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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】結像レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20221005BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022089667
(22)【出願日】2022-06-01
【審査請求日】2022-06-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503205436
【氏名又は名称】株式会社目白67
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】上原 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 公平
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155776(JP,A)
【文献】特開2020-118846(JP,A)
【文献】特開2011-107313(JP,A)
【文献】特開2016-61919(JP,A)
【文献】特開2016-61903(JP,A)
【文献】特開平9-61707(JP,A)
【文献】特表2016-537689(JP,A)
【文献】特表2003-508816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体距離に応じて光軸方向に移動可能な正屈折力を有する合焦レンズ群と、結像面近傍に固定された負屈折力を有する固定レンズ群とから構成され、前記合焦レンズ群は、絞りを挟んで配置された2つの正レンズ群から構成され、
前記合焦レンズ群は、物体側から順に、単レンズとダブレットレンズによる正のパワーを有する2群3枚で構成される前群と、絞りと、ダブレットレンズと単レンズによる正のパワーを有する2群3枚で構成される後群とを有し、
前記合焦レンズ群の最も物体側のレンズは、物体側に凸、像側に凹のメニスカスレンズであり、屈折力は全系の中では最も弱く、絞りを挟んだ前記前群の焦点距離f1と前記後群の焦点距離f2との関係は、
0.9< f1/f2 <1.3
の条件式を満たすこと特徴とする結像レンズ。
【請求項2】
物体距離に応じて光軸方向に移動可能な正屈折力を有する合焦レンズ群と、結像面近傍に固定された負屈折力を有する固定レンズ群とから構成され、前記合焦レンズ群は、絞りを挟んで配置された2つの正レンズ群から構成され、
前記合焦レンズ群は、物体側から順に、単レンズとダブレットレンズによる正のパワーを有する2群3枚で構成される前群と、絞りと、ダブレットレンズと単レンズによる正のパワーを有する2群3枚で構成される後群とを有し、
前記合焦レンズ群の絞り空間を形成する前記後群の絞り側の面は、凹面ではなく平面または物体側に凸面を有し、絞りを挟んだ前記前群の焦点距離f1と前記後群の焦点距離f2との関係は、
3.0< f1/f2 <4.0
の条件式を満たすことを特徴とする結像レンズ。
【請求項3】
物体距離に応じて光軸方向に移動可能な正屈折力を有する合焦レンズ群と、結像面近傍に固定された負屈折力を有する固定レンズ群とから構成され、前記合焦レンズ群は、絞りを挟んで配置された2つの正レンズ群から構成され、
前記合焦レンズ群は、物体側から順に、単レンズとダブレットレンズによる正のパワーを有する2群3枚で構成される前群と、絞りと、ダブレットレンズと単レンズによる正のパワーを有する2群3枚で構成される後群とを有し、
前記合焦レンズ群の前記前群の焦点距離f1と前記後群の焦点距離f2との関係は、
0.9< f1/f2 <6.0
の条件式を満たし、
無限遠合焦時における全系の合成焦点距離をF、前記合焦レンズの焦点距離をfPとするとき、
0.8< fP/F <1.2
の条件式を満たすことを特徴とする結像レンズ。
【請求項4】
前記合焦レンズ群の焦点距離をfP、前記固定レンズ群を構成する負レンズの焦点距離をfN、とするとき、
-1.5< fP/fN < -1.1
の条件式を満たすことを特徴とする請求項3に記載の結像レンズ。
【請求項5】
物体距離に応じて光軸方向に移動可能な正屈折力を有する合焦レンズ群と、結像面近傍に固定された負屈折力を有する固定レンズ群とから構成され、前記合焦レンズ群は、絞りを挟んで配置された2つの正レンズ群から構成され、
前記結像面近傍に固定された負屈折力の固定レンズ群を構成する単一の負レンズは非球面を有する負レンズであり、イメージセンサの結像レンズ側のカバーガラスと一体化されていることを特徴とする結像レンズ。
【請求項6】
前記合焦レンズ群のペッツバール曲率半径をRP、前記固定レンズ群を構成する負レンズのペッツバール曲率半径をRN、とするとき、
-1.3< RP/RN < -0.9
の条件式を満たすことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の結像レンズ。
【請求項7】
無限遠合焦時における全系の合成焦点距離をF、光軸上で測った像面から虚の瞳位置までの距離をD、とするとき、
-0.6 < D/F <-0.4
の条件式を満たすことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の結像レンズ。
【請求項8】
結像面を1/1.8インチ(9mmφ、7.2x5.4mm)で画角が±19.1°を基準仕様とし、結像面サイズ範囲を1/3インチ(6mmφ、8x3.6mm)から2/3インチ(11mmφ、8.8x6.6mm)、画角範囲を±14°から±24.2°としたことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の結像レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCMOSイメージセンサの受光部に光を結像させるための結像レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子として、近年、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor・相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサが広く用いられている。CMOSイメージセンサの構造は、表面照射型と裏面照射型とに大別される。
【0003】
表面照射型は、シリコンウエハにフォトダイオードが加工され、上方向に配線層、カラーフィルタ、マイクロレンズが配される。微細化に伴い配線数が増加し、CMOSフォトダイオードに至る光束を遮光されてしまう欠点がある。更に、配線層の厚さも増すため、CMOS素子のフォトダイオードは、深い井戸の底に配される構成となり、フォトダイオードに対して垂直に近い狭い角度の光束しか利用できない。つまり、前者のような面積的に遮光されて反射・散乱する光束や、後者のような井戸の壁で反射・散乱する光束は、フレアー光束としてフォトダイオードに至るために、画像のコントラストを下げてしまう欠点も有する。
