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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】蒸練装置
(51)【国際特許分類】
   A21C 1/06 20060101AFI20221005BHJP
   A23G 3/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A21C1/06 C
A23G3/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019116161
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2020202817
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2019111895
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000128669
【氏名又は名称】株式会社オオヤマフーズマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】大山 裕
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-065948(JP,A)
【文献】特開昭56-155628(JP,A)
【文献】特開平06-090651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
A23G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に伸びる筒状の蒸練室の内部に、菓子製造用原料である粉と、水とからなる原料を供給すると共に、高温蒸気を前記蒸練室内に供給しつつ、前記蒸練室内で撹拌羽根を回転させることで前記原料を撹拌して蒸練を行い、当該蒸練によって生成した菓子材料を筒状の前記蒸練室の下側における周壁の一部を形成していて、前記蒸練室内を開閉可能にしている排出シャッターを開けることで前記蒸練室の外部に排出していく蒸練装置において、
前記排出シャッターの下側から、前記排出シャッター周壁外面に向けて高温の蒸気を吹き付ける蒸気噴出ノズルが、前記排出シャッターに沿って、筒状の前記蒸練室の円周方向に、互いの間に所定の間隔をあけて複数個、蒸気噴出口から前記排出シャッター周壁外面までの距離が同一になっている位置関係で、位置が固定されて、配備されている蒸練装置。
【請求項2】
前記蒸気噴出ノズルからの高温蒸気噴出は間欠的に行われる請求項1記載の蒸練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煎餅やあられ等の米菓や、小麦粉を原料とするビスケット等の菓子を製造する際、これらを製造することに用いられる粉原料を蒸練する蒸練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
煎餅やあられ等の米菓や、小麦粉を原料とするビスケット等の菓子の製造において、粉原料を蒸練する蒸練装置は従来から広く知られている。
【0003】
水平方向に伸びる筒状の蒸練室の内部に、菓子製造用原料である粉と、水とからなる原料を供給すると共に、高温蒸気を前記蒸練室内に供給しつつ、前記蒸練室内で撹拌羽根を回転させることで前記原料を撹拌して蒸練を行い、当該蒸練によって生成した菓子材料を前記蒸練室の下側に配備されている開閉可能な排出蓋を開けて次工程に送り出す蒸練装置が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-39110号公報
【文献】特開2007-97482号公報
【文献】特開2009-65948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の一般的な蒸練装置において、筒状の蒸練室の下側に配備されている開閉可能な排出蓋が、蒸練室における周壁の一部を形成していて、蒸練室内を開閉可能にしている排出シャッターから構成されている形式の蒸練装置が知られている。
【0006】
このような構造の蒸練装置の場合、蒸練室内で撹拌羽根が回転することで原料が撹拌されて生成された蒸練後の菓子材料が排出シャッターにこびりついてしまい、蒸練作業後の温度低下で排出シャッターに固化、固着し、時にはガラス化して取り除くことが困難になり、衛生上の観点からも望ましくない状態になることが起こり得る。
【0007】
また、蒸練室内で蒸練工程を受け、蒸練室の下側における周壁の一部を形成していて蒸練室内を開閉可能にしている排出シャッターが開くことで、蒸練室内から次の工程に送られていく蒸練後の菓子材料の中に、排出シャッターに固化、固着し、ガラス化している固形物が、排出シャッターから分離して落下した場合、既にガラス化している固形物はその後の菓子製造工程において軟化することが無いので、最終製品の中に、ガラス化している硬い固形物の状態で残存することになる。このような菓子が消費者に購入されると、不良品として大きな問題になる。
【0008】
そこで、この発明は、蒸練室の下側に配備されている開閉可能な排出蓋が、蒸練室における周壁の一部を形成していて、蒸練室内を開閉可能にしている排出シャッターから構成されている形式の蒸練装置において、蒸練室内で撹拌羽根が回転することで原料が撹拌されて生成された蒸練後の菓子材料が排出シャッターにこびりついて、固化、固着するおそれの少ない蒸練装置を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]
水平方向に伸びる筒状の蒸練室の内部に、菓子製造用原料である粉と、水とからなる原料を供給すると共に、高温蒸気を前記蒸練室内に供給しつつ、前記蒸練室内で撹拌羽根を回転させることで前記原料を撹拌して蒸練を行い、当該蒸練によって生成した菓子材料を筒状の前記蒸練室の下側における周壁の一部を形成していて、前記蒸練室内を開閉可能にしている排出シャッターを開けることで前記蒸練室の外部に排出していく蒸練装置において、
前記排出シャッターの下側から、前記排出シャッター周壁外面に向けて高温の蒸気を吹き付ける蒸気噴出ノズルが配備されている
蒸練装置。
【0010】
[2]
前記蒸気噴出ノズルは、前記排出シャッターに沿って、互いの間に所定の間隔をあけて複数個、蒸気噴出口から前記排出シャッター周壁外面までの距離が同一になっている位置関係で配備されている[1]の蒸練装置。
