(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】白血病治療のための非晶質炭酸カルシウム
(51)【国際特許分類】
A61K 33/10 20060101AFI20221005BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221005BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221005BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221005BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20221005BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20221005BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20221005BHJP
【FI】
A61K33/10
A61P35/02
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/24
A61K47/20
A23L33/16
(21)【出願番号】P 2019521063
(86)(22)【出願日】2017-10-23
(86)【国際出願番号】 IL2017051160
(87)【国際公開番号】W WO2018078616
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-20
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515217694
【氏名又は名称】アモーフィカル リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベン,ヨセフ
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-505818(JP,A)
【文献】特表2011-501676(JP,A)
【文献】特表2008-500332(JP,A)
【文献】特表2015-500333(JP,A)
【文献】国際公開第2016/016893(WO,A1)
【文献】Blood,2005年,Vol.106, No.11,Abstract No.921
【文献】Contemporary Clinical Trials,2007年,Vol.29, No.5,p.711-719
【文献】Annals of Pharmacotherapy,2009年,Vol.43, No.4,p.714-720
【文献】Best Practice and Research,2005年,Vol.19, No.6,p.991-1005
【文献】The American Journal of Clinical Nutrition,2007年,Vol.85, No.6,p.1586-1591
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患の初期段階にある慢性リンパ性白血病(CLL)の治療に使用するための非晶質炭酸カルシウム(ACC)と、前記ACCを安定化させる少なくとも1種の安定化剤を含む組成物であって、
前記少なくとも1種の安定化剤は、ポリリン酸塩、有機酸、リン酸化アミノ酸、ビスホスホネート、リン酸化有機酸、ヒドロキシカルボン酸のリン酸または硫酸エステル、水酸化アルカリと組み合わせたヒドロキシル含有有機化合物、およびこれらの任意の組み合わせから選択され、
前記初期段階が病
期0または病
期Iであり、
前記治療における前記ACCの投与量は、約500mg/日~約5000mg/日であることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記ポリリン酸塩は、三リン酸塩、ピロリン酸塩およびヘキサメタリン酸塩から選択される無機ポリリン酸塩であり、前記リン酸化アミノ酸は、ホスホセリンまたはホスホトレオニンから選択され、前記有機酸は、クエン酸および酒石酸から選択され、前記ビスホスホネートは、アレンドロン酸塩、エチドロン酸、ゾレドロン酸およびメドロン酸から選択される、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記安定化剤が、ポリリン酸塩またはビスホスホネートであり、前記安定化剤のP原子と前記ACCのCa原子とのモル比が、約1:90~1:1である、請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記CLLの前記治療は、前記CLLの発症を停止させること、抑制すること、予防すること、および逆転させることのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記組成物が経口投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記安定化剤が、クエン酸
、ホスホセリン、三リン酸塩、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記組成物が、医薬組成物、栄養補助組成物、食品補助剤、または医療用食品として配合される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
病期0の慢性リンパ性白血病の治療に使用するための非晶質カルシウム炭酸塩を含む医薬組成物であって、ACCが、ホスホセリン、三リン酸塩、クエン酸、ホスホセリンとクエン酸との組み合わせ、および三リン酸塩とクエン酸との組み合わせから選択される安定化剤によって安定化され、前記治療における前記ACCの投与量は、約500mg/日~約5000mg/日であることを特徴とする、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された非晶質炭酸カルシウムを使用して、白血病、特に慢性リンパ性白血病を治療する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性リンパ性白血病(CLL)は、成人の白血病の最も一般的な種類の1つである。この白血病は、中高年において発症することが多く、まれに小児において発症する。通常、CLLでは、いかなる徴候または症状も引き起こされることはなく、定期的な血液検査中に発見される。CLLは、一般に、以下のスキームに従って病期分類される:病期0-リンパ球数の増加(リンパ球増加症)および他のいかなる徴候もない「バスケット」細胞の出現(「バスケット」または「汚れ」細胞は、これらの細胞の脆弱的性質のために定期的な血液塗抹標本のスライド調製中に「汚れ」を受ける本質的な新生細胞である)。病期I-リンパ球増加症およびリンパ節腫大の出現。病期II-リンパ球+肝腫大または脾腫の出現。リンパ節が腫大していることもある。病期III-リンパ球+赤血球数の減少、肝臓、脾臓またはリンパ節が腫大していることもある。病期IV-リンパ球+血小板数の減少、リンパ節、肝臓、または脾臓が腫大し、赤血球数が減少していることもある。
【0003】
CLLを治療するためのいくつかの方法は、現在、疾患の進行段階、例えば病期0などの疾患の初期段階に存在するが、本治療では、通常、経過観察(watchful waiting)である。すなわち、疾患がより進行した段階に達するまで、かつ/または徴候もしくは症状が現れるか変化するまでいかなる治療も提供せずに、患者の状態を注意深く監視することである。
