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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221005BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20221005BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/68 N
H01L21/302 101G
H05B3/74
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018189906
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020061401
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 要
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228649(JP,A)
【文献】特表2001-502116(JP,A)
【文献】特開2007-266342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H05B 3/74
H05B 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略直交する第1の表面を有するセラミックス部材と、
前記セラミックス部材の内部に配置されたチャック電極と、
前記セラミックス部材の内部における、前記第1の方向において前記チャック電極より前記第1の表面から離間した位置に配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータ電極と、
前記セラミックス部材の内部における、前記第1の方向において前記チャック電極より前記第1の表面から離間した位置に配置され、前記ヒータ電極に電気的に接続されたドライバ電極と、
を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記セラミックス部材の内部には、
前記第1の表面に開口するガス噴出流路と、
前記ガス噴出流路に連通し、前記第1の方向に直交する方向に延びるガス分配流路と、
が形成されており、
前記第1の方向に直交する第2の方向視で、前記ガス分配流路の少なくとも一部分は、前記ヒータ電極と前記ドライバ電極との少なくとも一方と重なっている、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記第2の方向視で、前記ガス分配流路の少なくとも一部分は、前記ヒータ電極と前記ドライバ電極との両方と重なっている、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
第1の方向に略直交する第1の表面を有するセラミックス部材と、
前記セラミックス部材の内部に配置されたチャック電極と、
前記セラミックス部材の内部における、前記第1の方向において前記チャック電極より前記第1の表面から離間した位置に配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータ電極と、
を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記セラミックス部材の内部には、
前記第1の表面に開口するガス噴出流路と、
前記ガス噴出流路に連通し、前記第1の方向に直交する方向に延びるガス分配流路と、
が形成されており、
前記第1の方向に直交する第2の方向視で、前記ガス分配流路の少なくとも一部分は、前記ヒータ電極と重なっている、
ことを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体を製造する際にウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に略直交する表面(以下、「吸着面」という。)を有するセラミックス部材と、セラミックス部材の内部に配置されたチャック電極とを備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、セラミックス部材の吸着面にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、静電チャックの使用時には、例えば、セラミックス部材の内部に配置されたヒータ電極による加熱によって、セラミックス部材の吸着面の温度分布の制御(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御)が行われる。なお、セラミックス部材の内部において、ヒータ電極は、上記第1の方向においてチャック電極より吸着面から離間した位置に配置される。また、セラミックス部材の内部に、ヒータ電極に電気的に接続されたドライバ電極が設けられることがあるが、そのような構成では、ドライバ電極も、上記第1の方向においてチャック電極より吸着面から離間した位置に配置される。
【0004】
また、セラミックス部材とウェハとの間の伝熱性を高めてウェハの温度分布の制御性をさらに高めるため、セラミックス部材の吸着面とウェハの表面との間の空間にヘリウムガス等の不活性ガスを供給する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、セラミックス部材の内部に、吸着面に開口するガス噴出流路と、ガス噴出流路に連通し、かつ、上記第1の方向に略直交する方向(以下、「面方向」という。)に延びるガス分配流路とが形成される。ガス源から供給された不活性ガスは、ガス分配流路を介して面方向に分配されつつガス噴出流路内に流入し、ガス噴出流路の吸着面への開口であるガス噴出孔から噴出する。このようにして、セラミックス部材の吸着面とウェハの表面との間に存在する空間に不活性ガスが供給され、セラミックス部材とウェハとの間の伝熱性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-157726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の静電チャックの構成では、セラミックス部材の内部において、ガス分配流路の上記第1の方向における位置は、チャック電極とヒータ電極との間の位置(すなわち、チャック電極よりは吸着面から離間し、かつ、ヒータ電極よりは吸着面に近い位置)である。また、セラミックス部材の内部にドライバ電極が設けられた従来の静電チャックの構成では、セラミックス部材の内部において、ガス分配流路の上記第1の方向における位置は、チャック電極とヒータ電極およびドライバ電極との間の位置(すなわち、チャック電極よりは吸着面から離間し、かつ、ヒータ電極およびドライバ電極よりは吸着面に近い位置)である。そのため、従来の静電チャックの構成では、セラミックス部材の第1の方向における大きさ(厚さ)が大きくなり、装置の小型化や使用材料の低減等の点で向上の余地がある。
