くように、各前記取付片に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽量化ができ、コストの低減が図れ、かつ背負い心地性のよい背負式作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】背負ベルトの取付け状態を示す説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は背負式液体散布用の噴霧器10の背面図、
図2はその側面図、
図3はその斜視図、
図4は拡大図、
図5は背負ベルトの取付け状態を示す説明断面図である。
12はタンクであり、樹脂製であってブロー成形によって形成されている。タンク12の上部にタンク12内に液体(薬液)が注ぎ込まれる注入口が形成され、該注入口に注入口を開閉する蓋体13が螺着される。
【0012】
タンク12の背面側下部には凹部14が形成されている。凹部14は、下方および左右両側方に開放している。該凹部14に、タンク12内の薬液をホース(図示せず)を通じて噴口(図示せず)に送出するポンプユニット(図示せず)、およびバッテリ(図示せず)等が収容される収納ボックス15が取り付けられている。収納ボックス15は、樹脂製であって例えばインジェクション成形により形成される。
【0013】
16は、ポンプ駆動用のモータ(図示せず)をオン、オフするスイッチである。
また、17は、ポンプに接続されて薬液を噴口(図示せず)に送出する前記ホース(図示せず)が引き出される孔である。18は、タンク12内の薬液を排出するドレン孔を開閉するキャップである。
【0014】
凹部14は、タンク12の水平底面に対して約30°の角度で傾斜する上部壁面20aと、該上部壁面20a下端から水平底面に対して約60°の角度で傾斜する中間壁面20bと、該中間壁面20b下端から水平底面に向かってほぼ垂直に下降する下部壁面20cからなる壁面を有する。
【0015】
収納ボックス15は、凹部14の上部壁面20aに当接する上部壁面22a、凹部14の中間壁面20bに当接する中間壁面22b、および凹部14の下部壁面20cに当接する下部壁面22cからなる壁面を有する。収納ボックス15は、これら壁面において、図示しない固定ネジなどによりタンク12に固定される。
なお、タンク12と収納ボックス15により作業機本体が構成される。
【0016】
タンク12の左右上部に一対の上部取付部24a、24bが設けられている。
なお、本実施の形態において、左右とは、背負式噴霧器(噴霧器)10を背負う作業者から見ての左右方向を意味する。また、前方とは、作業者に背負われるタンク12の作業者の背中側を前方、その反対側を後方とする。
【0017】
上部取付部24a、24bは、タンク12の各肩部(側壁上部)に外方に向けて突出する片状に設けられ、この突出片に、外側に向けて低くなるように傾斜する挿通孔25が設けられている。
【0018】
この挿通孔25に背負ベルト26(
図2、
図5)の上部が挿通され、適宜固定手段により固定されることにより各背負ベルト26の上部が上部取付部24a、24bに固定される。挿通孔25が、外側に向けて低くなるように傾斜して設けられているから、この挿通孔25に挿通される背負ベルト26が作業者の肩部になじみ良く密着する。
【0019】
また、本実施の形態では、作業機本体の左右下部に背負ベルト26の下部が取り付けられる下部取付部28a、28bが設けられている。
下部取付部28aと、下部取付部28bとは左右対称に同じ構造に形成されている。
下部取付部28bについて説明する。
【0020】
下部取付部28bは、作業機本体部の側壁から外方に突出して設けられ、後端側が高く前端側が低くなるように傾斜する取付片29、30に形成されている。
具体的には、下部取付部28bは、タンク12の側壁であって、中間壁面20bに沿うようにして外方に耳状に突出して設けられた取付片29と、収納ボックス15の側壁であって、中間壁面22bに沿うようにして外方に耳状に突出する取付片30とからなる。
【0021】
取付片29には、一部下部壁面20cに沿って伸びるリブ部分29aを有する。すなわち、取付片29は「くの字」状に屈曲しており、これにより強度が増している。
下部取付部28aも取付片29、取付片30からなる。
【0022】
取付片29、取付片30には、背負ベルト26挿通用の細長の挿通孔31、32がそれぞれ設けられている。この挿通孔31、32は、タンク12の側壁面とほぼ平行になるように設けられている。したがって、挿通孔31、32は、タンク12に対して、後端側が高くなり、前端側が低くなるように上下方向に伸びる細孔状をなす。
【0023】
取付片29と取付片30とは、収納ボックス15がタンク12の凹部14に組み付けられた際、その挿通孔31、32を一致させて互いに当接するように構成されている。
【0024】
そして本実施の形態では、背負ベルト26はその下部が両挿通孔31、32に挿通されると共に、先端側が両取付片29、30の挿通孔31、32の縁片29b、30bを巻き込むようにして折り返されて、固定具34により長さ調節可能に取付片29、30に取り付けられることを特徴とする。
【0025】
固定具34はどのような固定具であってもよいが、
図4、
図5に示すように、漢字の「日」の字状をなす樹脂製の公知の固定具34を好適に用いることができる。すなわち、背負ベルト26の下部先端側を、固定具34の2つのスリットに通し、さらに挿通孔31、32に通し、縁片29b、30bを巻き込むようにして折り返し、折り返し部を再度固定具34の2つのスリットを通すようにして、固定具34の3本の横桟との間の抵抗によって、背負ベルト26を固定するようにするのである。
【0026】
前記のように、取付片29、30は、タンク12、収納ボックス15に対して、後端側が高く前端側が低くなるように傾斜した取付片29、30に形成されている。本実施の形態では、取付片29、30は、タンク12の水平底面に対して約60°の角度で傾斜するように設けられている。
【0027】
このような取付片29、30に、背負ベルト26を、挿通孔31、32の縁片29b、30bを巻き込むように取り付ければ、
図4に示すように、背負ベルト26は、タンク12の水平底面に対して約30°の角度で、前方、かつ斜め上方を向くように、取付片29、30に取り付けられる。
【0028】
したがって、背負ベルト26は、作業者の脇の下方向に向かって伸びることから、作業者の体の側面に沿うように自然に伸び、作業者は、心地よくタンク12を背負うことができる。
また、背負ベルト26は、タンク12に対して、側面の下部から斜め上方に引き上げる方向に力が作用するから、薬液が収納されて重量の大きなタンク12を好適に支え持つことができる。
【0029】
また、背負ベルト26は、タンク12、および収納ボックス15に対して斜め上方に伸びるから、タンク12を地面等に置いた際、背負ベルト26を地面とタンク12との間に挟み込んでしまうようなことがなく、タンク12を背負う際の作業性がよくなる。
【0030】
取付片29、30は、タンク12と収納ボックス15の双方に設けるのが強度上好ましいが、タンク12と収納ボックス15のいずれか一方に設けるのでもよい。
また、取付片29、30のタンク12に対する傾斜角度は上記に限定されることはない。タンク12の大きさにもよるが、タンク12の水平底面に対して、50°~70°位の傾斜角度とするのがよい。要は、タンク12を背負った際に、背負ベルト26が作業者の両脇の下方向に伸びるようにするとよい。
【0031】
以上のように、本実施の形態によれば、背負ベルト26の部位において金属製のものを用いないから軽量化ができ、コストの低減が図れる。また、背負ベルトの角度を上記のように設定することで背負い心地性のよい背負式作業機を提供することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 液体散布用の噴霧器(背負式作業機)
12 タンク
13 蓋体
14 凹部
15 収納ボックス
16 スイッチ
17 孔
18 キャップ
20a 22a 上部壁面
20b 22b 中間壁面
20c 22c 下部壁面
24a 24b 上部取付部
25 挿通孔
26 背負ベルト
28a 28b 下部取付部
29 30 取付片
31 32 挿通孔
34 固定具