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特許7153012回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するための決定システム
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  • 特許-回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するための決定システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するための決定システム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
G01D5/245 110L
G01D5/245 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019513950
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 FR2017052431
(87)【国際公開番号】W WO2018051011
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】1658522
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507018894
【氏名又は名称】エヌテエヌ-エスエヌエール ルルモン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ドュレ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フラミエール,セシル
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/029972(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第10309027(DE,A1)
【文献】特開平11-248486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 - 5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するための決定システムであって、
コーダー(1)と、回転センサとを備え、
上記コーダー(1)は、上記回転部材と共に動くことによって当該回転部材と回転する構成となっており、コーダー(1)は、回転を示す周期的磁気信号を出力する磁気トラック(2)が設けられた本体部を有し、当該磁気トラックは、i個の遷移(3)によって分離されたN磁極とS磁極の交番を示し、上記遷移の各々は、回転軸に対する極座標において、下記の式[1]によって定義されるアルキメデス螺旋に延在し、
【数1】
(ここで、式中のNppは磁気トラック(2)の極のペアの数を示し、Lpは上記コーダーの半径に沿った極のそれぞれの極幅を示し、角度θiは、iが0から2.Npp-1の間において下記の式[2]
【数2】
と等しい第1スパイラルに対する第i番の回転の角度を示す)
上記回転センサは、複数の磁気感知素子(4)を用いて、前記コーダーによって出力される周期的な磁界を検出することができ、
上記システムは、
上記感知素子(4)が磁気トラック(2)に沿って角度分布しており、少なくとも2つの感知素子(4)に関して、これら感知素子によって送出される信号が直交するように角度αを形成している、
ことを特徴とする決定システム。
【請求項2】
上記2つの感知素子(4)において形成される上記角度αが、下記の式[3]
【数3】
に等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項3】
上記感知素子(4)は、上記磁気トラック(2)の半径Rに沿って角度分布している、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の決定システム。
【請求項4】
上記感知素子(4)は、中央半径Rに従って角度分布している、
ことを特徴とする請求項3に記載の決定システム。
【請求項5】
上記回転センサは、2つの感知素子(4)を有している、
ことを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の決定システム。
【請求項6】
上記コーダー(1)が6.Lp未満の高さを有している、
ことを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の決定システム。
【請求項7】
上記感知素子(4)は、上記磁気トラック(2)からおおよそ下記[4]に示す値である読み取りエアギャップ距離だけ離れて配置されている
【数4】
ことを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の決定システム。