【0004】
裏面照射型は、配線層の作られたシリコンウエハの上に、フォトダイオード層が作られたシリコンウエハを貼り合せて、フォトダイオード層が表面に現れるギリギリまでシリコンウエハを削り込み、カラーフィルタとマイクロレンズを加工形成する。裏面照射型は配線層の前にフォトダイオード層が配されるので、表面型の欠点が解消される。裏面照射型の加工には高い技術を必要とするが、表面型からの置き換えが進んでいる。
【0005】
更に、配線層にロジック回路を組み込み、イメージプロセッサー機能も具備するまでに至り、積層型CMOSイメージセンサとも呼ばれる。
【0006】
高い画質の画像を得るためには、微細なCMOSイメージセンサに適合した結像レンズが必要になる。結像レンズに必要な画像分解能を確認するために、CMOSイメージセンサの画像素子サイズを確認する。
積層型CMOSイメージセンサは、デジタルカメラやスマートフォン(=携帯電話)、監視カメラ、車載カメラなどの多岐にわたる画像入力手段として使われている。画像分解能を上げるため、35mmフルサイズ・デジタルカメラでは3.5μmx3.5μm、産業用の1インチから1/3インチのカメラでは1.4μmx1.4μmまで、CMOS素子(CMOSイメージセンサの1画素)の微細化も進められている。
【0007】
スマートフォン(携帯電話)では、0.8μmx0.8μmのCMOS素子4個=R(赤)+G(緑)x2+B(青)を1つのマイクロレンズでグループ化したCMOSイメージセンサも製品化されている。しかし結像レンズとしては、0.8μmx2倍のマイクロレンズ開口=1.6μmx1.6μmが必要分解能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の原型となる結像面に近い位置に凹レンズを配置して像面が立つようにした結像レンズは、同発明者が1986年に米国で特許を取得している(特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズは、CRTブラウン管をスクリーンに投射するプロジェクションレンズで、分解能は5LP/mm(100μmL&S)から7LP/mm(71μmL&S)程度のレンズであった。
【0009】
ここで、L&Sはライン・アンド・スペースと称し、配線の幅及び隣り合う配線どうしの間隔を意味する。LP/mmはライン・ペア/mmと称し、イメージングシステムの解像度を示す。X[μmL&S]=Y[LP/mm]とすると、X=1000/Y/2の関係を有する。
【0010】
表面型CMOSに使う結像レンズとしては、APS-Hサイズ(35.5mmφ、29.2x20.2mm)で2.2μmx2.2μm素子の産業用のレンズが開発されている。これに対応する結像レンズとして、同発明者による特許が日本及び中国で成立している(特許文献1、2、3参照)。この特許に基づいて、少量生産したレンズでも性能は確認されているが、フォーカシングにレンズ群が動くフローティング機構を用いているため、構造が複雑で使い勝手に課題を有した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許4,564,269号
【文献】特許第6,725,740号
【文献】中国特許112198642号
【0012】
以上のように、産業用の2/3インチから1/3インチCMOSカメラの結像面全面で、CMOS素子1.4μmx1.4μm(357LP/mm)までの分解能をMTFが15%以上、より好ましくは20%以上のコントラストで結像するレンズは存在していない。よって、このような微細なイメージセンサの素子に対応する分解能を有するとともに、シンプルな構造で焦点合せが可能な結像レンズの出現が強く望まれている。
【0013】
ここで、MTF(Modulation Transfer Function)は、レンズ性能を評価する指標のひとつであり、レンズの結像性能を知るために、被写体の持つコントラストをどの程度忠実に再現できるかを空間周波数特性として表現したものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に対応する結像レンズは、物体距離に応じて光軸方向に移動可能な正屈折力を有する合焦レンズ群と、結像面近傍に固定された負屈折力を有する固定レンズ群を有し、前記合焦レンズ群は、絞りを挟んで配置された2つの正レンズ群を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記の態様によれば、微細なイメージセンサの素子に対応する分解能を有するとともに、シンプルな構造で焦点合せが可能な結像レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施例に対応する図表1を示す図である。
図2】第1実施例に対応する図表2(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図3】第2実施例に対応する図表3を示す図である。
図4】第2実施例に対応する図表4(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図5】第3実施例に対応する図表5を示す図である。
図6】第3実施例に対応する図表6(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図7】第4実施例に対応する図表7を示す図である。
図8】第4実施例に対応する図表8(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図9】第5実施例に対応する図表9を示す図である。
図10】第5実施例に対応する図表10(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図11】第6実施例に対応する図表11を示す図である。
図12】第6実施例に対応する図表12(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図13】第7実施例に対応する図表13を示す図である。
図14】第7実施例に対応する図表14(撮影距離t0=∞、500mm、200mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図15】第8実施例に対応する図表15を示す図である。
図16】第8実施例に対応する図表16(撮影距離t0=∞、500mm、200mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図17】第9実施例に対応する図表17を示す図である。
図18】第9実施例に対応する図表18(撮影距離t0=∞、500mm、200mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図19】第10実施例に対応する図表19を示す図である。
