(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】端子、および端子付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
H01R13/11 C
H01R13/11 A
(21)【出願番号】P 2019132786
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏 綾那
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩
(72)【発明者】
【氏名】天川 武史
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-157924(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082753(WO,A1)
【文献】米国特許第04413872(US,A)
【文献】国際公開第2008/120632(WO,A1)
【文献】特開2006-100232(JP,A)
【文献】特開2007-173182(JP,A)
【文献】特開2013-251072(JP,A)
【文献】特開2013-239420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方端子と接続される端子であって、
筒部と、ばね片と、を備え、
前記筒部内には前記相手方端子が挿入されるようになっており、前記ばね片は前記筒部内に配されており、
前記筒部は、ばね側壁と、接続壁と、前記接続壁と前記ばね側壁の双方に連なる第1側壁と、前記ばね側壁に連なる第2側壁と、を有し、
前記ばね片は前記筒部内に挿入された前記相手方端子を前記ばね側壁側から前記接続壁に向かって押圧するようになっており、
前記ばね片と前記接続壁を連結する連結部を備え、
前記筒部には、前記連結部に対して前記ばね片が前記相手方端子を前記接続壁に向かって押圧する押圧方向と反対側から接触する開き抑制部が設けられ
ており、
前記接続壁には凹部が形成されており、前記開き抑制部は前記凹部内に配されている端子。
【請求項2】
前記開き抑制部の外面と、前記接続壁の外面とは面一に形成されている、
請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記連結部は、前記接続壁のうち前記第2側壁寄りの端縁に連なって設けられ、
前記開き抑制部は前記第2側壁に連なって設けられる
請求項1または請求項2に記載の端子。
【請求項4】
前記筒部に連なって、電線と接続される電線接続部が設けられており、
前記電線接続部は前記電線を挟持する挟持部を有し、
前記挟持部の外側にはシェルが配されており、
前記シェルは、前記挟持部を前記電線に向けて押圧する加圧部を有する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の端子。
【請求項5】
前記シェルは、前記挟持部に対して、前記電線の延び方向に沿ってスライド可能に配されている
請求項4に記載の端子。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の端子と、
前記端子に接続された電線と、を備えた端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子、および端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄端子と接続される雌端子として特開2003-331966号公報に記載のものが知られている。この雌端子は、雄端子が挿入される角筒部を有する。角筒部内には弾性接触片が配されている。角筒部内に挿入された雄端子が弾性接触片によって角筒部の内壁に押圧されることにより、雄端子と雌端子とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時、車両に搭載される雌端子には小型化が求められている。雌端子を小型化しようとすると、例えば、角筒部を構成するそれぞれの壁部を1枚の金属板材で構成することが考えられる。
【0005】
しかしながら上記の構成によると、雄端子が弾性接触片によって角筒部の内壁に押圧されたときに弾性接触片の弾発力によって角筒部が開き変形することが懸念される。
【0006】
角筒部が開き変形することを抑制するためには、角筒部を構成する壁部を、金属板材が重ねられることによって形成することが考えられる。金属板材が重ねられることにより角筒部の強度が向上し、開き変形を抑制できると考えられる。
【0007】
しかしながら上記の構成によれば、金属板材が重ねられることにより雌端子が大型化するので好ましくない。
