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特許7152843ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及びビールテイスト飲料に良好な濃醇さと後味の質を付与する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及びビールテイスト飲料に良好な濃醇さと後味の質を付与する方法
(51)【国際特許分類】
   C12C 5/02 20060101AFI20221005BHJP
   C12C 7/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C12C5/02
C12C7/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2016192928
(22)【出願日】2016-09-30
(65)【公開番号】P2018050571
(43)【公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-09-24
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100215957
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 明照
(72)【発明者】
【氏名】新開 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】松井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】神前 陽一
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】加藤 友也
【審判官】植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/121304(WO,A1)
【文献】特開2016-149975(JP,A)
【文献】サッポロビール株式会社,「サッポロ 麦とホップ Platinum Clear(プラチナクリア)」発売,ニュースリリース[online],2016-03-30,[retrieved on 2017-07-21],http://www.sapporobeer.jp/news_release/0000021310/
【文献】GNPD-Platinum Clear Beer,ID#4182633,掲載時期:2016年6月,[retrieved on 2020-04-15]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C5/02
C12C7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料中の麦芽の比率が66.6質量%以下であり、タンパク質含有量が0.41g/100ml以上であり、糖質含有量が1.3g/100ml以上2.0g/100ml以下である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
原料中の麦芽の比率が50質量%未満である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
エキス分が2.0w/v%以上である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
原料として食物繊維を用いない、請求項1~3のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
アルコール度数が1v/v%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
麦芽の比率が66.6質量%以下である原料を用い、
ビールテイスト飲料のタンパク質含有量が0.41g/100ml以上、糖質含有量が1.3g/100ml以上2.0g/100ml以下となるように調整することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項7】
ビールテイスト飲料のタンパク質含有量が0.41g/100ml以上、糖質含有量が1.3g/100ml以上2.0g/100ml以下となるように調整することを含む、原料中の麦芽の比率が66.6質量%以下であるビールテイスト飲料に良好な濃醇さと後味の質を付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及びビールテイスト飲料に良好な濃醇さと後味の質を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好性の多様化から、発泡酒、リキュールなどのビールテイスト飲料が広く消費されている。このようなビールテイスト飲料の消費拡大に伴って、ビールテイスト飲料の香味を向上させる方法が種々報告されている。例えば特許文献1には、ビールテイスト飲料のキレを維持しつつ、コクを増強する方法として、水溶性食物繊維と、一定量の高甘味度甘味料を含有するビールテイスト飲料が開示されている。
【0003】
一方で、近年の健康志向の上昇から、糖質含有量の低いビールテイスト飲料の需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-166169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、原料中の麦芽の比率が低い低糖質のビールテイスト飲料は、濃醇さと後味の質(後味がしっかりしたものであり、かつ渋味が少ないものであること)が不十分であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低糖質でありながら、良好な濃醇さと後味の質を有するビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原料中の麦芽の比率が66.6質量%以下であり、タンパク質含有量が0.31g/100ml超であり、糖質含有量が2.5g/100ml以下である、ビールテイスト飲料を提供する。本発明のビールテイスト飲料は、上記構成を備えることにより、良好な濃醇さと後味の質を有している。
【0008】
上記ビールテイスト飲料は、麦原料中の麦芽の比率が50質量%未満であることが好ましい。これにより、ビールテイストの濃醇さと後味の質がより良好なものとなる。