図20】第10実施例に対応する図表20(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図21】第11実施例に対応する図表21を示す図である。
図22】第11実施例に対応する図表22(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図23】第12実施例に対応する図表23を示す図である。
図24】第12実施例に対応する図表24(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図25】第13実施例に対応する図表25を示す図である。
図26】第13実施例に対応する図表26(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図27】第14実施例に対応する図表27を示す図である。
図28】第14実施例に対応する図表28(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図29】第15実施例に対応する図表29を示す図である。
図30】第15実施例に対応する図表30(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
図31】第1~第15実施例の結果をまとめた表である。
【発明の詳細な説明】
【0017】
以下においては、図面として付した図表を参照しながら、本発明の各実施例の説明を行う。以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
【0018】
(全般的な説明)
各実施例の説明の前に、本発明の全般的な説明を行う。
本発明の第1の実施態様に係る結像レンズは、物体距離に応じて光軸方向に移動可能な正屈折力を有する合焦レンズ群と、結像面近傍に固定された負屈折力を有する固定レンズ群を有し、合焦レンズ群は、絞りを挟んで配置された2つの正レンズ群を有する。
【0019】
この第1の実施態様について、第1の実施例を示す図1及び図2を参照しながら概要を簡単に説明する。図1は、第1実施例に対応する図表1を示す図である。図2は、第1実施例に対応する図表2(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図である。
【0020】
図1、2に示す物体側の合焦レンズ群では、3次収差で計算するレンズ群のペッツバール像面湾曲の曲率半径は、-19.584mmとなり、レンズ側に大きく湾曲する。一方、結像面近傍に固定して置かれる固定レンズ群を構成する凹レンズのペッツバール曲率半径は、+18.023mmとなり、レンズ側から反対に大きく湾曲する。よって、全体として4群6枚構成の合焦レンズ群と固定レンズ群とで構成される全体結像レンズのペッバール曲率半径は、1/(-1/19.584+1/18.023)=+226.113mmとなり、結像面はほぼ垂直に立つ。3次収差の範囲で像面が立つと、レンズデータを最適化することにより理論値に近い収差を実現できる。
【0021】
図表2は、左から撮影距離t0が、(a)無限遠、(b)500mm、(c)150mmの場合を示す。上段が光路図であり、中段が視野(横軸)に対する解像力のMTF(縦軸)を示すグラフであり、下段が解像力(横軸)に対するMTF(縦軸)を示すグラフである。下段の各グラフには理論値が記されており、設計値は理論値に近いカーブを実現している。なお、後述する図4以降の偶数番号の図面の構成も、上記の図2の構成と同様である。
【0022】
本実施態様に係る結像レンズでは、結像面の近傍に固定レンズ群を固定し、物体側の合焦レンズ群を繰出すことにより、近距離物体への焦点合せを行うので、シンプルな構造で焦点合せが可能である。更に、全体として4群6枚の合焦レンズ群の結像面近傍に1枚の非球面凹レンズ(負レンズ)を固定して配置することにより、上記のように、撮影距離t0が無限大遠方から150mm接写まで、合焦レンズ群を繰り出すことにより、理論値に近い分解能を得ることができる。
【0023】
これにより、本実施態様に係る結像レンズでは、微細なイメージセンサの素子に対応する分解能を有するとともに、シンプルな構造で焦点合せが可能である。なお、固定レンズ群は、1枚のレンズで構成される場合だけに限られるものではなく、固定レンズ群が複数のレンズで構成される場合もあり得る。
【0024】
本発明の第2の実施態様に係る結像レンズは、第1の実施態様において、合焦レンズ群は、物体側から順に単レンズとダブレットレンズによる正のパワーを有する2群3枚で構成される前群と、絞りと、結像側にダブレットレンズと単レンズによる正のパワーを有する2群3枚で構成される後群とを有することを特徴とする。
【0025】
このように、合焦レンズ群において、物体側から順に、正のパワーを有する2群3枚の前群と、絞りと、正のパワーを有する2群3枚の後群とを配置することにより、像面湾曲やディストーションを前後の構成で互いに打ち消し合わせることができる。これにより、像面湾曲やディストーションを抑制することができる。
【0026】
本発明の第3実施態様は、上記第2実施態様のような基本構成において、合焦レンズ群を構成する前群の焦点距離f1と後群の焦点距離f2との関係は、下記の条件式を満たす構成であり、諸収差の安定的補正に有効である。
0.9< f1/f2 <6.0
なお、本条件の上限値は、5.0更には4.0とすることが収差補正上有利となる。
【0027】
特に、物体側から順に凸レンズ、ダブレット、絞り、ダブレット、凸レンズの順に配置されたレンズ群、つまり絞りを挟んで前後対称に配列したガウス・タイプのレンズ群を採用する場合には、像面湾曲やディストーションの抑制に有効である。
【0028】
本発明の第4の実施態様に係る結像レンズでは、第3の実施態様において、合焦レンズ群は、物体側から順に凸レンズ、ダブレット、絞り、ダブレット、凸レンズの順に配置され、絞りを挟んで対称に配列したレンズ群である。
【0029】
一般的に、レンズを前後対称に配置すると、像面湾曲やディストーションを前後の構成が互いに打ち消し合うため、像面湾曲やディストーションの発生を防ぐことができる。本実施態様では、絞りを挟んで3枚レンズが前後対称に配置されたガウス・タイプが採用されている。このガウス・タイプとは、古典的にはダブル・ガウス・タイプとも呼ばれ、絞りを挟んで前群と後群とがほぼ対象形状となっており、前群と後群との間の絞り空間が両群の凹面が向かい合わせに構成されることが特徴である。そして、このほぼ対称な前群と後群との構成において、前群の最も物体側の正レンズに非球面を設けることが好ましい。
【0030】
このような典型的ガウス・タイプの第4の実施態様に係る結像レンズにおいて、絞りを挟んだ前群の焦点距離f1と後群の焦点距離f2との関係を
0.9< f1/f2 <3.6
とすることが可能である。
【0031】
また、最も物体側のレンズが物体側に凸のメニスカス形状を有する変形ガウス・タイプを採用することもできる。
【0032】
