(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】撮像方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20221005BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221005BHJP
G06T 7/187 20170101ALI20221005BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
A61B6/03 360G
G06T7/00 612
G06T7/187
G06T7/00 C
(21)【出願番号】P 2018546611
(86)(22)【出願日】2017-02-24
(86)【国際出願番号】 AU2017000054
(87)【国際公開番号】W WO2017147642
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-01-23
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516308799
【氏名又は名称】4ディーメディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】フォウラス、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】サマラージュ、チャミンダ ラジーブ
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-521118(JP,A)
【文献】特表2008-529640(JP,A)
【文献】特開2006-081906(JP,A)
【文献】SHANG, Yanfeng et al.,Vascular Active Contour for Vessel Tree Segmentation,IEEE TRANSACTIONS ON BIOMEDICAL ENGINEERING,2011年,Vol.58, No. 4,1023-1032 頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤を使用せずに取得された少なくとも1つの生体内画像内の血管系異常を診断するために、前記生体内画像を処理する方法であって、
確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、前記生体内画像にマルチスケールフィルタを適用するステップと、
前記確率フィールドから血管構造木を抽出するために、前記確率フィールド上で血管をセグメント化するステップと、
前記血管構造木のジオメトリを定量化するために、セグメント化された血管構造木に前記スケールフィールドをマッピングするステップと、
血管系内の異常を診断するために、計算されたジオメトリ上で自動ジオメトリ分析を実行するステップと、を含み、
前記確率は、生体内の3次元画像のボクセルが、関心対象の形状の一部である確率を表し、
前記スケールは、ボクセルが関心対象物の形状に属する確率が最も高いときのフィルタのサイズを表すことを特徴とする方法。
【請求項2】
確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるステップを備え、
前記確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるステップは、
前記生体内画像にマルチスケールフィルタを適用するステップと、
複数の確率フィールドにおけるボクセルごとの確率の比較を行い、最も確率の高いものを選択することにより、前記複数の確率フィールドから確率フィールドの全体を生成するステップと、
最も高い確率が出現するときのスケールを各ボクセルについて記録することにより、対応するスケールフィールドの全体を生成するステップと、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マルチスケールフィルタを適用するステップは、前記生体内画像を逆転するステップまたは前記生体内画像を効率的に逆転するフィルタを使用するステップを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マルチスケールフィルタを適用するステップは、2つの段階のステップ、すなわち粗いスケールのフィルタを適用する第1の段階のステップと、細かいスケールのフィルタを適用する第2の段階のステップと、を含む請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記血管をセグメント化するステップは、確率フィールド上で領域成長操作を実行するステップを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記生体内画像にマルチスケールフィルタを適用するステップは、形状フィルタを使用するステップを含む請求項1から5のいずれかに方法。
【請求項7】
前記形状フィルタで使われる形状はチューブであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生体内画像にマルチスケールフィルタを適用するステップは、造影剤を使用せずに取得した生体内3次元画像にマルチスケールフィルタを適用するステップを含む請求項1から7のいずれかに方法。
【請求項9】
前記マルチスケールフィルタを適用するステップは、形状フィルタを適用するステップを含み、
前記形状フィルタに使われる形状はチューブであり、
前記確率フィールドは、前記生体内画像のボクセルが、チューブ状構造の一部となっている確率を表し、
前記スケールフィールドは、前記ボクセルがチューブ状構造の一部となっている確率が最も高いときのフィルタのサイズを表すことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記形状フィルタはヘシアンベースのフィルタである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記自動ジオメトリ分析を実行するステップは、血管構造木内の第1の位置における血管サイズと、血管構造木内の第2の位置における血管サイズと、を比較するステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記自動ジオメトリ分析を実行するステップは、血管構造木内の枝の長さ方向に沿った血管サイズの変化を計算するステップを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
セグメント化された血管構造木全体で自動分析を実行するステップを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
造影剤を使用せずに生体内3次元画像を取得するステップを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
肺の生体内3次元画像を取得するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
血管系内の塞栓をスキャンする
ために自動ジオメトリ分析を実行するステップを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記生体内画像は肺の画像であり、
前記血管系内の異常は肺血管系内の血管系異常である請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
血管系のセグメントを正常か異常かに分類するために、ジオメトリを分析するステップを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記マルチスケールフィルタを適用するステップを実行する前に画像を反転させるステップを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
造影剤を使用せずに取得された少なくとも1つの生体内画像内の血管系異常を診断するために、前記生体内画像を処理する方法であって、
確率データおよびスケールデータを与えるために、前記生体内画像にマルチスケールフィルタを適用するステップと、
血管系内の異常を診断するために、前記確率データ上および/または前記スケールデータ上で自動分析を実行するステップと、を含み、
前記確率は、生体内の3次元画像のボクセルが、関心対象の形状の一部である確率を表し、
前記スケールは、ボクセルが関心対象物の形状に属する確率が最も高いときのフィルタのサイズを表すことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記生体内画像にマルチスケール形状フィルタを適用するステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記自動分析を実行するステップは、第1の位置における血管サイズと、第2の位置における血管サイズと、を比較するステップを含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記生体内画像から血管構造木を抽出するために、確率フィールド上で血管をセグメント化するステップを含む、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記血管構造木のジオメトリを定量化するために、セグメント化された血管構造木にスケールフィールドをマッピングするステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
造影剤を使用せずに取得された少なくとも1つの生体内画像内の血管系異常を診断するために、前記生体内画像を処理する方法であって、
確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、前記生体内画像にマルチスケールフィルタを適用するステップと、
血管系内の異常を診断するために、前記確率フィールド上および前記スケールフィールド上で自動ジオメトリ分析を実行するステップと、を含み、
前記確率は、生体内の3次元画像のボクセルが、関心対象の形状の一部である確率を表し、
前記スケールは、ボクセルが関心対象物の形状に属する確率が最も高いときのフィルタのサイズを表すことを特徴とする方法。
【請求項26】
造影剤を使用せずに取得された少なくとも1つの生体内画像内の肺血栓症を診断するために、前記生体内画像を処理する方法であって、
確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、前記生体内画像にマルチスケール形状フィルタを適用するステップと、
血管構造木を抽出するために、前記確率フィールド上で血管をセグメント化するステップと、
前記血管構造木のジオメトリを定量化するために、セグメント化された血管構造木に前記スケールフィールドをマッピングするステップと、
血管系内の異常を診断するために、前記血管構造木内の枝の長さ方向に沿った血管サイズの変化を計算するステップと、を含み、
前記確率は、生体内の3次元画像のボクセルが、関心対象の形状の一部である確率を表し、
前記スケールは、ボクセルが関心対象物の形状に属する確率が最も高いときのフィルタのサイズを表すことを特徴とする方法。
【請求項27】
造影剤を使用せずに取得された少なくとも1つの生体内画像内の肺血管系の肺血栓症を診断するために、前記生体内画像を処理する方法であって、
確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、ヘシアンベースのマルチスケール形状フィルタを適用するステップと、
確率フィールド上で領域成長操作を実行することにより、確率フィールドから得られた血管構造木をセグメント化するステップと、
前記血管構造木内の各枝の中心線を抽出することにより、前記血管構造木をスケルトン化するステップと、
スケルトン化された血管構造木内の各点における血管サイズを与えるために、前記スケルトン化された血管構造木に前記スケールフィールドをマッピングするステップと、
肺血栓症を診断するために、前記血管構造木内の枝の長さ方向の中心線に沿った血管サイズの変化を計算するステップと、を含み、
前記確率は、生体内の3次元画像のボクセルが、関心対象の形状の一部である確率を表し、
前記スケールは、ボクセルが関心対象物の形状に属する確率が最も高いときのフィルタのサイズを表すことを特徴とする方法。
【請求項28】
肺血管系内の異常を診断するために、生体内画像を処理する方法であって、
(i)1つ以上の血管を備える肺血管系の少なくとも1つの画像を与えるステップと、
(ii)肺血管系に関する確率フィールドおよびスケールフィールドを含む出力を生成するために、前記画像にフィルタを適用するステップと、
肺血管系のジオメトリをセグメント化および定量化するために、前記出力の1つまたは2つを使用するステップと、
(ii)肺血管系の1つ以上の血管内の異常を診断するために、ジオメトリ分析と連携して前記出力を分析するステップと、を含み、
前記画像は、造影剤を使用せずに生体内で取得されたものであり、
前記確率は、生体内の3次元画像のボクセルが、関心対象の形状の一部である確率を表し、