【0004】
CLLの発症率が一定して増加していること、および疾患の早期診断を可能にする診断手段の改善を考慮すると、特にCLLの初期段階で、新しい治療法について、解決されていない課題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、安定な非晶質炭酸塩を含む組成物を使用して、白血病、特に慢性リンパ性白血病を治療する方法に関する。予想外にも、安定化された非晶質炭酸カルシウムは慢性リンパ性白血病(CLL)の初期段階での発症を遅らせるか、または停止させ得ることがわかった。これは、ACCの投与時に、治療の開始後少なくとも3ヶ月間、WBC(白血球)のレベルの上昇が停止したという、病期0のCLLと診断された個人の観察に基づいている。
【0006】
一態様では、本発明は、白血病の治療に使用するための非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む組成物を提供し、ACCは、少なくとも1種の安定化剤によって安定化されている。いくつかの実施形態では、白血病は、慢性白血病および急性白血病である。他の実施形態では、慢性白血病は、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、およびヘアリー細胞白血病から選択される。一実施形態によれば、白血病は、慢性リンパ性白血病(CLL)である。ある実施形態によれば、CLLは、病気の初期段階である。いくつかの実施形態によれば、CLLの初期段階は、経過観察段階である。別の実施形態によれば、初期段階は、病期0である。
【0007】
いくつかの実施形態では、白血病は、急性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病から選択される急性白血病である。
【0008】
ある実施形態によれば、ACCは、天然ACCおよび合成ACCから選択される。
【0009】
一実施形態によれば、ACCは、合成ACCである。こうした実施形態によれば、ACCは、少なくとも1種の安定化剤よって安定化される。いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ポリリン酸塩、有機酸、リン酸化アミノ酸、ビスホスホネート、リン酸化有機酸、ヒドロキシカルボン酸のリン酸または硫酸エステル、水酸化アルカリと組み合わせたヒドロキシル含有有機化合物、およびこれらの任意の組み合わせから選択される。他の実施形態によれば、ポリリン酸塩は、三リン酸塩、ピロリン酸塩およびヘキサメタリン酸塩から選択される無機ポリリン酸塩であり、リン酸化アミノ酸は、ホスホセリンまたはホスホスレオニンから選択され、有機酸は、クエン酸および酒石酸から選択され、ビスホスホネートは、アレンドロン酸塩、エチドロン酸、ゾレドロン酸およびメドロン酸から選択される。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、白血病の治療は、白血病の発症を停止させること、抑制すること、予防すること、および逆転させることのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態によれば、白血病の発症を停止させること、抑制すること、または予防することは、リンパ球増加症の進行を停止させること、または抑制することを含む。
【0011】
他の実施形態によれば、白血病の治療は、約500mg/日~約5000mg/日のACCを投与することを含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は、経口投与する。
【0012】
一実施形態によれば、本発明は、慢性リンパ性白血病の治療に使用するため、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された非晶質カルシウム炭酸塩を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、慢性リンパ性白血病は、病期0または病期Iである。一実施形態によれば、安定化剤は、ホスホセリン、三リン酸塩、クエン酸、ホスホセリンとクエン酸との組み合わせ、および三リン酸塩とクエン酸との組み合わせから選択される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本組成物は、医薬組成物、栄養補助組成物、食品補助剤、または医療用食品として配合される。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、病期0の慢性リンパ性白血病の治療に使用するための非晶質カルシウム炭酸塩を含む医薬組成物を提供し、ACCは、ホスホセリン、三リン酸塩、クエン酸、ホスホセリンとクエン酸との組み合わせ、および三リン酸塩とクエン酸との組み合わせから選択される安定化剤によって安定化される。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された有効量の非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む組成物を投与することを含む、それを必要とする対象における白血病の治療方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、白血病は、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、およびヘアリー細胞白血病からなる群から選択される慢性白血病、または急性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病からなる群から選択される急性白血病である。いくつかの実施形態によれば、本発明は、慢性リンパ性白血病を治療する方法を提供する。一実施形態によれば、慢性白血病は、疾患の病期0にある。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、白血病を治療する方法は、白血病の発症を停止させること、抑制すること、または予防することのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態によれば、白血病の発症を停止させること、抑制すること、または予防することは、リンパ球増加症の進行を停止させること、または抑制することを含む。いくつかの実施形態によれば、リンパ球増加症の進行を停止させることは、白血球のレベルを少なくとも3ヶ月間同じレベルに維持することを含む。
【0017】
他の実施形態によれば、この方法は、約500mg/日~約5000mg/日のACCを投与することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、ACCおよび少なくとも安定化剤を含む組成物は、医薬組成物、栄養補助組成物、食品補助剤、または医療用食品として配合される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、白血病の治療のための組成物および方法に関する。驚くべきことに、本発明によれば、安定な非晶質炭酸カルシウム(ACC)が慢性リンパ性白血病のさらなる進行を首尾よく遅延させるか、または防ぐことさえ可能であることが見出された。さらに予想外にも、疾患の非常に早い段階で、疾患の進行が阻害されていることが観察され、この段階での通常受け入れられる治療は経過観察である。
【0020】
一態様によれば、本発明は、白血病の治療における使用のための非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む組成物を提供し、ACCは、少なくとも1種の安定化剤によって安定化されている。
