(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】重量測定装置
(51)【国際特許分類】
G01G 21/24 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
G01G21/24 Z
(21)【出願番号】P 2019046250
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 広拓
(72)【発明者】
【氏名】市原 聖也
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕之
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-145389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0271931(US,A1)
【文献】特開2003-149038(JP,A)
【文献】特開2014-190780(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0101870(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 21/24
G01G 19/44
G01L 1/22
G01L 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象が載置される上面カバーと、
前記上面カバーに載置された前記測定対象の荷重を検出するロードセルと、
前記ロードセルを支持するブリッジと、
前記上面カバーに載置された前記測定対象の荷重を受ける受け部材と、
前記受け部材の下面側に設けられた底面カバーと、を備え、
前記ブリッジは、前記底面カバーに対する前記ブリッジの傾きを変更可能にするための支点であり、前記受け部材の上面に接するピボットを有し、
前記受け部材の下面と前記底面カバーの上面との間に、前記受け部材が前記底面カバーに対して水平方向に動くことを可能にする滑り部
を備える重量測定装置。
【請求項2】
前記滑り部の摩擦係数は、前記上面カバーに載置された前記測定対象の荷重により前記上面カバーが撓んだときに、前記ピボットと前記受け部材との間に生じる摩擦力よりも、前記受け部材と前記底面カバーとの間に生じる摩擦力が小さい関係になるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の重量測定装置。
【請求項3】
前記滑り部は、前記受け部材の下面及び前記底面カバーの上面の少なくとも一方に貼り付けられた樹脂製のシートであることを特徴とする請求項2に記載の重量測定装置。
【請求項4】
前記樹脂製のシートは、フッ素樹脂製のシートであることを特徴とする請求項3に記載の重量測定装置。
【請求項5】
前記滑り部は、前記受け部材の下面及び前記底面カバーの上面の少なくとも一方にコーティングされた樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の重量測定装置。
【請求項6】
前記コーティングされた樹脂は、フッ素樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の重量測定装置。
【請求項7】
前記滑り部は、めっき処理が施された前記受け部材の下面及び前記底面カバーの上面の少なくとも一方であることを特徴とする請求項2に記載の重量測定装置。
【請求項8】
前記受け部材は、前記ピボットが接する板状部と、前記板状部の外縁に設けられた弾性部と、前記弾性部の外縁に設けられた外枠部とを備え、
前記板状部と前記弾性部とは、前記底面カバーに取り付けられておらず、前記外枠部のみが、前記底面カバーに取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の重量測定装置。
【請求項9】
前記ブリッジを前記底面カバー側に取り付けるための板バネをさらに備え、
前記板バネは、その外縁部が前記底面カバーに固定され、弾性変形可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の重量測定装置。
【請求項10】
前記板バネは、前記上面カバー側に連結されており、
前記底面カバーが前記上面カバーから所定の距離以上離れるのを防止するための乖離防止部材をさらに備え、
前記所定の距離は、前記底面カバー側に固定された前記板バネが伸びきってしまわない距離であることを特徴とする請求項9に記載の重量測定装置。
【請求項11】
前記上面カバーと結合する補強カバーをさらに備え、
前記補強カバーは、金属製上面カバーと、金属製底面カバーと、これらの金属製上面カバーと金属製底面カバーとの間に設けられた樹脂層とを備え、
前記金属製上面カバーの下面及び前記金属製底面カバーの上面には、
複数の凹部が形成されており、
前記
複数の凹部に、前記樹脂層の樹脂が入り込んで、前記金属製上面カバーと前記樹脂層と前記金属製底面カバーとが接合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の重量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の重量を測定する重量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体等の測定対象の重量を測定する重量測定装置が知られている。一般に、重量測定装置は、測定対象の荷重が伝達される1つ以上(体重計の場合は、通常、4つ)のロードセルを有している。ロードセルは、測定対象の荷重が伝達されて変形する起歪体と、この起歪体の変形に応じた信号を生成する歪みゲージとを有している。基板上の処理回路は、上記の歪みゲージから出力された信号に基づいて、測定対象の重量を計算する。
【0003】
従来の重量測定装置において、
図19に示すように、ブリッジ223と脚210との間にゴム208を挟んで、上面カバー202に測定対象が載置されたときに、脚210からの荷重(上向きの力)を、ゴム208とブリッジ223とを介して、ロードセル205(の可動腕部)に伝えるようにした重量測定装置200がある(例えば、特許文献1参照)。なお、
図19中の242の部材は、ブリッジ223と一体に形成されたボス(後述する
図2のボス42と同等の部材)であり、ロードセル205の下面205aとブリッジ223の上面223aとの間の間隔を保持するスペーサーの役割を果たす。この重量測定装置200では、
図19の右側に示すように、上面カバー202及び筐体203に測定対象の荷重がかかったときに、荷重による上面カバー202及び筐体203の撓みに伴って、ロードセル205も傾くが、この傾きに合わせてゴム208が水平方向に変形しつつ少し潰れて、ゴム208の上面が傾くことにより、ロードセル205の傾きに合わせてブリッジ223が傾いて、ブリッジ223の上面223aが、ロードセル205の下面205aと平行な状態を維持することができる。
