IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オーエスエムの特許一覧

<>
  • 特許-マグネット式スクリーン装置 図1
  • 特許-マグネット式スクリーン装置 図2
  • 特許-マグネット式スクリーン装置 図3
  • 特許-マグネット式スクリーン装置 図4
  • 特許-マグネット式スクリーン装置 図5
  • 特許-マグネット式スクリーン装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】マグネット式スクリーン装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/64 20060101AFI20221005BHJP
   G03B 21/585 20140101ALI20221005BHJP
【FI】
G03B21/64
G03B21/585
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018235998
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020098256
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-10-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月20日・21日、オーエス展示会(株式会社オーエス主催)にて展示 平成30年10月17日、同志社中学校・高等学校に納品 平成30年11月9日、オーエス展示会(株式会社オーエス主催)にて展示 平成30年12月6日・7日、オーエス展示会(株式会社オーエス主催)にて展示
(73)【特許権者】
【識別番号】501475550
【氏名又は名称】株式会社オーエスエム
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】奥村 正之
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-008054(JP,A)
【文献】特開2002-284452(JP,A)
【文献】特開2006-168916(JP,A)
【文献】特開2005-169852(JP,A)
【文献】特開平09-058192(JP,A)
【文献】実公昭48-043494(JP,Y2)
【文献】特開2002-003084(JP,A)
【文献】登録実用新案第3195909(JP,U)
【文献】特開2016-038475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L1/00-12/02
15/00-27/04
B65H75/00-75/32
G03B21/00-21/10
21/12-21/30
21/56-21/64
33/00-33/16
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側にスクリーン面を有するとともに、後面側に磁力を有するスクリーンシートと、
該スクリーンシートを巻き取る巻取ロールと、
前記スクリーンシートの磁力よりも強い磁力を有し、貼付状態で前記スクリーン面の前
記巻取ロール側に位置することで、前記スクリーンシートを安定した状態で貼付すること
ができる固定用磁性体と、
貼付状態で該固定用磁性体又は前記スクリーンシートと貼付対象面との間に隙間を形成
する密着阻害手段とを備え、
前記密着阻害手段として、前記固定用磁性体又は前記スクリーンシートの貼付面側に小
突起を設けてなることを特徴とするマグネット式スクリーン装置。
【請求項2】
前記固定用磁性体、及び、前記密着阻害手段、前記スクリーンシートの略全幅に亘って設けてなる請求項1記載のマグネット式スクリーン装置。
【請求項3】
前記小突起が、前記固定用磁性体を前記スクリーンシートに取り付けるための固定手段
によって形成されてなる請求項1又は2記載のマグネット式スクリーン装置。
【請求項4】
前記固定手段として、前記固定用磁性体を前記スクリーンシートに縫糸で縫い付けて固
定し、該縫糸が前記小突起を形成してなる請求項記載のマグネット式スクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒板等の壁面に用いるマグネット式スクリーン装置に関わり、更に詳しくは、湾曲する黒板等であっても皺や弛みを生じずスクリーンシートを綺麗に貼ることができ、また、スクリーンシートを黒板等から剥がすときには大きな力を必要としないマグネット式スクリーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マグネット式スクリーンとして、磁性を帯びる投映部材を巻取り及び引延し可能な巻き取り手段と、巻き取られた投映部材を収納する収納部を備えたロール式のマグネット式スクリーンがある(特許文献1参照)。
【0003】