【0021】
用語「治療すること」および「治療」は、本明細書では同義的に使用され、臨床結果など、有益なまたは所望の結果を得るための手段を講じることを指す。有益なまたは望ましい臨床結果としては、白血病、特に慢性リンパ性白血病に関連する1つ以上の症状の軽減または改善、白血病の発症または進行の遅延または速度の低下、疾患の改善、緩和または安定化、および他の有益な結果が挙げられるが、これらに限定されない。特に、一実施形態によれば、白血病を治療することは、白血病の発症を停止させること、抑制すること、逆転させること、および予防することのうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
用語「白血病」は、骨髄および循環WBCを含む白血球(WBC)、ならびに脾臓およびリンパ節などの臓器の癌を指す。一実施形態によれば、白血病は、慢性白血病である。いくつかの実施形態によれば、慢性白血病は、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、およびヘアリー細胞白血病から選択される。他の実施形態によれば、白血病は、急性白血病である。いくつかの実施形態によれば、急性白血病は、急性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、白血病は、慢性白血病である。したがって、一実施形態によれば、本発明は、慢性白血病の治療に使用するための少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCを含む組成物を提供する。一実施形態によれば、白血病は、慢性リンパ性白血病(CLL)である。CLLは、一般に、以下のスキームに従って病期分類される:病期0-リンパ球数の増加(リンパ球増加症)および他のいかなる徴候もない「バスケット」細胞の出現。病期I-リンパ球増加症およびリンパ節腫大の出現。病期II-リンパ球+肝腫大または脾腫の出現。リンパ節が腫大していることもある。病期III-リンパ球+赤血球数の減少、肝臓、脾臓またはリンパ節が腫大していることもある。病期IV-リンパ球+血小板数の減少、リンパ節、肝臓、または脾臓が腫大し、赤血球数が減少していることもある。一実施形態において、CLLは、疾患の病期0、病期I、病期II、病期III、または病期IVにある。
【0024】
別の実施形態によれば、CLLは、疾患の初期段階にある。一実施形態によれば、初期段階は、経過観察段階であり、すなわち、経過観察治療が一般的に推奨される段階である。別の実施形態によれば、初期段階は、CLLの病期0である。別の実施形態によれば、初期段階は、CLLの病期Iである。
【0025】
「非晶質炭酸カルシウム」、「ACC」、「安定ACC」および「安定化ACC」という用語は、本明細書では同義的に使用され、炭酸カルシウムの非晶質形態を指す。本明細書で使用される「安定」という用語は、炭酸カルシウムが、長期間非晶質形態で、例えば、少なくとも7日間、約30%未満または約30%の結晶性炭酸カルシウムを有する固体形態で維持されることを示す。上記実施形態のうちのいずれか1つによれば、組成物は、少なくとも7日間安定である。いくつかの実施形態によれば、組成物は、少なくとも1ヶ月間安定である。他の実施形態によれば、組成物は、少なくとも3月間安定である。さらなる実施形態によれば、組成物は、6ヶ月間安定である。ある実施形態によれば、組成物は、少なくとも1年間安定である。特定の実施形態によれば、組成物は、少なくとも2年間安定である。
【0026】
上記実施形態のいずれか1つによれば、少なくとも1種の安定化剤によって安定化されたACCは、天然ACCである。本明細書で使用される「天然ACC」という用語は、天然の供給源から単離または誘導された任意のACCを指す。ACCの天然源の非限定的な例としては、淡水甲殻類の胃石が挙げられる。ある実施形態では、天然に存在するACC供給源は、本質的に国際公開第2005/115414号に記載されているように、微粉末に粉砕された胃石器官(gastrolith organ)またはその一部が挙げられる。任意により、ACCは、天然に存在するACCと合成されたACCとの組み合わせを含む。
【0027】
別の実施形態によれば、ACCは、合成ACCである。本明細書で使用される「合成ACC」という用語は、一般に、エクスビボでヒトによって産生されるあらゆるACCを指す。いくつかの実施形態によれば、ACCは、本明細書で以下に定義される少なくとも1種の安定化剤によって安定化された合成ACCである。
【0028】
用語「安定化剤(stabilizing agent)」および「安定化剤(stabilizer)」は、本明細書では同義的に使用され、ACCの製造、配合および/または貯蔵中において、炭酸カルシウムを非晶質状態に保持するのに寄与するあらゆる物質を指す。ある実施形態では、安定化剤は単剤である。他の実施形態では、いくつかの安定化剤の使用が包含される。
ACC安定化剤
【0029】
安定化剤は、これらに限定されないが、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、アミン基、ホスフィノ基、ホスホノ基、ホスフェート基、スルホニル基、スルフェート基、またはスルフィノ基から選択される1つ以上の官能基を有する分子を含んでもよい。ヒドロキシ含有化合物は、水酸化物と組み合わせて、任意によりカルボキシルなどの他の機能も有するが、ヒドロキシルはエステル化されていない。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、哺乳動物の細胞または生物、特にヒトに対して毒性が低いかまたは毒性が全くない。いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、食品、栄養補助、または医薬品グレードのものである。
【0031】
ある実施形態では、ACC安定化剤は、各々の場合、独立して、有機酸、リン酸化、ホスホン酸化、硫酸化またはスルホン酸化有機化合物、ヒドロキシルカルボン酸のリン酸または硫酸エステル、有機アミン化合物、ヒドロキシルを含む有機化合物、有機リン化合物またはそれらの塩、リン酸化アミノ酸およびその誘導体、ビスホスホネート化合物、有機ホスフェート化合物、有機ホスホネート化合物、無機亜リン酸、上記で定義した複数の官能基を有する有機化合物、無機ホスフェート、およびポリホスフェート化合物、ポリリン酸鎖を有する有機化合物、有機界面活性剤、生物必須無機イオン、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、有機酸である。ある実施形態によれば、有機酸は、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、グルタコン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、アコニット酸から選択され、かつ任意により、少なくとも2個のカルボキシル基を有し、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸など、250g/mol以下の分子量を有する化合物が挙げられる。1つの特定の実施形態によれば、安定化剤は、クエン酸である。
【0033】
別の実施形態では、ヒドロキシカルボン酸のリン酸エステルは、ホスホエノールピルビン酸塩である。別の実施形態では、ヒドロキシカルボン酸のリン酸エステルまたは硫酸エステルは、例えば、リン酸化アミノ酸などのアミノ酸を含む。こうしたエステルの例としては、ホスホセリン、ホスホスレオニン、スルホセリン、スルホトレオニンおよびホスホクレアチンである。