前記スケールは、ボクセルが関心対象物の形状に属する確率が最も高いときのフィルタのサイズを表すことを特徴とする方法。
【請求項29】
ステップ(ii)は、1つ以上の以下のサブステップ、
(ii)(a) 肺血管系に関する確率フィールドを与えるために、前記ステップ(i)から得られた画像上で、ヘシアンベースのマルチスケール形状フィルタを適用する実行するステップ、
(ii)(b) バイナリ画像を生成するために、肺血管系に関する前記確率フィールドのフルードフィル選択を実行するステップ、
(ii)(c) 前記バイナリ画像のバイナリセグメンテーションを実行するステップ、
(ii)(d) バイナリセグメンテーションから血管の中心線を抽出するステップ、
(ii)(e) 局所的ジオメトリデータを取得するために、
画像上の任意の所定の点がチューブ状構造の一部である確率が最も高いときのフィルタサイズである前記形状フィルタから得られた血管サイズを、血管構造木の中心線に沿った各点に関連付けるステップ、
を備える、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記出力を分析するステップは、血管の径の変化を計算するステップを含む、
請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記異常は1つ以上の肺血栓症を含む、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
造影剤を使用せずに取得された少なくとも1つの生体内肺画像および肺画像の時間連続から、換気/潅流の比を計算する方法であって、
確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、前記生体内肺画像にフィルタを適用するステップと、
前記確率フィールドから血管構造木を抽出するために、前記確率フィールド上で血管のセグメント化を行うステップと、
前記血管構造木のジオメトリを定量化するために、セグメント化された血管構造木に前記スケールフィールドをマッピングするステップと、
前記肺画像の時間連続から、肺のある部位の運動を測定するステップと、
換気/潅流の測定値を得るために、前記肺の部位の運動と、前記肺の部位の領域における血管系の血管サイズとを比較するステップと、を含
み、
前記確率は、生体内の3次元画像のボクセルが、関心対象の形状の一部である確率を表し、
前記スケールは、ボクセルが関心対象物の形状に属する確率が最も高いときのフィルタのサイズを表すことを特徴とする方法。
【請求項33】
前記肺の部位の変位を測定するステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記肺の部位の拡張を測定するステップを含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記肺の部位の複数の点における運動を測定するステップと、
得られた複数の測定値を平均化するステップと、を含む、請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記肺の部位の複数の点における運動を測定するステップと、
得られた複数の測定値を比較するステップを含む、請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記肺の部位は、セグメント化された血管系の枝の端点に配置される請求項32から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの画像は、複数の2D画像または3D画像の1つ、またはそれらの組み合わせである、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤を使用しない医療撮像の分野に関する。
【0002】
ある態様では本発明は、血管撮像、特に肺血管系などの血管撮像の分野に関する。
【0003】
ある特定の態様では本発明は、肺血栓症(PE)、例えば急性PEの診断技術としての利用に好適である。
【0004】
以下、便宜上、本発明をPEに関係する肺血管系の異常診断と関連付けて説明する。しかし本発明はそのようには限定されず、他の肺血管系異常や肺血管系以外の血管系異常の診断にも利用可能であると理解されたい。さらに、主に調査研究のための小動物の撮像を参照しながら本発明を説明する。しかし本発明はそのように限定されず、広範囲の人間の医療応用および獣医学応用に利用できる。
【0005】
さらに以下、便宜上、本発明をコンピューテッドトモグラフィ(CP)と関連付けて説明する。しかし本発明はそのような撮像技術に限定されず、他の撮像技術、例えばX線コンピューテッドトモグラフィ(X線CT)、特に4D-CT、超音波、あるいは3次元(3D)画像や、時間軸上の複数の3D画像を取得するその他の撮像法にも利用可能であると理解されたい。本発明は、3D再構成を生成するために一連の2次元(2D)画像を取得する技術も含むと理解されたい。
【背景技術】
【0006】
本明細書のドキュメント、デバイス、動作または知見に関するいかなる議論も、本発明の文脈を説明することを目的とすることを理解されたい。さらに本明細書の議論はすべて、本発明者の発案、および/または、本発明者の関連技術に関する問題認識から発している。さらに、本明細書におけるドキュメント、デバイス、動作または知見に関する材料の議論は、本発明者の知識および経験に関して、本発明の文脈を説明することを目的とする。従ってこうした議論のいかなるものも、先行技術に基づく材料形態の一部であることや、本開示および特許請求の優先日以前のオーストラリアその他における関連技術の共通一般知識であることを自白するものはない解釈されるべきである。
【0007】
かつては、肺などの内部組織の構造や機能を調べるためには、X線CTがラジオグラフィにおいて広く使われていた。単一の回転軸周りで取得された一連の2次元(2D)ラジオグラフィ画像から肺内部の3次元(3D)画像を生成するためには、通常デジタルジオメトリ処理が使われる。肺の特定の部位の断層画像(仮想的な「スライス」)を生成するために、CTはコンピュータ処理されたX線を使う。
【0008】
いわゆる4D撮像では、3D画像の時間連続が収集される。これは、一連の2D画像の取得と、2D画像から得られた3D画像の時間連続の再構成と、を含んでもよい。具体的には、4D-X線CTでは、定常状態にない対象物(例えば呼吸している人間)の周りを回転するX線源を用いて、X線のスライスデータが作成される。X線源の反対側には、X線検出器が配置される。4Dデータを取得するために、広範囲のX線CTデバイスを使うことができる。例えば4Dデータを取得するために、標準的なヘリカルまたはスパイラルのCT装置を使うことができる。初期のバージョンの撮像装置は、静止した患者の周りでX線源および検出器を回転させることにより動作した。それぞれの完全回転に続いて、患者は軸方向に移動され、次の回転が実行された。より新しい装置は、患者がゆっくりかつスムーズに円形シュラウドの中を滑る間に、X線源および検出器が連続回転できるように設計された。これらはヘリカルまたはスパイラルCT装置と呼ばれた。
【0009】
典型的なヘリカルまたはスパイラルCTスキャンでは、X線源は患者の周りを10から50回転する。各回転は、円形シュラウド(ここにX線源およびX線検出器が格納される)を通って移動するテーブル(この上に患者が横たわる)と連携する。最初のスキャンは約4回転/秒の速度で実行される。このとき検出器は、1回転あたり約1000個の「スナップショット」を取得する。各「スナップショット」は、X線源の1つの位置(アングルまたは投影アングル)で実行される。典型的には、1回の4D-CTで、40、000枚から200、000枚の画像が収集される。
【0010】
CTは、大抵の身体構造の撮像に使うことができるが、特に肺内部の急性および慢性の変化を診断するのに有用である。しかしながら、血管系や血管系の変化(例えばPE)は、鮮明な画像化が困難であり、通常コントラストや視認性を向上するためにヨウ素などの造影剤を使用する必要がある。
【0011】
PEは、血流により体内のどこかから流れてきたものによって起きる肺血管内の閉塞である(塞栓症)。一般にPEは、四肢(通常は脚)の深部静脈を発した血栓が、心臓の右側を通って肺動脈に入り込むことによって起きる。PEはまれに、空気、脂肪あるいは羊水の塞栓によって起こることもある。PEの状態は一般的であったり、ときには重篤であったりし、その死亡率は14%から28%である。
【0012】
PEに関して患者の最良の転帰を得るには、これらのPEを迅速に診断および治療する必要がある。肺血管系内の血流の障害、およびその結果である心臓右心室の圧力は、PEの症候および症状、例えば呼吸困難、胸痛、心臓動悸またおそらくは患者の失神などにつながる。臨床的な症候および症状は、PEの診断にある程度の手がかりを与える。しかしながら究極的には、最終的なPEの診断には撮像が必要である。
【0013】
PE診断のための撮像モダリティの選択肢として、従来の換気/潅流スキャニングは、コントラスト強調コンピューテッドトモグラフィ肺血管造影(CPTA)などのコントラスト強調造影に急速に置き換えられている。医療用造影剤は、医療画像において体内の構造や流体のコントラストを強調させ、その結果それらの視認性を向上させるためのものである。しかしながら、造影剤の投与が体調悪化の原因になることもある。身体の反応は、軽微なものから深刻なものにわたる。深刻な反応を発症させるリスク要因は、強いアレルギー、気管支喘息、心臓病およびある種の薬物の使用などを含む。造影剤誘引腎障害(CIN)は、院内急性腎不全の3番目の原因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
肺撮像の品質を向上させるために多くの試みがなされてきた。例えば、米国特許第7、970、189および米国特許出願2011/0051885(Buelow他)は、肺画像の収集、それに続く気管支および動脈の両方に関する半径を含んだセグメンテーション技術を開示している。視覚的異変を示す部位が放射線科医などの医療専門家に示され、肺血栓などの肺異常を発見し識別するための、人手によるレビューおよび視覚診断が実行される。同様に、米国特許7、583、829は、肺画像のセグメンテーションと、PEの影響を受けたと考えられる肺部分木分析の利用と、を開示する。しかしながら、これらのタイプの先行技術の撮像は、視覚化を補助する(すなわち、脈管構造内の血液の視覚化を補助する)ために、造影剤の使用に頼っている。
【0015】
米国特許出願2005/0240094(Pichon他)は、木構造のセグメント化と、内部木構造(例えばサイズデータ)に従って木構造の表面を色付けすることによる、高解像度コントラスト強調コンピューテッドトモグラフィ(CT)からの血管木構造の視覚化技術に関する。視覚化されたものは、その後人手でレビューされる。
【0016】
米国特許出願2009/0252394(Liang他)は、CTPA内の肺塞栓を診断する方法を教示する。この方法は、ボクセルのクラスターを持つ肺血栓の「候補」を特定した後、クラスター内のボクセルの強度値の空間分布に基づいて、この「候補」が真であるか偽陽性であるかを判断する。
【0017】
米国特許7、876、936(Raffy)は、動脈を静脈から分離するために、肺部分の一連のコントラスト強調CTセクションを処理する方法を教示する。この方法は、肺動脈と肺静脈とを分離して特定するための放射線科医とコンピュータとの間の相互連携と、塞栓の特性を知るためのコンピュータ化された血管スキャニングと、診断を下すための放射線科医とコンピュータデータとの比較と、を含む。例えばこのプロセスは、肺血管系を放射線科医に示すことを含んでよく、その後この技師が関心対象の血管木を追跡してもよい。その後、肺静脈に関する偽陽性を排除するために、血管内の血液の画像強度の変化に基づいて、追跡された血管木に関する自動異常診断がなされる。
【0018】
Wittram他(Wittram et al.(2004)CT Angiography of Pulmonary Embolism:Diagnostic Criteria and Causes of Misdiagnosis RadioGraphics)は、造影剤を使用するCT血管造影画像におけるコンピュータ補助型肺血栓診断のための、典型的な画像強度値を用いたプロセスを教示する。塞栓が存在することにより、CT血管造影画像には、以下のような欠陥が生じる。
a.完全な陰影欠陥。すなわち、巨大な塞栓の存在により、血管が造影剤で満たされない。塞栓の下流側では、この部分の血管に造影剤が存在しないため、画像強度はより暗いものとなる。
b.部分的な陰影欠陥。すなわち、少量の造影剤が通過し、塞栓の周囲に画像強度の高いチューブ状の領域が存在する。
c.他の欠陥。例えば、ウェッジ状の過度減衰領域は、肺の当該部分への血液供給の損失に関係する肺梗塞を示す。また、肥厚した、しかしより細い動脈内を、すなわち再び開いて血流が再開した動脈内を流れる造影剤。
【0019】
Staring他による公開(Staring M et al.(2012)Pulmonary vessel segmentation using vessel enhancement filters、 ISBI 2012http://www.vessel12.grand-challenge.org)には、画像データ上のヘシアンベースのマルチスケール形状(ベッセルネス)フィルタを用いた肺血管のセグメンテーションが記載されている。これは肺血管の、人手による検査を可能とする。