【0007】
なお、このような課題は、セラミックス部材の表面上にウェハを保持する静電チャックに限らず、セラミックス部材の表面上に対象物を保持する保持装置一般に共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略直交する第1の表面を有するセラミックス部材と、前記セラミックス部材の内部に配置されたチャック電極と、前記セラミックス部材の内部における、前記第1の方向において前記チャック電極より前記第1の表面から離間した位置に配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータ電極と、前記セラミックス部材の内部における、前記第1の方向において前記チャック電極より前記第1の表面から離間した位置に配置され、前記ヒータ電極に電気的に接続されたドライバ電極と、を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、前記セラミックス部材の内部には、前記第1の表面に開口するガス噴出流路と、前記ガス噴出流路に連通し、前記第1の方向に直交する方向に延びるガス分配流路と、が形成されており、前記第1の方向に直交する第2の方向視で、前記ガス分配流路の少なくとも一部分は、前記ヒータ電極と前記ドライバ電極との少なくとも一方と重なっている。本保持装置では、第1の方向に直交する第2の方向視で、ガス分配流路の少なくとも一部分は、ヒータ電極とドライバ電極との少なくとも一方と重なっている。すなわち、第1の方向における位置に関し、ガス分配流路は、ヒータ電極とドライバ電極との少なくとも一方と同位置にある部分を有する。そのため、本保持装置によれば、上記第2の方向視でガス分配流路がヒータ電極にもドライバ電極にも重ならない構成と比較して、セラミックス部材の第1の方向における大きさ(厚さ)を小さくすることができ、装置の小型化や使用材料の低減を実現することができる。
【0011】
(2)上記保持装置において、前記第2の方向視で、前記ガス分配流路の少なくとも一部分は、前記ヒータ電極と前記ドライバ電極との両方と重なっている構成としてもよい。本保持装置によれば、第1の方向に直交する第2の方向視で、ガス分配流路の少なくとも一部分は、ヒータ電極とドライバ電極との両方と重なっている。すなわち、第1の方向における位置に関し、ガス分配流路は、ヒータ電極と同位置にある部分とドライバ電極と同位置にある部分とを有する。そのため、本保持装置によれば、上記第2の方向視でガス分配流路がヒータ電極にもドライバ電極にも重ならない構成と比較して、セラミックス部材の第1の方向における大きさ(厚さ)を効果的に小さくすることができ、装置の小型化や使用材料の低減を効果的に実現することができる。
【0012】
(3)本明細書に開示される他の保持装置は、第1の方向に略直交する第1の表面を有するセラミックス部材と、前記セラミックス部材の内部に配置されたチャック電極と、前記セラミックス部材の内部における、前記第1の方向において前記チャック電極より前記第1の表面から離間した位置に配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータ電極と、を備え、前記セラミックス部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、前記セラミックス部材の内部には、前記第1の表面に開口するガス噴出流路と、前記ガス噴出流路に連通し、前記第1の方向に直交する方向に延びるガス分配流路と、が形成されており、前記第1の方向に直交する第2の方向視で、前記ガス分配流路の少なくとも一部分は、前記ヒータ電極と重なっている。本保持装置では、第1の方向に直交する第2の方向視で、ガス分配流路の少なくとも一部分は、ヒータ電極と重なっている。すなわち、第1の方向における位置に関し、ガス分配流路は、ヒータ電極と同位置にある部分を有する。そのため、本保持装置によれば、上記第2の方向視でガス分配流路がヒータ電極に重ならない構成と比較して、セラミックス部材の第1の方向における大きさ(厚さ)を小さくすることができ、装置の小型化や使用材料の低減を実現することができる。
【0013】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置、静電チャック、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における静電チャック10の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】実施形態における静電チャック10のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.実施形態:
A-1.静電チャック10の構成:
図1は、本実施形態における静電チャック10の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における静電チャック10のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック10は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」という。
【0016】
静電チャック10は、ウェハWおよびフォーカスリングFRを静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内で使用される。静電チャック10は、主としてウェハWを保持する中央静電チャック部100と、主としてフォーカスリングFRを保持する外周静電チャック部200とを備える。なお、中央静電チャック部100および外周静電チャック部200は、共通の支持部材(不図示)上に設置されている。静電チャック10、中央静電チャック部100および/または外周静電チャック部200は、特許請求の範囲における保持装置に相当し、ウェハWおよび/またはフォーカスリングFRは、特許請求の範囲における対象物に相当する。
【0017】
A-2.中央静電チャック部100の構成:
A-2-1.中央静電チャック部100の基本構成:
中央静電チャック部100は、Z軸方向視で略円形の部材である。中央静電チャック部100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された中央セラミックス部材110および中央ベース部材120を備える。中央セラミックス部材110と中央ベース部材120とは、中央セラミックス部材110の下面S12と中央ベース部材120の上面S13とが、後述する中央接合部130を挟んで上記配列方向に対向するように配置される。すなわち、中央ベース部材120は、中央ベース部材120の上面S13が中央セラミックス部材110の下面S12側に位置するように配置される。
