(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】投影機付き工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 35/40 20060101AFI20221005BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20221005BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20221005BHJP
B24B 17/04 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B23Q35/40
B23Q17/24 D
B23Q17/00 D
B24B17/04 A
(21)【出願番号】P 2018189892
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】504279326
【氏名又は名称】株式会社アマダマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金山 正広
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-197405(JP,A)
【文献】実開昭60-004346(JP,U)
【文献】特開2009-214289(JP,A)
【文献】特開2015-155123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 35/40
B23Q 17/24
B23Q 17/00
B24B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を拡大して投影することが可能な投影機を有する投影機付き工作機械であって、
前記投影機の投影スクリーン上に投影された投影像の一部を拡大する第1拡大手段と、
前記第1拡大手段の拡大領域内における前記投影像の一部を、該第1拡大手段よりも高い倍率で表示する第2拡大手段と
を備え
、
前記第1拡大手段は、前記投影スクリーン上を移動可能に構成されており、
前記第2拡大手段は、前記第1拡大手段と一体として前記投影スクリーン上を移動可能に構成されている
ことを特徴とする投影機付き工作機械。
【請求項2】
前記第1拡大手段は、前記投影スクリーンと対向するよう離間して設けられた光学ルーペを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の投影機付き工作機械。
【請求項3】
前記第2拡大手段は、前記投影像の一部を撮影するカメラを備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の投影機付き工作機械。
【請求項4】
被加工物を拡大して投影することが可能な投影機を有する投影機付き工作機械であって、
前記投影機の投影スクリーン上に投影された投影像の一部を拡大する第1拡大手段と、
前記第1拡大手段の拡大領域内における前記投影像の一部を、該第1拡大手段よりも高い倍率で表示する第2拡大手段と
前記投影スクリーンと前記第1拡大手段との間に設けられたビームスプリッタと
を備え、
前記第2拡大手段は、前記ビームスプリッタを介して前記投影像の一部を撮影可能に構成されている
ことを特徴とする投影機付き工作機械。
【請求項5】
前記第1拡大手段は、前記投影スクリーンと対向するよう離間して設けられた光学ルーペを備え、
前記ビームスプリッタは、前記投影スクリーンと前記光学ルーペとの間に設けら
れている
ことを特徴とする請求
項4に記載の投影機付き工作機械。
【請求項6】
被加工物を拡大して投影することが可能な投影機を有する投影機付き工作機械であって、
前記投影機の投影スクリーン上に投影された投影像の一部を拡大する第1拡大手段と、
前記第1拡大手段の拡大領域内における前記投影像の一部を、該第1拡大手段よりも高い倍率で表示する第2拡大手段と
を備え、
前記第1拡大手段は、前記投影スクリーン上に投影された前記投影像の一部を撮影可能なカメラ機能及び該カメラ機能によって撮影された撮影画像を表示する表示機能を有するタブレット端末であり、
前記第2拡大手段は、前記第1拡大手段から前記撮影画像を取得し、該第1拡大手段において表示された撮影画像よりも高い倍率で該撮影画像の一部を表示可能に構成されている
ことを特徴とす
る投影機付き工作機械。
【請求項7】
