(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】活性炭の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/318 20170101AFI20221005BHJP
C01B 32/336 20170101ALI20221005BHJP
【FI】
C01B32/318
C01B32/336
(21)【出願番号】P 2018040490
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】590002389
【氏名又は名称】静岡県
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】菊池 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】櫻川 智史
(72)【発明者】
【氏名】山下 里恵
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-261918(JP,A)
【文献】特開2009-292670(JP,A)
【文献】特開2001-040361(JP,A)
【文献】特開2009-226401(JP,A)
【文献】特開2009-242178(JP,A)
【文献】特開2009-242179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ状の灰分含有バイオマス原料を用意する工程と、
チップ状バイオマス原料を処理槽内の洗浄水に投入して煮沸及び冷却を行い、
煮沸及び冷却を行った後に処理槽内に硝酸を加えて硝酸含有洗浄水で硝酸洗浄を行なってから洗浄水内に沈殿したチップ状バイオマス原料を洗浄済原料として取り出す原料洗浄工程と、
原料洗浄工程後の洗浄済原料を炭化処理して炭化物を得る炭化工程と、
前記炭化物を賦活処理して活性炭を得る賦活工程とを含むことを特徴とする活性炭の製造方法。
【請求項2】
前記原料洗浄工程は、
希釈硝酸水を洗浄水に加えた状態で、所定回数、振動を加えることを特徴とする請求項1に記載の活性炭の製造方法。
【請求項3】
前記原料洗浄工程は、煮沸及び冷却のサイクルを複数回行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の活性炭の製造方法。
【請求項4】
前記賦活工程は、活性炭の比表面積が1400m
2/g以上となるように、賦活時間が設定されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の活性炭の製造方法。
【請求項5】
前記賦活工程は、活性炭の比表面積が2000m
2/g以下となるように、賦活時間が設定されていることを特徴とする請求項4に記載の活性炭の製造方法。
【請求項6】
前記炭化工程は、洗浄済原料を過熱水蒸気雰囲気下で600℃以上750℃以下の温度で加熱することによって行われ、
前記賦活工程は、炭化物を過熱水蒸気雰囲気下で750℃以上900℃以下の温度で加熱することによって行われることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の活性炭の製造方法。
【請求項7】
チップ状の灰分含有バイオマス原料は、平面視形状の最小辺が500μm以上2mm以下の竹チップであることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の活性炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹やコーヒーかす等のバイオマス原料から活性炭を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、竹を炭化させて竹炭化物を得る工程と、竹炭化物に含まれるカリウム全量に対して20~100重量%のカリウムが除去されるように竹炭化物を洗浄して、カリウム調整竹炭化物を得る工程と、カリウム調整竹炭化物を賦活して竹活性炭を得る工程とを備えた竹活性炭の製造方法(以下、第1公知方法という)、及び、竹に含まれるカリウム全量に対して20~100重量%のカリウムが除去されるように竹を洗浄して、カリウム調整竹を得る工程と、カリウム調整竹を炭化させて、カリウム調整竹炭化物を得る工程と、カリウム調整竹炭化物を賦活して竹活性炭を得る工程とを備えた竹活性炭の製造方法(以下、第2公知方法という)が開示されている。
【0003】