【0018】
中央セラミックス部材110は、Z軸方向視で略円形の板状部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。なお、本実施形態では、中央セラミックス部材110は、外周に沿って上側に切り欠きが形成されており、上面(以下、「中央吸着面」という。)S11の直径が下面S12の直径よりわずかに小さくなっている。中央セラミックス部材110の中央吸着面S11の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、中央セラミックス部材110の厚さは例えば1mm~10mm程度である。中央セラミックス部材110は、特許請求の範囲におけるセラミックス部材に相当する。
【0019】
中央セラミックス部材110の中央吸着面S11は、Z軸方向に略直交する略円形の表面である。中央吸着面S11は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0020】
図2に示すように、中央セラミックス部材110の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成された中央チャック電極140が配置されている。Z軸方向視での中央チャック電極140の形状は、例えば略円形である。中央チャック電極140にチャック用電源(不図示)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが中央セラミックス部材110の中央吸着面S11に吸着固定される。中央チャック電極140は、特許請求の範囲におけるチャック電極に相当する。
【0021】
中央セラミックス部材110の内部には、また、それぞれ導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成された、複数の中央ヒータ電極150と、各中央ヒータ電極150への給電のための複数の中央ドライバ電極151および各種ビア154,155とが配置されている。本実施形態では、複数の中央ヒータ電極150のそれぞれのZ軸方向における位置は、互いに略同一であり、かつ、中央チャック電極140より中央吸着面S11から離間した位置(すなわち、中央チャック電極140より下側)の位置である。また、本実施形態では、複数の中央ドライバ電極151のそれぞれのZ軸方向における位置は、互いに略同一であり、かつ、中央チャック電極140より中央吸着面S11から離間した位置(すなわち、中央チャック電極140より下側)の位置である。なお、本実施形態では、複数の中央ドライバ電極151のZ軸方向における位置は、複数の中央ヒータ電極150より中央吸着面S11から離間した位置(すなわち、中央ヒータ電極150より下側)の位置である。これらの構成については、後に詳述する。中央ヒータ電極150は、特許請求の範囲におけるヒータ電極に相当し、中央ドライバ電極151は、特許請求の範囲におけるドライバ電極に相当する。
【0022】
中央ベース部材120は、例えば中央セラミックス部材110と同径の、または、中央セラミックス部材110より径が大きい略円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。中央ベース部材120の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、中央ベース部材120の厚さは例えば20mm~40mm程度である。
【0023】
中央ベース部材120は、中央セラミックス部材110の下面S12と中央ベース部材120の上面S13との間に配置された中央接合部130によって、中央セラミックス部材110に接合されている。中央接合部130は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。中央接合部130の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
【0024】
中央ベース部材120の内部には冷媒流路121が形成されている。冷媒流路121に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、中央ベース部材120が冷却され、中央接合部130を介した中央ベース部材120と中央セラミックス部材110との間の伝熱(熱引き)により中央セラミックス部材110が冷却され、中央セラミックス部材110の中央吸着面S11に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0025】
A-2-2.中央ヒータ電極150の構成および中央ヒータ電極150への給電のための構成:
次に、中央ヒータ電極150の構成および中央ヒータ電極150への給電のための構成について詳述する。上述したように、中央セラミックス部材110には、抵抗発熱体により構成された複数の中央ヒータ電極150と、各中央ヒータ電極150への給電のための複数の中央ドライバ電極151および各種ビア154,155とが配置されている。また、中央静電チャック部100には、各中央ヒータ電極150への給電のための他の構成(後述する端子用孔156に収容された給電端子153等)が設けられている。なお、図2には、これらの構成の一部のみが示されている。
【0026】
各中央ヒータ電極150の一端は、ビア154を介して、1つの中央ドライバ電極151に電気的に接続されており、各中央ヒータ電極150の他端は、ビア154を介して、他の1つの中央ドライバ電極151に電気的に接続されている。
【0027】
また、中央静電チャック部100には、複数の端子用孔156が形成されている。各端子用孔156は、中央ベース部材120を上面S13から下面S14まで貫通する貫通孔と、中央接合部130を上下方向に貫通する貫通孔と、中央セラミックス部材110の下面S12側に形成された凹部とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。また、中央セラミックス部材110の下面S12における各端子用孔156に対応する位置(Z軸方向において端子用孔156と重なる位置)には、導電性材料により構成された給電パッド152が形成されている。給電パッド152は、ビア155を介して、中央ドライバ電極151に電気的に接続されている。
【0028】
各端子用孔156には、導電性材料により構成された給電端子153が収容されている。給電端子153は、例えばろう付けにより給電パッド152に接合されている。各給電端子153は、ヒータ用電源(図示しない)に電気的に接続されている。
【0029】