前記第2拡大手段は、前記第1拡大手段の拡大領域内における前記投影像の一部を該第1拡大手段よりも高い倍率で表示するディスプレイを備え、前記被加工物の所望形状と該ディスプレイ上の前記投影像とが同時に視認可能となるよう、該所望形状の画像データを該ディスプレイ上に表示可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~6いずれか1項に記載の投影機付き工作機械。
【請求項8】
前記第2拡大手段は、前記ディスプレイ上の前記投影像を移動させることが可能に構成されており、かつ、該投影像の移動に合わせて、前記所望形状の画像データを該ディスプレイ上において移動させることが可能に構成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の投影機付き工作機械。
【請求項9】
前記被加工物の所望形状と前記投影スクリーン上の前記投影像とが同時に視認可能となるよう、前記所望形状が描かれたチャート紙を配置可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~6いずれか1項に記載の投影機付き工作機械。
【請求項10】
被加工物を研削可能な砥石を有する光学式倣い研削盤である
ことを特徴とする請求項1~9いずれか1項に記載の投影機付き工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物(ワーク)を拡大して投影することが可能な投影機を有する投影機付き工作機械、特に、光学式倣い研削盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工物(ワーク)を拡大して投影することが可能な投影機を有する投影機付き工作機械として、光学式倣い研削盤が知られている。従来の光学式倣い研削盤は、ワークの研削すべき形状(所望形状)が描かれたチャート紙を投影スクリーン上に配置すると共に、該投影スクリーンにワーク及び/又は砥石の投影像を投影することが可能に構成されており、これにより、投影スクリーン上の投影像とチャート紙の所望形状とを同時に見ながら、これらの形状が一致するようワークの研削加工を行うことが可能に構成されている(特許文献1等)。
【0003】
また、従来の光学式倣い研削盤では、ワークの所望形状に合わせた加工プログラムに基づいて砥石車及び/又はワークを動作させることにより、自動制御によって研削加工を行うことも可能である(特許文献2等)。このような加工プログラムの作成方法としては、例えば、砥石の投影像とチャート紙の所望形状とを投影スクリーン上に同時に写し、チャート紙の所望形状の輪郭に沿って砥石位置を教示(測定及び登録)することで加工プログラムを作成する、所謂ティーチングプレイバック方式等が知られている。
【0004】
このような従来の光学式倣い研削盤では、研削加工を行う際及び加工プログラムを作成する際のいずれにおいても、投影スクリーン上の投影像を目視で観察することが基本であるため、誤差が大きく、高精度な測定が困難であるという問題がある。そこで、特許文献1の光学式倣い研削盤では、ワークの研削加工部分を撮影して拡大表示する画像処理装置を投影スクリーンとは別に設け、これにより、投影スクリーンによる広い視野と、画像処理装置による精度の高い測定とを両立させるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-197405号公報
【文献】特許第6216656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、金型パーツや工具等の加工製品はますます微細化かつ高精度化しており、これに伴い、光学式倣い研削盤には、ミクロン単位での研削加工やワーク形状測定が要求されている。特許文献1の光学式倣い研削盤によれば、画像処理装置の倍率を高く設定することにより、ミクロン単位でワークの形状を観察することが一応可能である。しかしながら、特許文献1の光学式倣い研削盤において、ミクロン単位で観察できる程度に画像処理装置の倍率を高めると、視野が極端に狭くなり、たとえ投影スクリーン上に全体の投影像が投影されていたとしても、画像処理装置に表示された拡大画像がワーク中のどの部位を観察するものであるのかが分かり難いという問題がある。また、ワークの観察部位を変更するためにワークを微小移動させただけで画像処理装置に表示された拡大画像が大きく変化するため、観察部位を見失いやすく、画像処理装置による観察部位の位置合わせが困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、広い視野を確保しつつ高精度な測定を行うことが可能な投影機付き工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明に係る投影機付き工作機械は、被加工物を拡大して投影することが可能な投影機を有する投影機付き工作機械であって、前記投影機の投影スクリーン上に投影された投影像の一部を拡大する第1拡大手段と、前記第1拡大手段の拡大領域内における前記投影像の一部を、該第1拡大手段よりも高い倍率で表示する第2拡大手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る投影機付き工作機械において、前記第1拡大手段は、前記投影スクリーンと対向するよう離間して設けられた光学ルーペを備えるとしても良い。