【0004】
この重量測定装置200によれば、上記のように、ブリッジ223の上面223aが、ロードセル205の下面205aと平行な状態を維持することができるので、ブリッジ223からロードセル205(の可動腕部)に対して、垂直方向上向きの力を安定してかけることができる。従って、上面カバー202及び筐体203の撓み具合に関わらず、正確なロードセル205(の歪みゲージ)からの出力を得ることができるので、測定対象の重量を正確に測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の重量測定装置200のように、ブリッジ223と脚210との間にゴム208を挟んで、このゴム208を用いて、ブリッジ223の上面223aが、ロードセル205の下面205aと平行な状態を維持するようにするためには、ゴム208を、ある程度厚いゴム(例えば、5mm)にする必要があるので、装置全体の薄型化を図ることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、上面カバー等の撓み具合に関わらず、正確なロードセルからの出力を得ることができ、測定対象の重量を正確に測定することが可能で、しかも、装置全体の薄型化を図ることが可能な重量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の重量測定装置は、測定対象が載置される上面カバーと、前記上面カバーに載置された前記測定対象の荷重を検出するロードセルと、前記ロードセルを支持するブリッジと、前記上面カバーに載置された前記測定対象の荷重を受ける受け部材と、前記受け部材の下面側に設けられた底面カバーと、を備え、前記ブリッジは、前記底面カバーに対する前記ブリッジの傾きを変更可能にするための支点であり、前記受け部材の上面に接するピボットを有し、前記受け部材の下面と前記底面カバーの上面との間に、前記受け部材が前記底面カバーに対して水平方向に動くことを可能にする滑り部を備える重量測定装置である。
【0009】
この重量測定装置において、前記滑り部の摩擦係数は、前記上面カバーに載置された前記測定対象の荷重により前記上面カバーが撓んだときに、前記ピボットと前記受け部材との間に生じる摩擦力よりも、前記受け部材と前記底面カバーとの間に生じる摩擦力が小さい関係になるように設定されていることが望ましい。
【0010】
この重量測定装置において、前記滑り部は、前記受け部材の下面及び前記底面カバーの上面の少なくとも一方に貼り付けられた樹脂製のシートであってもよい。
【0011】
この重量測定装置において、前記樹脂製のシートは、フッ素樹脂製のシートであってもよい。
【0012】
この重量測定装置において、前記滑り部は、前記受け部材の下面及び前記底面カバーの上面の少なくとも一方にコーティングされた樹脂であってもよい。
【0013】
この重量測定装置において、前記コーティングされた樹脂は、フッ素樹脂であってもよい。
【0014】
この重量測定装置において、前記滑り部は、めっき処理が施された前記受け部材の下面及び前記底面カバーの上面の少なくとも一方であってもよい。
【0015】
この重量測定装置において、前記受け部材は、前記ピボットが接する板状部と、前記板状部の外縁に設けられた弾性部と、前記弾性部の外縁に設けられた外枠部とを備え、前記板状部と前記弾性部とは、前記底面カバーに取り付けられておらず、前記外枠部のみが、前記底面カバーに取り付けられていてもよい。
【0016】
この重量測定装置において、前記ブリッジを前記底面カバー側に取り付けるための板バネをさらに備え、前記板バネは、その外縁部が前記底面カバーに固定され、弾性変形可能に構成されていてもよい。
【0017】
この重量測定装置において、前記板バネは、前記上面カバー側に連結されており、前記底面カバーが前記上面カバーから所定の距離以上離れるのを防止するための乖離防止部材をさらに備え、前記所定の距離は、前記底面カバー側に固定された前記板バネが伸びきってしまわない距離であってもよい。
【0018】
この重量測定装置において、前記上面カバーと結合する補強カバーをさらに備え、前記補強カバーは、金属製上面カバーと、金属製底面カバーと、これらの金属製上面カバーと金属製底面カバーとの間に設けられた樹脂層とを備え、前記金属製上面カバーの下面及び前記金属製底面カバーの上面には、多数の微細な凹部が形成されており、前記多数の微細な凹部に、前記樹脂層の樹脂が入り込んで、前記金属製上面カバーと前記樹脂層と前記金属製底面カバーとが接合されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、測定対象の荷重により上面カバーが撓んだときに、ブリッジのピボットと受け部材の上面との間に生じる摩擦力により、ピボットが受け部材に対して水平方向に動くことができなくなった場合でも、受け部材の下面と底面カバーの上面との間に設けた滑り部の働きにより、受け部材を底面カバーに対して水平方向に動かすことができるので、ピボットを、底面カバーに対して水平方向に動かして、底面カバーに対するブリッジの傾きを変更することができる。これにより、測定対象の荷重により上面カバーが撓んだときに、上面カバーが撓んでいないときにおける、ブリッジの上面とロードセルの下面との傾きを維持する(例えば、ブリッジの上面がロードセルの下面と平行な状態を維持する)ことができるので、ブリッジからロードセルの下面に対して、垂直方向上向きの力を安定してかけることができる。従って、上面カバーの撓み具合に関わらず、正確なロードセルからの出力を得ることができるので、測定対象の重量を正確に測定することができ、しかも、特許文献1に示す重量測定装置と異なり、ブリッジの下に厚いゴムを配設する必要がないので、装置全体の薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態における体組成計の分解斜視図。
【
図2】同体組成計のロードセル周辺の部材の詳細分解図。
【
図3】同体組成計のロードセルを斜め上の方向から見た斜視図。
【
図4】同ロードセルを斜め下の方向から見た斜視図。
【
図7】
図6のA-A線断面における円C1の部分の断面図。
【
図9】被験者の荷重がかかっていない時における比較例の体組成計の、
図8のA´-A´線断面図。
【
図11】被験者の荷重がかかっている時における比較例の体組成計の、
図8のA´-A´線断面図。
【
図13】被験者の荷重がかかっていない時における本体組成計の、
図6のA-A線断面図。
【
図15】被験者の荷重がかかっている時における同体組成計の、
図6のA-A線断面図。
【
図17】