このような構成において、各中央ヒータ電極150は、ヒータ用電源に対して互いに並列に接続されている。ヒータ用電源から給電端子153、給電パッド152、ビア155、中央ドライバ電極151およびビア154を介して、中央ヒータ電極150に電圧が印加されると、中央ヒータ電極150が発熱する。これにより、中央ヒータ電極150が配置された中央セラミックス部材110が加熱され、中央セラミックス部材110の中央吸着面S11の温度分布の制御(ひいては、中央吸着面S11に保持されたウェハWの温度分布の制御)が実現される。本実施形態では、各中央ヒータ電極150がヒータ用電源に対して互いに並列に接続されているため、中央セラミックス部材110における各中央ヒータ電極150が配置された部分(セグメントと呼ばれる)単位での中央吸着面S11の温度分布の制御(すなわち、よりきめ細かい単位での温度分布制御)を実現することができる。
【0030】
A-2-3.中央セラミックス部材110とウェハWとの間の空間に不活性ガスを供給するための構成:
中央静電チャック部100は、中央セラミックス部材110とウェハWとの間の伝熱性を高めてウェハWの温度分布の制御性をさらに高めるため、中央セラミックス部材110の中央吸着面S11とウェハWの表面との間に存在する空間に不活性ガスを供給する構成を備えている。以下、該構成について説明する。なお、本実施形態では、不活性ガスとして、ヘリウムガスが用いられる。
【0031】
中央セラミックス部材110の中央吸着面S11における外縁付近には、連続的な壁状凸部(不図示)が形成されている。壁状凸部は、シールバンドとも呼ばれる。Z軸方向視での壁状凸部の形状は、例えば、中央セラミックス部材110の中央吸着面S11の中心点を中心とした略円環状である。また、中央セラミックス部材110の中央吸着面S11における壁状凸部より内側の領域には、複数の独立した柱状凸部(不図示)が形成されている。Z軸方向視での各柱状凸部の形状は、例えば、略円形である。なお、中央セラミックス部材110の中央吸着面S11における壁状凸部より内側の領域の内、柱状凸部が形成されていない部分は、凹部となっている。壁状凸部および柱状凸部の高さは、例えば、10μm~20μm程度である。ウェハWは、中央セラミックス部材110の中央吸着面S11における壁状凸部と柱状凸部とに支持される。ウェハWが壁状凸部および柱状凸部に支持された状態では、ウェハWの表面(下面)と、中央セラミックス部材110の中央吸着面S11(柱状凸部が形成されていない凹部)との間に、空間が存在することとなる。
【0032】
図2に示すように、中央セラミックス部材110の内部には、中央吸着面S11に開口する複数の中央ガス噴出流路171と、各中央ガス噴出流路171に連通する1つまたは複数の中央ガス分配流路172とが形成されている。各中央ガス噴出流路171は、Z軸方向に略平行に延びている。また、各中央ガス分配流路172は、面方向(Z軸方向に直交する方向)に延びている。Z軸方向視での中央ガス分配流路172の形状は、例えば円環状である。また、中央静電チャック部100には、中央ベース部材120の下面S14から中央セラミックス部材110の内部にわたってZ軸方向に略平行に延びる中央ガス供給流路170が形成されている。中央ガス供給流路170は、各中央ガス分配流路172と連通している。なお、本実施形態では、中央ガス分配流路172の延伸方向に直交する断面の面積は、中央ガス噴出流路171の延伸方向に直交する断面の面積より大きい。
【0033】
ヘリウムガス源(不図示)から中央ガス供給流路170にヘリウムガスが供給されると、供給されたヘリウムガスは、中央ガス供給流路170から中央ガス分配流路172内に流入し、中央ガス分配流路172を介して面方向に分配されつつ中央ガス噴出流路171内に流入し、各中央ガス噴出流路171の中央吸着面S11への開口である中央ガス噴出孔から噴出する。このようにして、中央セラミックス部材110の中央吸着面S11とウェハWの表面との間に存在する空間にヘリウムガスが供給され、中央吸着面S11とウェハWとの間の伝熱性が高められる。中央ガス噴出流路171は、特許請求の範囲におけるガス噴出流路に相当し、中央ガス分配流路172は、特許請求の範囲におけるガス分配流路に相当する。
【0034】
本実施形態では、Z軸方向に直交する特定の方向(例えば、X軸方向)視で、中央ガス分配流路172の少なくとも一部分は、中央ヒータ電極150と中央ドライバ電極151との両方と重なっている。すなわち、Z軸方向における位置に関し、中央ガス分配流路172は、中央ヒータ電極150と同位置にある部分と、中央ドライバ電極151と同位置にある部分とを有する。なお、ここで言う、Z軸方向に直交する特定の方向視で中央ガス分配流路172(の少なくとも一部分)が中央ヒータ電極150と中央ドライバ電極151との両方と重なっているとは、中央ガス分配流路172が中央ヒータ電極150および中央ドライバ電極151と接触していることを意味しない。すなわち、中央ガス分配流路172は、中央ヒータ電極150および中央ドライバ電極151から離間している。なお、上記特定の方向は、特許請求の範囲における第2の方向に相当する。
【0035】
A-3.外周静電チャック部200の構成:
A-3-1.外周静電チャック部200の基本構成:
外周静電チャック部200は、Z軸方向視で中央静電チャック部100を取り囲むような略円環状の部材である。外周静電チャック部200と中央静電チャック部100との間には、わずかな隙間が存在している。外周静電チャック部200は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された外周セラミックス部材210および外周ベース部材220を備える。外周セラミックス部材210と外周ベース部材220とは、外周セラミックス部材210の下面S22と外周ベース部材220の上面S23とが、後述する外周接合部230を挟んで上記配列方向に対向するように配置される。すなわち、外周ベース部材220は、外周ベース部材220の上面S23が外周セラミックス部材210の下面S22側に位置するように配置される。
【0036】
外周セラミックス部材210は、Z軸方向視で略円環状の板状部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。外周セラミックス部材210の内側直径は例えば222mm~552mm程度(通常は222mm~352mm程度)であり、外周セラミックス部材210の外側直径は例えば232mm~592mm程度(通常は232mm~392mm程度)であり、外周セラミックス部材210の厚さは例えば1mm~5mm程度である。外周セラミックス部材210は、特許請求の範囲におけるセラミックス部材に相当する。
【0037】
外周セラミックス部材210の上面(以下、「外周吸着面」という。)S21は、Z軸方向に略直交する略円環状の表面である。外周吸着面S21は、特許請求の範囲における第1の表面に相当する。
【0038】
