(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】航空機用ガスタービンのオイル供給装置
(51)【国際特許分類】
F02C 7/06 20060101AFI20221005BHJP
F01D 25/20 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F02C7/06 D
F02C7/06 E
F01D25/20 B
(21)【出願番号】P 2018166107
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 崇史
(72)【発明者】
【氏名】大▲桑▼ 達也
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-083159(JP,A)
【文献】特開2001-165390(JP,A)
【文献】特開2014-163236(JP,A)
【文献】米国特許第4284174(US,A)
【文献】米国特許第5911678(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/06
F01D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用ガスタービンの被潤滑部材にオイルを供給するオイル供給装置であって、
前記ガスタービンの圧縮機に一端が連通し、前記被潤滑部材に向けられる噴射口が他端に設けられた潤滑用抽気管と、
前記オイルが貯留されるオイルタンクと、
前記オイルタンクに一端が連通し且つ他端が前記潤滑用抽気管に連通したオイル管と、
前記オイル管の途中に介設され、前記オイルタンクから前記オイルを吸引して前記潤滑用抽気管の内部に向けて前記オイルを供給する電動ポンプと、を備える、航空機用ガスタービンのオイル供給装置。
【請求項2】
加圧機構を更に備え、
前記オイルタンクは、前記オイルが貯留される油室を画定し且つ前記油室の容積を変化させるように変位可能な可動体を有し、
前記加圧機構は、前記油室の容積が減少する向きに前記可動体を押圧する、請求項1に記載の航空機用ガスタービンのオイル供給装置。
【請求項3】
前記オイルタンクは、前記油室と前記可動体で区切られた空気室を更に有し、
前記加圧機構は、前記圧縮機に一端が連通し且つ他端が前記空気室に連通したタンク用抽気管を有し、前記可動体に前記空気室側から抽気圧を付与する、請求項2に記載の航空機用ガスタービンのオイル供給装置。
【請求項4】
前記潤滑用抽気管を冷却する熱交換機構を更に備え、
前記熱交換機構は、
外気が通流する外気管と、
前記外気管と前記潤滑用抽気管とを互いに熱交換させる熱交換器と、
前記圧縮機に一端が連通し且つ他端が前記熱交換器より下流側にて前記外気管に連通した外気吸引用抽気管と、を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の航空機用ガスタービンのオイル供給装置。
【請求項5】
前記電動ポンプは、定量ポンプである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の航空機用ガスタービンのオイル供給装置。
【請求項6】
前記被潤滑部材は、前記航空機用ガスタービンの回転軸を回転自在に支持する軸受を含み、
前記潤滑用抽気管に対する前記オイル管の接続箇所は、前記回転軸の軸方向の前記圧縮機よりも下流側において前記ガスタービンのタービンの径方向外側に配置されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の航空機用ガスタービンのオイル供給装置。
【請求項7】
前記電動ポンプは、前記ガスタービンの燃焼器よりも上流側に配置されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の航空機用ガスタービンのオイル供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用ガスタービンのオイル供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの回転軸を支持する軸受は、オイルを継続的に供給して潤滑する必要がある。特許文献1に開示された装置では、軸受に向けられた外気管に対し、オイルタンクに接続された給油管の先端を貫入すると共に、ガスタービンの圧縮機から高圧の空気を抽出する抽気管の先端を貫入するように構成されている。この構成によれば、抽気の圧力効果により、外気が外気管に吸引されると共にオイルが外気管に吸引され、オイルミストが軸受に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、航空機エンジンとしてガスタービンを用いた場合に、飛行状態に応じてガスタービンの回転数が大きく変動し、抽気の圧力が大きく変動することになる。抽気圧力が変動すると、それにより吸引されるオイルの量が増減するため、オイルの供給量が多くなる場合を想定してオイルを多めに搭載する必要が生じ、航空機の余計な重量増加を招くことになる。また、軸受以外の被潤滑部材についても同様のことが言える。