図6のA-A線断面における円C2の部分の断面図。
【
図18】本発明の変形例3の体組成計における脚部周辺の部分の断面図。
【
図19】従来の重量測定装置の一例におけるロードセル周辺の構成の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、本発明の重量測定装置が、体組成計である場合の例について、説明する。
【0022】
図1は、本実施形態による体組成計の全体の分解斜視図である。体組成計1は、被験者の重量を測定する機能と、被験者の体脂肪率、筋肉量、推定骨量、内臓脂肪レベル、基礎代謝量、体水分率等の体組成を測定する機能とを有している。
図1に示すように、体組成計1は、その筐体として、被験者が載置される樹脂カバー2(請求項における「上面カバー」)と、金属と樹脂とを結合した補強カバー3と、ボトムカバー4(請求項における「底面カバー」)とを備えている。上記の補強カバー3の詳細については、後述するが、この補強カバー3は、樹脂カバー2と結合されて、樹脂カバー2の強度を高めるための部材である。ボトムカバー4は、鋼板等の金属製の材料で形成されている。また、
図1に示すように、体組成計1は、ボトムカバー4の底面の四隅に配置された脚10を備えている。
【0023】
体組成計1は、
図1に示すように、樹脂カバー2の上面に、被験者の生体電気インピーダンスを測定するための4つの電極11を備えている。これらの電極11には、被験者の左右両足の足裏に電流を印加するための、左右の電流供給用電極と、これらの電極からの電流の印加によって被験者の両足の足裏に生じた電位差に相当する電圧を検出するための、左右の電圧検出用電極とが含まれる。また、体組成計1は、表示部を備えている。この表示部は、樹脂カバー2の上面に設けられた表示窓12と、補強カバー3の上面に設けられた凹部13に取り付けられる不図示のLCDモジュールとから構成される。この表示部には、被験者の体重や体組成等が表示される。
【0024】
また、補強カバー3の凸部14の裏面側に設けられた凹部には、不図示の基板が取り付けられている。この基板は、被験者の重量の測定処理や、被験者の各種の体組成に関する測定処理等を行う処理回路等を備えている。上記の補強カバー3の上面側に配されたLCDモジュールは、補強カバー3の底面側に配された基板に接続されている。より具体的に言うと、LCDモジュールと一体的に設けられたフレキシブルケーブルが、補強カバー3の中央部に設けられた貫通孔18に通されて、フレキシブルケーブルの先端が、補強カバー3の底面側の基板に接続されている。また、略矩形の補強カバー3の四隅に相当する位置には、樹脂カバー2に被験者が載った時に、ロードセル5の可動腕部34(
図2等参照)を上方に動かすことを許容するためのスペースを確保するために、穴17が設けられている。さらにまた、補強カバー3には、ボトムカバー4に設けられた電池ボックス21のスペースを確保するための穴19が設けられている。
【0025】
次に、上記
図1に加えて、
図2を参照して、上記体組成計1のロードセル5周辺の部材について、説明する。
図2は、体組成計1のロードセル5周辺の部材の詳細分解図であり、
図1中に一点鎖線で示す円柱形領域CLの部分を拡大して示したものである。なお、
図1では、ブリッジ23と締結された状態のロードセル5を示しているが、
図2では、ブリッジ23と締結される前のロードセル5を示している。
【0026】
図2に示すように、体組成計1は、ロードセル5の周辺に、ロードセル5への荷重伝達部材であり、ロードセル5を支持し、ピボット62(
図4参照)を有するブリッジ23と、ロードセル5の保持用の部材であるセンサホルダ6と、ブリッジ23をボトムカバー4側に取り付けるための板バネ7と、樹脂カバー2上の被験者からの荷重を受ける(受け止める)受け部材8と、低摩擦シート9a、9bとを備えている。詳細については後述するが、板バネ7は、その外縁部がボトムカバー4に固定され、弾性変形可能に構成されている。低摩擦シート9a、9bは、フッ素樹脂製のシートであり、請求項における滑り部に相当する。この低摩擦シート9a、9bの静止摩擦係数は、例えば、0.3以下である。また、低摩擦シート9a、9bの一枚の厚さは、例えば、0.05mm~0.2mmである。
【0027】
次に、上記
図2に加えて、
図3乃至
図5を参照して、上記のロードセル5の構造について説明する。
図3と
図4は、それぞれ、斜め上と斜め下の方向から見たロードセル5の斜視図であり、
図5は、ロードセル5の側面図である。
図3乃至
図5では、ブリッジ23と締結された状態のロードセル5を示している。ロードセル5は、樹脂カバー2に載った被験者の荷重が伝達されて変形する起歪体31と、この起歪体31の変形に応じた信号を生成する歪みゲージ32とを有し、被験者の荷重を検出する。上記の起歪体31は、線対称の形状と一様な厚さを有する単一の部材であり、補強カバー3に固定される2つの固定腕部33と、受け部材8及びブリッジ23を介して脚10からの荷重を受ける2つの可動腕部34と、可動腕部34に荷重を受けた時に歪みを生じる起歪部35と、2つの貫通孔36(
図2参照)とを備えている。また、歪みゲージ32のケーブル38は、起歪体31にテープ37で接着されている。このテープ37は、歪みゲージ32のケーブル38を束ねるためのものである。
【0028】
ブリッジ23は、
図4及び
図5に示すように、その下面中央部に、先端が半球状になった円錐を上下反転させた形状のピボット62を備えている。このピボット62は、ボトムカバー4に対するブリッジ23の傾きを変更可能にするための支点であり、組み立て後の体組成計1では、受け部材8の上面に接するように配設される。ピボット62の高さは、例えば、0.8mmである。また、ブリッジ23は、
図2に示すように、上記のロードセル5側の2つの貫通孔36に対応する位置に、2つの貫通孔40を有している。
図2及び
図5に示すように、ブリッジ23の上面23aにおける貫通孔40の周囲には、円錐台状のボス42が設けられている。このため、
図5に示すように、ロードセル5とブリッジ23とが締結された状態においては、ブリッジ23の上面23aは、2つのボス42の上面のみがロードセル5の下面と接するようになる。すなわち、ブリッジ23のボス42は、ロードセル5の下面5aとブリッジ23の上面23aとの間の間隔を保持するスペーサーの役割を果たす。また、ブリッジ23は、
図2に示すように、その端部の4か所に、板バネ7との締結用のビス54が螺入されるねじ切り穴41を有している。
【0029】
次に、上記のロードセル5と、ブリッジ23と、センサホルダ6とを、補強カバー3に取り付ける方法について説明する。まず、ロードセル5とブリッジ23との締結は、
図2乃至
図4に示すリベット43により行う。具体的には、