本発明の第5の実施態様に係る結像レンズでは、第3の実施態様において、合焦レンズ群は、最も物体側のレンズが物体側に凸のメニスカス形状を有し、メニスカスレンズは、物体側に凸面を有し、像側の面が凹面になっており、屈折力は全系の中では最も弱くなっている。
【0033】
このような変形ガウス・タイプでは、非球面なしでの簡単なレンズ形状で、かなりの結像性能を維持することが可能である。この変形ガウス・タイプにおいて、絞りを挟んだ前群の焦点距離f1と後群の焦点距離f2との関係を
0.9< f1/f2 <1.3
とすることが可能である。
【0034】
この変形ガウス・タイプの場合には、絞り空間を形成する前群の絞り側の面は、凹面ではなく平面あるいは像側に凸面とすることが有効である。後述する第1、第7、第10、第13の実施例が、この変形ガウス・タイプに対応する。
【0035】
一方、画角が大きくなる場合、例えば半画角が20度をこえる場合には、更なる変形ガウス・タイプとすることが有効である。
【0036】
本発明の第6の実施態様に係る結像レンズでは、第3の実施態様において、合焦レンズ群の絞り空間を形成する後群の絞り側の面は、凹面ではなく平面または物体側に凸面を有する。
【0037】
この更なる変形ガウス・タイプにおいて、絞りを挟んだ前群の焦点距離f1と後群の焦点距離f2との関係を、
3.0< f1/f2 <4.0
とすることが可能である。
【0038】
後述する第6、第9、第12の実施例が、この更なる変形ガウス・タイプに対応する。
【0039】
以上、合焦移動レンズ群としての典型的ガウス・タイプ、変形ガウス・タイプ、更なる変形ガウス・タイプのレンズ構成について述べたが、本実施態様では、絞りを挟んで物体側の前群及び結像側の後群がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有するので、後述する多数の実施例に示す通り、像面湾曲やディストーションを効果的に抑制できる。
【0040】
本発明の第7の実施態様に係る結像レンズ群は、第3~第6の実施態様の何れかにおいて、無限遠合焦時における全系の合成焦点距離をF、前記合焦レンズの焦点距離をfPとするとき、
0.8< fP/F <1.2
の関係を有する。
【0041】
本実施態様では、合焦レンズ群の焦点位置が、結像レンズ全体の結像位置近傍であることを限定している。
【0042】
本発明の第8の実施態様に係る結像レンズ群は、第3~第7の実施態様の何れかにおいて、合焦レンズ群の焦点距離をfP、固定レンズ群を構成する負レンズの焦点距離をfN、とするとき、
-1.5< fP/fN < -1.1
の関係を有する。
【0043】
すなわち、-1.5< fP/fN < -1.1と表す範囲が収差補正上、また近距離合焦での収差変動を抑えるために有効である。本実施態様では、正のパワーを持つ合焦レンズ群は像面を前側に湾曲させるので、像面を後ろ側に湾曲させる固定レンズ群の非球面凹レンズとのパワーバランスを焦点距離比で数値限定している。
【0044】
本発明の第9の実施態様に係る結像レンズ群は、第3~第8の実施態様の何れかにおいて、合焦レンズ群のペッツバール曲率半径をRP、固定レンズ群を構成する負レンズのペッツバール曲率半径をRN、とするとき、
-1.3< RP/RN < -0.9
の関係を有する。
【0045】
すなわち、-1.5< RF/RN<-0.8と表す範囲が収差補正上、また近距離合焦での収差変動を抑えるために有効である。本実施態様では、正のパワーを持つ合焦レンズは像面を前側に湾曲させるので、像面を後ろ側に湾曲させる固定レンズ群の非球面凹レンズとのパワーバランスをペッツバール曲率半径比で数値限定している。
【0046】
本発明の第10の実施態様に係る結像レンズ群は、第3~第9の実施態様の何れかにおいて、無限遠合焦時における全系の合成焦点距離をF、光軸上で測った像面から虚の瞳位置までの距離をD、とするとき、
-0.6 < D/F <-0.4
の関係を有する。
【0047】
本実施態様では、像面から虚の瞳位置までの距離が合成焦点距離の約1/2になっていることを数値限定している。
【0048】
このことについて、図31を除く奇数番号の図面の左下に示すChief Ray図を用いて説明する。レンズデータのIMA面のThickにおよそマイナス焦点距離/2=Dを入力して主光線の光路図を描くと、Chief Ray図が得られる。IMA面の半対角、半長辺、半短辺からの3本の主光線はマイナス方向で光軸と交わる。半長辺からの主光線が光軸と交わるDをカット&トライで探すと、第1実施例ではD=-8.6が得られ、この仮想面を(虚)射出瞳距離Dと称する。具体的には、レンズ最終面を射出する主光線を、進行方向とは逆方向に延長した光線を考える。この光線が光軸と交わる位置を「(虚)射出瞳」と定義する。また結像面と「(虚)射出瞳」の間の距離をDとする。第1実施例の半長辺の主光線ではD=-8.6となる。何れの実施例でも(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値 D/Fはマイナス0.4より小さくマイナス0.6より大きい範囲内にある。
【0049】
本発明の第11の実施態様に係る結像レンズ群は、第1~第10の実施態様の何れかにおいて、
結像面を1/1.8インチ(9mmφ、7.2x5.4mm)で画角が±14.1°を基準仕様とし、結像面サイズ範囲を1/3インチ(6mmφ、8x3.6mm)から2/3インチ(11mmφ、8.8x6.6mm)、画角範囲を±14°から±24.2°としたことを特徴とする。
【0050】
本発明の第12の実施態様に係る結像レンズ群は、第1~第11の実施態様の何れかにおいて、固定レンズ群を構成する単一の非球面負レンズが、イメージセンサの結像レンズ側のカバーガラスと一体化されていることを特徴とする。
【0051】
本実施態様は、例えば、後述する第13~15実施例に示すように、固定レンズ群を構成する非球面凹レンズが、イメージセンサの結像レンズ側のカバーガラスと一体化されている。つまり、固定レンズ群の非球面凹レンズがイメージセンサの結像レンズ側のカバーガラスも兼用している。これにより、ガラス界面を2面少なくできるので、優れた光学的特性を有するコンパクトな結像レンズを提供できる。ここで、レンズとカバーガラスとが一体化されているとは、レンズとカバーガラスとが互いに張り合わされている場合だけでなく、レンズとカバーガラスとが一体成形されている場合もあり得る。
【0052】
以上の条件下で設計された結像レンズは、裏面照射CMOSイメージセンサのCMOS素子が1.4μmx1.4μmまで微細化し、更に積層によりエッジコンピュータ機能まで持つAI画像入力素子に対応する。従来の結像レンズは巻き取りフィルムを想定して改良が進められてきたが、裏面照射・積層CMOSイメージセンサは高速の電子画像転送と電子シャッタ機能まで備えるので、センサの直ぐ前までのスペースを有効に使い、像面を立てるフラットな機能を有するマイナスパワーを持つ固定レンズ群を構成する非球面凹レンズの配置も容易にした。ガリレオ・タイプのレンズだと、像面分解能は銀塩フィルムの10数μmには有効であったが、微細化したCMOS素子近傍に固定レンズ群の非球面凹レンズを固定することにより、1.4μmL&Sまでの分解能まで可能にした。