図2に示すように、外周セラミックス部材210の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成された外周チャック電極240が配置されている。Z軸方向視での外周チャック電極240の形状は、例えば略円環状である。外周チャック電極240にチャック用電源(不図示)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってフォーカスリングFRが外周セラミックス部材210の外周吸着面S21に吸着固定される。外周チャック電極240は、特許請求の範囲におけるチャック電極に相当する。
【0039】
なお、フォーカスリングFRは、Z軸方向視でウェハWの外周を囲むように配置される略円環状部材であり、例えば、水晶やシリコーンにより形成される。フォーカスリングFRを配置することにより、ウェハWに対する各処理(成膜、エッチング等)の際に、ウェハWの最外周部に反応ガスやプラズマが集中することを抑制することができ、ウェハWの中央部と最外周部との間のエッチングレートの差を抑制することができる。また、フォーカスリングFRの温度分布を制御してウェハWの温度より高温にすることにより、塵や汚れ等の不純物をフォーカスリングFRに引き寄せることができ、不純物がウェハWに付着することを抑制することができる。
【0040】
外周セラミックス部材210の内部には、また、それぞれ導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成された、複数の外周ヒータ電極250と、各外周ヒータ電極250への給電のための複数の外周ドライバ電極251および各種ビア254,255とが配置されている。本実施形態では、複数の外周ヒータ電極250のそれぞれのZ軸方向における位置は、互いに略同一であり、かつ、外周チャック電極240より外周吸着面S21から離間した位置(すなわち、外周チャック電極240より下側)の位置である。また、本実施形態では、複数の外周ドライバ電極251のそれぞれのZ軸方向における位置は、互いに略同一であり、かつ、外周チャック電極240より外周吸着面S21から離間した位置(すなわち、外周チャック電極240より下側)の位置である。なお、本実施形態では、複数の外周ドライバ電極251のZ軸方向における位置は、複数の外周ヒータ電極250より外周吸着面S21から離間した位置(すなわち、外周ヒータ電極250より下側)の位置である。これらの構成については、後に詳述する。外周ヒータ電極250は、特許請求の範囲におけるヒータ電極に相当し、外周ドライバ電極251は、特許請求の範囲におけるドライバ電極に相当する。
【0041】
外周ベース部材220は、例えば外周セラミックス部材210と同径の、または、外周セラミックス部材210より径が大きい略円環平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。外周ベース部材220の内側直径は例えば222mm~552mm程度(通常は222mm~352mm)であり、外周ベース部材220の外側直径は例えば232mm~592mm程度(通常は232mm~392mm)であり、外周ベース部材220の厚さは例えば20mm~40mm程度である。
【0042】
外周ベース部材220は、外周セラミックス部材210の下面S22と外周ベース部材220の上面S23との間に配置された外周接合部230によって、外周セラミックス部材210に接合されている。外周接合部230は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。外周接合部230の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
【0043】
外周ベース部材220の内部には冷媒流路221が形成されている。冷媒流路221に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、外周ベース部材220が冷却され、外周接合部230を介した外周ベース部材220と外周セラミックス部材210との間の伝熱(熱引き)により外周セラミックス部材210が冷却され、外周セラミックス部材210の外周吸着面S21に保持されたフォーカスリングFRが冷却される。これにより、フォーカスリングFRの温度分布の制御が実現される。
【0044】
A-3-2.外周ヒータ電極250の構成および外周ヒータ電極250への給電のための構成:
次に、外周ヒータ電極250の構成および外周ヒータ電極250への給電のための構成について詳述する。上述したように、外周セラミックス部材210には、抵抗発熱体により構成された複数の外周ヒータ電極250と、各外周ヒータ電極250への給電のための複数の外周ドライバ電極251および各種ビア254,255とが配置されている。また、外周静電チャック部200には、各外周ヒータ電極250への給電のための他の構成(後述する端子用孔256に収容された給電端子253等)が設けられている。なお、図2には、これらの構成の一部のみが示されている。
【0045】
各外周ヒータ電極250の一端は、ビア254を介して、1つの外周ドライバ電極251に電気的に接続されており、各外周ヒータ電極250の他端は、ビア254を介して、他の1つの外周ドライバ電極251に電気的に接続されている。
【0046】
また、外周静電チャック部200には、複数の端子用孔256が形成されている。各端子用孔256は、外周ベース部材220を上面S23から下面S24まで貫通する貫通孔と、外周接合部230を上下方向に貫通する貫通孔と、外周セラミックス部材210の下面S22側に形成された凹部とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。また、外周セラミックス部材210の下面S22における各端子用孔256に対応する位置(Z軸方向において端子用孔256と重なる位置)には、導電性材料により構成された給電パッド252が形成されている。給電パッド252は、ビア255を介して、外周ドライバ電極251に電気的に接続されている。
【0047】
各端子用孔256には、導電性材料により構成された給電端子253が収容されている。給電端子253は、例えばろう付けにより給電パッド252に接合されている。各給電端子253は、ヒータ用電源(図示しない)に電気的に接続されている。
【0048】
このような構成において、各外周ヒータ電極250は、ヒータ用電源に対して互いに並列に接続されている。ヒータ用電源から給電端子253、給電パッド252、ビア255、外周ドライバ電極251およびビア254を介して、外周ヒータ電極250に電圧が印加されると、外周ヒータ電極250が発熱する。これにより、外周ヒータ電極250が配置された外周セラミックス部材210が加熱され、外周セラミックス部材210の外周吸着面S21の温度分布の制御(ひいては、外周吸着面S21に保持されたフォーカスリングFRの温度分布の制御)が実現される。本実施形態では、各外周ヒータ電極250がヒータ用電源に対して互いに並列に接続されているため、外周セラミックス部材210における各外周ヒータ電極250が配置された部分(セグメントと呼ばれる)単位での外周吸着面S21の温度分布の制御(すなわち、よりきめ細かい単位での温度分布制御)を実現することができる。
