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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】パン用品質改良剤
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20221005BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20221005BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20221005BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D2/26
A21D13/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017185494
(22)【出願日】2017-09-26
(65)【公開番号】P2019058107
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直也
(72)【発明者】
【氏名】越野 倫江
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝朗
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-064500(JP,A)
【文献】特開2000-333590(JP,A)
【文献】特開2001-045960(JP,A)
【文献】特開2008-099581(JP,A)
【文献】特開2006-254901(JP,A)
【文献】特開2010-213654(JP,A)
【文献】特表2007-521794(JP,A)
【文献】特表2008-543322(JP,A)
【文献】特開2014-068620(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0207240(US,A1)
【文献】特開2019-017354(JP,A)
【文献】食品表示基準(平成27年 3月20日内閣府令第10号)別表第十二(第七条関係),2015年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤を含有しないパン(ただし、酵素が添加されたパンに限る)の製造に用いられるパン用品質改良剤であって、難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリン並びに粉末状油脂を有効成分とするパン用保型性向上剤。
【請求項2】
乳化剤を含有しないパン(ただし、酵素が添加されたパンに限る)に対し難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンを添加し、アルギン酸プロピレングリコールエステルを添加しない、パンの保型性向上方法であって、難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンの添加量が、該パンの原材料中の穀粉類100質量部に対し、0.1質量部以上1.0質量部未満であるパンの保型性向上方法。
【請求項3】
難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンを含有し、乳化剤及びアルギン酸プロピレングリコールエステルを含有しないパン(ただし、酵素が添加されたパンに限る)であって、難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンの含有量が、該パンの原材料中の穀粉類100質量部に対し、0.1質量部以上1.0質量部未満であるパン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン用品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム又はステアロイル乳酸カルシウム等の乳化剤が、パン用の品質改良剤として使用されてきた。近年、これらの乳化剤を含有しないパンの製造が行われている。一般的に、このようなパンには、製造後の老化を防止するため、α-アミラーゼ等の酵素が添加される。しかし、酵素が添加されたパンは、その構造が酵素により弱くなっているため製造後につぶれてしまい、保型性に劣るという問題がある。
【0003】
パンの保型性に関する技術としては、うるち米を原料米とし、(i)平均粒径が100μm~150μmであり、(ii)50μm~200μmの粒度幅に70%以上が含まれ、かつ(iii)損傷澱粉が5%未満のパン用米粉(特許文献1参照)等が開示されている。しかし、当該技術には米粉含有パンに制限されるという問題があり、乳化剤を含有しないパン全般に対し、優れた保型性向上効果を発揮できるパン用品質改良剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-66417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、乳化剤を含有しないパンの保型性を向上させるためのパン用品質改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、難消化性澱粉及び難消化性デキストリンにパンの保型性向上効果があることを発見し、上記課題を解決することを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づき更に研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記(1)~(3)からなっている。
(1)乳化剤を含有しないパンの製造に用いられるパン用品質改良剤であって、難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンを有効成分とするパン用品質改良剤。
