(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/30 20140101AFI20221005BHJP
E05C 21/00 20060101ALI20221005BHJP
E05C 9/04 20060101ALI20221005BHJP
E05C 1/14 20060101ALI20221005BHJP
E05B 85/22 20140101ALI20221005BHJP
E05B 77/36 20140101ALI20221005BHJP
B60R 7/06 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
E05B83/30 A
E05C21/00 A
E05C9/04
E05C1/14 C
E05B85/22
E05B77/36
B60R7/06 G
(21)【出願番号】P 2019178287
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康司
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-046896(JP,A)
【文献】特開2010-000931(JP,A)
【文献】実開平04-013773(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0102332(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
E05C 1/14
E05C 9/04
E05C 21/00
B60R 7/04
B60R 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックスの開口を回動して開閉するリッドと、先端を前記リッドの外へ突出する係止位置とリッドの内側に退避する解除位置に切換可能なロッドと、前記リッド内側に取り付けられて前記ロッドを摺動可能に支持するガイド部材とを備えたロック装置において、
前記リッド及びガイド部材は、何れか一方に設けられた係合部及び他方に設けられた被係合部を有し、前記係合部及び被係合部が前記ガイド部材をリッド開閉方向と交差する方向に移動することでガタ付き不能に圧入固定可能となり、
また、前記ガイド部材は、前記ロッドを摺動案内する溝部と、前記溝部長手方向の一端側に設けられた前記被係合部と、前記溝部長手方向の他端側に設けられた被嵌合部とを有し、前記被係合部が前記リッド側に設けられた前記係合部に係合されると共に、前記被嵌合部が前記リッド側に設けられた嵌合部に嵌合されることを特徴とするロック装置。
【請求項2】
ボックスの開口を回動して開閉するリッドと、先端を前記リッドの外へ突出する係止位置とリッドの内側に退避する解除位置に切換可能なロッドと、前記リッド内側に取り付けられて前記ロッドを摺動可能に支持するガイド部材とを備えたロック装置において、
前記リッド及びガイド部材は、何れか一方に設けられた係合部及び他方に設けられた被係合部を有し、前記係合部及び被係合部が前記ガイド部材をリッド開閉方向と交差する方向に移動することでガタ付き不能に圧入固定可能となり、
また、前記リッド内側には、前記ガイド部材を支持する受部と、前記受部の両側に対向して立設された一対の立壁部と、前記各立壁部の上側に連結された略L形上壁部とを有し、前記上壁部の垂直壁外面に前記係合部を設けていることを特徴とするロック装置。
【請求項3】
前記係合部は、前記被係合部と重なりを増すに従って高くなる傾斜面を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のロック装置。
【請求項4】
前記リッド及びガイド部材は、互いに係合する係止部及び弾性爪部の異なる一方を有し、前記係止部及び弾性爪部が前記ガイド部材をリッド開閉方向と交差する方向に移動することで係合可能となることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のロック装置。
【請求項5】
前記リッド内側にあって前記上壁部の垂直壁部同士の間に設けられたスリットを有し、前記スリットに前記ガイド部材に設けられた凸部が係合されることを特徴とする請求項