図2に破線で示すように、2つのリベット43を、下方から、ブリッジ23側の貫通孔40と、ロードセル5側の2つの貫通孔36とに挿通させた上で、リベット43の上端をかしめることにより、ロードセル5とブリッジ23とを締結する。そして、このブリッジ23と締結された状態のロードセル5の固定腕部33を、センサホルダ6の枠47に嵌め込んだ上で、このロードセル5が嵌め込まれたセンサホルダ6を、補強カバー3の裏面側に設けられた枠73(
図7参照)に取り付ける。そして、
図2に破線で示すように、補強カバー3のねじ穴49と、センサホルダ6のねじ穴48とにビス50を螺入して、補強カバー3とセンサホルダ6とを締結(ねじ止め)することにより、ロードセル5と、ブリッジ23と、センサホルダ6とを、補強カバー3に取り付ける。
【0030】
また、
図2に示すロードセル5周辺の部材のうち、板バネ7及び受け部材8は、ボトムカバー4側に取り付けられる。板バネ7及び受け部材8の取り付け方法を説明する前に、上記
図2に加えて、
図6及び
図7を参照して、板バネ7及び受け部材8の構造について説明する。
図6は、組み立て後の体組成計1の上面図であり、
図7は、
図6のA-A線断面における、一点鎖線で示す円C1の部分の断面図である。
図2に示すように、板バネ7は、ボトムカバー取付部7a(請求項における「外縁部」)と、弾性変形部7bと、ブリッジ受け部7cとを備えている。ボトムカバー取付部7aは、板バネ7の外縁部であって、ボトムカバー4に固定される部分である。弾性変形部7bは、ボトムカバー取付部7aの内縁側に設けられた、曲がりくねった形状の弾性変形可能な部分である。ブリッジ受け部7cは、弾性変形部7bの内縁側に設けられた、ブリッジ23を受ける部分である。また、
図2及び
図7に示すように、受け部材8は、鉄板で作られた板状部57と、この板状部57の外縁に設けられたゴム製の柔軟弾性部58と、この柔軟弾性部58の外縁に設けられた鉄製の外リング59(請求項における「外枠部」)とを備えている。
【0031】
上記の受け部材8のボトムカバー4への取り付け方法は、以下の通りである。すなわち、受け部材8の下面とボトムカバー4の上面に、それぞれ、低摩擦シート9aと低摩擦シート9bを貼り付けた上で、受け部材8の外リング59を、ボトムカバー4に溶接することにより、受け部材8をボトムカバー4に取り付ける。従って、受け部材8における板状部57と柔軟弾性部58とは、ボトムカバー4に取り付けられず、外リング59のみが、ボトムカバー4に取り付けられる。
【0032】
また、板バネ7は、
図2に示すように、その中央部に、穴53を有している。板バネ7は、この穴53に受け部材8を収納した状態で、4カ所の接合部52を、ボトムカバー4に溶接することにより、ボトムカバー4に取り付けられる。
【0033】
上記のロードセル5及びセンサホルダ6と共に、補強カバー3側に取り付けられたブリッジ23は、ボトムカバー4側に取り付けられた板バネ7と、ビス54により締結される。なお、
図2では、ビス54を2つしか示していないが、実際には、ビス54の数は、4つである。これらのビス54は、ボトムカバー4に設けられた穴60(いわゆる馬鹿孔)を通して、ボトムカバー4の下面側から挿入される。そして、ビス54のねじ山の部分が、ボトムカバー4に取り付けられた板バネ7の穴51を挿通して、ブリッジ23のねじ切り穴41に螺入される。これにより、ボトムカバー4側に取り付けられた板バネ7と、補強カバー3側に取り付けられたブリッジ23とがねじ止めされる。この構成においては、上記のように、板バネ7の弾性変形部7bが、弾性変形可能に構成されているため、ボトムカバー4に対するブリッジ23の傾きを変更することが可能になる。
【0034】
上記のように、ボトムカバー4側に取り付けられた板バネ7と、補強カバー3側に取り付けられたブリッジ23とがねじ止めされた後、ボトムカバー4の下面に、
図2に示す穴60を覆うように、
図1に示す脚10が貼り付けられる。上記のように、板バネ7と補強カバー3側に取り付けられたブリッジ23とがねじ止めされ、補強カバー3が樹脂カバー2と結合するので、板バネ7は、ブリッジ23とロードセル5と補強カバー3を介して、樹脂カバー2側に連結されることになる。
【0035】
次に、
図7を参照して、組み立て後の体組成計1におけるロードセル5周辺の部材の位置関係について、説明する。被験者の荷重がかかっていない状態では、
図7に示すように、ロードセル5は、ブリッジ23の上面23aに設けられたボス42に支持されており、ロードセル5(の下面5a)と、ブリッジ23(の上面23a)とは、平行な状態になっている。また、
図7に示すように、組み立て後の体組成計1では、受け部材8の板状部57に、ブリッジ23のピボット62が接する状態になる。
【0036】
次に、上記
図3乃至
図5を参照して、ロードセル5(の下面5a)とブリッジ23(の上面23a)との傾きが、ロードセル5の歪みゲージ32の出力に与える影響について説明する。
図5に示すように、ロードセル5(の下面5a)とブリッジ23(の上面23a)とが、平行な状態においては、被験者の荷重は、
図5の実線と破線の矢印に示すように、脚10(
図1、
図7、及び
図10等参照)からブリッジ23のピボット62を介して、ロードセル5の下面5aに対して、垂直方向上向きにかかる。ところが、ロードセル5(の下面5a)とブリッジ23(の上面23a)とが、平行な状態でなくなる(傾く)と、被験者の荷重が、ロードセル5に対して、垂直方向上向きにかからなくなってしまう。このため、ロードセル5(の下面5a)とブリッジ23(の上面23a)とが平行な状態でないときは、平行な状態であるときと比べると、ロードセル5の起歪部35の歪み方が変わってしまうので、ロードセル5の歪みゲージ32の出力値に誤差が生じ、体組成計1が、被験者の体重を正確に測定することができなくなってしまう。
【0037】
本実施形態の体組成計1は、上記特許文献1に示す重量測定装置と異なり、ブリッジの下に厚いゴムを配設することなく、被験者の荷重により樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだときでも、ロードセル5(の下面5a)とブリッジ23(の上面23a)とが、平行な状態を維持することができるようにしたものである。
【0038】
上記のロードセル5とブリッジ23とが平行な状態を維持するための工夫について、本実施形態の体組成計1に対する比較例の体組成計を参照して、説明する。
図8は、この比較例の体組成計100の上面図であり、
図9は、被験者の荷重がかかっていない時における体組成計100の、
図8のA´-A´線断面図である。
図10は、
図9における破線で囲んだ部分の拡大図である。
図11は、被験者の荷重がかかっている時における体組成計100の、
図8のA´-A´線断面図である。
図12は、
図11における破線で囲んだ部分の拡大図である。
【0039】