【0009】
上記ビールテイスト飲料は、エキス分が2.0w/v%以上であることが好ましい。これにより、ビールテイストの濃醇さと後味の質がより良好なものとなる。
【0010】
上記ビールテイスト飲料は、原料として食物繊維を用いないことが好ましい。これにより、後味の質がより良好なものとなる。
【0011】
上記ビールテイスト飲料は、アルコール度数が1v/v%以上であることが好ましい。これにより、ビールテイスト飲料としてのアルコール感が担保される。
【0012】
本発明はまた、麦芽の比率が66.6質量%以下である原料を用い、ビールテイスト飲料のタンパク質含有量が0.31g/100ml超、糖質含有量が2.5g/100ml以下となるように調整することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、ビールテイスト飲料のタンパク質含有量が0.31g/100ml超となるように調整すること、及び糖質含有量が2.5g/100ml以下となるように調整することを含む、原料中の麦芽の比率が66.6質量%以下であるビールテイスト飲料に良好な濃醇さと後味の質を付与する方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低糖質でありながら、良好な濃醇さと後味の質を有するビールテイスト飲料、及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、甘みのべとつきが抑えられたビールテイスト飲料を提供することができる。さらに、本発明によれば、原料中の麦芽の比率が66.6質量%以下であるビールテイスト飲料に良好な濃醇さと後味の質を付与する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書において「原料」とは、酒税法(平成二八年三月三一日法律第一六号)に基づいて決定されたビールテイスト飲料の製造に用いられる全原料のうち、水及びホップ以外のものを意味する。
【0017】
本明細書において「約」とは、±5%の範囲内の数値を示す。
【0018】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の麦芽の比率が66.6質量%以下であり、タンパク質含有量が0.31g/100ml超であり、糖質含有量が2.5g/100ml以下である。
【0019】
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。ビールテイスト飲料は、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1v/v%未満であるノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料としてのアルコール感を担保する観点から、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であることが好ましい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0020】
ビールテイストアルコール飲料としては、例えば、酒税法(平成二八年三月三一日法律第一六号)上の発泡酒、その他の発泡性酒類、リキュールに分類されるものが挙げられる。
【0021】
ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数の下限は、例えば、1v/v%以上、2v/v%以上、3v/v%以上、4v/v%以上、5v/v%以上であってもよい。また、ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数の上限は、例えば、20v/v%以下、15v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下、8v/v%以下、7v/v%以下、6v/v%以下、5v/v%以下、4v/v%以下、3v/v%以下であってもよい。
【0022】
ノンアルコールビールテイスト飲料は、実質的にアルコールを含有しないビールテイスト飲料である。ノンアルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、1v/v%未満であればよく、0.5v/v%以下であってよく、0.1v/v%以下であってよく、0.005v/v%未満(0.00v/v%)であってもよい。
【0023】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であってもよく、非発泡性であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であることが好ましい。本明細書において発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)未満であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm)程度であってもよく、0.235MPa(2.4kg/cm)程度であってもよい。
【0024】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料が麦原料を含んでもよい。
【0025】
本明細書において麦原料とは、麦又は麦加工物をいう。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦が挙げられる。麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽は麦を発芽させることにより得られる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。麦原料は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
【0026】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の麦原料の比率が50質量%以上、66質量%以上、67質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上、又は100質量%であってよい。原料中の麦原料の比率が上記範囲であると、ビールテイスト飲料の濃醇さと後味の質がより良好なものとなる。