前記特許文献1には、前記第1及び第2公知方法によれば、竹の産地や種類、成長過程等によって異なるミネラル等の元素や成分組成に影響を受けることなく、比較的均一なミクロ孔を有する竹活性炭を容易且つ安価に得ることができ、さらに、竹、或いは竹炭化物に含まれるカリウムを調整することによって、竹活性炭の細孔分布を制御することが可能となり、特定の化学物質を吸着し易い竹活性炭を得ることができる旨、記載されている。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1には、竹、又は、竹炭化物の洗浄に関しては、カリウムの除去方法は特に限定されないが、水や酸等による洗浄によって容易に除去できる旨記載されているだけであり、具体的な洗浄方法については何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、バイオマス原料から活性炭を製造する方法であって、ミクロ孔が発達した比表面積の大きな活性炭を効率良く製造できる活性炭の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、チップ状の灰分含有バイオマス原料を用意する工程と、チップ状バイオマス原料を処理槽内の洗浄水に投入して煮沸及び冷却を行い、煮沸及び冷却を行った後に処理槽内に硝酸を加えて硝酸含有洗浄水で硝酸洗浄を行なってから洗浄水内に沈殿したチップ状バイオマス原料を洗浄済原料として取り出す原料洗浄工程と、原料洗浄工程後の洗浄済原料を炭化処理して炭化物を得る炭化工程と、前記炭化物を賦活処理して活性炭を得る賦活工程とを含む活性炭の製造方法を提供する。
【0008】
好ましくは、前記原料洗浄工程は、希釈硝酸水を洗浄水に加えた状態で、所定回数、振動を加えるものとされる。
【0009】
好ましくは、前記原料洗浄工程は、煮沸及び冷却のサイクルを複数回行うものとされる。
【0010】
好ましくは、活性炭の比表面積が1400m2/g以上となるように、前記賦活工程における賦活時間を設定することができる。
より好ましくは、活性炭の比表面積が2000m2/g以下となるように、賦活時間を設定することができる。
【0011】
好ましくは、前記炭化工程は、洗浄済原料を過熱水蒸気雰囲気下で600℃以上750℃以下の温度で加熱することによって行われ、前記賦活工程は、炭化物を過熱水蒸気雰囲気下で750℃以上900℃以下の温度で加熱することによって行われる。
【0012】
チップ状の灰分含有バイオマス原料は、好適には、平面視形状の最小辺が500μm以上2mm以下の竹チップとされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る活性炭の製造方法によれば、チップ状バイオマス原料が投入された洗浄水を煮沸及び冷却し、煮沸及び冷却を行った後に処理槽内に硝酸を加えて硝酸含有洗浄水で硝酸洗浄を行なってから、洗浄水内に沈殿したチップ状バイオマス原料を洗浄済原料として取り出し、前記洗浄済原料に対して炭化処理して炭化物を得て、且つ、前記炭化物に対して賦活処理して活性炭を得るように構成したので、ミクロ孔が発達した比表面積の大きな活性炭を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る活性炭製造方法における炭化工程及び賦活工程を実施可能な加熱装置の一例の正面図である。
【
図2】
図2は、前記加熱装置の模式ブロック図である。
【
図3】
図3は、前記加熱装置における第1加熱処理部の縦断面図である。
【
図4】
図4は、前記加熱装置における第2加熱処理部の縦断面図である。
【
図5】
図5は、前記実施の形態に基づいて製造した
参考例1~4及び比較例1~4における賦活時間と賦活収率との関係を表すグラフである。
【
図6】
図6は、
参考例1~4及び比較例1~3における収率と比表面積との関係を表すグラフである。
【
図7】
図7(a)及び(b)は、それぞれ、
参考例1~4及び比較例1~3における細孔径の頻度分布を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る活性炭製造方法の一実施の形態について説明する。
本実施の形態に係る活性炭製造方法は、灰分を含有するバイオマス原料から活性炭を製造する方法であり、灰分を含有するバイオマス原料としては、竹、コーヒーかす(コーヒー抽出残さ)、籾殻、トウモロコシ等が例示される。
【0016】
前記活性炭製造方法は、灰分含有バイオマス原料のチップ体を用意する工程を有している。
チップ体の大きさ及び形状は限定されるものではないが、下記洗浄工程での洗浄効率を考慮すると、平面視形状の最小辺が2mm以下とされ得る。
即ち、平面視形状の一辺の長さが5cmであっても、平面視形状の他辺の長さが2mm以下であれば、下記洗浄工程において灰分を有効に除去することが可能となる。
【0017】
また、後続する下記賦活工程での賦活収率を考慮すると、チップ体の平面視形状の最小辺は、好ましくは、500μm以上とされる。
即ち、チップ体の最小辺が500μm未満であると、賦活工程による生成物の賦活収率が5%未満となって、灰状態になるおそれがある。
【0018】
前記活性炭製造方法は、さらに、チップ状バイオマス原料を処理槽内の洗浄水に投入して煮沸及び冷却を行い、洗浄水内に沈殿したチップ状バイオマス原料を洗浄済原料として取り出す原料洗浄工程を有している。
【0019】
斯かる原料洗浄工程によって、チップ状バイオマス原料の内部まで洗浄水を効率的に浸透させることができ、チップ状バイオマス原料から灰分を効率良く除去することができる。
【0020】
洗浄水は、例えば、イオン交換水を用いることができる。