この比較例の体組成計100は、本実施形態の体組成計1と異なり、受け部材108の下面及びボトムカバー104の上面に低摩擦シート9a、9bが貼り付けられていない。また、この比較例の体組成計100では、本実施形態の体組成計1と異なり、受け部材108が、鉄板等の単一の部材で構成されており、受け部材108の全体がボトムカバー104の上面に固定されている。このため、受け部材108をボトムカバー104に対して水平方向に動かすことができない。この比較例の体組成計100におけるこれらの部分以外の構成は、本実施形態の体組成計1と同様である。なお、
図8中の111と112とは、それぞれ、電極と表示部の表示窓とを示す。また、
図9乃至
図12における110は、体組成計100の脚を示し、
図10及び
図12における142は、体組成計100のボスを示す。
【0040】
上記の体組成計100の構成では、
図11及び
図12に示すように、被験者の荷重により樹脂カバー102と補強カバー103が撓んだ時に、補強カバー103と固定されているロードセル105は傾く。けれども、ロードセル105とリベットで締結されているブリッジ123のピボット162は、受け部材108の上面108aとの間に生じる摩擦力により、体組成計1の外側(
図12中に矢印Bで示す方向)に動かすことができないので、
図12に示すように、ロードセル105の下面105aとブリッジ123の上面123aとの間に傾きが生じる。このように、ロードセル105の下面105aとブリッジ123の上面123aとが、平行な状態でなくなる(傾く)と、被験者の荷重が、ロードセル105に対して、垂直方向上向きにかからなくなってしまう。このため、樹脂カバー102及び補強カバー103の撓み具合によって、ロードセル105の歪領域の歪み方が変わってしまうので、正確なロードセル105(の歪みゲージ)の出力を得ることができない。従って、体組成計100が、被験者の体重を正確に測定することができない。
【0041】
これに対して、本実施形態の体組成計1によれば、ロードセル5の下面5aとブリッジ23の上面23aとが、平行な状態を維持することができる。この理由について、
図13乃至
図16を参照して、説明する。
図13は、被験者の荷重がかかっていない時における体組成計1の、
図6のA-A線断面図である。
図14は、
図13における破線で囲んだ部分の拡大図である。
図15は、被験者の荷重がかかっている時における体組成計1の、
図6のA-A線断面図である。
図16は、
図15における破線で囲んだ部分の拡大図である。
【0042】
図14及び
図16に示すように、本実施形態の体組成計1は、上記の比較例の体組成計100と異なり、受け部材8の下面とボトムカバー4の上面に貼り付けられた低摩擦シート9a、9bを有している。これらの低摩擦シート9a、9bの摩擦係数は、被験者の荷重により樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだときに、ブリッジ23のピボット62と受け部材8の板状部57の上面との間に生じる摩擦力よりも、受け部材8の板状部57の下面(の低摩擦シート9a)とボトムカバー4の上面(の低摩擦シート9b)との間に生じる摩擦力が小さい関係になるように設定されている。また、本実施形態の体組成計1における受け部材8は、上記の比較例の体組成計100と異なり、外リング59の部分のみがボトムカバー4と固定されているため、受け部材8の板状部57を、ボトムカバー4(の上面及び下面)に対して水平方向に動かすことができる。
【0043】
本実施形態の体組成計1では、
図15及び
図16に示すように、被験者の荷重により樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだ時に、補強カバー3と固定されているロードセル5が傾き、これに伴って、ロードセル5と締結されているブリッジ23のピボット62が、体組成計1の外側(
図16中に矢印で示す方向)に動こうとする。ここで、上記の低摩擦シート9a、9bの働きにより、被験者の荷重により樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだ時に、受け部材8の下面とボトムカバー4の上面との間に働く摩擦力(より正確に言うと、受け部材8の板状部57の下面に貼り付けられた低摩擦シート9aと、ボトムカバー4の上面に貼り付けられた低摩擦シート9bとの間に働く摩擦力)は、ブリッジ23のピボット62と受け部材8(の板状部57)の上面との間に生じる摩擦力よりも、小さくなる。このため、被験者の荷重により樹脂カバー2と補強カバー3が撓み、ロードセル5が傾いた時に、ブリッジ23のピボット62の(受け部材8の)板状部57に対する位置は、ピボット62と板状部57の上面との間に生じる摩擦力の影響で、被験者の荷重がかかる前と変わらないが、
図16に示すように、受け部材8の板状部57が、体組成計1の外側(ボトムカバー4(の上面及び下面)に対して水平な方向)に動くので、ピボット62が体組成計1の外側に動いて、ボトムカバー4に対するブリッジ23の傾きが変わる。
【0044】
これにより、被験者の荷重で樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだときに、ブリッジ23の上面23aがロードセル5の下面5aと平行な状態を維持することができるので、被験者の荷重を、ブリッジ23を介して、ロードセル5に対して垂直方向上向きにかけることができる。従って、この体組成計1によれば、被験者の荷重で樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだときに、起歪部35の捻じれの伴わない変形形状(樹脂カバー2と補強カバー3の撓みが発生しないときと類似した起歪部35の変形形状)の撓みによるロードセル5からの出力を得ることができるので、正確なロードセル5の出力を得ることができる。これにより、被験者の体重を正確に測定することができる。これに対して、
図11及び
図12に示すように、ブリッジ123の上面123aがロードセル105の下面105aと平行な状態を維持することができず、被験者の荷重を、ブリッジ123を介して、ロードセル105に対して垂直方向上向きにかけることができないと、ロードセル105の起歪部が捻じれの伴った変形形状による撓みを起こすので、ロードセル105からの出力が、起歪部の捻じれによる成分を含んだ出力となってしまい、正確なロードセル105の出力を得ることができない。
【0045】
なお、樹脂カバー2及び補強カバー3の撓み方は、被験者の荷重の大きさだけではなく、被験者の足の大きさや、樹脂カバー2の上面における被験者の両足を載せる位置によっても異なるが、本実施形態の体組成計1によれば、樹脂カバー2及び補強カバー3の撓み方に関わらず、起歪部35の捻じれの伴わない変形形状の撓みによるロードセル5(の歪みゲージ32)からの出力を得ることができるので、正確なロードセル5の出力を得ることができる。
