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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】車両のドア構造
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/38 20060101AFI20221005BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20221005BHJP
   E05F 11/48 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
E05F11/38 G
B60J1/17 B
E05F11/48 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019121350
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021008707
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2020-07-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 明次
(72)【発明者】
【氏名】田林 昌宜
(72)【発明者】
【氏名】長崎 哲也
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-008544(JP,A)
【文献】特開2017-133228(JP,A)
【文献】特開2005-042472(JP,A)
【文献】実開平02-129584(JP,U)
【文献】特開2005-256451(JP,A)
【文献】特開平05-163868(JP,A)
【文献】米国特許第05018305(US,A)
【文献】欧州特許第0389869(EP,B1)
【文献】実開昭61-098175(JP,U)
【文献】特開2014-234040(JP,A)
【文献】国際公開第2014/191812(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004004380(DE,A1)
【文献】特表2010-521600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04
E05F 15/00-15/79
B60J 1/00-1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア本体と、略矩形状の窓ガラスと、前記ドア本体に取り付けられ、前記窓ガラスが接続されて前記窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータとを備えた車両のドアの組立方法であって、
前記ウインドレギュレータは、ガイドレールと、前記窓ガラスを支持し、前記ガイドレールに沿って移動して前記窓ガラスを昇降させるキャリアプレートとを有し、前記ガイドレールは、前記キャリアプレートの少なくとも一部が摺動する摺動面にグリスが塗布されており、
前記ドア本体は、前記窓ガラスが取り付けられる際に前記窓ガラスを案内可能であり、車両の前後方向で一方の方向に予め設けられるサッシュを有し、前記サッシュは、前記窓ガラスが前記キャリアプレートに接続される際に、前記窓ガラスの前後方向の縁部のうち、一方側の縁部のみが挿入されて前記窓ガラスを昇降方向に案内する溝を有し、
前記車両のドアの組立方法が、
前記ドア本体に前記ウインドレギュレータを取り付ける工程、
前記窓ガラスを前記キャリアプレートに接続する際に、前記窓ガラスの前後方向の一対の縁部のうち、一方側の縁部のみが前記サッシュの前記溝に案内された状態で、前記窓ガラスを前記キャリアプレートに向かって下方に移動する工程、および
前記窓ガラスを前記キャリアプレートに接続する工程
を有し、