洗浄水の水量は、チップ状バイオマス原料の全体が浸り得る以上の量とされる。例えば、チップ状バイオマス原料がMグラムの場合、当該チップ状バイオマス原料のかさ密度Dとすると、洗浄水の水量は、M/D以上とすることができる。
【0021】
煮沸処理は、例えば、チップ状バイオマス原料が投入された洗浄水を沸騰させることによって行うことができる。沸騰状態の維持時間は特に限定されるものではなく、チップ状バイオマス原料の重量に応じて、適宜設定される。
【0022】
冷却処理は、例えば、沸騰処理されたチップ状バイオマス原料を含む洗浄水を常温まで冷却させることによって行うことができる。冷却方法は特に限定されるものでは無く、自然冷却、水冷、空冷等、種々の方法を用いることができる。
【0023】
好ましくは、煮沸及び冷却のサイクルを複数回、行うことができる。
【0024】
前記原料洗浄工程は、好ましくは、チップ状バイオマス原料が投入された洗浄水を煮沸及び冷却させた後に、チップ状バイオマス原料に対して硝酸洗浄処理を行うように構成される。
【0025】
硝酸洗浄処理は、前記煮沸及び冷却処理の後に、洗浄水のうちの上澄み水を捨て且つ捨てた上澄み水量に応じた水量だけイオン交換水を補充し、その状態の洗浄水に硝酸水を加えて、所定時間放置することによって行うことができる。
硝酸水の濃度は特に限定されるものでは無く、例えば、洗浄水の硝酸濃度が3~10%となるように、硝酸水を加えることができる。
【0026】
好ましくは、希釈硝酸水を洗浄水に加えた状態で、所定回数、振動を加えることができ、これにより、硝酸による洗浄効果を高めることができる。
【0027】
前記原料洗浄工程が前記硝酸洗浄処理を含む場合には、前記硝酸洗浄処理後にチップ状バイオマス原料を希釈硝酸水が含まれる洗浄水から取り出し、イオン交換水でチップ状バイオマス原料から硝酸を取り除くリンス処理を行うことができる。
【0028】
前記活性炭製造方法は、さらに、原料洗浄工程後に、乾燥させた洗浄済原料を炭化処理する炭化工程を備えている。
【0029】
前記炭化工程は、種々の炭化方法を用いることができるが、好ましくは、過熱水蒸気雰囲気下で650℃以上750℃以下の温度で洗浄済原料を加熱することによって炭化物を生成するように構成される。
【0030】
斯かる構成によれば、単一の過熱水蒸気加熱装置を用いつつ、温度条件だけを変更することによって、炭化工程での炭化処理と前記炭化工程に後続する下記賦活工程での賦活処理とを行うことができる。
【0031】
即ち、前記活性炭製造方法は、さらに、前記炭化工程によって生成された炭化物に対して賦活処理を行って活性炭を得る賦活工程を備えている。
【0032】
前記賦活工程は、種々の賦活方法を用いることができるが、好ましくは、前記炭化工程での炭化処理にも利用可能な過熱水蒸気加熱装置を用いて、過熱水蒸気雰囲気下で750℃以上900℃以下の温度で炭化物を加熱することによって活性炭を生成するように構成される。
【0033】
図1及び
図2に、それぞれ、前記炭化工程及び前記賦活工程を実施可能な過熱水蒸気加熱装置の一例1の正面図及び模式ブロック図を示す。
【0034】
図1及び
図2に示すように、前記加熱装置1は、蒸気又は霧状の水を供給する水供給部90と、第1加熱処理部100と、第2加熱処理部200とを備えている。
図中、符号10は、前記炭化処理部100及び前記賦活処理部200を支持する架台である。
【0035】
図3及び
図4に、それぞれ、前記第1及び第2加熱処理部100、200の縦断面図を示す。
【0036】
前記第1加熱処理部100は、被処理物(洗浄済原料)に対して炭化処理を行うように構成されている。
【0037】
図2及び
図3に示すように、前記第1加熱処理部100は、第1ケース本体110と、第1スクリューコンベア120と、第1過熱蒸気発生機構130とを有している。
【0038】
前記第1ケース本体110は、被処理部(洗浄済原料)を受け入れる第1処理空間110Aを気密状態で画するように構成されている。
【0039】
前記加熱装置1においては、前記第1ケース本体110は、
図3に示すように、長手方向に延びる一対の長辺及び幅方向に延びる一対の短辺によって画される略矩形状の上面111と、前記上面111の一対の長辺から略垂直に延びる一対の側面112と、前記上面111の一対の短辺から略垂直に延びる一対の端面113と、前記一対の側面112の下端部及び前記一対の端面113の下端部を閉じる底面114とを有する略直方体形状とされている。
【0040】
前記第1スクリューコンベア120は、軸線回りに回転駆動されることによって第1処理空間110A内の被処理物(洗浄済原料)を前記第1処理空間110Aの長手方向一方側から他方側へ搬送する。
【0041】
図3に示すように、前記第1スクリューコンベア120は、少なくとも一端部121aが外方へ気密に延在された状態で第1処理空間110Aを長手方向に沿って縦断する回転軸121と、前記回転軸121に設けられた螺旋羽根等の搬送体122と、前記回転軸121の一端部121aを回転駆動する電動モータ等のアクチュエータ(図示せず)とを有している。
【0042】