【0034】
水酸化物と組み合わせたヒドロキシル含有化合物は、例えば、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類および多糖類(スクロースなど)、またはグリセロールなどの他のポリオールを含んでもよい。ヒドロキシル含有化合物は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などのヒドロキシ酸、またはセリンもしくはトレオニンなどのヒドロキシル含有アミノ酸をさらに含んでもよい。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0035】
このようなACC安定化剤についてのいくつかの特定の非制限的の例としては、フィチン酸、クエン酸、ピロリン酸ナトリウム二塩基、アデノシン5’-一リン酸(AMP)ナトリウム塩、アデノシン5’-二リン酸(ADP)ナトリウム塩およびアデノシン5’-三リン酸(ATP)二ナトリウム塩水和物、ホスホセリン、リン酸化アミノ酸、食品用界面活性剤、ステアロイル乳酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ホスホエノールピルビン酸塩、ホスホセリン、ホスホルトレオニン、スルホセリンまたはスルホトレオニンなど、ヒドロキシルカルボン酸のリン酸エステルまたは硫酸エステル、および単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類、および多糖類(例えば、スクロース、マンノース、グルコース)から選択されるヒドロキシル含有有機化合物から選択される少なく1つの成分を含む。ヒドロキシル含有化合物は、少なくとも1つの水酸化アルカリ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどをさらに含んでもよい。リン酸化酸は、オリゴペプチドおよびポリペプチド中に存在してもよい。本発明の他の実施形態では、安定化剤は、モノカルボン酸または複数のカルボン酸、例えばジカルボン酸またはトリカルボン酸から選択される有機酸である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。有機酸は、上記で定義されたとおりであり得る。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、ACC安定化剤は、リン酸化アミノ酸、ポリオールおよびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、安定ACCは、安定化剤としてリン酸化化合物を含み、リン酸化が有機化合物のヒドロキシ基で行われる。いくつかの実施形態では、安定ACCは、クエン酸、ホスホセリン、ホスホトレオニン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される安定化剤を含む。ホスフェート、ホスファイト、ホスホネート基およびそれらの塩もしくはエステルを含有する安定剤の非限定的な例としては、フィチン酸、リン酸ジメチル、リン酸トリメチル、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸テトラエチル、リブロースビスホスフェート、エチドロン酸および他の医療用ビスホスホネート、3-ホスホグリセリン酸の塩、グリセルアルデヒド3-リン酸、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸ナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、ニトリロトリ(メチルホスホン酸)、5-ホスホ-D-リボース1-二リン酸五ナトリウム塩、アデノシン5’-二リン酸ナトリウム塩、アデノシン5’-三リン酸二ナトリウム塩水和物、α-D-ガラクトサミン1-リン酸、2-ホスホ-L-アスコルビン酸三ナトリウム塩、α-D-ガラクトース1-リン酸二カリウム塩五水和物、α-D-ガラクトサミン1-リン酸、O-ホスホリルエタノールアミン、二ナトリウム塩水和物、2,3-ジホスホ-D-グリセリン酸五ナトリウム塩、ホスホ(エノール)ピルビン酸一ナトリウム塩水和物、D-グリセルアルデヒド3-リン酸塩、sn-グリセロール3-リン酸リチウム塩、D-(-)-3-ホスホグリセリン酸二ナトリウム塩、D-グルコース6-リン酸ナトリウム塩、ホスファチジン酸、イバンドロン酸ナトリウム塩、ホスホノ酢酸、DL-2-アミノ-3-ホスホノプロピオン酸またはそれらの組み合わせが挙げられる。生物必須無機イオンは、とりわけ、酸化物相中のNa、K、Mg、Zn、Fe、P、S、N、PもしくはS、またはアンモニアまたはニトロ基としてのNを含んでもよい。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ポリリン酸塩またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態によれば、ポリリン酸塩は、ナトリウム、カリウムおよび任意の他のポリリン酸塩の必須カチオンからなる群から選択される、生理学的に適合性のある水溶性ポリリン酸塩である。一実施形態では、ポリリン酸塩は、有機または無機ポリリン酸塩である。本明細書で使用される「ポリリン酸塩」という用語は、PO4のポリマーエステルを指す。いくつかの実施形態によれば、ポリリン酸塩は、ポリリン酸ナトリウムおよびポリリン酸カリウムからなる群から選択される、生理学的に適合性のある水溶性ポリリン酸塩である。いくつかの実施形態では、ポリリン酸塩は、無機ポリリン酸塩またはその薬学的に許容される塩である。こうした塩の非限定的な例は、Na、K、Mg、MnおよびZnである。いくつかの実施形態によれば、無機リン酸塩は、2~10個のリン酸基、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のリン酸基を含む。いくつかの実施形態によれば、ポリリン酸塩は、ピロリン酸塩、三リン酸塩、およびヘキサメタリン酸塩から選択される。一実施形態によれば、安定化剤は、ピロリン酸塩、またはその薬学的に許容される塩、例えばピロリン酸ナトリウムである。別の実施形態によれば、安定化剤は、三リン酸塩、またはその薬学的に許容される塩、例えば三リン酸ナトリウムである。用語「三リン酸塩」および「トリポリリン酸塩」は、本明細書では、同義的に使用される。さらなる実施形態によれば、安定化剤は、ヘキサメタリン酸またはその薬学的に許容される塩、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウムである。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ビスホスホネートまたはその薬学的に許容される塩である。塩の非限定的な例は、Na、K、Mg、MnおよびZnである。
【0040】
本明細書で使用される「ビスホスホネート」という用語は、2つのホスホネート(PO(OH)2)基を有する有機化合物を指す。この用語はさらに、PO3-有機-PO3の骨格を有する化合物に関する。最も典型的なのは、骨粗鬆症を治療するための医薬品として使用されている一連のビスホスホネートである。いくつかの実施形態によれば、ビスホスホネートは、エチドロン酸、ゾレドロン酸、メドロン酸、アレンドロン酸およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、エチドロン酸、またはその薬学的に許容される塩である。別の実施形態によれば、安定化剤は、ゾレドロン酸、またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態によれば、安定化剤は、メドロン酸、またはその薬学的に許容される塩である。ある実施形態によれば、安定化剤は、アレンドロン酸、またはその薬学的に許容される塩である。
