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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】難燃性スチレン含有組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20221005BHJP
   C08K 5/53 20060101ALI20221005BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20221005BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C08L51/04
C08K5/53
C08K3/32
C08L55/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019552609
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 IL2018050357
(87)【国際公開番号】W WO2018178983
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/478,608
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500165175
【氏名又は名称】ブローミン コンパウンズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヒルシュゾーン, ヤニーヴ
(72)【発明者】
【氏名】エデン, エーヤル
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/090751(WO,A1)
【文献】特開2006-265539(JP,A)
【文献】国際公開第2007/007663(WO,A1)
【文献】特表2011-529112(JP,A)
【文献】特表2008-527070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐衝撃性が改良されたスチレン含有ポリマーと、
少なくとも一つの臭素含有難燃剤と、
少なくとも一つのジアルキルホスフィン酸金属塩M1 n+(R12PO2n(M1は原子価nの金属カチオンであり、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよいアルキル基である)と、
一つ以上の次亜リン酸金属塩M2 q+(H2PO2q(M2は原子価qの金属カチオンを表し、M1とM2は同じであっても異なっていてもよい)と、
少なくとも一つの滴下防止剤と、を含む組成物であって、
前記臭素含有難燃剤および前記ジアルキルホスフィン酸金属塩の総濃度は、前記組成物中の全ての成分の総重量に対して18重量%以上28重量%未満であり、
前記組成物の臭素濃度は、前記組成物の総重量に対して9.5~15.5重量%であり、
前記ジアルキルホスフィン酸金属塩M1 n+(R12PO2nの濃度は、前記組成物の総重量に対して3~9重量%であり、
前記組成物は、アンチモンを含まず、かつUL-94 V-1/1.6mm又はUL-94 V-0/1.6mmの試験要件を満たす、組成物。
【請求項2】
前記耐衝撃性が改良されたスチレン含有ポリマーは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)と耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記スチレン含有ポリマーは、ABSである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
1 n+(R12PO2nは、Al((C252PO23である、請求項1
~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
1 n+(R12PO2nおよびM2 q+(H2PO2qの総濃度は、前記組成物中の全ての成分の総重量に対して3~9重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
1 n+(R12PO2nは、Al((C252PO23であり、M2 q+(H2PO2qは、Al(H2PO23およびCa(H2PO22からなる群より選択される、請求項5に記載の組成物であって、前記難燃剤により供給された臭素濃度が、前記組成物の総重量に対して9.5重量%≦[臭素]<11.5重量%又は11.5重量%≦[臭素]≦13.0重量%の範囲にあり、
前記組成物の総重量に対して重量で、4.5≦{[Al((C252PO23]+[Al(H2PO23]}≦7.5又は
前記組成物の総重量に対して重量で、4.5≦{[Al((C252PO23]+[Ca(H2PO22]}≦7.5であることを特徴とする、組成物。
【請求項7】
前記臭素含有難燃剤は、臭素含有量が50重量%~70重量%であり、かつその臭素原子は、いずれも芳香族結合している、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記臭素含有難燃剤は、
(i)下記式Iで表されるトリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジンと、
【化1】
(式I)
(ii)式IIで表される臭素化エポキシ樹脂及びその末端封鎖誘導体と、からなる群より選択され、
【化2】
(式II)
式中、mは、重合度を表し、R1及びR2は、
【化4】
および
【化5】