【0008】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小型化された端子にかかる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、相手方端子と接続される端子であって、筒部と、ばね片と、を備え、前記筒部内には前記相手方端子が挿入されるようになっており、前記ばね片は前記筒部内に配されており、前記筒部は、ばね側壁と、接続壁と、前記接続壁と前記ばね側壁の双方に連なる第1側壁と、前記ばね側壁に連なる第2側壁と、を有し、前記ばね片は前記筒部内に挿入された前記相手方端子を前記ばね側壁側から前記接続壁に向かって押圧するようになっており、前記ばね片と前記接続壁を連結する連結部を備え、前記筒部には、前記連結部に対して前記ばね片が前記相手方端子を前記接続壁に向かって押圧する押圧方向と反対側から接触する開き抑制部が設けられる端子。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、端子を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる端子付き電線を示す断面図である。
【
図8】
図8は、開き抑制部と連結部とを示す一部拡大断面図である。
【
図9】
図9は、開き抑制部と連結部とを示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0013】
(1)本開示は、相手方端子と接続される端子であって、筒部と、ばね片と、を備え、前記筒部内には前記相手方端子が挿入されるようになっており、前記ばね片は前記筒部内に配されており、前記筒部は、ばね側壁と、接続壁と、前記接続壁と前記ばね側壁の双方に連なる第1側壁と、前記ばね側壁に連なる第2側壁と、を有し、前記ばね片は前記筒部内に挿入された前記相手方端子を前記ばね側壁側から前記接続壁に向かって押圧するようになっており、前記ばね片と前記接続壁を連結する連結部を備え、前記筒部には、前記連結部に対して前記ばね片が前記相手方端子を前記接続壁に向かって押圧する押圧方向と反対側から接触する開き抑制部が設けられる。
【0014】
開き抑制部は、接続壁に連なる連結部と接触することにより、接続壁が開き変形することを抑制できる。
【0015】
(2)前記接続壁には凹部が形成されており、前記開き抑制部は前記凹部内に配されていることが好ましい。
【0016】
開き抑制部は接続壁に設けられた凹部内に配されているので、接続壁の外面からの開き抑制部の突出高さ寸法を小さくすることができる。これにより、全体として端子を小型化できる。
【0017】
(3)前記開き抑制部の外面と、前記接続壁の外面とは面一に形成されていることが好ましい。
【0018】
端子が大型化することを抑制しつつ、接続壁が開き変形することを抑制できる。
【0019】
(4)前記連結部は、前記接続壁のうち前記第2側壁寄りの端縁に連なって設けられ、前記開き抑制部は前記第2側壁に連なって設けられることが好ましい。
【0020】
連結部が第2側壁寄りに設けられ、第2側壁に開き抑制部を設けるので、連結部と開き抑制部が近い位置に配置されるため、容易に連結部に開き抑制部を接触させることができる。
【0021】
(5)前記筒部に連なって、電線と接続される電線接続部が設けられており、前記電線接続部は前記電線を挟持する挟持部を有し、前記挟持部の外側にはシェルが配されており、前記シェルは、前記挟持部を前記電線に向けて押圧する加圧部を有することが好ましい。
【0022】
加圧部によって挟持部を電線に向けて押圧することにより、電線と端子とを接続することができる。これにより、電線にバレル部を圧着させるためのアンビルやクリンパ等の大規模な治具が不要となるので、端子と電線との接続工程にかかるコストを低減させることができる。
【0023】
(6)前記シェルは、前記挟持部に対して、前記電線の延び方向に沿ってスライド可能に配されていることが好ましい。
【0024】
シェルを挟持部に対してスライドさせるという簡易な手法によって電線と端子とを接続させることができるので、端子と電線との接続作業の効率を向上させることができる。
【0025】
(7)本開示は、上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の端子と、前記端子に接続された電線と、を備えた端子付き電線である。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0027】
<実施形態1>
本開示の実施形態1が
図1から
図9を参照しつつ説明される。
図1に示されるように、本実施形態にかかる端子付き電線10は、電線11と、電線11に接続された端子12とを備える。端子12は、電線11の延び方向(矢線Yで示される向き)の前方端部に接続される。
図2に示されるように、端子12は、相手方端子50と接続される。以下の記載では説明の便宜のため、矢線Zの示す向きを上とし、矢線Yの示す向きを前とし、矢線Xの示す向きを左として説明する。なお、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0028】
[電線11]
図1に示されるように、電線11は前後方向(延び方向の一例)に延びて配されている。電線11は、芯線13の外周を絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被覆14で包囲されている。本実施形態にかかる芯線13は、1本の金属線からなる。なお、芯線13は複数の金属細線が撚り合わされてなる撚線であってもよい。芯線13を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる芯線13は銅、または銅合金からなる。