【0027】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の麦芽の比率が66.6質量%以下であればよく、50質量%未満、又は25質量%未満であってよい。原料中の麦芽の比率が上記範囲であると、ビールテイスト飲料の濃醇さと後味の質がより良好なものとなる。
【0028】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料が麦原料以外のものを含んでもよい。麦原料以外の原料は、例えば、トウモロコシ、米類、コウリャン等の穀類;馬鈴薯、サツマイモ等のイモ類;大豆、エンドウ等の豆類等の植物原料であってよく、スターチ、グリッツ、液糖等の糖質原料(糖類)であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、より濃醇な味わいを担保する観点から、原料として麦原料以外の植物原料を用いないことが好ましい。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、甘みのべとつきを抑える観点から、原料として糖質原料(糖類)を用いないことが好ましい。さらに、本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、より濃醇な味わいを担保する観点、甘みのべとつきを抑える観点から、原料として麦原料以外の植物原料及び糖質原料(糖類)を用いないことが好ましい。
【0029】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、タンパク質含有量が0.31g/100ml超である。タンパク質含有量は、改良デュマ法による全窒素(タンパク質)の定量法で測定することができる。
【0030】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のタンパク質含有量は、0.35g/100ml以上、0.40g/100ml以上、0.45g/100ml以上、0.50g/100ml以上、0.55g/100ml以上、又は0.60g/100ml以上であってもよい。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料のタンパク質含有量は、3.00g/100ml以下、2.50g/100ml以下、2.30g/100ml以下、2.00g/100ml以下、1.80g/100ml以下、1.50g/100ml以下、1.30g/100ml以下、1.00g/100ml以下、0.90g/100ml以下、0.85g/100ml以下、0.80g/100ml以下、0.75g/100ml以下、又は0.70g/100ml以下であってもよい。タンパク質含有量が上記範囲であると、ビールテイスト飲料の濃醇さと後味の質がより良好なものとなる。タンパク質含有量は、酵素添加量、原料の種類及び使用量等によって調整することができる。
【0031】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、酵素及び植物原料由来のタンパク質のほか、原料として別途用いたタンパク質を含んでいてもよい。このようなタンパク質としては、例えば小麦タンパク、大豆タンパク、エンドウタンパク等、又はそれらの分解物等が挙げられる。本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、ビールテイスト飲料の香りを良好なものとする観点から、原料としてコラーゲンを用いないことが好ましい。
【0032】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、糖質含有量が2.5g/100ml以下である。本明細書において糖質とは、食品の栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)に基づく糖質をいう。具体的には、糖質は、食品から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分を除いたものをいう。ビールテイスト飲料中の糖質含有量は、当該ビールテイスト飲料の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分の量を控除することにより算定される。タンパク質、脂質、灰分、水分の量は、栄養表示基準に掲げる方法により測定する。アルコール分の量は、水分量とともに測定することができる。具体的には、タンパク質の量は改良デュマ法による全窒素(タンパク質)の定量法で測定し、脂質の量はエーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解法又はレーゼゴットリーブ法で測定し、食物繊維の量は高速液体クロマトグラフ法又はプロスキー法で測定し、灰分の量は酢酸マグネシウム添加灰化法、直接灰化法又は硫酸添加灰化法で測定し、水分及びアルコール分の量はカールフィッシャー法、乾燥助剤法、減圧加熱乾燥法、常圧加熱乾燥法又はプラスチックフィルム法で測定することができる。
【0033】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の糖質含有量は、2.5g/100ml以下、2.3g/100ml以下、2.0g/100ml以下、1.8g/100ml以下、1.7g/100ml、又は1.6g/100ml以下であってもよい。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料の糖質含有量は、0.1g/100ml以上、0.2g/100ml以上、0.3g/100ml以上、0.4g/100ml以上、0.5g/100ml以上、1.0g/100ml以上、1.2g/100ml以上、又は1.3g/100ml以上であってもよい。糖質含有量が上記範囲であると、甘みのべとつきがより抑えられる。糖質含有量は、酵素添加量、原料の種類及び使用量等によって調整することができる。
【0034】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の食物繊維含有量は、1.0g/100ml未満、0.7g/100ml未満、0.5g/100ml未満、0.3g/100ml未満、又は0.2g/100ml未満であってよい。食物繊維含有量は、高速液体クロマトグラフ法又はプロスキー法で測定することができる。食物繊維含有量は、原料の種類及び使用量等によって調整することができる。