前記窓ガラスの他方側の縁部側が前記サッシュに案内された前記一方側の縁部を支点として揺動した際に、前記窓ガラスが前記ガイドレールの前記摺動面に接触しないように、前記ガイドレールの上端部において前記窓ガラスの近接を阻害し、前記窓ガラスと前記ガイドレールの前記摺動面とを離間させるように構成された離間部材を有し、前記窓ガラスを前記キャリアプレートに向かって下方に移動する工程において、前記窓ガラスが、前記離間部材によって前記摺動面と離間した状態で下方に移動する、車両のドアの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられる開閉式の窓ガラスは、車両のドアパネルに窓ガラスを開閉するウインドレギュレータを取り付けた後、ウインドレギュレータのキャリアプレートに取り付けられる。キャリアプレートに取り付けられる窓ガラスとしては、車両の側部の後方側のドアに設けられる窓など、ウインドレギュレータによって移動する窓ガラスの形状が略矩形状である場合がある(特許文献1参照)。このような場合には、一対のサッシュが車両の前後方向に設けられるため、車両のドアに設けられた状態で窓ガラスを取り付けると、車両前後方向に窓ガラスを位置調節する範囲が狭いので、窓ガラスのウインドレギュレータへの取付が困難となる。そのため、窓ガラスをウインドレギュレータに取り付ける際には、後方のサッシュが無い状態で窓ガラスが前方のサッシュに嵌め込まれて、窓ガラスを前方のサッシュのみに案内させて下方へ移動させることにより、窓ガラスがウインドレギュレータに取付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-96209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、窓ガラスの取付時に、車両のドアに車体の前後方向で片側のみにサッシュが設けられている場合、窓ガラスを前方のサッシュのみに嵌め込んで、窓ガラスを下方に移動させる。しかし、窓ガラスをウインドレギュレータに取り付けるために下方へ移動させる作業中に、窓ガラスがサッシュを支点として垂直軸周りに揺動してしまう可能性がある。このとき、窓ガラスがウインドレギュレータのガイドレールに近付くように揺動すると、窓ガラスがガイドレールに接触する場合がある。ガイドレールにはキャリアプレートの摺動性を高めるためにグリスが塗布されており、窓ガラスのガイドレールへの接触により窓ガラスの表面にグリスが付着してしまう。
【0005】
本発明は、窓ガラスをウインドレギュレータへ組み付ける際に、窓ガラスをグリスで汚すことを抑制することができる、車両のドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両のドア構造は、ドア本体と、略矩形状の窓ガラスと、前記ドア本体に取り付けられ、前記窓ガラスが接続されて前記窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータとを備えた車両のドア構造であって、前記ウインドレギュレータは、ガイドレールと、前記窓ガラスを支持し、前記ガイドレールに沿って移動して前記窓ガラスを昇降させるキャリアプレートとを有し、前記ガイドレールは、前記キャリアプレートの少なくとも一部が摺動する摺動面にグリスが塗布されており、前記ドア本体は、前記窓ガラスが取り付けられる際に前記窓ガラスを案内可能であり、車両の前後方向で一方の方向に予め設けられるサッシュを有し、前記サッシュは、前記窓ガラスが前記キャリアプレートに接続される際に、前記窓ガラスの前後方向の縁部のうち、一方側の縁部のみが挿入されて前記窓ガラスを昇降方向に案内する溝を有し、前記窓ガラスが前記サッシュに案内された縁部を支点として揺動した際に、前記窓ガラスが前記ガイドレールの前記摺動面に接触しないように、前記ガイドレールの上端部において前記窓ガラスの近接を阻害し、前記窓ガラスと前記ガイドレールの前記摺動面とを離間させるように構成された離間部材を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両のドア構造によれば、窓ガラスをウインドレギュレータへ組み付ける際に、窓ガラスをグリスで汚すことを抑制することができる。
【0008】
また、本発明の車両のドア構造について、ドア本体と、略矩形状の窓ガラスと、前記ドア本体に取り付けられ、前記窓ガラスが接続されて前記窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータとを備えた車両のドアの組立方法であって、