2に記載のロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッドをボックス側に係脱するロック装置のうち、互いに離間されたり接近される一対のロッドを介して係脱する場合に好適なロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は特許文献1に開示のロック装置を示し、(a)はロック装置とリッドとの関係を示し、(b)はロック装置を示している。このロック装置20は、ボックスの開口を回動して開閉するリッド13と、先端をリッド13の外へ突出する係止位置とリッドの内側に退避する解除位置に切換可能な一対のロッド(ロックアーム)
14,15と、リッド内側に取り付けられてロッド
14,15を摺動可能に支持するガイド部材(スライドガイド)22とを備え、各ロッドを介してボックス側の係止用凹部に係脱する。また、このガイド部材22は、リッド13の裏面側に設けられたボスにねじにより固定される(段落0016)。
【0003】
図11は特許文献2に開示のロック装置を示し、(a)はロック装置とリッドとの関係を示し、(b)はロック装置を示している。このロック装置20でも、ボックス2側の開口を回動して開閉するリッド3と、先端をリッド13の外へ突出する係止位置とリッドの内側に退避する解除位置に切換可能な一対のロッド57,62と、リッド内側に取り付けられてロッド62を摺動可能に支持するガイド部材70とを備え、各ロッドを介してボックス側の係止用凹部(係止孔)11
,12に係脱する。また、このガイド部材70は、挿通穴を通過するねじにより、リッド13を構成している前板16の後面及び外板17の前面の少なくとも一方に固定される(段落0036)。なお、図にはロッド57がノブ36に覆われて見えなくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-104771号公報
【文献】特開2018-40189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のようなロック装置は、例えば自動車に設置されるグローブボックス等に好適なものである。設計上の要求項目は、特に、部品数を減らしたりコスト低減と共に、長期使用してもガタ付きそれに起因する異音発生を抑制できることである。具体的には、上記ロック装置において、ガイド部材がガタ付きを生じ難くするためリッド側にねじにより固定する必要があり、部品点数及び組付け工数がかかる。また、ガイド部材がねじにより固定されたとしても、ねじの抜け方向がリッド開閉時の開き方向と同じため長期使用によりねじが緩み、それに起因してガタ付きや異音が発生する虞があった。
【0006】
本発明の目的は、上記したような課題を解消して、特にガイド部材の組付け構造を改良して工数とコストを低減すると共に、繰り返し使用によるガタ付きやそれに起因した異音発生の虞を確実に抑制することにある。他の目的は以下の内容説明の中で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の本発明は、図面を参照して特定すると、ボックス1の開口を回動して開閉するリッド2と、先端を前記リッドの外へ突出する係止位置とリッドの内側に退避する解除位置に切換可能なロッド6と、前記リッド内側に取り付けられて前記ロッドを摺動可能に支持するガイド部材5とを備えたロック装置において、前記リッド2及びガイド部材5は、何れか一方に設けられた係合部29c及び他方に設けられた被係合部59を有し、前記係合部及び被係合部が前記ガイド部材5をリッド開閉方向と交差する方向に移動することでガタ付き不能に圧入固定可能となり、また、前記ガイド部材5は、前記ロッド6を摺動案内する溝部51と、前記溝部長手方向の一端側に設けられた前記被係合部59aと、前記溝部長手方向の他端側に設けられた被嵌合部55とを有し、前記被係合部59aが前記リッド側に設けられた前記係合部29cに係合されると共に、前記被嵌合部55が前記リッド側に設けられた嵌合部27aに嵌合されることを特徴としている。
また、請求項2の本発明は、請求項1の後段の記載である『また、前記ガイド部材5は、・・・・前記リッド側に設けられた嵌合部27aに嵌合されることを特徴としている』を、『前記リッド内側は、前記ガイド部材5を支持する受部27と、前記受部の両側に対向して立設された一対の立壁部28と、前記各立壁部の上側に連結された略L形上壁部29とを有し、前記上壁部29の垂直壁外面に前記係合部29cを設けていることを特徴としている』に代えた構成である。
【0008】
ここで、『前記ガイド部材をリッド開閉方向と交差する方向に移動する』とは、係合部及び被係合部の圧入固定がリッドを回動して開閉する際の回動方向と交差する方向に移動、つまりロッドをリッド左右ないしはリッド板幅の一方から他方に移動することにより圧入固定可能になることである。
【0009】
