(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】多段装填用カートリッジ
(51)【国際特許分類】
B01J 47/024 20170101AFI20221005BHJP
B01J 20/00 20060101ALI20221005BHJP
B01J 45/00 20060101ALI20221005BHJP
B01J 47/022 20170101ALI20221005BHJP
B01J 47/026 20170101ALI20221005BHJP
B01J 47/028 20170101ALI20221005BHJP
B01J 49/05 20170101ALI20221005BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20221005BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20221005BHJP
B01D 27/02 20060101ALI20221005BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B01J47/024
B01J20/00
B01J45/00
B01J47/022
B01J47/026
B01J47/028
B01J49/05
C02F1/28 F
C02F1/42 A
B01D27/02
B01D15/00 101B
(21)【出願番号】P 2019153231
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-03-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599049794
【氏名又は名称】株式会社 イージーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】近藤 治郎
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-136298(JP,U)
【文献】実開昭57-021093(JP,U)
【文献】特開平08-057471(JP,A)
【文献】特開2013-128890(JP,A)
【文献】特開2011-200754(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0078691(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00-78
B01J 20/00-34、39/00-49/90
B01D 15/00-42、23/00-37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と内筒とを備えたカラムに多段装填するためのカートリッジであって、通液により体積変化する粒状物をネット状物に充填してな
り、
前記ネット状物は、前記内筒に沿うようにリング状の形状を有し、前記カラムに装填可能に一か所に切込みが形成されており、リング状の状形の上面及び底面の少なくともいずれかに、当該上面及び底面の少なくともいずれかの周に沿った形状の補強材が備えられている、多段装填用カートリッジ。
【請求項2】
前記粒状物は、イオン交換樹脂、吸着樹脂、キレート樹脂、触媒、ろ過材、脱塩材、抽出材、分離精製材、脱色剤、及び担体から選択される、請求項
1に記載の多段装填用カートリッジ。
【請求項3】
上昇流再生方式のイオン交換樹脂用カラムに多段装填するためのカートリッジであって、通液により体積変化する粒状物をネット状物に充填してな
り、
前記粒状物はイオン交換樹脂であり、
前記ネット状物は、円柱状の形状を有しており、円柱状形の上面及び底面の少なくともいずれかに、当該上面及び底面の少なくともいずれかの周に沿った形状の補強材が備えられているとともに、
前記円柱の側面に沿って、底面の補強材と上面の補強材との間に円柱の高さ方向に延びる補強材が2~8備えられており、
前記補強材が撓むため、ネット状物の柔軟性を維持しつつ、ネット状物を補強することができるようになっている、多段装填用カートリッジ。
【請求項4】
前記粒状物の通液後の体積は、通液前の体積に対して、1.1~3.0倍、又は、1/3.0~1/1.1倍である、請求項1
~3のいずれか1項に記載の多段装填用カートリッジ。
【請求項5】
前記ネット状物に対する前記粒状物の充填率は、60体積%以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の多段装填用カートリッジ。