【0049】
A-3-3.外周セラミックス部材210とフォーカスリングFRとの間の空間に不活性ガスを供給するための構成:
外周静電チャック部200は、外周セラミックス部材210とフォーカスリングFRとの間の伝熱性を高めてフォーカスリングFRの温度分布の制御性をさらに高めるため、外周セラミックス部材210の外周吸着面S21とフォーカスリングFRの表面との間に存在する空間に不活性ガスを供給する構成を備えている。以下、該構成について説明する。なお、本実施形態では、不活性ガスとして、ヘリウムガスが用いられる。
【0050】
外周セラミックス部材210の外周吸着面S21における外縁(外周縁および内周縁)付近には、連続的な壁状凸部(不図示)が形成されている。壁状凸部は、シールバンドとも呼ばれる。Z軸方向視での各壁状凸部の形状は、例えば、外周吸着面S21の外周縁の中心点を中心とした略円環状である。また、外周セラミックス部材210の外周吸着面S21における壁状凸部に囲まれた領域には、複数の独立した柱状凸部(不図示)が形成されている。Z軸方向視での各柱状凸部の形状は、例えば、略円形である。なお、外周セラミックス部材210の外周吸着面S21における壁状凸部に囲まれた領域の内、柱状凸部が形成されていない部分は、凹部となっている。壁状凸部および柱状凸部の高さは、例えば、10μm~20μm程度である。フォーカスリングFRは、外周セラミックス部材210の外周吸着面S21における壁状凸部と柱状凸部とに支持される。フォーカスリングFRが壁状凸部および柱状凸部に支持された状態では、フォーカスリングFRの表面(下面)と、外周セラミックス部材210の外周吸着面S21(柱状凸部が形成されていない凹部)との間に、空間が存在することとなる。
【0051】
図2に示すように、外周セラミックス部材210の内部には、外周吸着面S21に開口する複数の外周ガス噴出流路271と、各外周ガス噴出流路271に連通する1つまたは複数の外周ガス分配流路272とが形成されている。各外周ガス噴出流路271は、Z軸方向に略平行に延びている。また、各外周ガス分配流路272は、面方向(Z軸方向に直交する方向)に延びている。Z軸方向視での外周ガス分配流路272の形状は、例えば円環状である。また、外周静電チャック部200には、外周ベース部材220の下面S24から外周セラミックス部材210の内部にわたってZ軸方向に略平行に延びる外周ガス供給流路270が形成されている。外周ガス供給流路270は、各外周ガス分配流路272と連通している。なお、本実施形態では、外周ガス分配流路272の延伸方向に直交する断面の面積は、外周ガス噴出流路271の延伸方向に直交する断面の面積より大きい。
【0052】
ヘリウムガス源(不図示)から外周ガス供給流路270にヘリウムガスが供給されると、供給されたヘリウムガスは、外周ガス供給流路270から外周ガス分配流路272内に流入し、外周ガス分配流路272を介して面方向に分配されつつ外周ガス噴出流路271内に流入し、各外周ガス噴出流路271の外周吸着面S21への開口である外周ガス噴出孔から噴出する。このようにして、外周セラミックス部材210の外周吸着面S21とフォーカスリングFRの表面との間に存在する空間にヘリウムガスが供給され、外周吸着面S21とフォーカスリングFRとの間の伝熱性が高められる。外周ガス噴出流路271は、特許請求の範囲におけるガス噴出流路に相当し、外周ガス分配流路272は、特許請求の範囲におけるガス分配流路に相当する。
【0053】
本実施形態では、Z軸方向に直交する特定の方向(例えば、X軸方向)視で、外周ガス分配流路272の少なくとも一部分は、外周ヒータ電極250と外周ドライバ電極251との両方と重なっている。すなわち、Z軸方向における位置に関し、外周ガス分配流路272は、外周ヒータ電極250と同位置にある部分と、外周ドライバ電極251と同位置にある部分とを有する。なお、ここで言う、Z軸方向に直交する特定の方向視で外周ガス分配流路272(の少なくとも一部分)が外周ヒータ電極250と外周ドライバ電極251との両方と重なっているとは、外周ガス分配流路272が外周ヒータ電極250および外周ドライバ電極251と接触していることを意味しない。すなわち、外周ガス分配流路272は、外周ヒータ電極250および外周ドライバ電極251から離間している。なお、上記特定の方向は、特許請求の範囲における第2の方向に相当する。
【0054】
A-4.静電チャック10の製造方法:
本実施形態の静電チャック10を構成する中央静電チャック部100の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートに所定の加工を行う。所定の加工としては、例えば、中央ヒータ電極150や中央ドライバ電極151、給電パッド152等の形成のためのメタライズペーストの印刷、各種ビア154,155の形成のための孔空けおよびメタライズペーストの充填、中央ガス噴出流路171や中央ガス分配流路172等の形成のための孔空け等が挙げられる。これらのセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックスグリーンシートの積層体を作製する。作製されたセラミックスグリーンシートの積層体を焼成し、精密な外形状を研磨加工で仕上げることにより、中央セラミックス焼成体を作製する。
【0055】
次に、作製された中央セラミックス焼成体の表面に、壁状凸部および柱状凸部に対応する部分を遮蔽するマスクを配置し、例えばセラミックス等の粒体を投射するショットブラストを行うことにより、壁状凸部および柱状凸部を形成する。これにより、中央セラミックス部材110が作製される。次に、中央セラミックス部材110に形成された給電パッド152に給電端子153を例えばろう付けにより接合する。次に、例えばシート状の中央接合部130を用いて、中央セラミックス部材110と中央ベース部材120とを接合する。主として以上の工程により、本実施形態の静電チャック10を構成する中央静電チャック部100が製造される。
【0056】
また、本実施形態の静電チャック10を構成する外周静電チャック部200の製造方法は、上述した中央静電チャック部100の製造方法と同様であり、例えば以下の通りである。まず、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートに所定の加工を行う。所定の加工としては、例えば、外周ヒータ電極250や外周ドライバ電極251、給電パッド252等の形成のためのメタライズペーストの印刷、各種ビア254,255の形成のための孔空けおよびメタライズペーストの充填、外周ガス噴出流路271や外周ガス分配流路272等の形成のための孔空け等が挙げられる。これらのセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックスグリーンシートの積層体を作製する。作製されたセラミックスグリーンシートの積層体を焼成し、精密な外形状を研磨加工で仕上げることにより、外周セラミックス焼成体を作製する。
