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<図1>
  • 特許-直流給電システム 図1
  • 特許-直流給電システム 図2
  • 特許-直流給電システム 図3
  • 特許-直流給電システム 図4
  • 特許-直流給電システム 図5
  • 特許-直流給電システム 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】直流給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20221005BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20221005BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20221005BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H02J9/06 110
H02M3/00 W
H02M3/00 C
H02M3/00 H
H02J7/34 B
H02J7/34 J
H02J7/00 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018135892
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2020014340
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 竜治
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/015570(WO,A1)
【文献】特開2017-158266(JP,A)
【文献】特開平04-150739(JP,A)
【文献】特開2017-204977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00 - 1/16
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02J 9/06
H02M 3/00 - 3/44
H02H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧Vを外部負荷へ給電路を介して出力する直流電圧出力装置と、
複数の蓄電池と、
前記蓄電池のそれぞれと前記給電路との間に各1つ設けられた双方向電力変換装置と、
を備え、
前記双方向電力変換装置は、
前記給電路から入力される前記直流電圧Vを電圧変換して前記蓄電池へ供給する充電モードと、前記蓄電池の電圧を電圧変換して前記給電路へ出力するバックアップモードとで動作する電力変換回路と、
前記電力変換回路の動作を制御する制御回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記電力変換回路を前記バックアップモードで動作させるとき、前記電力変換回路から出力される電圧の目標値Vを予め定められた電圧Vから該電力変換回路の出力電流I該電力変換回路に接続された前記蓄電池の残量が低下するにしたがって増加する仮想抵抗Rとの積を引いた値“V-I・R”に設定し、
また、前記制御回路は、異常発生時に、定常時よりも大きな前記仮想抵抗R を使用して前記目標値V を設定する
ことを特徴とする直流給電システム。
【請求項2】
前記制御回路は、前記給電路の電圧が予め定められた閾値VTHを上回っていれば、前記電力変換回路を前記充電モードで動作させるか停止させ、前記給電路の電圧が前記閾値VTHを下回っていれば、前記電力変換回路を前記バックアップモードで動作させ、
前記直流電圧V、前記電圧Vおよび前記閾値VTHは、V>VTH>Vの関係を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の直流給電システム。
【請求項3】
前記双方向電力変換装置は、前記電力変換回路と前記給電路との間に設けられた通電遮断手段をさらに有し、
前記制御回路は、前記電力変換回路の前記出力電流Iが予め定められた閾値ITHを上回ると、前記通電遮断手段を作動させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直流給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電池を用いて直流電圧を外部負荷へ出力する直流給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、停電時においても動作させるべき直流の外部負荷に電力を供給する直流給電システムとして、蓄電池を含んだものが種々検討されている。その一例として、特許文献1には、図6に示すように、交流電力系統Gから入力される交流電圧を直流電圧に変換して外部負荷Lへの給電路102へ出力する整流装置101と、蓄電池103と、給電路102と蓄電池103との間に設けられた双方向電力変換装置104とを備えた直流給電システム100が開示されている。