(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】電圧変換装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
G05F1/56 320E
(21)【出願番号】P 2018225348
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(72)【発明者】
【氏名】久米 正義
(72)【発明者】
【氏名】小宮 基樹
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-294883(JP,A)
【文献】特開2017-051054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0275394(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に入力された入力電圧を前記入力電圧よりも低い出力電圧に変換する電圧変換部と、
前記入力電圧と前記出力電圧の差に基づいて、前記電圧変換部に流れる電流が過電流であるか否かを判断するための検出基準電圧を決定する基準電圧決定部と、
前記入力端子と前記出力電圧が出力される出力端子との間に配置されるシャント抵抗と、
前記検出基準電圧と、前記シャント抵抗における前記出力端子側の端部の電圧との比較結果に基づいて、前記電圧変換部に流れる過電流を検出する過電流検出部と、
前記過電流検出部が過電流を検出した場合、前記電圧変換部に流れる電流及び前記出力電圧の両者が低下するように前記電圧変換部を駆動させる駆動部と、を備える電圧変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電圧変換装置であって、
前記基準電圧決定部は、
前記出力電圧を前記
シャント抵抗における前記出力端子側の端部の電圧から減算した減算値を算出する減算部と、
前記減算部により算出された減算値の逆数に比例する検出基準電流を算出する基準電流算出部と、
一端が前記基準電流算出部により算出された検出基準電流の供給を受け、他端が前記シャント抵抗における前記入力端子側の端部と接続される検出抵抗と、を含み、
前記検出基準電圧は、前記検出抵抗の抵抗値と、前記検出基準電流との乗算値である、電圧変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電圧変換装置であって、
前記減算
部は、前記減算値が所定の下限値を下回る場合、前記所定の下限値を前記減算値
として前記基準電流算出部に出力する、電圧変換装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電圧変換装置であって
、
前記出力電圧及び前記電圧変換部に流れる電流によって定義される2次元座標において、前記出力電圧が前記電圧変換部に流れる電流の低下に伴って低下する
特性が曲線によって表され、
前記曲線は、前記入力電圧が高くなるに従って前記電圧変換部に流れる電流が小さくなる方向にシフトする、電圧変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧を入力電圧よりも低い電圧に変換する電圧変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリーズレギュレータは、入力電圧を入力電圧よりも低い電圧に変換し、その変換された電圧を出力電圧として出力する電圧変換装置である。シリーズレギュレータは、入力電圧を変換する素子としてトランジスタを備えることが一般的である。
【0003】
トランジスタが入力電圧を出力電圧に変換する際に、電力損失が発生する。トランジスタの温度は、発生した電力損失によって上昇する。トランジスタが、トランジスタが有する所定の性能を維持できる温度を超えることのないように、許容損失がトランジスタごとに定められている。許容損失は、トランジスタが有する所定の性能を維持できる温度を超えない最大の消費電力である。
【0004】
シリーズレギュレータは、トランジスタの消費電力が許容損失を超えることを防ぐために、過電流保護機能を有している。例えば、特許文献1は、過電流がトランジスタに流れた場合、予め定められた過電流検知特性に従ってトランジスタの出力電圧を低下させる定電圧電源回路を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出力電圧及びトランジスタを流れる電流によって定義される2次元座標において、過電流検知特性を示す線と許容損失を示す線と表すことできる。以下、上記2次元座標において過電流検知特性を示す線を「検知特性線」と記載する。
【0007】
シリーズレギュレータは、検知特性線に従って出力電圧とトランジスタを流れる電流とを制御する。検知特性線は、トランジスタの許容損失を超えることのないように設定される。つまり、検知特性線は、許容損失線と交差しないように設定される。
【0008】
許容損失線は、入力電圧に応じて2次元座標上を移動する。従って、検知特性線が、入力電圧の変化に応じて移動する許容損失線と交差することのないように、マージン(検知特性線と許容損失線との距離)を大きくする必要がある。マージンを大きくするためには、シリーズレギュレータを構成するトランジスタ等の素子を大型化する等の対策をとる必要がある。素子の大型化は、コスト増加及びシリーズレギュレータのサイズ増大の要因となる。
【0009】
本発明の目的は、検知特性線と許容損失線との距離を短縮できる電圧変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、電圧変換部と、基準電圧決定部と、シャント抵抗と、過電流検出部と、駆動部とを備える電圧変換装置である。電圧変換部は、入力端子に入力された入力電圧を入力電圧よりも低い出力電圧に変換する。基準電圧決定部は、入力電圧と出力電圧の差に基づいて、電圧変換部に流れる電流が過電流であるか否かを判断するための検出基準電圧を決定する。シャント抵抗は、入力端子と出力電圧が出力される出力端子との間に配置される。過電流検出部は、検出基準電圧と、シャント抵抗における出力端子側の端部の電圧との比較結果に基づいて、電圧変換部に流れる過電流を検出する。過電流検出部が過電流を検出した場合、駆動部は、電圧変換部に流れる電流及び出力電圧の両者が低下するように電圧変換部を駆動させる。