【請求項6】
前記ネット状物は、網目の大きさが10メッシュ~150メッシュである、請求項1~
5のいずれか1項に記載の多段装填用カートリッジ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の多段装填用カートリッジを、2個以上多段装填してなるカラム。
【請求項8】
2個以上の前記多段装填用カートリッジは、それぞれ同種又は異種の粒状物をネット状物に充填してなる多段装填用カートリッジである、請求項7に記載のカラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段装填用カートリッジ及びこれを装填してなるカラムに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂の再生を行う際には、イオン交換樹脂の再生処理中に樹脂層を流動させないことが重要である。上昇流で再生するときにイオン交換樹脂層の粒子が流動してしまうと、イオン交換樹脂粒子が流出したり、再生が不均一となって十分に再生されていないイオン交換樹脂が樹脂層に存在したりするという問題がある。
【0003】
再生時の樹脂の流動化を抑制する技術として、イオン交換樹脂層上部に物理的な装置を配して、当該装置によりイオン交換樹脂層を抑えて再生時の樹脂の流動化を抑制する技術が種々報告されている。例えば、特許文献1~3には、イオン交換樹脂層の上部に上下動可能な透水性を有する可動体が備えられたイオン交換樹脂塔が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-80749号公報
【文献】特開2015-80750号公報
【文献】特開2016-112530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術においては、再生時の樹脂の流動化を抑制するために、イオン交換樹脂塔を複雑な構造とする必要があった。また、イオン交換樹脂を入れ替える際にイオン交換樹脂を取り出してカラムを洗浄する必要があり操作が煩雑であった。
【0006】
本発明の一態様は、イオン交換樹脂塔の複雑な構造を必要とせず、再生時の樹脂の流動化を抑制することができるとともに、イオン交換樹脂の出し入れを容易とする技術を提供することにある。また、かかる技術は、イオン交換樹脂以外のカラム充填される粒状物にも使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態には以下の態様が含まれる。
【0008】
<1>カラムに多段装填するためのカートリッジであって、通液により体積変化する粒状物をネット状物に充填してなる、多段装填用カートリッジ。
【0009】
<2>前記粒状物の通液後の体積は、通液前の体積に対して、1.1~3.0倍、又は、1/3.0~1/1.1倍である、<1>に記載の多段装填用カートリッジ。
【0010】
<3>前記粒状物は、イオン交換樹脂、吸着樹脂、キレート樹脂、触媒、ろ過材、脱塩材、抽出材、分離精製材、脱色剤、及び担体から選択される、<1>又は<2>に記載の多段装填用カートリッジ。
【0011】
<4>前記ネット状物に対する前記粒状物の充填率は、60体積%以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の多段装填用カートリッジ。
【0012】
<5>前記ネット状物は、網目の大きさが10メッシュ~150メッシュである、<1>~<4>のいずれかに記載の多段装填用カートリッジ。
【0013】
<6>前記ネット状物は、柱状の形状を有しており、柱状形の上面及び底面の少なくともいずれかに、当該上面及び底面の少なくともいずれかの周に沿った形状の補強材が備えられている、<1>~<5>のいずれかに記載の多段装填用カートリッジ。
【0014】
<7><1>~<6>のいずれか1項に記載の多段装填用カートリッジを、2個以上多段装填してなるカラム。
【0015】