【0005】
そこで本発明は、抽気を用いてオイルミストを被潤滑部材に供給するガスタービンのオイル供給装置において、余計な重量増加を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る航空機用ガスタービンのオイル供給装置は、航空機用ガスタービンの被潤滑部材にオイルを供給するオイル供給装置であって、前記ガスタービンの圧縮機に一端が連通し、前記被潤滑部材に向けられる噴射口が他端に設けられた潤滑用抽気管と、前記オイルが貯留されるオイルタンクと、前記オイルタンクに一端が連通し且つ他端が前記潤滑用抽気管に連通したオイル管と、前記オイル管の途中に介設され、前記オイルタンクから前記オイルを吸引して前記潤滑用抽気管の内部に向けて前記オイルを供給する電動ポンプと、を備える。
【0007】
前記構成によれば、圧縮機に連通した潤滑用抽気管を通流する高圧空気(抽気)には、オイルタンクからのオイルが電動ポンプにより供給され、それにより生成されたオイルミストが被潤滑部材に供給される。この際、抽気に混合されるオイルの量は、飛行状態にかかわらず電動ポンプの動作により決まるので、オイルタンクに貯留しておくオイルを無駄に多くする必要がなくなる。よって、航空機の余計な重量増加を防止できる。また、オイル管の内部が空の状態からガスタービンを始動する場合でも、ガスタービンの稼働を待たずに電動ポンプを駆動してオイル管をオイルで満たすことができる。よって、ガスタービンの始動時に早期に潤滑を開始させることができる。
【0008】
加圧機構を更に備え、前記オイルタンクは、前記オイルが貯留される油室を画定し且つ前記油室の容積を変化させるように変位可能な可動体を有し、前記加圧機構は、前記油室の容積が減少する向きに前記可動体を押圧する構成としてもよい。
【0009】
前記構成によれば、オイルタンクから電動ポンプに向かうオイルが加圧機構により加圧されるため、電動ポンプの吸引の確実性が高まり、高圧のオイルを安定して吐出することができる。即ち、加圧機構のアシストにより電動ポンプが高圧のオイルを吐出し易くなるため、潤滑用抽気管を流れる高圧空気に対し、高能力の電動ポンプでなくてもオイルを合流させることができる。よって、電動ポンプの小型化を図ることができる。
【0010】
前記オイルタンクは、前記油室と前記可動体で区切られた空気室を更に有し、前記加圧機構は、前記圧縮機に一端が連通し且つ他端が前記空気室に連通したタンク用抽気管を有し、前記可動体に前記空気室側から抽気圧を付与する構成としてもよい。
【0011】
前記構成によれば、オイルタンクの可動体を押圧する圧力(抽気圧)と、電動ポンプの吐出口が連通する潤滑用抽気管内の圧力(抽気圧)とが、略同一となるため、電動ポンプの吸引側の圧力と電動ポンプの吐出側の圧力とが、略同一となる。そのため、潤滑用抽気管内が高圧であっても、電動ポンプは低い圧力でオイルを吐出することができる。そして、電動ポンプの動作が抽気圧の変動に影響されなくなるため、電動ポンプは飛行状態にかかわらず安定してオイルを吐出できる。よって、電動ポンプを好適に小型化できる。また、油室と空気室とが可動体により区切られるため、抽気中の異物がオイルに混入することも防止できる。また、オイルタンクの空気室に供給された高温の空気(抽気)の熱が、可動体を介して油室のオイルに伝達されるので、上空飛行中のように周囲温度が低い状態においても、ヒーターを用いずにオイルの粘度を下げて電動ポンプの吐出を円滑にすることができる。よって、ヒーターを非搭載として航空機の重量増加を抑制できると共に、ヒーターによる電力消費を削減できる。また、オイルタンクの油室のオイルが加圧されるため、航空機の姿勢が変化(例えば、旋回や反転等)しても、オイル供給装置を安定動作させることができる。
【0012】
前記潤滑用抽気管を冷却する熱交換機構を更に備え、前記熱交換機構は、外気が通流する外気管と、前記外気管と前記潤滑用抽気管とを互いに熱交換させる熱交換器と、前記圧縮機に一端が連通し且つ他端が前記熱交換器より下流側にて前記外気管に連通した外気吸引用抽気管と、を有する構成としてもよい。
【0013】