このマグネット式スクリーンは、先端部を手でつかんで収納部から引き出し、黒板に投映部材の投映面の裏面を合わせると磁力により黒板に固定され、手を離してもその固定状態が保持されるものであり、これにより、黒板が通常のスクリーンと同様に使用することが可能となるものである。
【0004】
しかし、このようなマグネット式スクリーンでは、貼付対象面と筐体の投影部材の出入口との、貼付面に対する垂直方向のギャップによって、投影部材の貼付作業中に、巻取ロールと投影部材との間に張力が生じ、投影部材の上端部分を綺麗に貼り付けることができず、また、貼り付けることができたとしても張力の影響によって投影部材に皺や弛みが生じることも多く、フラットで綺麗なスクリーン面を形成することが困難であった。このような課題と解決するものとして、スクリーン面よりも上側の貼着面に、帯形状のマグネットラバーを設けたものが考えられた。しかし、このようなマグネットラバーを用いて、一部分の磁力を単に強くすると、マグネット式スクリーンを剥がすときに大きな力が必要となり、取外し作業に手間がかかるものとなるとともに、マグネットシートに大きな負担が生じ、シート自体の歪みや破損にもつながってしまうものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3093287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み解決しようとするところは、スクリーンシートの一部分に他の部分よりも強い磁力を備えることで湾曲する黒板でもスクリーンシートを皺や弛みなく綺麗に貼りつけることができるうえ、黒板等から取り外すときには大きな力を必要としないマグネット式スクリーン装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマグネット式スクリーン装置は、前記課題解決のために、前面側にスクリーン面を有するとともに、後面側に磁力を有するスクリーンシートと、該スクリーンシートを巻き取る巻取ロールと、前記スクリーンシートの磁力よりも強い磁力を有し、貼付状態で前記スクリーン面の前記巻取ロール側に位置することで、前記スクリーンシートを安定した状態で貼付することができる固定用磁性体と、貼付状態で該固定用磁性体又は前記スクリーンシートと貼付対象面との間に隙間を形成する密着阻害手段とを備え、前記密着阻害手段として、前記固定用磁性体又は前記スクリーンシートの貼付面側に小突起を設けてなるものである。
【0008】
この構成によれば、強い磁力を有する固定用磁性体でスクリーンシートの巻取ロール側を強固に貼付することができ、スクリーンシートを綺麗に貼りつけることができるとともに、密着阻害手段によって取外し作業を容易に行なうことができるうえ、密着阻害手段を容易に構成することができ、安価に製造することができるものとなる。また、スクリーンシートの貼付け作業において、黒板とスクリーンシートとの間に入る空気を、小突起間の隙間から抜くことができ、より簡易に綺麗なスクリーン面を形成することができる。
【0009】
ここで、前記固定用磁性体、及び、前記密着阻害手段又は前記屈曲案内手段を、前記スクリーンシートの略全幅に亘って設けてなると好ましい。
【0010】
この構成によれば、スクリーンシートの略全福に亘ってスクリーンシートをより綺麗に貼り付けることができる。
【0013】
さらに、前記小突起が、前記固定用磁性体を前記スクリーンシートに取り付けるための固定手段によって形成されてなるものであってもよい。
【0014】
この構成によれば、密着阻害手段を容易に構成することができ、より安価に製造することができる。
【0015】
さらにまた、前記固定手段として、前記固定用磁性体を前記スクリーンシートに縫糸で縫い付けて固定し、該縫糸が前記小突起を形成してなるものとすることができる。
【0016】
この構成によれば、縫糸による縫い付けによって固定用磁性体を固定するとともに、小突起を構成することができ、更に簡易な構成とすることができ、製造上においても有利なものとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るマグネット式スクリーン装置によれば、スクリーンシートの一部分に他の部分よりも強い磁力を備えることで、湾曲する黒板であってもスクリーンシートを皺や弛みなく綺麗に貼りつけることができるうえ、大きな力を必要とせず黒板等から取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るマグネット式スクリーン装置を黒板に設置した状態を示す斜視図である。
図2】同じくマグネット式スクリーン装置の構成を示す正面図である。
図3】同じくマグネット式スクリーン装置の設置状態を示す側面図である。
図4】同じくマグネット式スクリーン装置の設置状態におけるマグネットラバー等の部分拡大図であって、(a)はマグネットラバーの貼付姿勢、(b)はマグネットラバーの屈曲姿勢を示すものである。