前記第1スクリューコンベア120は、前記回転軸121として互いに対して並列配置された第1及び第2回転軸を含み、前記搬送体122として前記第1及び第2回転軸にそれぞれ設けられた第1及び第2搬送体を含むことができる。この場合、前記第1及び第2回転軸は前記アクチュエータによって同期回転される。
【0043】
図2及び
図3に示すように、前記第1過熱蒸気発生機構130は、第1流体加熱管131と、前記第1ケース本体110に連結される第1カバーケース140とを有している。
【0044】
前記第1流体加熱管131は、インコネル、ハステロイ又はステンレス等の電圧印加に応じて加熱する導電材によって形成された長尺の中空部材とされており、前記水供給部90から供給される蒸気又は霧状の水を内部空間に受け入れ、電圧印加を受けて加熱されることによって内部空間の蒸気又は霧状の水を過熱蒸気に変換し、外部へ放出するように構成されている。
【0045】
詳しくは、
図2及び
図3に示すように、前記第1ケース本体110には、被処理物(洗浄済原料)を第1処理空間110Aの一方側へ受け入れる受入口110(in)と、被処理物(洗浄済原料)を第1処理空間110Aの他方側から排出する排出口110(out)と、搬送方向に関し受入口110(in)及び排出口110(out)の間において第1処理空間110Aを上方に開く上方開口115とが設けられている。
【0046】
斯かる構成において、前記第1流体加熱管131は中間部分133が前記上方開口115に臨むように前記第1ケース本体110の上方に配置されており、前記第1カバーケース140は前記第1流体加熱管131の中間部分133を覆いつつ前記上方開口115を気密に閉塞するように前記第1ケース本体110に固着されている。
【0047】
より詳しくは、前記第1流体加熱管131は、長手方向一方側の第1端部131a及び長手方向他方側の第2端部131bが前記第1カバーケース140から外方へ延在された状態で、前記第1及び第2端部131a、131bの間の前記中間部分133が前記上方開口115に臨むように配置されている。
【0048】
前記第1及び第2端部131a、131bには、それぞれ、第1及び第2給電点135、135bが設けられ、且つ、前記第1及び第2端部131a、131bの一方には前記第1流体加熱管131の内部空間に前記水供給機構90からの蒸気又は霧状の水を導入する導入口が設けられている。
【0049】
図2に示すように、前記水供給部90はボイラー91を有しており、前記ボイラー91から前記第1流体加熱管131の導入口に蒸気が供給される。
図2中の符号92は、前記ボイラー91から前記第1流体加熱管131へ供給される蒸気の量を調整する調整弁である。
【0050】
前記第1流体加熱管131は、前記第1及び第2給電点135a、135bに電圧が印加されることによって加熱し、内部空間の蒸気又は霧状の水を過熱蒸気に変換する。
前記中間部分133には一又は複数の乾燥用吐出口(図示せず)が設けられており、前記第1流体加熱管131によって生成された過熱蒸気は、前記一又は複数の乾燥用放出口から外部に放出され、前記上方開口115を介して第1処理空間110Aに供給される。
【0051】
なお、前記加熱装置1においては、
図3に示すように、前記第1流体加熱管131は前記第1カバーケース140に種々の取付部材を介して支持され、前記第1カバーケース140を前記第1ケース本体110の上面111に固着させることで、前記第1流体加熱管131の中間部分133が前記上方開口115に臨むようになっている。
【0052】
前記加熱装置1には、前記第1処理空間110Aの温度を検出する第1温度センサ(図示せず)と、前記第1過熱蒸気発生機構130への電圧印可のオンオフ制御を司る制御装置300(
図2参照)とが備えられており、前記制御装置300は、前記第1処理空間110A内の温度が炭化処理に適した所定温度(600℃以上750℃以下)となるように前記第1過熱蒸気発生機構130への電圧印可制御を行う。
【0053】
なお、前記加熱装置1においては、前述の通り、前記第1過熱蒸気発生機構130は、電圧印加に応じた前記第1流体加熱管131の発熱作用によって過熱蒸気を生成するように構成されているが、これに代えて、前記第1過熱蒸気発生機構130が、前記水供給部90から供給される蒸気又は霧状の水を電磁誘導作用によって加熱して過熱蒸気を生成する第1電磁誘導加熱手段(図示せず)と、前記第1電磁誘導加熱手段によって生成された過熱蒸気が供給される第1流体管(図示せず)と、前記上方開口115を気密状態に閉塞可能な第1カバーケース140とを有するように構成することも可能である。
【0054】
前記第1電磁誘導加熱手段は、例えば、一端部が前記水供給部90に流体接続され且つ他端部が前記第1流体管に流体接続された第1導入管と、前記第1導入管の周りに巻き回された第1励磁コイルとを有し得る。
前記第1流体管は、過熱蒸気を放出する一又は複数の乾燥用吐出口が設けられた長手方向所定部分が前記第1カバーケース140内において前記上方開口115に臨むように配置され得る。
【0055】
前記第2加熱処理部200は、前記第1加熱処理部100から直接又は間接的に供給される被処理物(炭化物)に対して賦活処理を行うように構成されている。