(2)乳化剤を含有しないパンに対し難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンを添加する、乳化剤を含有しないパンの品質改良方法。
(3)難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンを含有し、乳化剤を含有しないパン。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパン用品質改良剤を添加した、乳化剤を含有しないパンは、酵素を含有する場合でも十分な保型性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のパン用品質改良剤に用いられる難消化性澱粉は、人の消化酵素で消化されにくい澱粉である。該難消化性澱粉は、例えば(1)澱粉を湿熱処理する方法又は(2)澱粉に脱分枝化酵素を作用させて脱分枝させ、得られる生成物を放置して老化させる方法等により得ることができる。
【0009】
上記難消化性澱粉の原料となる澱粉としては、食用として利用可能なものであれば特に制限はなく、例えばコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、片栗澱粉、葛澱粉、蕨澱粉又はサゴ澱粉等が挙げられる。また、ウルチ種、ワキシー種又はハイアミロース種のように、育種学的手法又は遺伝子工学的手法において改良されたものを用いても良い。更に、これらの澱粉に酸処理、アルカリ処理、酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、リン酸化処理、架橋処理、加熱処理、α化処理、粉砕処理及び酵素処理等から選ばれる1種又は2種以上の処理を施した加工澱粉を用いても良い。
【0010】
商業的に販売されている難消化性澱粉としては、例えばアラウンドスターAX-800(商品名;三和澱粉工業社製)又はアラウンドスターAX-500(商品名;三和澱粉工業社製)等が挙げられ、本発明ではこれらを用いることができる。
【0011】
本発明のパン用品質改良剤に用いられる難消化性デキストリンは、人の消化酵素で消化されにくいデキストリンである。該難消化性デキストリンは、例えば、澱粉に微量の酸を添加し、高温で加熱処理を行うことで焙焼デキストリンを得た後、消化酵素で処理を行い、消化酵素による分解を受けずに残った画分を分画して得ることができる。また、分画して得られたものに水素添加して還元処理を行った還元難消化性デキストリンを用いることもできる。
【0012】
上記難消化性デキストリンの原料となる澱粉としては、上記難消化性澱粉の原料となる澱粉と同様のものを用いることができる。
【0013】
商業的に販売されている難消化性デキストリンとしては、例えばファイバーソル2(商品名;還元処理していない難消化性デキストリン;松谷化学工業社製)又はファイバーソル2H(商品名;還元難消化性デキストリン;松谷化学工業社製)等が挙げられ、本発明ではこれらを用いることができる。
【0014】
本発明のパン用品質改良剤には、更に粉末状油脂を含有することが好ましい。該粉末状油脂としては、例えば(1)油脂及び粉末化基材(更に、必要に応じて乳化剤)を含む水中油型乳化液を噴霧乾燥して得られる粉末状油脂(以下「粉末油脂」という)又は(2)油脂を噴霧冷却して得られる粉末状油脂(以下「油脂粉末」という)等が挙げられる。
【0015】
上記粉末状油脂の原料となる油脂としては、例えば大豆油、菜種油、トウモロコシ油、綿実油、ヒマワリ油、サフラワー油、パーム油、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂、豚脂、牛脂、鶏脂等の動物性油脂、これらの油脂のエステル交換油若しくは硬化油、フィトステロール若しくはコレステロール等のステロール類又はミツロウ若しくはカルナバロウ等のワックス類等が挙げられ、好ましくは融点50℃以上の硬化油である。
【0016】
上記粉末状油脂のうち、粉末油脂の原料となる粉末化基材としては、例えば乳蛋白、大豆蛋白、小麦蛋白、トウモロコシ蛋白、脱脂粉乳、小麦粉若しくは脱脂大豆粉等の蛋白質、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉若しくはそれらの加工澱粉、グルコース若しくは乳糖等の糖類、グアーガム若しくはキサンタンガム等のガム質又はデキストリン等が挙げられ、好ましくは、乳蛋白(例えば、カゼインナトリウム等)、加工澱粉(例えば、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム等)、デキストリンである。
【0017】
上記粉末状油脂のうち、粉末油脂の原料となる乳化剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム又はレシチン等が挙げられる。該グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等が含まれる。該レシチンには、分別レシチン、酵素分解レシチン又は酵素処理レシチン等が含まれる。これらのうち好ましい乳化剤は、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム又はレシチンである。
なお、本発明において、粉末油脂の原料として乳化剤を用いるためには、該粉末油脂をパンに用いる場合に後述する食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)上のキャリーオーバーに該当することにより、乳化剤を含有しないパンの条件を満たす必要がある。
【0018】
商業的に販売されている粉末状油脂としては、例えば、油脂粉末として、スプレーファットPM(商品名;パーム極度硬化油;融点約58℃;理研ビタミン社製)等が挙げられる。
【0019】