図5】本発明の他の実施形態に係るマグネット式スクリーン装置の構成を示すマグネットラバー等の部分拡大図であって、(a)はマグネットラバーの貼付姿勢、(b)はマグネットラバーの屈曲姿勢を示すものである。
図6】本発明の更に他の実施形態に係るマグネット式スクリーン装置の構成を示すマグネットラバー等の部分拡大図であって、(a)はマグネットラバーをスクリーンシートと上黒部との間に介装されたもの、(b)はマグネットラバーの貼付面に小突起を一体的に設けたものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
【0022】
本明細書において、スクリーン面側をマグネット式スクリーン装置の前面、これの反対面である貼付面側をマグネット式スクリーン装置の後面とする。また、スクリーン面の巻取ロール側とは、スクリーン面の領域内外を問わず、巻取ロールに近い側の部分というものとし、具体的には、スクリーン面内の巻取ロールに近い方の端部、スクリーン面よりも巻取ロールに近い部分、及び、これらの近傍領域全てを含み、表面側、裏面側を問わないものとする。さらに、屈曲姿勢とは、所定部分が屈曲して貼付対象面から離間することで、貼付姿勢よりも貼付対象面に作用する磁力が小さくなる姿勢といい、屈曲案内手段とは、貼付姿勢から屈曲姿勢への姿勢変更を案内するものであって、この案内は所定の位置での屈曲を案内するものをいう。また、磁性体とは、磁性を帯びた物体を広くいうものとする。
【0023】
本実施形態に係るマグネット式スクリーン装置1は、図1乃至図3に示すように、黒板Bの上桟枠Baに取り付けることで黒板Bの一部を映写用のスクリーンとしても使用することができるものであって、前面側にスクリーン面3を有するとともに後面側に磁力を有するスクリーンシート2と、スクリーンシート2を巻き取る巻取ロール5と、この巻取ロール5を回転可能に支持、収容する筐体7とが設けられたものであり、スクリーンシート2と巻取ロール5との間には、上黒部4が設けられている。また、スクリーンシート2の上辺部の貼付面側には、固定用磁性体として帯状のマグネットラバー9がスクリーンシート2の全幅に亘って設けられている。
【0024】
ここで、マグネット式スクリーン装置1は、映写用のスクリーンとして使用するものであるが、これに限定されず、例えば電子黒板やホワイトボードとしても使用することができる。また、貼付対象面の形状は、図1に示すような湾曲(凹曲)する面に限らず、平坦面や凸曲する面等の他の形状のものであってもよい。
【0025】
スクリーンシート2は、前面側がスクリーン面3として、後面側はスクリーンシート2が黒板等に貼付可能な磁力を有するものとして構成されている。スクリーンシート2の上側には、スクリーンとして使用しない上黒部4が連接され、この上黒部4とスクリーンシート2との連接部分にマグネットラバー9が設けられている。
【0026】
スクリーン面3は、スクリーンシート2の前面側に構成されている。このスクリーン面3にプロジェクターから投影された映像が映し出されて、使用者は映像を視聴することができる。なお、スクリーン面3は、図示するようなスクリーンシート2の前面側の全領域に設けられたものに限らず、スクリーンシート2の一部や両面に設けられたものであってもよく、又、別体を用いて構成されたもの等、他の全ての態様のものを採用することができる。
【0027】
上黒部4は、スクリーンシート2の上側に、両部材の端部が互いに重なる状態で縫合され固定されている。この縫合部分は、前側が上黒部4、後側がスクリーンシート2となるように重ね合せられており、仮に縫糸6よりも上側のスクリーンシート2が垂れてしまうこととなっても、これが使用者側となる前面側には表れず、スクリーン面3を邪魔することとならないため、スクリーンとして好ましい仕様となっているが、前側がスクリーンシート2、後側が上黒部4となる構成としてもよい。なお、この上黒部4は伸縮性を有することで、貼付対象面と、筐体7のスクリーンシート2の出入口とのギャップを解消するものとなっているが、このような構成は必須ではなく、他の構成によってギャップを解消してもよい。
【0028】
巻取ロール5は、円筒形状であって筐体7内に収容されており、この巻取ロール5には、スクリーンシート2を巻き取る方向に回転付勢するバネ部材が取付けられている。このバネ部材により、スクリーンシート2は常に又は必要時に、巻取ロール5から巻き取る方向の力を受け、少なくともスクリーンシート2の自重によってスクリーンシート2が繰出されないように回転規制されている。なお、このような構成による回転規制は、ロール式スクリーン装置では一般的なものであるが、この回転規制によって、スクリーンシート2の貼付け作業では、黒板Bに先に貼り付けたスクリーンシート2の下部と、回転規制されている巻取ロール5との間で張力が生じ、スクリーンシート2の上端部をスクリーンシート2の磁力のみで綺麗に貼り付けることは困難な状態となる。このため、マグネット式スクリーン装置1では、スクリーンシート2の上端部には、固定用磁性体として帯状のマグネットラバー9を設けている。このマグネットラバー9は、スクリーンシート2に縫糸6で縫い付けられて固定されている。また、スクリーンシート2の自動又は半自動の回転手段が設けられることで、利便性の高いものとなるが、具体的な構成として、例えば電動式の駆動装置を採用することができる。