【0057】
次に、作製された外周セラミックス焼成体の表面に、壁状凸部および柱状凸部に対応する部分を遮蔽するマスクを配置し、例えばセラミックス等の粒体を投射するショットブラストを行うことにより、壁状凸部および柱状凸部を形成する。これにより、外周セラミックス部材210が作製される。次に、外周セラミックス部材210に形成された給電パッド252に給電端子253を例えばろう付けにより接合する。次に、例えばシート状の外周接合部230を用いて、外周セラミックス部材210と外周ベース部材220とを接合する。主として以上の工程により、本実施形態の静電チャック10を構成する外周静電チャック部200が製造される。
【0058】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック10を構成する中央静電チャック部100は、Z軸方向に略直交する中央吸着面S11を有する中央セラミックス部材110を備え、中央セラミックス部材110の中央吸着面S11上にウェハWを保持する保持装置である。中央静電チャック部100は、中央セラミックス部材110の内部に配置された中央チャック電極140を備える。さらに、中央静電チャック部100は、中央セラミックス部材110の内部における、Z軸方向において中央チャック電極140より中央吸着面S11から離間した位置に配置された中央ヒータ電極150および中央ドライバ電極151を備える。中央ヒータ電極150は、抵抗発熱体により構成されている。中央ドライバ電極151は、中央ヒータ電極150に電気的に接続されている。また、中央セラミックス部材110の内部には、中央吸着面S11に開口する中央ガス噴出流路171と、中央ガス噴出流路171に連通し、Z軸方向に直交する方向(面方向)に延びる中央ガス分配流路172とが形成されている。Z軸方向に直交する特定の方向視で、中央ガス分配流路172の少なくとも一部分は、中央ヒータ電極150と中央ドライバ電極151との両方と重なっている。
【0059】
このように、本実施形態の静電チャック10を構成する中央静電チャック部100では、Z軸方向に直交する特定の方向視で、中央ガス分配流路172の少なくとも一部分は、中央ヒータ電極150と中央ドライバ電極151との両方と重なっている。すなわち、Z軸方向における位置に関し、中央ガス分配流路172は、中央ヒータ電極150と同位置にある部分と、中央ドライバ電極151と同位置にある部分とを有する。そのため、本実施形態の静電チャック10を構成する中央静電チャック部100によれば、上記特定の方向視で中央ガス分配流路172が中央ヒータ電極150にも中央ドライバ電極151にも重ならない構成と比較して、中央セラミックス部材110のZ軸方向における大きさ(厚さ)を小さくすることができ、装置の小型化や使用材料の低減を実現することができる。また、本実施形態の静電チャック10を構成する中央静電チャック部100によれば、中央セラミックス部材110のZ軸方向における大きさ(厚さ)を小さくすることができるため、プラズマのRF電極を中央ベース部材120によって代用することが容易となる。
【0060】
また、本実施形態の静電チャック10を構成する外周静電チャック部200は、Z軸方向に略直交する外周吸着面S21を有する外周セラミックス部材210を備え、外周セラミックス部材210の外周吸着面S21上にフォーカスリングFRを保持する保持装置である。外周静電チャック部200は、外周セラミックス部材210の内部に配置された外周チャック電極240を備える。さらに、外周静電チャック部200は、外周セラミックス部材210の内部における、Z軸方向において外周チャック電極240より外周吸着面S21から離間した位置に配置された外周ヒータ電極250および外周ドライバ電極251を備える。外周ヒータ電極250は、抵抗発熱体により構成されている。外周ドライバ電極251は、外周ヒータ電極250に電気的に接続されている。また、外周セラミックス部材210の内部には、外周吸着面S21に開口する外周ガス噴出流路271と、外周ガス噴出流路271に連通し、Z軸方向に直交する方向(面方向)に延びる外周ガス分配流路272とが形成されている。Z軸方向に直交する特定の方向視で、外周ガス分配流路272の少なくとも一部分は、外周ヒータ電極250と外周ドライバ電極251との両方と重なっている。
【0061】
このように、本実施形態の静電チャック10を構成する外周静電チャック部200では、Z軸方向に直交する特定の方向視で、外周ガス分配流路272の少なくとも一部分は、外周ヒータ電極250と外周ドライバ電極251との両方と重なっている。すなわち、Z軸方向における位置に関し、外周ガス分配流路272は、外周ヒータ電極250と同位置にある部分と、外周ドライバ電極251と同位置にある部分とを有する。そのため、本実施形態の静電チャック10を構成する外周静電チャック部200によれば、上記特定の方向視で外周ガス分配流路272が外周ヒータ電極250にも外周ドライバ電極251にも重ならない構成と比較して、外周セラミックス部材210のZ軸方向における大きさ(厚さ)を小さくすることができ、装置の小型化や使用材料の低減を実現することができる。また、本実施形態の静電チャック10を構成する外周静電チャック部200によれば、外周セラミックス部材210のZ軸方向における大きさ(厚さ)を小さくすることができるため、プラズマのRF電極を外周ベース部材220によって代用することが容易となる。
【0062】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0063】
上記実施形態における静電チャック10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態の静電チャック10を構成する中央静電チャック部100では、Z軸方向に直交する特定の方向視で、中央ガス分配流路172の少なくとも一部分が、中央ヒータ電極150と中央ドライバ電極151との両方と重なっているが、中央ガス分配流路172の少なくとも一部分が、中央ヒータ電極150と中央ドライバ電極151との一方と重なり、かつ、他方の重ならないとしてもよい。このような構成であっても、上記特定の方向視で中央ガス分配流路172が中央ヒータ電極150にも中央ドライバ電極151にも重ならない構成と比較して、中央セラミックス部材110のZ軸方向における大きさ(厚さ)を小さくすることができ、装置の小型化や使用材料の低減を実現することができる。
【0064】