【請求項8】
上記コーダー(1)の極のペアの数Nppが、6未満である、
ことを特徴とする請求項1から7までの何れか1項に記載の決定システム。
【請求項9】
前記コーダー(1)の極幅Lpが、2~6mmである、
ことを特徴とする請求項1から8までの何れか1項に記載の決定システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するための決定システムに関し、前記システムは、周期的な磁気信号を発するコーダーと、その磁界を検出することができる回転センサとを備える。
【0002】
多くの用途において、回転部材の位置、その速度、その加速度又はその移動方向などの回転部材の少なくとも1つの回転パラメータをリアルタイムで最適な品質で知ることが望ましい。
【0003】
これを行うために、国際公開第2006/064169号パンフレットは、可動部材に堅固に接続されるように意図されたコーダーであって、いくつかの感知素子を含むセンサから読み取り距離で擬似正弦波磁界を放射することができる磁気トラックがその上に形成されるコーダーの使用を提案している。
【0004】
有利には、各々の感知素子は、例えば国際公開第2004/083881パンフレットに記載されているように、検出された磁界に従って抵抗が変化するトンネル効果磁気抵抗物質(TMR)を含む少なくとも1つのパターンを含むことができる。
【0005】
検出された磁界の発生に従って可動部材の移動のパラメータを決定するために、国際公開第2006/064169号パンフレットは、前記パラメータを計算するために使用できる直角位相および同じ振幅の2つの信号を送出するために、各感知素子の抵抗を表す信号の組み合わせを提供する。
【0006】
特に、コーダーは、磁極の所定のペア数Nppに関して読み取り半径Rに沿って下記の式[1]
【0007】
【数1】
【0008】
で示される一定の磁極幅を規定するN磁極とS磁極の交互の連続を備え、感知素子は、直角位相で信号を送出できるように、ある距離である下記の値[2]
【0009】
【数2】
【0010】
ほど等しく分布される。
【0011】
ある用途では、コーダーは、その極幅Lpが顕著になるように、特に約10ミリメートルになるように、典型的には6未満の小さい極ペア数を有さなければならない。
【0012】
しかし、これらの広い磁極は、磁気信号を送出し、その正弦波性は、小さな読み取りエアギャップでは悪く、磁気トラックから離れる方向に感知素子を移動させる必要があり、その移動は、前記信号の振幅に逆らい、したがって、感知素子によるその良好な検出に逆らう。
【0013】
さらに、広い磁極は、コーダーの厚さを必要とし、また、磁気信号の正弦波性を維持するために、コーダーの厚さをより大きくする。これは、コーダーを低減された寸法に統合するには好ましくなく、より大きな厚さを磁気的に飽和させなければならないため、磁化方法を複雑にする。
【0014】
さらに、特に文献DE-10309027から、N極とS極との間の磁気遷移がアルキメデス螺旋状に延在するコーダーが知られており、前記螺旋の各々は、下記の角度[3];
【0015】
【数3】
【0016】
による連続的な回転によってコーダーの周囲に分布している。
【0017】
このタイプのコーダーの利点は、前記コーダーの半径に沿った各磁極の極幅Lpが、極のペア数Nppとは無関係になり、したがって、少数の磁極を、検出される磁気信号の正弦波性および振幅に対する感知素子の適切な位置決めと調和させることができることである。
【0018】
しかしながら、従来技術は、このようなコーダーの半径に沿って感知素子を位置決めすることを提案しており、これは、いくつかの問題を提起する。
【0019】
特に、正弦波性と振幅との間の妥協点を満たすために、感知素子は、磁気トラックからほぼ空隙距離、およそ下記の値[4]
【0020】
【数4】
【0021】
ほど、離れて配置される。したがって、特に、固定センサと回転コーダーとの間の機械的相互作用を危険にさらさないように、極幅Lpは、典型的には2~6mmでなければならない。
【0022】
しかし、コーダーによって送出される磁界のエッジの影響を防ぐために、感知素子は、感知素子の位置決めに必要な半径方向サイズに加えて、両側に少なくとも1ペアの磁極、または両側に2つのLpを有する磁気トラックにペアして位置決めされなければならない。
【0023】
結果として、コーダーはかなりの高さ、特に6.Lp(ある積分では利用できない高さ)より大きくなければならない。
【0024】
本発明は、特に、回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するためのシステムを提案することによって、従来技術の問題を克服することを目的とし、ここで、周期性と検出された磁気信号の振幅との間の妥協は、特に、少数の極ペアを有する磁気コーダーに関して、前記信号を配信するコーダーに対して特定のサイズ制約を誘発することなく満たすことができる。
【0025】