【0053】
本発明の実施態様に係る結像レンズ+裏面照射・積層型CMOSイメージセンサにより、CMOS面全面を15%以上、より好ましくは20%以上のMTFコントラストで1.4μmL&SのAI画像手段を実現した。
【0054】
(実施例の説明)
以下、本発明の実施例について説明する。第1実施例から第15実施例までの15の実施例について、それぞれ2つの図を参照しながら説明する。
例えば、第1実施例であれば、第1実施例に対応する図表1と、第1実施例に対応する図表2(撮影距離t0=∞、500mm、150mm)及びMTFに対応したグラフを示す図2を参照しながら説明する。撮影距離t0=∞の場合を(a)で示し、撮影距離t0=500mmの場合を(b)で示し、撮影距離t0=150mmの場合を(c)で示す。
【0055】
同様に、第n実施例(n=1~15)であれば、第n実施例に対応する図表(2n-1)を示す図(2n-1)と、第n実施例に対応する図表(2n)(撮影距離t0=∞、500mm、150mmまたは200mm)及びMTFに対応したグラフを示す図(2n)を参照しながら説明する。撮影距離t0=∞の場合を(a)で示し、撮影距離t0=500mmの場合を(b)で示し、撮影距離t0=150(200)mmの場合を(c)で示す。
【0056】
<第1実施例>
第1実施例(図1、2参照)は、画像サイズ=1/1.8インチ9mmφであり、4群6枚で最も物体側のレンズがメニスカス形状を有する変形ガウス・タイプの合焦レンズ群と、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズ群の最も物体側のレンズの物体側の面が球面であり、固定レンズ群の非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズ群では、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表1から明らかである。
【0057】
合焦レンズ群の焦点距離fPを結像レンズ全体の合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.90、t0=500mmで0.95、t0=150mmで1.06となっている。合焦レンズ群の焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.322となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-1.087となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを全系の合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.478になっている。
【0058】
図2から明らかなように、357LP=1.4μmL&SのMTFコントラストは、無限遠から150mmの接写まで像面全面で約20%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0059】
<第2実施例>
第2実施例(図3、4参照)は、画像サイズ=1/1.8インチ9mmφであり、4群6枚のガウス・タイプの合焦レンズと、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズの最も物体側のレンズの物体側の面が非球面であり、固定レンズ群の非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズでは、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表3から明らかである。
【0060】
合焦レンズの焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.89、t0=500mmで0.93、t0=150mmで1.03となっている。合焦レンズの焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.269となっている。合焦レンズのペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-1.199となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.534になっている。
【0061】
図4から明らかなように、357LP=1.4μmL&SのMTFコントラストは、無限遠から150mmの接写まで像面全面で約20%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0062】
<第3実施例>
第3実施例(図5、6参照)は、画像サイズ=1/1.8インチ9mmφであり、4群6枚のガウス・タイプの合焦レンズ群と、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズ群の最も物体側のレンズの物体側の面が非球面であり、固定レンズ群の非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズ群では、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表5から明らかである。
【0063】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.91、t0=500mmで0.94、t0=150mmで1.02となっている。合焦レンズ群の焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.261となっている。合焦レンズのペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-0.982となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.505になっている。
【0064】
図6から明らかなように、357LP=1.4μmL&SのMTFコントラストは、無限遠から150mmの接写まで像面全面で約20%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0065】
<第4実施例>
第4実施例(図7、8参照)は、画像サイズ=1/1.8インチ9mmφであり、4群6枚のガウス・タイプの合焦レンズ群と、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズ群の最も物体側のレンズの物体側の面が非球面であり、固定レンズ群の非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズ群では、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表7から明らかである。