【0010】
本発明に係る投影機付き工作機械において、前記第2拡大手段は、前記投影像の一部を撮影するカメラを備えるとしても良い。
【0011】
本発明に係る投影機付き工作機械において、前記第1拡大手段は、前記投影スクリーンと対向するよう離間して設けられた光学ルーペを備え、前記第2拡大手段は、前記投影像の一部を撮影するカメラを備え、前記光学ルーペは、前記投影スクリーン上を移動可能に構成されており、前記カメラは、前記光学ルーペと一体として前記投影スクリーン上を移動可能に構成されることが好ましい。
【0012】
本発明に係る投影機付き工作機械は、前記投影スクリーンと前記光学ルーペとの間に設けられたビームスプリッタを更に備え、前記第2拡大手段は、前記ビームスプリッタを介して前記投影像の一部を撮影可能に構成されても良い。
【0013】
本発明に係る投影機付き工作機械において、前記第1拡大手段は、前記投影スクリーン上に投影された前記投影像の一部を撮影可能なカメラ機能及び該カメラ機能によって撮影された撮影画像を表示する表示機能を有するタブレット端末であり、前記第2拡大手段は、前記第1拡大手段から前記撮影画像を取得し、該第1拡大手段において表示された撮影画像よりも高い倍率で該撮影画像の一部を表示可能に構成されても良い。
【0014】
また、本発明に係る投影機付き工作機械において、前記第2拡大手段は、前記第1拡大手段の拡大領域内における前記投影像の一部を該第1拡大手段よりも高い倍率で表示するディスプレイを備え、前記被加工物の所望形状と該ディスプレイ上の前記投影像とが同時に視認可能となるよう、該所望形状の画像データを該ディスプレイ上に表示可能に構成されても良い。
【0015】
この場合において、前記第2拡大手段は、前記ディスプレイ上の前記投影像を移動させることが可能に構成されており、かつ、該投影像の移動に合わせて、前記所望形状の画像データを該ディスプレイ上において移動させることが可能に構成されることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る投影機付き工作機械は、前記被加工物の所望形状と前記投影スクリーン上の前記投影像とが同時に視認可能となるよう、前記所望形状が描かれたチャート紙を配置可能に構成されても良い。
【0017】
本発明に係る投影機付き工作機械は、被加工物を研削可能な砥石を有する光学式倣い研削盤であっても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、広い視野を確保しつつ高精度な測定を行うことが可能な投影機付き工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学式倣い研削盤の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】本実施形態に係る光学式倣い研削盤の光学的構成を概略的に示す図である。
【
図5】
図5(a)は、投影スクリーン上に投影された投影像を示す図であり、
図5(b)は、光学ルーペにより拡大された投影像を示す図であり、
図5(c)は、撮影表示手段により表示された画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る投影機付き工作機械の全体構成について、
図1を用いて説明する。なお、以下の説明では、本実施形態に係る投影機付き工作機械が光学式倣い研削盤であるものとして説明するが、これに限定されるものではなく、投影機付きの工作機械であれば他の工作機械であっても良い。また、以下の説明において、「X軸方向」は、
図1の紙面に対する垂直方向を意味し、「Z軸方向」は、
図1における上下方向を意味し、「Y軸方向」は、
図1における左右方向を意味する。
【0022】
本実施形態に係る光学式倣い研削盤1は、