<8>2個以上の前記多段装填用カートリッジは、それぞれ同種又は異種の粒状物をネット状物に充填してなる多段装填用カートリッジである、<7>に記載のカラム。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、イオン交換樹脂塔の複雑な構造を必要とせず、再生時の樹脂の流動化を抑制することができるとともに、イオン交換樹脂の出し入れを容易とする技術を提供することができる。また、かかる技術は、イオン交換樹脂以外のカラム充填される粒状物にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジを示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジを示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジを示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る、多段装填用カートリッジを多段装填してなるカラムを模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る、多段装填用カートリッジを多段装填してなるカラムを模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態及び実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。本明細書中、数値範囲に関して「A~B」と記載した場合、当該記載は「A以上、B以下」を意図する。
【0019】
〔1.多段装填用カートリッジ〕
本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジは、カラムに多段装填するためのカートリッジであって、通液により体積変化する粒状物をネット状物に充填してなるものである。
【0020】
前記構成によれば、ネット状物に前記粒状物を充填することにより、例えば前記粒状物がイオン交換樹脂である場合、上昇流再生方式での再生時の樹脂の流動化による粒子の流出を防止し、また流動化による再生の不均一を抑制することができる。流動化の抑制は、粒状物をネット状物に充填してなるカートリッジを多段充填することによって上段に存在する多段装填用カートリッジによる重みにより、下段側のカートリッジに充填された粒状物が抑えられることにより達成され得る。或いは、通液による粒状物の体積変化を予め見込んで前記粒状物をネット状物に充填することにより、通液後再生時にカートリッジ内で前記粒状物が流動する空隙を低減して流動を抑制することができる。加えて、前記構成によれば、従来のように再生時の樹脂の流動化を抑制するために、イオン交換樹脂塔を複雑な構造とする必要がなく、カラムを単純な構造とすることができる。
【0021】
また、前記構成によれば、粒状物をカートリッジに充填した状態でカラムに装填することができるため、粒状物を交換する場合に、カラムから粒状物を取り出してカラムを洗浄する必要がなく、簡易な操作で交換を行うことが可能となる。
【0022】
また、前記構成によれば、多段装填用カートリッジを人力で容易にカラム内にセットできる仕様、例えば、1カートリッジあたり数十~数リットル、より好ましくは数リットル、例えば2~8リットル、さらに好ましくは4~6リットル程度とすることができる。それゆえ、前記多段装填用カートリッジのカラムからの取り出し及びカラムへの装填が容易となる。
【0023】
さらには、多段装填用カートリッジとして、それぞれ異種の粒状物を充填した多段装填用カートリッジを組み合わせて用いることにより、一つのカラムへの通液で、複数の処理を行うことが可能となる。
【0024】
或いは、多段装填用カートリッジとして、それぞれ同種の粒状物を充填した多段装填用カートリッジを組み合わせて用いる実施形態においては、粒状物の一部を取り出すか交換する必要が生じたときに、カラム内の全ての粒状物を取り出すことなく、一部の多段装填用カートリッジを取り出すか交換することによって、必要な部分のみを部分的に取り出すか交換することができる。
【0025】
さらには、粒状物が例えばイオン交換樹脂である場合、イオン交換樹脂を長期使用しないときは、カラム内を保存液(例えば塩水)で満たして保管する方法、イオン交換樹脂を抜き取り保管する方法等がある。従来のカートリッジを使用しないカラムでは保管のための操作が煩雑であり、かつ停止、保管、及び迅速立ち上げが困難であった。しかし、前記構成によれば、人力で容易にカラム内にセットできる仕様とすることができるため、前記多段装填用カートリッジの取り出し及び保存液(例えば塩水)中への浸漬操作が容易となる。
【0026】
本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジは、カラムに多段装填するためのカートリッジである。本発明の一実施形態において、前記カラムは、縦型のカラムであっても横型のカラムであってもよいが、縦型のカラムであることがより好ましい。縦型のカラムである場合に、上段に存在する多段装填用カートリッジによる重みにより、下段側のカートリッジに充填された粒状物が抑えられるため、より好適に流動化による再生の不均一を抑制することができる。