【0041】
ある実施形態によれば、安定化剤は、リン酸化アミノ酸である。一実施形態によれば、リン酸化アミノ酸は、ホスホセリンである。別の実施形態によれば、リン酸化アミノ酸は、ホスホトレオニンである。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、上記で定義されたポリリン酸塩またはビスホスホネートであり、安定化剤のP原子とACCのCa原子とのモル比(P:Caモル比)は、約1:90~1:1である。一実施形態では、P:Caモル比は、約1:40~約1:1である。さらなる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。さらなる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1.6である。特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:15~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。いくつかの実施形態によれば、こうしたポリリン酸塩は、ピロリン酸塩、三リン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、またはそれらの薬学的に許容される塩である。別の実施形態によれば、ビスホスホネートは、アレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、またはメドロン酸であり、P:Caモル比は、上記に定義したとおりである。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤としてポリリン酸塩またはビスホスホネートを含むこうした組成物のカルシウム含有量(Ca含有量)は、約1重量%~約39重量%、約5重量%~約39重量%、約10重量%~約39重量%、約15重量%~約39重量%、約20重量%~約38重量%、約25重量%~約38重量%、または約30~約38である。「Ca含有量」および「カルシウム含有量」という用語は、本明細書において同義的に使用され、最終組成物中のACCのカルシウム含有量を指す。
【0044】
ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:40~約1:1であり、Ca含有量は、約20重量%~約39重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は、1:28~約1:3であり、Ca含有量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含有量は約30重量%~約36重量%である。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ポリリン酸塩、リン酸化アミノ酸、ビスホスホネート、クエン酸、酒石酸、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一実施形態によれば、ポリリン酸塩は、三リン酸塩、ピロリン酸塩、およびヘキサメタリン酸塩からなる群から選択され、リン酸化アミノ酸は、ホスホセリンまたはホスホトレオニンであり、またビスホスホネートは、アレンドロン酸塩、エチドロン酸、ゾレドロン酸およびメドロン酸からなる群から選択される。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ポリリン酸塩またはビスホスホネートであり、安定化剤のP原子とACCのCa原子とのモル比は、約1:90~1:1である。
【0047】
安定化されたACCは、1種超の安定化剤、例えば2種以上の安定化剤によって安定化され得る。いくつかの実施形態では、1種超の安定化剤、例えば、2種、3種、または4種の安定化剤が添加される。いくつかの実施形態では、第1の安定化剤と第2の安定化剤は、類似している。他の実施形態では、第1の安定化剤と第2の安定化剤は、異なる安定化剤である。第1の安定化剤と第2の安定化剤は、それぞれ独立して、本明細書の前述において定義されているものであってもよい。安定なACCは、2種超の安定化剤を含むことができ、1種以上の安定化剤は、ACCが形成され、沈殿する間に、ACCに添加される。
【0048】
一実施形態によれば、ACCは、ホスホセリンとクエン酸との組み合わせによって安定化される。別の実施形態によれば、ACCは、三リン酸塩とクエン酸との組み合わせによって安定化される。
【0049】
上記実施形態のいずれか1つによれば、安定化されたACCが存在し、粉末の形態である。いくつかの実施形態によれば、粉末中のACCの粒子は、約100μm未満の粒径を有する。いくつかの実施形態では、ACC粒子は、約100μm~約5μmの粒径を有する。他の実施形態では、粒径は、約50μm~約5μm、または約30~約5μmである。特定の一実施形態では、粒子は、50μm未満、40μm未満、30μm未満、20μm未満、または10μm未満のサイズを有する。いくつかの実施形態によれば、ACC粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%が5μm未満の粒径を有する。
【0050】
本明細書で使用される「粒子」という用語は、本明細書の上記で定義された安定化剤によって安定化されたACCの個別の微粒子またはナノ粒子、ならびにそれらの強凝集体(aggregate)または弱凝集体(agglomerate)を指す。いくつかの実施形態によれば、粒子は、安定化されたACCの一次粒子である。塩基性ナノ粒子は、5~500nm、10~300nm、または20~100nmの範囲内にある。これらのナノ粒子は直ちに凝集し、はるかに大きい二次粒子に集合凝集する。次いで、これらの強凝集体および弱凝集体は、製粉および溶解技術によってより小さな粒子に分解できる。他の実施形態によれば、粒子は、弱凝集体、または一次粒子の強凝集体、すなわち二次粒子である。
【0051】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、白血病を治療するという用語は、白血病の発症を停止させること、抑制すること、予防すること、または逆転させることのうちの少なくとも1つを含む。一実施形態によれば、白血病を治療することは、白血病の発症を停止させることを含む。疾患の発症は、白血病に関連するかまたは白血病を特徴とするパラメータのうちの少なくとも1つが変化することによって特徴付けられる。いくつかの実施形態によれば、白血病を治療することは、白血病の発症を抑制することを含む。さらなる実施形態によれば、白血病を治療することは、白血病の発症を予防することを含む。一実施形態によれば、白血病は、CLLである。このため、一実施形態では、CLLを治療することには、CLLの発症を停止させること、抑制すること、または予防することを含む。疾患の発症は、CLLに関連するかまたはCLLを特徴とするパラメータのうちの少なくとも1つが変化することによって特徴付けられる。このようなパラメータの非限定的な例は、WBC数の増加(リンパ球増加症)、「バスケット」細胞の出現、リンパ節腫大、肝腫大および/または脾腫の出現、赤血球数(RBC)の減少、ならびに血小板数の減少である。