この目的のために、本発明は、回転部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するためのシステムを提案する。当該決定システムは、
コーダーと、回転センサとを備え、
- 上記コーダーは、上記回転部材と共に動くことによって当該回転部材と回転する構成となっており、コーダーは、回転を示す周期的磁気信号を出力する磁気トラックが設けられた本体部を有し、当該磁気トラックは、i個の遷移によって分離されたN磁極とS磁極の交番を示し、上記遷移の各々は、回転軸に対する極座標において、下記の式[5]
【0026】
【数5】
【0027】
(ここで、式中のNppは磁気トラックの極のペアの数を示し、Lpは上記コーダーの半径に沿った極のそれぞれの極幅を示し、角度θiは、iが0から2.Npp-1の間において下記の式[6]
【0028】
【数6】
【0029】
と等しい第1スパイラルに対する第i番の回転の角度を示す)
によって定義されるアルキメデス螺旋に延在し、
- 上記回転センサは、複数の磁気感知素子を用いて、前記コーダーによって出力される周期的な磁界を検出することができ、上記感知素子は磁気トラックに沿って角度分布しており、少なくとも2つの感知素子に関して、これら感知素子によって送出される信号が直交するように角度αを形成している。
【0030】
(図面の簡単な説明)
図1は、本発明の実施形態による決定システムの図である。
【0031】
図2は、本発明の実施形態による決定システムの図である。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面に関連してなされる以下の説明において明らかになり、図1および2は、それぞれ、本発明の実施形態による決定システムの図であり、特に、コーダーに対する感知素子の位置決めを示す。
【0033】
これらの図に関連して、固定構造に対して回転する部材の少なくとも1つの回転パラメータを決定するためのシステムが説明される。特に、回転部材のパラメータは、その位置、その速度、その加速度又はその移動方向から選択することができる。
【0034】
特定の用途では、システムは、ブラシレス直流電動機の制御に関連して使用することができ、特に、固定子に対する回転子の一対のモーター極上の絶対角度位置を知ることを可能にする。
【0035】
決定システムは、回転部材と共に動くように回転部材にしっかりと接続されるように意図されたコーダー1を備え、前記コーダーは、特に環状であるが、円盤状でもよい本体を備え、その上に、前記コーダーの回転を表す周期的な磁気信号を発することができる磁気トラック2が形成される。特に、放出される磁気信号は、正弦波または擬似正弦波、すなわち、正弦波によって正確に近似することができる少なくとも1つの部分を有することができる。
【0036】
トラック2は、i個の遷移3によって分離されたNおよびSの磁極の交番を示し、前記遷移の各々は、回転軸に対する極座標(ρ、θ)において、下記の式[7]
【0037】
【数7】
【0038】
(ここで、式中のNppは磁気トラック(2)の極のペアの数を示し、Lpは上記コーダーの半径に沿った極のそれぞれの極幅を示し、角度θiは、iが0から2.Npp-1の間において下記の式[8]
【0039】
【数8】
【0040】
と等しい第1スパイラルに対する第i番の回転の角度を示す。)
によって定義されるアルキメデス螺旋に延在する。
【0041】
したがって、磁気トラック2は、擬似正弦波磁気信号を送出し、その空間周期は、λ=2.Lpに等しい。さらに、アルキメデス螺旋形状により、特に、磁気トラック2の極対の数Nppならびに極幅Lpを、磁気トラック2の半径Rとは無関係に選択することができる。
【0042】
一実施形態によれば、コーダー(符号器)1は、多極磁気トラック2が形成される磁石によって形成される。特に、磁石は、磁性粒子、特にフェライトまたはNdFeBのような希土類の粒子が分散されたプラスティックまたはエラストマ物質から作られた実施例のための、環状マトリクスによって形成することができる。
【0043】
この決定システムは、固定構造に堅固に接続されることが意図される回転センサを備え、前記センサは、コーダー1によって発せられる周期的な磁界を検出することができる。これを行うために、センサは、磁気トラック2によって伝達される磁界から読み取りエアギャップほど離れたところに配置された複数の磁気感知素子4を備え、感知素子の各々は、特に、磁気感知プローブから選択することができる。
【0044】
実施例の場合、トンネル磁気抵抗(TMR)、異方性磁気抵抗(AMR)または巨大磁気抵抗(GMR)に基づくプローブは、(コーダーに対して垂直または接線方向の)磁界または回転磁界(垂直成分および接線方向成分から生じる)の成分を測定することができる。
【0045】
特に、国際公開第2004/083881号パンフレットに記載されているように、各パターンは、基準磁性層と、絶縁分離層と、検出されるべき磁界に感応する磁性層とのスタックを備えることによってトンネル接合を形成し、該スタックの抵抗は、磁性層の磁化の相対配向の関数である。