【0066】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.89、t0=500mmで0.92、t0=150mmで0.99となっている。合焦レンズ群の焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.291となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-0.993となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.505になっている。
【0067】
図8から明らかなように、357LP=1.4μmL&SのMTFコントラストは、無限遠から150mmの接写まで像面全面で約20%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0068】
<第5実施例>
第5実施例(図9、10参照)は、画像サイズ=1/1.8インチ9mmφであり、4群6枚のガウス・タイプの合焦レンズ群と、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズ群の最も物体側のレンズの物体側の面が非球面であり、固定レンズ群の非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズ群では、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表9から明らかである。
【0069】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.88、t0=500mmで0.90、t0=150mmで0.96となっている。合焦レンズ群の焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.285となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-0.991となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.520になっている。
【0070】
図10から明らかなように、357LP=1.4μmL&SのMTFコントラストは、無限遠から150mmの接写まで像面全面で約20%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0071】
<第6実施例>
第6実施例(図11、12参照)は、画像サイズ=1/1.8インチ9mmφであり、4群6枚のガウス・タイプの合焦レンズ群と、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズの最も物体側のレンズの結像側の面が非球面であり、固定レンズ群を構成する非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズ群では、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表11から明らかである。
【0072】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.87、t0=500mmで0.89、t0=150mmで0.94となっている。合焦レンズの焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.296となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-0.967となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.545になっている。
【0073】
図12から明らかなように、357LP=1.4μmL&SのMTFコントラストは、撮影距離が無限遠の画像4隅で、MTFが15%程度となっている。500mmから150mmの接写まで像面全面で約20%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0074】
無限遠の画像4隅でも15%以上のMTFを得ており、500mmから150mmの接写まで像面全面で約20%以上のMTFを得ているので、微細なイメージセンサの素子に対応する分解能を有していると言える。
【0075】
<第7実施例>
上記の第1~第6実施例では、画像サイズ=1/1.8インチ9mmφであったが、以下の第7~第9実施例では、画像サイズを1.22倍拡大して2/3インチとして有効性を確認した。第7実施例(図13、14参照)では、画像サイズ=2/3インチ11mmφであり、第1実施例と同様に、4群6枚のガウス変形タイプの合焦レンズ群と、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズの最も物体側のレンズの物体側の面が球面であり、固定レンズ群の非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズ群では、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表13から明らかである。
【0076】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.91、t0=500mmで0.96、t0=200mmで1.06となっている。合焦レンズ群の焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.452となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-1.107となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.485になっている。
【0077】
第7実施例は、第1実施例を(2/3インチ)/(1/1.8インチ)=1.222倍拡大して最適化したので、図14から明らかなように、撮影距離t0=∞とt0=500mmでは、収差も拡大されるためにMTFは少し悪くなる。接写側近距離はt0=150mmをおよそ1.222倍のt0=200mmでMTFを計算し、第1実施例より少し悪くなるのを確認した。しかし、無限遠の画像4隅でも15%以上のMTFが得られている。また、500mmから200mmの接写まで像面全面で約20%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0078】
<第8実施例>
第8実施例では、第4実施例から画像サイズを1/1.8インチから1.222倍拡大して2/3インチにして有効性を確認した。第8実施例(図15、16参照)では、画像サイズ=2/3インチ11mmφであり、第4実施例と同様に、4群6枚のガウス・タイプの合焦レンズ群と、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズの最も物体側のレンズの物体側の面が非球面であり、固定レンズ群の非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズ群では、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表15から明らかである。