【0011】
第1の発明によれば、検出基準電圧が、入力電圧と出力電圧との差に基づいて決定される。この結果、出力電圧と電圧変換部を流れる電流によって定義される2次元座標において、過電流検出特性を示す検出特性線を許容損失線に近づけることができる。
【0012】
検出特性線を許容損失線に近づけることにより、電圧変換部の動作領域を従来よりも有効に利用できる。従来の電圧変換装置と第1の発明に係る電圧変換装置とが同じ電圧変換部を利用する場合、第1の発明に係る電圧変換装置は、従来の電圧変換装置よりも出力電流を大きくできる。出力電流の上限が従来の電圧変換装置と第1の発明に係る電圧変換装置とで同じである場合、第1の発明に係る電圧変換装置は、従来の電圧変換装置よりも電圧変換部を小型化できる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明であって、基準電圧決定部は、減算部と、基準電流算出部と、検出抵抗とを含む。減算部は、出力電圧をシャント抵抗における前記出力端子側の端部の電圧から減算した減算値を算出する。基準電流算出部は、減算部により算出された減算値の逆数に比例する検出基準電流を算出する。検出抵抗の一端は、基準電流算出部により算出された検出基準電流の供給を受ける。検出抵抗の他端は、シャント抵抗における入力端子側の端部と接続される。検出基準電圧は、検出抵抗の抵抗値と、検出基準電流との乗算値である。
【0014】
第2の発明によれば、上記の2次元座標において、許容損失線と、過電流検出得性を示す線とを略並行にすることができる。これにより、許容損失線と、過電流検出特性を示す線との間隔をさらに短くできる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明であって、減算部は、減算値が所定の下限値を下回る場合、所定の下限値を減算値として基準電流算出部に出力する。
【0016】
第3の発明によれば、減算値の下限を設定することにより、出力電流の上限値を設定することができる。
【0017】
第4の発明は、第2又は第3の発明であって、出力電圧及び電圧変換部に流れる電流によって定義される2次元座標において、出力電圧が電圧変換部に流れる電流の低下に伴って低下する特性が曲線によって表される。曲線は、入力電圧が高くなるに従って電圧変換部に流れる電流が小さくなる方向にシフトする。
【0018】
第4の発明によれば、入力電圧が高くなった場合に電圧変換部を流れる電流を小さくすることができる。これにより、電圧変換部の消費電力が電圧変換部の許容損失を超えることをさらに効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電圧変換装置は、検知特性線と許容損失線との距離を短縮できる電圧変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電圧変換装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1に示す検出レベル決定部及び過電流検出部の構成の一例を示す回路図である。
【
図3】
図1に示す電圧変換装置の許容損失を示す許容損失線の一例を示すグラフである。
【
図4】
図1に示す電圧変換装置に入力される入力電圧が6(V)である場合における電圧変換装置の検出特性線の一例を示すグラフである。
【
図5】
図1に示す電圧変換装置に入力される入力電圧が8(V)である場合における電圧変換装置の検出特性線の一例を示すグラフである。
【
図6】
図1に示す電圧変換装置に入力される入力電圧が10(V)である場合における電圧変換装置の検出特性線の一例を示すグラフである。
【
図7】
図1に示す電圧変換装置に入力される入力電圧に応じて変化する保護特性線の具体例を示すグラフである。
【
図8】
図2に示す減算部の変形例の構成を示す回路図である。
【
図9】
図8に示す減算部を用いて決定された検出特性線の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
[1.構成]
[1.1.電圧変換装置1の構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る電圧変換装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図1を参照して、電圧変換装置1は、シリーズレギュレータである。
【0023】
電圧変換装置1は、バッテリ2から供給される入力電圧Vinを受け、その受けた入力電圧Vinを出力電圧Voutに変換する。出力電圧Voutは、入力電圧Vinよりも低く、一定の電圧である。電圧変換装置1は、入力電圧Vinの変換により生成された出力電圧Voutを、負荷3に出力する。
【0024】
電圧変換装置1は、トランジスタT11を用いて、一定の出力電圧Voutを出力する。電圧変換装置1は、過電流を検出した場合、出力電圧Vout及び負荷電流Ifの両者を低下させる。
【0025】
負荷電流Ifは、トランジスタT11を流れる電流であり、トランジスタT11のコレクタ電流及びエミッタ電流に相当する。
【0026】
以下、説明の便宜上、電圧変換装置1が通常モード及び保護モードのいずれかで動作すると記載する場合がある。通常モードにおいて、電圧変換装置1は、一定の出力電圧Voutを出力する。過電流が検出された場合、電圧変換装置1は、出力電圧Vout及び負荷電流Ifの両者を低下させる保護モードで動作する。つまり、トランジスタT11の消費電力が、トランジスタT11の許容損失を超える虞がある場合、電圧変換装置1は、保護モードで動作する。
