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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】植物栽培器及びその関連技術
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20221005BHJP
【FI】
A01G9/02 D
A01G9/02 103W
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018022585
(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公開番号】P2019135984
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-08-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000178583
【氏名又は名称】山崎産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【弁理士】
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】薮内 裕久
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-12830(JP,U)
【文献】実開昭51-37554(JP,U)
【文献】実開昭52-73261(JP,U)
【文献】特開平2-76522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0106262(US,A1)
【文献】特開2016-2045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/02
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する容器内に、保水性及び保形性を有し、含有する水分が外周部より蒸発し得る根生育体を収容してなり、
前記根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、前記根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部を有し、
前記根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、前記離隔空間部を保持するための離隔空間保持部を有する植物栽培器であって、
前記離隔空間保持部が、前記根生育体の外周部に沿う格子状部に、その格子状部を容器の内周部に対し直接又は別の構造部を介し支持して両者の間に所定の離隔距離を維持するための多数の支持体が設けられてなるものであり、
前記支持体は、前記格子状部を構成する部分以外の部分であることを特徴とする植物栽培器。
【請求項2】
上記保水性及び保形性を有する根生育体が、成形された繊維集合体、不織布、不織布重積体、又は布製上方開口袋に人工軽量土壌を収容したものである請求項1記載の植物栽培器。
【請求項3】
上記根生育体の外周部に沿う格子状部に設けられた多数の支持体は、互いに、上下及び左右を含む周囲に間隔をおいて設けられている請求項1又は2記載の植物栽培器。
【請求項4】
上部に開口部を有する容器内に、保水性及び保形性を有し、含有する水分が外周部より蒸発し得る根生育体を収容してなり、
前記根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、前記根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部を有し、
前記根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、前記離隔空間部を保持するための離隔空間保持部を有する植物栽培器であって、
前記離隔空間保持部が、上下方向に間隔おきに並列した複数の板状体からなり、
前記各板状体は、前記根生育体の外周部の周方向に沿い、前記根生育体の外周部と前記容器の内周部が両者間に離隔空間部を挟んで相対する方向を横幅方向とする板状体であることを特徴とする植物栽培器。
【請求項5】
上部に開口部を有する容器内に、保水性及び保形性を有し、含有する水分が外周部より蒸発し得る根生育体を収容してなり、
前記根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、前記根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部を有し、
前記根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、前記離隔空間部を保持するための離隔空間保持部を有する植物栽培器であって、
前記離隔空間保持部が、前記根生育体の外周部の周方向に間隔おきに並列した複数の板状体からなり、