【0046】
また、本実施形態の体組成計1における受け部材8は、上述したように、外リング59の部分のみがボトムカバー4と固定されており、
図16に示すように、外リング59と板状部57との間には、ゴム製の柔軟弾性部58が設けられている。このゴム製の柔軟弾性部58は、被験者の荷重が樹脂カバー2及び補強カバー3にかかり、ブリッジ23のピボット62を介して板状部57に水平方向の力が生じると、撓み、被験者の荷重が樹脂カバー2及び補強カバー3にかからなくなると、板状部57を、被験者の荷重がかかる前の位置に戻す役割を果たす。より詳細に説明すると、被験者が樹脂カバー2上から降りて、被験者の荷重が樹脂カバー2及び補強カバー3にかからなくなると、
図13及び
図14に示すように、樹脂カバー2及び補強カバー3の撓みが無くなる。このため、被験者の荷重負荷時と異なり、補強カバー3と固定されているロードセル5の傾きが無くなる(ロードセル5が、
図16に示す状態から、
図14に示す状態に戻る)。このとき、ロードセル5が、
図16に示す状態から、
図14に示す状態に戻る動きに連動して、受け部材8の柔軟弾性部58の弾性力が、板状部57を、被験者の荷重負荷前の位置に(
図16中の矢印と反対の方向に)戻す。これにより、ブリッジ23のピボット62が体組成計1の内側(
図16中の矢印と反対の方向に)に動いて、ボトムカバー4に対するブリッジ23の傾きが、
図14に示す被験者の荷重負荷前の傾きに戻る。
【0047】
なお、本実施形態の体組成計1のように、受け部材8の下面とボトムカバー4の上面に低摩擦シート9a、9bを貼り付けていなくても、ブリッジのピボット(の特に先端部)に潤滑剤を塗る等の方法で、受け部材又はボトムカバーの上面に接するピボットを滑らせることにより、本実施形態の体組成計1と同様に、被験者の荷重がかかったときに、ブリッジの上面がロードセルの下面と平行な状態を維持することができる。けれども、このような構成では、点荷重(集中荷重)がかかったピボットが、ボトムカバー(の上面)に対して水平な方向に動くので、ピボットが摩耗し易く、装置(特に、ピボット)の耐久性が低い。これに対して、本実施形態の体組成計1によれば、脚10からの荷重が面荷重でかかった受け部材8の板状部57が、ボトムカバー4(の上面)に対して水平な方向に動くので、上記のピボットを滑らせるようにした場合と比べて、部材間の摩耗が生じにくい。
【0048】
次に、本体組成計1に採用されている、精度を確保しつつ、装置全体の薄型化、軽量化を図るための工夫について、説明する。まず、この体組成計1では、上述したように、ブリッジ23に、ブリッジ23の傾きを変更可能にするための支点であり、受け部材8の板状部57の上面に接するピボット62を設け、受け部材8の外リング59と板状部57との間に柔軟弾性部58を設けると共に、受け部材8の板状部57の下面とボトムカバー4の上面に、受け部材8がボトムカバー4に対して水平方向に動くことを可能にする低摩擦シート9a、9bを貼り付けるようにした。これらの部材の働きにより、特許文献1に示す重量測定装置と異なり、ブリッジの下に厚いゴムを配設することなく、被験者の荷重により樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだときに、ブリッジ23の上面23aがロードセル5の下面5aと平行な状態を維持することができる。これにより、特許文献1に示す従来の重量測定装置と比べて、装置全体の薄型化、軽量化を図ることができる。
【0049】
また、この体組成計1では、筐体として、金属と樹脂とを結合した補強カバー3を用いた。この点について、上記
図7を参照して、説明する。通常、体組成計及び体重計の筐体には、鉄板(プレス部品)や、樹脂(射出成型部品)を用いるが、これらの筐体で製品に必要な強度を持たせるためには、製品全体を30mm以上の厚さにする必要がある。そこで、この体組成計1では、必要強度を維持しつつ、筐体と装置全体の薄型化、軽量化を図るために、金属と樹脂とを結合した補強カバー3を用いた。この補強カバー3は、
図7に示すように、鉄板カバー70(請求項における「金属製上面カバー」)と、鉄板ベース71(請求項における「金属製底面カバー」)と、これらの間に設けられた樹脂層72とを備えている。上記の鉄板カバー70の下面、及び鉄板ベース71の上面には、表面処理により、多数の微細な凹部が形成されている。これらの凹部の径は、例えば、10~400nmである。鉄板カバー70と樹脂層72と鉄板ベース71の結合時には、鉄板カバー70の下面及び鉄板ベース71の上面に設けられた多数の微細な凹部に、樹脂が入り込んで、鉄板カバー70と樹脂層72と鉄板ベース71とが接合される。
【0050】
上記のように、補強カバー3を、鉄板カバー70と、鉄板ベース71と、これらの間に設けられた樹脂層72とから構成して、鉄板カバー70の下面及び鉄板ベース71の上面に設けられた多数の微細な凹部に樹脂を入れ込んで、鉄板カバー70と樹脂層72と鉄板ベース71とを接合させることにより、補強カバー3を、薄型でも、強度のある(撓み難い)筐体にすることができる。補強カバー3の厚さは、例えば、5~7mmである。また、この補強カバー3は、鉄板カバー70と鉄板ベース71の間に樹脂層72を有しているので、従来の鉄板等の金属性の板のみから構成される筐体に比べて、筐体の軽量化を図ることができる。上記のように、体組成計1の筐体として、薄型で、軽量の補強カバー3を用いたことにより、体組成計1の装置全体の薄型化と軽量化を図ることができる。
【0051】
次に、上記
図2を参照して、ロードセル5のボトムカバー4への取り付けに、板バネ7を用いた理由について、説明する。なお、より正確に言うと、
図2に示す板バネ7の接合部52がボトムカバー4に溶接されることにより、板バネ7のボトムカバー取付部7aが、ボトムカバー4に取り付けられ、板バネ7のブリッジ受け部7cが、ブリッジ23に連結されている。そして、ブリッジ23が、ロードセル5の起歪体31に連結されている。すなわち、ブリッジ23と板バネ7とを介して、ロードセル5が、ボトムカバー4に取り付けられている。上述したように、板バネ7とブリッジ23との連結は、4つのビス54により行われ、ブリッジ23とロードセル5の起歪体31との連結は、リベット43により行われる。
【0052】
上記のように、ロードセル5とボトムカバー4との固定に板バネ7を用いた1つ目の理由は、ユーザが、樹脂カバー2側を持ち上げた時に、ボトムカバー4が外れにくいようにするためである。上記のように、板バネ7とブリッジ23とをビス54を用いて連結したことにより、ユーザが、樹脂カバー2側を持ち上げた時に、ブリッジ23とボトムカバー4に固定された板バネ7とが外れにくいようにすることができるので、ボトムカバー4が外れにくいようにすることができる。