【0027】
電圧変換装置1は、電圧変換部11と、帰還抵抗12A及び12Bと、基準電圧源13と、エラーアンプ14と、基準電圧決定部15と、過電流検出部16と、駆動部17と、シャント抵抗18と、入力端子1Pと、出力端子1Qとを備える。
【0028】
電圧変換部11は、駆動部17からの制御信号C1に従って、入力端子1Pに入力された入力電圧Vinを出力電圧Voutに変換する。出力電圧Voutは、出力端子1Qから負荷3に出力される。電圧変換部11は、トランジスタT11を備える。トランジスタT11は、PNP型のバイポーラトランジスタである。制御信号C1は、トランジスタT11のベースに入力される。以下の説明において、バイポーラトランジスタを単に「トランジスタ」と記載する場合がある。
【0029】
帰還抵抗12A及び12Bは、トランジスタT11のコレクタと接地との間で直列に接続される。具体的には、帰還抵抗12Aの一端は、トランジスタT11のコレクタに接続され、帰還抵抗12Aの他端は、帰還抵抗12Bの一端及びエラーアンプ14の反転入力端子に接続される。帰還抵抗12Bの一端は、帰還抵抗12Aの他端及びエラーアンプ14の反転入力端子に接続され、帰還抵抗12Bの他端は、接地される。
【0030】
基準電圧源13は、基準電圧Vrefをエラーアンプ14の非反転入力端子に供給する。基準電圧源13の負極は接地され、基準電圧源13の正極はエラーアンプ14の非反転入力端子に接続される。
【0031】
エラーアンプ14は、反転入力端子に入力される帰還電圧Vfbと、非反転入力端子に入力される基準電圧Vrefとの差である電圧差を増幅する。エラーアンプ14は、増幅された電圧差に応じた誤差信号Seを駆動部17に出力する。なお、誤差信号Seは、後述するように電流信号である。
【0032】
基準電圧決定部15は、入力電圧Vinと出力電圧Voutとに基づいて過電流検出特性を変化させ、変化させた過電流検出特性に従って検出基準電圧VTHを決定する。検出基準電圧VTHは、負荷電流Ifが過電流であるか否かの判断に用いられる。
【0033】
過電流検出部16は、基準電圧決定部15により決定された検出基準電圧VTHと、シャント抵抗18の電圧変換部11側の端部の電圧とに基づいて、電圧変換部11を流れる過電流を検出する。本実施の形態において、トランジスタT11のエミッタ電圧Veが、シャント抵抗18の電圧変換部11側の端部の電圧に相当する。過電流検出部16は、過電流の検出結果を示す検出信号Dcを出力する。
【0034】
駆動部17は、合成信号Sgに基づいて、電圧変換部11を制御する。合成信号Sgは、誤差信号Seと検出信号Dcとが端子1Gにおいて合成された信号である。駆動部17は、通常モードにおいて、負帰還制御に基づく制御信号C1を生成し、その生成した制御信号C1をトランジスタT11のベースに出力する。これにより、一定の出力電圧Voutが、トランジスタT11のコレクタから出力される。駆動部17は、保護モードにおいて、出力電圧Vout及び電圧変換部11に流れる電流Ifの両者が低下するように電圧変換部11を駆動させる。
【0035】
シャント抵抗18は、負荷電流Ifを検出するために用いられる。シャント抵抗18の一端は、電圧変換装置1の入力端子1Pに接続される。シャント抵抗18の他端は、電圧変換部11(トランジスタT11のエミッタ)及び過電流検出部16に接続される。
【0036】
[1.2.基準電圧決定部15の構成]
図2は、
図1に示す基準電圧決定部15及び過電流検出部16の構成の一例を示す回路図である。
図2において、帰還抵抗12A及び12Bと、基準電圧源13と、エラーアンプ14の表示を省略している。
【0037】
図2を参照して、基準電圧決定部15は、減算部151と、基準電流算出部152と、検出抵抗153とを含む。減算部151は、出力電圧V
outをトランジスタT11のエミッタ電圧V
eから減算した減算値K1を算出する。減算値K1は、電圧信号である。基準電流算出部152は、減算部151により算出された減算値K1から、検出基準電流I
dsを算出する。検出抵抗153は、基準電流算出部152により算出された検出基準電流I
dsに基づいて検出基準電圧V
THを生成するために用いられる。
【0038】
(減算部151の構成)
図2を参照して、減算部151は、オペアンプOP1と、抵抗R11~R14とを含む。減算部151は、オペアンプOP1を用いた減算回路である。
【0039】
抵抗R11の一端は、抵抗R12の一端と、シャント抵抗18の他端と、過電流検出部16に含まれるオペアンプOP2の非反転入力端子とに接続される。抵抗R11の他端は、オペアンプOP1の非反転入力端子に接続される。
【0040】
抵抗R12の一端は、抵抗R11の一端と、シャント抵抗18の他端と、オペアンプOP2の非反転入力端子とに接続される。抵抗R12の他端は、接地される。
【0041】
抵抗R13の一端は、電圧変換部11(トランジスタT11のコレクタ)に接続される。抵抗R13の他端は、オペアンプOP1の反転入力端子と、抵抗R14の一端とに接続される。
【0042】
抵抗R14の一端は、抵抗R13の他端と、オペアンプOP1の反転入力端子とに接続される。抵抗R13の他端は、オペアンプOP1の出力端子と、基準電流算出部152に含まれるバッファB21とに接続される。
【0043】
オペアンプOP1の反転入力端子及び非反転入力端子の接続については、説明済みであるため省略する。オペアンプOP1の出力端子は、抵抗R14の他端と、基準電流算出部152に含まれるバッファB21とに接続される。
【0044】
(基準電流算出部152の構成)
図2を参照して、基準電流算出部152は、乗除算回路である。具体的には、基準電流算出部152は、定電流源G22を流れる電流I
bと定電流源G23を流れる電流I
cとの乗算値を算出する。基準電流算出部152は、算出された除算値を抵抗R21を流れる電流I