【0029】
縫糸6は、上黒部4とスクリーンシート2とマグネットラバー9とを縫合し、これらを一体的に固定している。この縫糸6は、これらに対してミシン縫いされることで、最前面及び最後面にミシン目を形成し、このミシン目に形成された縫糸6が、マグネットラバー9の領域内に複数の列状の小突起として構成され、密着阻害手段として作用するものとなっている。ここで、上黒部4とスクリーンシート2とマグネットラバー9は、縫合されるとともに、互いが接着剤で接着されているため、これらは縫合部分以外であっても一体となっている。この接着は、縫合前の仮固定にも利用され、製造を容易に行なうことができるものとなっているが、このような接着は必須ではなく、縫合のみによる一体化を行なったものによれば、各構成部材の自由度を高いものとし、巻取ロール5への巻付けを行なうロール式のマグネット式スクリーンとして、より好適なものとすることができる。
【0030】
また、縫糸6は、帯状のマグネットラバー9の幅方向略中央に二本平行して設けられている。この二本の縫糸6,6によってマグネットラバー9は、幅方向に上下に分けられ、貼着状態においては、図4(a)に示すように、マグネットラバー9が上部分9aと下部分9bとに分かれて磁着していることとなる。また、上部分9aと下部分9bとの間の中間部分9cについては、二本の縫糸6,6によって貼着部分から離間するものとなるものの、上部分9a及び下部分9bよりも小さな磁力を貼着対象面に作用するものとなっている。
【0031】
マグネットラバー9を取り外すときには、スクリーンシート2を手前側に引っ張ることで、図4(b)に示すように、まずマグネットラバー9の下部分9bが外れ、続けて中間部分9c、最後に上部分9aが外れることで、段階的に取り外すことなり、全てを一度に剥がす必要はなく、大きな力を必要としない。このように、縫糸6は、屈曲案内手段としても効果を奏するものとなっている。なお、縫糸6は、磁性を有しない糸材よりなるものとすることで、中間部分9cの磁着力をより小さくするものとなっているが、このような素材に限らず、磁性を有するものであってもよいし、また、縫糸6の本数や縫い方についても、マグネット式スクリーン装置1では、二本平行に縫い付けられることで効率良く安定した磁着状態を得るものとしているが、一本や三本以上であってもよく、平行でない状態で縫い付けられたものであってもよい。
【0032】
マグネットラバー9は、帯板状の磁性を帯びたラバー体であって、スクリーンシート2よりも強い磁力を有するものである。スクリーンシート2の端部に設けられたマグネットラバー9が、スクリーンシート2よりも強い磁力を有することで、貼付状態のスクリーンシート2の上端部が上黒部4によって上斜め前方に引っ張られても、黒板Bから剥がれることがなく、皺なども生じず綺麗なスクリーン面3を形成、維持することができる。また、このマグネットラバー9は可撓性を有するため、凹曲する黒板に対しても問題なく密着し、強く磁着することができるものとなっている。このようにマグネットラバー9は、スクリーンシート2の特に端部が黒板Bから剥がれることを防止するため、強い磁力を有するものとなっているにも関わらず、このマグネットラバー9は、後述するように密着阻害手段を備えることで、大きな力を必要とせず容易に黒板Bから取り外すことができる。なお、この密着阻害手段の代わりに姿勢変更手段が設けられたものであっても同様の効果を奏するものとなる。
【0033】
マグネット式スクリーン装置1における密着阻害手段は、マグネットラバー9の貼付面側に設けられた複数の小突起状の縫糸6で構成されている。マグネットラバー9の貼付面側に複数の小突起が設けられることで、貼付状態にあるマグネットラバー9を剥がす際に、これらの小突起が支点となって力が作用するため、マグネットラバー9の取外し作業を容易に行ない得るものとなっている。つまり、密着阻害手段を備え、且つ、マグネットラバー9が可撓性を有することによって、大きな力を必要とせず容易に取外し作業を行なうことができるマグネット式スクリーン装置1となっている。また、密着阻害手段としては、図示するように縫目状の複数の小突起に限らず、他の構成を採用することができるが、このような小突起のように、貼着状態でマグネットラバー9の長手方向における隙間を形成し、マグネットラバー9と黒板Bとの間を上下方向に通気するものとして構成したものによれば、スクリーンシート2の貼付け作業において、スクリーンシート2と黒板Bとの間に入った空気を上方(巻取ロール5への方向)に抜くことができ、スクリーンシート2の貼着作業をより簡易的なものとすることができる。
【0034】
また、固定用磁性体は、縫糸6が直線状に設けられていることで、取外し作業において、貼付姿勢から、貼着対象面に作用する磁力が小さくなる屈曲姿勢に変更する屈曲案内手段として機能するものとなっている。なお、屈曲案内手段は、小突起以外にも、凹条や段部設けられることで構成されたものであってもよい。