この直流給電システム100は、停電により整流装置101が直流電圧を正常に出力することができなくなると、双方向電力変換装置104が蓄電池103の電圧を昇圧して給電路102へ出力し、これにより、外部負荷Lへの電力の供給が継続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-120414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の直流給電システム100は、蓄電池103および双方向電力変換装置104の少なくとも一方に何らかの異常が発生すると、停電時に外部負荷Lへ電力を供給することができなくなるという問題があった。
【0005】
なお、特許文献1には、複数の双方向電力変換装置(蓄電池)を備えた構成も開示されている。しかしながら、この構成では、複数の外部負荷と複数の双方向電力変換装置(蓄電池)とが1対1に接続されているので、いずれかの双方向電力変換装置(蓄電池)に異常が発生すると、それに対応する外部負荷への電力の供給はやはり途絶えてしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、停電時に外部負荷への電力の供給をより確実に継続することができる直流給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者は、複数の双方向電力変換装置(および蓄電池)を外部負荷に対して並列的に接続すれば、外部負荷への電力の供給が途切れる可能性が大幅に低減されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る直流給電システムは、直流電圧Vを外部負荷へ給電路を介して出力する直流電圧出力装置と、複数の蓄電池と、蓄電池のそれぞれと給電路との間に各1つ設けられた双方向電力変換装置とを備え、双方向電力変換装置は、給電路から入力される直流電圧Vを降圧して蓄電池へ供給する充電モードと、蓄電池の電圧を昇圧して給電路へ出力するバックアップモードとで動作する電力変換回路と、電力変換回路の動作を制御する制御回路とを有し、制御回路は、電力変換回路をバックアップモードで動作させるとき、電力変換回路から出力される電圧の目標値Vを予め定められた電圧Vから該電力変換回路の出力電流Iと仮想抵抗Rとの積を引いた値“V-I・R”に設定することを特徴としている。
【0009】
上記直流給電システムは、蓄電池と双方向電力変換装置とからなる独立した複数のバックアップ手段を備えている。したがって、上記直流給電システムによれば、いずれかのバックアップ手段に異常が生じたとしても、他のバックアップ手段により外部負荷への電力の供給を継続することができる。
【0010】
ここで、単に複数のバックアップ手段を並列的に備えただけでは、各バックアップ手段を構成する双方向電力変換装置の出力電圧に誤差が生じた場合に、出力電圧が最も高いバックアップ手段だけが外部負荷に電力を供給し、他のバックアップ手段は電力の供給に全く寄与しなくなることがあり得る。しかしながら、上記直流給電システムは、バックアップモードで動作する電力変換回路の目標値Vが予め定められた電圧Vから該電力変換回路の出力電流Iと仮想抵抗Rとの積を引いた値“V-I・R”に設定されている。したがって、上記直流給電システムによれば、上記のアンバランスを解消することができる。
【0011】
上記直流給電システムの制御回路は、例えば、給電路の電圧が予め定められた閾値VTH(ただし、V>VTH>V)を上回っていれば、電力変換回路を充電モードで動作させるか停止させ、給電路の電圧が閾値VTHを下回っていれば、電力変換回路をバックアップモードで動作させる。
【0012】
上記直流給電システムの双方向電力変換装置は、電力変換回路と給電路との間に設けられた通電遮断手段を有していてもよい。この場合、制御回路は、電力変換回路の出力電流Iが予め定められた閾値ITHを上回ると、通電遮断手段を作動させることが好ましい。
【0013】
上記直流給電システムの双方向電力変換装置は、電力変換回路を診断する自己診断回路を有していてもよい。この場合、制御回路は、自己診断回路によって電力変換回路の異常が検知されると、該電力変換回路を停止させることが好ましい。
【0014】
また、上記直流給電システムの制御回路は、通電遮断手段および自己診断回路の両方を有していてもよい。この場合、制御回路は、自己診断回路によって電力変換回路の異常が検知されると、該電力変換回路を停止させるとともに、通電遮断手段を作動させることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、停電時に外部負荷への電力の供給をより確実に継続することができる直流給電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る直流給電システムのブロック図である。