aで除算して除算値を生成する。基準電流算出部152は、生成された除算値を検出基準電流I
dsとして出力する。
【0045】
基準電流算出部152は、トランジスタT21~T26と、抵抗R21~R23と、定電流源G21~G23と、端子E21と、バッファB21とを含む。トランジスタT21~T26の各々は、NPN型のバイポーラトランジスタである。
【0046】
抵抗R21の一端は、端子E21及びトランジスタT22のベースに接続される。抵抗R21の他端は、接地される。
【0047】
抵抗R22の一端は、電源電圧VDDに接続される。抵抗R22の他端は、抵抗R23の一端と、トランジスタT23及びT26の各々のベースとに接続される。
【0048】
抵抗R23の一端は、抵抗R22の他端と、トランジスタT23及びT26の各々のベースとに接続される。抵抗R23の他端は、接地される。
【0049】
端子E21は、トランジスタT21のエミッタと、トランジスタT22のベースと、抵抗R21の一端と、バッファB21とに接続される。
【0050】
バッファB21は、減算部151と基準電流検出部152とのインピーダンスを整合するために設けられる。バッファB21は、端子E21に接続される。バッファB21は、オペアンプOP1の出力端子と、抵抗R14の他端とに接続される。
【0051】
トランジスタT21のコレクタは、電源電圧VDDに接続される。トランジスタT21のベースは、トランジスタT23のエミッタと、トランジスタT24のコレクタとに接続される。トランジスタT21のエミッタは、端子E21に接続される。
【0052】
トランジスタT22のコレクタは、検出抵抗153の一端と、過電流検出部16に含まれるオペアンプOP2の非反転入力端子に接続される。トランジスタT22のベースは、端子E21及び抵抗R21の一端に接続される。トランジスタT22のエミッタは、定電流源G21を介して接地される。
【0053】
トランジスタT23のコレクタは、電源電圧VDDに接続される。トランジスタT23のベースは、抵抗R22の他端及び抵抗R23の一端に接続される。トランジスタT23のエミッタは、トランジスタT21のベース及びトランジスタT24のコレクタに接続される。
【0054】
トランジスタT24のコレクタは、トランジスタT21のベース及びトランジスタT23のエミッタに接続される。トランジスタT24のベースは、トランジスタT25のエミッタに接続され、定電流源G22を介して接地される。トランジスタT24のエミッタは、定電流源G21を介して接地される。
【0055】
トランジスタT25のコレクタは、電源電圧VDDに接続される。トランジスタT25のベースは、トランジスタT26のエミッタに接続され、定電流源G23を介して接地される。トランジスタT25のエミッタは、トランジスタT24のベースに接続され、定電流源G22を介して接地される。
【0056】
トランジスタT26のコレクタは、電源電圧VDDに接続される。トランジスタT26のベースは、抵抗R22の他端及び抵抗R23の一端に接続される。トランジスタT26のエミッタは、トランジスタT25のベースに接続され、定電流源G23を介して接地される。
【0057】
(検出抵抗153の接続)
検出抵抗153の一端は、トランジスタT22のコレクタ及びオペアンプOP2の反転入力端子に接続される。検出抵抗153の他端は、入力端子1P及びシャント抵抗18の一端に接続される。つまり、検出抵抗153の一端は、基準電流算出部152から検出基準電流Idsの供給を受ける。検出抵抗153の一端の電圧値が、検出基準電圧VTHとしてオペアンプOP2の反転入力端子に入力される。検出抵抗153の他端の電圧値は、検出抵抗153の抵抗値と検出基準電流Idsとの乗算値である。
【0058】
[1.3.過電流検出部16の構成]
図2を参照して、過電流検出部16は、オペアンプOP2と、トランジスタT61と、ダイオードD61と、定電流源G61とを含む。
【0059】
オペアンプOP2は、比較器として用いられる。オペアンプOP2の非反転入力端子は、シャント抵抗18の他端と、抵抗R11の一端と、抵抗R12の一端とに接続される。オペアンプOP2の反転入力端子は、検出抵抗153の一端と、トランジスタT22のコレクタとに接続される。オペアンプOP2の出力端子は、トランジスタT61のベースに接続される。
【0060】
トランジスタT61は、NPN型のバイポーラトランジスタである。トランジスタT61のコレクタは、定電流源G61を介して電源電圧VDDに接続される。また、トランジスタT61のコレクタは、ダイオードD61のアノードに接続される。トランジスタT61のベースは、オペアンプOP2の出力端子に接続される。トランジスタT61のエミッタは、接地される。
【0061】
ダイオードD61は、エラーアンプ14から流入する電流を遮断する。ダイオードD61のアノードは、電源電圧VDD及びトランジスタT61のコレクタに接続される。ダイオード61のカソードは、端子1Gに接続される。
【0062】
[2.1.電圧変換装置1の動作]
(基準電圧決定部15の動作)
図2を参照して、基準電圧決定部15において、減算部151は、出力電圧V
outをトランジスタT11のエミッタ電圧V
eから減算し、その減算により生成された減算値K1を基準電流算出部152に出力する。
【0063】
基準電流算出部152は、減算部151から減算値K1を受け、その受けた減算値K1を用いて検出基準電流Idsを算出する。基準電流算出部152により算出された検出基準電流Idsと、検出抵抗153の抵抗値との乗算値が、検出基準電圧VTHとして過電流検出部16に入力される。基準電流算出部152の動作の詳細については、後述する。
【0064】
(過電流検出部16の動作)
過電流検出部16において、オペアンプOP2は、トランジスタT11のエミッタ電圧Veを検出基準電圧VTHと比較する。エミッタ電圧Veが検出基準電圧VTHよりも小さい場合、過電流がトランジスタT11に流れていることを示す。この場合、トランジスタT61が、オペアンプOP2によりオンされる。トランジスタT61がオンされた場合、電流信号である検出信号Dcが、電源電圧VDDからダイオードD61を介して端子1Gに供給される。