前記構成によれば、外気吸引用抽気管が熱交換器の下流側において外気管に連通するため、抽気の圧力効果により外気管に外気を吸引することができ、潤滑用抽気管を通流する高温の抽気を熱交換器において低温の外気で冷却できる。そして、外気は外気管を通流して潤滑用抽気管を通流しないため、不意の圧力変動により抽気が外気側に向かうこともなく、飛行状態にかかわらず潤滑及び冷却を安定的に行うことができる。
【0014】
前記電動ポンプは、定量ポンプである構成としてもよい。
【0015】
前記構成によれば、飛行速度、高度、ガスタービン出力等にかかわらず、定量のオイルを吐出し続けることができる。よって、ガスタービンの動作状態に応じて、被潤滑部材に供給するオイルを必要最低限に抑えることができる。
【0016】
前記被潤滑部材は、前記航空機用ガスタービンの回転軸を回転自在に支持する軸受を含み、前記潤滑用抽気管に対する前記オイル管の接続箇所は、前記回転軸の軸方向の前記圧縮機よりも下流側において前記ガスタービンのタービンの径方向外側に配置されている構成としてもよい。
【0017】
前記構成によれば、潤滑用抽気管に対するオイル管の接続箇所が軸受に近くなるため、潤滑用抽気管において抽気にオイルが混合されてなるオイルミストが通流するミキシングゾーンが短くなる。よって、ガスタービンの始動時においてオイルが軸受に供給されるまでの時間を短縮できる。また、潤滑用抽気管の外部への放熱効果により、当該抽気管を通流する抽気の温度は抽気管の下流側にいくほど下がることになるが、抽気管の下流位置でオイルが抽気に混合されるため、オイルの揮発が低減されることになる。よって、オイルタンクに貯留しておくオイルを無駄に多くする必要がなくなり、航空機の余計な重量増加を防止できる。また、軸受の直近で潤滑用抽気管にオイル管を合流させることで、潤滑用抽気管の噴射口からオイルが確実に噴射され、配管途中でオイルが停留することも防ぐことができる。
【0018】
前記電動ポンプは、前記ガスタービンの燃焼器よりも上流側に配置されている構成としてもよい。
【0019】
前記構成によれば、ガスタービンの外形が、圧縮機の配置された部分よりも燃焼器の配置された部分の方が大径である場合に、電動ポンプがコンパクトに収容され、装置全体の大径化が抑制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、抽気を用いてオイルミストを被潤滑部材に供給するガスタービンのオイル供給装置において、余計な重量増加を防止できると共に、ガスタービンの始動時に早期に潤滑を開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る航空機用ガスタービン及びそのオイル供給装置の概略図である。
【
図3】第1変形例のオイル供給装置の模式図である。
【
図4】第2変形例のオイル供給装置の模式図である。
【
図6】第2実施形態に係る航空機用ガスタービンのオイル供給装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る航空機用ガスタービン1及びそのオイル供給装置10の概略図である。
図1に示すように、ガスタービン1は、外部から導入した空気を圧縮機2で圧縮して燃焼器3に導き、燃焼器3で燃料を圧縮空気とともに燃焼させて得られた高温高圧の燃焼ガスがもつエネルギーをタービン4において回転動力として取り出す。タービン4と圧縮機2とは、互いに回転軸5で連結されており、タービン4が圧縮機2を駆動する。ガスタービンには、様々な形態が存在するが、その種類は特に限定されない。圧縮機2は、軸流圧縮機でも遠心圧縮機でもその両方でもよい。タービン4の段数も任意である。
【0024】
ガスタービン1には、稼働中に潤滑が必要な被潤滑部材が存在する。本実施形態では、燃焼器3の下流側において回転軸5を支持する軸受6を被潤滑部材として例示するが、その他の部材を被潤滑部材としてもよい。オイル供給装置10は、圧縮機2で圧縮された高圧空気を抽出した抽気にオイルを混合し、それをオイルミストとして軸受6に噴き付ける。オイル供給装置10は、潤滑用抽気管11、オイルタンク12、オイル管13、電動ポンプ14及び加圧機構15を備える。
【0025】
潤滑用抽気管11は、一端が圧縮機2に連通し、他端にノズル状の噴射口11aが設けられている。即ち、潤滑用抽気管11は、圧縮機2で圧縮されて燃焼器3に供給される前の高圧空気をガスタービン1の外部に取り出す管である。潤滑用抽気管11の噴射口11aは軸受6に向けられおり、噴射口11aから噴射されるオイルのミストが軸受6を潤滑する。
【0026】
オイルタンク12は、オイルを貯留する。オイルタンク12の具体的構成については
図2を用いて後述する。オイル管13は、オイルタンク12に一端が連通し、他端が潤滑用抽気管11の途中部分に連通している。電動ポンプ14は、オイル管13の途中に介設されている。