【0020】
Rudyanto(Rudyanto、RD et al.(2015)Quantification of pulmonary vessel diameter in low-dose CT images SPIE Medical Imaging 2015)他には、マルチスケール形状(ベッセルネス)フィルタのスケールを用いて、プラスティック、ラバーおよびシリコンのチューブの直径を数量化する方法が記載されている。
【0021】
Jimenez Carretero他(Jimenez-Carretero et al.(2013)3D Frangi-based lung vessel enhancement filter penalizing airways IEEE 10th International Symposium on Biomedical USA 2013)には、Frangiフィルタを用いて、血管系をセグメント化する方法が記載されている。この方法は、肺血管のセグメント化を行う前に気道壁を除去することができるように、気道壁を特定するステップを含む。この方法は、気道壁および肺血管を特定するために、単一フィルタのフレームワークを利用する。
【0022】
Sun他(Sun et al.(2014)Detection of central pulmonary embolism on non-contrast computed tomography:a case control study International Journal of CardiovascularImaging)は、造影剤を使わないCTスキャンから、肺中央大動脈内の塞栓を手動的に診断する実用性を研究した。研究された技術は、通常のCTスキャンを調査するための放射線科医を必要とする。この研究によれば、造影剤を使わないCTは、中央肺塞栓の診断には向かないことが分かった。
【0023】
従って、診断、特に疾病その他の不具合を呈する血管系の異常診断のために、撮像を利用する改良された方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本明細書に記載の実施形態の目的は、関連先行技術のシステムにおける上記の欠点の少なくとも1つを克服または緩和し、あるいは少なくとも関連先行技術のシステムに対する有用な代替技術を提供することにある。
【0025】
本明細書に記載の実施形態の第1の態様では、肺血管系内の異常を診断する方法が与えられる。本方法は以下のステップを備える。
(1)1つ以上の血管を備える肺血管系の少なくとも1つの画像を与えるステップ。
(2)肺血管系に関する確率フィールドおよびスケールフィールドを含む出力を生成するために、画像にフィルタを適用するステップ。
肺血管系のジオメトリをセグメント化および定量化するために、出力の1つまたは2つを使用するステップ。
(3)肺血管系の1つ以上の血管内の異常を診断するために、ジオメトリ分析と連携して出力を分析するステップ。
【0026】
図1に、典型的な先行技術の方法の、ある実施形態が示される。造影剤を使用せずに取得された画像の分析は過去にも試みられてきたが、かつていずれの先行技術においてもPE診断での使用に成功したものはない。
【0027】
好ましくは、本発明の方法で、ステップ(2)は以下のサブステップを備える。
(2)(a) 肺血管系に関する確率フィールドを与えるために、ステップ(1)から得られた画像上で、ヘシアンベースのマルチスケール形状(Frangi 1998に従う)を実行するステップ。
(2)(b) バイナリ画像を生成するために、肺血管系に関する確率フィールドのフルードフィル選択を実行するステップ。
(2)(c) バイナリ画像のバイナリセグメンテーションを実行するステップ。
(2)(d) バイナリセグメンテーションから血管の中心線を抽出するステップ。
(2)(e) 局所的ジオメトリデータを取得するために、形状フィルタ(画像上の任意の所定の点がチューブ状構造の一部である確率が最も高いときのフィルタサイズ)から得られたスケールを、血管構造木の中心線に沿った各点に関連付けるステップ。
【0028】
少なくとも1つの画像は、複数の2D画像または3D画像の1つ、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0029】
1つ以上の上記のサブステップが本方法に含まれてよく、また上記のサブステップのすべてが本方法に含まれる必要はないことが理解される。
【0030】
好ましい実施形態では、診断される異常はPEの存在を示す。塞栓は、一般に血栓または空気の泡を含むが、ある種のタンパク質、脂質、あるいは血小板、フィブリンその他の血液成分の塊(血栓塞栓症の場合)などの異物を含むこともある。
【0031】
血管の異常は、血管系内で連続する1つ以上の血管の直径に基づいて診断することができる。本方法で使用されるフィルタ、例えばヘシアンベースのマルチスケール形状フィルタにより、所定のサイズの血管が各画像ボクセルに存在する確率の測定が可能となる。血管の中心で測定されたとき、血管がチューブ状構造(すなわち、血管の「ベッセルネス」)に属する確率が最も高いときのスケールは、その血管のサイズまたは径(直径)を表す。従って、本発明の方法は、血管の中心線を利用することと、各中心線の点にベッセルネスが存在する確率値が最も高いときのスケールを抽出することと、を含んでよい。「ボクセル」という用語は、コンピュータベースのモデリングやグラフィックシミュレーションの分野でよく知られており、概念的な3次元空間のボリューム要素のアレイの各々、特に3次元対象物の表現が分割されてできる離散的な要素のアレイの各々を意味する。
【0032】
本発明の方法によって診断される異常は、例えば血管系のセグメント(または部位)を(i)正常、(ii)PEが存在、(iii)その他の異常(肺または血管系異常の他の形態)、に分類することに利用することができる。診断される異常は、一般に血管の径の変化に対応する。塞栓に隣接する血管の形状が急な歪みを見せることは、PEの特徴である。例えば血管が部分的に閉塞する場合、塞栓の「上流」(血圧が上昇するところ)では、血管が膨らんで、直径が増加する。一方血圧の降下に起因して、塞栓の「下流」では、血管の直径が通常より減少する。これらはしばしばPEの特徴となる。一方血管が完全に閉塞する場合、血管は外側に膨らむ結果、血管の直径が増加する。その後、血管信号の完全なカットオフまたは確率フィールドの非連続が続く。こうした異常のタイプは、PEの特徴を特定するための「シグネチャー」として潜在的に機能することができる。
【0033】
本発明の方法は、特に肺血管系内の異常診断に好適に適用される。これは、ヘシアンフィルタによって検出される強い信号による。この強い信号は、肺組織(およびその中の空気)の低い密度と、肺血管の比較的高い密度と、の大きな差異による。
【0034】
本発明の方法は、患者への副作用の原因となり得る造影剤の使用を必要としない。さらに本発明は、特定のまたは唯一の撮像プロトコルを必要としない。従って本発明は、事前に取得された(造影剤を使用せずに)画像データ、例えば収集されて現存するCTデータなどの分析のために利用することができる。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、ステップ(2)から得られた肺血管系に関する確率フィールドをセグメント化するステップをさらに含む。
【0036】
本明細書で使われる「血管系のセグメンテーション」という用語は、血管系データを3D画像から分離または抽出することを意味する。特に血管のセグメンテーションは、血管構造木を確率フィールドから抽出することを含んでよい。セグメンテーションは、生体構造またはジオメトリに基づいて実行することができる。本発明のいくつかの応用では、幾何学的分割が好適である。幾何学的分割は、追加的な生体構造に関する情報を必要とせず、はるかに安価なコンピュータおよび作業コストで取得することができる(例えば、画像強度閾値プロセスを実行することによって)。代替的にセグメンテーションは、生体構造または生体構造的特徴の特定の領域に結び付けられてもよい(例えば、領域成長操作。この場合、明らかに特定可能な血管系が、シード点として選択される)。生体構造に基づくセグメンテーションは特に好適である。なぜなら生体構造に基づくセグメンテーションは、先行技術の撮像方法に比べ、生理学的および医学的な恣意性が低く、より使いやすいからである。
【0037】
本明細書に記載の実施形態の別の態様では、血管系の異常診断を実現するために適用され、非一時的な媒体に記憶されるアプリケーションが与えられる。このアプリケーションは、本発明の方法ステップの実施のために適用される所定の命令セットを備える。
【0038】
本明細書に記載の実施形態のさらなる態様では、本発明の方法に従って異常を診断するために、セグメント化された画像およびセグメント化された画像の分析を与える目的で、血管系の画像のセグメンテーションを実現するアプリケーションを非一時的な形式で記憶するための、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体が与えられる。
【0039】
本明細書に記載の実施形態のさらなる態様では、本発明の方法を実施するために使われる装置が与えられる。この装置は以下を備える。
(i) 1つ以上のエネルギー源。
(ii) 血管系の画像を記録するための1つ以上の検出器。この画像は、1つ以上のエネルギー源で発生した後、血管系を備えるサンプルを通過したエネルギーによって生成されたものである。
(iii)サンプルを、1つ以上のエネルギー源と1つ以上の検出器との間に配置するためのサンプル固定具。使用中、同じ固定具が、複数のエネルギー投影角度を通してサンプルを回転させる。そして、造影剤を使用することなく血管系の複数の画像を与えるために、少なくとも1つの血管系の画像が、これらの投影角度の各々で記録される。
【0040】
好ましくは、装置は、前述の方法のステップ1から3を実行するための処理手段を含む。好ましい実施形態では、処理手段は、セグメント化された画像を与えるために、血管系の画像をセグメント化し、血管系異常を診断するために、セグメント化された画像を分析するために使われる。
【0041】
本明細書に記載の実施形態のさらなる態様では、本発明の方法を実施するために使われる装置が与えられる。この装置は以下を備える。(i)回転可能にマウントされたエネルギー源。(ii)血管系の画像を記録するために、エネルギー源の反対側に回転可能にマウントされた検出器。この画像は、エネルギー源で発生した後、血管系を備えるサンプルを通過したエネルギーによって生成されたものである。使用中、検出器およびエネルギー源が、ともにサンプルの周囲を回転する。そして、造影剤を使用することなく血管系の複数の画像を与えるために、検出器が、血管系の画像を複数の投影角度で取得する。装置は、フィルタを適用し、幾何学的分析を実行するための処理手段を含んでよい。
【0042】
本明細書に記載の実施形態のさらなる態様では、3次元生体画像内の血管系異常をスキャンする方法が与えられる。本方法は、確率データおよびスケールデータを与えるために、生体内3次元画像にフィルタを適用するステップと、血管系内の異常を診断するために、確率データ上および/またはスケールデータ上で自動分析を実行するステップと、を含む。本明細書で使われる「血管系異常をスキャンする」という用語は、血管系異常を探査する、プローブする、試験する、調べる、検出するおよび特定する等を含むことが意図される。好ましい実施形態では、患者に血管系異常があるかを、医師等のユーザが迅速かつ正確に診断できるように補助することが意図される。
【0043】
本方法は、生体内3次元画像に形状フィルタを適用するステップ、好ましくはマルチスケールの形状フィルタを適用するステップを含んでよい。より好ましくは、本方法は、ヘシアンベースのマルチスケール形状フィルタを適用するステップを含んでよい。より好ましくは、ヘシアンベースのマルチスケール形状フィルタは、Frangi 1998に従って適用される。
【0044】
自動分析を実行するステップは、確率フィールドより得られたデータから、スケールフィールドをマスクするステップを含んでよい。自動分析を実行するステップは、第1の位置におけるスケールと、第2の位置におけるスケールと、を比較するステップを含んでよい。好ましくは、第1の位置と第2の位置とは、同一の血管枝内または同一の血管世代内にある。自動分析を実行するステップは、3つの位置でのスケール、4つの位置でのスケール、5つの位置でのスケール、または6つ以上の位置でのスケールを比較するステップを含んでよい。自動分析を実行するステップは、多項式等の関数(あるいは、スプラインまたはスプラインに類似するもの)を、血管枝内の複数の点から取得されたスケール値(あるいは血管の直径)にフィッティングするステップを含んでよい。その後、PE等の血管系異常を検出するために、フィッティングされた関数の係数、あるいはその他のフィッティングされた関数の特性が精査されてよい。関数を複数のスケール値にフィッティングすることの利点は、スケール値の「ノイズ」が低減される点にある。関数を複数のスケール値にフィッティングすることの別の利点は、PE等の血管系異常の「シグネチャー」を決定し検出するための、より簡単なアプローチが得られる点にある。