【0046】
有利には、各感知素子4は、磁気抵抗材料から作られた少なくとも1つのパターンを有することができ、その抵抗は、磁界に従って変化し、感知素子4は、単一のパターンまたは直列に接続されたパターンのグループを有することができる。
【0047】
代替的に、コーダー1によって送出される磁界の垂直成分のみが、ホール効果素子を介した実施例のために測定され得る。法線場のみの使用は、接線場よりもより正弦波であるので好ましい。
【0048】
回転部材の回転パラメータを決定できるようにするために、感知素子4によって送出される信号は直角位相、すなわち90°位相がずれていなければならない。特に、このような信号を直角位相、センサ、または関連するコンピュータで使用することによって、コーダー1の角度位置を決定することが知られており、その実施例は、「ルックアップテーブル」(LUT)を使用するアークタンジェント関数の直接演算、またはCORDIC方法によるものである。
【0049】
これを行うために、感知素子4は、磁気トラック2に沿って角度分布しており、少なくとも2つの感知素子4の間に、前記素子によって送達される信号が直角位相になるように設計された角度αを形成する。図示の実施形態によれば、2つの感知素子4の間に形成される角αは、下記の式[9]
【0050】
【数9】
【0051】
に等しい。
【0052】
したがって、感知素子4の円周方向の分布は、コーダー1によって送出される磁界のエッジの影響を回避することを可能にし、制限された高さh、特に6.Lp未満を有するコーダー1を使用することを可能にする。特に、感知素子4は、コーダー1の端面からできるだけ遠く離れるように、磁気トラック2の半径R、特に図面の中央半径に沿って角度分布させることができる。
【0053】
さらに、感知素子4を磁気トラック2から読み取りエアギャップ距離ほど、おおよそ下記[10]に示す値、離れて配置することによって、検出される信号の正弦波性と振幅との間のほぼ良好な妥協が得られる。
【0054】
【数10】
【0055】
特に、磁極幅Lpは、コーダー1の磁極のペア数Nppが6未満であっても、2~6mmの間にあり得るので、この最適位置決めを得ることができる。
【0056】
したがって、感応素子4の円周方向の分布は、特に以下の利点を有する。
【0057】
- 2つの素子4間の距離は十分な大きく、全くコストがかからないし、全く直線的でもない個別の部品(1D Hall probe)を使用するのに十分な大きさである。
【0058】
- 素子4の円周方向の位置決めの許容差は、センサの精度に大きな影響を与えない(それらを分離する距離が大きいため)。
【0059】
- 2つの素子4は、コーダー1の中央半径R上に位置しているので、エッジ効果によって大きく乱されることはない。
【0060】
- 感知素子4の位置決めは、極幅Lpに依存しない。
【0061】
- 読み取り半径Rは磁気信号の品質にごくわずかしか影響を与えない。
【0062】
図に関して、4ペアの磁極を有する電気モータの制御に特に適合されたシステムが以下に説明され、前記システムは、1ペアのモータ磁極における絶対位置、または90°の機械的な絶対位置を提供する。
【0063】
これを行うために、コーダー1は4ペアの磁極(Npp=4)を備え、感知素子4は、モータを制御するためのセンサまたはコンピュータが、90°の角度セクタにわたる絶対的な角度位置を決定することができるように、各磁極ペアに直角位相で信号を送出する。
【0064】
図1に関して、センサは、間に下記の値[11]
【0065】
【数11】
【0066】
である角度αをもつ2つの感知素子4を有している。
【0067】
図2には、各々の角度αとして22.5°を有して分離された3つの感知素子4を有する実施形態を示す。
【0068】
特に、後者の実施形態は、送達される磁場の2つの差分測定(一方では左側の感知素子4から中央にある感知素子4を引いたもの、他方では中央にある感知素子4から右側の感知素子4を引いたもの)を可能にする。従って、磁界が、種々の感知素子4上で同じ外部から来る雑音成分(モータからの実施例または隣接する相互接続からの雑音成分)を含む場合、それは出力から減算される。
【0069】
おおよそ下記[12]に示す値;
【0070】
【数12】
【0071】
の読み取りエアギャップ距離での信号の良好な正弦波性のために、本実施形態のシステムは、モータを制御するコンピュータに、回転子の一対のモータ極上の絶対角度位置を正確に送ることができ、このことは、特に以下のことを可能にする。
-特に始動時における設定速度または設定位置に到達する時間などに関してより良い性能を提供
- 定常状態においてトルクのジャンプがない「よりソフトな」動作
- より低い消費エネルギー
- より低い動作温度
- より大きな最大トルク
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】本発明の実施形態による決定システムの図である。
図2】本発明の実施形態による決定システムの図である。
図1
図2