からなる群より独立して選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記臭素含有難燃剤は、トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の総重量に対して70~80重量%のABS、15~20重量%のトリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジン、3~9重量%Al((C252PO23Al(H2PO23及びCa(H2PO22のうちの少なくとも一つとからなる混合物、及び0.1~0.5重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記臭素含有難燃剤は、1300~2500の数平均分子量を有する、下記式(IIa)で表されるトリブロモフェノール末端封鎖低分子量樹脂及びその混合物であり、
【化2a】
式中、mは、0~5の整数である、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物の総重量に対して、70~80重量%のABS、18~23重量%の式IIaのトリブロモフェノール末端封鎖低分子量エポキシ樹脂、3~9重量Al((C252PO23Al(H2PO23及びCa(H2PO22のうちの少なくとも一つとからなる混合物、及び0.1~0.5重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
アリールリン酸エステルと炭化剤からなる群より選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含み、前記臭素含有難燃剤、前記M1 n+(R12PO2n、前記M2 q+(H2PO2q、前記アリールリン酸エステル及び前記炭化剤の総濃度は、前記組成物中の全ての成分の総重量に対して18~26重量%である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の総重量に対して、60~80重量%のABS、14~20重量%のトリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジン、4.5~7.5重量%の{[Al((C252PO23]+[Al(H2PO23]}の混合物又は{[Al((C252PO23]+[Ca(H2PO22]}の混合物、0.5~3重量%のヒドロキノンのアリールリン酸エステル、及び0.1~0.5重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物の総重量に対して、60~80重量%のABS、14~20重量%のトリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジン、4.5~7.5重量%の{[Al((C252PO23]+[Al(H2PO23]}の混合物又は{[Al((C252PO23]+[Ca(H2PO22]}の混合物、1~6重量%の炭化剤、及び0.1~0.5重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物を含む成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
商業用の多くのポリマーは、それらの可燃性を低下させるための難燃剤を含有している。プラスチック材料の可燃特性は、通常、試験されたポリマー配合物からなる垂直に取り付けられた試験片の最下端を裸火にさらすというUnderwriter Laboratories標準のUL 94に規定された方法に従って定量化可能である。UL 94試験法で使用される試験片は、厚さに差がある(典型的な厚さが、約3.2mm、約1.6mm、約0.8mm及び約0.4mmである)。試験中、試験片の可燃性の様々な特徴が記録される。次に、分類要件に従って、ポリマー配合物は、試験片の測定された厚さで、V-0、V-1又はV-2のいずれかの等級に認定される。V-0等級に認定されたポリマー配合物は、可燃性が低い。さらに、UL-94燃焼試験では、試験片が薄いほど燃焼時間が長くなる。
【背景技術】
【0002】
耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)及びアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)のような耐衝撃性が改良されたスチレン系ポリマーのための最適な添加剤は、合理的な濃度で許容可能なレベルの難燃性を達成するとともに、ポリマーの機械的特性を維持する能力がある臭素含有化合物である。しかしながら、この目的を達成するために、臭素含有化合物は、相乗剤としてアンチモンを必要とする。つまり、臭素含有難燃剤は、難燃剤の活性を高めるように相乗的に機能する三酸化アンチモン(Sb)と共に、通常、約2:1~5:1の重量比(ポリマー組成物中の臭素とSbとの濃度比として計算)で、プラスチックポリマーに添加される。例えば、米国特許第5387636号には、三酸化アンチモンが2~6重量%の濃度でHIPSにおいて使用されることが記載されている。フィンバーグらの[Polymer Degradation and Stability 64、465-470ページ(1999)]には、UL-94 V-0/1.6mmを満たす、臭素と三酸化アンチモンの濃度がそれぞれ11~15重量%と6~8重量%の範囲である、かなり高い三酸化アンチモン含有レベルを示す難燃性ABSが報告された。
【0003】