【0035】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、植物原料由来の食物繊維のほか、原料として別途用いた食物繊維を含んでいてもよい。このような食物繊維としては、例えば難消化性デキストリンが挙げられる。本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、後味の質がより良好なものとなる観点から、原料として食物繊維を用いないことが好ましい。
【0036】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のエキス分は、1.0w/v%以上、1.3w/v%以上、1.5w/v%以上、1.8w/v%以上、2.0w/v%以上、又は2.2w/v%以上であってよい。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料のエキス分は、4.0w/v%以下、3.0w/v%以下、又は2.5w/v%以下であってよい。エキス分が上記範囲であると、ビールテイスト飲料の濃醇さと後味の質がより良好なものとなる。本明細書においてエキス分とは、糖分(炭水化物)、タンパク質、アミノ酸、苦味質、不揮発性有機酸、ミネラル、ポリフェノール、色素成分等からなる不揮発性固形分をいう。エキス分は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.4 真正(性)エキス」に記載の方法によって測定することができる。エキス分は、酵素添加量、原料の種類及び使用量等によって調整することができる。本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、酵母エキス特有の香りをビールテイスト飲料に持ち込まない観点から、原料として酵母エキスを用いないことが好ましい。
【0037】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、4-ビニルグアヤコール(4-ビニル-2-メトキシフェノール;4-VG)を含んでいてもよい。ビールテイスト飲料が4-ビニルグアヤコールを含む場合、その濃度は0.3ppm以上であることが好ましく、0.8ppm以上であることがより好ましい。4-ビニルグアヤコールの濃度が上記範囲であると、ビールテイスト飲料の香りがより良好なものとなる。4-ビニルグアヤコールの濃度は、固相マイクロ抽出(SPME)法に基づき、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)を用いて測定することができる。なお、定量は標準添加法によって実施することが好ましい。4-ビニルグアヤコールの濃度は、原料の種類及び使用量等によって調整することができる。
【0038】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、酢酸イソアミルを含んでいてもよい。ビールテイスト飲料が酢酸イソアミルを含む場合、その濃度は4.0ppm以上であることが好ましい。酢酸イソアミルの濃度が上記範囲であると、ビールテイスト飲料の香りがより良好なものとなる。酢酸イソアミルの濃度は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.22 低沸点香気成分」に記載の方法によって測定することができる。酢酸イソアミルの濃度は、酵素添加量、原料の種類及び使用量等によって調整することができる。
【0039】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、飲料に通常配合される着色料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類等の添加剤を含んでもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、より純粋なビールテイスト飲料の味わいを実現する観点から、高甘味度甘味料を含まないことが好ましい。
【0040】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0041】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、麦芽の比率が66.6質量%以下である原料を用い、上述のようにビールテイスト飲料中のタンパク質含有量が0.31g/100ml超、糖質含有量が2.5g/100ml以下となるように調整すること以外は、常法に従って製造することができる。
【0042】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、例えば、麦原料と水と必要に応じて酵素と各種添加剤を混合して麦原料を糖化し、糖化液を濾過して得られた麦汁に、必要に応じて、ホップの添加、煮沸、冷却等を行って発酵前液を得る仕込工程、発酵前液にビール酵母を添加して発酵させる発酵工程を経ることで製造することができる。また、発酵工程後の発酵後工程として、発酵工程で得られた発酵後液に対して濾過、加熱(殺菌)、アルコールの添加、カーボネーション等を行ってもよい。
【0043】
仕込工程で添加する酵素としては、例えば、多糖分解酵素(例:α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、プルラナーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、イソアミラーゼ、セルラーゼ(β-グルカナーゼを含む)、ヘミセルラーゼ)、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を用いることができる。酵素は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
【0044】
仕込工程で添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0045】
発酵後工程で添加するアルコールとしては、例えば、スピリッツを用いることができ、中でも大麦スピリッツが好ましい。一実施形態として、ビールテイスト飲料はスピリッツ(好ましくは、大麦スピリッツ)を含んでもよい。
【0046】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、良好な濃醇さと後味の質を有するという効果を奏する。したがって、本発明の一実施形態として、ビールテイスト飲料中のタンパク質含有量が0.31g/100ml超、糖質含有量が2.5g/100ml以下となるように調整することを含む、原料中の麦芽の比率が66.6質量%以下であるビールテイスト飲料に良好な濃醇さと後味の質を付与する方法が提供される。