前記各板状体は、前記根生育体の外周部の上下方向に沿い、前記根生育体の外周部と前記容器の内周部が両者間に離隔空間部を挟んで相対する方向を横幅方向とする板状体であることを特徴とする植物栽培器。
【請求項6】
上記保水性及び保形性を有する根生育体が、成形された繊維集合体、不織布、不織布重積体、又は布製上方開口袋に人工軽量土壌を収容したものである請求項4又は5記載の植物栽培器。
【請求項7】
上記離隔空間部が外部との間で通気し得るものである請求項1乃至6の何れか1項に記載の植物栽培器。
【請求項8】
通気可能な開口部を上記容器の側方に有し、上記離隔空間部は、前記開口部を介して外部との間で通気し得るものである請求項1乃至の何れか1項に記載の植物栽培器。
【請求項9】
上記離隔空間保持部を構成する上下方向に間隔おきに並列した複数の板状体が、上記根生育体の外周部の周方向に沿う方向において端部を有し、
前記板状体の端部において、通気可能な開口部が上記容器の側方に形成され、
上記離隔空間部は、前記開口部を介して外部との間で通気し得るものである請求項記載の植物栽培器。
【請求項10】
上部に開口部を有する容器内に、保水性及び保形性を有し、含有する水分が外周部より蒸発し得る根生育体を収容すること、
前記根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、前記根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部を有するものとすること、及び、
前記根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に離隔空間保持部を有するものとして前記離隔空間部を保持することを含み、
前記離隔空間保持部が、
前記根生育体の外周部に沿う格子状部に、その格子状部を容器の内周部に対し直接又は別の構造部を介し支持して両者の間に所定の離隔距離を維持するための多数の支持体が設けられてなり、前記支持体は、前記格子状部を構成する部分以外の部分であるもの、
上下方向に間隔おきに並列した複数の板状体からなり、前記各板状体は、前記根生育体の外周部の周方向に沿い、前記根生育体の外周部と前記容器の内周部が両者間に離隔空間部を挟んで相対する方向を横幅方向とする板状体であるもの、又は、
前記根生育体の外周部の周方向に間隔おきに並列した複数の板状体からなり、前記各板状体は、前記根生育体の外周部の上下方向に沿い、前記根生育体の外周部と前記容器の内周部が両者間に離隔空間部を挟んで相対する方向を横幅方向とする板状体であるもの
である植物栽培用の根生育体の温度上昇抑制法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に根生育体を収容してなる植物栽培器及びその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅、マンション、その他の建築物、公共スペース等における様々な箇所において、緑化のために、容器等に各種の根育成材を収容保持した植物栽培器を用いて各種植物が栽培されている。
【0003】
ところが、例えば夏季を中心とする気温が高い時期に強い直射日光を受ける場合等において、根育成材の温度が上がりすぎると、栽培する植物に、いわゆる熱枯れ等の悪い又は致命的な影響が及ぶこととなる。この点は、例えば建築物の壁面の緑化のための植物栽培において問題となることが多い。
【0004】
特許第5366792号公報には、背面日射による熱が植栽部へ伝達することを抑制できるものとして、保持部と保持部背面とからなり、前記上保持部は、側面視前方先端が下方に突出した鉤形であり、底面には灌水ホース溝が形成されており、前記下保持部は、側面視前方先端が上方に突出した鉤形であり、上面には排水溝が形成されており、前記保持部背面は前記基本ブロック部の正面と一体となっている緑化ブロックの発明が開示されているが、これを、容器内に根生育体を収容した、より一般的な植物栽培器に利用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5366792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容器内に根生育体を収容してなる植物栽培器における根生育体の温度上昇を効果的に抑制することができる植物栽培器、植物栽培器形成材、離隔空間保持部形成材及び温度上昇抑制法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の植物栽培器、植物栽培器形成材、離隔空間保持部形成材及び温度上昇抑制法は、次のように表すことができる。
【0008】
(1) 上部に開口部を有する容器内に、保水性を有し、含有する水分が外周部より蒸発し得る根生育体を収容してなり、
前記根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、前記根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部を有することを特徴とする植物栽培器。