前記ウインドレギュレータは、ガイドレールと、前記窓ガラスを支持し、前記ガイドレールに沿って移動して前記窓ガラスを昇降させるキャリアプレートとを有し、前記ガイドレールは、前記キャリアプレートの少なくとも一部が摺動する摺動面にグリスが塗布されており、前記ドア本体は、前記窓ガラスが取り付けられる際に前記窓ガラスを案内可能であり、車両の前後方向で一方の方向に予め設けられるサッシュを有し、前記サッシュは、前記窓ガラスが前記キャリアプレートに接続される際に、前記窓ガラスの前後方向の縁部のうち、一方側の縁部のみが挿入されて前記窓ガラスを昇降方向に案内する溝を有し、
前記車両のドアの組立方法が、前記ドア本体に前記ウインドレギュレータを取り付ける工程、前記窓ガラスの前後方向の一対の縁部のうち、一方側の縁部のみが前記サッシュに案内された状態で、前記窓ガラスを下方に移動する工程、および前記窓ガラスを前記キャリアプレートに接続する工程を有し、前記窓ガラスが前記サッシュに案内された縁部を支点として揺動した際に、前記窓ガラスが前記ガイドレールの前記摺動面に接触しないように、前記ガイドレールの上端部において前記窓ガラスの近接を阻害し、前記窓ガラスと前記ガイドレールの前記摺動面とを離間させるように構成された離間部材を有し、前記窓ガラスを下方に移動する工程において、前記窓ガラスが、前記離間部材によって前記摺動面と離間した状態で下方に移動する、車両用のドアの組立体に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のドア構造において、窓ガラスが組み付けられた状態を示す概略図である。
図2図1のドア構造に設けられたウインドレギュレータを示す概略図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図7におけるIV-IV線で切断した状態を示し、サッシュに案内された窓ガラスの揺動を示す図である。
図5図8におけるV-V線で切断した状態を示し、窓ガラスが摺動面から離間した状態を示す図である。
図6】ドア本体にウインドレギュレータが取り付けられた状態を示す概略図である。
図7図6に示される状態から、ドア本体のサッシュに窓ガラスが挿入された状態を示す概略図である。
図8図7に示される状態から、窓ガラスが下方に移動して、ウインドレギュレータのキャリアプレートに取り付けられる前の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の車両のドア構造および車両のドアの組立方法を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の車両のドア構造および車両のドアの組立方法は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態の車両のドア構造1は、ドア本体2と、略矩形状の窓ガラス3と、ドア本体2に取り付けられ、窓ガラス3が接続されて窓ガラス3を昇降させるウインドレギュレータ4とを備えている。
【0012】
ドア本体2は、車両に取り付けられるドアである。本実施形態では、ドア本体2は、車両のリアドアであるが、ドア本体2は、車両のリアドアに限定されるものではない。ドア本体2は、本実施形態では、図1に示されるように、ドアパネル21と、車両の前後方向D1で一方の方向に予め設けられるサッシュ22と、サッシュ22の上端から車両の前後方向D1で他方の方向に向かって延びる上部サッシュ23とを有している。
【0013】
ドアパネル21には、図1に示されるように、ウインドレギュレータ4が取り付けられる。本実施形態では、ドアパネル21は、車外側のアウタパネル21aと車室側のインナパネル21bとを有している(図5参照)。窓ガラス3は、アウタパネル21aとインナパネル21bとの間の空間内を移動する。ドアパネル21の材料は、特に限定されないが、たとえば、金属等、所定の剛性を有する材料であればよい。また、ドアパネル21の形状および構造は、ウインドレギュレータ4を取り付け可能であり、窓ガラス3を昇降させるスペースを有していれば、特に限定されない。
【0014】