【0045】
本方法は、生体内3次元画像から血管構造木を抽出するために、確率データ上で血管をセグメント化するステップを含んでよい。好ましくは、本方法は、血管構造木のジオメトリを定量化するために、セグメント化された血管構造木にスケールデータをマッピングするステップを含んでよい。
【0046】
本方法は、造影剤を使用せずに、生体内3次元画像を取得するステップを含んでよい。
【0047】
本明細書に記載の実施形態のさらなる態様では、3次元生体画像内の血管系異常をスキャンする方法が与えられる。本方法は、確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、生体内3次元画像にフィルタを適用するステップと、確率フィールドから血管構造木を抽出するために、確率フィールド上で血管をセグメント化するステップと、血管構造木のジオメトリを定量化するために、セグメント化された血管構造木にスケールフィールドをマッピングするステップと、血管系内の異常を診断するために、計算されたジオメトリ上で自動ジオメトリ分析を実行するステップと、を含む。
【0048】
血管をセグメント化するステップは、確率フィールド上で領域成長操作を実行するステップを含んでよい。好ましくは、領域成長操作はフルードフィル操作である。好ましくは、領域成長操作はバイナリ3Dデータフィールドを与える。
【0049】
好ましくは、生体内3次元画像にフィルタを適用するステップは、形状フィルタを適用するステップを含み、形状フィルタで使われる形状はチューブである。形状フィルタは、マルチスケール形状フィルタであってよい。形状フィルタは、ヘシアンベースのフィルタであってよく、好ましくはFrangi 1998に従って適用される。
【0050】
自動分析を実行するステップは、血管構造木内の第1の位置におけるスケールと、血管構造木内の第2の位置におけるスケールと、を比較するステップを含む。好ましくは、第1の位置および第2の位置は、血管構造木の同じ血管枝内に位置する。
【0051】
自動ジオメトリ分析を実行するステップは、血管構造木内の枝の長さ方向に沿ったスケールの変化を計算するステップを含んでよい。好ましくは、自動ジオメトリ分析を実行するステップは、枝の世代全体の長さ方向に沿った直径の変化、または血管構造木の枝の長さ全体の方向に沿った直径の変化を計算するステップを含んでよい。本方法は、セグメント化された血管系全体で(すなわち、セグメント化された血管系の各枝で)幾何学的自動分析を実行するステップを含んでよい。
【0052】
本方法は、造影剤を使用せずに、生体内3次元画像を取得するステップを含んでよい。生体内3次元画像を取得するステップは、生体内2次元画像を取得するステップと、生体内2次元画像から3次元画像を再構成するステップと、を含んでよい。好ましくは、生体内3次元画像を取得するステップは、X線を用いて生体内2次元画像を取得するステップを含んでよい。さらに好ましくは、生体内3次元画像を取得するステップは、コンピューテッドトモグラフィを用いて3次元画像を再構成するステップを含んでよい。
【0053】
本方法は、肺血栓症などの塞栓をスキャンするステップを含んでよい。本方法は、肺血管系内の血管系異常をスキャンするステップを含んでよい。本方法は、肺の生体内3次元画像を取得するステップを含んでよい。診断される異常は、肺血栓症を示してよい。本方法は、血管系のセグメントを正常か異常かに分類するために、ジオメトリを分析するステップを含んでよい。本方法は、閉塞または部分的な閉塞を診断するために、ジオメトリを分析するステップを含んでよい。本方法は、肺血栓症などの血管異常の領域を示す血管系を視覚化するステップを含んでよい。本方法は、フィルタを適用する前に3次元画像を逆転するステップを含んでよい。
【0054】
本明細書に記載の実施形態のさらなる態様では、血管系異常をスキャンする方法が与えられる。本方法は、造影剤を使用せずに、生体内3次元画像を取得するステップと、確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、生体内3次元画像にマルチスケール形状フィルタを適用するステップと、血管系内の異常を診断するために、確率フィールド上およびスケールフィールド上で自動ジオメトリ分析を実行するステップと、を含む。確率フィールドは、生体内3次元画像のボクセルが、チューブ状構造の一部となっている確率を表ある。スケールフィールドは、ボクセルがチューブ状構造の一部となっている確率が最も高いときのフィルタのサイズを表す。
【0055】
本方法は、生体内3次元画像から血管構造木を抽出するために、確率フィールド上で血管をセグメント化するステップと、血管構造木のジオメトリを定量化するために、セグメント化された血管構造木にスケールフィールドをマッピングするステップと、血管系内の異常を診断するために、計算されたジオメトリ上で自動ジオメトリ分析を実行するステップと、を含んでよい。
【0056】
本明細書に記載の実施形態のさらなる態様では、肺血栓症をスキャンする方法が与えられる。本方法は、造影剤を使用せずに、生体内3次元画像を取得するステップと、確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、生体内3次元画像にマルチスケール形状フィルタを適用するステップと、血管構造木を抽出するために、確率フィールド上で血管をセグメント化するステップと、血管系のジオメトリを定量化するために、セグメント化された血管構造木にスケールフィールドをマッピングするステップと、を含む。
【0057】
本明細書に記載の実施形態のさらなる態様では、肺血管系の肺血栓症をスキャンする方法が与えられる。本方法は、造影剤を使用せずに、一連の2次元胸部X線画像を取得するステップと、2次元胸部X線画像から3次元画像を再構成するステップと、確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、Frangi 1998に従うヘシアンベースのマルチスケール形状フィルタを適用するステップと、確率フィールド上で領域成長操作を実行することにより、確率フィールドから得られた血管構造木をセグメント化するステップと、血管構造木内の各枝の中心線を抽出することにより、血管構造木をスケルトン化するステップと、スケルトン化された血管構造木内の各点における血管のスケールを与えるために、スケルトン化された血管構造木にスケールフィールドをマッピングするステップと、肺血栓症を診断するために、血管構造木内の枝の長さ方向の中心線に沿ったスケールの変化を計算するステップと、を含む。
【0058】
本明細書に記載の実施形態のさらなる態様では、血管系内の異常を診断するシステムが与えられる。本システムは、造影剤を使用せずに、血管系を備えるサンプルにエネルギーを通過させるためのエネルギー源と、サンプルを通過するエネルギーの生体内2次元画像を記録するための撮像システムと、2次元画像を3次元画像に再構成するコンピューテッドトモグラフィシステムと、確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、生体内3次元画像をフィルタリングするための分析システムと、を備える。撮像システムは、複数の投影角度で画像を記録する。分析システムは、血管系内の異常を診断するために、確率フィールドおよびスケールフィールド上で自動分析を実行する。
【0059】
分析システムは、確率フィールドから血管構造木を抽出するために、確率フィールド上で血管をセグメント化し、血管系のジオメトリを定量化するために、セグメント化された血管構造木にスケールフィールドをマッピングし、血管系内の異常を診断するために、計算されたジオメトリ上で自動ジオメトリ分析を実行してよい。分析システムは、確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、ヘシアンベースのマルチスケール形状フィルタを適用してよい。分析システムは、撮像システムから離れた場所にあってもよい。
【0060】
本明細書に記載の実施形態のさらなる態様では、造影剤を使用せずに取得された生体内3次元肺画像および肺画像の時間連続から、換気/潅流の比を計算する方法が与えられる。本方法は、確率フィールドおよびスケールフィールドを与えるために、生体内3次元肺画像にフィルタを適用するステップと、確率フィールドから血管構造木を抽出するために、確率フィールド上で血管のセグメント化を行うステップと、血管構造木のジオメトリを定量化するために、セグメント化された血管構造木にスケールフィールドをマッピングするステップと、肺画像の時間連続から、肺のある部位の運動を測定するステップと、換気/潅流の測定値を得るために、肺の部位の運動と、肺の部位の領域における血管系のスケールとを比較するステップと、を含む。
【0061】
本方法は、肺の部位の変位を測定するステップを含んでよい。本方法は、肺の部位の拡張を測定するステップを含んでよい。運動は肺の部位の複数の点で測定されてよく、得られた複数の測定値は平均化されてよい。比較のためのスケールは、肺の部位の境界で測定されてよい。代替的に、比較のためのスケールは、肺の部位の中心で測定されてよい。
【0062】
本方法は、肺の複数の部位の運動を測定するステップと、各複数の部位の運動を比較するステップと、を含んでよい。第1の部位の換気/潅流の測定値は、第2の部位の換気/潅流と比較されてよい。
【0063】
本方法は、肺の部位を、セグメント化された血管系の端点に位置付けるステップを含んでよい。本方法は、肺の部位を、複数の枝に同じスケールで位置付けるステップを含んでよい。
【0064】
その他の態様および好ましい形態が明細書に開示され、および/または、添付の請求項(本発明の明細書の一部を形成する)で定義される。
【0065】
本質的に本発明の実施形態は、画像処理技術の改良により、異なるタイプの組織を識別するための造影剤使用の必要性を克服した上で、画像データを抽出および使用ができるようになったことに由来する。さらに、血管内の異常を特定するために、改良された画像処理によりアクセスされた画像データを使うことができるようになった。先行技術においては、画像から得られたデータを処理するための特定の方法が開示されている。しかしながら、方法(および方法ステップ)の特定の組み合わせは、過去に使われたことはない。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態により与えられる利点は以下を含む。
・本方法は、造影剤の使用を必要としない。従って、造影剤誘引腎障害など、造影剤に関係する問題が回避される。
・本方法は、既存の(または歴史的な)造影剤を使用しない画像データにも適用することができる。
・本方法において、既存の造影剤を使用しない患者の画像を利用することができる。従って、患者からさらなる画像を収集する必要がなく、患者へのさらなるX線露光や、追加的な画像収集のための金銭的コストが回避される。
・迅速な医療診断のための新たな選択肢。
・撮像技術における著しい進展。
・患者の異常または変化に関する診断の改良。
・血管系(例えば肺血管系)撮像およびその定量化するための改良された方法。
【0067】
以下の詳細な説明により、本発明の実施形態の応用のさらなる範囲が明らかとなるだろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものの、これらは例示のみにより与えられることを理解されたい。なぜなら当業者には、以下の詳細な説明から、本開示の思想および範囲内での様々な変形や改良が可能であることが明らかだからである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
本出願の好ましい実施形態や他の実施形態のさらなる開示、対象、利点および態様は、添付の図面と関連付けて、以下の実施形態の説明を参照することにより、当業者によりよく理解されるだろう。しかしながら、これらは例示のみを用いて与えられるものであって、本開示を限定するものではない。
【
図1】先行技術の典型的な方法のステップを示すフロー図である。造影剤を使用しない画像にマルチスケールフィルタが使われ、出力は人手により検査される。
【
図2】本発明の実施形態を示す図である。本明細書に記載される通り、造影剤を使用しない画像に、マルチスケールフィルタと血管系のセグメント化とが使われる。
【
図3】本発明の別の実施形態を示す図である。造影剤を使用しない画像に、マルチスケールフィルタが使われる。PEの潜在的位置を直接検出するために、フィルタからのデータ出力の確率フィールドおよびスケールフィールドの両方が使われる。
【
図4】本発明に係る、動物のスキャンに使われるX線撮像のセットアップを示す図である。この模式図にはBALB/cマウス(1)が示される。BALB/cマウス(1)は、液体金属ジェットのX線源(4)と、構造化されたCSiフラットパネル検出器(5)と、の間にある回転ステージ上に設置された、カスタムメイドのサンプルマウント(2)に配置され、挿管され、換気器(6)により機械的に換気されるX線源の展開図は、入射電子ビーム(8)とX線ビーム(11)とに関連付けて、液体金属ジェットアノード(3)のジェットノズル(9)を示す。本発明の方法を用いて計算された測定値は、ピークインスピレーションでの呼吸停止期間中に、マイクロシリンジポンプ(7)を用いたヨウ素化造影剤注射を必要とする、2D血管造影測定により検証されてよい(この理由により、本図にはヨウ素化ポンプが含まれる)。