【0053】
また、ロードセル5とボトムカバー4との固定に板バネ7を用いた2つ目の理由は、体組成計1に被験者の荷重がかかると、ロードセル5が撓む(歪む)が、ロードセル5とボトムカバー4とが固く取り付けられていると、ロードセル5の撓み(起歪部35の歪み)を阻害し、体組成計1の性能に悪影響を及ぼす。そこで、この体組成計1では、板バネ7における、ブリッジ23の下面を受ける部分を弾性変形可能に構成して、この板バネ7を介して、ロードセル5及びブリッジ23をボトムカバー4に移動可能に取り付けることで、板バネ7の弾性を利用して、ロードセル5の撓み(起歪部35の歪み)を妨げないようにしている。
【0054】
上記のように、ロードセル5とボトムカバー4との取り付けに板バネ7を用いたことにより、ユーザが、樹脂カバー2側を持ち上げた時に、ボトムカバー4が外れにくいようにすることができるのであるが、樹脂カバー2側が強く引っ張られると、板バネ7が伸びきってしまい、元に戻らなくなってしまう。そこで、この体組成計1は、ボトムカバー4が樹脂カバー2及び補強カバー3から所定の距離以上離れるのを防止するための乖離防止部材として、
図17に示す乖離防止ねじ81を備えている。
図17は、
図6のA-A線断面における、破線で示す円C2の部分の断面図である。
【0055】
上記の乖離防止ねじ81は、
図2及び
図17に示すボトムカバー4の穴20から挿入されて、樹脂カバー2に設けられたねじ穴82(
図17参照)に螺入されている。また、
図17に示すように、ボトムカバー4の穴20の周辺には、凹部20aが設けられており、乖離防止ねじ81の樹脂カバー2への取り付け後の状態において、乖離防止ねじ81のねじ頭81aと凹部20aの面83との間には、隙間が存在する。この状態から樹脂カバー2側が引っ張られると、樹脂カバー2側に取り付けられた乖離防止ねじ81のねじ頭81aが、ボトムカバー4の凹部20a(の面83)に引っかかって、ボトムカバー4が、樹脂カバー2及び補強カバー3から所定の距離(上記のねじ頭81aと凹部20aの面83との隙間の距離D(
図17参照))以上離れるのを防止する。上記の距離Dは、ボトムカバー4側に固定された板バネ7が伸びきってしまわない距離に設定されている。これにより、樹脂カバー2側が強く引っ張られた場合でも、樹脂カバー2及び補強カバー3とボトムカバー4との距離を短い距離に抑えることができるので、樹脂カバー2側とボトムカバー4側の両方に連結された板バネ7が伸びきってしまうのを防ぐことができる。
【0056】
上記のように、本実施形態の体組成計1によれば、被験者の荷重により樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだ時に、ブリッジ23のピボット62と受け部材8の板状部57の上面との間に生じる摩擦力により、ピボット62が受け部材8の板状部57に対して水平方向に動くことができなくなった場合でも、受け部材8の板状部57の下面とボトムカバー4の上面との間に設けた滑り部(受け部材8の板状部57の下面に貼り付けられた低摩擦シート9aと、ボトムカバー4の上面に貼り付けられた低摩擦シート9b)の働きにより、受け部材8の板状部57をボトムカバー4に対して水平方向に動かすことができる。従って、ピボット62を、ボトムカバー4に対して水平方向に動かして、ボトムカバー4に対するブリッジ23の傾きを変更することができる。これにより、被験者の荷重により樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだ時に、樹脂カバー2と補強カバー3が撓んでいないときと同様に、ブリッジ23の上面23aがロードセル5の下面5aと平行な状態を維持することができるので、ブリッジ23からロードセル5に対して、垂直方向上向きの力を安定してかけることができる。従って、樹脂カバー2及び補強カバー3の撓み具合に関わらず、正確なロードセル5の歪みゲージ32からの出力を得ることができるので、被験者の体重を正確に測定することができる。しかも、特許文献1に示す重量測定装置200と異なり、ブリッジの下に厚いゴムを配設する必要がないので。装置全体の薄型化を図ることができる。
【0057】
また、本実施形態の体組成計1によれば、上記の受け部材8の板状部57の下面とボトムカバー4の上面との間に設けた滑り部(受け部材8の板状部57の下面に貼り付けられた低摩擦シート9aと、ボトムカバー4の上面に貼り付けられた低摩擦シート9b)の摩擦係数が、被験者の荷重により樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだときに、ブリッジ23のピボット62と受け部材8の板状部57の上面との間に生じる摩擦力よりも、受け部材8の下面とボトムカバー4の上面との間に働く摩擦力が小さい関係になるように設定されている。これにより、被験者の荷重により樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだ時に、受け部材8の板状部57の上面におけるピボット62の接する位置を維持したままで、受け部材8の板状部57をボトムカバー4に対して水平方向に確実に動かすことができる。従って、ピボット62を、ボトムカバー4に対して水平方向に動かして、ボトムカバー4に対するブリッジ23の傾きを確実に変更することができる。
【0058】
また、本実施形態の体組成計1によれば、上記の滑り部として、受け部材8の板状部57の下面及びボトムカバー4の上面に貼り付けられたフッ素樹脂製の低摩擦シート9a,9bを用いた。これにより、被験者の荷重により樹脂カバー2と補強カバー3が撓んだときに、受け部材8の下面とボトムカバー4の上面との間に働く摩擦力を小さくすることが容易であり、しかも、ブリッジの下に厚いゴムを配設する特許文献1の重量測定装置200と比べて、装置全体の薄型化と軽量化を図ることができる。
【0059】
また、本実施形態の体組成計1によれば、受け部材8は、ブリッジ23のピボット62が接する板状部57と、この板状部57の外縁に設けられたゴム製の柔軟弾性部58と、この柔軟弾性部58の外縁に設けられた外リング59とを備え、板状部57と柔軟弾性部58とは、ボトムカバー4に取り付けられておらず、外リング59のみが、ボトムカバー4に取り付けられている。この構成においては、受け部材8の板状部57が、ボトムカバー4に対して水平方向に動くことができ、しかも、被験者の荷重が樹脂カバー2及び補強カバー3にかかっている状態から、かかっていない状態になったときに、柔軟弾性部58の弾性力により、板状部57を、被験者の荷重がかかる前の位置に戻すことができる。
【0060】