【0056】
前記第2加熱処理部200は、前記第1加熱処理部100と実質的に同一構成を有している。
詳しくは、
図2及び
図4に示すように、前記第2加熱処理部200は、第2ケース本体210と、第2スクリューコンベア220と、第2過熱蒸気発生機構230とを有している。
【0057】
前記第2ケース本体210は、前記第1加熱処理部100から直接又は間接的に供給される被処理物(炭化物)を受け入れる第2処理空間210Aを気密状態で画するように構成されている。
【0058】
なお、前記加熱装置1は、
図2に示すように、被処理物の搬送方向に関し前記第1及び第2加熱処理部100、200の間に中間搬送部50を有しており、前記第2加熱処理部200には前記中間搬送部50から被処理物(炭化物)が供給される。
【0059】
前記中間搬送部50は、気密状態の搬送空間を画する中間搬送ケース51と、前記中間搬送ケース51の搬送空間の一方側から他方側へ被処理物を搬送する中間搬送スクリューコンベア52とを有している。
【0060】
前記中間搬送ケース51は、前記搬送空間の一方側及び他方側にそれぞれ連通するように形成された中間受入口51(in)及び中間排出口51(out)を有しており、前記第1ケース本体110の排出口110(out)が前記中間搬送ケース51の中間受入口51(in)に気密状態で連結され且つ前記中間搬送ケース51の中間排出口51(out)が前記第2ケース本体210の受入口210(in)に気密状態で連結されている。
【0061】
前記中間搬送スクリューコンベア52は、少なくとも一端部が外方へ延在された状態で搬送空間を長手方向に沿って縦断する回転軸52aと、前記回転軸52aに設けられた螺旋羽根等の搬送体52bと、前記回転軸52aの一端部を回転駆動する電動モータ等のアクチュエータ(図示せず)とを有するものとされる。
【0062】
図4に示すように、前記加熱装置1においては、前記第2ケース本体210は、長手方向に延びる一対の長辺及び幅方向に延びる一対の短辺によって画される略矩形状の上面211と、前記上面211の一対の長辺から略垂直に延びる一対の側面212と、前記上面211の一対の短辺から略垂直に延びる一対の端面213と、前記一対の側面212の下端部及び前記一対の端面213の下端部を閉じる底面214とを有する略直方体形状とされている。
【0063】
前記第2スクリューコンベア220は、軸線回りに回転駆動されることによって第2処理空間210A内の被処理物(炭化物)を前記第2処理空間210Aの一方側から他方側へ搬送する。
【0064】
図4に示すように、前記第2スクリューコンベア220は、少なくとも一端部が外方へ気密に延在された状態で第2処理空間210Aを長手方向に沿って縦断する回転軸221と、前記回転軸221に設けられた螺旋羽根等の搬送体222と、前記回転軸221の一端部221aを回転駆動する電動モータ等のアクチュエータ(図示せず)とを有している。
【0065】
図2及び
図4に示すように、前記第2過熱蒸気発生機構230は、第2流体加熱管231と、前記第2ケース本体210に連結される第2カバーケース240とを有している。
【0066】
前記第2流体加熱管231は、インコネル、ハステロイ又はステンレス等の電圧印加に応じて加熱する導電材によって形成された長尺の中空部材とされており、前記水供給部90から供給される蒸気又は霧状の水を内部空間に受け入れ、電圧印加を受けて加熱されることによって内部空間の蒸気又は霧状の水を過熱蒸気に変換し、外部に放出するように構成されている。
【0067】
詳しくは、
図4に示すように、前記第2ケース本体210には、被処理物(炭化物)を第2処理空間210Aの一方側へ受け入れる受入口210(in)と、被処理物(炭化物)を第2処理空間210Aの他方側から排出する排出口210(out)と、搬送方向に関し受入口210(in)及び排出口210(out)の間において第2処理空間210Aを上方に開く上方開口215とが設けられている。
【0068】
斯かる構成において、前記第2流体加熱管231は中間部分233が前記上方開口215に臨むように前記第2ケース本体210の上方に配置されており、前記第2カバーケース240は前記第2流体加熱管231の中間部分233を覆いつつ前記上方開口215を気密に閉塞するように前記第2ケース本体210に固着されている。
【0069】
より詳しくは、前記第2流体加熱管231は、長手方向一方側の第1端部231a及び長手方向他方側の第2端部231bが前記第2カバーケース240から外方へ延在された状態で、前記第1及び第2端部231a、231bの間の前記中間部分233が前記上方開口215に臨むように配置されている。
【0070】
前記第1及び第2端部231a、231bには、それぞれ、第1及び第2給電点235a、235bが設けられ、且つ、前記第1及び第2端部231a、231bの一方には前記第2流体加熱管231の内部空間に前記水供給機構90からの蒸気又は霧状の水を導入する導入口が設けられている。
【0071】