したがって、これらのパラメータのうちのいずれか1つの変化を停止させること、抑制すること、速度を低下させることは、CLLの発症を停止させる、抑制する、速度を低下させる、または予防するとみなされるか、またはCLLの発症を停止させること、抑制すること、速度を低下させること、または予防することを示している。一実施形態によれば、CLLを治療することには、CLLの初期段階で疾患の発症を停止させること、抑制すること、または予防することを含む。さらなる実施形態によれば、初期段階は、病期0である。別の実施形態によれば、初期段階は、病期Iである。ある実施形態では、CLLを治療することは、病期0および/または病期Iで治療することを含む。一実施形態によれば、CLLを治療すること、例えば、CLLの発症を停止させること、抑制すること、予防すること、または逆転させることは、リンパ球増加症の進行を停止させること、抑制すること、または逆転させることを含む。いくつかの実施形態によれば、リンパ球増加症の進行を抑制すること、または逆転させることは、リンパ球のレベルを少なくとも2ヶ月間同じレベルに維持することを含む。別の実施形態によれば、リンパ球増加症の進行を抑制すること、または逆転させることは、リンパ球のレベルを少なくとも3、4、5、6、9または12ヶ月間同じレベルに維持することを含む。別の実施形態によれば、CLLを治療することは、出現を予防すること、または「バスケット」細胞の出現の進行を停止させること、もしくは抑制すること、または「バスケット」細胞の数を減少させることを含む。別の実施形態によれば、CLLを治療することは、リンパ節腫大、肝腫大および/もしくは脾腫の出現を予防すること、またはリンパ節、肝臓および/もしくは脾臓の腫大を停止させること、抑制することを含む。一実施形態によれば、CLLを治療することは、リンパ節腫大、肝腫大および/または脾腫のサイズの縮小を得ることを含む。一実施形態によれば、サイズの減少は、10%、20%、30%、40%、または50%である。別の実施形態によれば、CLLを治療することは、RBC数、血小板数、またはその両方の減少を予防すること、停止させること、または抑制することを含む。いくつかの実施形態によれば、RBC数、血小板数、またはその両方の減少を停止させることまたは抑制することは、少なくとも2、3、4、5、6、9または12ヶ月間、RBC、血小板、またはその両方のレベルを同じレベルに維持することを含む。さらなる実施形態によれば、CLLを治療することは、RBC数および/または血小板数が増加することを含む。CLLの発症、特にCLLを特徴付けるパラメータを監視することは、任意の既知の方法によって達成することができる。
【0052】
本発明の使用のための組成物は、任意の既知の方法によって投与され得る。本発明の組成物の「投与すること(administering)」または「の投与(administration of)」という用語は、当業者に公知である様々な方法のうちの1つを使用して実施できる。例えば、組成物は、経腸または非経口により投与されてもよい。経腸とは、経口、舌下または直腸など、胃腸管を介する投与を指す。非経口投与としては、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、眼内、舌下、鼻腔内、吸入、脊髄内、脳内、および経皮(例えば、皮膚管を通した吸収による)投与が挙げられる。本発明の組成物はまた、再充電可能な、または生分解性ポリマーデバイス、または他のデバイス、例えばパッチおよびポンプ、または配合物によって適切に導入でき、これにより、化合物または剤の徐放、遅延放出、または制御放出がもたらされる。投与することは、例えば、1回、複数回、および/または1つ以上の長期間にわたって実施することもできる。いくつかの態様では、投与は、自己投与などの直接投与、および薬物または医療用食品を処方する行為などの間接投与の両方を含む。例えば、本明細書で使用するとき、患者に薬物または医療用食品を自己投与するように指示するか、またはその薬物もしくは医療用食品を別の人に投与させるように指示する医師、かつ/または患者に薬物もしくは医療用食品の処方を提供する医師が、患者に薬物または医療用食品を投与している。
【0053】
一実施形態では、本発明の組成物は、全身投与によって投与される。例えば、本発明の組成物は、経口投与、舌下投与または直腸投与されてもよい。あるいは、本発明の組成物は、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、眼内、舌下、鼻腔内、吸入、脊髄内、脳内、および経皮により投与されてもよい。1つの特定の実施形態では、本発明の組成物は、経口投与される。
【0054】
上記実施形態のいずれか1つによれば、白血病を治療することは、約500mg/日~約5000mg/日、約750mg/日~約4000mg/日のACC、約1000mg/日~約3000mg/日、または約1500mg/日~約2500mg/日の安定化ACCを投与することを含む。一実施形態によれば、白血病を治療することは、約500mg/日~約3000mg/日、または約1000mg/日~約2500mg/日の安定化ACCを投与することを含む。一実施形態によれば、白血病は、CLLである。
【0055】
上記実施形態のいずれか1つによれば、本発明の組成物は、医薬組成物、栄養補助組成物、食品補助剤、または医療用食品として配合される。
【0056】
一実施形態によれば、白血病の治療における使用のための安定化ACCを含む組成物は、医薬組成物である。別の実施形態によれば、白血病の治療における使用のための安定化ACCを含む組成物は、栄養補助組成物である。さらに別の実施形態によれば、白血病の治療における使用のための安定化ACCを含む組成物は、食品補助剤である。さらなる実施形態によれば、白血病の治療における使用のための安定化ACCを含む組成物は、医療用食品である。こうした実施形態によれば、白血病は、CLLである。別の実施形態によれば、CLLは、病期0または病期Iにある。
【0057】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、安定化ACCおよび薬学的に許容される賦形剤を含む任意の組成物を指す。
【0058】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、あらゆるおよびすべての溶媒、分散媒、防腐剤、抗酸化剤、コーティング剤、等張剤および吸収遅延剤、界面活性剤、増量剤、崩壊剤、結合剤、希釈剤、潤滑剤、流動促進剤、pH調整剤、緩衝剤、促進剤、湿潤剤、可溶化剤、界面活性剤、酸化防止剤など、医薬品の投与と両立し得るものを指す。薬学的に活性な物質のためのこうした媒体および剤の使用は、当技術分野において周知である。組成物は、補足的、追加的または増強された治療機能をもたらす他の活性化合物を含んでもよい。
【0059】
「薬学的に許容される」および「薬理学的に許容される」という用語は、必要に応じて動物またはヒトに投与したときに、有害、アレルギー、または他の有害反応を生み出すことのない分子実体および組成物を含む。ヒトへ投与するためには、調製物は、例えば米国食品医薬品局(FDA)のOffice of Biologics standardsなどの政府の薬品規制機関によって要求される無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度規格を満たしているべきである。
【0060】
本明細書で使用されるとき、用語「栄養補助組成物」は、健康上の利益を提供するかまたは疾患の予防もしくは軽減と関連している治療作用を有する1つ以上の天然産生物を含む、ヒトまたは動物での使用に好適である組成物を指す。