図2図1に示す直流給電システムの、交流電力系統が正常であるときの給電経路を示す図である。
図3図1に示す直流給電システムの、交流電力系統が異常であり、かつ2つの双方向電力変換装置が正常であるときの給電経路を示す図である。
図4図1に示す直流給電システムの、交流電力系統が異常であり、かつ外部負荷が異常であるときの給電経路を示す図である。
図5図1に示す直流給電システムの、交流電力系統が異常であり、かつ2つの双方向電力変換装置のうちの1つが異常であるときの給電経路を示す図である。
図6】従来の直流給電システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る直流給電システムの実施例について説明する。
【0018】
図1に、本発明の実施例に係る直流給電システム1を示す。同図に示すように、直流給電システム1は、交流電力系統Gから入力される交流電圧を直流電圧Vに変換して外部負荷Lへの給電路3に出力する整流装置2と、第1蓄電池4と、第2蓄電池5と、第1蓄電池4と給電路3との間に設けられた第1双方向電力変換装置6と、第2蓄電池5と給電路3との間に設けられた第2双方向電力変換装置7とを備えている。第1双方向電力変換装置6および第2双方向電力変換装置7は、同一の構成を有している。第1蓄電池4および第2蓄電池5も、同一の構成を有している。なお、図1では、外部負荷Lが複数の外部負荷の集合体として示されているが、外部負荷Lは単一の外部負荷であってもよい。また、本実施例では、整流装置2が、本発明の「直流電圧出力装置」に相当する。
【0019】
整流装置2は、複数のダイオード、コイルおよびキャパシタを組み合わせた回路で構成されている。ただし、本発明では、整流装置2の構成は特に限定されない。整流装置2が給電路3に出力する直流電圧Vは、交流電力系統Gから入力される交流電圧の振幅に対応している。例えば、停電により交流電力系統Gから入力される交流電圧の振幅がゼロになると、直流電圧Vはゼロになる。
【0020】
第1蓄電池4および第2蓄電池5は、リチウム電池からなっている。ただし、本発明では、第1蓄電池4および第2蓄電池5の種別は特に限定されない。
【0021】
第1双方向電力変換装置6は、一方の入出力端子が第1蓄電池4に接続された電力変換回路10と、電力変換回路10の他方の入出力端子と給電路3との間に設けられた通電遮断手段12と、電力変換回路10および通電遮断手段12の動作を制御する制御回路11とを有している。
【0022】
電力変換回路10は、制御回路11からの指令に基づいて双方向に動作するDC/DC変換回路からなっている。電力変換回路10は、給電路3および通電遮断手段12を介して入力される整流装置2からの直流電圧Vを降圧して第1蓄電池4へ供給する充電モードと、第1蓄電池4の電圧を昇圧して給電路3へ出力するバックアップモードとで動作することができる。なお、電力変換回路10は、制御回路11からの指令がない場合は、動作を停止する。この場合、電力の変換は行われない。
【0023】
通電遮断手段12は、制御回路11からの指令に基づいて開状態または閉状態をとるスイッチからなっている。通電遮断手段12は、制御回路11からの指令があった場合に開状態となり、電力変換回路10を給電路3から切り離して、電力変換回路10と給電路3との間の通電を遮断する。なお、通電遮断手段12は、予め定められた過電流値を超える電流を検知したときに開状態となる機能を有していてもよい。
【0024】
第1双方向電力変換装置6は、自己診断回路13をさらに有している。自己診断回路13は、電力変換回路10において過電流、過電圧等の各種異常が発生しているか否かを診断するとともに、診断した結果を制御回路11に通知する。自己診断回路13は、電力変換回路10に内包されていてもよい。
【0025】
制御回路11は、マイクロプロセッサ(MPU,Micro-processing unit)等からなっている。制御回路11は、給電路3の電圧と、第1蓄電池4の電圧と、電力変換回路10から出力される電流と、自己診断回路13による診断の結果とに基づいて、電力変換回路10および通電遮断手段12を制御する。
【0026】
上記した通り、第1双方向電力変換装置6および第2双方向電力変換装置7は、同一の構成を有している。ただし、第2双方向電力変換装置7の制御回路11は、第1蓄電池4ではなく第2蓄電池5の電圧に基づいて、電力変換回路10および通電遮断手段12を制御する。
【0027】
続いて、第1双方向電力変換装置6および第2双方向電力変換装置7の制御回路11による制御について、さらに詳しく説明する。
【0028】
(第1制御)
第1双方向電力変換装置6の制御回路11は、給電路3の電圧(直流電圧V)が予め定められた閾値VTHを上回っており、かつ、第1蓄電池4の電圧が予め定められた閾値VTHBを上回っていれば、第1双方向電力変換装置6の電力変換回路10の動作を停止させる。同様に、第2双方向電力変換装置7の制御回路11は、直流電圧Vが予め定められた閾値VTHを上回っており、かつ、第2蓄電池5の電圧が閾値VTHBを上回っていれば、第2双方向電力変換装置7の電力変換回路10の動作を停止させる。これらの場合、外部負荷Lには、交流電力系統Gに由来する直流電圧Vが供給される(図2中の実線で示された矢印参照)。