【0035】
筐体7は細長い長方体形状であって、スクリーンシート2を繰り出す側の面には、スクリーンシート2よりも大きい寸法の幅と厚みを有するスリットが設けられており、このスリットからスクリーンシート2が繰り出される。また、このスリットは、スクリーンシート2の先端側に設けられた下端バー8よりも小さい寸法の幅で形成されている。このため、スクリーンシート2の巻取時に、スクリーンシート2を全て巻き取ると、この下端バー8がスリットを通過できず筐体7に当接することで巻取りが完了する。
【0036】
図5には、本発明に係るマグネット式スクリーン装置の固定用磁性体の別の実施形態を示す。
【0037】
図5(a)に示すように、この固定用磁性体9Aは、貼着面に長手方向に延びる複数の凹条10,10を設けてなる剛性を有する磁性体であって、この凹条10内を縫糸6で縫合している。このため、縫糸6は、貼付対象面である黒板Bには接触せず、より安定した貼着状態を得ることができる。この構成では、縫糸6は密着阻害手段としては機能しないが、凹条10が屈曲案内手段として機能するものとなる。
【0038】
固定用磁性体9Aを取り外すときには、スクリーンシート2を手前に引っ張って黒板Bから引き剥がし、続けてスクリーンシート2を引っ張ることで、図5(b)に示すように、まず固定用磁性体9Aが屈曲して、下部分が黒板Bから離間し、中間部及び上部分が黒板Bに磁着している状態となる。このとき、固定用磁性体9Aは、下部分が離間するように屈曲し第一屈曲姿勢となっている。次にスクリーンシート2を更に引っ張ることで、固定用磁性体9Aの中間部も黒板Bから離間し、固定用磁性体9Aは第二屈曲姿勢となる。最後に、残りの上部も黒板Bから離間させることで、固定用磁性体9Aを黒板から剥がすことができる。このように、固定用磁性体9Aでは、二本の凹条10,10が屈曲案内手段として機能することで、黒板Bからの離間が段階的に行なわれるものとなり、取外し作業に必要となる力は小さくすむものとなっている。
【0039】
図6には、本発明に係るマグネット式スクリーン装置の固定用磁性体の更に別の実施形態を示す。
【0040】
図6(a)に示すように、固定用磁性体9Bは、スクリーンシート2と上黒部4との間に介装された剛性を有する磁性体であり、この構成では、縫糸6による小突起は、スクリーンシート2の貼着面に設けられるものとなる。このような構成によれば、スクリーンシート2を取り外す際、スクリーンシート2を手前側に引っ張ることで、固定用磁性体9Aを下側から順次引き剥がすことができ、スクリーンシート2の取外しをよりスムーズに行うことができる。つまり、この縫糸6は、密着阻害手段及び姿勢変更手段として機能するものとなっている。
【0041】
図6(b)に示すように、固定用磁性体9Cは、貼着面に複数の小突起11が設けられた剛性を有する磁性体である。この小突起11は、固定用磁性体9Cに一体的に形成されているため、当然に磁性を有するが、このような構成であっても、これらの小突起11が支点となってスクリーンシート2の取外し作業は容易に行なうことができる。つまり、この小突起11は、密着阻害手段及び姿勢変更手段として機能するものとなっている。また、この固定用磁性体9Cでは、スクリーンシート2と上黒部4と固定用磁性体9Cは、接着剤でのみ固定されており、縫糸による縫合はなされていない。
【0042】
何れの実施形態においても、その他の構成については、マグネット式スクリーン装置1と同様であり説明は省略する。
【0043】
以上の説明においては、スクリーンシートはシート全体に貼着力を有するものを示したが、スクリーンシートはこのようなものに限定されるものではなく、部分的に磁力や接着力等を有するものとすることで、取り外し易いものとして構成してもよい。また、筐体がスクリーンシートの上側に配置する状態で使用するものに限らず、筐体が下側に配置されスクリーンシートを上方に展張するものや、筐体が左右何れか一方に配置されスクリーンシートを左右方向に展張するものであってもよい。さらに、取付部については、黒板等の既設の設備に固定するものでなくてもよく、例えば、取付対象に左右方向にのびるレール部材を固定し、このレールにスライド可能に取付部を係合させてなるものとすると、マグネット式スクリーン装置をレール部材の範囲内で移動させることができ、設置場所をより自由に設定することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 マグネット式スクリーン装置
2 スクリーンシート
3 スクリーン面
4 上黒部
5 巻取ロール
6 縫糸
7 筐体
8 下端バー
9 マグネットラバー
9a 上部分
9b 下部分
9c 中間部分
9A 固定用磁性体(介装型)
9B 固定用磁性体(切欠き型)
9C 固定用磁性体(小突起一体型)
10 凹条
11 小突起(一体型)
B 黒板
Ba 上桟枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6