(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】サージ保護回路
(51)【国際特許分類】
H02H 9/04 20060101AFI20221005BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20221005BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20221005BHJP
H02H 7/20 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H02H9/04 C
H01L27/04 H
H02H7/20 E
(21)【出願番号】P 2019035400
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(72)【発明者】
【氏名】吉屋 剛
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-260919(JP,A)
【文献】特開2013-149465(JP,A)
【文献】特開2014-011776(JP,A)
【文献】特開2008-141894(JP,A)
【文献】特開2015-144542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 9/04
H02H 7/20
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の、他の電子機器と接続されて、該他の電子機器と通信を行うための通信線に設けられたサージ保護回路であって、
前記通信線に直列に介装されたサージ保護素子と、
前記通信線に他の電子機器が接続されたことを検知して、前記サージ保護素子をバイパスするバイパス回路と、を備えるサージ保護回路。
【請求項2】
前記バイパス回路は、前記通信線に接続される他の電子機器からの接続検知信号を検知することにより、前記サージ保護素子をバイパスする、請求項1に記載のサージ保護回路。
【請求項3】
前記サージ保護素子が抵抗、またはダイオードである、請求項1または2に記載のサージ保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の通信線などに備えられるサージ保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンやゲーム機、ハードディスクレコーダなどの映像送信機器と、モニタディスプレイやテレビなどの映像受信機器との間を相互に接続する通信規格としてHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)が用いられている。
【0003】
また、車載機器に携帯端末を接続して、携帯端末に格納された映像や音楽などのコンテンツを車載機器のディスプレイやスピーカから出力させることが行われているが、この際の車載機器と携帯端末の接続にもHDMIが用いられることがある。
【0004】
図1はHDMIによる機器間の接続の模式図であり、通信ケーブル4とコネクタ3を用いて、ソース機器2(映像等を送信する機器。パソコン、ゲーム機、携帯端末等)とシンク機器1(映像等を受信する機器、モニタディスプレイ、テレビ、車載機器等)とが接続され、シンク機器1のレシーバ10と、ソース機器2のトランスミッタ20とがそれぞれ有する通信部101、201の間で通信が行われる。
【0005】
ここでDDC(Display Data Channel)は、シンク機器1とソース機器2との間でディスプレイの設定に関する情報を相互に通信する通信線であり、1つのデータ線で双方向に通信を行うため、通信部101、201の出力回路はオープンコレクタ(オープンドレイン)接続になっており、DDC通信線はプルアップ抵抗Rp1、Rp2等で電源電圧V0(例:+5V)にプルアップされている。
【0006】
HPD(Hot Plug Detect)および+Vはソース機器2がシンク機器1の接続の有無を検知するための接続検知信号を伝達するための通信線であり、ソース機器2は自身が+Vに出力した電源電圧V0がシンク機器1でループバックされてHPDで検出されることにより、シンク機器1が接続されていることを検知することができる。
【0007】
また、シンク機器1もソース機器2が出力する電源電圧V0を+V検出部102で検出することによってソース機器2の接続の有無を検知することができるほか、シンク機器1の映像出力設定等が変更された時に、HPD制御部103によってSWを一時的にオープンにして、ソース機器2にシンク機器1の接続が解除されたと認識させることで再接続を促すことができる。
【0008】
HDMIには、このほかに映像・音声が伝送されるTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)や、機器間の制御に用いられるCEC(Consumer Electronics Control)等の通信線があるが、図示および説明は省略する。