【0027】
本発明の一実施形態において、多段装填するとは、多段装填用カートリッジを2個以上装填することをいい、より好ましくは2~10個、さらに好ましくは2~5個装填することをいう。
【0028】
本発明の一実施形態において、ネット状物に充填される粒状物は、通液により体積変化する粒状物であれば特に限定されるものではない。かかる粒状物としては、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、合成吸着剤及び触媒用イオン交換樹脂等のイオン交換樹脂;スチレン系吸着樹脂、及びアクリル系吸着樹脂等の吸着樹脂;イミノジ酢酸型キレート樹脂、N-メチルグルカミン型キレート樹脂、アミノリン酸型キレート樹脂、チオ尿酸型キレート樹脂、アルキルアミノ基型キレート樹脂、ポリアミン型キレート樹脂、ピリジン系キレート樹脂、アミドオキシム型キレート樹脂、及びFe錯体型キレート樹脂等のキレート樹脂;触媒;ろ過砂、活性アルミナ等のろ過材;脱塩材;抽出材;分離精製材;脱色剤;及び担体を挙げることが出来る。
【0029】
前記イオン交換樹脂の一例としては、これに限定されるものではないが、例えば、デュオライト(登録商標)C20J、C20LF、C20LFH、C255LFH、C26A、C26CH、C26H/2095、C26TRH、C433LF、C476等;アンバーライト(登録商標)IR120B、IR124、200CT、252、FPC3500、IRC76等;アンバージェット1020、1024、1060、1220等;ダウエックス(登録商標)等の陽イオン交換樹脂;デュオライト(登録商標)A113LF、A113MA、A113MB、A113OH、A109D、A116、A116LF、A161JCl、A162LF、A134LF、A368MS、A378D、A375LF、A561、A568、PWA7等;スミカイオン(登録商標)KA895;アンバーライト(登録商標)IRA400J、IRA402BL、IRA404J、IRA900J、ORA904、IRA458RF、IRA958、IRA410J、IRA411、IRA910CT、IRA478RF、IRA67、IRA96SB、IRA98、XE583等;アンバージェット4400、4002、4010等;ダウエックス(登録商標)等の陰イオン交換樹脂を挙げることができる。
【0030】
前記吸着樹脂の一例としては、これに限定されるものではないが、例えば、デュオライト(登録商標)XAD761、S874、S876、S877、S878等を挙げることができる。
【0031】
前記触媒の一例としては、これに限定されるものではないが、例えば、デュオライト(登録商標)SC100、SC200、SC300、SC400、SC500、SC600等を挙げることができる。
【0032】
前記キレート樹脂の一例としては、これに限定されるものではないが、例えば、デュオライト(登録商標)ES371N、C467、C747UPS、C548等;スミキレート(登録商標)MC960、MC970、MC700、MC760、MC760Ca、MC770、MC230、MC250、MC300、MC410、MC850、MC640、MC900、AS-33等;アンバーライト(登録商標)IRC747UPS、IRC748等;ダウエックス(登録商標)等を挙げることができる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジは、前記粒状物を1種類ネット状物に充填してなるものであってもよいし、2種類以上を組み合わせてネット状物に充填してなるものであってもよい。
【0034】
前記粒状物の形状は、粒状であれば特に限定されず、不定形の粒状物であっても、定形の粒状物であってもよい。例えば、前記粒状物の形状は、球状、楕円状、チップ状、柱状、ペレット状、及びこれらの混合物を挙げることが出来る。また、前記粒状物の粒径も特に限定されないが、通常、平均粒径は300μm~5000μmである。前記粒状物が例えばイオン交換樹脂である場合、平均粒径は通常300μm~700μmであり得る。なお、本明細書において、他に特に規定する場合を除き、平均粒径とは以下の方法で決定された値をいう。まず、試料となる粒子の集合の数箇所から試料を採取する。それぞれの試料について、顕微鏡による観察を行い、数箇所から採取した試料全体で、合計100個以上の粒子に対して、それぞれ、対象となる粒子1つの長軸径、すなわち、粒子の形状の最も寸法の大きい方向の寸法を計測する。計測した100個以上の値のうち、上下各20%を除いた、60%の計測値の平均を本発明における平均粒径とする。