【0065】
エミッタ電圧Veが検出基準電圧VTH以上である場合、トランジスタT61はオフを継続する。過電流がトランジスタT11に流れていないため、電流が、電源電圧VDDからダイオードD61を経由して端子1Gに供給されない。つまり、エミッタ電圧Veが検出基準電圧VTH以上である場合、検出信号Dcはゼロである。
【0066】
(駆動部17の動作)
エラーアンプ14から出力される誤差信号Seは、電流信号であり、端子1Gにおいて、検出信号Dcと合成される。誤差信号Seと検出信号Dcとが端子1Gで合成されることにより、合成信号Sgが生成される。駆動部17は、合成信号Sgに従ってトランジスタT11を駆動する。
【0067】
検出信号Dcの電流レベルがゼロでない場合、合成信号Sgの電流レベルが増加する。つまり、過電流がトランジスタT11に流れている場合、合成信号Sgの電流レベルが増加する。この場合、駆動部17は、トランジスタT11のベース電流を減少させることにより、出力電圧Vout及び負荷電流Ifを低下させる。
【0068】
検出信号Dcの電流レベルがゼロである場合、合成信号Sgは、誤差信号Seに一致する。つまり、過電流がトランジスタT11に流れていない場合、合成信号Sgは、誤差信号Seに一致する。駆動部17は、合成信号Sgに基づく負帰還制御を実行して、出力電圧Voutが一定となるように、トランジスタT11を制御する。
【0069】
[2.2.過電流検知特性の変化]
トランジスタT11の許容損失は、電圧変換装置1に入力される入力電圧Vinに応じて変化する。電圧変換装置1は、入力電圧Vinと出力電圧Voutとに基づいて検出基準電圧VTHを決定する。これにより、電圧変換装置1は、トランジスタT11の許容損失が変化した場合であっても、トランジスタT11の許容損失に応じて過電流検出特性を変化させることができる。以下、過電流検知特性を変化させる原理について説明する。
【0070】
[2.2.1.許容損失の変化]
最初に、トランジスタT11の許容損失の変化について説明する。トランジスタT11の消費電力は、下記式(1)のように表すことができる。
【0071】
【0072】
式(1)において、PT11は、トランジスタT11の消費電力である。Veは、トランジスタT11のエミッタ電圧である。Voutは、電圧変換装置1の出力電圧であり、トランジスタT11のコレクタ電圧に相当する。Ifは、負荷電流である。
【0073】
トランジスタT11の消費電力PT11がトランジスタT11の許容損失Padに達した場合における負荷電流Ifを、許容負荷電流If_adと定義する。許容負荷電流If_adは、下記式(2)のように表される。
【0074】
【数2】
式(2)において、P
adは、トランジスタT11の許容損失である。I
f_adは、許容負荷電流である。式(2)は、許容損失P
ad及び許容負荷電流I
f_adを代入した式(1)を許容負荷電流I
f_adについて解くことで得られる。式(2)に示すように、許容負荷電流I
f_adは、出力電圧V
outをトランジスタT11のエミッタ電圧V
eから減算した減算値の逆数に比例する。
【0075】
ここで、出力電圧Voutを許容負荷電流If_adの関数として表すことを考える。電圧降下がシャント抵抗18において発生する。従って、トランジスタT11のエミッタ電圧Veは、下記式(3)のように表される。
【0076】
【0077】
式(3)において、Veは、トランジスタT11のエミッタ電圧である。Vinは、電圧変換装置1の入力端子1Pに入力される入力電圧である。Rsは、シャント抵抗18の抵抗値である。式(3)を式(1)に代入することにより、下記式(4)が得られる。
【0078】
【数4】
式(4)を出力電圧V
outについて解いた場合、出力電圧V
outは、下記式(5)で表される。
【0079】
【0080】
トランジスタT11の許容損失Padを式(5)のPT11に代入し、入力電圧Vinを所定の値に設定する。これにより、入力電圧Vinが所定の値である場合における許容損失線が得られる。許容損失線は、負荷電流Ifと出力電圧Voutとによって定義される2次元座標において許容損失を示す線である。
【0081】
許容損失線の具体例を説明する。トランジスタT11の許容損失Padは、下記の式(6)で表される。
【0082】
【0083】
式(6)において、Tjmaxは、トランジスタT11のジャンクション温度の上限値である。Taは、トランジスタT11の周囲温度である。θj-aは、トランジスタT11の熱抵抗である。
【0084】
トランジスタT11の動作条件を以下のように設定する。ジャンクション温度Tjmaxが175(℃)であり、周囲温度Taが125(℃)であり、熱抵抗θT-aが50(℃/W)である。この場合、トランジスタT11の許容損失は、式(6)より、1(W)である。
【0085】
図3は、許容損失が1(W)であるトランジスタT11の許容損失線の一例を示すグラフである。
図3を参照して、許容損失線21は、入力電圧V
inが6(V)であり、かつ、トランジスタT11の消費電力が許容損失に達した場合における、出力電圧V
outと許容負荷電流I
f_adとの関係を示す。許容損失線22は、入力電圧V
inが8(V)であり、かつ、トランジスタT11の消費電力が許容損失に達した場合における、出力電圧V
outと許容負荷電流I
f_adとの関係を示す。許容損失線23は、入力電圧V
inが10(V)であり、かつ、トランジスタT11の消費電力が許容損失に達した場合における、出力電圧V
outと許容負荷電流I
f_adとの関係を示す。
【0086】
図3を参照して、許容負荷電流I
f_adは、入力電圧V
inの増加に従って減少する。例えば、出力電圧V
outが4(V)であり、かつ、入力電圧V
inが6(V)である場合、許容負荷電流I
f_adは、約550mAである。出力電圧V