【0009】
シンク機器1のDDC通信線には、主としてシンク機器1のコネクタ3にソース機器2が接続されていないとき(オープン状態)において、コネクタ3を通じて外部から印可される静電気(ESD)等のサージによって、レシーバ10等の内部回路が破壊されることを防止するために、ダイオードD1、ツェナーダイオードZD、バリスタVa1、Va2、および保護抵抗R1からなるサージ保護回路11が設けられている。
【0010】
ダイオードD1はDDC通信線とグランドの間に設けられ、コネクタ3に印可された負のサージを略グランド電圧(例:0V)にクランプする。
【0011】
ツェナーダイオードZDはDDC通信線とグランドの間に設けられ、コネクタ3に印可された正のサージを所定のツェナー電圧(例:+15V)にクランプする。
【0012】
バリスタVa1、Va2は両端子間の電圧差が小さい場合には電気抵抗が大きいが、ある程度以上に電圧差が大きくなると急激に電気抵抗が小さくなる性質を持つ非直線性抵抗素子であり、DDC通信線とグランドの間に設けられ、コネクタ3に印可された正および負のサージを所定のON電圧(例:正負各30V)にクランプする。
【0013】
保護抵抗R1はDDC通信線のコネクタ3とレシーバ10の間に直列に挿入されており、コネクタ3にサージが印可されたとき、レシーバ10等へ流れ込む電流を制限することでレシーバ10等の内部回路を保護する。
【0014】
ここで、特許文献1の
図3には入力端子とグランドとの間だけでなく、入力端子と電源電圧VCCとの間にもクランプダイオードを挿入し、正のサージを略電源電圧VCCにクランプするサージ保護回路が記載されている。この入力端子と電源電圧VCCとの間のクランプダイオードに相当するものを
図1に破線で示した(図中のA)。
【0015】
しかしながら、DDC通信線は、先に述べたようにプルアップ抵抗Rp1、Rp2によりプルアップされているため、ダイオードをAの位置に挿入すると、例えばソース機器2の電源がONで、シンク機器1の電源がOFFである場合に、ソース機器2の電源電圧V0がプルアップ抵抗Rp1とダイオードを介してシンク機器1に流れ込んでしまう「回り込み」が発生することから、実際にはDDC通信線には正のサージ対策として電源電圧V0との間にダイオードを挿入することができない。
【0016】
またサージに対する耐性を高めるためには保護抵抗R1の値を大きくすることが有効だが、シンク機器1からソース機器2へデータを送信する際の、Loレベル電圧VLoは、プルアップ抵抗Rp1、Rp2の並列合成抵抗Rppと保護抵抗R1との分圧比で決まるため、保護抵抗R1の値を大きくすると、Loレベル電圧のグランド電圧からの「浮き」が大きくなってしまう。このためサージ対策として保護抵抗R1を大きくすることができない。
【0017】
以上のように従来のサージ保護回路11は、通信線と電源電圧V0の間に、正のサージをクランプするダイオードを挿入できないこと、保護抵抗R1の値を大きくできないこと等の制約から、十分なサージ保護性能を持たせるために、多くの半導体素子(ツェナーダイオードZD、バリスタVa1、Va2)を組み合わせて使用する必要があり、コストの上昇を招いていた。
【0018】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、使用する半導体素子の個数を減らしつつ、十分な保護性能を備えたサージ保護回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明の第一の実施形態に係るサージ保護回路は、電子機器の、他の電子機器と接続されて、該他の電子機器と通信を行うための通信線に設けられたサージ保護回路であって、前記通信線に直列に介装されたサージ保護素子と、前記通信線に他の電子機器が接続されたことを検知して、前記サージ保護素子をバイパスするバイパス回路と、を備える。
【0021】
また、本発明の他の実施形態に係るサージ保護回路は、第一の実施形態に係るサージ保護回路において、前記バイパス回路は、前記通信線に接続される他の電子機器からの接続検知信号を検知することにより、前記サージ保護素子をバイパスする。
【0022】
また、本発明のその他の実施形態に係るサージ保護回路は、前記サージ保護素子が抵抗、またはダイオードである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、バイパス回路が他の電子機器が接続されてことを検知して保護素子をバイパスするので、通信線のLoレベル電圧のグランド電圧からの「浮き」を抑制しつつ、他の電子機器が接続されていないときは保護素子が有効になり、外部から印可される静電気(ESD)等のサージに対して十分な保護を図ることができる