【0027】
電動ポンプ14は、オイルタンク12からオイルを吸引して潤滑用抽気管11の内部に向けてオイルを供給する。本実施形態では、電動ポンプ14には、定量ポンプが用いられ、例えば往復ポンプの一種であるプランジャーポンプが用いられる。そうすれば、飛行速度、高度、ガスタービン出力等にかかわらず、定量のオイルを吐出し続けることができ、ガスタービン1の動作状態に応じて軸受6に供給するオイルが必要最低限に抑えられる。
【0028】
加圧機構15は、タンク用抽気管16を有する。タンク用抽気管16の一端は、圧縮機2の軸方向下流側の部分に連通し、タンク用抽気管16の他端は、オイルタンク12に連通している。なお、タンク用抽気管16の一端は、圧縮機2の軸方向下流側の部分に接続されてもよいし、潤滑用抽気管11のうちオイル管13との合流部よりも上流側の部分に接続されてもよい。加圧機構15の具体的構造は、
図2を用いて後述する。
【0029】
圧縮機2に連通した潤滑用抽気管11を通流する高圧空気(抽気)には、オイルタンク12からのオイルが電動ポンプ14によりオイル管13を介して供給され、それにより生成されたオイルミストが軸受6に向けて噴射される。この際、抽気に混合されるオイルの量は、飛行状態にかかわらず電動ポンプ14の動作により決まるので、オイルタンク12に貯留しておくオイルを無駄に多くする必要がなくなる。よって、航空機の余計な重量増加が防止される。また、オイル管13の内部が空の状態からガスタービン1を始動する場合でも、ガスタービン1の稼働を待たずに電動ポンプ14を駆動してオイル管13をオイルで満たすことができる。よって、ガスタービン1の始動時に早期に潤滑を開始させることができる。
【0030】
電動ポンプ14は、機械式ポンプに比べてギヤ等の制約を受けず、配置自由度が高いため、設計要求に応じて配置を決定することができる。本実施形態では、オイルタンク12及び電動ポンプ14は、燃焼器3よりも軸方向上流側において圧縮機2の径方向外側に配置されている。こうすると、ガスタービン1の外形が、圧縮機2の配置された部分よりも燃焼器3の配置された部分の方が大径である場合には、オイルタンク12及び電動ポンプ14がコンパクトに収容され、装置全体の大径化が抑制される。
【0031】
それに対し、潤滑用抽気管11に対するオイル管13の接続箇所Aは、圧縮機2よりも軸方向下流側、より具体的には燃焼器3よりも軸方向下流側においてタービン4の径方向外側に配置されている。本実施形態では、被潤滑部材となる軸受6が、燃焼器3よりも軸方向下流側で且つタービン4よりも軸方向上流側に位置しているため、潤滑用抽気管11に対するオイル管13の接続箇所Aも、燃焼器3よりも軸方向下流側で且つタービン4よりも軸方向上流側に位置している。これにより、潤滑用抽気管11に対するオイル管13の接続箇所A(合流部分)の軸方向位置は、被潤滑対象である軸受6の軸方向位置の近傍に配置される。
【0032】
このようにすれば、潤滑用抽気管11に対するオイル管13の接続箇所Aが軸受6に近くなるため、潤滑用抽気管11において抽気にオイルが混合されてなるオイルミストが通流するミキシングゾーンが短くなる。よって、ガスタービン1の始動時においてオイルが軸受6に供給されるまでの時間が短縮される。また、潤滑用抽気管11の外部への放熱効果により、潤滑用抽気管11を通流する抽気の温度は潤滑用抽気管11の下流側にいくほど下がることになるが、潤滑用抽気管11の下流位置でオイルが抽気に混合されるため、オイルの揮発が低減されることになる。よって、オイルタンク12に貯留しておくオイルを無駄に多くする必要がなくなり、航空機の余計な重量増加を防止できる。また、軸受6の直近で潤滑用抽気管11にオイル管13を合流させることで、潤滑用抽気管11の噴射口11aからオイルが確実に噴射され、配管途中でオイルが停留することも防がれる。なお、オイル供給対象は軸受6に限られず、例えば圧縮機2の上流側(ガスタービン入口側)の軸受にオイルミストを噴射するようにしてもよい。
【0033】
また、電動ポンプ14が燃焼器3よりも上流側(ガスタービン入口側)に配置されているので、電動ポンプ14が燃焼器3よりも下流側に配置される場合に比べ、電動ポンプ14用の電気機器や樹脂部品の冷却要求を緩和でき、冷却又は断熱のためのコスト及び部品の増加を防止できる。また、オイルタンク12及び/又は電動ポンプ14をガスタービン1の外殻の最大外径部よりも内径側に配置すれば、ガスタービン全体をコンパクトに設計することができる。
【0034】
図2は、
図1に示すオイルタンク12の模式図である。