図1に示すように、被加工物となるワークWを保持するワーク保持機構10と、該ワーク保持機構10上のワークWを研削するための砥石22を保持する砥石保持機構20と、ワークWを拡大して投影することが可能な投影機30と、投影機30の投影スクリーン31上に投影された投影像の一部を拡大する光学ルーペ40(第1拡大手段)と、光学ルーペ40の拡大領域内における投影像の一部を、該光学ルーペ40よりも高い倍率で表示する撮影表示手段50(第2拡大手段)と、研削加工に関する各種情報を入力及び登録可能かつ所定の加工プログラムに基づいて光学式倣い研削盤1を自動制御な操作制御盤60とを備えている。なお、本実施形態に係る操作制御盤60は、種々の公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0023】
ワーク保持機構10は、
図1に示すように、ワークWが載置されるワークテーブル12と、作業者の操作又は加工プログラムに基づく自動制御によって該ワークテーブル12をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向にそれぞれに移動させるX軸方向移動機構14、Y軸方向移動機構16及びZ軸方向移動機構18とを備えている。これらX軸方向移動機構14、Y軸方向移動機構16及びZ軸方向移動機構18は、それぞれ作業者によって操作される操作ハンドル(図示せず)を備えており、該操作ハンドルを介した作業者の操作によって、ワークWをX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に沿って移動させるよう構成されている。なお、本実施形態に係るワーク保持機構10は、例えば特許文献1等に開示された公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0024】
砥石保持機構20は、
図1に示すように、砥石22が回転可能に支持される砥石ヘッド24と、作業者の操作又は加工プログラムに基づく自動制御によって該砥石ヘッド24をX軸方向及びY軸方向にそれぞれに移動させるX軸方向移動機構25及びY軸方向移動機構26とを備えている。砥石ヘッド24は、砥石22をZ軸方向に沿って移動可能に支持しており、砥石22のZ軸方向移動機構としても機能するよう構成されている。X軸方向移動機構25は、作業者によって操作されるX軸ハンドル27を備えており、該X軸ハンドル27を介した作業者の操作によって、砥石22をX軸方向に沿って移動させるよう構成されている。また、Y軸方向移動機構26は、作業者によって操作されるY軸ハンドル28を備えており、該Y軸ハンドル28を介した作業者の操作によって、砥石22をY軸方向に沿って移動させるよう構成されている。なお、本実施形態に係る砥石保持機構20は、例えば特許文献1等に開示された公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0025】
本実施形態に係る光学式倣い研削盤1は、以上の構成により、手動又は加工プログラムに基づく自動制御によって、ワークテーブル12に載置されたワークWのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置決めを行うことが可能に構成されている。また、光学式倣い研削盤1は、手動又は加工プログラムに基づく自動制御によって、所定の回転数で回転させた砥石22をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させながらワークWに当接させることで、ワークWに対する研削加工を行うことが可能に構成されている。
【0026】
投影機30は、
図2に示すように、LED等の光源32から発光された光線BMが、レンズ群33、防塵ガラス34aを通過してワークW及び砥石22を照射し、その陰影を防塵ガラス34b、ハーフミラー35、反射鏡36a、拡大レンズ37及び反射鏡36bを介して、投影スクリーン31に投影するよう構成されている。拡大レンズ37は、投影像の倍率を任意に変更可能に構成されており、例えば、倍率の異なる複数の拡大レンズの中から任意の拡大レンズを選択可能に構成されている。本実施形態に係る投影機30は、例えば、ワークW及び砥石22を20倍~50倍程度の倍率で拡大して投影スクリーン31上に投影可能に構成されている。また、投影機30は、反射像用光源ランプ38からの光線BM´をハーフミラー35によって反射させてワークW及び砥石22を上方から照らし、ワークW及び砥石22の上方からの映像も併せて投影スクリーン31に写し出すことが可能に構成されている。なお、本実施形態に係る投影機30は、
図2に示す構成に限定されず、種々の公知の投影機を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0027】