【0035】
前記粒状物は、通液により体積変化する粒状物であれば特に限定されるものではないが、前記粒状物の通液後の体積が、通液前の体積に対して、より好ましくは1.1~3.0倍、又は、1/3.0~1/1.1倍であり、さらに好ましくは1.1~2.5倍、又は、1/2.5~1/1.1倍であり、特に好ましくは1.1~2.0倍、又は、1/2.0~1/1.1倍であり、最も好ましくは1.1~1.5倍、又は、1/1.5~1/1.1倍である。なお、ここで、前記粒状物の通液後の体積とは、当該粒状物に通液後平衡に達して一定となった体積をいう。通液により前記範囲で体積変化する粒状物である場合、通液による粒状物の体積変化を予め見込んで前記粒状物をネット状物に充填することにより、通液後再生時にカートリッジ内で前記粒状物が流動する空隙を低減して流動を抑制することができるため、本発明の効果が好適に発揮される。
【0036】
本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジは、前記粒状物をネット状物に充填してなるものである。ここで、ネット状物とは、前記粒状物を充填できる、ネットで構成された容器であればよい。前記粒状物をネット状物に充填することにより、前記粒状物を、ネット状物にて規定される形状に保持することが可能となるとともに、ネット状物がその柔軟性ゆえ、カラムに装填されたときにカラムの内壁の形状に沿って変形し、カラムの内壁と密着するため、カラム内壁とカートリッジとの隙間を処理すべき液体が流れてしまうという不具合も防止することができる。さらに、充填された粒状物がネット状物の内部で遍在することがないため、カラム内に前記粒状物を均一に充填することができる。
【0037】
以下に、本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジを、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジ1Aを示す。多段装填用カートリッジ1Aでは、円柱の形状を有しており、当該円柱の側面、上面、及び底面がネットからなるネット状物2に、図示しない前記粒状物が充填されている。ネット状物2には、前記円柱の上面及び底面に、それぞれ当該上面及び底面の周に沿った形状(
図1の例ではリング状)の補強材4が備えられている。補強材4は、前記円柱の上面及び底面と同じ面上に配置されており、リング状の補強材4の外周は、多段装填用カートリッジ1Aが装填されるカラムの内径より1mm~10mm小さくなっている。ネット状物2には、前記粒状物を充填又は取り出すための開閉部3が、前記円柱の側面に、円柱の高さ方向(底面と垂直な方向)に延びるように備えられている。ネット状物2は、前記粒状物が漏出しない網目の大きさを有していればよく、例えば、10~150メッシュであり、前記粒状物によって適宜選択することができる。ネット状物2の素材は、ネット状物がカラムに装填されたときにカラムの形状に沿って変形するような、柔軟性を有する素材であればよく、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、テフロン(登録商標)、及びサラン(登録商標)等を挙げることができる。ネット状物2の素材は、耐薬品性を有する素材であることがより好ましい。また、補強材4の素材としても、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、テフロン(登録商標)、及びサラン(登録商標)等を好適に使用することができる。補強材4の素材も、耐薬品性を有する素材であることがより好ましい。ネット状物2と補強材4とは同じ素材であってもよいし、異なる素材であってもよい。補強材4は、ネット状物2に固定されていればよく、その固定方法は特に限定されるものではない。例えば、ネット状物2に融着することにより固定することができる。なお、
図1では、多段装填用カートリッジ1Aは、円柱の形状を有しているが、多角柱の形状を有していてもよいし、上面及び底面が不定形の柱状の形状を有していてもよい。また、前記円柱の上面及び底面の周に沿った形状の補強材4も、リング状の補強材に限定されるものではなく、柱状形の上面及び底面の周に沿った形状の補強材であり得る。また、リング状の補強材4は、リング状の薄い板状体であれば、その厚みは特に限定されないが、例えば0.5mm~10mm、より好ましくは1mm~5mmである。また、リングの幅(リングの外周半径と内周半径と差)も