本発明のパン用品質改良剤が粉末状油脂を含有する場合の、難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリン、粉末状油脂の配合量としては、パン用品質改良剤100質量%中、難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンが通常5~50質量%、好ましくは10~40質量%、粉末状油脂が通常10~70質量%、好ましくは30~60質量%である。
【0020】
本発明のパン用品質改良剤には、本発明の目的を阻害しない範囲でパンに通常用いられる任意の成分が含まれても良く、例えば、加工澱粉等が挙げられる。
【0021】
本発明のパン用品質改良剤は、乳化剤を含有しないパンに添加して用いる。該乳化剤としては、一般的にパンに用いられる乳化剤であれば特に制限はなく、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム又はレシチン等が挙げられる。該グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等が含まれる。該レシチンには、分別レシチン、酵素分解レシチン又は酵素処理レシチン等が含まれる。
【0022】
前記「乳化剤を含有しないパン」について、「乳化剤を含有しない」の意味としては、(1)該パン及び該パンの原材料の製造又は加工において乳化剤が使用されていない場合及び(2)該パンの製造又は加工において乳化剤が使用されてない場合で、かつ、該パンの原材料の製造又は加工において乳化剤が使用されているものの、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)におけるキャリーオーバーに該当することにより乳化剤の表示を省略できる場合の、双方の意味を含む。該キャリーオーバーに該当する場合としては、原材料の製造又は加工に使用される乳化剤の量が、乳化剤を含有しないパンの原材料中の穀粉類100質量部に対し、例えば、0.01質量部未満、更には0.1質量部未満となる量である場合が挙げられる。
【0023】
前記「乳化剤を含有しないパン」について、該パンとしては、例えば食パン、ロール、調理パン(惣菜パン)、菓子パン又は特殊パン等が挙げられる。該食パンとしては、例えば白パン、黒パン又はバラエティーブレット等が挙げられる。該ロールとしては、例えばテーブルロール又はバターロール等が挙げられる。該調理パン(惣菜パン)としては、例えばホットドッグ又はハンバーガー等が挙げられる。該菓子パンとしては、例えばあんぱん、ジャムパン、クリームパン、メロンパン又はスイートロール等が挙げられる。該特殊パンとしては、例えばマフィン等が挙げられる。
【0024】
本発明のパン用品質改良剤の、乳化剤を含有しないパンに対する添加量としては、本発明のパン用品質改良剤の有効成分である難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンの添加量が、乳化剤を含有しないパンの原材料中の穀粉類100質量部に対し、通常0.1~2.0質量部、好ましくは0.3~1.0質量部となるように調製されるのが好ましい。添加量が2.0質量部を超えると、該乳化剤を含有しないパンが硬くなる場合があり好ましくない。
【0025】
本発明のパン用品質改良剤の添加方法としては特に制限はなく、乳化剤を含有しないパンの製造工程において他の原材料(例えば穀粉類、乳製品、油脂類又は糖類等)と共に用いることができる。
【0026】
上記穀粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、超強力粉、中力粉、薄力粉等の小麦粉、ライ麦粉又は米粉等が挙げられる。上記乳製品としては、牛乳、濃縮乳、脱脂粉乳又は全脂粉乳等が挙げられる。上記油脂類としては、バター、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング又はラード等が挙げられる。上記糖類としては、上白糖、グラニュー糖、黒糖、果糖ぶどう糖液糖又は還元水あめ等が挙げられる。
【0027】
本発明のパン用品質改良剤を用いた乳化剤を含有しないパンの製造方法に特に制限はなく、一般に行われている製造方法をそのまま適用することができる。例えば直捏法(ストレート法)、中種法、液種法、生地リタード法又は冷凍生地法等が挙げられる。
【0028】
難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンを添加することで製造された、乳化剤を含有しないパンは、原材料として酵素を含有する場合でも十分な保型性を有している。該酵素としては、一般的に老化防止目的でパンに用いられる酵素であれば特に制限はなく、例えば、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ又はリパーゼ等が挙げられる。
【0029】
乳化剤を含有しないパンに対し難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンを添加する、乳化剤を含有しないパンの品質改良方法、及び難消化性澱粉及び/又は難消化性デキストリンを含有し、乳化剤を含有しないパンは、それぞれ本発明の形態の一つである。
【0030】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0031】
<粉末状油脂(粉末油脂)の試作>
パン用品質改良剤の作製にあたり、原材料として用いた粉末状油脂を下記のとおり試作した。
(1)原材料
1)パーム極度硬化油(商品名:パーム硬化油;横関油脂工業社製)
2)グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW-60;理研ビタミン社製)
3)カゼインナトリウム(商品名:ALANATE‐180;フォンテラ社製)
4)デキストリン(商品名:パインデックス#2;松谷化学工業社製)
5)水
【0032】