投影機30は、反射鏡36bによって反射された陰影を投影可能な投影スクリーン31を有している。本実施形態において、投影機30は、投影スクリーン31を着脱可能な態様で配置可能に構成されており、該投影スクリーン31は、ワークWの研削すべき形状(以下、「所望形状」という)が描かれたチャート紙である。これにより、本実施形態に係る投影機30は、
図5(a)に示すように、ワークWの所望形状2と該投影スクリーン31上の投影像とが同時に視認可能となるよう構成されている。
【0028】
本実施形態に係る投影機30は、以上の構成により、
図5(a)に示すように、投影スクリーン31上の投影像4とチャート紙の所望形状2とを同時に見ながら、これらの形状が一致するようワークWの研削加工を行うことが可能に構成されている。また、本実施形態に係る投影機30は、ティーチングプレイバック方式による加工プログラムの作成においても、砥石22の投影像とチャート紙の所望形状2とを投影スクリーン31上に同時に写し、チャート紙の所望形状の輪郭に沿って砥石位置を教示(測定及び登録)することが可能に構成されている。なお、当該ティーチングプレイバック方式による加工プログラムの作成は、ワークWを除去した状態で行われる。
【0029】
光学ルーペ40は、
図3に示すように、投影スクリーン31と対向するよう離間して設けられ、該投影スクリーン31上に投影された投影像の一部を拡大することが可能なルーペ本体41と、ルーペ本体41を投影スクリーン31の平面上において移動可能に支持するルーペ移動機構43とを備えている。
【0030】
ルーペ移動機構43は、
図3に示すように、投影スクリーン31の上端縁に沿って設けられた上部ガイドレール44aと、該上部ガイドレール44aに沿って摺動可能に構成された上部スライダ45aと、投影スクリーン31の下端縁に沿って設けられた下部ガイドレール44bと、該下部ガイドレール44bに沿って摺動可能に構成された下部スライダ45bと、上部スライダ45a及び下部スライダ45b間に架け渡された一対のガイドバー46a,46bとを備えている。ルーペ移動機構43は、上部ガイドレール44a及び下部ガイドレール44bに対する上部スライダ45a及び下部スライダ45bの移動をロックすることでルーペ本体41のY軸方向(左右方向)の移動を規制することが可能なロック機構(図示せず)を更に備えても良い。
【0031】
ルーペ本体41は、
図3に示すように、一対のガイドバー46a,46b間に支持されており、該一対のガイドバー46a,46bに沿って上下方向に摺動可能に構成されている。ルーペ本体41の一方の側部には、一方のガイドバー46aに対するクランプ状態と非クランプ状態とを切り替え可能なクランプ機構42が設けられている。クランプ機構42は、非クランプ状態においてルーペ本体41のZ軸方向の移動(すなわち、一対のガイドバー46a,46bに沿った摺動)を許容し、クランプ状態においてルーペ本体41のZ軸方向の移動を規制して位置決めするよう構成されている。なお、ルーペ本体41としては、特に限定されるものではないが、例えば2倍~4倍程度の倍率(ワークW及び砥石22の実物に対して40倍~200倍程度)を有するルーペを採用することが可能である。
【0032】
光学ルーペ40は、以上の構成により、ルーペ本体41のクランプ機構42を非クランプ状態とすることでルーペ本体41をZ軸方向(上下方向)に移動させることが可能であると共に、上部スライダ45a及び下部スライダ45bを上部ガイドレール44a及び下部ガイドレール44bに沿って摺動させることでルーペ本体41をY軸方向(左右方向)に移動させることが可能である。また、任意の位置においてルーペ本体41のクランプ機構42をクランプ状態とすることにより、投影スクリーン31上におけるルーペ本体41の位置を固定(位置決め)することが可能である。
【0033】
撮影表示手段50は、
図1及び
図2に示すように、後述するビームスプリッタ59を介して投影像の一部を撮影するカメラ52と、該カメラ52によって撮影された撮影画像を表示するディスプレイ54とを備えている。また、撮影表示手段50は、
図4に示すように、カメラ52によって撮影された撮影画像をディスプレイ54に表示可能となるよう画像処理する画像処理部56と、撮影表示手段50を動作させるための各種情報及びプログラムが格納された記憶部58とを備えている。画像処理部56は、例えば、ビームスプリッタ59における反射によって反転した投影像を元の向きに直すために反転させる処理や、作業者の操作によってディスプレイ54上の画像を拡大又は縮小する処理等を実行可能に構成されている。このような撮影表示手段50としては、カメラ52が接続されたパーソナルコンピュータ等を用いることが可能である。
【0034】
カメラ52は、