以上の本発明は、請求項3~5で特定したように具体化されることがより好ましい。
(1)、前記係合部29cは、前記被係合部59と重なりを増すに従って高くなる傾斜面29sを有している構成である(請求項3)
【0010】
(2)、前記リッド2とガイド部材5は、互いに係合する係止部28a及び弾性爪部58aの異なる一方を有し、前記係止部28a及び弾性爪部58aが前記ガイド部材をリッド開閉方向と交差する方向に移動することで係合可能となる構成である(請求項4)。ここで、『弾性爪部』とは、形態例のごとく弾性片に爪部を設けた構成に限られず、爪部の一部が弾性変位するような態様も含まれる。
【0011】
(3)、前記リッド内側にあって前記上壁部29の垂直壁部同士の間に設けられたスリットSを有し、前記スリットに前記ガイド部材5に設けられた凸部56が嵌合される構成である(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び2の発明では、まず、組付け構造としてはガイド部材がリッド側に対し係合部及び被係合部の圧入固定により取り付けられる。このため、従来のごとくねじにより取り付ける構造に比べ部材数や組み付け工数、更にはコストを低減し易くなる。加えて、この組付け構造では、係合部及び被係合部がガイド部材をリッド開閉方向と交差する方向に移動することで圧入固定可能となるため、従来のねじにより取り付ける構造に比べリッドが繰り返し開閉操作されても、固定力が緩んだり弱くなるというような虞を解消でき、それにより繰り返し使用によるガタ付きやそれに起因した異音発生を抑制できる。
【0013】
また、請求項1の発明では、ガイド部材がリッド側に対しその長手方向両端を係合部と被係合部の圧入固定、被嵌合部と嵌合部の嵌合ないしは嵌入によりそれぞれ規制されるため、組付け状態を安定維持できると共に、ガタ付き発生もより確実に抑制される。
【0014】
請求項2の発明では、ガイド部材が被係合部を上壁部の垂直壁外面の係合部に圧入固定した状態で、形態例のごとく立壁部同士の間にガイド部材の外径部を規制したり、請求項4の係止部を立壁部の外面に設けるようにしたり、請求項5のような構成を展開可能にする。
【0015】
請求項3の発明は、係合部が傾斜面だと、図9から推察されるごとく被係合部(形態例の側壁57b)が係合部の傾斜面で外側へ拡径変位しながら圧着度合いを増し、その結果、ガイド部材とリッド側との間のガタ付きがより確実に抑制される。
【0016】
請求項4の発明は、リッド及びガイド部材が互いに係合する係止部と弾性爪部の異なる一方を有し、係止部と弾性爪部が係合部と被係合部の圧入固定と共に弾性係合するため、ガイド部材の組付け状態を安定維持できる。
【0017】
請求項5の発明では、形態例のごとくリッド側のスリットに対しガイド部材側の凸部が係合されるため、両部材の一体化を強くし、その結果、ガタ付き抑制がより確実なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)は本発明形態のロック装置を適用したボックスのリッドを示す模式正面図、(b)は(a)のロック装置を示す模式外観図である。
【
図2】上記ロック装置とリッド側との関係を示す模式外観図である。
【
図3】上記ロック装置を分解して示す分解構成図である。
【
図4】(a)と(b)は上記ロック装置の左側ロッドのロック状態とロック解除状態を示す部分模式図である。
【
図5】上記左側ロッドのロック状態を示し、(a)は正面側外観図、(b)は背面側外観図、(c)はb状態でベースを省いた模式外観図である。
【
図6】上記左側ロッドのロック解除状態を示し、(a)は正面側外観図、(b)はa状態でベースを省いた模式外観図、(c)は背面側外観図である。
【
図7】(a)と(b)は上記ロック装置を構成しているガイド部材のリッド側への取付直前の状態を示す模式構成図と取付完了状態を示す模式構成図である。
【
図8】(a)は上記ガイド部材とガイド部材用取付部の関係を示す模式図、(b)は上記ガイド部材を(a)のY方向から見た外観図、(c)は(a)のX-X線断面図である。
【
図9】上記ガイド部材の変形例を示し、(a)はガイド部材とガイド部材用取付部の関係を示す模式図、(b)はガイド部材を取付部に係合した状態を示す模式図である。
【
図10】特許文献1のロック装置として、(a)は文献1の
図3を示し、(b)は文献1の
図4を示している。
【
図11】特許文献2のロック装置として、(a)は文献2の
図1を示し、(b)は文献2の