【0029】
ここで、閾値VTHは、交流電力系統Gが正常であるときの直流電圧Vの下限値VRMINよりも僅かに小さい値に設定されている(VTH<VRMIN)。したがって、給電路3の電圧が予め定められた閾値VTHを上回っているということは、交流電力系統Gが正常であること(すなわち、停電が発生していないこと)を意味している。また、閾値VTHBは、満充電時の第1蓄電池4(第2蓄電池5)の電圧VBFULLよりも僅かに小さい値に設定されている(VTHB<VBFULL)。したがって、第1蓄電池4(第2蓄電池5)の電圧が予め定められた閾値VTHBを上回っているということは、第1蓄電池4(第2蓄電池5)の充電が不要であることを意味している。
【0030】
(第2制御)
第1双方向電力変換装置6の制御回路11は、給電路3の電圧が閾値VTHを上回っており、かつ、第1蓄電池4の電圧が閾値VTHBを下回っていれば、第1双方向電力変換装置6の電力変換回路10を充電モードで動作させる。同様に、第2双方向電力変換装置7の制御回路11は、給電路3の電圧が閾値VTHを上回っており、かつ、第2蓄電池5の電圧が閾値VTHBを下回っていれば、第2双方向電力変換装置7の電力変換回路10を充電モードで動作させる。これらの場合も、外部負荷Lには、交流電力系統Gに由来する直流電圧Vが供給される。また、これらの場合、直流電圧Vは、第1蓄電池4および/または第2蓄電池5の充電にも利用される(図2中の破線で示された矢印参照)。
【0031】
(第3制御)
第1双方向電力変換装置6の制御回路11は、給電路3の電圧が閾値VTHを下回っていれば、第1双方向電力変換装置6の電力変換回路10をバックアップモードで動作させる。同様に、第2双方向電力変換装置7の制御回路11は、給電路3の電圧が閾値VTHを下回っていれば、第2双方向電力変換装置7の電力変換回路10をバックアップモードで動作させる。これにより、第1蓄電池4および第2蓄電池5の電圧が昇圧されて給電路3に出力される。そして、外部負荷Lには、第1蓄電池4および第2蓄電池5に由来する直流電圧が供給される(図3参照)。
【0032】
ここで、第1双方向電力変換装置6の制御回路11は、第1双方向電力変換装置6の電力変換回路10から出力される電圧が目標値VT1となるように該電力変換回路10を制御する。目標値VT1は、予め定められた電圧V(ただし、V<VTH)から第1双方向電力変換装置6の電力変換回路10の出力電流I01と仮想抵抗Rとの積を引いた値“V-I01・R”である。同様に、第2双方向電力変換装置7の制御回路11は、第2双方向電力変換装置7の電力変換回路10から出力される電圧が目標値VT2(=V-第2双方向電力変換装置7の電力変換回路10の出力電流I02と仮想抵抗Rとの積I02・R)となるように該電力変換回路10を制御する。
【0033】
このような制御によれば、第1蓄電池4および第2蓄電池5をバランスよく放電させることができる。また、このような制御によれば、外部負荷Lの内部、または給電路3において短絡等の異常が発生して出力電流I01,I02が急増したとしても、目標値VT1,VT2が直ちに下げられるので、大電流が流れ続けることによる各部の損傷を防ぐことができる。
【0034】
なお、仮想抵抗Rは、外部負荷Lの内部、または給電路3において短絡等の異常が発生していないときに目標値VT1,VT2が電圧Vに対して極端に小さくなることがないように、数十[mΩ]~数[Ω]の範囲の比較的小さな値に設定されていることが好ましい。
【0035】
第1双方向電力変換装置6の制御回路11は、第3制御が行われている最中に急増した出力電流I01が予め定められた閾値ITHを上回ると、電力変換回路10の動作を停止させるとともに、通電遮断手段12を開状態とすることが好ましい(図4参照)。同様に、第2双方向電力変換装置7の制御回路11は、第3制御が行われている最中に急増した出力電流I02が閾値ITHを上回ると、電力変換回路10の動作を停止させるとともに、通電遮断手段12を開状態とすることが好ましい(図4参照)。これにより、大電流による各部の損傷をより確実に防ぐことができる。なお、第1双方向電力変換装置6のおよび第2双方向電力変換装置7の制御回路11は、電力変換回路10の動作を停止させるだけでもよいし、通電遮断手段12を開状態とするだけでもよい。
【0036】
第3制御が行われている最中に交流電力系統Gが停電から復旧して直流電圧Vが閾値VTHを上回ると、第3制御は終了し、第1制御または第2制御が開始される。上記した通り、電圧Vおよび閾値VTHはV<VTHの関係を有しているので、第3制御が終了するためには、交流電力系統Gが停電から復旧することが必要である。
【0037】
(第4制御)