図1に示す幅に限定されるものではなく、例えば3mm~30mm、より好ましくは5mm~20mm、さらに好ましくは5mm~10mmである。さらに、
図1では、前記粒状物を充填又は取り出すための開閉部3が、前記円柱の側面に円柱の高さ方向に延びるように備えられているが、開閉部3は、円柱の側面に円柱の高さ方向と、0より大きく90°未満の角度をなす方向に延びるように備えられていてもよい。或いは、開閉部3は、円柱の上面又は下面に備えられていてもよい。或いは、前記円柱の側面に円柱の高さ方向と90°の角度をなす方向に延びるように備えられていてもよい。開閉部3としては、例えばファスナーを使用することができる。また、開閉部3の長さも、
図1に示す長さに限らず、より長くてもよいし、短くてもよい。或いは、多段装填用カートリッジ1Aは、リング状の補強材4を備えているが、補強材4を備えていない、ネットのみからなるネット状物に粒状物を充填してなるものであってもよい。或いは、補強材4は、
図1では、柱状形の上面及び底面に備えられているが、柱状形の上面及び底面の少なくともいずれかに備えられていてもよい。或いは、多段装填用カートリッジ1Aは、図示しない取っ手が備えられていてもよい。取っ手は、前記円柱の上面に固定された、吊り紐、吊り手等であり得、多段装填用カートリッジ1Aをカラムに装填、又は取り出す場合に使用することができる。
【0038】
図2は、本発明の他の一実施形態に係る多段装填用カートリッジ1Bを示す。多段装填用カートリッジ1Bは、
図1の多段装填用カートリッジ1Aにおいて、補強材として、補強材4に加えて、前記円柱の側面に沿って、底面の補強材4と上面の補強材4との間に円柱の高さ方向に延びる補強材5を4本備えている。当該補強材5は、薄い板状体であれば、その厚みは特に限定されないが、例えば、0.5mm~10mm、より好ましくは1mm~5mmである。補強材5の厚みが前記範囲内であれば、補強材5が撓むため、ネット状物の柔軟性を維持しつつ、ネット状物を補強することができる。また、補強材5の幅も
図2に示す幅に限定されるものではなく、例えば、例えば3mm~30mm、より好ましくは5mm~20mm、さらに好ましくは5mm~10mmである。また、補強材5の素材としても、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、テフロン(登録商標)、及びサラン(登録商標)等を好適に使用することができる。補強材5は、ネット状物2に固定されていればよく、その固定方法は特に限定されるものではない。例えば、ネット状物2に融着することにより固定することができる。補強材4と補強材5とは同じ素材であってもよいし、異なる素材であってもよい。なお、
図2では、底面の補強材4と上面の補強材4との間に4本の補強材5が備えられているが、補強材5の数もこれに限定されるものではなく、2~8であればよく、より好ましくは2~4である。また、補強材5を設ける位置も特に限定されるものではないが、強度の点からは隣り合う2つの補強材5と円柱の中心軸とが形成する角が、すべての隣り合う2つの補強材5において同一となるように配置することがより好ましい。また、
図2では、補強材4と補強材5とが連結された構成であるが、補強材5は補強材4と連結されていなくてもよい。或いは、
図2では、補強材5は、円柱の側面に円柱の高さ方向に延びているが、円柱の側面に円柱の高さ方向と、0より大きく90°未満、より好ましくは10~80°、さらに好ましくは30~60°の角度をなす方向に延びるように備えられていてもよい。
【0039】
図3は、本発明の他の一実施形態に係る多段装填用カートリッジ1Cを示す。多段装填用カートリッジ1Cは、
図2の多段装填用カートリッジ1Bにおいて、補強材として、補強材4及び5に加えて、向かい合う2本の補強材5と補強材4との交点を通って円柱の上面及び底面の中心で交わる4本の補強材6を備えている。当該補強材6は、薄い板状体であれば、その厚みは特に限定されないが、例えば、0.5mm~10mm、より好ましくは1mm~5mmである。また、補強材6の幅も
図3に示す幅に限定されるものではなく、例えば、例えば3mm~30mm、より好ましくは5mm~20mm、さらに好ましくは5mm~10mmである。また、補強材6の素材としても、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、テフロン(登録商標)、及びサラン(登録商標)等を好適に使用することができる。補強材6は、ネット状物2に固定されていればよく、その固定方法は特に限定されるものではない。例えば、ネット状物2に融着することにより固定することができる。補強材4と補強材5と補強材6とは同じ素材であってもよいし、異なる素材であってもよい。なお、