図2を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の形態例について添付した図面を参照しながら説明する。この説明では、ロック装置の構造として各部材の細部構成、部材同士の関係を含めて明らかにした後、主な作動と変形例に言及する。
【0020】
(ロック装置の構造)形態例のロック装置3は、
図1~
図8に示されるごとくボックス1の開口を開閉する回動式のリッド2に組付けられ、リッド2の内側にあって左右の一方に装着されるベース4及び左右の他方に装着されるガイド部材5と、ベース4及びガイド部材5に摺動可能に支持されて先端をリッド2の外へ突出する係止位置とリッド2の内側に所定長さ退避する解除位置に切換可能な第1,第2のロッド6A,6B(6)と、ベース4の一端側に設けられた配置部42に回動可能に支持されてロッド6Aを係止位置と解除位置へ切換移動するハンドル7と、ベース4の他端側に設けられた配置部47に回動可能に支持されてロッド6Bをロッド6Aの動きに連動させるローター8と、ハンドル7に装着されてハンドルを操作するノブ9とを備えている。
【0021】
また、ノブ9はハンドル7をコイルばね15の付勢力に抗し操作する。ロッド6Bはコイルばね16より係止位置方向へ付勢され、ロッド6Aはローター8を介してロッド6Bと連動して係止位置と解除位置に切り換えられる。次に、以上の各部材の細部を明らかにする。
【0022】
(ボックスとリッド)まず、
図4のボックス1は、自動車のグローブボックスを想定しており、車室側である手前を開口していると共に、左右側壁にロッド6A,6Bの突出先端と係脱する係止用凹部10を有している。ボックス1の開口はリッド2で開閉される。リッド2は、ボックス1の開口を開閉する前後板20,23及び前後板20,23の間に配置されたロック装置3などを有し、ボックス1の側壁に対し不図示の軸部などを介して回動可能に支持されている。また、前板20は、
図1(a)に示されるごとく、車室側つまりボックス1の外側に配されて前後ないしは厚み方向に貫通したノブ孔21と、ノブ孔21の右側にあってノブ孔21の周囲部分と共に窪んだ操作用凹部22とを有している。後板23は、
図2に示されるごとく、前板20との対向面にロック装置1を構成しているベース4及びガイド部材5が取り付けられる。これらボックス1及びリッド2については、後板23を除いて特許文献1,2に記載の構成と同じか類似しているため細部説明を省略する。
【0023】
すなわち、後板23において、ベース4を取り付ける左内面側には、内側面から対向する右内側方向に突設された一対の受部24と、同図の左側壁に設けられて受部24同士の間から外へ貫通されている挿通孔25と、ベース配置部42を受け止めて固定するねじ止め用止め部26a及びクリップ部26bと、ベース配置部47を受け止めて固定するねじ止め用止め部26a及びクリップ部26bとが設けられている。配置部42と配置部47では止め部26aとクリップ部26bが上下逆に設けられている。各受部24は、略コ形状となっており、上下片24a,24cの間に形成された挟持溝24bに配置部42の対応部を支持する。
【0024】
一方、ガイド部材5を取り付ける右内面側には、
図2及び
図8(a)に示されるごとく、内側面から対向する内側方向に突設された一対の受部27と、両受部27の両側に対向して立設された一対の立壁部28と、各立壁部28の上側に連結された略L形上壁部29とを有している。各受部27には、嵌合部である嵌合溝27aが長手方向の突出端側に設けられている。各立壁部28は、ベース内側面に一体化した状態で、受部27と所定の間隔を保っていると共に、外面に設けられた係止部である突起28aを有している。各突起28aは、立壁部外面のうち、
図8(a)の左縁側に設けられており、右側に行くに従って次第に高くなる傾斜面28sを形成している。符号27bは、受部27同士を連結して各受部27を補強している補強板部である。
【0025】
各上壁部29は、立壁部28の上端に連結された水平壁29aと、水平壁29aの突出端に連結された垂直壁29bと、垂直壁29bの外面に突設された係合部である張出部29cとを有している。各張出部29cは、垂直壁外面のうち、同図の左縁側に設けられており、右内面側に行くに従って次第に高くなる傾斜面29sを形成している。また、両上壁部の垂直壁29同士の間には、所定幅のスリットSが区画形成されている。
【0026】
(ロッド)まず、第1のロッド6A(6)は、