図3に示すように、光学ルーペ40のルーペ本体41に固定されており、該ルーペ本体41と一体として投影スクリーン31上を移動可能に構成されている。撮影表示手段50は、光学ルーペ40よりも高い倍率、例えばワークW及び砥石22の実物に対して300~700倍程度の倍率で撮影画像を表示するよう構成されている。このような構成としては、例えば、カメラ52によって撮影した撮影画像を画像処理部56における画像処理によって拡大して表示する構成が例示される。また、当該構成に代えて又は当該構成と併せて、ビームスプリッタ59とカメラ52との間に光学ルーペ40よりも高倍率の拡大レンズを設け、該拡大レンズにより拡大された投影像をカメラ52によって撮影する構成を採用することも可能である。
【0035】
本実施形態に係る光学式倣い研削盤1は、
図2に示すように、投影スクリーン31と光学ルーペ40及び撮影表示手段50のカメラ52との間に設けられたビームスプリッタ59を更に備えている。ビームスプリッタ59は、該ビームスプリッタ59を介して光学ルーペ40から投影スクリーン31上の投影像を透視することが可能で、かつ、投影スクリーン31上の投影像を撮影表示手段50のカメラ52に向けて反射させることが可能に構成されている。このようなビームスプリッタ59としては、例えばハーフミラーを採用することが可能である。なお、図示の例では、投影スクリーン31と対向するよう光学ルーペ40を配置し、該対向方向と直交する方向に向けてカメラ52を配置しているが、これに限定されず、種々の配置とすることが可能であり、また、当該配置に応じて反射手段等の適宜の構成要素を追加することも可能である。
【0036】
本実施形態に係る光学式倣い研削盤1は、このようなビームスプリッタ59を備えることにより、光学ルーペ40と撮影表示手段50とで同一の領域を異なる倍率で同時観察することが可能に構成されている。すなわち、本実施形態に係る撮影表示手段50は、光学ルーペ40の拡大領域内における投影像の一部を、該光学ルーペ40よりも高い倍率で表示するよう構成されている。
【0037】
以上説明したとおり、本実施形態に係る光学式倣い研削盤1は、投影機30の投影スクリーン31上に投影された投影像の一部を拡大する光学ルーペ40と、投影スクリーン31上に投影された投影像の一部を撮影して表示する撮影表示手段50とを備え、該撮影表示手段50が、光学ルーペ40の拡大領域内における投影像の一部を、光学ルーペ40よりも高い倍率で表示するよう構成されている。
【0038】
そして、本実施形態に係る光学式倣い研削盤1は、このような構成を備えることにより、投影機30による低倍率の拡大と、光学ルーペ40による中倍率の拡大と、撮影表示手段50による高倍率の拡大とを組み合わせ、これら各拡大像を同時に視認した状態でワークWの研削加工やティーチングプレイバック方式による加工プログラムの作成を行うことが可能となる。このような光学式倣い研削盤1によれば、例えば、
図5(a)に示すように、ワークW及び/又は砥石22を低倍率で拡大した投影像4の全体を投影スクリーン31によって把握しつつ、
図5(b)に示すように、その投影像4の中で観察部位としたい領域を光学ルーペ40によって中倍率で拡大して選定し、
図5(c)に示すように、該選定した領域を撮影表示手段50によって高倍率で更に拡大表示してワーク細部の形状寸法測定を行うことが可能となるため、従来の光学式倣い研削盤と比較して、広い視野を確保しつつ高精度な測定を行うことが可能となると共に、利便性が飛躍的に向上するという利点を有している。
【0039】
また、本実施形態に係る光学式倣い研削盤1は、投影スクリーン31と光学ルーペ40及び撮影表示手段50との間にビームスプリッタ59が設けられることによって、より確実に、ワークW上の同一部位を光学ルーペ40及び撮影表示手段50によって同時観察することが可能となる。
【0040】
さらに、本実施形態に係る光学式倣い研削盤1は、撮影表示手段50のディスプレイ54に高倍率で拡大した撮影画像を表示するよう構成されており、例えば光学ルーペ40のような覗き込む向きよって見え方が異なるといった不都合が生じないため、熟練者でなくても安定した測定が可能となる。
【0041】
また、本実施形態に係る光学式倣い研削盤1は、光学ルーペ40及びカメラ52が一体となって投影スクリーン31上を移動可能であるため、より確実に、投影スクリーン31上の投影像の同一部位を光学ルーペ40及び撮影表示手段50によって同時観察することが可能となる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る光学式倣い研削盤1は、チャート紙を投影スクリーン31上に配置可能に構成されているため、チャート紙に作画された所望形状2とワークWの投影像4とを同時に高倍率で観察することが可能となり、これにより、熟練者でなくても簡単にワーク形状寸法を判断することが可能となる。