図2に示すように、オイルタンク12は、オイルが貯留される油室S1を画定して且つ油室S1の容積を変化させるように変位可能な可動体17と、可動体17で油室S1と仕切られた空気室S2を画定するケース18とを備える。可動体17は、例えばピストンからなる。可動体17は、熱伝導性を有する。油室S1は、オイル管13に連通している。空気室S2は、タンク用抽気管16に連通している。即ち、タンク用抽気管16、可動体17及びケース18により加圧機構15が構成されている。
【0035】
このような構成により、ガスタービン1からタンク用抽気管16を介して空気室S2に供給された高圧の抽気が、可動体17を油室S1の容積を減少させるように押圧し、油室S1からオイル管13にオイルが圧送される。オイルタンク12から電動ポンプ14に向かうオイルが加圧機構15により加圧されるため、電動ポンプ14の吸引の確実性が高まり、高圧のオイルが安定して吐出される。即ち、加圧機構15のアシストにより電動ポンプ14が高圧のオイルを吐出し易くなるため、潤滑用抽気管11(
図1参照)を流れる高圧空気に対し、電動ポンプ14が高能力のものでなくてもオイル管13から潤滑用抽気管11にオイルを合流させることが可能となり、電動ポンプ14の小型化が図られる。
【0036】
また、
図1及び2に示すように、オイルタンク12の可動体17を押圧する圧力(タンク用抽気管16からの抽気圧)と、電動ポンプ14の吐出口が連通する潤滑用抽気管11内の圧力(潤滑用抽気管11からの抽気圧)とが、略同一となるため、電動ポンプ14の吸引側の圧力と電動ポンプ14の吐出側の圧力とが、略同一となる。そのため、潤滑用抽気管11内が高圧であっても、電動ポンプ14は低い圧力でオイルを吐出できる。また、電動ポンプ14はオイルタンク12からオイルを強く吸引せずに済むため、キャビテーションの発生も防止できる。そして、電動ポンプ14の動作が抽気圧の変動に影響されなくなるため、電動ポンプ14は飛行状態にかかわらず安定してオイルを吐出できる。よって、電動ポンプ14を好適に小型化できる。
【0037】
また、オイルタンク12の油室S1のオイルが抽気により電動ポンプ14に向けて加圧されるため、ガスタービン1を搭載した航空機の姿勢が変化(例えば、旋回や反転等)しても、オイル供給装置10を安定動作させることができる。
【0038】
また、油室S1と空気室S2とが可動体17により区切られるため、抽気中の異物がオイルに混入することも防止できる。また、オイルタンク12の空気室S2に供給された高温の空気(抽気)の熱が、可動体17を介して油室のオイルに伝達されるので、上空飛行中のように周囲温度が低い状態においても、ヒーターを用いずにオイルの粘度を下げて電動ポンプ14の吐出を円滑にすることができる。よって、ヒーターを非搭載として航空機の重量増加を抑制できると共に、ヒーターによる電力消費を削減できる。なお、可動体17の熱伝導率は、空気室S2を画定するケース18の熱伝導率よりも高いものとすると好適である。
【0039】
以下、加圧機構のバリエーションを示す変形例について説明する。
図3は、第1変形例のオイル供給装置110の模式図である。なお、前述した第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図3に示すように、オイル供給装置110では、加圧機構115がコントローラ34により制御される。オイルタンク12の空気室S2には、高圧空気タンク30が開閉弁31を介して接続されている。即ち、可動体17、ケース18、高圧空気タンク30及び開閉弁31により加圧機構115が構成されている。高圧空気タンク30には、タンク用抽気管16(
図1参照)から供給される抽気により高圧空気が供給される構成としてもよいし、他の高圧空気源から高圧空気が供給される構成としてもよい。
【0040】
潤滑用抽気管11には、潤滑用抽気管11内の抽気圧を検出する圧力センサ32が設けられている。圧力センサ32は、例えば、潤滑用抽気管11に対するオイル管13の接続箇所Aの近傍に配置されている。オイルタンク12には、空気室S2の圧力を検出する圧力センサ33が設けられている。コントローラ34は、圧力センサ32,33で検出された抽気圧に応じて加圧機構115の加圧力を制御する。即ち、コントローラ34は、潤滑用抽気管11内の抽気圧が空気室S2の圧力よりも大きくなると開閉弁31を開き、高圧空気タンク30から空気室S2に高圧空気を供給して可動体17を押圧させ、空気室S2の圧力が抽気圧とバランスしたら開閉弁31を閉じる。
【0041】
この構成によっても、加圧機構115により油室S1からオイル管13にオイルが圧送されるため、電動ポンプ14の吸引の確実性が高まり、電動ポンプ14が高能力のものでなくてもオイル管13から潤滑用抽気管11にオイルを円滑に合流させることができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0042】