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】従来のサージ保護回路を備えた電子機器の通信インターフェース部分の概略を表す図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係るサージ保護回路を備えた電子機器の通信インターフェース部分の概略を表す図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係るサージ保護回路の動作を説明する図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係るサージ保護回路を備えた電子機器の通信インターフェースの各部分の信号波形を説明する図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態に係るサージ保護回路を備えた電子機器の通信インターフェース部分の概略を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
<1.第一の実施形態>
図2は本発明の第一の実施形態に係るサージ保護回路12を備えた電子機器の通信インターフェース部分の概略を表す。なお
図2ではシンク機器1のみを記載し、ソース機器2は省略している。
<1-1.サージ保護回路12の構成>
【0027】
本実施形態におけるサージ保護回路12は、ダイオードD1、ツェナーダイオードZD、バリスタVa2に代えて、バイパス回路121を備える点が
図1に示した従来のサージ保護回路11と異なる。
【0028】
バイパス回路121はNPNトランジスタTr1(以下、単にTr1という)、抵抗R0、R2、およびR3を備える。
【0029】
保護抵抗R1はDDC通信線のコネクタ3とレシーバ10の間に直列に挿入されている。
【0030】
Tr1のベースは抵抗R3を経てコネクタ3のV0通信線に接続されるとともに、抵抗R2を経てエミッタに接続されている。エミッタは保護抵抗R1のレシーバ10側に接続されている。コレクタは抵抗R0を経て、保護抵抗R1のコネクタ3側に接続されている。
【0031】
本実施形態におけるサージ保護回路12では、主として保護抵抗R1がサージ保護素子として機能する。
【0032】
なお、サージ保護回路12はバリスタVa1を備えるが、これはTr1の耐圧を超えるサージが印可された時にTr1を保護するためのものであり、想定されるサージの大きさに対して十分に耐圧の大きいTr1を使用できるときは削除しても構わない。
<1-2.サージ保護回路12の動作>
【0033】
以下、
図3および
図4を用いて、サージ保護回路12の動作を説明する。
【0034】
まず、
図3(a)はシンク機器1、ソース機器2のいずれもが、データを送信していない状態を表す。
【0035】
この状態では、通信部101、201の出力回路のトランジスタ101b、201bはOFFにされており、入・出力端子101a、201aはオープン(ハイインピーダンス)であり、プルアップ抵抗Rp1等によってDDC通信線は電源電圧V0(Hiレベル電圧。例+5V)にプルアップされている。
【0036】
なお、このとき、シンク機器1では保護抵抗R1および、抵抗R2、R3の直列合成抵抗がプルアップ抵抗として機能している。またTr1のベース・エミッタ・コレクタはすべて電源電圧V0で同電圧であるため、Tr1はOFFになっている。
【0037】
次に、
図3(b)はシンク機器1からソース機器2へデータを送信する場合を表す。
【0038】
シンク機器1からデータを送信(Loレベルを送出)するときは、通信部101の出力回路のトランジスタ101bがONにされて、入・出力端子101aがグランドに短絡される。
【0039】
すると電源電圧V0から抵抗R3、R2を経由して入・出力端子101aに電流I1が流れ込み、これにより抵抗R2の両端電圧がTr1のベース・エミッタ間のON電圧VBEonを超えるとTr1のベース・エミッタ間が導通し、同時にコレクタ・エミッタ間が導通する。
【0040】
Tr1のコレクタ・エミッタ間が導通することによって、保護抵抗R1は抵抗R0によってバイパスされ、電源電圧V0からプルアップ抵抗Rpと抵抗R0を経由して入・出力端子101aに電流I2が流れ込む。
【0041】
このとき、ソース機器2の通信部201の入・出力端子201aの電圧(Loレベル電圧)VLoBは、
VLoB=V0×R0/(Rp1+R0) (1)
で表せるので、抵抗R0の値をプルアップ抵抗Rp1に比べて十分に小さくしておけば、Loレベル電圧のグランド電圧からの「浮き」を十分に小さくすることができる(例:V0=5V、Rp1=2kΩ、R0=100Ωとすると、VLoB=5V×100Ω/(2kΩ+100Ω)≒0.24V)。
【0042】
次に、
図3(c)はソース機器2からシンク機器1へデータを送信する場合を表す。
【0043】
ソース機器2からデータを送信(Loレベルを送出)するときは、通信部201の出力回路のトランジスタ201bがONにされて、入・出力端子201aがグランドに短絡される。
【0044】
すると電源電圧V0から抵抗R3、R2および保護抵抗R1を経由して入・出力端子201aに電流I3が流れ込み、これにより抵抗R2の両端電圧差がTr1のベース・エミッタ間のON電圧VBEonを超えるとTr1のベース・エミッタ間が導通する。