前述の通り、前記加熱装置1においては、前記水供給部90はボイラー91を有しており、前記ボイラー91から前記第2流体加熱管231の導入口に蒸気が供給される(
図2参照)。
なお、
図2中の符号92は、前記ボイラー91から前記第2流体加熱管231へ供給される蒸気の量を調整する調整弁である。
【0072】
前記第2流体加熱管231は、前記第1及び第2給電点235a、235bに電圧が印加されることによって加熱し、内部空間の蒸気又は霧状の水を過熱蒸気に変換する。
前記第2流体加熱管231によって生成された過熱蒸気は、前記中間部分233に設けられた一又は複数の放出口(図示せず)から外部に放出され、前記上方開口215を介して第2処理空間210Aに供給される。
【0073】
なお、前記加熱装置1においては、
図4に示すように、前記第2流体加熱管231は前記第2カバーケース240に種々の取付部材を介して支持され、前記第2カバーケース240を前記第2ケース本体210の上面211に固着させることで、前記第2流体加熱管231の中間部分233が前記上方開口215に臨むようになっている。
【0074】
前記加熱装置1には、前記第2処理空間210Aの温度を検出する第2温度センサ(図示せず)が備えられており、前記制御装置300は、前記第2処理空間210A内の温度が賦活処理に適した所定温度(750℃以上900℃以下)となるように前記第2過熱蒸気発生機構230への電圧印可制御を行う。
【0075】
なお、前記加熱装置1においては、前述の通り、前記第2過熱蒸気発生機構230は、電圧印加に応じた前記第2流体加熱管231の発熱作用によって過熱蒸気を生成するように構成されているが、これに代えて、前記第2過熱蒸気発生機構230が、前記水供給部90から供給される蒸気又は霧状の水を電磁誘導作用によって加熱して過熱蒸気を生成する第2電磁誘導加熱手段(図示せず)と、前記第2電磁誘導加熱手段によって生成された過熱蒸気が供給される第2流体管(図示せず)と、前記上方開口215を気密状態に閉塞可能な第2カバーケース240とを有するように構成することも可能である。
【0076】
前記第2電磁誘導加熱手段は、例えば、一端部が前記水供給部90に流体接続され且つ他端部が前記第2流体管に流体接続された第2導入管と、前記第2導入管の周りに巻き回された第2励磁コイルとを有し得る。
前記第2流体管は、過熱蒸気を放出する一又は複数の吐出口が設けられた長手方向所定部分が前記第2カバーケース240内において前記上方開口215に臨むように配置され得る。
【0077】
前記制御装置300は、前記第1及び第2処理空間110A、210Aの処理温度、並びに、前記第1及び第2スクリューコンベア120、220の搬送速度を含む処理条件を設定できるように構成され、設定された処理条件に応じて前記第1過熱蒸気発生機構130、前記第1スクリューコンベア120、前記第2過熱蒸気発生機構230及び前記第2スクリューコンベア220の作動制御を行うように構成される。
【0078】
前記加熱装置1によれば、前記第1ケース本体110によって画される第1処理空間110A内において、被処理物(洗浄済原料)を搬送しつつ又は停止状態で、被処理物(洗浄済原料)に対し前記第1ケース本体110の上方開口115を介して前記第1過熱蒸気発生機構130によって発生された過熱蒸気を供給するように構成されているので、第1処理空間110Aの全体に高温の過熱蒸気を効率的に供給できる。
【0079】
さらに、電圧印加に応じて加熱する前記第1流体加熱管131を用い、前記一又は複数の吐出口が設けられた前記第1流体加熱管131の前記中間部分133が前記第1ケース本体110の前記上方開口115に臨むように配置しつつ、前記上方開口115及び前記中間部分133を前記第1カバーケース140によって気密に覆うように構成されているので、第1処理空間110Aの全体に高温の過熱蒸気を効率的に供給できることに加えて、過熱蒸気による熱量と共に前記第1流体加熱管131の熱量によっても第1処理空間110A内の温度を上昇させることができ、良好な加熱効率を得ることができる。
【0080】
また、前記加熱装置1によれば、前記第2ケース本体210によって画される第2処理空間210A内において、被処理物(炭化物)を搬送しつつ又は停止状態で、被処理物(炭化物)に対し前記第2ケース本体210の上方開口215を介して前記第2過熱蒸気発生機構230によって発生された過熱蒸気を供給するように構成されているので、第2処理空間210Aの全体に高温の過熱蒸気を効率的に供給できる。
【0081】
さらに、電圧印加に応じて加熱する前記第2流体加熱管231を用い、前記一又は複数の吐出口が設けられた前記第2流体加熱管231の前記中間部分233が前記第2ケース本体210の前記上方開口215に臨むように配置しつつ、前記上方開口215及び前記中間部分233を前記第2カバーケース240によって気密に覆うように構成されているので、第2処理空間210Aの全体に高温の過熱蒸気を効率的に供給できることに加えて、過熱蒸気による熱量と共に前記第2流体加熱管231の熱量によっても第2処理空間210A内の温度を上昇させることができ、良好な加熱効率を得ることができる。
【0082】