【0043】
[第2実施形態]
上述した第1実施形態では、ワークWの所望形状2が描かれたチャート紙を投影スクリーン31として利用し、該チャート紙の所望形状2を投影像4と共に撮影表示手段50によって撮影して表示するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、以下で説明する第2実施形態に係る光学式倣い研削盤のように、チャート紙を用いずに、撮影表示手段50における画像処理によってディスプレイ54上にワークWの所望形状2を描画する構成を採用することも可能である。
【0044】
すなわち、本発明の第2実施形態に係る光学式倣い研削盤は、ワークWの所望形状2の画像データ(例えば、線画データ)を撮影表示手段50の記憶部58に予め格納しておき、画像処理部56によって、カメラ52により撮影された撮影画像と、記憶部58に格納されたワークWの所望形状2の画像データとを重ねてディスプレイ54上に表示することで、これら両データが同時に視認可能となるよう構成されている。以下、記憶部58に格納されたワークWの所望形状2の画像データが「線画データ」であるものとして説明する。
【0045】
具体的には、画像処理部56は、上述した第1実施形態に係る画像処理部56の処理に加え、さらに、作業者によって指定された基準点(例えば、ワークWの角)を基準として、カメラ52によって撮影された撮影画像とワークWの所望形状2の線画データとの位置を一致させた上で、これら両データを重ね合わせてディスプレイ54上に表示する処理を実行可能に構成されている。また、画像処理部56は、作業者の操作による撮影画像の拡大又は縮小と同時又はこれに追従して、同一倍率でワークWの所望形状2の線画データを拡大又は縮小する処理を実行可能に構成されている。
【0046】
また、画像処理部56は、撮影画像及び線画データを拡大した状態において、作業者の操作によってディスプレイ54上の撮影画像を移動させる処理を実行可能に構成されており、かつ、該撮影画像の移動と同時又はこれに追従して、線画データも同期して移動させる処理を実行可能に構成されている。なお、当該撮影画像及び線画データの同期移動処理は、ワーク保持機構10によってワークWが移動され、これによってディスプレイ54上の撮影画像が移動した場合も同様に実行されるよう構成されている。この場合においては、ワーク保持機構10からワークWの座標位置を取得してワークWの移動量を算出し、該移動量を所定の設定倍率に基づいてディスプレイ54上の移動量に変換し、該変換移動量に基づいて線画データを移動させることで、線画データを撮影画像と同期して移動させることが可能となる。
【0047】
以上説明した第2実施形態に係る光学式倣い研削盤においても、第1実施形態に係る光学式倣い研削盤1と同様に、従来の光学式倣い研削盤と比較して、広い視野を確保しつつ高精度な測定を行うことが可能となると共に、利便性が飛躍的に向上するという利点を有している。
【0048】
また、第2実施形態に係る光学式倣い研削盤は、ワークWの所望形状2の画像データをディスプレイ54上に表示可能に構成されているため、所望形状とワークWの投影像4とを同時に高倍率で観察することが可能となり、これにより、チャート紙を用いることなく、熟練者でなくても簡単にワーク形状寸法を判断することが可能となる。
【0049】
特に、第2実施形態に係る光学式倣い研削盤は、ディスプレイ54上に表示させた画像データが投影像4の移動に合わせて移動可能に構成されているため、例えば撮影表示手段50のディスプレイ54の表示範囲に納まらないワークW全体を画像データと共に観察することが可能となる。
【0050】
なお、第2実施形態に係る光学式倣い研削盤においては、投影スクリーン31としてチャート紙を用いる必要がないため、ワークWの所望形状2が描かれていないスクリーンを投影機30に一体的に設ける構成とすることも可能である。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0052】
[他の実施形態]
例えば、上述した第1及び第2実施形態では、光学式倣い研削盤1であるものとして説明するが、これに限定されるものではなく、投影機付きの工作機械であれば種々の工作機械に用いることが可能である。
【0053】
上述した第1及び第2実施形態では、投影スクリーン31と光学ルーペ40及び撮影表示手段50との間にビームスプリッタ59が設けられるものとして説明したが、これに限定されず、光学ルーペ40により拡大された投影像の一部を撮影表示手段50によって更に拡大して表示可能な構成であれば、種々の構成を採用することが可能である。