【0029】
[端子12]
図3に示されるように、端子12は、金属製の端子本体15と、端子本体15に対して相対的にスライド移動可能なスライド部16(シェルの一例)と、を備える。
【0030】
[端子本体15]
端子本体15は金属板材を所定の形状にプレス加工することにより形成される。端子本体15を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる端子本体15は、銅、又は銅合金からなる。端子本体15の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる端子本体15にはスズめっきが施されている。
【0031】
図4に示されるように、端子本体15は、前後方向に延びた板状をなす相手方端子50が挿入可能な筒部17と、筒部17の後方に位置して電線11と接続される電線接続部20を有する。電線接続部20は後方に延出された上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bと、を備える。本実施形態にかかる端子12は、いわゆる雌端子と呼ばれるものであり、相手方端子50は、いわゆる雄端子と呼ばれるものである(
図2参照)。
【0032】
[筒部17]
図2に示されるように、筒部17は前後方向に延びる角筒状をなしている。筒部17の前端部は相手方端子50が挿入できるように開口されている。筒部17は、ばね側壁30と、ばね側壁30に対向する接続壁31と、ばね側壁30と接続壁31とを連結する第1側壁32と、ばね側壁30に連なる第2側壁33と、を有する。筒部17の内部には弾性変形可能なばね片19が配されている。ばね片19はばね側壁30の内面に重なって配されている。
【0033】
ばね片19は基端部19Aと、基端部19Aから前方に延びるばね本体19Bと、を有する。基端部19Aは、ばね側壁30の後端部に重なっている。基端部19Aの上下方向の高さ寸法はばね側壁30の上下方向の高さ寸法と略同じに形成されている。ばね本体19Bは、筒部17のうち後端部から前方に向かって延びている。
【0034】
図2に示されるように、ばね本体19Bは上方から見て右方に突出した山形状に形成されている。ばね本体19Bのうち山形状の頂点部分と、接続壁31の内面との左右方向についての間隔は、相手方端子50の左右方向の厚みよりも小さく設定されている。これにより筒部17内に挿入された相手方端子50は、ばね片19を押圧して弾性変形させる。弾性変形したばね片19は、弾発力によって相手方端子50を接続壁31向かって押圧する。本実施形態では、ばね片19は相手方端子50を右方(押圧方向の一例)に押圧する。相手方端子50が接続壁31とばね片19との間に挟まれることにより、相手方端子50と端子12とが電気的に接続される。
【0035】
図5に示されるように、ばね側壁30の下端縁と、接続壁31の下端縁とは、第1側壁32によって連結されている。ばね側壁30の上端縁には第2側壁33が連なっている。第2側壁33はばね側壁30の上端縁から右方に延びている。第1側壁32と第2側壁33とは対向している。
【0036】
[電線接続部20]
図4に示されるように、筒部17の後方には角筒状をなす電線接続部20が設けられている。電線接続部20の上壁の後端部には上側挟持部18A(挟持部の一例)が後方に延びて設けられており、電線接続部20の下壁の後端部には下側挟持部18B(挟持部の一例)が後方に延びて設けられている。上側挟持部18Aと下側挟持部18Bは前後に延びた細長い形状をなしている。上側挟持部18Aと下側挟持部18Bの前後方向の長さ寸法は略同じに形成されている。
【0037】
上側挟持部18Aの下面には、後端部よりも前方の位置に、下方に突出する上側保持突部23Aが設けられている。下側挟持部18Bの上面の後端部には、上方に突出する下側保持突部23Bが設けられている。下側保持突部23Bと、上側保持突部23Aとは、前後方向についてずれた位置に設けられている。
【0038】
上側挟持部18Aの下面、および下側挟持部18Bの上面が、芯線13の表面に形成された酸化被膜に食い込んで酸化被膜を剥がすことにより、芯線13の金属表面を露出させるようになっている。この金属表面と、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bとが接触することにより、芯線13と端子本体15とが電気的に接続される。
【0039】
[スライド部16]
図3に示されるように、スライド部16は、前後方向に延びる角筒状をなしている。スライド部16は、切削加工、鋳造、プレス加工等、必要に応じて公知の手法により形成される。スライド部16を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかるスライド部16は、特に限定されないが、ステンレス鋼からなる。スライド部16の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。
【0040】