なお、原材料として用いたグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルは、以下に示す粉末状油脂1(試作品)を用いた菓子パンに関し、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)上のキャリーオーバーに該当する。
【0033】
(2)配合
上記原材料を用いて作製した粉末状油脂1(試作品)の配合組成を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
(3)試作方法
表1に記載の原材料(合計1000g)を用い、油相部の原材料を加温しながらスパチュラで混合して70℃とした。一方、水相部の原材料を乳化機(型式:クレアミクスCLM-0.8S;エムテクニック社製)を用いて4000rpmの条件で撹拌混合しながら加温して70℃とした。該油相部を水相部に加えて乳化機(型式:クレアミクスCLM-0.8S;エムテクニック社製)を用いて8000rpm、10分間の条件で均質化した後、更に高圧式均質化処理機(型式:HV-OA-08-1.5S;イズミフードマシナリ社製)を用いて20MPaの条件で均質化して水中油型乳化液を得た。
得られた水中油型乳化液をスプレードライヤー(型式:L-81;大川原化工機社製)を用いて、噴霧乾燥(送風温度180℃、排風出口温度90℃)して粉末状油脂1(試作品)を500g得た。
【0036】
<パン用品質改良剤の作製>
(1)原材料
1)難消化性澱粉(商品名:アラウンドスターAX-800;三和澱粉工業社製)
2)難消化性デキストリン(商品名:ファイバーソル2;松谷化学工業社製)
3)還元難消化性デキストリン(商品名:ファイバーソル2H;松谷化学工業社製)
4)粉末状油脂1(試作品)
5)粉末状油脂2(商品名:スプレーファットPM;パーム極度硬化油の油脂粉末;融点約58℃;理研ビタミン社製)
【0037】
(2)配合
上記原材料を用いて作製したパン用品質改良剤1~6の配合割合を表2に示した。
【0038】
【表2】
【0039】
(3)作製方法
表2に示した配合割合に従って原材料の合計が20gとなるように量りとり、500mL容のポリエチレン製の袋に入れ、その袋の口を縛ったものを手で持ち、1分間均一になるように混合し、パン用品質改良剤4~6を作製した。なお、パン用品質改良剤1~3は各原材料をそのままパン用品質改良剤として用いた。
【0040】
<乳化剤を含有しない菓子パン(スイートロール)の作製>
(1)原材料
1)強力粉(商品名:カメリア;日清製粉社製)
2)イースト(商品名:レギュラーイースト;オリエンタル酵母工業社製)
3)イーストフード(商品名:ドウナチュラルS;オリエンタル酵母工業社製)
4)小麦蛋白(商品名:エマソフトTK;理研ビタミン社製)
5)上白糖(フジ日本精糖社製)
6)液卵(商品名:エクセルエッグHV;キユーピー卵社製)
7)α-アミラーゼ(商品名:スミチームAS;新日本化学工業社製)
8)パン用品質改良剤1~6
9)食塩(商品名:赤穂塩R;日本海水社製)
10)脱脂粉乳(高梨乳業社製)
11)ショートニング(商品名:スーパーアトランタ;J-オイルミルズ社製)
【0041】
(2)使用機材
1)ミキサー(型式:HPI-20M;20Lミキサーボール及びステンレスフック使
用;関東混合機工業社製)
2)発酵槽(型式:PNM-32F2;共立プラント工業社製)
3)分割機(型式:DQE;オシキリ社製)
4)ラウンダー(型式:RQ;オシキリ社製)
5)モルダー(型式:WFS;オシキリ社製)
6)ホイロ(型式:サンキャビネットTCH-2660N;三幸機械社製)
7)オーブン(型式:ニューコンポオーブンTMC-GGG-31S;三幸機械社製)
【0042】
(3)配合
上記原材料及び機材を用いて作製した菓子パンの配合割合を表3に示した。ここで、表3の配合割合は、使用する小麦粉の全量(即ち、中種及び本捏の合計量)を100質量%に換算する「ベーカーズパーセント」により表記した。また、使用した小麦粉(強力粉)の全量は2kgとした。また、比較例として、菓子パン7はパン用品質改良剤を使用せずに作製した。
【0043】
【表3】
【0044】
(4)製パン工程
表3に示した中種原材料をミキサーに入れ、低速3分及び中速2分で混捏し、中種生地とした。捏上温度は26℃とした。
次に、得られた中種生地を庫内温度27℃相対湿度80%の発酵槽にて、2.5時間一次発酵(中種発酵)させた。一次発酵終了時の中種生地の温度は30℃とした。
【0045】
次に、発酵した中種生地及び表3に示した本捏原材料(ショートニングを除く)をミキサーに入れ、低速3分、中速2分及び高速3分で混捏した後、これに残りの本捏原材料(ショートニング)を加えて低速1分、中速2分及び高速5分で混捏した。捏上温度は27℃とした。
【0046】
次に、庫内温度27℃相対湿度80%の発酵槽にてフロアータイムを30分取った後、その生地を分割機で70gに分割した。分割した生地をラウンダーで丸め、室温(25℃)にてベンチタイムを20分取り、モルダーで葉巻状に成型し天板に並べ、庫内温度38℃相対湿度85%の発酵槽で60分発酵(ホイロ)を行った。
【0047】
次に、ホイロ後の生地を上火205℃、下火180℃のオーブンで8分間焼成し、菓子パン1~7を得た。
【0048】
<乳化剤を含有しない菓子パンの保型性の評価>
得られた菓子パン1~7を天板からパン箱へ移し、室温で50分間冷却した後、ポリエチレン製の袋に密閉し、更に室温にて24時間保管後、レーザー体積計(型式:Selnac WinVM2100;K-AXIS社製)を用いて中心部の高さ(mm)を測定し、比較例である菓子パン7との中心部の高さの差を算出した。結果を表4に示す。なお、数値の前の「+」は比較例よりも中心部が高いことを示し、比較例と比べ+1mm以上である場合、保型性を十分に有していると判断した。
【0049】
【表4】
【0050】
表4の結果から明らかなように、実施例であるパン用品質改良剤1~6を添加した菓子パン1~6は、製造後も十分な保型性を有していた。特に、パン用品質改良剤中に粉末状油脂を含有するパン用品質改良剤5及び6を添加した菓子パン5及び6は、優れた保型性を有していた。