【0079】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.89、t0=500mmで0.92、t0=200mmで0.98となっている。合焦レンズの焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.292となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-0.990となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.503になっている。
【0080】
第8実施例は、第4実施例を(2/3インチ)/(1/1.8インチ)=1.222倍拡大して最適化したので、撮影距離が無限大遠方t0=∞とt0=500mmでは、収差も拡大されるためにMTFは少し悪くなる。接写側近距離はt0=150mmをおよそ1.222倍のt0=200mmでMTFを計算し、第4実施例より少し悪くなるのを確認した。しかし、無限遠の画像4隅でも15%以上のMTFが得られている。また、500mmから200mmの接写まで像面全面で約20%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0081】
<第9実施例>
第9実施例では、第6実施例から画像サイズを1/1.8インチから1.222倍拡大して2/3インチにして有効性を確認した。第9実施例(図17、18参照)では、画像サイズ=2/3インチ11mmφであり、第6実施例と同様に、4群6枚のガウス・タイプの合焦レンズ群と、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズ群の最も物体側のレンズの物体側の面が非球面であり、固定レンズ群の固定レンズ群の非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズ群では、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表17から明らかである。
【0082】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.86、t0=500mmで0.89、t0=200mmで0.93となっている。合焦レンズ群の焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.316となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-1.024となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.549になっている。
【0083】
第9実施例は、第6実施例を(2/3インチ)/(1/1.8インチ)=1.222倍拡大して最適化したので、撮影距離が無限大遠方t0=∞とt0=500mmでは、収差も拡大されるためにMTFは少し悪くなる。接写側近距離はt0=150mmをおよそ1.222倍のt0=200mmでMTFを計算し、第6実施例より少し悪くなるのを確認した。無限遠の画像4隅でも15%以上のMTFが得られている。また、500mmから200mmの接写まで像面全面で20%近くのMTFを得ている。
【0084】
<第10実施例>
上記の第1~第6実施例では、画像サイズ=1/1.8インチ9mmφであったが、以下の第10~第12実施例では、画像サイズを0.667倍に縮小して1/3インチとして有効性を確認した。第10実施例(図19、20参照)では、画像サイズ=1/3インチ6mmφであり、第1実施例と同様に、4群6枚のガウス変形タイプの合焦レンズ群と、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズ群の最も物体側のレンズの物体側の面が球面であり、固定レンズ群の非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズ群では、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表19から明らかである。
【0085】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.89、t0=500mmで0.92、t0=150mmで0.99となっている。合焦レンズ群の焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.373となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-1.036となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.486になっている。
【0086】
第10実施例は、第1実施例を(1/3インチ)/(1/1.8インチ)=0.667倍に縮小して最適化したので、図20に示すように、収差も縮小されるためにMTFは少改善される。遠方無限遠から150mmの接写まで像面全面で約25%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0087】
<第11実施例>
第11実施例では、第4実施例から画像サイズを1/1.8インチから0.667倍に縮小して1/3インチにして有効性を確認した。第11実施例(図21、22参照)では、画像サイズ=1/3インチ6mmφであり、第4実施例と同様に、4群6枚のガウス・タイプの合焦レンズと、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズの最も物体側のレンズの物体側の面が非球面であり、固定レンズ群の固定レンズ群の非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズでは、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表21から明らかである。
【0088】
合焦レンズの焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.86、t0=500mmで0.88、t0=150mmで0.93となっている。合焦レンズの焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.322となっている。合焦レンズのペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-0.997となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.525になっている。
【0089】