図4に示されるように、スライド部16の内形状の断面は、端子本体15のうち、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bが設けられた領域の外形状の断面と同じか、やや大きく形成されている。これにより、
図6および
図7に示されるように、スライド部16は、端子本体15のうち、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとが設けられた領域の外方に配されるようになっている。
【0041】
図3に示されるように、スライド部16の側壁には、前後方向の前端部寄りの位置に、仮係止受け部26が開口されている。また、スライド部16の側壁には、仮係止受け部26よりも後方の位置に、本係止受け部27が開口されている。仮係止受け部26と、本係止受け部27は、端子本体15の側壁に設けられた係止突起28と弾性的に係止可能になっている。
【0042】
図3に示されるように、端子本体15の係止突起28とスライド部16の仮係止受け部26とが係止した状態は、端子本体15に対してスライド部16が仮係止位置に保持された状態となっている。
図4に示されるように、この状態においては、スライド部16の上側加圧部25Aおよび下側加圧部25Bは、端子本体15の上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bの後端縁から後方に離間している。この状態においては、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間の間隔は、芯線13の直径よりも大きく設定されている。
【0043】
端子本体15の係止突起28とスライド部16の本係止受け部27とが係止した状態は、端子本体15に対してスライド部16が本係止位置に係止された状態となっている。
図1に示されるように、この状態においては、スライド部16の上側加圧部25Aは、上側挟持部18Aの上方から上側挟持部18Aに接触している。また、スライド部16の下側加圧部25Bは、下側挟持部18Bの下方から下側挟持部18Bに接触している。
【0044】
上記のように、スライド部16は、端子本体15のうち上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとが設けられた領域に外嵌された状態で、上記した仮係止位置と、本係止位置との間を、前後方向にスライド移動可能になっている。
【0045】
図1に示されるように、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持された状態では、上側加圧部25Aが上方から上側挟持部18Aを押圧することによって上側挟持部18Aが下方に変形するようになっている。また、下側加圧部25Bが下方から下側挟持部18Bを押圧することによって下側挟持部18Bが上方に変形するようになっている。これにより、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間の空間に、芯線13を前後方向に延びた状態で配し、且つ、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持した状態では、芯線13は、弾性変形した上側挟持部18Aと下側挟持部18Bによって上下方向から挟持されるようになっている。すなわち、上側挟持部18Aは上側加圧部25Aに下方に押圧されることにより芯線13に上方から接触し、下側挟持部18Bは下側加圧部25Bに上方に押圧されることにより芯線13に下方から接触するようになっている。上側加圧部25Aは上から下へ上側挟持部18Aを押圧するので、上から下へ向かう方向が押圧方向とされる。下側加圧部25Bは下から上へ下側挟持部18Bを押圧するので、下から上へ向かう方向が押圧方向とされる。
【0046】
図1に示されるように、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持された状態では、上側挟持部18Aの上側保持突部23Aが芯線13を上方から押圧し、下側挟持部18Bの下側保持突部23Bが芯線13を下方から押圧する。このように、芯線13は、上側保持突部23Aと、下側保持突部23Bとによって押圧されることにより、上下方向について屈曲した状態に保持される。また、上側保持突部23Aおよび下側保持突部23Bによっても、芯線13と端子12とが電気的に接続されるようになっている。
【0047】
図1に示されるように、スライド部16の前端部には、スライド部16の上壁から上方に突出する治具接触部46が設けられている。治具接触部46に後方から治具45が接触して、この治具45によってスライド部16が前方に押されることにより、スライド部16が前方に移動可能になっている。なお、上記の治具45は、金型や、この金型を稼働させるための設備に比べて、比較的に小規模なものとなっている。このため、治具45に起因するコストの増大は抑制される。
【0048】
図3に示されるように、スライド部16の後端部寄りの位置には、左右の側壁に、スライド部16の内方に突出する一対の誘い込み部47が設けられている。誘い込み部47は、後方から前方に向かうに従って幅狭に形成されている。誘い込み部47の内面に芯線13が摺接することにより、芯線13はスライド部16の内部へと案内される。