【0045】
また、同時にTr1のベース・コレクタ間のPN接合も抵抗R3、R0によって順方向にバイアスされるため、Tr1のベース・コレクタ間が導通し、電源電圧V0から抵抗R3、R0を経由して入・出力端子201aに電流I4が流れ込む。
【0046】
抵抗R0の値は保護抵抗R1に比べ十分小さく設定されているため、このとき抵抗R3を流れる電流は、ほとんどが抵抗R0を流れ、(I4>>I3、つまり保護抵抗R1をバイパスし)、Tr1のベース電圧は抵抗R3と抵抗R0の分圧比でほぼ決まる。
【0047】
また、ベース・コレクタ間のON電圧VBConは、VBEonとほぼ等しい(VBCon≒VBEon)ことから、Tr1のコレクタとエミッタはベース電圧を基準として、ほぼ同電圧となっている。
【0048】
したがって、このときの通信部101の入・出力端子101aの電圧(Loレベル電圧)VLoAは、
図4(c)から明らかなように、
VLoA≒(V0-VBCon)×R0/(R3+R0) (2)
で表わされ、抵抗R0の値を抵抗R3に比べて十分に小さくしておけば、Loレベル電圧のグランド電圧からの「浮き」を十分に小さくすることができる(例:V0=5V、VBCon=0.7V、R3=47kΩ、R0=100Ωとすると、VLoA=(5V-0.7V)×100Ω/(47kΩ+100Ω)≒0.01V)。
【0049】
図4は第一の実施形態に係るサージ保護回路12における各部の信号波形のシミュレーション結果を示す。
【0050】
図4(a)はシンク機器1からデータを送信したときのソース機器2の通信部201の入・出力端子201aの信号波形を示す。シンク機器1の通信部101の入・出力端子101aがオープン(ハイインピーダンス)の期間(図中「B」の期間)では信号は電源電圧V0に等しい+5Vになっている。
【0051】
一方、入・出力端子101aがグランド電圧(0V)の期間(図中「C」の期間)では、信号はほぼ0V(約0.2V)になっており、Loレベル電圧のグランド電圧からの「浮き」が発生していない(十分小さい)ことがわかる。
【0052】
次に
図4(b)はソース機器2からデータを送信したときのシンク機器1の通信部101の入・出力端子101aの信号波形を示す。ソース機器2の通信部201の入・出力端子201aがオープン(ハイインピーダンス)の期間(図中「D」の期間)では信号は電源電圧V0に等しい+5Vになっている。
【0053】
一方、入・出力端子101aがグランド電圧(0V)の期間(図中「E」の期間)では、信号はほぼ0Vになっており、Loレベル電圧のグランド電圧からの「浮き」が発生していない(十分小さい)ことがわかる。
【0054】
以上のように、第一の実施形態に係るサージ保護回路12は、保護抵抗R1を大きな値としても、データ送信時(Loレベル送出時)はバイパス回路121によって保護抵抗R1をバイパスするため、Loレベル電圧のグランド電圧からの「浮き」を十分小さくすることができる。
【0055】
そして、コネクタ3にソース機器2が接続されていないときは、ソース機器2からバイパス回路121のTr1のベースに電源電圧V0が供給されないため、Tr1はOFF(コレクタ・エミッタ間が遮断状態)であり保護抵抗R1がバイパスされずに有効になるため、コネクタ3を通じて外部から印可される静電気(ESD)等のサージに対して十分な保護を行うことができる。
【0056】
また、バリスタVa1を除けば必要な半導体素子は一個のトランジスタTr1だけであり、サージ保護のために多くの半導体素子を使用する必要がない。
【0057】
なお、保護抵抗R1、抵抗R2、R3、R0の値は任意に設定可能であるが、すくなくとも、ソース機器2からデータを送信する際に、通信部201の入・出力端子201aがグランド電圧(0V)の時にTr1のベース・エミッタ間がONになるために、例えば以下の条件を満たしていることが必要である。
V0×R2/(R1+R2+R3)≧VBEon (3)
【0058】
また、シンク機器1においては保護抵抗R1、抵抗R2、R3の直列合成抵抗がDDC通信線のプルアップ抵抗として機能していることから、この直列合成抵抗値が、通信線の規格で定められたプルアップ抵抗値と略等しくなるように設定することもできる。
<2.第二の実施形態>
【0059】
図5は本発明の第二の実施形態に係るサージ保護回路13を備えた電子機器の通信インターフェース部分の概略を表す。なお
図5ではシンク機器1のみを記載し、ソース機器2は省略している。
【0060】
<2-1.サージ保護回路13の構成>
本実施形態におけるサージ保護回路13は、保護抵抗R1に代えてダイオードD2を備え、また、バイパス回路121に代えてバイパス回路131を備え、さらに抵抗R0’を備える点が
図2に示した第一の実施形態に係るサージ保護回路12と異なる。
【0061】
バイパス回路131はバイパス回路121の抵抗R0のあった部分が短絡されている点がバイパス回路121と異なり、それ以外はバイパス回路121と同様である。
【0062】