上部サッシュ23は、図1に示されるように、窓ガラス3の昇降方向D2で、ドアパネル21に対して上昇方向側(上側)に設けられ、窓ガラス3によって開閉される開口部OPを形成するドアフレームを構成している。なお、後述するように、本実施形態のドア構造1は、窓ガラス3がウインドレギュレータ4に取り付けられた後に第2サッシュ24が後付けされ、開口部OPは2つの開口部に分離される。開口部OPのうち、車両の前後方向D1でサッシュ22および第2サッシュ24との間の第1開口部OP1が窓ガラス3によって開閉される。また、開口部OPのうち、第1開口部OP1を除く部分である第2開口部OP2は、本実施形態では、固定窓32によって閉鎖される。
【0015】
サッシュ22は、窓ガラス3の昇降時に窓ガラス3を案内する。また、本実施形態では、サッシュ22は、窓ガラス3がウインドレギュレータ4のキャリアプレート43に取り付けられる際に窓ガラス3を案内可能である。サッシュ22は、車両の前後方向D1で一方の方向に予め設けられている。具体的には、サッシュ22は、車両の前後方向D1で前方側において、窓ガラス3の昇降方向D2(車両の上下方向)に沿って延びている。なお、サッシュ22は、窓ガラス3が上昇および下降できるように窓ガラス3を案内することが可能であれば、鉛直方向に延びていてもよいし、鉛直方向に対して傾斜して車両の上下方向に延びていてもよい。
【0016】
サッシュ22は、窓ガラス3がキャリアプレート43に接続される際に、窓ガラス3の前後方向D1の縁部3a、3bのうち、一方側の縁部3aのみが挿入されて窓ガラス3を昇降方向D2に案内する溝221(図4参照)を有している。溝221は、サッシュ22の延在方向に沿って窓ガラス3の昇降方向D2に延びている。溝221は、窓ガラス3の一方側の縁部3aを挿入できるように構成されている。本実施形態では、溝221は、サッシュ22に設けられた弾性変形可能なシール部材(ガラスラン)Sに形成されている。本実施形態では、窓ガラス3の一方側の縁部3aが、シール部材Sに設けられ、窓ガラス3の一方の面に当接する当接片Saと、窓ガラス3の他方の面に当接する当接片Sbとによって挟み込まれた状態で、窓ガラス3が昇降方向D2に案内される。
【0017】
上部サッシュ23は、窓ガラス3の上縁3cが突き当たって窓ガラス3を所定の上昇位置で停止させる。上部サッシュ23は、本実施形態では、サッシュ22の上端から車両の前後方向D1で後方に向かって延びている。上部サッシュ23は、窓ガラス3の上縁3cが突き当たる位置に配置された横枠部23aと、車両の前後方向D1で横枠部23aの後端部から斜め下方に延設された傾斜枠部23bとを有している。
【0018】
また、本実施形態では、図1に示されるように、ドア本体2は、窓ガラス3がキャリアプレート43に接続された後に、ドア本体2に取り付けられ、窓ガラス3の昇降方向D2に沿って延びる第2サッシュ24を有している。第2サッシュ24は、窓ガラス3がキャリアプレート43に接続され、ウインドレギュレータ4によって昇降駆動された際に、サッシュ22とともに、窓ガラス3を昇降方向D2に案内する。第2サッシュ24は、窓ガラス3の前後方向D1の一対の縁部3a、3bのうち、他方側の縁部3bを案内するように構成されている。
【0019】
第2サッシュ24は、窓ガラス3がキャリアプレート43に接続される前には、ドア本体2に取り付けられておらず(図7および図8参照)、窓ガラス3がキャリアプレート43に接続された後にドア本体2に取り付けられる(図1参照)。窓ガラス3がキャリアプレート43に接続される前に、第2サッシュ24が設けられていないので、窓ガラス3をドア本体2に容易に取り付けることができる。
【0020】
なお、第2サッシュ24は、窓ガラス3がキャリアプレート43に接続された後、窓ガラス3の他方側の縁部3bが第2サッシュ24に挿入されるように、ドア本体2(ドアパネル21および上部サッシュ23)に取り付けられる。第2サッシュ24は、サッシュ22と略平行に配置され、サッシュ22、第2サッシュ24、上部サッシュ23(横枠部23a)、およびドアパネル21の上縁によって、第1開口部OP1が画定される。この第1開口部OP1は、窓ガラス3が昇降することによって、開閉される。また、第2サッシュ24、上部サッシュ23(傾斜枠部23b)、および、ドアパネル21の上縁によって、第2開口部OP2が画定される。第2開口部OP2は、固定窓32によって閉鎖される。なお、第2サッシュ24の形状および構造は、窓ガラス3がキャリアプレート43に接続された後にドア本体2に取り付け可能であり、窓ガラス3の他方側の縁部3bを案内することができれば、特に限定されない。第2サッシュ24は、サッシュ22に設けられたシール部材(ガラスラン)Sと同様のまたは異なる構造のシール部材を有していてもよい。