【
図5】実験室X線源を用いて生成された典型的な2D投影画像を示す図である。
【
図6】
図5に示されるような2D画像から得られた3Dボリューム再構成によって得られる、典型的なシングルスライスを示す図である(コーンビーム再構成技術が使われた)。
【
図7】ヨウ素化造影剤を用いた肺血管系の、未処理のX線投影画像(ヨウ素化ボーラス投与による血管造影トレース)を示す図である。これは、本開示に係る、造影剤を使用しない血管定量化法を検証するために使われた。
【
図8】
図7のフィルタリングされたバージョンを示す図である。画像中のコントラスト強度を強調するために、背景補正および移動平均が使われた。
【
図9】
図8に示される2つの血管の、線プロファイルのプロット図である(「a」「b」は、それぞれ
図8のものに対応する)。このプロットは、線プロファイルを横断するピクセル強度の変化を示す。符号およびエラーバーはそれぞれ、黒い箱(「a」および「b」)の範囲内の血管に沿って得られた10個の線プロファイルの、平均強度およびs.e.m.を示す。
【
図10】本発明のマルチスケール形状フィルタから計算された、「ベッセルネス」(または確率フィールド)を示す図である。
【
図11】各枝の各点の中心線におけるスケール値で色付けられたベッセルネスを示す図である。
【
図12】本発明の血管径測定の検証のためのプロット図である。2D血管造影画像から電子キャリパ(すなわち、画像内の特徴のサイズを測定するためのソフトウェア)を用いて得られた血管径測定値(横軸)に対して、造影剤を使用しないCTボリュームから得られた血管径測定値(縦軸)が示される。直線は、プロットにおいて、本発明の測定値と血管造影測定値とが等しいところを表す。
【
図13】以下の段落で説明される実験で示される、本発明の実施形態で使われる方法のステップのフロー図を示す。
【
図14】3枚のスライス位置でオーバーレイされた領域運動の情報とともに、セグメント化された血管系を示す等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明の方法は、造影剤を使わないコンピューテッドトモグラフィ(CT)画像から、血管径の測定値を得るための手段を与える。本明細書で議論する実験室ベースの撮像システムは、生体内のより小さな血管を解像するのに十分な解像度を持つ画像を生成する。本発明の撮像システムおよび方法は、小動物研究および人体のスキャンのための代替的な血管造影技術を提供する。この技術は造影剤を必要とせず、理論的には、疾病経過が改善する時間、あるいは治療に応じて、同じ動物に対して撮像を繰り返すことができる。
【0070】
図1から
図3は、先行技術(
図1)および本発明の実施形態(
図2および
図3)の方法のステップを説明するフロー図である。
図1は先行技術の方法の典型的なステップを示す。ここでは、ユーザの人手による目視検査のために血管系をセグメント化するため、造影剤を使わない画像にマルチスケールフィルタが適用される。これに対して、
図2は本発明の実施形態を示す。本明細書で説明されるように、本実施形態は、造影剤を使わない画像にマルチスケール形状フィルタを用いる。次に本実施形態は、肺血栓症などの血管系異常を診断するために、確率データ(例えば確率フィールド)およびマルチスケールフィルタデータから抽出されたスケールデータ(例えばスケールフィールド)に対して自動分析を実行する。これは、
図2に示されるように、血管系の中心線におけるスケール値を決定することで実現される。
図3は、本発明の方法の好ましい実施形態を示す。ここでは、造影剤を使わない画像にマルチスケール形状フィルタが使われる。そして、確率データ(確率フィールドとして示される)、およびスケールデータ(スケールフィールドとして示される)が、肺血栓症などの血管系異常を直接診断するために利用する目的で、フィルタから出力される。
【0071】
ここで示される実施例は、例えば以下のステップを含む。
・1つ以上の血管を備える1つ以上の肺血管系の画像を与えるステップ。この(これらの)画像は、造影剤のない生体内で取得されたものである。この(これらの)画像は典型的には3Dであってよく、迅速なPE診断のため患者のスキャンから直接抽出されたものであってよい。あるいは例えば調査研究の場合は、この(これらの)画像は歴史的なものや、アーカイブされたものであってもよい。
・肺血管系のための確率フィールドを生成するために、前記画像にフィルタを適用するステップ。典型的にはフィルタは、ヘシアンベースのマルチスケール形状フィルタのような、形状ベースのマルチスケールフィルタである。選択的に、バイナリ画像を生成するために、肺血管系のための確率フィールドのフルードフィル選択を実行するステップが、このステップに続いてよい。選択的にこの画像は、バイナリ画像のバイナリセグメンテーションの実行を受けてもよい。その後、バイナリセグメンテーションから血管の中心線が抽出されてもよい。血管の中心で、血管の最大確率を与えるスケールが抽出される。
このスケールは血管のサイズに相当する。ヘシアンベースのマルチスケール形状フィルタのようなフィルタは、所定のサイズの血管が各画像ボクセルの中に存在する確率の測定を与える。従って、本発明の方法は、血管の中心線を使用するステップと、最大のベッセルネス確率値が中心線の各点に存在するときのサイズを抽出するステップと、を含んでよい。
・1つ以上の血管に異常を発見するために、確率フィールドを分析するステップ。本発明の場合、血管異常は、肺血管系内の1つ以上の血管の血管直径の変化に基づいて発見される。
【0072】
機械的換気の下で生体マウス(n=5)を使って、マイクロコンピューテッドトモグラフィ(μCT)によって得られた画像に、本発明の方法が適用された。
図4は、このタイプの撮像の適切なセットアップを示す。本方法は、外的な造影剤を使用することなく、肺血管系の径を定量化するために利用された。このアプローチを検証するために、測定値が、同じマウスに関する造影剤を用いたマイクロ血管造影と比較された。
【0073】
実験データは、本発明の方法の利点を示す。特にマウスに関し、造影剤や安楽死を使用することなく、マウスの肺血管系全体の3Dの容積測定を可能とした。このように造影剤を排除したことから、この技術は、敏感である病気のマウスモデルで問題とされてきた早期死亡のリスクなく、血管系の変化を調べるために、反復的な撮像に動物を利用することができる。さらにこれにより、本方法が、動物と人間の両方の臨床環境にとって価値があることが分かる。
【0074】
以下の段落では、実験プロセスと、造影剤を使わずにμOCT画像から量的な血管径を得るための、ヘシアンベースの強調フィルタを用いたツールと、について説明する。
【0075】
(i)実験プロセス
生後8週の雌のBALB/cマウス(n=5)が、腹腔内のケタミンとキシラジンの混合物(それぞれ150mg/kgおよび10mg/kg)注射により麻酔された。マウスは経口気管内挿管がされ、自発呼吸を続けることを許された。一方、頚静脈に挿入されたカスタマイズされた24ゲージのBD Angiocath(登録商標)カテーテルが、造影剤(Bracco Diagnostics社のIsovue 370(登録商標))の投与のために上大静脈まで進められた。マウスは、外科的処理の間、仰臥位の状態でカスタムメイドのアクリル筐体内に確実に拘束された。その後マウスは、圧力制御換気を用いて、カスタムメイドの動物用ベンチレータ(
図4を参照)上で換気された。吸気圧は20cm.H
2O、ゼロポジティブ吸気終気圧、吸気時間および呼気時間はそれぞれ300ms(呼吸速度100呼吸/分)であった。これらのセッティングでの1回換気量は、20gのマウスで約400μlすなわち20μl/g(20ml/kg)であった。マウスは100μlのアルカリ塩のボーラスを皮下に2回与えられ、イクイリブレーションと肺リクルートメントを可能とするために撮像前に10分間換気された。マウスは、下腹部と脚の周囲を覆うポケットウォーマーを用いて保温された。
【0076】
(ii)撮像プロトコル
撮像は、モナッシュ大学(メルボルン、オーストラリア)のダイナミックイメージング研究室で行われた。X線撮像のセットアップは、液晶ジェットX線技術(70kV、265kW)で発生するスポットサイズ15μmのX線ビームを使う高輝度X線源(Excillum AB(登録商標))からなる。高速CMOSフラットパネル検出器が、フレームレート30Hzで画像を取得するために使われた(露光時間15ms)。マウスは、X線ビームの前面のアクリル筐体の中に直立姿勢に置かれた。CTスキャンのために、機械的換気の下でマウスを400度回転させるために、高精度のロータリーステージ(Zaber Technologies(登録商標))が使われた。撮像は機械的換気トレースに同期され、呼吸サイクルの中の15個の異なる時点で肺の4Dデータを取得するために、呼吸するマウスのμCTが実行された。4DCTスキャンにおける各時点は、800個の2D投影画像からなる。マウススキャンを行う前と後に、基準を備えるアクリルシリンダーの較正スキャンが実行された。このプロセスにより、正確なCT再構成に必要なスキャンの傾斜角と回転中心が得られる。回転ステージの線源-アイソセンター間の距離、および線源-検出器間の距離は、それぞれ325mmおよび3325mmであった。撮像システムの有効アイソトロピックボクセルサイズは、19.4μmであった。
【0077】
(iii)3次元CT画像再構成および分析
画像取得が機械的換気に同期されたため、各画像についての呼吸サイクル内の時点は既知であり、データは機械的換気トレースに対してビニングされた。換言すれば、複数の呼吸にわたり、呼吸サイクル内の同じ時点で取得された画像は、類似する画像のビンに置かれた。3Dボリュームまたは呼吸サイクル内の異なる時点での画像を取得するために、呼吸サイクルの所定の相についての各ビン内の2D投影画像は、コーンビーム再構成技術を用いて再構成された。
【0078】
Frangi他(Frangi et al、 Medical Image Computing and Computer―Assisted Interventation- MICCAI‘98(eds.Wells、W.M.、Colchester、A.& Delp、 S.)130-137(Springer、1998)accessible at http://link.springer.eom/chapter/10.1007/BFb0056195)に基づくベッセルネスフィルタが、ピークインスピレーション(肺血管系と肺自身との間のコントラスト比が最大となるとき)におけるCTボリュームに適用された。複数のスケール上で、ガウスカーネル(離散コサイン変換、DCTとも呼ばれる)を使って、ヘシアンベースの画像(局所画像勾配)が計算された。局所画像勾配は、平板状構造とチューブ状構造とを区別するために、楕円に合致された。このフィルタは、ベッセルネスパラメータ(確率フィールド)、すなわち任意のピクセルがチューブ状構造である可能性を表す測定値のためのボリュームを生成した。ベッセルネスの測定値は、各カーネルスケール(4から20ボクセルの範囲、これは77.6-582μmに相当する)で計算された。各ボクセルに関するベッセルネスの最大値を生むスケールを取得することにより、スケールフィールド(または画像)が生成される。
【0079】
マルチスケールで、コンピューテッドベッセルネス画像から肺血管系をグメント化するために、Avizo(登録商標)(FEI VSG社、フランス)を用いたフルードフィルセグメンテーションが利用された。血管系木の中の16世代までの枝が、セグメント化された血管系内で視覚化された。セグメント化された肺血管系の各枝内の中心線を計算するために、スケルトン化プロセス(Sato、M.et al、TEASAR:tree-structure extraction algorithm for accurate and robust skeletons、8th Pacific Conference on Computer Graphics and Applications、2000.Proceedings 281-449(2000).doi:10.1109/PCCGA.2000.883951)が利用された。その後スケールフィールドからの値は、肺血管系の中心線にマップされた。換言すれば、中心線データにおける各ボクセルの位置が記録され、当該ボクセルにおいて対応するスケール値がスケール像から抽出され、中心線上の一点と関連付けられた。
図11は、ガウススケールと、中心線スケール値を持つ各血管を色付けすることによりセグメント化された肺血管系と、を合併した後の合成画像を示す。
【0080】
(v)本発明の実施形態の検証
提案された方法を検証するために、同じマウスで、造影剤を用いて、3方向から見た2Dマイクロ血管造影が実行された(
図7から
図9)。肺血管系の強度を強調するために、デジタル減算および平均化スキームを用いて、画像が前処理された。
図7および
図8は、それぞれ処理前および処理後の、マイクロ血管造影から得られた画像を示す。
【0081】
図7は、造影剤投与の0.6秒後に取得された画像である。CT(本発明の方法)も2D血管造影(検証用の方法)も、7匹のBALB/cマウスで実行されたが、血管造影処理は2匹のマウスで失敗した。従って両方法による処理を受けたのは、5匹のマウスだけである。カテーテルの先端を上大静脈に正確に位置づけられないことは、マイクロ血管造影法の欠点の1つである。この欠点は、本発明に係る方法では排除されている。