図3に示されるごとく、上側の棒状の本体部60と、本体部60の一端部分の下側に一体化されたロッド先端部62及び先端部62と同軸線上に延設された軸部63とからなる。本体部60は、一端側の側面に設けられた抜け止め用弾性爪61と、後端に設けられた嵌合穴61aとを有している。弾性爪61は、コ形のスリットで区画されており、基端を支点として揺動して本体部60内へ退避可能となっている。ロッド先端部62は、略円柱状であり、軸部63の手前の周面に突設されてハンドル7のアーム72に当接する当接部64を有している。
【0027】
第2のロッド6Bは、
図2及び
図3に示されるごとく、ロッド6Aより長い棒状をなし、後端から途中までの幅細部65と、幅細部65とロッド先端部67の間の幅広部66を有している。幅細部65には嵌合穴65aが基端に設けられている。幅広部には長手方向の略中間に係止片68が設けられている。ロッド先端部67は略円柱状である。
【0028】
(ベースとハンドル及びローター)ベース4は、ロッドの本体部60を摺動案内する筒状の案内部40と、案内部40の一端側の下側部分に一体化されてロッド先端部62及び軸部63を摺動案内する下案内部41と、下案内部41の下側部分に一体化されてバンドル7を回動可能に支持する配置部42と、案内部40の他端側の下側部分に一体化されてローター8を支持する配置部47と、配置部47に連設されて第2のロッド6Bの基端側を通入案内する挿入孔47aとを有している。
【0029】
案内部40と下案内部41は連通されている。案内部40は側面に矩形開口40aを有している。そして、ロッド本体部60は、
図5から推察されるごとく、案内部40に挿入される過程で弾性爪61が縮径しつつ開口40aに入り、以降は案内部40から引き抜こうとしても、元の状態に復元した弾性爪61が開口40aの左縁に当たって引き抜き不能となる。この状態で、本体部60の後端は、案内部40の筒内より配置部47の空洞に突出される。ロッド先端部62及び軸部63は下案内部41に挿入される。その際、ロッド先端部62の当接部64は、
図5(b)に示されるごとく下案内部41の背面側に設けられた溝41aに摺動可能に挿通される。
【0030】
配置部42には、
図3に示されるごとく、コ形取付部が正面側に設けられ、該取付部の上下片に取付孔43が同軸線上に貫通形成されている。また、コ形取付部の内側には、上片側に設けられた矩形の窓44と、窓44の下側内面に設けられたばね受け用の台座42aと、衝撃吸収用のクッション14を取り付ける装着孔42dとが設けられている。更に、コ形取付部より右側には、後板23に設けられたねじ止め用止め部26aに当接される取付孔42bと、クリップ部26bを係入する係合穴42cとが設けられている。
【0031】
一方、配置部42に支持されるハンドル7は、矩形板状の本体70と、本体70の上下面に設けられて同軸線上に突出した軸部71と、本体70の背面上側に突設されて窓44に挿通されるアーム72と、本体70の中央に設けられた略矩形の穴73と、穴73を区画している上下面に設けられて同軸線上に突出した軸部74と、上下の軸部74に軸支されるコイルばね15と、穴73の右上側に設けられてコイルばね15の一端15aを止める止め部75と、止め部75の下側に設けられた弾性片76とを有している。また、本体70は、ノブ装着用突起77及び不図示の掛け止め部などを有し、ノブ9が本体の前面を覆うように突起77及び掛け止め部などとの係合により装着される。このノブ9は、背面側に本体用連結部(不図示)を有し、該連結部が
図1から推察されるごとく前板20に設けられた凹所22、及び凹所22に設けられたノブ孔21から本体70に接近されて突起77及び掛け止め部などと係合一体化される。
【0032】
そして、ハンドル7は、アーム72を窓44に挿通した状態で、上下の軸部71を対応する取付孔43に嵌合することで所定角回動可能に組み付けられる。また、ハンドル7は、コイルばね15の他端(不図示)を台座42aに係止した状態で、一端15aが付勢力を発現しながら止め部75に係止されると、
図5に示されるごとくコイルばね15の付勢力で逆時計回りの方向へ回動されてコ形取付部の内面に接した通常態様となる。この通常態様において、アーム72は、
図5(b)のごとく窓44を区画している内側面、つまり配置部42の端面側にある内側面に当接している。従って、第1のロッド6Aは、
図4(a)のごとく当接部64がアーム72に当接して摺動規制されるまで、つまりロッド先端部62が外へ最大まで突出してボックス側の係止用凹部10に対する係合状態(ロック状態)を保つ。
【0033】
換言すると、以上のロック装置3では、組立状態において、ハンドル7がコイルばね15の付勢力で配置部側42側に接近ないしは配置部42と平行な状態に保たれる。このとき、ノブ9は