【0049】
[開き抑制部38]
図8に示されるように、接続壁31の後端部の上端縁には、凹部37が形成されている。凹部37は右方から見て長方形状に形成されている。凹部37は接続壁31の一部が切り欠かれることにより形成されている。
【0050】
凹部37内には、第2側壁33の後端部の右端縁に形成された開き抑制部38が下方に屈曲した形状で、収容されている。開き抑制部38は、第2側壁33のうち接続壁31側の側縁から、接続壁31の壁面に沿う方向(下方)に屈曲している。換言すると、開き抑制部38は第2側壁33に連なって設けられている。凹部37の内形状は、開き抑制部38の外形状と同じか、またはやや大きく形成されている。接続壁31の右側面と、開き抑制部38の右側面は面一に形成されている。
【0051】
図8および
図9に示されるように、接続壁31の上端縁には、凹部37の前方の位置に、連結部39が形成されている。連結部39は、接続壁31の上端縁から左方に延びている。連結部39は第2側壁33の下面に沿うように配されている。連結部39の左端縁には、ばね片19の基端部19Aが連なっている。これにより、接続壁31とばね片19とが連結部39によって連結されている。
【0052】
図8および
図9に示されるように、連結部39は、接続壁31の上端縁から左方に延びた後に後方に屈曲して延び、さらに下方に屈曲してばね片19の基端部19Aへと連なっている。換言すると、連結部39は、接続壁31のうち第2側壁33寄りの端縁に連なって設けられている。連結部39は上方から見て略クランク状に形成されている。
【0053】
図8に示されるように、連結部39の右側縁の後端部は、開き抑制部38と対向している。開き抑制部38の下方への突出寸法は、連結部39の上下方向の厚さ寸法と同じか、やや大きく設定されている。これにより開き抑制部38と連結部39との接触面積を大きくすることができる。接続壁31に対して、接続壁31が右方に開き変形する方向の力が加えられたときに、開き抑制部38が連結部39の右側縁の後端部に右方から接触するようになっている。これにより接続壁31が右方に開き変形することが抑制されるようになっている。
【0054】
[電線11と端子12の接続工程]
続いて、電線11と端子12との接続工程の一例について説明する。電線11と端子12との接続工程は以下の記載に限定されない。
【0055】
公知の手法により、端子本体15と、スライド部16とが形成される。端子本体15に対して、後方からスライド部16が組み付けられる。スライド部16は端子本体15に対して仮係止状態に保持される。詳細には図示しないが、スライド部16と端子本体15とは、公知の係止構造により仮係止状態に保持される構成としてもよい。
【0056】
公知の手法で絶縁被覆14が皮剥ぎ加工されることにより電線11の芯線13が露出される。
【0057】
電線11がスライド部16の後端部から前方に押し込まれると、芯線13の前端部は、スライド部16の後端部からスライド部16の内部へと導入される。さらに電線11が前方に押し込まれると、芯線13の前端部は端子本体15の内部へと進入して上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間の空間内に至る。
【0058】
端子本体15に対してスライド部16が仮係止状態に保持された状態では、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間隔は、芯線13の外径寸法よりも大きく設定されている。
【0059】
次に、スライド部16を前方にスライド移動させる。スライド部16は、治具45によって端子本体15に対して相対的に前方に移動させられ、本係止状態に至る。
【0060】
スライド部16が端子本体15に対して本係止状態に保持された状態で、スライド部16の上側加圧部25Aが、端子本体15の上側挟持部18Aに上方から当接して下方へと押圧する。また、スライド部16の下側加圧部25Bが、端子本体15の下側挟持部18Bに下方から当接して上方へと押圧する。これにより、芯線13が上側挟持部18Aと下側挟持部18Bに上下から挟持される。
【0061】
図1に示されるように、上側挟持部18Aの下面と、下側挟持部18Bの上面とに芯線13が挟まれることにより、芯線13の表面に形成された酸化被膜が剥がされ芯線13を構成する金属表面が露出する。この金属表面と、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bが接触することにより、電線11と端子12とが電気的に接続される。
【0062】
芯線13が上側挟持部18Aと下側挟持部18Bに上下から挟持された状態においては、芯線13は、上側挟持部18Aの上側保持突部23Aと、下側挟持部18Bの下側保持突部23Bとに挟まれることにより、前後方向に延びた状態で、且つ、上下方向に屈曲した状態で保持される。これにより芯線13を強固に保持することができるので、電線11に引っ張り力が作用した場合に、電線11と端子12との保持力を高めることができる。このようにして端子付き電線10が完成する。
【0063】
[本実施形態の作用効果]