【0009】
容器内に根生育体を収容した植物栽培器においては、根生育体が外気や直射日光等により直接的に熱を受けてその根生育体の温度が上昇し得る他、容器の側周部の温度が直射日光や外気温により上昇し、その熱が伝達して根生育体に温度上昇をもたらす。容器の上方に植物の地上部分が生育した状態においては、容器の側周部を介しての温度上昇の占める割合が増大する。
【0010】
本発明においては、容器内に収容された根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、前記根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部を有する。
【0011】
そのため、根生育体の温度の上昇につれて、その根生育体の外周部から離隔空間部への、その根生育体が含有する水分の蒸発量が増大し、その蒸発に伴う気化熱により、根生育体の温度上昇が効果的に抑制される。
【0012】
また、外気温の上昇や直射日光等により容器の温度が上昇した場合に、容器からその容器に収容した根生育体への熱伝達が、離隔空間部により妨げられるので、この点においても根生育体の温度上昇が効果的に抑制される。
【0013】
このように根生育体の温度上昇を効果的に抑制することにより、栽培植物に対する悪影響を防ぐことができる。
【0014】
(2) 容器内に収容された根生育体の外周部と容器の内周部の間に、離隔空間部を保持するための離隔空間保持部を有する上記(1)記載の植物栽培器。
【0015】
(3) 上記離隔空間保持部が、根生育体の外周部と容器の内周部の間に、根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部を保持し得るよう容器と一体に形成されたものである上記(2)記載の植物栽培器。
【0016】
(4) 上記離隔空間保持部が、根生育体の外周部と容器の内周部の間に、根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部を保持し得る、容器及び根生育体とは別体の離隔空間保持部形成材からなるものである上記(2)記載の植物栽培器。
【0017】
(5) 上記離隔空間部が外部との間で通気し得るものである上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の植物栽培器。
【0018】
(6) 上部に開口部を有する容器と、離隔空間保持部を備え、前記容器内に、保水性を有し、含有する水分が側部より蒸発し得る根生育体を収容して植物栽培器を形成するための植物栽培器形成材であって、
前記離隔空間保持部は、前記容器内に収容する根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、前記根生育体が含有する水分がその外周部より蒸発し得る離隔空間部を保持するためのものであることを特徴とする植物栽培器形成材。
【0019】
(7) 上記離隔空間部が、上記容器に根生育体を収容した状態で外部との間で通気し得るものである上記(6)記載の植物栽培器形成材。
【0020】
(8) 上記離隔空間保持部が、上記容器に根生育体を収容した状態で、その根生育体の外周部と容器の内周部の間に、根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部を保持し得る、上記容器及び根生育体とは別体の離隔空間保持部形成材からなるものである上記(6)又は(7)記載の植物栽培器形成材。
【0021】
(9) 上記(4)記載の植物栽培器又は上記(8)記載の植物栽培器形成材において用いるための離隔空間保持部形成材。
【0022】
(10) 上部に開口部を有する容器内に、保水性を有し、含有する水分が外周部より蒸発し得る根生育体を収容し、
前記根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、前記根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部を形成することを特徴とする植物栽培用の根生育体の温度上昇抑制法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、根生育体の温度上昇を効果的に抑制することにより、栽培植物に対する悪影響を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】植物栽培器を壁面緑化に用いる状態を示す斜視図である。
図2】植物栽培器の拡大垂直横断面図である。
図3】植物栽培器の平面図である。
図4】根生育体・離隔空間保持部及び底部空間保持部の下方斜視図である。
図5】離隔空間保持部を備えた容器の斜視図である。
図6】離隔空間保持部を備えた容器の拡大垂直横断面図である。
図7】離隔空間保持部及び底部空間保持部の斜視図である。