図3では、上面と底面にそれぞれ2本の補強材6が備えられているが、補強材6の数もこれに限定されるものではなく、上面と底面にそれぞれ1~8であればよく、より好ましくは1~4である。また、補強材6は上面及び底面の何れかにのみ備えられていてもよい。補強材6を設ける位置も特に限定されるものではないが、強度の点からは上面及び底面の中心から、均等な角度で放射状に延びるように配置することがより好ましい。また、
図3では、補強材5と補強材6とが接続された構成であるが、補強材6は補強材5と接続されていなくてもよい。或いは、
図3では、多段装填用カートリッジ1Cは補強材として、補強材4及び5に加えて補強材6を備えているが、補強材4と補強材6とのみを備えた多段装填用カートリッジであってもよい。
【0040】
前記ネット状物の網目の大きさは、10~150メッシュであることが好ましいが、18~150メッシュであることがより好ましく、25~50メッシュであることがさらに好ましく、35~50メッシュであることが特に好ましく、40~50メッシュであることが最も好ましい。ここで、メッシュは、ネット状物の目の大きさを表す単位であり、ASTMに準拠したものである。
【0041】
或いは、前記ネット状物の網目の目開きは、2000~100μmであることが好ましいが、1000~100μmであることがより好ましく、700~300μmであることがさらに好ましく、500~300μmであることが特に好ましく、400~300μmであることが最も好ましい。
【0042】
また、本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジは、柱状の形状を有しており、1の多段装填用カートリッジの柱状形の上面と、他の多段装填用カートリッジの底面とが重なるようにカラムに多段装填され得る。かかる態様において、1の多段装填用カートリッジの上面に備えられたリング状の補強材4と、他の多段装填用カートリッジの底面に備えられたリング状の補強材4とが、2つの多段装填用カートリッジを重ね合わせたときに係合可能な形状を備えていてもよい。かかる形状としては、係合溝と当該係合溝と係合する凸部との組み合わせ、係合段と当該係合段と係合する係合段、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0043】
前記粒状物の通液後の体積が、通液前の体積に対して、1倍より大きい場合、即ち、前記粒状物が通液により膨張する粒状物である場合、前記ネット状物に対する前記粒状物の充填率は、好ましくは60体積%以下であり、より好ましくは50体積%以下であり、さらに好ましくは40体積%以下である。ここで、前記ネット状物に対する充填率とは、通液前の充填率である。前記ネット状物に対する前記粒状物の充填率は、ネット状物の容積に対する粒状物の容積の割合であり、下記式(1)により求められる。
前記ネット状物に対する前記粒状物の充填率(%)=(粒状物の嵩容積/ネット状物の容積)×100・・・(1)
例えばネット状物が
図1~3に示す円柱の形状を有している場合は、ネット状物の容積は、円柱の底面の直径D及び円柱の高さHを用いて、π×(D/2)
2×Hにより求めればよい。
【0044】
前記充填率は、前記粒状物の通液後の体積の通液前の体積に対する倍率が1以上である場合、下記式(2)により予め決定することができる。
充填率=(1/前記粒状物の通液後の体積の通液前の体積に対する倍率)×100(%)・・・(2)
さらに、前記充填率はさらに安全率を考慮したものであってもよく、例えば下記式(3)により決定することができる。
充填率=((1/前記粒状物の通液後の体積の通液前の体積に対する倍率)/安全率)×100(%)・・・(3)
式(2)において、安全率は、ネット状物の素材、メッシュ、液性、温度等によって変動するが、通常10~20%である。
【0045】
本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジは、カラムに多段装填するためのカートリッジである。従って、本発明には、前記多段装填用カートリッジを2個以上含む多段装填用カートリッジセットも含まれる。
【0046】
〔2.多段装填用カートリッジを2個以上多段装填してなるカラム〕