【0082】
2D血管造影撮像では、マイクロ注射ポンプを用いて、ヨウ素化された造影剤が頸静脈カニューレを通して注射された。このポンプは、0.12mlのヨウ素造影剤を、速度10ml/分でボーラス投与するようプログラムされた。画像取得は、ヨウ素注射の1秒前に開始され、スキャンごとに200フレームが記録された。肺の運動によるぼけを防ぐ目的で、肺血管は、ピークインスピレーションで5秒間呼吸を停止させるために換気が中断されたときに画像化された。マウスは、造影剤の各注射からの回復時間を、少なくとも5分間与えられた。血管造影は、マウスごとに3回行われた。すなわち、45度ずつ角度を増加させて、右前斜位、左前斜位および前面の撮像が行われた(撮像中は回転しない)。
【0083】
血管造影画像のシーケンスは、内製のカスタムソフトウェアとFIJI(Schindelin、J.et al.Fiji:an open-source platform for biological-image analysis.Nat.Methods 9、676-682(2012))によるツールを用いて分析された。画像内のヨウ素化血管の強度を強調するために、シーケンス全体の平均化画像を用いた背景補正が実行された。血管内の相対ヨウ素化レベルの変化からピクセル強度への変化を安定化させるために、背景補正された画像のシーケンスに対して、一時的移動平均フィルタ(いずれかの側の5つの画像)が適用された。
【0084】
血管造影法では、ボーラス注射後、動脈内の造影剤だけが強く視認された。その結果本実験では、検証できたのは肺動脈の径の測定のみであった。5匹のマウスについて、全部で490個の肺動脈の直径に関する測定値が得られた。
【0085】
2D血管造影画像では、関心血管の周囲の10本の線プロファイル(
図7および
図8参照)を得るために電気キャリパが使われた。処理された画像のシーケンス(
図8)から、血管が最も造影剤で満たされているフレームが、2D血管造影のために選択された。ピクセル強度が最も急峻に変化するところが、血管のエッジとして決定された。表1は、個々のマウスのデータセットに関する線形回帰の結果を示す。本実験のマウス2は造影剤分布が不規則であったことから、マイクロ血管造影で得られた動脈直径の測定値は15個のみであった。
【0086】
比較のため、ベッセルネスの最大値となるカーネルスケール(DCT)が、スケルトン上の点を使って、3Dボリュームにマップ化された。この3Dボリュームは、DCTによって色付けされた、セグメント化された血管構造木の合成画像(
図11)を生成するために、前方投影された。明確化のため、図示される血管の直径は、スケルトン化アルゴリズムから得られた中心線木の厚さである。2D血管造影で得られた右前斜位、左前斜位および前面の画像に合致させるために、ボリュームは45度ずつ角度を増加して投影された。2D血管造影による線測定に相当する関心領域における合成画像から、DCT値を測定するためのプローブ用ツールが使用された。
【0087】
図9のプロット上の点およびエラーバーは、平均値±SEMを表す。個々のマウスに関するDCTとDAngとの関係を決定するために、線形回帰が使われた。表1は、本実験で画像化されたマウスに関する回帰データをまとめたものである。
図12は、本実験におけるすべてのマウスについて、線形回帰を用いて補正した後に得られた測定値を示す。
【0088】
提案された方法は、造影剤を使った測定より優れた、満足すべき血管構造木の強調表示を生成した。検証結果は、2D血管造影から得られた血管径測定値と、本発明の造影剤を使わないCT法(R2=0.85)との間に良好な相関があることを示す。
【0089】
【0090】
図13は、前述の本発明の実施形態で使われる方法のステップを示すフロー図である。
【0091】
肺疾患のネズミ科動物モデルの、肺潅流パターンの改良された分析を参照して本発明を説明した。しかしながら本発明の方法が、人間でも動物でも、患者に対して医療応用可能であることは容易に理解できる。特に本方法は、PEに関係する異常のような肺血管系異常の診断を可能とする、肺血管系の高忠実度3D定量化を実現するための、造影剤を使用しないアプローチを与える。
【0092】
例えば、患者が自由に呼吸したままで、複数の観測角度で、一連の2D胸部X線画像を得るために、コーンビームCT(CBCT)スキャナーのような人間用スキャナーを使うことができた。画像は、患者の血流に造影剤を付加することなく取得される。これにより、造影剤投与による既知の有害な副作用、例えば造影剤誘引腎障害(CIN)が回避される。時間的に連続するX線画像から、ピークインスピレーション(肺血管系と肺自身との間のコントラスト比が最大となるとき)で取得された2D画像の上でのみ、CT再構成が実行される。これにより、ピークインスピレーション(肺が安静なとき、または安静に近いとき)での肺の単一CTが形成される。代替的にCTは、「呼吸を止めて」実行されてもよい。この場合、患者はスキャン中に、好ましくはピークインスピレーションで、呼吸を止める。これにより、画像をCTスキャンから選択する必要がなくなる。さらに、より高いCT解像度を与えるために、呼吸停止型CTスキャンは、心拍周期に「ゲート」されてもよい。これは、画像から、すなわちフィルタリングが行われるCTスキャンから、肺に物理的影響を与える心臓の動きを除去することを目的とする。
【0093】
使用されるCT再構成技術は、任意の既知のCT再構成、例えばコーンビームコンピューテッドトモグラフィ(CBCT)であってよい。再構成は、一連の2Dの平坦なスライスを生成する。このスライスは、肺および肺血管系の3D画像10を形成するために、結合されてよい。選択的に、現代的なスキャナー、例えばヘリカルまたはスパイラルCTスキャナーが、3D画像10(これもまた分析に使うことができる)を直接出力してもよい。
【0094】
3D画像10が再構成されると(または直接CT装置から与えられると)、画像から関心データを抽出するために、画像のフィルタリングが実行されてよい。特に、3D画像上で形状ベースのフィルタリングが実行される。形状ベースのフィルタは、3D画像内のすべてのボクセルに対して適用される。これは、画像内のボクセルが、所定のスケールで、特定の形状の一部である確率を決定することを目的とする。これは、当該スケールの確率フィールド(確率画像とも呼ばれる)を生成する。形状ベースのフィルタは、複数のスケールで適用されてもよい(すなわち、マルチスケール形状フィルタ12)。これにより、各スケールに関して複数の確率フィールドが生成される。これは、血管系異常のためのスキャンを実行するために、問い合わせ可能な確率データおよびスケールを生成する。確率フィールド(または画像)14の全体は、単一スケールの確率フィールドを複数結合することにより形成されてよい。これは、各確率フィールドにおける第1のボクセルの確率を比較して最も確率の高いものを選択する、次に各確率フィールドにおける第2のボクセルの確率を比較して最も確率の高いものを選択する、といったことをすべてのボクセルについて行うことによって実現される。
【0095】
最も高い確率が出現するときのスケールもまた、各ボクセルについて記録される。これによって、対応するスケールフィールド16(または画像)の全体が生成される。ここでは、確率フィールドおよびスケールフィールドと呼ばれるときは、フィールドおよび画像という用語は、ある程度交換可能であるように使われる。なぜなら、確率フィールドおよびスケールフィールド内のデータは、画像として視覚的に表示できるからである。本質的に確率フィールドは、生体内の3次元画像のボクセルが、関心対象の形状の一部である確率を表す。そしてスケールフィールドは、ボクセルが関心対象物の形状に属する確率が最も高いときのフィルタのサイズを表す。
【0096】
好ましくはFrangi他(前述)に基づくマルチスケール形状フィルタ12は、形状、例えば平坦な構造、チューブ状の構造、あるいはブロブ状の構造といった形状を検知することに利用することができる。例えば肺の血管系を調べるときは、形状ベースのフィルタは、チューブ状の形状又は構造を3D画像に問い合わせる。さらに、肺内部の血管の直径は単一でないことから、形状ベースのフィルタは、複数の直径でチューブ状構造を取得するために、マルチスケールで動作する。
【0097】
その後前述のやり方で、確率フィールド14およびスケールフィールド16の全体が生成される。換言すれば、確率フィールド14は、生体内の3次元画像のボクセルが、チューブ状構造(ベッセルネスとも呼ばれる)の一部である確率を表すだろう。またスケールフィールド16は、各ボクセルがその一部となっている可能性が最も高いときのチューブの直径を表すだろう。マルチスケール形状フィルタ12の動作を簡略化するために、フィルタが3D画像に適用される前に、画像が逆転されてもよい。代替的にフィルタは、フィルタの適用時に画像を効率的に逆転するように設計されてもよい(すなわち、逆転はフィルタリング処理の一部として実行されてよい)。
【0098】
マルチスケールでのフィルタの実行に関し、形状ベースのフィルタは、肺の血管系を的確に定義するために、2から100のスケール、5から50のスケール、10から40のスケール、10から20のスケール、または好ましくは18のスケールを用いて実行されてよい。スケールは、0.2mmから30mm、0.2mmから10mm、0.5mmから30mm、0.5mmから20mm、0.5mmから5 mm、1mmから20mm、1mmから10mmまたは1mmから2mmの血管のサイズに相当してよい。スケールは、血管サイズのレンジに等しく分割されてもよいし、既知の共通の血管の直径を取得するように与えられてもよい。さらに、確率フィールドを計算するために使われるスケールの数は、スケールフィールドを計算するために使われるスケールの数と異なってよい。例えば、確率フィールドを計算するために30個のスケールが使われてよく、その後スケールフィールドを計算するために3000個のスケールが使われてよい。換言すれば、より高い解像度のスケールフィールドを生成するために、スケールフィールドは、より多数のスケールを使って計算されてよい。換言すれば、マルチスケール形状フィルタは、2つの段階で適用されてよい。すなわち2つの段階とは、確率フィールドを生成するためのより粗いスケール(例えば18スケール)、およびスケールフィールドを生成するためのより細かいスケール(例えば180スケール)である。
【0099】
図2に示される方法を参照すると、確率フィールド14の全体が生成されると、3D画像10から血管構造木をセグメント化することができる20。これは、肺血管系のバイナリ画像(またはデータフィールド)を与えるために、確率フィールド上で領域成長操作を実行することによって実現される。動脈および静脈のいずれも、この技術を用いて抽出することができる。そして関心対象の血管系の問い合わせに応じて、ユーザは、動脈および静脈のいずれかのみを抽出するかを選択することができる。例えば、塞栓は一般に静脈で発生するが、例外的に肺では動脈で発生する。
【0100】
領域成長操作は、フルードフィル操作またはフォームフィリング操作である。このステップは、血管構造木内の枝同士を接続するフォームフィリング操作を用いて、確率画像14内の肺血管系の認識可能な部分を選択することによって実行される。一例として、領域成長操作は、Avizo(FEI VSG社、フランス)を用いたフルードフィルセグメンテーションであってよい。このプロセスは、単一のフルードフィルセクションを持つバイナリ画像を生む。これにより血管系は、オリジナルの3DCT再構成からセグメント化される。このようにして確率フィールドは、1回のステップでバイナリ化されるとともにセグメント化される。希望であれば、これは2回の個別のステップでも実行可能であることは理解できるだろう。
【0101】
血管系がセグメント化されると、セグメント化された血管系の各枝における中心線を決定するために、スケルトン化プロセス26が使われる。例えば、スケルトン化プロセスは、Sato他(Sato、M.et al、TEASAR:tree-structure extraction algorithm for accurate and robust skeletons、8th Pacific Conference on Computer Graphics and Applications、2000.Proceedings 281-449(2000).doi:10.1109/PCCGA.2000.883951)で使われているものと同じ技術であってもよい。これにより、スケルトン化された血管構造木(中心線木とも呼ばれる)が与えられる。
【0102】