outが4(V)であり、かつ、入力電圧V
inが8(V)である場合、許容負荷電流I
f_adは、約250mAである。出力電圧V
outが4(V)であり、かつ、入力電圧V
inが10(V)である場合、許容負荷電流I
f_adは、約170mAである。つまり、許容損失線は、入力電圧V
inの増加に従って許容負荷電流I
f_adが減少する方向にシフトする。これにより、基準電圧決定部15は、入力電圧V
inが変化した際に、トランジスタT11の消費電力がトランジスタT11の許容損失を超えることを効果的に抑制できる。
【0087】
[2.2.2.過電流検知特性の変化]
図4~
図6は、入力電圧V
inが6(V)、8(V)及び10(V)である場合における電圧変換装置1の過電流検知特性を示すグラフである。
図4~
図6に示すように、電圧変換装置1の過電流検知特性は、入力電圧V
inに応じて変化する。
【0088】
以下、電圧変換装置1が、通常モードにおいて4(V)の出力電圧Voutを出力する場合を例に、電圧変換装置1の過電流検知特性の変化を説明する。
【0089】
図4を参照して、入力電圧V
inが6(V)である場合、電圧変換装置1は、出力電圧V
out及び負荷電流I
fを検知特性線31に従って変化させる。検知特性線31は、定電圧特性線31Aと、保護特性線31Bとを有する。
【0090】
定電圧特性線31Aは、通常モードにおける電圧変換装置1の動作を示す。出力電圧Voutが4(V)である場合、電圧変換装置1は、負荷電流Ifが0(mA)以上470(mA)以下の範囲で負荷電流Ifを変化させることができる。
【0091】
保護特性線31Bは、保護モードにおける電圧変換装置1の動作を示す。出力電圧Voutが4(V)であり、かつ、負荷電流Ifが470(mA)より大きい場合、電圧変換装置1は、保護特性線31Bに従って、出力電圧Vout及び負荷電流Ifの両者を低下させる。負荷電流Ifが保護特性線31Bに基づいて低下した場合、負荷電流Ifは、許容損失線21の負荷電流よりも小さい。
【0092】
保護特性線31Bは、許容損失線21と略並行である。つまり、保護特性線31Bが許容損失線21の特性と同じ特性を有することが分かる。
【0093】
図5を参照して、入力電圧V
inが8(V)である場合、電圧変換装置1は、出力電圧V
out及び負荷電流I
fを検知特性線32に従って変化させる。検知特性線32は、定電圧特性線32Aと、保護特性線32Bとを有する。
【0094】
定電圧特性線32Aは、通常モードにおける電圧変換装置1の動作を示す。出力電圧Voutが4(V)である場合、電圧変換装置1は、負荷電流Ifが0(mA)以上220(mA)以下の範囲で負荷電流Ifを変化させることができる。
【0095】
保護特性線32Bは、保護モードにおける電圧変換装置1の動作を示す。出力電圧Voutが4(V)であり、かつ、負荷電流Ifが220(mA)より大きい場合、電圧変換装置1は、保護特性線32Bに従って、出力電圧Vout及び負荷電流Ifの両者を低下させる。負荷電流Ifが保護特性線32Bに基づいて低下した場合、負荷電流Ifは、許容損失線22の負荷電流よりも小さい。
【0096】
保護特性線32Bは、許容損失線22と略並行である。つまり、保護特性線32Bは、許容損失線22の特性と同じ特性を有する。
【0097】
図6を参照して、入力電圧V
inが10(V)である場合、電圧変換装置1は、出力電圧V
out及び負荷電流I
fを検知特性線33に従って変化させる。検知特性線33は、定電圧特性線33Aと、保護特性線33Bとを有する。
【0098】
定電圧特性線33Aは、通常モードにおける電圧変換装置1の動作を示す。出力電圧Voutが10(V)である場合、電圧変換装置1は、負荷電流Ifが0(mA)以上155(mA)以下の範囲で負荷電流Ifを変化させることができる。
【0099】
保護特性線33Bは、保護モードにおける電圧変換装置1の動作を示す。出力電圧Voutが4(V)であり、かつ、負荷電流Ifが155(mA)より大きい場合、電圧変換装置1は、保護特性線33Bに従って、出力電圧Vout及び負荷電流Ifの両者を低下させる。負荷電流Ifが保護特性線33Bに基づいて低下した場合、負荷電流Ifは、許容損失線23の負荷電流よりも小さい。
【0100】
保護特性線33Bは、許容損失線23と略並行である。つまり、保護特性線33Bは、許容損失線23の特性と同じ特性を有する。
【0101】
電圧変換装置1が保護モードで動作する場合に用いられる保護特性線は、出力電圧Vout及び負荷電流Ifによって定義される2次元座標において、出力電圧Voutが負荷電流Ifの低下に伴って低下することを示す曲線である。保護特性線は、許容損失線とともに移動する。つまり、保護特性線は、入力電圧Vinが高くなるにつれて、負荷電流Ifが小さくなる方向にシフトする。
【0102】
[2.2.3.検知特性線の導出]
(定電圧特性線の導出)
定電圧特性線は、電圧変換部11が出力すべき電圧として設定された定電圧を示す。定電圧が4(V)である場合、定電圧特性線は、出力電圧Voutが4(V)で一定の直線として求められる。
【0103】
(保護特性線の導出)
保護特性線を導出するにあたり、最初に、検出基準電流Idsを導出する。検出基準電流Idsの単位はアンペア(A)である。このため、検出基準電流Idsを下記式(7)のように表すことができる。式(7)において、Ia~Icの各々は電流である。電流Iaは、変数であり、抵抗R21を流れる電流である。電流Ibは、固定値であり、定電流源G22を流れる電流である。Icは、固定値であり、定電流源G23を流れる電流である。
【0104】
【0105】
電流Iaが抵抗R21を流れる電流であるため、電流Iaは、下記式(8)で表される。
【0106】
【0107】
式(8)の右辺において、分子は、出力電圧V
outをトランジスタT11のエミッタ電圧Veから減算した減算値であり、
図2に示す端子E21における電圧に相当する。
【0108】
式(8)において、R