本発明には、前記多段装填用カートリッジを、2個以上多段装填してなるカラムも含まれる。本発明の一実施形態に係るカラムは、前述した粒状物を充填した多段装填用カートリッジを2個以上装填したカラムであり、イオン交換用、吸着用、触媒反応用、濾過用、脱塩用、抽出用、分離精製用、及び脱色用等のカラムを含む趣旨である。以下に本発明の一実施形態に係るカラムを、図面を参照して説明する。
【0047】
図4は本発明の一実施形態に係るカラム7の断面図を示す。カラム7は、本発明の一実施形態に係る前記多段装填用カートリッジ8を4個多段装填してなるカラムである。カラム7は、筒状の容器であり、その素材は特に限定されず、一例としては、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、エスロン、ポリアセタール、フッ素樹脂、ポリカーボネート、及びナイロン等の樹脂;ガラス;ステンレス、チタン、及びアルミ等の金属を挙げることが出来る。
図4では、カラム7に4個の前記多段装填用カートリッジ8が装填されているが、前記多段装填用カートリッジ8の数は4個に限定されるものではなく、2個以上であれば特に限定されない。また、カラム7に装填される、複数の多段装填用カートリッジ8は、その中に充填されている前記粒状物が同じであっても異なっていてもよい。或いは、2個以上の前記多段装填用カートリッジ8は、それぞれ異なる粒状物をネット状物に充填してなる多段装填用カートリッジであってもよい。
【0048】
かかるカラムとしては、例えば、2個以上の前記多段装填用カートリッジ8が、それぞれ異なる種類のイオン交換樹脂をネット状物に充填してなる多段装填用カートリッジであるカラムを挙げることができる。このようなカラムを使用することにより、異なる種類のイオン交換樹脂によって捕捉される化学種を、同時に捕捉することができる。また、カラムの出口において特定の化学種の漏えいが確認された場合には、その化学種を捕捉するイオン交換樹脂が充填された多段装填用カートリッジのみを、新しいものと交換することもできる。また、2個以上の前記多段装填用カートリッジ8が、それぞれ異なる種類のキレート樹脂をネット状物に充填してなる多段装填用カートリッジであるカラム、又は、2個以上の前記多段装填用カートリッジ8が、それぞれ異なる種類の吸着樹脂をネット状物に充填してなる多段装填用カートリッジであるカラムにおいても同様の効果を得ることができる。
【0049】
或いは、カラムとしては、例えば、2個以上の前記多段装填用カートリッジ8が、それぞれ異なる粒径のろ過材をネット状物に充填してなる多段装填用カートリッジであるカラムを挙げることができる。
【0050】
前記カラムの大きさは、特に限定されず、通常、内径は10~600cm、高さは50~200cmである。
【0051】
図5は本発明の他の一実施形態に係るカラム9の断面図を示す。カラム9は、本発明の一実施形態に係る前記多段装填用カートリッジ10を3個多段装填してなるカラムである。カラム9は、外筒と内筒とを備えたカラムであり、カラム9の上部から被処理液を通液し、前記多段装填用カートリッジ10を通過してカラム9の下部に到達した処理液は、内筒11を通ってカラムの上部に流れ、処理液としてカラム9から流出する。カラム9の素材、寸法、前記多段装填用カートリッジの数は、カラム7の場合と同じである。
【0052】
図6は、本発明の一実施形態に係る多段装填用カートリッジであり、
図5に示されているカラム9に充填される多段装填用カートリッジを示したものである。多段装填用カートリッジは、前記内筒に沿うようにリング状の形状を有し、カラム9に装填可能に一か所に切込み12が形成されている。当該多段装填用カートリッジは、切込み12が
図5の内筒11の上部の処理液が流出する管に重なるようにして、カラム9内に挿入することにより、カラム9に装填可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、地下水、土壌、温泉水、河川水、沼湖水、海水、工場廃水、鉱山廃水、浸出水等を処理する分野、イオン交換樹脂、キレート樹脂、吸着樹脂等による金属回収、触媒反応を含む化学製品製造分野;脱塩、抽出、分離精製、脱色等の各種工業分野等に、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 多段装填用カートリッジ
2 ネット状物
3 開閉部
4 補強材
5 補強材
6 補強材
7 カラム
8 多段装填用カートリッジ
9 カラム
10 多段装填用カートリッジ
11 内筒
12 切込み