図8】離隔空間保持部及び底部空間保持部の拡大垂直横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[1] 本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図面は何れも本発明の実施の形態の例についてのものである。
【0027】
図1乃至4に示す例において、植物栽培器Aは、容器B内に根生育体Cを収容してなるものである。
【0028】
(1) 容器B
【0029】
根生育体Cを収容する容器Bは、平面視において長方形状である合成樹脂製の貯水し得る箱形状をなし、容器Bの上部は、外周部の内側の全体が上方に開口する開口部である。
【0030】
この植物栽培器Aは、左右一対の縦長支持材Yを介して建築物等の壁面に対し平行状に固定したワイヤメッシュWの前面に、縦長支持材Yに取り付けた左右一対の容器支持材S(容器受け金具)によって植物栽培器Aの容器Bを支持することにより、ワイヤメッシュWを介した壁面の緑化のための植物栽培に用いられる。左右一対の縦長支持材Yに対し複数の植物栽培器Aの容器Bを上下に配列して支持することができ、縦長支持材Yを水平方向に離隔した位置又は垂直方向に増設すること等により、ワイヤメッシュWを水平方向に或いは垂直方向に更に複数設けて壁面緑化を行うことができる。
【0031】
(2) 根生育体C
【0032】
容器B内に収容される根生育体Cは、全体として、容器Bの内部よりも一回り小さい直方体形状をなす。
【0033】
根生育体Cは、不規則に集合した繊維を直方体形状に圧縮成形したフェルト状をなす生育体が重積し、保水性を有し、水分を含有している場合に、含有する水分が外周部より蒸発し得、全体として全方向に通気性を有する。根生育体Cは、上側約5分の4と下側約5分の1に分かれており、上側約5分の4を構成する4個重積された直方体形状の各上側生育体C1は、上方開口の栽培対象植物の根の部分を植え込むための植込孔が対応する複数箇所に設けられ、上下に重積して上下方向に連続した孔を形成するものであり、下側約5分の1を構成する直方体形状の下側生育体C2は、このような孔を有しない
【0034】
根生育体Cに対する水分補給は、潅水パイプ等を配することにより行い得る。
【0035】
(3) 離隔空間部P及び離隔空間保持部R
【0036】
容器Bの内周部のうち平面視における両長辺に沿う部分には、それぞれ離隔空間保持部Rが配置されている。離隔空間保持部Rは、容器B内に収容された根生育体Cの外周部と容器Bの内周部の間に、根生育体Cが水分を含有している場合に、その水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部Pを保持するためのものである。
【0037】
容器Bの内周部のうち平面視における両方又は一方の短辺に沿う部分と根生育体Cの外周部の間は、容器Bに根生育体C及び各離隔空間保持部Rを円滑に収容するために、ある程度の空隙を有するものとすることができる。また、容器Bの内周部のうち平面視における両方又は一方の短辺に沿う部分と根生育体Cの外周部の間に別途離隔空間保持部を設けることもできる。
【0038】
離隔空間保持部Rは、一定の平面に沿った格子状部R1と、その格子状部R1のうち前記一定の平面に対し一方の側に設けられた円筒形状の多数の支持体R2からなり、格子状部R1の他方の側が根生育体Cの外周部に沿い根生育体Cの外周部を覆うように、根生育体Cの平面視における長辺に沿う外周部を構成する面に対しそれぞれ配置されている。支持体R2は、容器Bの内周部に対し格子状部R1を支持して容器Bの内周部と根生育体Cの外周部の間に所定の離隔距離を維持するものである。
【0039】
離隔空間部Pは、主に、格子状部R1と容器Bの内周部の間の部分が容器Bの開口部を介して外部との間で通気し得る。
【0040】
(4) 底部空間部T及び底部空間保持部U
【0041】
容器B内の底部には、根生育体Cの底部を支持し、根生育体Cにおける余分な水分を排出するための底部空間保持部Uが配置されている。底部空間保持部Uは、一定の平面に沿った格子状部U1と、その格子状部U1のうち前記一定の平面に対し一方の側に設けられた円筒形状の多数の支持体U2からなり、支持体U2は、容器Bの底部に対し格子状部U1を支持して容器Bの底部と根生育体Cの底面部の間に所定の底部空間部Tを維持するものである。
【0042】
(5) 図5及び図6は、本発明の植物栽培器の別の例を示す。
【0043】
この例における容器Dは、平面視長方形状をなす底板部Eの両長辺に対しそれぞれ側面視長方形状の離隔空間保持部Fが垂直に立設された矩形溝形体の両端部が、端板部Kによりそれぞれほぼ閉塞され、平面視において長方形状の合成樹脂製の箱形状をなす。容器Dの上部は、外周部の内側の全体が上方に開口する開口部である。容器D内に収容する根生育体は、両端板部Kの間よりもやや短い程度の水平方向長で、水平方向に相対する離隔空間保持部F間の距離と同程度の水平方向幅で、底板部Eの上部から容器Dの上端までの高さ程度の高さの直方体状をなす(複数部分からなるものでもよい)ものである。
【0044】