第3制御が行われている最中に第1双方向電力変換装置6の自己診断回路13が異常を検知すると、第1双方向電力変換装置6の制御回路11は、電力変換回路10の動作を停止させるとともに、通電遮断手段12を開状態とする。これにより、外部負荷Lには、第2蓄電池5に由来する直流電圧のみが供給される(図5参照)。また、第2双方向電力変換装置7側で異常が検知された場合は、第2蓄電池5に由来する直流電圧のみが外部負荷Lに供給される。
【0038】
以上のように、本発明に係る直流給電システム1は、独立した2つのバックアップ手段を備えている。したがって、本発明に係る直流給電システム1によれば、いずれかのバックアップ手段(例えば、第1蓄電池4および第1双方向電力変換装置6)に異常が生じたとしても、他方のバックアップ手段(例えば、第2蓄電池5および第2双方向電力変換装置7)により外部負荷Lへの電力の供給を継続することができる。
【0039】
また、本発明に係る直流給電システム1では、バックアップモードで動作する電力変換回路10の出力電圧の目標値VT1,VT2が出力電流I01,I02と仮想抵抗Rとを考慮して算出される。したがって、本発明に係る直流給電システム1によれば、これらを考慮しない場合に比べ、2つのバックアップ手段をバランスよく動作させることができる。
【0040】
なお、本発明に係る直流給電システムは、上記実施例で示した構成に限定されるものではない。
【0041】
例えば、本発明に係る直流給電システムは、3つ以上の蓄電池と、これに対応する3つ以上の双方向電力変換装置とを備えていてもよい。
【0042】
また、本発明に係る直流給電システムの双方向電力変換装置は、通電遮断手段および自己診断回路を有していなくてもよい。
【0043】
また、第1双方向電力変換装置6および第2双方向電力変換装置7は、本発明において必要とされる機能を有する限りにおいて、互いに異なった構成を有していてもよい。同様に、第1蓄電池4および第2蓄電池5も、異なった構成を有していてもよい。
【0044】
また、充電モードにおける第1双方向電力変換装置6(および第2双方向電力変換装置7)の動作は、給電路3の電圧と第1蓄電池4(および第2蓄電池5)の電圧との高低関係に応じた任意の電圧変換であってもよい。つまり、第1双方向電力変換装置6(および第2双方向電力変換装置7)は、充電モードにおいて給電路3の電圧に対して第1蓄電池4(および第2蓄電池5)の電圧が高ければ、直流電圧Vを昇圧して第1蓄電池4(および第2蓄電池5)へ供給してもよい。
【0045】
同様に、バックアップモードにおける第1双方向電力変換装置6(および第2双方向電力変換装置7)の動作も、給電路3の電圧と第1蓄電池4(および第2蓄電池5)の電圧との高低関係に応じた任意の電圧変換であってもよい。つまり、第1双方向電力変換装置6(および第2双方向電力変換装置7)は、バックアップモードにおいて給電路3の電圧に対して第1蓄電池4(および第2蓄電池5)が高ければ、第1蓄電池4(および第2蓄電池5)の電圧を降圧して給電路3へ出力してもよい。
【0046】
また、仮想抵抗Rは、状況に応じて変化する可変値であってもよい。上記実施例のように仮想抵抗Rを固定値としても複数の蓄電池(第1蓄電池4および第2蓄電池5)の放電をバランスさせる効果は得られるものの、各種センシング(例えば、出力電流I01,I02の検出)における誤差等から若干のアンバランスが生じてしまうことがあり得る。そこで、例えば、各蓄電池4,5の残量(電圧)が低下していくにしたがって仮想抵抗Rを微増させれば、このアンバランスを緩和することができる。
【0047】
あるいは、仮想抵抗Rは、定常時には比較的小さな値に設定される一方、短絡発生等の異常時には比較的大きな値に設定されてもよい。これにより、定常時の電圧降下I01・R(I02・R)を最小限としつつ、異常時の過電流保護を強く機能させることができる。なお、この場合は、仮想抵抗Rを次式により設定することができるが、これは単なる一例である。

=R (I01<Ith
=R+(I01-Ith)A (I01≧Ith

=R (I02<Ith
=R+(I02-Ith)A (I02≧Ith

ここで、Aは、異常時の過電流保護の強さを決定するための係数であり、Ithは、定常時と異常時を区別するための閾値である。
【0048】
また、本発明の直流電圧出力装置は、直流電圧Vを出力する任意の構成を有していてもよい。例えば、直流電圧出力装置は、直流電圧Vを出力する直流電源装置、一次電池または二次電池であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 直流給電システム
2 整流装置
3 給電路
4 第1蓄電池
5 第2蓄電池
6 第1双方向電力変換装置
7 第2双方向電力変換装置
10 電力変換回路
11 制御回路
12 通電遮断手段
13 自己診断回路
G 交流電力系統
L 外部負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6