従って、斯かる構成の前記加熱装置1によれば、洗浄済原料から良好な活性炭を効率良く且つ連続的に製造することができる。
【0083】
図1~
図4等に示すように、前記加熱装置1は、前記第1加熱処理部100より被処理物の流れ方向上流側に被処理物(洗浄済原料)を収容可能なホッパー20を備えており、前記第1ケース本体110の受入口110(in)は前記ホッパー20の出口に直接又は間接的に連結されている。
【0084】
なお、前記加熱装置1においては、
図1及び
図2に示すように、前記ホッパー20と前記第1加熱処理部100との間には上流側搬送部30が介挿されている。
【0085】
前記上流側搬送部30は、気密状態の搬送空間を画する上流側搬送ケース31と、前記上流側搬送ケース31の搬送空間の一方側から他方側へ被処理物を搬送する上流側搬送スクリューコンベア32とを有している。
【0086】
前記上流側搬送ケース31は、前記搬送空間の一方側及び他方側にそれぞれ連通するように形成された上流側受入口31(in)及び上流側排出口31(out)を有しており、前記ホッパー20の出口が前記上流側搬送ケース31の上流側受入口31(in)に気密状態で連結され且つ前記上流側搬送ケース31の上流側排出口31(out)が前記第1ケース本体110の受入口110(in)に気密状態で連結されている。
【0087】
前記上流側搬送スクリューコンベア32は、少なくとも一端部が外方へ延在された状態で搬送空間を長手方向に沿って縦断する回転軸32aと、前記回転軸32aに設けられた螺旋羽根等の搬送体32bと、前記回転軸32aの一端部を回転駆動する電動モータ等のアクチュエータ(図示せず)とを有するものとされる。
【0088】
好ましくは、
図1及び
図2に示すように、前記加熱装置1には、前記第1ケース本体110の受入口110(in)を直接又は間接的に開閉する上流側開閉弁40が設けられる。
前記上流側開閉弁40を備えることにより、前記第1加熱処理部100への被処理物の投入量の制御を行うことができる。
【0089】
さらに、前記上流側開閉弁40を備えることにより、前記第1ケース本体110内への大気の流入をより確実に防止して前記第1ケース本体110内の過熱蒸気雰囲気を有効に維持することができる。
【0090】
即ち、前記第1ケース本体110内は前記第1流体加熱管131から放出される過熱蒸気によって与圧状態とされている為、前記上流側開閉弁40を備えなくても、前記第1ケース本体110の受入口110(in)から大気が流入することをある程度は防止することができるが、前記上流側開閉弁40を備えることによって、この大気の流入をより確実に防止することができる。
【0091】
好ましくは、前記上流側開閉弁40は、前記制御装置300によって作動制御されるアクチュエータによって開閉動作するように構成され得る。
なお、本実施の形態においては、前記上流側開閉弁40は、前記上流側搬送ケース31の上流側排出口31(out)と前記第1ケース本体110の受入口110(in)とを連結する配管に介挿されている。
【0092】
また、好ましくは、
図1及び
図2に示すように、前記加熱装置1には、前記第2ケース本体210の排出口210(out)を直接又は間接的に開閉する下流側開閉弁60が設けられる。
【0093】
前記下流側開閉弁60を備えることにより、前記第2ケース本体210内への大気の流入をより確実に防止して前記第2ケース本体210内の過熱蒸気雰囲気を有効に維持することができる。
【0094】
即ち、前記第2ケース本体210内は前記第2流体加熱管231から放出される過熱蒸気によって与圧状態とされている為、前記下流側開閉弁60を備えなくても、前記第2ケース本体210の排出口210(out)から大気が流入することをある程度は防止することができるが、前記下流側開閉弁60を備えることによって、この大気の流入をより確実に防止することができる。
【0095】
好ましくは、前記下流側開閉弁60は、前記制御装置300によって作動制御されるアクチュエータによって開閉動作するように構成され得る。
なお、前記加熱装置1においては、前記下流側開閉弁60は、前記第2ケース本体210の排出口210(out)に設けられている。
【0096】
さらに、
図2に示すように、前記加熱装置1は、一端部が第1処理空間110Aに連通された第1排気ダクト70と、前記第1排気ダクト70に介挿された第1排気ファン72と、前記第1排気ダクト70の他端部に接続された強制酸化装置85とを備えている。
【0097】
前記第1排気ダクト70の一端部は、第1処理空間110Aのうち被処理物(洗浄済原料)が搬送される領域より上方において外方に開口されるように前記第1ケース本体110に設けられた排出口に接続される。
【0098】
斯かる構成を備えることにより、前記第1加熱処理部200による炭化処理に際し生成されるタール等の乾留ガスを前記強制酸化装置85によって燃焼させた状態で大気に放出することができる。
なお、本実施の形態においては、前記強制酸化装置85の排出口は排気ダクト75に接続されている。
【0099】
好ましくは、前記第1排気ファン72は、前記制御装置300によって作動制御されるように構成される。