ダイオードD2はDDC通信線にコネクタ3側がカソード、レシーバ10側がアノードになるように直列に挿入されている。
【0063】
Tr1のコレクタはダイオードD2のカソードに、エミッタはアノードにそれぞれ接続されている。
【0064】
抵抗R0’はDDC通信線のコネクタ3とダイオードD2のカソードの間に直列に挿入されている。
【0065】
本実施形態におけるサージ保護回路13では、主としてダイオードD2がサージ保護素子として機能する。
【0066】
なお、サージ保護回路13はバリスタVa1を備えるが、これはTr1やダイオードD2の耐圧を超えるサージが印可された時にTr1やダイオードD2を保護するためのものであり、想定されるサージの大きさに対して十分に耐圧の大きいTr1やダイオードD2を使用できるときは削除しても構わない。
<2-2.サージ保護回路13の動作>
【0067】
サージ保護回路13の動作は、サージ保護回路12とほぼ同じである。まず、シンク機器1、ソース機器2のいずれもが、データを送信していない状態では第一の実施形態の説明で述べたようにDDC通信線は電源電圧V0(Hiレベル電圧。例+5V)にプルアップされている。
【0068】
次に、シンク機器1からデータを送信(Loレベルを送出)するときは、通信部101の入・出力端子101aがグランドに短絡されることで、電源電圧V0から抵抗R3、R2を経由して入・出力端子101aに電流が流れ込み、これによりTr1のベース・エミッタ間が導通し、同時にコレクタ・エミッタ間が導通してダイオードD2をバイパスする。
【0069】
このとき、ソース機器2の通信部201の入・出力端子201aの電圧(Loレベル電圧)VLoBは、
VLoB≒V0×R0’/(Rp1+R0’) (4)
で表せるので、抵抗R0’の値をプルアップ抵抗Rp1に比べて十分に小さくしておけば、Loレベル電圧のグランド電圧からの「浮き」を十分に小さくすることができる(例:V0=5V、Rp1=2kΩ、R0’=100Ωとすると、VLoB=5V×100Ω/(2kΩ+100Ω)≒0.24V)。
【0070】
次に、ソース機器2からデータを送信(Loレベルを送出)するときは、通信部201の入・出力端子201aがグランドに短絡されことで電電電圧V0から抵抗R3、R2およびダイオードD2を経由して入・出力端子201aに電流が流れ込み、これによりTr1のベース・エミッタ間が導通する。
【0071】
また、同時にTr1のベース・コレクタ間のPN接合も抵抗R3、R0’によって順方向にバイアスされるため、Tr1のベース・コレクタ間も導通する。
【0072】
これによりダイオードD2はバイパスされるため、シンク機器1の通信部101の入・出力端子101aの電圧(Loレベル電圧)VLoAは、第一の実施形態の動作の説明で述べたのと同様に、
VLoA≒(V0-VBCon)×R0’/(R3+R0’) (5)
で表せるので、抵抗R0’の値を抵抗R3に比べて十分に小さくしておけばLoレベル電圧のグランド電圧からの「浮き」を十分に小さくすることができる(例:V0=5V、VBCon=0.7V、R3=47kΩ、R0’=100Ωとすると、VLoA=(5V-0.7V)×100Ω/(47kΩ+100Ω)≒0.01V)。
【0073】
以上のように、第二の実施形態に係るサージ保護回路13は、第一の実施形態に係るサージ保護回路12と同様に、データ送信時(Loレベル送出時)はバイパス回路131によってダイオードD2をバイパスするため、Loレベル電圧のグランド電圧からの「浮き」を十分小さくすることができる。
【0074】
そして、コネクタ3にソース機器2が接続されていないときはバイパス回路131のTr1がOFFになるため、ダイオードD2がバイパスされずに有効になる。ダイオードは逆方向には高い絶縁性を示すことから、コネクタ3を通じて外部から印可される静電気(ESD)等のサージに対してより確実な保護を行うことができる。
【0075】
また、バリスタVa1を除けば必要な半導体素子は一個のトランジスタTr1と一個のダイオードD2だけであり、サージ保護のために多くの半導体素子を使用する必要がない。
<4.その他>
【0076】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0077】
また、以上では、HDMIの通信線に備えられたサージ保護回路を例に説明したが、本発明のサージ保護回路は他の規格の通信線にも適用可能であり、例えばDVI(Digital Visual Interface)や、その他のオープンコレクタ(オープンドレイン)出力による通信を行う方式の通信線にも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1 シンク機器
2 ソース機器
3 コネクタ
4 ケーブル
10 レシーバ
20 トランスミッタ
101、201 通信部
11、12、13 サージ保護回路
121、131 バイパス回路
R1 保護抵抗
D1、D2 ダイオード
Tr1 NPNトランジスタ
ZD ツェナーダイオード
Va1、Va2 バリスタ