図1(a)のごとく凹所22に平行となり凹所内に収まっている。また、後述するごとく各ロッド6A,6Bがコイルばね16及びローター8を介して互いに最も離間して、各ロッド先端62,67がボックス側の対応する係止用凹部10に係合した
図4(a)のロック状態となる。また、ハンドル7は、ノブ9が
図4(b)に示したごとく手などでコイルばね6の付勢力に抗し軸部71を支点として時計回り方向へ回動操作されると、アーム72が当接部64をロッド6Aのロック解除方向へ押し移動して、各ロッド先端62,67がボックス側の対応する係止用凹部10から外れてロック解除される。
【0034】
これに対し、配置部47は、
図3に示されるごとく、ロッド6A,6Bの各後端側及びローター8を余裕を持って受け入れる窪み状に設けられ、該窪み状内に円状受台46と、該円状受台46の周囲に対向して設けられた一対の規制溝45a,45bとを有している。受台46には嵌合穴46aが中心に設けられている。規制溝45a,45bは、円弧状であり、嵌合穴46aを中心とした円上に位置している。また、配置部47には、前記窪み状の外端面に設けられてロッド6Bの幅細部分65の後端側を窪み状内に導入する挿入孔47aと、後板23に設けられたねじ止め用止め部26aに当接される取付孔47bと、クリップ部26bを係入する係合穴47cとが設けられている。
【0035】
配置部47に支持されるローター8は、概略T形状であり、水平片部80と水平片部80の中間に設けられた筒部81とからなる。水平片部80には、下面側の両端に凸部82と凸部83が設けられている。筒部81には、周囲二カ所に係合片84がコ形のスリットを介して区画形成されている。そして、ローター8は、筒部81が嵌合穴46aに係合片84を介して嵌合抜け止めされた状態で配置部47内に回動可能に組み付けられる。その際、水平片部80の一方の凸部82は、ロッド6Aの嵌合穴61aに挿通された後、規制溝45aに嵌合される。他方の凸部83は、挿入孔47aから挿入されるロッド6Bの後端に設けられた嵌合穴65aに挿通された後、規制溝45bに嵌合される。規制溝45a,45bは、凸部82,83が溝の両側内端に当たることでローター8の回動範囲を規制する。具体的には、凸部82が規制溝45aの右側の内端に当たり、凸部83が規制溝45bの左側の内端に当たると、ロッド6A,6Bが最も退避した解除状態となる。逆に、凸部82が規制溝45aの左側の内端に当たり、凸部83が規制溝45bの右側の内端に当たると、ロッド6A,6Bが最も突出方向へ移動したロック状態となる。
【0036】
換言すると、この構造では、例えば、ロッド6Bがコイルばね16の付勢力により突出方向へ付勢移動される。それに同期して、ローター8は、規制溝45bに対する凸部83の回動規制と、規制溝45aに対する凸部82の回動規制により反時計回りの方向へ所定角だけ回動される。それに同期して、ロッド6Aもローター8を介して突出方向へ移動される。なお、以上のベース4は、配置部42の左側が対の挟持溝24bに挟持された状態で、配置部42において、係合穴42cに対する後板23側のクリップ部26の係合と、ねじを取付孔42bから後板23側の止め部26aに螺入するねじ止めとで固定され、配置部47において、係合穴47cに対する後板23側のクリップ部26の係合と、ねじを取付孔47bから後板23側の止め部26aに螺入するねじ止めとで固定されされる。
【0037】
(ガイド部材及びその取付構造)ガイド部材5は、
図8に示されるごとく本体50が両側壁50aと底壁50bとで区画された略凹形状からなり、内側がロッド6Bの幅広部66の摺動を案内する溝部51に形成されている。両側壁50aは、立壁部28同士の間に嵌合する間隔を保っている。また、一方の側壁50aには舌状の受板52が突設されている。受板52の上面には、コイルばね16を支持する軸部53と、コイルばね16の他端16aを係止する止め部53aとが設けられている。
【0038】
本体50の一端側には、側壁50a同士を上側で接続している断面凸状の上連結片54と、下側で接続している断面逆凸状の下連結片55とを有している。底壁50bは、一対の受部27に安定支持されるよう左右中間を少しへこました凹状に形成されていると共に、下連結片55と対向した部分を欠如している。下連結片55は、上記後板23の受部27に設けられた嵌合部である嵌合溝27aと嵌合する被嵌合部である。
【0039】