【0100】
さらに、前記加熱装置1は、
図2に示すように、一端部が第2処理空間210Aに連通され且つ他端部が前記強制酸化装置に接続された第2排気ダクト80と、前記第2排気ダクト80に介挿された第2排気ファン82とを備えている。
【0101】
前記第2排気ダクト80の一端部は、第2処理空間210Aのうち被処理物(炭化物)が搬送される領域より上方において外方に開口されるように前記第2ケース本体210に設けられた排出口に接続される。
【0102】
斯かる構成を備えることにより、前記第2加熱処理部200による賦活処理に際し生成されるタール等の乾留ガスを前記強制酸化装置85によって燃焼させた状態で大気に放出することができる。
【0103】
なお、前記加熱装置1は、被処理物の搬送方向に関し直列配置された前記第1及び第2加熱処理部100、200を備え、前記第1及び第2加熱処理部100、200が、それぞれ、炭化処理及び賦活処理を行うように構成されている。
【0104】
これに代えて、単一の共通加熱処理部を備えた加熱装置を用いて、本実施の形態に係る活性炭製造方法を実施することも可能である。
この場合、まず、前記共通加熱処理部において洗浄済原料を所定の炭化処理温度に加熱して炭化処理を行い、その後に、当該共通加熱処理部内に生成された炭化物を所定の賦活処理温度に加熱して賦活処理を行って、活性炭を製造することができる。
【0105】
ここで、本実施の形態に係る活性炭製造方法の一例によって製造した活性炭(参考例)に対して行った分析結果について説明する。
【0106】
前記参考例は、下記製造方法によって製造した。
平面視形状の最小辺が500μm~2mmとされた竹チップ100gを2リットルのイオン交換水内に投入した状態で、沸騰及び冷却のサイクルを2回繰り返して、洗浄を行った。
【0107】
前記イオン交換水に沈殿している状態の竹チップを洗浄済竹チップとして取り出し、空気中で110℃の温度で乾燥させてから、窒素雰囲気下で600℃の温度で60分間の加熱を行って竹炭化物を生成した。
【0108】
このようにして生成した竹炭化物を4セット用意し、過熱水蒸気雰囲気下で850℃の温度で、それぞれ、50分間、70分間、110分間、及び、130分間の加熱を行って竹活性炭を生成した(以下、それぞれ、参考例1~4という)。
【0109】
参考例1~4に対して、炭化物状態の重量に対する活性炭重量の割合である賦活収率を測定した。
図5に、賦活時間と賦活収率との関係を示す。
なお、賦活収率5%以下は、生成物が活性炭というよりは灰状態になっていることを意味する。
【0110】
また、
参考例1~4の比表面積を窒素吸脱着測定装置によって測定した。
図6に、洗浄済原料状態での重量に対する活性炭重量の割合である収率と比表面積との関係を示す。
【0111】
さらに、
参考例1~4に形成された細孔径の頻度を窒素吸脱着測定装置によって測定した。
図7(a)に、細孔径と頻度との関係を示す。
【0112】
比較例として、洗浄処理を行わない点以外は前記参考例と同一条件で炭化物を4セット生成し、さらに、賦活時間以外は前記参考例と同一条件で活性炭を生成した。
比較例においては、賦活時間を、それぞれ、30分間、40分間、50分間及び60分間とした(以下、それぞれ、比較例1~4という)。
【0113】
図5に比較例1~4における賦活時間及び賦活収率の関係を、
図6に比較例1~3における収率及び比表面積の関係を、それぞれ、併せて示す。
また、
図7(b)に、比較例1~3における細孔径と頻度との関係を示す。
【0114】
図5から明らかなように、比較例4(賦活処理60分間)においては賦活収率が5%となり、生成物は実質的に灰状態になったが、
参考例においては、賦活処理を130分行っても賦活収率が20%以上あり(
参考例4)、生成物は良好な活性炭状態となっている。
【0115】
また、
図6から、比較例2は比較例1に比して比表面積が上昇しているものの、比較例3は比較例2に比して比表面積が減少していることが確認できる。
さらに、
図7(b)から、比較例においては、賦活処理時間を長くしても、細孔径の頻度はそれ程変化しないことが確認できる。
なお、比較例4は、実質的に灰状態となっており、比表面積及び細孔径の頻度分布は測定困難であった。
【0116】
これに対し、
参考例においては、
図7(a)から、
参考例2は
参考例1に比して開口径2nm以下のミクロ孔の頻度が若干上昇し且つ
参考例4は
参考例3に比してミクロ孔の頻度が若干上昇していることが確認されるが、
参考例3は
参考例2に比してミクロ孔の頻度が大幅に上昇していることが確認できる。
【0117】
また、
図6の
参考例のグラフから、
参考例1及び2間の傾き、並びに、
参考例3及び4間の傾きに比して、
参考例2及び3間の傾きが大きくなっていることが確認できる。
【0118】
これらから、参考例においては、比表面積が1400m2/g以上となるように賦活時間を設定すると、開口径2nm以下のミクロ孔の頻度を大幅に上昇させることができると推測できる。
さらに、製造効率を考慮すると、比表面積が2000m2/g以下となるように賦活時間を設定するのが好ましい。