底板部Eは、短手方向中央部に全長にわたり設けられた方形状の上方凸部E1と、その上方凸部E1の両側にそれぞれ短手方向間隔おき(等間隔)に全長にわたり連続状に(不連続状とすることもできる)設けられた複数の垂直支持板E2により、容器D内に収容する根生育体の底部を支持し、上方凸部E1の両側における複数の垂直支持板E2のそれぞれ両側に形成された下方空間部Hに、根生育体における余分な水分を排出し得る。
【0045】
垂直支持板E2のそれぞれ両側に形成された下方空間部Hの長手方向の両端部(一端部とすることもできる)は、端板部Kにより閉塞されておらず、その開口部から外部へ排水し得る。
【0046】
両離隔空間保持部Fは、それぞれ、横長長方形状の垂直状をなす側板部F1と、側板部F1から容器Dの内側に突設された8枚の水平板状部F2からなる。水平板状部F2は、縦方向が容器Dの平面視における長手方向であり、横幅が、容器D内に収容する根生育体の外周部と容器Dの内周部が両者間に離隔空間部を挟んで相対する方向(離隔空間幅方向)の一定幅であり、8枚の水平板状部F2が、側板部F1から上下間隔おき(等間隔)に並列状に容器Dの平面視における長手方向の全長にわたり突設されている。水平板状部F2は連続状をなすが、不連続状とすることもできる。
【0047】
各水平板状部F2が、根生育体の長辺部を構成する外周部にほぼ接することにより、隣接並列する水平板状部F2同士の間に、根生育体が水分を含有している場合にその水分がその根生育体の外周部より蒸発し得る離隔空間部Faを保持する。
【0048】
上下に隣接する水平板状部F2同士の間に形成された離隔空間部Faの長手方向の両端部(一端部とすることもできる)は、端板部Kにより閉塞されておらず、根生育体が容器D内に収容された状態においてその開口部を通じて外部と通気し得る。
【0049】
この例における底板部E及び離隔空間保持部Fは、一定断面形状である場合、合成樹脂の押し出し成形により得ることができる。
【0050】
(6) 図7及び図8は、本発明の植物栽培器の更に別の例を示す。
【0051】
この例における離隔空間保持部Gと底部空間保持部Jは、平面視長方形状をなす底部空間保持部Jの両長辺に対しそれぞれ側面視長方形状の離隔空間保持部Gが垂直に立設されて矩形溝形の一体状をなすものであり、合成樹脂の押し出し成形により得ることができる。
【0052】
離隔空間保持部Gと底部空間保持部Jが上記容器Bと同様の容器内に配置された状態においては、底部空間保持部Jが容器の底部上に支持され、両離隔空間保持部Gの外側面部は、容器の長辺部を構成する両側板の内側面に接する。この例では容器の短辺部には離隔空間保持部を有しないが、別途離隔空間保持部を設けることもできる。容器内に収容する根生育体は、容器の長手方向両端部の間よりもやや短い程度の水平方向長で、水平方向に相対する離隔空間保持部G間の距離と同程度の水平方向幅で、底部空間保持部Jの上部から容器の上端までの高さ程度の高さの直方体状をなす(複数部分からなるものでもよい)ものである。
【0053】
離隔空間保持部Gと底部空間保持部Jの垂直横断面形状は、長手方向において一定である。
【0054】
底部空間保持部Jは、中央部に有する方形状の上方凸部J1と、両側から内方に向かって片持状に設けられた水平支持板J2により、根生育体の底部を支持し、両水平支持板J2と上方凸部J1との間にそれぞれ間隙を挟んで下方に形成された下方空間部に、根生育体における余分な水分を排出し得る。
【0055】
両離隔空間保持部Gは、縦方向が容器の長手方向であり、横幅が、容器内に収容された根生育体の外周部と容器の内周部が両者間に離隔空間部を挟んで相対する方向(離隔空間幅方向)の一定幅である5枚の水平板状部G1が、垂直板G2から内方に上下等間隔に並列状に突設されてなる。各水平板状部G1が、根生育体の長辺部を構成する外周部に接することにより、隣接並列する水平板状部G1同士の間に、根生育体が水分を含有している場合に、その水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部Gaを保持する。
【0056】
なお、水平板状部G1及び水平支持板J2の全て又は何れか1以上は、長手方向において不連続状とすることもできる。
【0057】
[2] 本発明の実施の形態を、上記以外の形態を含めて更に説明する。
【0058】
本発明の植物栽培器は、容器内に根生育体を収容してなるものである。また本発明の植物栽培器形成材は、容器と離隔空間保持部を有し、容器内に根生育体を収容して植物栽培器を形成するものである。
【0059】
本発明の植物栽培器は、戸建て住宅、マンション、その他の建築物、公共スペース等における様々な箇所に設置して植物栽培に用いることができ、建築物等の壁面の緑化のための植物栽培にも好適に使用し得る。
【0060】
(1) 容器
【0061】
根生育体を収容する容器は、上部に開口部を有するものである。
【0062】
容器は、平面視において方形状(長方形状又は正方形状)である箱形状をなすものとすることができるが、必ずしもこれに限らない。
【0063】