また、本実施形態の体組成計1によれば、ブリッジ23をボトムカバー4側に取り付けるための板バネ7をさらに備え、板バネ7は、その外縁部(ボトムカバー取付部7a)がボトムカバー4に固定され、弾性変形可能に構成されているようにした。このように、板バネ7が弾性変形可能に構成されているため、ボトムカバー4に対するブリッジ23の傾きを変更することが可能になる。また、上記のように、板バネ7を弾性変形可能に構成して、この板バネ7を介して、ロードセル5及びブリッジ23をボトムカバー4に固定することで、板バネ7の弾性を利用して、ロードセル5の撓み(起歪部35の歪み)を妨げないようにすることができる。
【0061】
また、本実施形態の体組成計1によれば、板バネ7が、樹脂カバー2側に連結されており、ボトムカバー4が樹脂カバー2から所定の距離以上離れるのを防止するための乖離防止ねじ81をさらに備え、上記の所定の距離が、ボトムカバー4側に固定された板バネ7が伸びきってしまわない距離であるようにした。これにより、樹脂カバー2側が強く引っ張られた場合でも、樹脂カバー2とボトムカバー4との距離を短い距離に抑えることができるので、樹脂カバー2側とボトムカバー4の両方に連結された板バネ7が伸びきってしまうのを防ぐことができる。
【0062】
また、本実施形態の体組成計1によれば、補強カバー3は、鉄板カバー70と、鉄板ベース71と、これらの間に設けられた樹脂層72とを備え、鉄板カバー70の下面及び鉄板ベース71の上面には、多数の微細な凹部が形成されており、これらの多数の微細な凹部に、樹脂層72の樹脂が入り込んで、鉄板カバー70と樹脂層72と鉄板ベース71とが接合されたものとした。このように、鉄板カバー70の下面及び鉄板ベース71の上面に設けられた多数の微細な凹部に樹脂を入れ込んで、鉄板カバー70と樹脂層72と鉄板ベース71とを接合させることにより、補強カバー3を、薄型でも、強度のある筐体にすることができる。また、この補強カバー3は、鉄板カバー70と鉄板ベース71の間に樹脂層72を有しているので、従来の鉄板等の金属性の板のみから構成される筐体に比べて、筐体の軽量化を図ることができる。上記のように、体組成計1の筐体として、薄型で、軽量の補強カバー3を用いたことにより、体組成計1の装置全体の薄型化と軽量化を図ることができる。
【0063】
変形例:
なお、本発明は、上記の各実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。次に、本発明の変形例について説明する。
【0064】
変形例1:
上記の実施形態では、本発明の重量測定装置が、被験者の体組成を測定する機能を有する体組成計1である場合の例について説明したが、本発明の重量測定装置は、これに限られず、例えば、被験者の体組成を測定する機能を有さない体重計であってもよいし、料理用の電子秤等の、人体以外の重量を測定する重量測定装置であってもよい。
【0065】
変形例2:
上記の実施形態では、請求項における「滑り部」が、低摩擦シート9a,9bである場合の例を示した。けれども、本発明の重量測定装置における「滑り部」は、これに限られず、受け部材の板状部に対して水平方向の力が生じた時に、ボトムカバーに対して板状部が動くことを可能にする摩擦力を有するものであれば良く、例えば、受け部材の下面(例えば、本実施形態の受け部材8の板状部57に相当する部分)、及びボトムカバーの上面の少なくとも一方に、摩擦係数を小さくするようなめっき処理を施したものであってもよい。また、上記の「滑り部」は、例えば、受け部材の下面(例えば、本実施形態の受け部材8の板状部57に相当する部分)、及びボトムカバーの上面の少なくとも一方にコーティングされたフッ素樹脂等の樹脂であってもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、低摩擦シート9a,9bが、フッ素樹脂製のシートである場合の例を示したが、「滑り部」として用いる低摩擦シートは、これに限られず、例えば、フッ素樹脂以外の樹脂製のシートであってもよい。さらにまた、上記の実施形態では、低摩擦シート9a,9bを、受け部材8(の板状部57)の下面及びボトムカバー4の上面の両方に貼り付けた場合の例を示したが、これに限られず、低摩擦シートを、受け部材(の板状部)の下面及びボトムカバーの上面のいずれか一方のみに貼り付けてもよい。
【0067】
変形例3:
上記の実施形態では、請求項における「乖離防止部材」が、乖離防止ねじ81である場合の例を示したが、「乖離防止部材」は、これに限られず、ボトムカバー4が、樹脂カバー2及び補強カバー3から所定の距離以上離れるのを防止する機能を有する部材であればよい。例えば、「乖離防止部材」は、
図18に示すように、樹脂カバー2と一体成形した、係止爪90を有する抜け止め部91であっても良い。この係止爪90を有する抜け止め部91は、体組成計1の組み立て時に、ボトムカバー4の穴20に圧入される。この構成においては、樹脂カバー2側が引っ張られると、樹脂カバー2に設けられた抜け止め部91の係止爪90が、ボトムカバー4の凹部20a(の面83)に引っかかって、ボトムカバー4が、樹脂カバー2及び補強カバー3から所定の距離(上記の抜け止め90と凹部20aの面83との隙間の距離D´(
図18参照))以上離れるのを防止する。
【0068】
また、上記の実施形態では、乖離防止ねじ81を、樹脂カバー2に設けられたねじ穴82に螺入して、樹脂カバーに取り付ける場合の例を示したが、乖離防止ねじを、補強カバーに設けられたねじ穴に螺入して、補強カバーに取り付けてもよい。
【0069】
変形例4:
上記の実施形態では、請求項における「金属製上面カバー」と「金属製底面カバー」が、鉄板カバー70と鉄板ベース71である場合の例を示したが、「金属製上面カバー」と「金属製底面カバー」は、これに限られず、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属で形成された板であってもよい。
【0070】
変形例5:
上記の実施形態では、ボトムカバー4を、装置全体とほぼ同じ大きさの面積にし、このボトムカバー4におけるロードセル5に対応する位置に、4つの脚10を設けたが、この構成に限られない。例えば、ボトムカバーと脚をロードセルの周辺部品(ロードセル、ブリッジ、センサホルダ、板バネ、受け部材、及び低摩擦シート)とユニット化したものを4つ設けて、これらを補強カバーに取り付けてもよい。これらのユニットの上下面の大きさは、例えば、φ50mm程度である。
【符号の説明】
【0071】
1 体組成計
2 樹脂カバー(上面カバー)
3 補強カバー
4 ボトムカバー(底面カバー)
5 ロードセル
7 板バネ
8 受け部材
9a、9b 低摩擦シート(滑り部、樹脂製のシート、フッ素樹脂製のシート)
23 ブリッジ
31 起歪体
32 歪みゲージ
57 板状部
58 弾性部
59 外リング(外枠部)
62 ピボット
70 鉄板カバー(金属製上面カバー)
71 鉄板ベース(金属製底面カバー)
72 樹脂層
81 乖離防止ねじ(乖離防止部材)