21は、
図2に示す抵抗R21の抵抗値である。式(8)を式(7)に代入することにより、下記式(9)が得られる。乗除算回路である基準電流算出部152は、式(9)で表される演算を実行する。
【0109】
【0110】
式(9)に示すように、検出基準電流Idsは、式(2)に示す負荷電流If_adと同様に、出力電圧VoutをトランジスタT11のエミッタ電圧Veから減算した減算値K1の逆数に比例する。式(9)は、検出基準電流Idsを、出力電圧VoutとトランジスタT11のエミッタ電圧Veとに基づいて制御できることを示している。これにより、後述するように、保護特性線を許容損失線と略並行にすることができ、許容損失線と保護特性線との間隔を短くすることができる。
【0111】
検出基準電圧VTHの導出を説明する。上述のように、検出基準電圧VTHは、検出抵抗153の他端の電圧値である。従って、検出基準電圧VTHは、検出抵抗153の抵抗値を検出基準電流Idsに乗算することにより得られる。検出基準電圧VTHは、式(9)を用いて、下記式(10)のように表される。
【0112】
【0113】
式(10)は、式(9)の両辺に、検出抵抗153の抵抗値R
detを乗算することにより得られる。式(10)により得られる検出基準電圧V
THが
図2に示すオペアンプOP2の非反転入力端子に入力される。
【0114】
次に、式(10)により得られる検出基準電圧VTHと、許容損失線との関係について説明する。
【0115】
図2に示すオペアンプOP2は、式(10)により得られる検出基準電圧V
THを、トランジスタT11のエミッタ電圧V
eと比較する。つまり、オペアンプOP2は、検出抵抗153で発生する電圧降下量をシャント抵抗18で発生する電圧降下量と比較する。検出抵抗153で発生する電圧降下量がシャント抵抗18で発生する電圧降下量に一致する場合、下記式(11)が成立する。
【0116】
【数11】
また、シャント抵抗18において電圧降下が発生するため、トランジスタT11のエミッタ電圧V
eは、下記式(12)のように表される。
【0117】
【0118】
式(12)が代入された式(11)を出力電圧Voutについて解くことにより、出力電圧Voutと負荷電流Ifとの関係を示す式(13)が得られる。
【0119】
【0120】
出力電圧Voutを示す式(13)を、許容損失線を示す式(5)と比較した場合、出力電圧Voutが、トランジスタT11の許容損失線と同様の変化をすることが分かる。式(13)を用いることにより、許容損失線と略並行である保護特性線を設定することができる。この結果、電圧変換装置1の検知特性線をトランジスタT11の許容損失線に近づけることができる。
【0121】
図7は、式(13)に基づいて算出された保護特性線の一例を示すグラフである。
図7において、保護特性線と許容損失線との関係を示すために、出力電圧V
outの上限値を設定していない。実際には、
図4~
図6に示す例のように、所定の値が出力電圧V
outの上限値として設定される。
【0122】
図7に示す保護特性線31Bは、
図4に示す保護特性線31Bと同一である。
図7に示す保護特性線32Bは、
図5に示す保護特性線32Bと同一である。
図7に示す保護特性線33Bは、
図4に示す保護特性線33Bと同一である。
図7に示す許容損失線21~23は、
図3に示す許容損失線21~23と同じである。
【0123】
図7に示す保護特性線31B、32B及び33Bの各々は、下記の条件に基づいて式(13)を計算することにより得られる。具体的には、シャント抵抗18の抵抗値R
21が0.25(Ω)である。抵抗R21の抵抗値が100(kΩ)である。電流I
b及びI
cの各々が10(μA)である。検出抵抗153の抵抗値R
detが22.5(kΩ)である。
【0124】
図7に示すように、保護特性線が、許容損失線と同様に、入力電圧V
inの変化に応じて変化していることが分かる。また、入力電圧V
inが一定である場合、保護特性線は、許容損失線よりも低電流域に位置している。低電流域とは、出力電圧V
outと負荷電流I
fにより定義される2次元座標空間において、許容損失線よりも負荷電流が低い領域である。
【0125】
出力電圧Voutの上限が設定されない場合であっても、保護特性線は、許容損失線と交差することなく、許容損失線と略並行のままである。例えば、入力電圧Vinが6(V)である場合、保護特性線31Bは、出力電圧Voutに関係なく、許容損失線21の低電流域に位置している。つまり、出力電圧Voutが4(V)でない場合であっても、電圧変換装置1は、式(13)に基づく保護特性線に従って、トランジスタT11の消費電力が許容損失を超えないように、トランジスタT11を制御できる。
【0126】
つまり、式(13)に示す保護特性線を用いることにより、電圧変換装置1は、トランジスタT11の消費電力が電圧変換部11の許容損失を超えないように、出力電圧Vout及び負荷電流Ifを低下させることができる。
【0127】
以上説明したように、電圧変換装置1において、基準電圧決定部15は、出力電圧VoutをトランジスタT11のエミッタ電圧Veから減算した減算値K1に基づいて検出基準電圧VTHを決定する。エミッタ電圧Veは、入力電圧Vinに応じて変化する。つまり、検出基準電圧VTHは、入力電圧Vinと出力電圧Voutとに従って変化する過電流検出特性に基づいて決定される。過電流検出部16は、エミッタ電圧Veを、基準電圧決定部15により決定された検出基準電圧VTHと比較することにより、電圧変換部11に流れる過電流を検出する。過電流検出部16が過電流を検出した場合、駆動部17は、出力電圧Vout及び負荷電流Ifの両者が低下するように電圧変換部11を制御する。
【0128】