容器の上部は、容器の側周部の内方全体又は部分が上方に開口する開口部を有するものとすることができるほか、例えば、上部側方又は上部斜め上に開口する開口部を有するものとすることも可能である。
【0064】
容器は、貯水性を有するものとすることができ、余分な水を排出し得るものとすることもできる。容器は、例えば、合成樹脂、金属又はセラミックスからなるものとすることができるが、これらに限るものではない。。
【0065】
容器は、例えば、地面、床面、植物栽培棚等に載置して使用することや、各種の容器支持体により支持して使用することができる。
【0066】
容器は、外周部(側周部[例えば側周壁]の外周部分)が全て外部に面する状態で使用することができる他、例えば、一方、二方又は三方(平面視において方形状である箱形状の場合であれば、一側面、隣接する若しくは対向する二側面又は三側面)のみが外気に臨む状態で使用することもできる。
【0067】
本発明の植物栽培器を建築物等の壁面の緑化のための植物栽培に用いる場合には、例えば、壁面に固定した容器支持材に対し容器支持材を取り付け、その容器支持材により植物栽培器の容器を支持するものとすることができる。また例えば、その容器支持材を介してワイヤメッシュを壁面に対し平行状に固定し、このワイヤメッシュを介した壁面の緑化を行うことができる。
【0068】
(2) 根生育体
【0069】
容器内に収容される根生育体は、容器に応じた形状及び大きさとすることができる。根生育体の形状は、例えば、直方体形状又は立方体形状とすることができるが、これに限るものではない。
【0070】
根生育体は、保水性を有し、含有する水分が外周部より蒸発し得るものである。根生育体として好ましいのは、全体又は少なくとも離隔空間保持部に臨む外周部が、全方向又は少なくとも側方及び上下方向に、蒸気等について通気性を有するものである。このような根生育体の例としては、不規則に集合した繊維(繊維の種類は特に問わない。椰子殻繊維、ジュート、ケナフ、木綿等の各種天然繊維、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系等の各種合成繊維、或いはその他の繊維を用い得る。)からなるもの、特に、不規則に集合した繊維を、圧縮成形したもの、圧縮成形すると共にニードルパンチやバインダー繊維の含有及び溶融により繊維成形物の保形性を高めたもの、不織布、不織布を重積したもの、不織布製・織布製又はその他の布製の上方開口の袋内に人工軽量土壌を収容したもの(例えば、上記根生育体Cと同様の直方体形状をなす不織布製の上方開口の袋内に人工軽量土壌を収容したもの)、その他の各種植物根生育材料を挙げることができる。
【0071】
根生育体には、各種潅水手段等により水分を補給するものとすることができる。
【0072】
(3) 離隔空間部
【0073】
容器内に収容された根生育体の外周部と前記容器の内周部の間に、その根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得る離隔空間部を有する。
【0074】
根生育体が含有する水分が外周部より離隔空間部に蒸発するというのは、厳密には根生育体内で蒸発した水蒸気が離隔空間部に拡散等により達するような場合を含むものとする。
【0075】
容器の内周部というのは、使用状態(典型的には正立状態)の容器の側周部[例えば側周壁]の内周部分を意味する。
【0076】
容器内に収容された根生育体の外周部というのは、容器内(使用状態の容器内)に収容された状態の根生育体の外側部を意味する。
【0077】
離隔空間部は、容器内に収容された根生育体の外周部と前記容器の内周部の間の部分であり、容器内に収容された根生育体が水分を含有している場合に、その水分が根生育体外周部より離隔空間部に蒸発し得る。例えば、離隔空間部は、容器内に収容された根生育体の外周部に直接又は通気可能な部材(例えば格子状部)等を介して臨んでおり、その根生育体が含有する水分が、根生育体の外周部より離隔空間部に蒸発し得るものとすることができる。
【0078】
また、離隔空間部は外部との間で通気し得るものとすることができる。離隔空間部は、例えば、上方に開口し、容器の上部に有する開口部を介して外部との間で通気し得るものや、容器の側方に通気可能な開口部(例えば、根生育体の外周面に対し直交する方向に開口するものや、根生育体の外周面に対し平行方向に開口するもの)を有し、その開口部を介して外部との間で通気し得るものや、それらを組み合わせたものなどとして、根生育体の外周部から離隔空間部への、その根生育体が含有する水分の蒸発が妨げられることや、離隔空間部の高温化等を防ぎ得るものとすることができる。
【0079】
離隔空間部は、容器内に収容された根生育体の全外周部と容器の内周部の間隙が、全体としてほぼ一定であるものとすることができる他、例えば4割以上、6割以上又は8割以上においてほぼ一定であるものとすることができるが、これに限るものではない。
【0080】