【0021】
窓ガラス3は、ウインドレギュレータ4のキャリアプレート43に取り付けられ、ウインドレギュレータ4によって昇降方向D2に昇降する。窓ガラス3は図1に示されるように、略矩形状に形成され、昇降することによって略矩形状の第1開口部OP1を開閉する。窓ガラス3は、フロントドアの窓ガラスのように車両の前後方向D1で一方側が先細となる形状とは異なり、本実施形態では、第1開口部OP1を閉鎖する閉鎖部CP(図1の二点鎖線参照)が略長方形状である。窓ガラス3の下部には、キャリアプレート43と接続される接続部31が設けられ、接続部31を介して窓ガラス3がキャリアプレート43に接続される。
【0022】
ウインドレギュレータ4は、図1および図2に示されるように、駆動部41と、ガイドレール42と、窓ガラス3を支持し、ガイドレール42に沿って移動して窓ガラス3を昇降させるキャリアプレート43とを有している。本実施形態では、駆動部41によってケーブルCaを駆動して、それによってキャリアプレート43をガイドレール42に沿って移動させるケーブル式ウインドレギュレータとして示されている。しかし、ウインドレギュレータ4は、キャリアプレート43をガイドレール42に沿って移動させることができれば、ケーブル式ウインドレギュレータに限定されない。
【0023】
駆動部41は、キャリアプレート43を移動させるために、ケーブルCaを駆動する駆動源である。駆動部41は、本実施形態では、正逆回転可能なモータを備え、ケーブルCaを駆動することによって、キャリアプレート43を昇降方向D2に移動させる。なお、駆動部41は、本実施形態では、窓ガラス3の昇降方向D2における、ウインドレギュレータ4の中央側に設けられているが、駆動部41を設ける位置は図示する位置に限定されるものではない。たとえば、駆動部41は、ウインドレギュレータ4の昇降方向D2における端部(たとえば、図1における、ガイドレール42の下端側)に設けられていてもよい。
【0024】
なお、ケーブルCaは、図2に示されるように、駆動部41からガイドレール42の上端側を経由してキャリアプレート43に延びる上昇用ケーブルCa1と、駆動部41からガイドレール42の下端側を経由してキャリアプレート43に延びる下降用ケーブルCa2とを有している。上昇用ケーブルCa1は、一端が駆動部41のドラムに取り付けられ、他端がキャリアプレート43に取り付けられている。下降用ケーブルCa2は、一端が駆動部41のドラムに取り付けられ、他端がキャリアプレート43に取り付けられている。なお、本実施形態では、ガイドレール42から駆動部41までの間において、ケーブルCaはアウターケーシングOC内に収容されて配索されている。
【0025】
キャリアプレート43は、窓ガラス3が取り付けられ、ガイドレール42に沿って昇降方向D2に移動することによって、窓ガラス3を昇降させる。キャリアプレート43は、図2に示されるように、窓ガラス3が固定される窓ガラス固定部431と、ガイドレール42に対して摺動可能に取り付けられる摺動部432と、キャリアプレート43を操作するケーブルCaが接続されるケーブル接続部433とを有している。
【0026】
窓ガラス固定部431は、図1および図2に示されるように、昇降方向D2で、キャリアプレート43の上昇側の端部に設けられている。窓ガラス固定部431は、本実施形態では、窓ガラス3をキャリアプレート43に取り付けるためのボルト等の固定部材が挿入される取付孔H(図2参照)を有している。なお、窓ガラス固定部431は、窓ガラス3をキャリアプレート43に取り付けることができればよく、ガラスホルダを介して間接的に取り付けられてもよく、取付孔Hを有するものに限定されない。
【0027】
摺動部432は、キャリアプレート43が移動する際に、ガイドレール42に対して摺動する部位である。摺動部432は、キャリアプレート43の昇降方向D2への移動時に、ガイドレール42に対向して、ガイドレール42に対して摺動する部位である。なお、摺動部432は、ガイドレール42の形状に対応して適宜変更することができる。
【0028】
ケーブル接続部433にはケーブルCaの端部が接続される。ケーブル接続部433の形状や構造は、キャリアプレート43を昇降できるようにケーブルCaを接続することができれば、特に限定されない。本実施形態では、キャリアプレート43は、上昇用ケーブルCa1が接続される第1ケーブル接続部433aと、下降用ケーブルCa2が接続される第2ケーブル接続部433bとを有している。