【実施例
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
〔製造例:ビールテイスト飲料の製造〕
(ビールテイスト飲料(A液)の製造)
粉砕した麦原料(麦芽の比率約50質量%、残部は粉砕大麦)、水、粉砕大麦に対して0.57質量%の多糖分解酵素を含む原料を仕込槽に投入し、常法に従って糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、所定期間発酵させ、アルコール度数約5v/v%のビールテイスト飲料(A液)を製造した。
【0049】
(ビールテイスト飲料(B液)の製造)
仕込工程で、粉砕大麦に対して0.13質量%のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を更に投入したこと以外はビールテイスト飲料(A液)の製造と同様の条件で、アルコール度数約5v/v%のビールテイスト飲料(B液)を製造した。
【0050】
(ビールテイスト飲料(C液)の製造)
仕込工程で、粉砕大麦に対して0.15質量%のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を更に投入したこと以外はビールテイスト飲料(A液)の製造と同様の条件で、アルコール度数約5v/v%のビールテイスト飲料(C液)を製造した。
【0051】
(ビールテイスト飲料(D液)の製造)
粉砕した麦原料(麦芽の比率約25質量%、残部は粉砕大麦)、水、粉砕大麦に対して0.57質量%の多糖分解酵素を含む原料を仕込槽に投入し、常法に従って糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、所定期間発酵させ、アルコール度数約5v/v%のビールテイスト飲料(D液)を製造した。
【0052】
(ビールテイスト飲料(E液)の製造)
仕込工程で、粉砕大麦に対して0.13質量%のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を更に投入したこと以外はビールテイスト飲料(D液)の製造と同様の条件で、アルコール度数約5v/v%のビールテイスト飲料(E液)を製造した。
【0053】
(ビールテイスト飲料(F液)の製造)
粉砕した麦原料(麦芽の比率約50質量%、残部は粉砕大麦)、水、粉砕大麦に対して0.0875質量%の多糖分解酵素を含む原料を仕込槽に投入し、常法に従って糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、所定期間発酵させ、アルコール度数約5.75v/v%のビールテイスト飲料(F液)を製造した。
【0054】
(タンパク質量の測定及び糖質量の算出)
得られた各ビールテイスト飲料の水分、アルコール分、タンパク質、灰分の量をそれぞれ測定した。水分とアルコール分は常圧加熱乾燥法により測定した。タンパク質量は、改良デュマ法により全窒素(タンパク質)の定量法により測定した。灰分量は、直接灰化法により測定した。ビールテイスト飲料中の脂質量を0g/100ml、食物繊維量を0g/100mlとみなし、ビールテイスト飲料の重量から、水分、アルコール分、タンパク質量及び灰分量を引いた値をビールテイスト飲料の糖質量(g/100ml)として算定した。
【0055】
〔試験例1:ビールテイスト飲料の調製及び評価(1)〕
(サンプルの調製及び官能評価)
A液をサンプル1-1、A液とC液を3:1の体積比で混合したものをサンプル1-2、A液とC液を1:1の体積比で混合したものをサンプル1-3、B液をサンプル1-4、C液をサンプル1-5、D液をサンプル1-6、E液をサンプル1-7として、それぞれのサンプルについて、訓練された4名のパネルにより官能評価を行った。官能評価は、濃醇さと後味の質(後味がしっかりしたものであり、かつ渋味が少ないものであること)の評価項目について、5段階(5:良好~1:不十分)で行い、その平均値を評価スコアとした。なお、評価スコアが2を超えるサンプルは、実用上の問題なく、良好な濃醇さ、又は後味の質を有しているものと評価される。結果を表1に示す。なお、サンプル1-5における4-ビニルグアヤコールの濃度は、0.8ppmであった。
【0056】
【表1】
【0057】
原料中の麦芽の比率が約50質量%であるサンプルについて、タンパク質含有量が0.31g/100mlのサンプル1-1は濃醇さが不十分であったのに対し、0.31g/100mlを超えるサンプル1-2~1-5は良好な濃醇さと後味の質を有していた。特に、タンパク質含有量が0.51~0.70g/100mlの範囲内であるサンプル1-3~1-5は、優れた濃醇さと後味の質を有していた。
また、原料中の麦芽の比率が約25質量%であるサンプルについて、タンパク質含有量が0.28g/100mlのサンプル1-6は後味の質が不十分であったのに対し、0.66g/100mlのサンプル1-7は良好な濃醇さと後味の質を有していた。
【0058】
〔試験例2:ビールテイスト飲料の調製及び評価(2)〕
【0059】
(サンプルの調製及び官能評価)
B液をサンプル2-1、B液とF液を84:16の体積比で混合したものをサンプル2-2、B液とF液を77:23の体積比で混合したものをサンプル2-3、B液とF液を6:4の体積比で混合したものをサンプル2-4、B液とF液を45:55の体積比で混合したものをサンプル2-5として、それぞれのサンプルについて、訓練された4名のパネルにより官能評価を行った。官能評価は、濃醇さと甘みのべとつきのなさの評価項目について、5段階(5:良好~1:不十分)で行い、その平均値を評価スコアとした。なお、評価スコアが2を超えるサンプルは、実用上の問題なく、良好な濃醇さを有し、又は甘みのべとつきが抑えられているものと評価される。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
タンパク質含有量が0.53~0.63g/100mlの範囲内であるビールテイスト飲料において、糖質含有量が2.5g/100ml以下のサンプル2-1~2-4は、良好な濃醇さを有し、かつ甘みのべとつきが抑えられていた。一方、糖質含有量が2.5g/100mlを超えるサンプル2-5は、良好な濃醇さを有するものの、甘みのべとつきが感じられた。