また、上記実施形態の静電チャック10を構成する中央静電チャック部100では、中央セラミックス部材110の内部に中央ドライバ電極151が配置されているが、中央セラミックス部材110の内部に中央ドライバ電極151が配置されていなくてもよい。このような構成であっても、Z軸方向に直交する特定の方向視で、中央ガス分配流路172の少なくとも一部分が中央ヒータ電極150と重なる構成を採用すれば、上記特定の方向視で中央ガス分配流路172が中央ヒータ電極150と重ならない構成と比較して、中央セラミックス部材110のZ軸方向における大きさ(厚さ)を小さくすることができ、装置の小型化や使用材料の低減を実現することができる。
【0065】
同様に、上記実施形態の静電チャック10を構成する外周静電チャック部200では、Z軸方向に直交する特定の方向視で、外周ガス分配流路272の少なくとも一部分が、外周ヒータ電極250と外周ドライバ電極251との両方と重なっているが、外周ガス分配流路272の少なくとも一部分が、外周ヒータ電極250と外周ドライバ電極251との一方と重なり、かつ、他方の重ならないとしてもよい。このような構成であっても、上記特定の方向視で外周ガス分配流路272が外周ヒータ電極250にも外周ドライバ電極251にも重ならない構成と比較して、外周セラミックス部材210のZ軸方向における大きさ(厚さ)を小さくすることができ、装置の小型化や使用材料の低減を実現することができる。
【0066】
また、上記実施形態の静電チャック10を構成する外周静電チャック部200では、外周セラミックス部材210の内部に外周ドライバ電極251が配置されているが、外周セラミックス部材210の内部に外周ドライバ電極251が配置されていなくてもよい。このような構成であっても、Z軸方向に直交する特定の方向視で、外周ガス分配流路272の少なくとも一部分が外周ヒータ電極250と重なる構成を採用すれば、上記特定の方向視で外周ガス分配流路272が外周ヒータ電極250と重ならない構成と比較して、外周セラミックス部材210のZ軸方向における大きさ(厚さ)を小さくすることができ、装置の小型化や使用材料の低減を実現することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、複数の中央ドライバ電極151のZ軸方向における位置に関し、すべての中央ドライバ電極151が同一位置にある(すなわち、複数の中央ドライバ電極151が単層により構成されている)としているが、一部の中央ドライバ電極151が異なる位置にある(すなわち、複数の中央ドライバ電極151が複数層により構成されている)としてもよい。中央ヒータ電極150についても同様である。また、Z軸方向における中央ヒータ電極150と中央ドライバ電極151との位置関係が反対であってもよい。
【0068】
同様に、上記実施形態では、複数の外周ドライバ電極251のZ軸方向における位置に関し、すべての外周ドライバ電極251が同一位置にある(すなわち、複数の外周ドライバ電極251が単層により構成されている)としているが、一部の外周ドライバ電極251が異なる位置にある(すなわち、複数の外周ドライバ電極251が複数層により構成されている)としてもよい。外周ヒータ電極250についても同様である。また、Z軸方向における外周ヒータ電極250と外周ドライバ電極251との位置関係が反対であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、中央セラミックス部材110の内部に複数の中央ヒータ電極150が配置されているが、中央セラミックス部材110の内部に単一の中央ヒータ電極150が配置されていてもよい。同様に、上記実施形態では、外周セラミックス部材210の内部に複数の外周ヒータ電極250が配置されているが、外周セラミックス部材210の内部に単一の外周ヒータ電極250が配置されていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、中央静電チャック部100と外周静電チャック部200とが別体構成であるが、中央静電チャック部100と外周静電チャック部200とが一体構成であるとしてもよい。例えば、中央ベース部材120と外周ベース部材220とが一体部材であり、互いに別体の中央セラミックス部材110と中央ベース部材120とがそれぞれ中央ベース部材120と外周ベース部材220とに接合されているとしてもよい。あるいは、中央ベース部材120と外周ベース部材220とが一体部材であるとしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、中央セラミックス部材110の内部に1つの中央チャック電極140が設けられた単極方式が採用されているが、中央セラミックス部材110の内部に一対の中央チャック電極140が設けられた双極方式が採用されてもよい。同様に、上記実施形態では、外周セラミックス部材210の内部に1つの外周チャック電極240が設けられた単極方式が採用されているが、外周セラミックス部材210の内部に一対の外周チャック電極240が設けられた双極方式が採用されてもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、各ビアは、単数のビアにより構成されてもよいし、複数のビアのグループにより構成されてもよい。また、上記実施形態において、各ビアは、ビア部分のみからなる単層構成であってもよいし、複数層構成(例えば、ビア部分とパッド部分とビア部分とが積層された構成)であってもよい。
【0073】
また、上記実施形態の静電チャック10の各部材の形成材料は、あくまで一例であり、種々変更可能である。
【0074】
また、本発明は、中央静電チャック部100と外周静電チャック部200とから構成された静電チャック10に限らず、中央静電チャック部100のみから構成された静電チャック10や、外周静電チャック部200のみから構成された静電チャック10にも同様に適用可能である。また、本発明は、静電チャックに限らず、セラミックス部材とチャック電極とを備え、セラミックス部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10:静電チャック 100:中央静電チャック部 110:中央セラミックス部材 120:中央ベース部材 121:冷媒流路 130:中央接合部 140:中央チャック電極 150:中央ヒータ電極 151:中央ドライバ電極 152:給電パッド 153:給電端子 154,155:ビア 156:端子用孔 170:中央ガス供給流路 171:中央ガス噴出流路 172:中央ガス分配流路 200:外周静電チャック部 210:外周セラミックス部材 220:外周ベース部材 221:冷媒流路 230:外周接合部 240:外周チャック電極 250:外周ヒータ電極 251:外周ドライバ電極 252:給電パッド 253:給電端子 254,255:ビア 256:端子用孔 270:外周ガス供給流路 271:外周ガス噴出流路 272:外周ガス分配流路 FR:フォーカスリング S11:中央吸着面 S12:下面 S13:上面 S14:下面 S21:外周吸着面 S22:下面 S23:上面 S24:下面 W:ウェハ
図1
図2