【0029】
なお、キャリアプレート43の形状や構造は、窓ガラス3を取り付けることができ、ガイドレール42に沿って昇降方向D2に移動することができるものであれば、特に限定されない。
【0030】
ガイドレール42は、キャリアプレート43が所定の移動経路に沿って摺動するように、キャリアプレート43を案内する。ガイドレール42は、本実施形態では、キャリアプレート43の移動経路に沿って所定の長さを有している。ガイドレール42は、図5に示されるように、ガイドレール42の長さ方向に沿って弓状に湾曲している。なお、本実施形態では、ガイドレール42と窓ガラス3とは、図5に示されるように、略同一の曲率で湾曲している。ガイドレール42の材料は、例えば金属や硬質樹脂とすることができるが、キャリアプレート43を案内することができる所定の剛性を有する材料であれば特に限定されない。
【0031】
ガイドレール42は、窓ガラス3の厚さ方向(図1における紙面奥行き方向)でキャリアプレート43と対向して、キャリアプレート43がガイドレール42に対して摺動できるように構成されている。ガイドレール42のうち、キャリアプレート43の少なくとも一部が摺動する摺動面SL(図3参照)には、グリスGが塗布されている。グリスGは、キャリアプレート43のガイドレール42に対する摺動性を向上させるために、ガイドレール42の一部に塗布される。摺動面SLは、窓ガラス3の厚さ方向と同じ方向となるガイドレール42の厚さ方向に、キャリアプレート43と対向するガイドレール42の面である。
【0032】
ガイドレール42は、キャリアプレート43を所定の移動経路に沿って案内することができれば、その形状は特に限定されない。本実施形態では、ガイドレール42は、図2および図3に示されるように、窓ガラス3に対向して昇降方向D2に延びる基部421と、基部421の一方の側縁から窓ガラス3側へと突出する第1突条部422と、基部421の他方の側縁から窓ガラス3側へと突出する第2突条部423と、第1突条部422の先端から第2突条部423に対して離れる方向へ延びる延在部424とを備えている。本実施形態では、第1突条部422は、第2突条部423よりも車両の前後方向D1でサッシュ22から離れた位置に設けられている。また、延在部424は、本実施形態では、第1突条部422の先端からサッシュ22から離れる方向に延び、かつ、昇降方向D2に長い板状に形成されている。
【0033】
本実施形態では、延在部424が摺動面SLを有し、延在部424の摺動面SLにグリスGが塗布されている。なお、本明細書における「摺動面SLにグリスGが塗布される」とは、摺動面SLのうち少なくとも一部にグリスGが塗布されていればよいことを意味し、必ずしも摺動面SLの全面にグリスGが塗布されている必要はない。また、延在部424以外の部位、たとえば、第1突条部422、第2突条部423、基部421のキャリアプレート43と対向する面も摺動面とすることができ、これらの摺動面にグリスGが塗布されていてもよい。また、グリスGは、ガイドレール42の長さ方向に沿って塗布されていてもよい。
【0034】
本実施形態では、ドア構造1は、図4および図5に示されるように、窓ガラス3がサッシュ22に案内された縁部3aを支点として揺動した際に、窓ガラス3がガイドレール42の摺動面SLに接触しないように、ガイドレール42の上端部において窓ガラス3の近接を阻害し、窓ガラス3とガイドレール42の摺動面SLとを離間させるように構成された離間部材5を有している。
【0035】
離間部材5は、窓ガラス3をキャリアプレート43に向かって下方へ移動させる際に、窓ガラス3とグリスGが塗布された摺動面SLとを離間させる。これにより、窓ガラス3が縁部3aを支点として揺動しても、窓ガラス3の閉鎖部CPにグリスGが付着することを抑制し、窓ガラス3のウインドレギュレータ4への組付時に、窓ガラス3をグリスGで汚すことを抑制することができる。
【0036】