図4は、第2変形例のオイル供給装置210の模式図である。なお、前述した第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、オイル供給装置210では、オイルタンク212が、ケース18と、ケース18内を油室S1と空気室S2とに仕切り且つ油室S1の容積を変化させるように変位可能な可動体17(ピストン)と、油室S1の容積が減少する向きに可動体17を付勢するバネ40とを備える。即ち、可動体17、ケース18、バネ40により加圧機構215が構成されている。
【0043】
この構成によっても、加圧機構215により油室S1からオイル管13にオイルが圧送されるため、電動ポンプ14の吸引の確実性が高まり、電動ポンプ14が高能力のものでなくてもオイル管13から潤滑用抽気管11にオイルを円滑に合流させることができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0044】
図5は、第3変形例のオイルタンク115の模式図である。なお、前述した第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、オイルタンク312は、オイルが貯留される油室S1を画定して且つ油室S1の容積を変化させるように変位可能な可動体317と、可動体17で油室S1と仕切られた空気室S2を画定するケース318とを備え、可動体317は、例えば柔軟な袋状部材からなる。
【0045】
この構成によっても、タンク用抽気管16を介して空気室S2に供給された高圧の抽気が可動体317を押圧し、油室S1からオイル管13にオイルが圧送されるため、電動ポンプ14の吸引の確実性が高まり、電動ポンプ14が高能力のものでなくてもオイル管13から潤滑用抽気管11にオイルを円滑に合流させることができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0046】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る航空機用ガスタービンのオイル供給装置410の概略図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、オイル供給装置410は、軸受6を潤滑するオイルミストの温度を低下させるために潤滑用抽気管11を冷却する熱交換機構50を備える。熱交換機構50は、外気管51、熱交換器52及び外気吸引用抽気管53を備える。即ち、熱交換機構50は、ため、その低温の外気を利用して高温の抽気を冷却するものである。
【0047】
外気管51は、一端から航空機の外部の空気(外気)が流入し、外気管51内に通流する空気を他端51aからガスタービン1の排気中に流出させる。上空を飛行する航空機の外部の温度は低いため、外気管51には低温空気が通流することになる。熱交換器52は、外気管51と潤滑用抽気管11とを互いに熱交換させ、低温の外気管51により高温の潤滑用抽気管11を冷却する。
【0048】
外気吸引用抽気管53は、圧縮機2に一端が連通し且つ他端53aが熱交換器52より下流側にて外気管51に連通している。外気吸引用抽気管53の他端53aは、ノズル状の噴出口であり、外気管51の内部に配置された状態で外気管51の他端51a(流出口)に向けて開口している。これにより、外気吸引用抽気管53の他端53aから高速で噴出する抽気の圧力効果により、外気管51の一端から他端51aに向けた外気管51内の流れが生成され、外気管51に一端から外気が吸い込まれる。
【0049】
このような構成によれば、抽気の圧力効果により外気管51に外気を吸引することができ、潤滑用抽気管11を通流する高温の抽気を熱交換器52において低温の外気で冷却できる。そして、外気は外気管51を通流して潤滑用抽気管11を通流しないため、不意の圧力変動により抽気が外気側に向かうこともなく、飛行状態にかかわらず潤滑及び冷却を安定的に行える。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【符号の説明】
【0050】
1 ガスタービン
2 圧縮機
6 軸受(被潤滑部材)
10,110,210,310 オイル供給装置
11 潤滑用抽気管
11a 噴射口
12,312 オイルタンク
13 オイル管
14 電動ポンプ
15,115,215 加圧機構
16 タンク用抽気管
17,117 可動体
50 熱交換機構
51 外気管
52 熱交換器
53 外気吸引用抽気管
A 接続箇所
S1 油室
S2 空気室