本体50の他端側には、側壁50a同士を上側で接続している断面凸状の上連結片56と、上連結片56の左右略中間より他端の間に設けられた覆い部57とを有している。上連結片56は上連結片54より長く形成されている。覆い部57は、上壁57aが上連結片56の幅寸法と同幅になっており、両側壁57bが上連結片56の凸と隙間を保ち、上記した両上壁部29の垂直壁29bに圧入する被係合部である。この両側壁57bは、下側が上連結片56に対し他端から所定寸法だけ切り欠かれて隙間57cを保っている。
【0040】
この構造では、被係合部である側壁57b同士の間に係合部である両垂直壁の張出部29cを圧入するときに、各側壁57bを隙間57cの存在により変位可能にし、それにより圧入度合いを増して圧入固定可能にしている。また、その際、上連結片56の凸は垂直壁29b同士の間のスリットSに嵌合し、それにより前記圧入固定を安定維持できる。
【0041】
また、本体50の他端側には両側壁50aの外面に揺動片58が設けられている。各揺動片58は、
図8(a)に示されるごとく本体の両側壁50aから略L形に他端側へ延びている。また、各揺動片58は、突出端の内面に設けられた弾性爪部58aを有している。そして、この構造では、 ガイド部材5が被係合部である側壁57bを上壁部垂直壁外面の係合部である張出部29cに圧入固定する最終段階で、弾性爪部58aが係止部である立壁部の突起28aに弾性係合することにより、ガイド部材5の組付け状態をより確実に安定維持できる。加えて、この構造では、突起28aの傾斜面28sが右側に行くに従って次第に高くなるよう斜面しており、弾性爪部58aが傾斜面28sを通過すると縮径方向へ変位し、その際にクリック音ないしはクリック感を発しながら係合するため、係合完了を感知できる。
【0042】
以上のように、ガイド部材5は、後板23に対し長手方向の一端側が被嵌合部である下連結片55と嵌合部である嵌合溝27aとの嵌合、他端側が被係合部である両側壁57bに対する係合部である張出部29cの圧入、スリットSに対する上連結片56の凸の嵌合、被係合部である突起28aに対する弾性爪部58aの係合により、固定状態を確実に維持できる。また、係合部である張出部29cは、被係合部である両側壁57bと重なりを増すに従って高くなる傾斜面29sを有しているため、傾斜面29sで外側へ拡径変位しながら圧着度合いを増し、ガイド部材5と後板23側との間のガタ付きがより確実に抑制可能となる。
【0043】
なお、以上のガイド部材5には、第2のロッドの幅広部66が溝部51に嵌合した状態で組み込まれている。また、第2のロッド6Bは、
図7(b)に示されるごとくロッド先端部67が軸部53に支持されるコイルばね16の付勢力により突出方向へ付勢されて、挿通孔25から外へ最大に突出移動されている。コイルばね16は、一端16aが他端16bを止め部53aに係止した状態で、付勢力を発現しながら係止片68に係止されることで、第2のロッド6Bが係止位置の方向へ突出移動されている。
【0044】
(作動)以下、以上のロック装置3の主な作動特徴について概説する。
(1)、このロック装置3では、特許文献1,2のごとくガイド部材がねじにより組み付けられる従来構造に対し、ガイド部材5がリッド側に対し係合部である張出部29c及び被係合部である覆い部の側壁57bの圧入固定により取り付けられるため、部材数や組み付け工数、更にはコストを低減し易い点で優れている。また、この組付け構造では、張出部29c及び覆い部の側壁57bがガイド部材5をリッド開閉方向と交差する横方向に移動することで圧入固定可能となるため、ねじにより締め付ける従来構造に比べリッド2が繰り返し開閉操作されても、固定力が緩んだり弱くなるというような虞を解消できる。その結果、繰り返し使用によるガタ付きやそれに起因した異音発生を抑制でき、それにより品質及び信頼性を向上できる。換言すると、この構造では、張出部29c及び被係合部である覆い部の側壁57bがガイド部材5をリッド開閉方向と交差する方向に移動するためリッド開閉による悪影響を受け難くなる。
【0045】
(2)、しかも、このロック装置3では、係合部である張出部29cが被係合部である側壁57bと重なりを増すに従って高くなる傾斜面29sになっているため、
図9から推察されるごとく側壁59a(形態例の側壁57b)がその傾斜面29sで外側へ拡径変位しながら圧着度合いを増し、その結果、ガイド部材5とリッド2側との間のガタ付きがより確実に抑制できる。また、ガイド部材5がリッド2側に対しその長手方向両端を張出部29cと側壁57bの圧入固定、被嵌合部である下連結片55と嵌合部である嵌合溝27aの嵌合ないしは嵌入によりそれぞれ規制されることから、組付け状態を安定維持できると共に、ガタ付き発生もより確実に抑制できる。
【0046】