具体的には、図4に示されるように、窓ガラス3をキャリアプレート43に接続する際には、窓ガラス3の前後方向D1における両縁部3a、3bのうち、一方側の縁部3aのみがサッシュ22に案内され、他方の縁部3bは案内されていない。そのため、窓ガラス3は、キャリアプレート43に向けて移動させる移動作業中に、サッシュ22の溝221に案内された縁部3aを支点として揺動する場合がある(二点鎖線参照)。この場合、ガイドレール42の上端部において、図5に示されるように、離間部材5が窓ガラス3と当接することによって、窓ガラス3のガイドレール42への近接が阻害される。このように、ガイドレール42の上端部において、窓ガラス3のガイドレール42への近接が阻害されることによって、図5に示されるように、窓ガラス3のうち、離間部材5と接触している部位より下側のガイドレール42との対向部位は、ガイドレール42の摺動面SLに対して離間する。したがって、窓ガラス3、特に窓ガラス3の閉鎖部CPにグリスGが付着することが抑制される。なお、本実施形態では、窓ガラス3の下縁が摺動面SLに接触しているが、窓ガラス3の下縁は、閉鎖部CPと異なり、窓ガラス3の閉鎖時に外部に露出することがないので、窓ガラス3の閉鎖時に外部に露出する閉鎖部CPおよび閉鎖部CPの周囲へグリスGが付着しなければ充分である。
【0037】
離間部材5は、本実施形態では、図1図2および図5に示されるように、ガイドレール42の上端部に設けられ、ケーブルCaをガイドレール42の上端部において方向転換するガイド部材である。しかし、離間部材5は、ガイドレール42の上端部において窓ガラス3の近接を阻害し、窓ガラス3と摺動面SLとを離間させるように構成されていれば、ガイド部である必要はない。
【0038】
また、本実施形態では、離間部材5は、窓ガラス3がドア本体2中に収納された際にサッシュ22と離間部材5とによって窓ガラス3が摺動面SLから離間するように、窓ガラス3を支持できる厚さを有している。具体的には、図5に示されるように、窓ガラス3がドア本体2(ドアパネル21)中に収納された際に、窓ガラス3の閉鎖部CPが摺動面SLから離間して、グリスGの付着が抑制されている。なお、離間部材5の厚さは、窓ガラス3の厚さ方向に平行な方向の長さである。離間部材5の厚さは、窓ガラス3の縁部3aを支点とした窓ガラス3の揺動や、サッシュ22の溝221内における窓ガラス3の厚さ方向での移動(ガタツキ)の際に、窓ガラス3が摺動面SLに接触しない程度の厚さとされる。離間部材5が所定の厚さを有していることによって、サッシュ22のみではコントロールできない、窓ガラス3の縁部3aを支点とした揺動を所定の範囲に制限して、窓ガラス3の移動軌跡をコントロールし、窓ガラス3が摺動面SLに接触することを抑制している。
【0039】
離間部材5は、本実施形態では、昇降方向D2で摺動面SLの延長線上に設けられている。離間部材5が昇降方向D2で摺動面SLの延長線上の位置に設けられていることによって、摺動面SLと窓ガラス3との接触を抑制しやすくなる。
【0040】
また、離間部材5は、本実施形態では、車両の前後方向D1において、所定の幅を有し、昇降方向D2において、所定の高さを有している。離間部材5が所定の幅を有していることによって、離間部材5の強度を高めることができ、窓ガラス3との接触時に、窓ガラス3を所定の位置で支持することができる。なお、離間部材5の幅および高さは、窓ガラス3とガイドレール42の摺動面SLとを離間して、窓ガラス3の閉鎖部CPにグリスGが付着することを抑制することができれば、特に限定されない。本実施形態では、離間部材5は、延在部424の幅を超える幅で設けられており、よりグリスGの付着が抑制されている。
【0041】
離間部材5の形状は、窓ガラス3とガイドレール42の摺動面SLとを離間して、窓ガラス3の閉鎖部CPにグリスGが付着することを抑制することができれば、特に限定されない。本実施形態では、図4に示されるように、離間部材5はガイド部材であり、摺動面SLの、昇降方向D2で延長線上の部位424aに対向して設けられ、窓ガラス3の揺動時に窓ガラス3と当接する当接部51と、ケーブルCaを案内するケーブル案内部52とを有している。当接部51は、摺動面SLの、昇降方向D2で延長線上の部位424a(図4参照)に対向して設けられている。ケーブル案内部52は、案内されるケーブルCaが、車両の前後方向D1でガイドレール42の後方側(延在部424側)の側縁よりも後方側を通り、ガイドレール42の上端を超えて、ガイドレール42の前方側(第2突状部423側)の側縁よりも前方側を通るように、ケーブルCaを案内している。なお、離間部材5の材料は特に限定されないが、たとえば、窓ガラス3と当接したときに、窓ガラス3に傷をつけにくい樹脂材料であることが好ましい。