第11実施例は、第4実施例を(1/3インチ)/(1/1.8インチ)=0.667倍に縮小して最適化したので、図22に示すように、収差も縮小されるためにMTFは少し改善される。遠方無限遠から150mmの接写まで像面全面で約25%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0090】
<第12実施例>
第12実施例では、第6実施例から画像サイズを1/1.8インチから0.667倍に縮小して1/3インチにして有効性を確認した。第12実施例(図23、24参照)では、画像サイズ=1/3インチ6mmφであり、第6実施例と同様に、4群6枚のガウス・タイプの合焦レンズ群と、固定レンズ群を構成する1枚の非球面凹レンズとを備える。更に詳細に述べれば、合焦レンズ群の最も物体側のレンズの結像側の面が非球面であり、固定レンズ群を構成する非球面凹レンズの物体側の面が非球面になっている。
合焦レンズ群では、絞りを挟んで物体側及結像側がそれぞれ2群3枚の正のパワーを有することは、図表23から明らかである。
【0091】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.83、t0=500mmで0.84、t0=150mmで0.87となっている。合焦レンズ群の焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.239となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-0.947となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.536になっている。
【0092】
第12実施例は、第6実施例を(1/3インチ)/(1/1.8インチ)=0.667倍に縮小して最適化したので、図24に示すように、収差も縮小されるためにMTFは少し改善される。遠方無限遠から150mmの接写まで像面全面で約20%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0093】
<第13実施例>
第13実施例(図25、26参照)では、第1実施例に示す固定レンズ群を構成する非球面凹レンズが、イメージセンサの結像レンズ側のカバーガラスと一体化されている。つまり、固定レンズ群を構成する非球面凹レンズがイメージセンサの結像レンズ側のカバーガラスも兼用している。これによりガラス界面を2面少なくできるので、優れた光学的特性が期待できる。その他の構成については、第1実施例と同様である。
【0094】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.96、t0=500mmで1.01、t0=150mmで1.13となっている。合焦レンズ群の焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.456となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-1.231となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.488になっている。
【0095】
図26から明らかなように、第1実施例とほぼ同じMTFが得られ、357LP=1.4μmL&SのMTFコントラストは、無限遠から150mmの接写まで像面全面で約20%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0096】
<第14実施例>
第14実施例(図27、28参照)では、第4実施例に示す固定レンズ群を構成する非球面凹レンズがCMOSカバーガラスと一体化され、ガラス界面を2面少なくしたものであり、優れた光学的特性が期待できる。その他の構成については、第4実施例と同様である。
【0097】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.95、t0=500mmで0.98、t0=150mmで1.05となっている。合焦レンズ群の焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.217となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-0.997となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.498になっている。
【0098】
図28から明らかなように、第4実施例とほぼ同じMTFが得られ、357LP=1.4μmL&SのMTFコントラストは、無限遠から150mmの接写まで像面全面で約20%以上を得ており、ほぼ理論値にも重なり、良好な収差補正を実現している。
【0099】
<第15実施例>
第15実施例(図29、30参照)では、第6実施例に示す固定レンズ群を構成する非球面凹レンズがCMOSカバーガラスと一体化され、ガラス界面を2面少なくしたものであり、優れた光学的特性が期待できる。第6実施例は合焦レンズの最も物体側のレンズの「結像側」の面が非球面になっているが、第15実施例では合焦レンズの最も物体側のレンズの「物体側」の面が非球面になっている。
【0100】
合焦レンズ群の焦点距離fPを合成焦点距離Fで割った数値(fP/F)が、撮影距離t0=∞で0.93、t0=500mmで0.96、t0=150mmで1.01となっている。合焦レンズ群の焦点距離fPを固定レンズ群の非球面凹レンズの焦点距離fNで割った数値(fP/fN)が、-1.264となっている。合焦レンズ群のペッツバール曲率半径RPを固定レンズ群の非球面凹レンズのペッツバール曲率半径RNで割った数値(RP/RN)が、-1.013となっている。
また(虚)射出瞳距離Dを合成焦点距離Fで割った数値(D/F)は-0.507になっている。
【0101】
図30から明らかなように、第6実施例とほぼ同じMTFが得られ、357LP=1.4μmL&SのMTFコントラストは、無限遠の画像4隅でも15%以上のMTFが得られている。また、500mmから150mmの接写まで像面全面で20%弱のMTFを得ており、良好な収差補正を実現している。
【0102】
図31には、上述した第1~第15の全実施例について上述した各種条件の対応値をまとめて記載している。これらの数値から上述の各条件式が各実施例によって支持されており、各実施例の結像性能の図に示した通り、無限遠のみならず近距離の合焦状態においても対角線視野の広い結像面において極めて優れた結像性能を維持していることが明らかである。
【要約】      (修正有)
【課題】微細なイメージセンサの素子に対応する分解能を有するとともに、シンプルな構造で焦点合せが可能な結像レンズを提供する。
【解決手段】物体距離に応じて光軸方向に移動可能な正屈折力を有する合焦レンズ群と、結像面近傍に固定された負屈折力を有する固定レンズ群を有し、合焦レンズ群は、絞りを挟んで配置された2つの正レンズ群を有する結像レンズを提供する。
【選択図】図1
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