【0054】
上述した第1及び第2実施形態では、光学ルーペ40及びカメラ52が一体となって投影スクリーン31上を移動可能であるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光学ルーペ40及びカメラ52の少なくとも一方が投影スクリーン31上に固定される構成としても良いし、光学ルーペ40及びカメラ52が各々独立して移動可能な構成としても良い。
【0055】
上述した第2実施形態では、ディスプレイ54上に表示させた画像データが投影像の移動に合わせて移動可能であるものとして説明したが、これに限定されず、画像データは移動不能であっても良いし、投影像の移動と同期せずに独立して移動する構成としても良い。
【0056】
上述した第1及び第2実施形態では、投影スクリーン31とは別に設けられたディスプレイ54上に撮影画像を表示するものとして説明したが、これに限定されず、ディスプレイ54が投影スクリーン31と一体的に設けられる構成としても良いし、投影スクリーン31の一部(例えば余白部分等)に撮影画像を表示する構成としても良い。
【0057】
上述した第1及び第2実施形態では、撮影表示手段50が、カメラ52とディスプレイ54とが別体として設けられる構成であるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、これらカメラ及びディスプレイを一体として有するタブレット端末(例えば、スマートフォン等)であるとしても良い。
【0058】
撮影表示手段50としてタブレット端末を用いる場合には、一例として、タブレット端末のディスプレイがルーペ本体41の覗き孔と上下方向又は左右方向に並べて配置されるよう、タブレット端末とルーペ本体41とが一体的に設けられる構成とすることができる。この場合には、投影スクリーン31とルーペ本体41との間にビームスプリッタ59を設けると共に、該ビームスプリッタ59とタブレット端末のカメラとの間に適宜の反射鏡を設け、これらビームスプリッタ59及び反射鏡を介して、タブレット端末のカメラによって投影スクリーン31上の投影像を撮影する構成とすることができる。
【0059】
また、撮影表示手段50としてタブレット端末を用いる場合の他の例として、ルーペ本体41の覗き孔をタブレット端末のカメラによって直接撮影し、その撮影画像を拡大してタブレット端末のディスプレイ上に表示させる構成とすることができる。この場合において、タブレット端末は、ルーペ本体41と前後方向に重なる撮影位置と、該ルーペ本体41に対して前後方向に重ならないよう位置をずらし、ルーペ本体41の覗き孔を視認可能とする退避位置との間において移動可能に設けられることが好ましい。このような構成によれば、タブレット端末を撮影位置に位置させることで、タブレット端末のディスプレイ上に高倍率の投影像を表示させることが可能となり、また、タブレット端末を退避位置に位置させることで、ルーペ本体41を介して中倍率の投影像を視認することが可能となる。
【0060】
上述した第1及び第2実施形態では、投影スクリーン31上の投影像を中倍率で表示する第1拡大手段として光学ルーペ40を採用し、投影スクリーン31上の投影像を高倍率で表示する第2拡大手段として撮影表示手段50を採用する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1拡大手段としては、投影スクリーン31上に投影された投影像の一部を撮影可能なカメラ機能と、該カメラ機能によって撮影された撮影画像を表示する表示機能とを有するタブレット端末(例えば、スマートフォン等)を採用することも可能である。このようにタブレット端末を採用した場合においても、第1及び第2実施形態において説明したルーペ本体41と同様に、該タブレット端末を適宜の移動機構によって支持する構成とすることができる。このように第1拡大手段としてタブレット端末を用いる場合には、一例として、該タブレット端末から撮影画像を取得し、該タブレット端末よりも高い倍率で該撮影画像の一部を表示するパーソナルコンピュータ等を第2拡大手段として適宜採用することが可能である。
【0061】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0062】
1 光学式倣い研削盤(投影機付き工作機械)、2 所望形状、4 投影像、30 投影機、31 投影スクリーン、40 光学ルーペ(第1拡大手段)、50 撮影表示手段(第2拡大手段)、52 カメラ、54 ディスプレイ、59 ビームスプリッタ、W ワーク