【0061】
「食品補助剤」という用語は、上記組成物を含有し、欧州指令などの任意の許容される指令に従って健康に有益な栄養素を提供することによって食品を補助することを意図した製品を意味するために使用される。例えば、食品補助剤は、飲み込むためのカプセル剤もしくは錠剤、または食品と混合して有益な健康効果を提供するための粉末または小バイアルであってもよい。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「医療用食品」とは、対象における疾患または障害の食事管理のために特別に配合された食品を指す。
【0063】
本発明の組成物は、上記で定義したように配合されてもよい。1つの特定の実施形態では、安定化ACCを含む組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末剤または顆粒剤から選択される固体剤形として配合される。別の実施形態では、安定化ACCを含む組成物は、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤、またはゲル剤から選択される液体または半液体剤形として配合される。さらなる実施形態によれば、組成物は、吸入用組成物として配合される。
【0064】
ある実施形態によれば、本発明は、白血病の治療に使用するため、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された非晶質カルシウム炭酸塩を含む組成物を提供する。一実施形態によれば、白血病は、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、およびヘアリー細胞白血病などの慢性白血病である。一実施形態によれば、本発明は、CLLの治療に使用するためのACCを含む組成物を提供し、ACCは、少なくとも1種の安定化剤によって安定化されている。一実施形態によれば、治療することは、病期0において、CLLを治療することを含む。別の実施形態によれば、治療することは、病期Iにおいて治療することを含む。さらなる実施形態によれば、治療することは、約500mg/日~約5000mg/日、または約750mg/日~約4000mg/日、約1000mg/日~約3000mg/日、または約1500mg/日~約2500mg/日の安定化ACCを投与することを含む。いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、三リン酸塩、ピロリン酸塩、およびヘキサメタリン酸塩などのポリリン酸塩;ホスホセリンまたはホスホトレオニンなどのリン酸化アミノ酸、またはアレンドロン酸塩、エチドロン酸、ゾレドロン酸およびメドロン酸などのビスホスホネート;クエン酸、酒石酸などの有機酸;およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一実施形態によれば、白血病を治療することは、白血病の発症を停止させること、抑制すること、予防することのうちの少なくとも1つを含む。一実施形態によれば、組成物は、医薬組成物である。別の実施形態によれば、組成物は、栄養補助組成物または食品補助剤である。
【0065】
一実施形態によれば、本発明は、病期0および/または病期IにおけるCLLの治療に使用するための、ACCおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供し、ACCは、ホスホセリン、三リン酸塩、クエン酸、ホスホセリンとクエン酸との組み合わせ、および三リン酸塩とクエン酸との組み合わせから選択される安定化剤によって安定化される。一実施形態によれば、治療は、約500mg/日~約5000mg/日または約1000mg/日~約3000mg/日の安定化ACCの投与を含む。一実施形態によれば、医薬組成物は、経口投与される。
【0066】
一実施形態によれば、本発明は、病期0および/または病期IにおけるCLLの治療に使用するための、ACCを含む食品補助剤を提供し、ACCは、ホスホセリン、三リン酸塩、クエン酸、ホスホセリンとクエン酸との組み合わせ、および三リン酸塩とクエン酸との組み合わせから選択される安定化剤によって安定化される。一実施形態によれば、治療は、約500mg/日~約5000mg/日または約1000mg/日~約3000mg/日の安定化ACCの投与を含む。
【0067】
一態様によれば、本発明は、少なくとも1種の安定化剤によって安定化された有効量の非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む組成物を投与することを含む、それを必要とする対象における白血病の治療方法を提供する。一実施形態によれば、白血病は、慢性白血病である。いくつかの実施形態によれば、慢性白血病は、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、およびヘアリー細胞白血病から選択される。他の実施形態によれば、白血病は、急性白血病である。いくつかの実施形態によれば、急性白血病は、急性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病から選択される。
【0068】
本明細書で使用される用語「有効量」は、任意の医学的または栄養学的治療に適用可能な妥当な利益/リスク比で白血病を治療するための安定化ACCを含む組成物の十分な量を指す。
【0069】
一実施形態によれば、本発明は、上記に定義した少なくとも1種の安定化剤によって安定化された有効量の非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む組成物を投与することを含む、それを必要とする対象におけるCLLの治療方法を提供する。一実施形態によれば、治療することは、疾患の初期段階、例えば病期0にある。さらなる実施形態によれば、本方法は、約500mg/日~約5000mg/日、約750mg/日~約4000mg/日、約1000mg/日~約3000mg/日、または約1500mg/日~約2500mg/日の安定化ACCを投与することを含む。一実施形態によれば、CLLを治療することは、白血病の発症を停止させること、抑制すること、および予防することからなる群のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態によれば、CLLを治療することは、リンパ球増加症の進行を停止させること、抑制すること、または逆転させること;「バスケット」細胞の出現の進行を停止させること、または抑制すること;「バスケット」細胞の数を減少させること;リンパ節腫大、肝腫大および/または脾腫の出現を予防すること;リンパ節、肝臓および/または脾臓の腫大を停止させることまたは抑制すること;リンパ節腫大、肝腫大および/または脾腫のサイズを減少させること;RBC数の減少を妨げること、停止させること、抑制すること;血小板数の減少を妨げること、停止させること、抑制すること;RBC数を増加させること;および血小板数中の赤血球を増加させることの群のうちの少なくとも1つを含む。一実施形態によれば、リンパ球増加症の進行を抑制すること、または逆転させることは、リンパ球のレベルを少なくとも3、4、5、6、9または12ヶ月間同じレベルに維持することを含む。別の実施形態によれば、リンパ節腫大、肝腫大および/または脾腫のサイズの減少は、10%、20%、30%、40%または50%減少することを含む。他の実施形態によれば、RBC数、血小板数、またはその両方の減少を停止させることまたは抑制することは、少なくとも2、3、4、5、6、9または12ヶ月間、RBC、血小板、またはその両方のレベルを同じレベルに維持することを含む。いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、三リン酸塩、ピロリン酸塩、およびヘキサメタリン酸塩などのポリリン酸塩;ホスホセリンまたはホスホトレオニンなどのリン酸化アミノ酸、またはアレンドロン酸塩、エチドロン酸、ゾレドロン酸およびメドロン酸などのビスホスホネート;クエン酸、酒石酸などの有機酸;およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。上記実施形態のいずれか1つによれば、本発明の組成物は、医薬組成物、栄養補助組成物、食品補助剤、または医療用食品として配合される。一実施形態では、安定化ACCまたはその組成物は、全身投与により投与される。例えば、組成物は、経口、舌下、直腸により投与される。あるいは、組成物は、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、眼内、舌下、鼻腔内、吸入、脊髄内、脳内、および経皮により投与される。一実施形態では、組成物は、経口投与される。一実施形態によれば、この方法は、上記の安定ACCを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0070】
別の態様によれば、本発明は、白血病の治療に使用するための医薬品を調製するための少なくとも1種の安定化剤によって安定化されている非晶質炭酸カルシウムを提供する。一実施形態によれば、白血病は、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、およびヘアリー細胞白血病などの慢性白血病、または急性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病などの急性白血病である。1つの特定の実施形態によれば、白血病は、CLLである。一実施形態によれば、治療することは、疾患の初期段階、例えば病期0において治療することを含む。さらなる実施形態によれば、本方法は、約500mg/日~約5000mg/日、約750mg/日~約4000mg/日のACC、約1000mg/日~約3000mg/日、または約1500mg/日~約2500mg/日の安定化ACCを投与することを含む。いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、三リン酸塩、ピロリン酸塩、およびヘキサメタリン酸塩などのポリリン酸塩;ホスホセリンまたはホスホトレオニンなどのリン酸化アミノ酸、またはアレンドロン酸塩、エチドロン酸、ゾレドロン酸およびメドロン酸などのビスホスホネート;クエン酸、酒石酸などの有機酸;およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0071】
用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有している(having)」、「有する(has)」、および「含有する(contain(s))」は、本明細書では同義的に使用されており、「少なくとも一部からなる(consisting at least in part of)」の意味を有する。「含む(comprising)」という用語を含む本明細書中の各記載を解釈するとき、それ以外の特徴またはその用語の前に付くものも存在し得る。「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの関連用語も同様に解釈されるべきである。用語「有する(have)」、「有する(has)」、「有している(having)」および「含んでいる(comprising)」という用語はまた、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」という意味を包含することがあり、これらの用語によって置き換えられることがある。用語「からなる(consisting of)」は、具体的に描写または列挙されていない任意の構成要素、ステップまたは手順を除外するものである。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、組成物または成分が追加の成分を含み得ることを意味するが、これは、追加の成分が特許請求の範囲に記載の組成物または方法の基本的および新規な特徴を実質的に変えることのない場合に限る。
【0072】
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、量、時間期間などの測定可能な値を指す場合、指定された値から±10%、または±5%、±1%、さらには±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0073】
本明細書で使用される用語「または(or)」は、適切な場合には組み合わせることができる代替案を表す。すなわち、用語「または(or)」は、列挙された各選択肢を別々に含み、その組み合わせが相互に排他的ではない場合はそれらの組み合わせを含む。
【0074】
これまで、本発明を一般的に記述しており、このことは、以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されよう。また、これらは説明のために提供されているものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
実施例
【0075】
概して健康である72歳の男性では、いくつかの結果として生じる血液検査において、白血球値が段階的に増加していることが示された。さらに、「かご細胞」が観察され、活力の減少が示され、かつこの男性は、頻繁に眠った状態になる傾向があった。
【0076】
慢性リンパ性白血病(CLL)に起因すると考えられる他の症状は、観察されなかった。この男性は、CLL病期0患者と診断され、以下のレジメンに従って2015年11月20日(血液検査の5日後)に非晶質炭酸カルシウム(ACC)による治療を開始した。
【0077】
最初の3週間:Density(登録商標)3錠/日、経口(Density(登録商標)、Amorphical Ltd.)。
【0078】
3週間後、1日量をDensity(登録商標)6錠/日に増やした。
【0079】
各Density(登録商標)錠剤は、APIとして666mgのACC(すなわち、非晶質CaCO3+Aerosil+原薬安定化剤)を含み、これは500mgCaCO3に相当し、200mg元素カルシウムと同等である(以下、用量は元素カルシウム量を指す)。
【0080】
いくつかの連続した血液検査の結果(ACC投与の開始前後)を、表1および表2に提示する。
【表1】
【表2】
【0081】
患者がACCの投与を開始した後にWBC数の上昇が止まり、実際には、最後の血液検査ではWBC数が減少したことが明らかに確認できる。加えて、他のいくつかのパラメータの改善、例えば筋細胞および好中球数の増加が観察された。さらに、患者はより活力が増すようになり、治療前ほど頻繁に眠った状態になる傾向になかった。
【0082】
これらの結果から分かるように、ACCを投与することにより、実質的に一定のWBCレベルを保持できるようになり、これはこの治療がCLLのさらなる進行を効果的に防ぎ、かつその進行をゼロレベルに維持することを示している。
【0083】
本発明をこれらの好ましい実施形態によって上記に記載してきたが、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の趣旨および性質から逸脱することなく、変更され得る。