(3)、加えて、このロック装置3では、リッド2及びガイド部材5が互いに係合する係止部である突起28aと弾性爪部58aの異なる一方を有し、突起28aと弾性爪部58aが張出部29cと側壁57bの圧入固定と共に弾性係合することから、ガイド部材5の組付け状態をより安定維持できる。また、形態例のごとくガイド部材5が被係合部である側壁57bを係合部である張出部29cに圧入固定した状態で、立壁部28同士の間にガイド部材5の外径部である凸部56を規制したり、係止部である突起28aを立壁部28の外面に設けるような構成を展開可能となる。また、リッド2側のスリットSに対しガイド部材5側の凸部56が係合されるため、両部材2,5の一体化を強くし、その結果、ガタ付き抑制がより確実なものとなる。
【0047】
(4)、なお、
図1と
図4(a)及び
図5は、ロック装置3の各ロッド6A,6Bが係止位置、つまりロック状態を示している。このロック状態では、各ロッド6A,6Bがコイルばね16の付勢力及びローター8を介して挿通孔25から外に最大まで突出され、各ロッド先端部62,67が挿通孔25からボックス側の係止用凹部10に係合している。また、ロッド6A,6B同士はローター8を介して最も離間した状態であると共に、ロッド6Aの当接部64はハンドルのアーム72に当接している。
【0048】
(5)、
図4(b)及び
図6は、ロック装置3の各ロッド6A,6Bが解除位置、つまりロック解除状態を示している。まず、ロック装置3は、ハンドル7に装着されたノブ9を
図4(b)に示したごとく手などで軸部71を支点として水平状態から所定角外方向へコイルばね15の付勢力に抗して回動操作すると、ロック状態からロック解除状態に切り換えられる。この切換作動は、ノブ9の回動操作により、ハンドルのアーム72がロッド6Aの当接部64を
図4(b)の左側へ押して動かす。すると、ロッド6Aはアーム72に押されてロック解除方向へ移動し、これに同期して、ロッド6Bはローター8を介して引き込まれて(この過程でコイルばね16には付勢力が蓄積される)ロック解除方向へ移動する。そして、以上のロック装置3は、ロック解除状態に切り換えられた後、ノブ9から手を離すことにより、ロッド6Bがコイルばね16の付勢力により突出方向へ摺動して再びロック状態となり、これに同期して、ロッド6Aがローター8を介して突出方向へ摺動されてロック状態となる。
【0049】
(変形例)
図9はガイド部材の変形例を示し、(a)は
図8(a)に対応した模式図、(b)は
図7(b)に対応した模式図である。変形例のガイド部材5Aは、以上のガイド部材5の覆い部57をコ形部59として形成している。コ形部59は、対向した片部59a,59aが上記形態例の被係合部である側壁57bに対応している。すなわち、各片部59aは、
図9(b)に示されるごとく両側の垂直壁29bに設けられた係合部である張出部29cに圧入固定される。
【0050】
このように、本発明のロック装置3は、請求項で特定される構成を備えておればよく、細部は色々変形可能なものである。また、例えば、圧入固定構造としては、係合部29cを形態例のごとくリッド側ではなくガイド部材側に設けると共に、被係合部57aをガイド部材側ではなくリッド側に設けるようにしてもよい。また、係合構造としては、係止部28aを形態例のごとくリッド側ではなくガイド部材側に設けると共に、弾性爪部58aをリッド側ではなくガイド部材に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1・・・・・ボックス(10は係止用凹部)
2・・・・・リッド
3・・・・・ロック装置
4・・・・・ベース
5・・・・・ガイド部材
6A・・・・第1のロッド(6)
6B・・・・第2のロッド(6)
7・・・・・ハンドル
8・・・・・ローター
9・・・・・ノブ
15・・・・コイルばね(15aは一端、15bは他端)
16・・・・コイルばね(16aは一端、16bは他端)
20・・・・前板(21はノブ孔、22は凹所)
23・・・・後板(25は挿通孔)
27・・・・受部(27aは嵌合部である嵌合溝)
28・・・・立壁部(28aは係止部である突起)
29・・・・上壁部(29aと29bはL形の水平壁と垂直壁)
29c・・・張出部(係合部)
29s・・・傾斜面
50・・・・ガイド部材の本体(50aは側壁、50bは底壁)
51・・・・溝部
53・・・・ばね用支軸
55・・・・下連結片(被嵌合部)
56・・・・凸部
57・・・・覆い部(57aは上壁、57bは被係合部である側壁)
57b・・・側壁(被係合部)
58・・・・揺動片(58aは弾性爪部)
59・・・・コ形部(59aは被係合部である片部)