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態は、相手方端子50と接続される端子12であって、筒部17と、ばね片19と、を備え、筒部17内には相手方端子50が挿入されるようになっており、ばね片19は筒部17内に配されており、筒部17は、ばね側壁30と、接続壁31と、接続壁31とばね側壁30の双方に連なる第1側壁32と、ばね側壁30に連なる第2側壁33と、を有し、ばね片19は筒部17内に挿入された相手方端子50をばね側壁30側から接続壁31に向かって押圧するようになっており、ばね片19と接続壁31を連結する連結部39を備え、筒部17には、連結部39に対してばね片19が相手方端子50を接続壁31に向かって押圧する押圧方向(本実施形態では右方)と反対側から接触する開き抑制部38が設けられる。
【0064】
また、本実施形態にかかる端子付き電線10は、上記の端子12と、端子12に接続された電線11と、を備える。
【0065】
開き抑制部38は、接続壁31に連なる連結部39と接触することにより、接続壁31が開き変形することを抑制できる。
【0066】
本実施形態によれば、接続壁31には凹部37が形成されており、開き抑制部38は凹部37内に配されている。
【0067】
開き抑制部38は接続壁31に設けられた凹部37内に配されているので、接続壁31の外面からの開き抑制部38の突出高さ寸法を小さくすることができる。これにより、全体として端子12を小型化できる。
【0068】
本実施形態によれば、開き抑制部38の外面と、接続壁31の外面とは面一に形成されている。これにより、端子12が大型化することを抑制しつつ、接続壁31が開き変形することを抑制できる。
【0069】
本実施形態によれば、連結部39は、接続壁31のうち第2側壁33寄りの端縁に連なって設けられ、開き抑制部38は第2側壁33に連なって設けられる。
【0070】
連結部39が第2側壁33寄りに設けられ、第2側壁33に開き抑制部38を設けるので、連結部39と開き抑制部38が近い位置に配置されるため、容易に連結部39に開き抑制部38を接触させることができる。
【0071】
本実施形態によれば、筒部17に連なって、電線11と接続される電線接続部20が設けられており、電線接続部20は電線11を挟持する上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bを有し、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bの外側にはスライド部16が配されており、スライド部16は、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bを電線11に向けて押圧する上側加圧部25Aおよび下側加圧部25Bを有する。
【0072】
上側加圧部25Aおよび下側加圧部25Bによって上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bを電線11の芯線13に向けて押圧することにより、電線11の芯線13と端子12とを接続することができる。これにより、電線11の外周にバレル部を圧着させるためのアンビルやクリンパ等の大規模な治具が不要となるので、端子12と電線11との接続工程のコストを低減させることができる。
【0073】
本実施形態によれば、スライド部16は、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bに対して、電線11の延び方向(前後方向)に沿ってスライド可能に配されている。
【0074】
スライド部16を上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bに対してスライドさせるという簡易な手法によって電線11と端子12とを接続させることができるので、端子12と電線11との接続作業の効率を向上させることができる。
【0075】
<他の実施形態>
(1)凹部37は、接続壁31の厚さが部分的に薄くされることにより形成されてもよい。
【0076】
(2)開き抑制部38の厚さが、端子12の他の部分に比べて薄く形成されてもよい。
【0077】
(3)電線11と端子12との接続構造は限定されない。例えば、端子は電線11の外周に圧着するバレルを有する構成としてもよく、任意の構成を採用することができる。
【0078】
(4)端子12は、1つ、または3つ以上の挟持部を有する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10: 端子付き電線
11: 電線
12: 端子
13: 芯線
14: 絶縁被覆
15: 端子本体
16: スライド部(シェル)
17: 筒部
18A: 上側挟持部
18B: 下側挟持部
19: ばね片
19A: 基端部
19B: ばね本体
20: 電線接続部
23A: 上側保持突部
23B: 下側保持突部
25A: 上側加圧部
25B: 下側加圧部
26: 仮係止受け部
27: 本係止受け部
28: 係止突起
30: ばね側壁
31: 接続壁
32: 第1側壁
33: 第2側壁
37: 凹部
38: 開き抑制部
39: 連結部
45:治具
46:治具接触部
47:誘い込み部
50: 相手方端子