確率フィールドからスケルトン化された血管構造木26が抽出されると、スケルトン化された血管構造木26上にスケールフィールド16がマッピングされる28。これにより、血管構造木のジオメトリが定量化される。換言すれば、スケルトン化された血管構造木26に沿ったいたるところで、相当するスケール値がスケールフィールド16の全体から抽出される。これによって、位置情報(確率フィールド14から抽出された、スケルトン化された血管構造木26から)を含むジオメトリ情報および相対サイズ情報(スケールフィールド16から)を備える、結合された単一の3Dデータセット29(または画像)が与えられる。このステップを概念化する別のやり方は、スケールフィールド16のうち、スケルトン化された血管構造木26内に存在する点だけにあるものから、血管の直径に関する情報を抽出するために、スケルトン化された血管構造木26が、スケールフィールド16の全体の上でのマスクとして使われるというものである。スケールは、ボクセル内の血管の直径または径の測定値に関係する。このようにして、セグメント化された血管系内の直径を測定するのではなく(これも可能ではあるが)、スケール値を基に血管の直径が測定される。ボクセルサイズが既知である場合、スケールは、ミリメートル単位の(または所望の任意の単位の)測定値に変換される。ボクセルサイズを決定するために、直径が既知のチューブをスキャンすることにより、システムを較正することができる。
【0103】
スケルトン化された血管構造木26上にスケールフィールド16がマッピングされると、血管系内の異常を診断するために、結合されたデータセット29上で自動分析30が実行される。これは例えば、肺塞栓などの塞栓をスキャンすることや、肺血管系内の血管系異常(例えば、診断された異常が肺血栓の症候を示す部分)をスキャンすることを含んでよい。この分析は、例えばコンピュータにより自動的に実行され、ユーザが異常箇所を特定する必要はない。PEのような異常を診断するために、自動分析30は、血管構造木内の第1の位置におけるスケールと、血管構造木内の第2の位置におけるスケールと、を比較するステップを含む。好ましくは、第1の位置および第2の位置は、血管構造木の同じ血管枝内に位置する。より好ましくは、第1の位置および第2の位置は、互いに隣接する。
【0104】
血管構造木内の健康な血管の場合、血管構造木が分岐すると、その直径は生来の変化をすることは理解できるだろう。従って自動分析30は、血管直径の変化を比較し、血管系内の予期しない変化(例えば、健康な血管構造木からは予期されないもの)や、不健康な血管における既知のパターンを探索する。自動分析は、スケール(または直径)の変化の傾向を判断するために、単一枝内の3つの(またはそれより多い)連続する点でのスケールを比較するステップを含んでよい。例えば自動分析は、血管に沿った変化のスピードを計算するステップ、血管に沿った変化の方向を計算するステップ、減少に続く増加を探索するステップ、あるいは増加に続く減少を探索するステップなどを含んでもよい。
【0105】
自動分析は、血管構造木内の枝の長さ方向に沿ったスケールの変化、好ましくは血管構造木内の枝の長さ方向に沿ったスケールの変化、より好ましくはセグメント化された血管構造木全体の長さに沿ったスケールの変化を計算するステップを含んでよいことが理解される。これらの分類を行うアプローチの1つは、生データそのものに代えて、フィッティング関数、スプライン、または直径データに類似するものを利用し、これらにフィットするデータ特性を探索することである。特にこれは、直径の変化を探索するときに有用である(Fouras、A.、& Soria、J.(1998)Accuracy of out-of-plane vorticity measurements derived from in-plane velocity field data、 Experiments in Fluids、25、409-430.に記載の通り)。
【0106】
自動分析30が実行されると、その結果がユーザ(例えば医師)に示される。結果は、コンピュータスクリーン(例えば2Dまたは3Dビジュアル化)上に視覚的に表示されてもよく、あるいはレポート(例えばハードまたはソフトのコピーレポート)で提示されてもよい。結果は、血管系のオリジナルの3次元画像10の上にオーバーレイして表示されてもよいことが理解される。例えば、血管異常が特定された領域は、これらの領域が医師の注意を引くようにハイライトされてもよい。これにより、医師が肺血栓症などの血管系の問題を迅速かつ正確に診断できる能力を拡大することができる。代替的に結果は、血管系のスケール(または直径)を表すカラーコードを用いて、カラーコードされたセグメント化血管系画像として表示されてもよい。直径の変化などの自動分析30の結果を表示するために、他の多くの変形が使われてよいことが理解される。換言すれば本方法は、血管異常(例えば、異常が肺血栓症であるところ)を示す血管系を視覚化するステップを含んでよい。
【0107】
図3に示される方法を参照すると、
図3は、造影剤を使うことなく、生体内の3次元画像10内の血管系異常をスキャンする方法を示す。本方法は、確率データ(確率フィールド114として示される)およびスケールデータ(スケールフィールド116として示される)を与えるために、生体内の3次元画像10に対してフィルタを適用するステップ112と、血管系における異常を診断するために、確率データおよび/またはスケールデータ上で自動分析を実行するステップ130と、を含む。
【0108】
マルチスケール形状ベースフィルタ112から確率フィールド114およびスケールフィールド116が生成されると、PEなどの血管異常をプローブするために、これらのデータを結合する方法が複数あることは理解できるだろう。例えば、血管構造木をセグメント化およびスケルトン化する(
図2に示されるように)ことに代えて、確率フィールド114およびスケールフィールド116は、血管の異常または異変を診断するために、直接的に、あるいはより直接的に、問い合わせられてもよく、結合されてもよい(
図3に示されるように)。例えば、「シグネチャー」スケールのパターン(例えば、これはPEの症候となる)を、スケールフィールド116で直接的に探索することが可能である。「シグネチャー」スケールパターンは、多くの初期患者に関して、
図2に関する前述の方法を実行し、PEの症候であるパターンを特定することにより、決定することができた。シグネチャーが特定されると、そのシグネチャーは、そのシグネチャーパターンに関するスケールフィールド116直接探索することに利用することができる。
【0109】
血管構造木をセグメント化することに代えて、代替的に確率フィールド114は、スケールフィールド116をマスクすることに使われてもよい。これは、確率フィールド114に閾値化ステップを適用し(血管構造木の近似位置を抽出するために)、その後スケールフィールド116をマスクするために、閾値化された確率フィールドを使うことによって実現することができる。これは本質的に、閾値化ステップが、血管構造木を近似する位置のみに存在するスケールデータを用いて、スケールフィールド116を生成することによって実現される。血管は、このようにマスクされたスケールフィールドから「椀型」の形状で出現するだろう(フィルタの影響)。その後この形状は、自動分析30が実行可能な血管の位置およびサイズを決定するために使うことができる。
【0110】
血管構造木をセグメント化するステップを含まないことの利点は、計算時間が削減される点にある。これはまた、ユーザが人手で血管構造木の部位を特定することを必要とするフラッドフィルのステップも割愛する。結果として、異常を検出する方法であって、血管構造木をセグメント化するステップを含まないものは、高速かつユーザ処理不要な3次元画像解析を実現する。
【0111】
次に、人間の画像を取得するために使うことのできる装置を参照することにより、
図4に示されるものと同様のセットアップが、人間用スキャナー、すなわち患者を回転ステージ上で回転させるスキャナーとして利用可能であることが理解される。代替的にこの装置は、通常のCT撮像の場合のように安静状態にある患者の周囲で、X線源およびX線検出器を回転させてもよい。CT画像の取得中の放射線量を低減するために、ピークインスピレーションのときにのみ画像が取得されX線が放射されるような、ゲート技術が使われてもよい。
【0112】
生体内の3次元画像は、医療技術者などのユーザによって取得されてよく、分析会社など別のユーザによって分析(すわなち、フィルタを適用し分析を実行するステップ)されてよいことが理解される。換言すれば、第1のユーザにとっての方法は、造影剤を使うことなく生体内の3次元画像10を取得することである(これは、ヘリカルCTまたはスパイラルCTのような単純な標準的CTであってよい)。そして第2のユーザにとっての方法は、確率フィールド14、114およびスケールフィールド16、116を生成するために、フィルタ12、112を生体内の3次元画像10に適用し、血管系内の異常を診断するために、確率フィールド14、114およびスケールフィールド16、116からのデータ上で自動分析30、130を実行することである。従って、分析システム(例えば、ハードウェアやソフトウェア等)は、撮像システム(例えば、CTスキャナー)から離れた場所にあってよいことが理解される。そして前述の方法は、生体内の3次元画像10を第1の場所で取得するステップと、これを生体内の3次元画像10の分析12、30、112、130が行われる第2の場所(例えば、離れた場所)に送信するステップと、を含んでよいことが理解される。
【0113】
図14を参照すると、換気/潅流(V/Q)の比のサロゲート(以後、簡単にV/Qまたは換気潅流と呼ぶ)を計算するために、本明細書に記載された方法で得られた詳細なジオメトリ情報を、局所的(または局部的)運動の測定と結び付けることが可能であることが理解される。特に、換気/潅流の測定値を得るために、肺の部位110の運動を、肺の部位110における肺血管系のスケールと比較することができる。
【0114】
図14は、3つのスライス102、104、106(すなわち、肺の複数部位)にオーバーレイされた運動情報を用いてセグメント化された血管系100を示す。血管の径の情報は、特定の部位への血流(潅流を示す)の評価値として使うことができ、局所的運動の測定(換気を示す)と結び付けることができる。このような測定は、生体内の3次元肺画像(血管構造木の情報のため)と、肺画像の時間連続(運動測定のため)と、の両方を必要とする。生体内の3次元肺画像は、前述の方法(例えば、CTスキャン)で取得することができる。肺画像の時間連続は2枚の画像のみであってよい。この場合この2枚の画像から、呼吸サイクルの中の該当する時点における肺の運動が決定される。あるいは肺画像の時間連続は完全な呼吸サイクルを含んでもよい。この場合、呼吸サイクル全体にわたって肺の運動を測定することができる。繰り返すが、前述のように血管系測定のための撮像は、呼吸、心周期、またはその両方にゲートされてもよい。
【0115】
肺の部位110の運動は、任意の好適な技術を用いて計算することができる。しかしながらこれは、米国特許9、036、887B2(発明の名称「Particle image velocimetry suitable for X-ray projection imaging」)に記載されるようなコンピュータトモグラフィX線速度測定(CTXV)を用いて測定することが望ましい。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。CTXVは、対象物(この場合は肺)の局所的な3次元運動を測定するために、複数の投影角度から取得されたX線撮像を利用する。
【0116】
CTXVにおける運動追跡は、粒子画像速度測定(PIV)と呼ばれる既知の技術に基づく。PIVでは局所の変位は、ある時間連続内の第1の画像の領域を選択し、該選択した領域を、前記時間連続内の第2の画像と相関させることにより計算される。従って運動測定は、変位、速度、拡張(または換気)その他の任意の好適な運動測定に関する2Dまたは3Dの測定であってよい。こうした運動測定から、気道の流れが計算されてもよい。
【0117】
一般にCTXVは、画像内の複数の領域に対して実行される。これにより、画像を用いて局所的運動を測定することが可能となる。特に肺画像を参照すると、CTXVにより、肺部位の複数の領域の運動測定が可能となる。これにより、局所的な肺の運動および拡張の測定が可能となる。CTXVは、高い空間解像度で実行することができる。これは、比較のために選択された肺部位内の複数の運動測定が存在してよいことを意味する。もしそうであれば複数の運動測定は、加算する(総和を取る)か、平均化することができる。換気/潅流はまた、肺の複数部位で算出されることが理解される(すなわち、複数の肺部位がある)。
【0118】
換気が潅流と比較できるようになる前に、2つのスキャンから得られたデータは、互いに関連付けられる(例えば、異なる解像度のスキャンが補償される)。この2つのデータセットはまた、回転調整される。
【0119】
運動をスケールと比較する(すなわち「潅流」を「換気」と比較する)ために、セグメント化された血管系のスケールが、肺の部位110の領域内またはその周辺で測定される。例えば血管径のスケールは、部位110の境界または境で測定することができ、あるいは部位110の中心部で測定することもできる。好ましくは、部位110の各々は、該部位と関連する単一の枝を持っていてもよい(すなわち、ある部位は、そこに向かって伸びる枝を2本は持たない)。これは、肺の部位を、セグメント化された血管系の枝の端点に配置することを含んでよい。代替的に、肺の部位は、すべての部位が同じスケール値で位置付けられた状態で、所望のスケール値(すなわち血管径)で配置されてもよい。
【0120】
運動または運動(特に拡張)から抽出されたパラメータを、肺の複数部位(例えば、