【0042】
つぎに、本実施形態のドア構造を例にして、ドアの組立方法について説明する。
【0043】
まず、図6に示されるように、ドア本体2にウインドレギュレータ4が取り付けられる。このとき、ウインドレギュレータ4のキャリアプレート43は、ガイドレール42の下端側に位置している。ガイドレール42の下端側にキャリアプレート43を配置した状態で窓ガラス3をキャリアプレート43に取り付ける場合、キャリアプレート43が下端で安定するので、窓ガラス3を取り付けやすい。なお、この状態において、ドア本体2に第2サッシュ24は取り付けられておらず、第1開口部OP1および第2開口部OP2が開放している。離間部材5は、昇降方向D2に沿って延びるガイドレール42の上端部に設けられている。
【0044】
つぎに、図7および図8に示されるように、窓ガラス3の前後方向D1の一対の縁部3a、3bのうち、一方側の縁部3aのみがサッシュ22に案内された状態で、窓ガラス3を下方に移動する。具体的には、開放した第1開口部OP1および第2開口部OP2から、窓ガラス3をサッシュ22の溝221へ挿入するとともに、ドア本体2のドアパネル21内へと挿し込む(なお、図1図6図8において、説明の便宜上、インナパネル21bの図示は省略している)。窓ガラス3の縁部3aがサッシュ22に挿入されると、窓ガラス3の縁部3aをサッシュ22に案内させて、昇降方向D2の窓ガラス3を下方に移動させる。
【0045】
窓ガラス3の縁部3a側は、サッシュ22によって揺動が規制されるが、窓ガラス3の縁部3b側は、図4に示されるように、サッシュ22に案内された縁部3aを支点として揺動する場合がある。窓ガラス3が揺動すると、窓ガラス3は、離間部材5によって摺動面SLと離間した状態で下方に移動する。具体的には、図4および図5に示されるように、窓ガラス3が離間部材5と当接することによって、窓ガラス3の閉鎖部CPは、摺動面SLと所定の距離で離間した状態となり、摺動面SLに塗布されたグリスGが窓ガラス3の閉鎖部CPに付着することが抑制される。
【0046】
図8に示された状態から、さらに窓ガラス3を下方に移動させて、窓ガラス3をキャリアプレート43に接続する(図1参照)。これにより、窓ガラス3のウインドレギュレータ4への組み付けが完了する。窓ガラス3がウインドレギュレータ4に組み付けられると、図1に示されるように、第2サッシュ24を、ドア本体2に取り付ける。これによって、窓ガラス3が、窓ガラス3の一方側の縁部3aだけでなく、他方側の縁部3bにも案内され、窓ガラス3の昇降動作が安定する。
【0047】
上述したように、窓ガラス3の閉鎖部CPにグリスGが付着することが抑制されるので、窓ガラス3が組み付けられ、第2サッシュ24が取り付けられた後に、窓ガラス3を上昇させたときに、窓ガラス3の閉鎖部CPにグリスGが付着していない。そのため、窓ガラス3からグリスGを取り除く清掃作業などが必要なくなり、作業性が向上する。
【符号の説明】
【0048】
1 ドア構造
2 ドア本体
21 ドアパネル
21a アウタパネル
21b インナパネル
22 サッシュ
221 溝
23 上部サッシュ
23a 横枠部
23b 傾斜枠部
24 第2サッシュ
3 窓ガラス
3a 一方側の縁部
3b 他方側の縁部
3c 窓ガラスの上縁
31 接続部
32 固定窓
4 ウインドレギュレータ
41 駆動部
42 ガイドレール
421 基部
422 第1突条部
423 第2突条部
424 延在部
424a 摺動面の昇降方向で延長線上の部位
43 キャリアプレート
431 窓ガラス固定部
432 摺動部
433 ケーブル接続部
433a 第1ケーブル接続部
433b 第2ケーブル接続部
5 離間部材
51 当接部
52 ケーブル案内部
Ca ケーブル
Ca1 上昇用ケーブル
Ca2 下降用ケーブル
CP 閉鎖部
D1 車両の前後方向
D2 窓ガラスの昇降方向
G グリス
H 取付孔
OC アウターケーシング
OP 開口部
OP1 第1開口部
OP2 第2開口部
S シール部材(ガラスラン)
Sa、Sb 当接片
SL 摺動面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8