離隔空間部は、容器内に収容された根生育体の全外周部と容器の内周部の間に有するものとすることができるが、これに限るものではない。例えば、容器内に収容された根生育体の外周部と容器の内周部の間のうち2割以上、4割以上、5割以上又は7割以上に離隔空間部を有するものとすることができる。より具体的には容器が平面視方形状をなす場合に、平面視における方形の3辺又は何れか2辺(例えば相対する2辺若しくは隣接する2辺)又は何れか1辺に沿う内周部と、その容器内に収容された根生育体の外周部の間にのみ離隔空間部を有するものとすることもできる。
【0081】
なお、容器内に収容された根生育体の底部と容器内の底部との間にも空間を有するものとすることもできる。
【0082】
(4) 離隔空間保持部
【0083】
本発明の植物栽培器は、容器内に収容された根生育体の外周部と容器の内周部の間に離隔空間部を保持するための離隔空間保持部を有するものとすることができる。
【0084】
離隔空間保持部は、根生育体の外周部と容器の内周部の間に、根生育体が含有する水分が外周部より蒸発し得るように(或いは、更に外部との間で通気し得るように)離隔空間部を保持し得るものとすることができ、例えば、容器又は根生育体と一体状をなすものや、容器及び根生育体とは別体の離隔空間保持部形成材からなるものとすることもできる。
【0085】
例えば、
複数(離隔空間部を保持するに足りる数)の板状体[縦方向が根生育体の外周部又は容器の内周部の周方向(例えば水平方向)であり、横幅方向が、容器内に収容された根生育体の外周部と容器の内周部が両者間に離隔空間部を挟んで相対する方向(離隔空間幅方向)の板状体]が、上下方向に間隔おき(例えば等間隔)に並列し、離隔空間幅方向における中間部、内周側(根生育体の外周部の側)、外周側(容器の内周部の側)又は周方向端部等の少なくとも何れかにおいて連結材により連結されたもの[例えば複数の線状、棒状、若しくは細板状の連結材、1若しくは2以上の格子状(すなわち、多数の透孔を有し、例えば一定の平面に沿った構造)又は板状の連結材により連結されたもの、連結材同士が直接又は底板部等の他の部材等を介して連結しているもの、或いは、例えば、容器自体の内周部が連結材であるもの又は容器と前記複数の板状体が一体状をなすものとすることもできる];
【0086】
縦方向が上下方向である板状体であって、その板状体の横幅方向が、容器内に収容された根生育体の外周部と容器の内周部が両者間に離隔空間部を挟んで相対する方向(離隔空間幅方向)である複数(離隔空間部を保持するに足りる数)の板状体が、根生育体の外周部又は容器の内周部の周方向に間隔おき(好ましくは等間隔)に並列し、離隔空間幅方向における中間部、内周側(根生育体の外周部の側)、外周側(容器の内周部の側)又は下端部等の少なくとも何れかにおいて連結材により連結されたもの[例えば複数の線状、棒状、若しくは細板状の連結材、1若しくは2以上の格子状又は板状の連結材により連結されたもの、連結材同士が直接又は底板部等の他の部材等を介して連結しているもの、或いは、例えば、容器自体の内周部が連結材であるもの又は容器と前記複数の板状体が一体状をなすものとすることもできる];
【0087】
かご形状の構造からなるもの(例えば、容器自体の内周側にかご形状の構造が形成されたものとすることもできる);
【0088】
根生育体の外周部に沿う格子状部(例えば根生育体の外周部をほぼ覆うような格子状部)と、その格子状部を容器の内周部に対し支持して両者の間に所定の離隔距離を維持する支持体(例えば、多数の離隔空間幅方向の棒状若しくは筒状の支持体や板状の支持体等)からなるもの;
【0089】
容器の内周部に沿う構造部(例えば容器の内周部をほぼ覆うような板状部や格子状部等、若しくは、容器の内周部自体)と、その構造部を根生育体の外周部に対し支持して両者の間に所定の離隔距離を維持する支持体(例えば、多数の離隔空間幅方向の棒状若しくは筒状の支持体や板状の支持体等)からなるもの;
【0090】
根生育体の外周部に沿う格子状部(例えば根生育体の外周部をほぼ覆うような格子状部)と容器の内周部に沿う構造部(例えば容器の内周部をほぼ覆うような板状部や格子状部等、若しくは、容器の内周部自体)と、両者の間に所定の離隔距離を維持するように連結する連結材(例えば、多数の離隔空間幅方向の棒状若しくは筒状の連結材や板状連結材等)からなるもの
等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0091】
A 植物栽培器
B 容器
C 根生育体
C1 上側生育体
C2 下側生育体
D 容器
E 底板部
E1 上方凸部
E2 垂直支持板
F 離隔空間保持部
F1 側板部
F2 水平板状部
Fa 離隔空間部
G 離隔空間保持部
G1 水平板状部
G2 垂直板
Ga 離隔空間部
H 下方空間部
J 底部空間保持部
J1 上方凸部
J2 水平支持板
K 端板部
P 離隔空間部
R 離隔空間保持部
R1 格子状部
R2 支持体
S 容器支持材
T 底部空間部
U 底部空間保持部
U1 格子状部
U2 支持体
W ワイヤメッシュ
Y 縦長支持材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8