【0011】
[3]
前記蒸気噴出ノズルからの高温蒸気噴出は間欠的に行われる[1]又は[2]の蒸練装置。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、蒸練室の下側に配備されている開閉可能な排出蓋が、蒸練室における周壁の一部を形成していて、蒸練室内を開閉可能にしている排出シャッターから構成されている形式の蒸練装置において、蒸練室内で撹拌羽根が回転することで原料が撹拌されて生成された蒸練後の菓子材料が排出シャッターにこびりついて、固化、固着するおそれの少ない蒸練装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の蒸練装置の概略構成を説明する一部を省略した側面図。
図2】本発明の蒸練装置の概略構成を説明する一部を省略した正面図。
図3】本発明の蒸練装置に採用される蒸気噴出ノズルの一例を表す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この実施形態の蒸練装置は、水平方向(図1で左右方向)に伸びる筒状の蒸練室1を備えている。図1図2図示の実施形態では円筒状の蒸練室1になっている。
【0015】
蒸練室1の上部には不図示の原料供給口が、不図示の開閉蓋を介して取りつけられている。この開閉蓋を開状態にして、菓子製造用原料である粉と、水とからなる原料が、蒸練室1の蒸練室内部2に供給される。
【0016】
また、蒸練室1には、不図示の蒸気導入口が設けられており、蒸気導入口を介して、蒸練工程用の蒸気が蒸練室内部2に供給される。
【0017】
蒸練室内部2には不図示のモータに駆動されて矢印4方向に回転する撹拌羽根3が配備されている。菓子製造用原料である粉と、水とからなる原料を蒸練室内部2に供給すると共に、蒸気を蒸練室内部2に供給しつつ、蒸練室内部2で撹拌羽根3を回転させることで原料を撹拌して蒸練が行われる。
【0018】
上述した蒸練によって生成された菓子材料は、蒸練室1の下側における周壁の一部を形成していて、蒸練室内部2を開閉可能にしている排出シャッター5を開けることで蒸練室1の外部に排出され、次の菓子製造工程に移される。すなわち、排出シャッター5が開かれると、蒸練によって生成された菓子材料が、排出シャッター5によって閉鎖されていた、蒸練室1下側の開口部を介して、蒸練室内部2から次の菓子製造工程に移されていく。
【0019】
このような蒸練装置の構成、構造、メカニズムは従来公知のものである。
【0020】
蒸練室1の背面側(図1の左側)の下部には、図1図示のように、排出シャッター5の開閉動作を行う駆動機構が配備されている。また、ここには、蒸練室1の背面側下部に突出している排出シャッター5の支持機構部に対して水を吹き付ける散水ノズル10、10が配備されている。
【0021】
蒸練室1の背面側下部に突出している排出シャッター5の支持機構部に対する散水ノズル10、10からの散水は、蒸練後の菓子材料がこの部分にこびりついて、排出シャッター5の開閉動作に困難が生じないようにするためのものである。そこで、散水ノズル10、10からの散水には、水道から供給された常温の水道水が使用される。
【0022】
この実施形態の蒸練装置では、排出シャッター5の下側から、排出シャッター5の周壁の外面に向けて高温の蒸気を吹き付ける蒸気噴出ノズル6が配備されている(図1)。
【0023】
蒸気噴出ノズル6には不図示のスチームヘッダーから矢印7で示すように、種々のバルブ、絞りバルブが配備されている高温蒸気供給ラインを介して、高温蒸気が供給される。蒸気噴出ノズル6に供給された高温蒸気は、蒸気噴出ノズル6の噴出口9から矢印8で示すように、排出シャッター5の周壁外面に吹き付けられる。なお、高温蒸気供給ラインにはドレン11が接続されている。
【0024】
蒸気噴出ノズル6は、図2に符号6a、6b、6c、6dで示すように、排出シャッター5に沿って、互いの間に所定の間隔をあけて複数個、蒸気噴出口9から排出シャッター5の周壁外面までの距離が同一になっている位置関係で配備されている。
【0025】
図1図2図示の実施形態では、蒸練室1は円筒状で、蒸練室1の下側における周壁の一部を形成している排出シャッター5も、図2図示のように弧状になっている。そこで、蒸気噴出ノズル6a、6b、6c、6dは、図2図示のように、排出シャッター5に沿って、円筒状の蒸練室1の円周方向に複数個、蒸気噴出口9から排出シャッター5の周壁外面までの距離が同一になっている位置関係で配備されている。
【0026】
蒸練室内部2において上述した蒸練が行われ、排出シャッター5が開かれて、蒸練によって生成された菓子材料が、排出シャッター5によって閉鎖されていた開口部を介して、蒸練室内部2から次の菓子製造工程に移されていくまでの間、蒸気噴出ノズル6a、6b、6c、6dから、間欠的に、上述した、排出シャッター5の周壁外面に向けた、高温蒸気の吹き付けが行われる。
【0027】
これによって、蒸練後の菓子材料が排出シャッター5にこびりつくことがなくなる。そこで、蒸練室内部2で撹拌羽根3が回転することで原料が撹拌されて生成された蒸練後の菓子材料が排出シャッター5にこびりついて、固化、固着するおそれの少ない蒸練装置を提供することができる。
【0028】
この結果、本実施形態の蒸練装置を用いて蒸練工程を行って菓子を製造すると、排出シャッターに固化、固着し、ガラス化した固形物が、排出シャッターから分離して蒸練後の菓子材料の中に落下するおそれがなくなる。既にガラス化している固形物が蒸練後の菓子材料の中に混入してしまうと、当該ガラス化している固形物はその後の菓子製造工程において軟化することが無いので、最終製品の中にガラス化している硬い固形物の状態で残存し、外見からでは認識できない不良品の菓子として消費者に提供されることになる。
【0029】
この実施形態の蒸練装置を用いて蒸練工程を行うことでこのような不良品が発生する可能性を防止することが可能になる。
【0030】
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明したが本発明はかかる実施形態に限定されることなく特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 蒸練室1
2 蒸練室内部2
3 撹拌羽根3
5 排出シャッター5
10 散水ノズル
9 蒸気噴出ノズルの噴出口
6、6a、6b、6c、6d 蒸気噴出ノズル
図1
図2
図3