図14に示される部位120、122、124)のスケールと比較することにより、肺全体にわたる換気/潅流の測定値が得られる。これにより、換気/潅流の局所的な比較が可能となる。従ってこの方法により、肺血栓症(この場合、PEサイトの換気は正常である一方、潅流が低下する。その結果、換気/潅流の比が高くなる)などの不健康な肺の徴候として既知の、不均一換気/潅流の検出が可能となる。
【0121】
V/Qを評価する方法の1つは、フィーダベースの方法、あるいはツリーベースまたは生体構造ベースの方法である。肺内部の領域には、気道の対および動脈を用いて、空気および血液が供給される(静脈もまた存在する)。このようにして、動脈または気道(すなわち、関心対象部位)のある1点までの肺の末梢部の領域全体は、主にその点から供給がされる。その箇所での気道および動脈の換気および潅流の測定を選択することにより、その箇所までの末梢部全体に関するV/Qの優れた測定が可能となる。その箇所での血管径は、潅流のための優れたサロゲートである。そして、前述の運動測定により、同じ箇所での気道内の流れの優れた測定が可能となる。
【0122】
代替的に、V/Qを評価するための別の方法は、領域に基づく方法である。肺の任意の領域に関し(ツリーベースまたは生体構造ベースの領域でなくてもよい。例えば
図14に示されるような、組織のキューブであってもよい)、換気および潅流のサロゲートとして、統計学的アプローチを取ることができる。選択された領域における潅流の測定値を与えるための、いくつかの方法がある。例えば、当該領域における径の中央値または平均値を計算することができる。あるいは、当該領域における径の中央値または平均値の長さまたは体積加重された体積を計算することもできる。あるいは、当該領域における径の結合体積を計算することもできる。換気の測定値を与えるための方法もある。例えば、領域内のすべてのボクセルにわたって総和された拡張の合計値や、当該領域における拡張の中央値または平均値を計算することができる。
【0123】
主に肺の異常診断に関し、造影剤を使用せずに生体内の3次元画像内の血管系異常をスキャンする方法を議論した。しかし本方法は、身体の他の部位の血管にも適用できることが理解される。例えば本法は、身体の他の器官、例えば脳、心臓、肝臓および腎臓などにも適用することができる。
【0124】
前述では、撮像中に患者が自由に呼吸できるものとして、本発明を説明した。しかしながらこれに代えて、患者は息を止めている間に撮像されてもよいことが理解される。呼吸の停止は、単に撮像中に患者が息を止めることにより制御されてもよいし、換気システムによって制御されてもよい。さらに前述では、呼吸サイクル全体の間に画像を取得し、その後、ピークインスピレーションで取得された画像のみを用いるものとして、本発明を説明した。しかしながら、呼吸サイクルの単一の時点でのみ画像を取得するために、そしてこれにより患者に照射される線量を低減するために、撮像は、ピークインスピレーションにゲートされてもよく(すなわち、画像はピークインスピレーションのときにのみ取得される)、呼吸サイクル中の希望する他の任意の時点でのみ取得されてもよい。ことが理解される。
【0125】
前述では、造影剤を使わずに取得された画像を利用するものとして、本発明を説明した(これにより、患者に健康的利益がもたらされる)。しかしながら本技術は、造影剤を使った撮像にも適用可能であることが理解される。
【0126】
前述では、少なくとも1つの画像、すなわち2D画像および/または3D画像を利用するものとして、本発明を説明した。しかしながら本発明は、複数の2D画像および/または少なくも1つの3D画像の任意の1つを連結して、またはこれらを組み合わせて利用してもよい点に注意されたい。
【0127】
本発明を特定の実施形態を結び付けて説明した。しなしながら、さらなる変形が可能である点に注意されたい。本出願は、一般に本発明の原理に従う本発明の任意の変形使用および適用をカバーするとともに、本発明の属する関連技術における既知のまたは慣例の実行中に想起され、前述の本質的特徴に適用される、本開示からの発展を含むことを意図している。
【0128】
本発明は、本発明の範囲および本質的特徴から逸脱することなく、いくつかの形態で実行されてよい。特段の断りのない限り、前述の実施形態は、本発明を限定するものではなく、むしろ添付の請求項で定義される本発明の思想および範囲の中で広く解釈されるべきものである点を理解されたい。あらゆる点において、前述の実施形態は単に説明であって限定ではない。
【0129】
本発明の思想および範囲ならびに添付の請求項の中には、種々の変形や等価なアレンジが含まれることが意図される。従って、特定の実施形態は、本発明の原理を実行するための多数の方法を説明するものであると理解されたい。以下の請求項では、ミーンズプラスファンクションクレームは、定義された機能を実行する構造をカバーし、構造的な等価物のみならず等価な構造をもカバーすることを意図する。
【0130】
特段の断りのない限り、本明細書で「サーバ」または「セキュアなサーバ」あるいは同様の用語が使われる場面では、ある通信システムで使われる通信デバイスが説明されるのであって、本発明を任意の特定の通信デバイスのタイプに限定するように解釈してはならないことを理解されたい。従って通信デバイスは限定されることなく、セキュアかセキュアでないかを問わずに、ブリッジ、ルータ、ブリッジ-ルータ(ルータ)、スイッチ、ノードその他の通信デバイスを含んでよい。
【0131】
本明細書で本発明の種々の態様を説明するためにフロー図が使われる場面では、本発明を任意の特定の論理フローまたは論理実行に限定するように解釈してはならないこともまた理解されたい。記述される論理は、全体結果を変えることなく、さもなければ本発明の真の範囲を逸脱することなく、異なる論理ブロック(例えばプログラム、モジュール、関数またはサブルーチン)にパーティション化されてよい。論理要素はしばしば、全体結果を変えることなく、さもなければ本発明の真の範囲を逸脱することなく、追加され、変形され、割愛され、異なる順序で実行され、あるいは異なる論理構造(例えば、論理ゲート、ループ基本要素、条件論理その他の論理構造)を用いて実行されてよい。
【0132】
本発明の種々の実施形態は、多数の異なる形式に実装されてよい。これらの形式は、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサその他の汎用目的コンピュータ、さらには本発明の実施形態を実行するためのシングルプロセッサ、システム内プロセッサのシリアルまたはパラレルのセットとしての任意の商用プロセッサ、例えば限定されないが、Merced(登録商標)、Pentium(登録商標)、Pentium II(登録商標)、Xeon(登録商標)、Celeron(登録商標)、Pentium Pro(登録商標)、 Efficeon(登録商標)、Athlon(登録商標)、AMD(登録商標)等が使われてもよい)で使うためのコンピュータプログラム、プログラマブルロジックデバイス(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)その他のPLD)で使うためのプログラマブルロジック、離散的部品、集積回路(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC))、これらの任意の組み合わせを含むその他の任意の手段を含む。本発明の例示的な実施形態では、主にすべてのユーザとサーバとの間の通信は、コンピュータに実行可能な形式に変換され、コンピュータ読み取り可能な媒体などに記憶され、オペレーティングシステムの制御の下でマイクロプセッサによって実行される、コンピュータプログラム命令のセットとして実現される。
【0133】
本明細書に記載されるすべてのまたは一部の機能を実行するコンピュータプログラム論理は、ソースコード形式、コンピュータ実行可能形式、および種々の中間的形式(例えば、アセンブラ、コンパイラ、リンカ、またはロケータによって生成される形式)を含む様々な形式で埋め込まれてよい。ソースコードは、種々のオペレーティングシステムまたはオペレーティング環境で使われる任意の様々なプログラム言語(例えば、オブジェクトコード、アセンブリ言語、または、Fortran、C、C++、JAVA(登録商標)もしくはHTMLなどの高級言語。さらに、より一般的な、Ada;Algol;APL;awk;Basic;C;C++;Conol;Delphi;Eiffel;Euphoria;Forth;Fortran;HTML;Icon;Java(登録商標);Javascript(登録商標);Lisp;Logo;Mathematica(登録商標);MatLab(登録商標);Miranda(登録商標);Modula-2(登録商標);Oberon(登録商標);Pascal;Perl;PL/I;Prolog;Python;Rexx;SAS;Scheme;sed;Simula;Smalltalk;Snobol;SQL;Visual Basic(登録商標);Visual C++(登録商標);Linux(登録商標)およびXML(登録商標)などの中に、本発明の実施形態を実施するために利用可能な数100の入手可能なコンピュータ言語が存在する)を用いて実行される、一連のコンピュータプログラム命令を含んでよい。ソースコードは、様々なデータ構造および通信メッセージを定義し、使用してよい。ソースコードは、コンピュータ実行可能(例えば、インタープリタにより)形式を取ってよい。あるいはソースコードは、(トランスレータ、アセンブラまたはコンパイラなどにより)コンピュータ実行可能形式に変換されてよい。
【0134】
コンピュータプログラムは、永久にまたは一時的に、任意の形式(例えば、ソースコード形式、コンピュータ実行可能形式または中間形式)で、半導体メモリデバイス(例えば、RAM、ROM、PROM、EEPROMまたはFlash-Programmable RAM)、磁気メモリデバイス(例えば、ディスケットまたは固定ディスク)、光メモリデバイス(例えば、CD-ROMまたはDVD-ROM)、PCカード(例えば、PCMCIA card)その他のメモリデバイス等の、触知可能な記憶媒体に固定されてよい。コンピュータプログラムは、アナログ技術、デジタル技術、光技術、無線技術(例えば、Bluetooth(登録商標))、ネットワーク技術およびネットワーク間技術等を含むが限定さない、任意の様々な通信技術を用いて、コンピュータに送信可能な信号内の任意の形式で固定されてよい。コンピュータプログラムは、印刷された電子的ドキュメント(例えば、市販ソフトウェア)、コンピュータシステムにプレロードされたもの(例えば、システムROMや固定ディスク上に)、通信システム(例えば、インターネットWorld Wide Web)を経由してサーバや電子掲示板から配布されたものなどを伴って、消去可能な記憶媒体としての任意の形式で配布されてよい。
【0135】
本明細書に記載されるすべてのまたは一部の機能を実行するハードウェア論理(プログラマブルロジックデバイスで使われるプログラマブルロジックを含む)は、従来の人手による方法を用いてデザインされてもよく、コンピュータ支援設計(CAD)、ハードウェア記述言語(例えば、VHDLやAHDL)またはPLDプログラミング言語(例えば、PALASM(登録商標)、ABEL(登録商標)またはCUPL(登録商標))などの種々のツールを用いて、デザインされ、キャプチャされ、シミュレートされ、電子的にドキュメント化されてもよい。ハードウェア論理はまた、本発明の実施形態を実施するための表示スクリーン内に含まれてもよく、こうした表示スクリーンは、セグメント化された表示スクリーン、アナログ表示スクリーン、デジタル表示スクリーン、CRT、LEDスクリーン、プラズマスクリーン、液晶ダイオードスクリーン等であってよい。
【0136】
プログラマブルロジックは、永久にまたは一時的に、半導体メモリデバイス(例えば、例えば、RAM、ROM、PROM、EEPROMまたはFlash-Programmable RAM等)、磁気メモリデバイス(例えば、ディスケットまたは固定ディスク)、光メモリデバイス(例えば、CD-ROMまたはDVD-ROM)その他のメモリデバイス等の、触知可能な記憶媒体に固定されてよい。プログラマブルロジックは、アナログ技術、デジタル技術、光技術、無線技術(例えば、Bluetooth(登録商標))、ネットワーク技術およびネットワーク間技術等を含むが限定さない、任意の様々な通信技術を用いて、単一のまたは送信可能なコンピュータに固定されてよい。プログラマブルロジックは、印刷された電子的ドキュメント(例えば、市販ソフトウェア)、コンピュータシステムにプレロードされたもの(例えば、システムROMや固定ディスク上に)、通信システム(例えば、インターネットWorld Wide Web)を経由してサーバや電子掲示板から配布されたものなどを伴って、消去可能な記憶媒体としての任意の形式で配布されてよい。
【0137】
本明細書で用いられる「備える/備えている」および「含む/含んでいる」という用語は、記載された特徴、整数、ステップまたは部品を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、部品またはそれらの群の追加または存在を除外するものではないものと解釈される。従って、特段の断りのない限り、本明細書および請求項の全体を通して、「備える」「備えている」「含む」「含んでいる」等の用語は、包括的な意味を持ち、排他的または除外的意味を持たないと、すなわち「含むが、それに限定されない」ことを意味すると解釈される。