この結果、電圧変換装置1は、入力電圧Vinが変動した場合においても、過電流の検知特性線をトランジスタT11の許容特性線に近づけることができる。電圧変換装置1は、トランジスタT11の動作領域を有効に利用できる。例えば、トランジスタT11を使用する従来の電圧変換装置に比べて、電圧変換装置1は、負荷電流Ifを大きくできる。負荷電流Ifの上限値が従来の電圧変換装置と電圧変換装置1とで同じである場合、電圧変換装置1は、従来の電圧変換装置1が使用するトランジスタT11と比べて、サイズの小さいトランジスタT11を使用できる。
【0129】
[変形例]
図8は、
図2に示す減算部151の変形例である減算部151Aの構成を示す回路図である。
図8を参照して、減算部151Aは、減算部151に含まれるオペアンプOP1に代えて、オペアンプOP7を含む。
【0130】
オペアンプOP7は、差動増幅部A71と、トランジスタT71と、ダイオードD71及びD72と、反転入力端子E71と、非反転入力端子E72と、出力端子73とを含む。
【0131】
反転入力端子E71は、差動増幅部A71と、抵抗R13の他端と、抵抗R13の一端とに接続される。非反転入力端子E72は、差動増幅A71と、抵抗R11の他端とに接続される。出力端子E73は、抵抗R14の他端と、
図2に示すバッファB21とに接続される。トランジスタT71のコレクタは、電源電圧VDDに接続される。トランジスタT71のベースは、差動増幅部A71に接続される。トランジスタT71のエミッタは、トランジスタD71のアノードと、出力端子E73とに接続される。ダイオードD71のカソードは、ダイオードD72のアノードに接続される。ダイオードD72のカソードは接地される。
【0132】
オペアンプOP7の動作を説明する。差動増幅部A71は、反転入力端子E71に入力された電圧V-と、非反転入力端子E72に入力された電圧V+との差である電圧Vdを、トランジスタT71のベースに出力する。ダイオードD71及びD71が、トランジスタT71のエミッタと接地との間で直列に接続されているため、トランジスタT71のエミッタ電圧は、1.2Vより大きくなる。この結果、1.2Vよりも大きい電圧が、出力端子E23を介してオペアンプOP7から出力される。
【0133】
例えば、抵抗R11~R14の抵抗値が同じである場合、減算値K1は、出力端子E73の電圧値に一致する。この場合、トランジスタT71のエミッタ電圧が、減算部151Aから出力される減算値K1として減算部151Aから出力される。トランジスタT71のエミッタ電圧の下限値が1.2Vであるため、減算値K1の下限値が設定される。
【0134】
減算値K1の下限値が設定された場合、検出基準電流Idsの上限値が設定される。検出基準電流Idsは、式(9)に示すように、減算値K1の逆数に比例するためである。式(9)において、減算値K1は、出力電圧Voutをエミッタ電圧Veから減算した値である。検出基準電圧VTHは、検出抵抗153の抵抗値Rdetを検出基準電流Idsに乗算した値である(式(10)参照)。つまり、減算値K1の下限値が設定された場合、検出基準電圧VTHの上限値が設定される。
【0135】
図9は、検出基準電圧V
THの上限値が設定された場合における電圧変換装置1の検知特性線の一例を示す図である。
図9を参照して、検知特性線41は、負荷電流I
fの上限値を設定した検知特性線31に相当する。つまり、検知特性線41は、入力電圧V
inが6(V)であり、かつ、検出基準電圧V
THの上限をした場合における出力電圧V
outと負荷電流I
fとの関係を示す。検知特性線41において、負荷電流I
fの上限値が約300(mA)である。
【0136】
減算値K1の下限値を設定しない場合、負荷電流I
fの上限値は、定電圧特性線と保護特性線との交点である。例えば、入力電圧V
inが6(V)であり、かつ、減算値K1の下限値を設定しない場合、負荷電流I
fの上限値は、
図4に示すように、約475(mA)である。これに対して、
図9に示す例では、負荷電流I
fの上限値が、約300(mA)である。つまり、減算値K1を設定することにより、負荷電流I
fの上限値を低下させることができる。負荷電流I
fの上限値を低下させた場合、例えば、負荷電流IfがトランジスタT11のコレクタ電流の低格値を超えることを防ぐことができるため、トランジスタT11の破損を防ぐことが可能となる。
【0137】
なお、
図7に示す例では、直列接続された2つのダイオードD11及び12を用いて減算値K1の下限値を設定する例を説明したが、これに限られない。減算部151Aは、1つのダイオードを用いて減算値K1の下限値を設定してもよいし、3つ以上のダイオードを用いて減算値K1の下限値を設定してもよい。つまり、オペアンプOP7の出力電圧の下限を設定できるのであれば、オペアンプOP7の出力電圧の下限を設定するための構成は特に限定されない。
【0138】
上記実施の形態において、シャント抵抗18が、入力端子1Pと、トランジスタT11のエミッタとの間に接続される例を説明したが、これに限られない。シャント抵抗18は、トランジスタT11のコレクタと、出力端子1Qとの間に接続されてもよい。つまり、シャント抵抗18は、入力端子1Pと出力端子1Qとの間に接続されればよい。
【0139】
上記実施の形態において、検出抵抗153の他端が入力端子1Pに接続される例を説明したが、これに限られない。シャント抵抗18が、トランジスタT11のコレクタと出力端子1Qとの間に接続される場合、検出抵抗153の他端は、トランジスタT11のコレクタとシャント抵抗18におけるトランジスタT11側の端部とに接続される。つまり、検出抵抗の他端は、シャント抵抗18の入力端子側の端部と接続されればよい。
【0140】
なお、上記実施の形態において、電圧変換装置1が負帰還制御を実行する例を説明したが、これに限られない。電圧変換装置1が負帰還制御を実行しなくてもよい。この場合、電圧変換装置1は、負帰還制御のための構成を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0141】
1 電圧変換装置
11 電圧変換部
15 基準電圧決定部
16 過電流検出部
17 駆動部
18 シャント抵抗
151 減算部
152 基準電流算出部
153 検出抵抗