いくつかの商業難燃剤の、HIPS及びABS中の三酸化アンチモンに対する依存性は、本願と同一出願人(coassigned)の国際公開2010/010561において検討された。三酸化アンチモンを[Sb]≦2.0重量%で少量適用し、かつ臭素が10~18重量%となるように難燃剤の濃度を調節した。ポリマー組成物中の臭素の量は、検討中の難燃剤の臭素含有量にポリマー配合物中の該難燃剤の重量濃度を掛けることにより計算される。以下、所定の難燃剤により供給された臭素の量は、BrFr nameと称される。UL 94 V-1又はV-0等級を満たすために必要な臭素の量の急激な増加は、一般的に三酸化アンチモンの濃度が2重量%未満(2重量%→1.5重量%→1.0重量%→0.5重量%)に減少したときに観察された。国際公開2010/010561において試験された臭素含有添加剤のうち、トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジン(別称FR-245)は、他の難燃剤と比較して、三酸化アンチモンに対するかなり適切な依存性を示した。しかしながら、FR-245(BrFR-245=12重量%を供給するように添加される)さえも、ABSのUL 94 V-0等級を達成するためには、1.5重量%の三酸化アンチモンの助けが必要である(ABSは、HIPSより難燃化されにくい。国際公開2010/010561の実施例32を参照)。さらに、以下の実施例3に示すように、ABSからの三酸化アンチモンの完全な除去を補償するために、FR-245を最大で約33.0重量%(BrFR-245=22重量%に相当)の量で適用しなければならない。国際公開2013/176868において報告された別の研究も、10%≦BrFR-245≦15%でUL-94 V-0/1.6mm等級を満たすABSが、アンチモンを添加するときにのみ達成可能であることを示している。
【0004】
まとめると、市場で入手可能な多くの商業用ABS配合物は、該配合物に組み込まれた10~15重量%の臭素により難燃化される。当該分野の一般的な知識としては、これらの配合物において、添加剤の許容可能な総含有レベルでUL-94 V-1/1.6mm又はUL-94 V-0/1.6mm等級を達成するためには、アンチモンが存在しなければならない。
【0005】
非ハロゲン難燃剤は、プラスチック配合物において商業的にも使用される。例えば、式M n+(RPO(R及びRはC-Cの直鎖および分岐アルキルからなる群より独立して選択され、かつMは原子価nの金属カチオンを示す)のジアルキルホスフィン酸塩の部類(具体的には、ジエチルホスフィン酸の金属塩(R=R=C)、特に、アルミニウム塩)は、難燃剤として有用であることが発見された。ジエチルホスフィン酸アルミニウム(以下、その化学式Al((CPOで同定される)は、市販されている(Clariant社のExolit(登録商標)OP 1230/1240/930)。
【0006】
米国公開特許2005/000427には、Al((CPOが、ポリアミド6,6及びガラス繊維強化PBT中の唯一の難燃剤として非常に効果的であり、ほんの10重量%の含有レベルでその組成物をUL-94 V-2/0.8mmに達成できることが記載されている(実施例10及び15)。米国公開特許2005/000427にはまた、Al((CPOをポリアミド6,6及びガラス繊維強化PBT中で臭素化ポリスチレン又はポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)と組み合わせた場合、UL-94 V-0/0.8mmに等級付けされた組成物が得られたことが記載されている(それぞれ米国公開特許2005/000427の実施例8及び18を参照)。
【0007】
本発明に基づいて行われた試験研究では、24重量%の高い含有レベルでも、Al((CPOにより、ABS組成物がUL 94等級を得ることができないことが示された。しかしながら、本発明者らは、ABSが、(i)臭素含有化合物、例えば、トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジン又は末端封鎖臭素化エポキシ樹脂オリゴマー、および(ii)Al((CPOからなる二成分混合物によりうまく難燃化され、また臭素含有化合物が該化合物の主要成分で、Al((CPOがその副成分である場合、三酸化アンチモンが存在しなくても、UL-94 V-0/1.6mmに等級付けされたABSが得られることを発見した。例えば、12重量%の臭素及び6重量%のAl((CPOを含有する例示的なアンチモンを含まないABS組成物は、(滴下剤により)UL-94 V-0/1.6mm分類の要件を満たすことが発見された。
【0008】
さらに、次亜リン酸金属塩によるAl((CPOの一部の置き換えにより、向上した耐衝撃強度(アイゾット試験により測定される)と共に、良好な難燃性を実現することができる。Ind.Eng.Chem.Res.、2014、53(6)、pp2299-2307及びイタルマッチケミカルズSpA名義の国際公開2015/170130において報告されるように、次亜リン酸の金属塩、すなわち一般式M q+(HPO(Mが原子価qの金属カチオンである)の次亜リン酸金属塩(例えば、次亜リン酸アルミニウムAl(HPO及び次亜リン酸カルシウムCa(HPO)は、ABSの可燃性を低減するために従来適用されている。後者の公開公報には、Al(HPOは、ABS中の唯一の難燃剤の添加剤として、UL-94 V-0/3.2mm等級を達成するために、35%という非常に高い濃度で効果的であることが記載されている。しかしながら、この許容できないほど高い含有レベルでも、より薄い試験片(厚さ1.6mm)でのUL-94等級要件を満たすには不十分である。次亜リン酸カルシウムは、米国特許第6503969号(BASF名義)及び国際公開2012/113146(Rhodia名義)に記載されている。
【0009】
以下に報告される試験結果では、臭素含有化合物で難燃化されたABSからのアンチモンの完全除去は、かなり少量のジアルキルホスフィン酸塩の存在又はジアルキルホスフィン酸塩および次亜リン酸金属塩からなる混合物の存在により補償されて、UL-94 V-1/1.6mm又はUL-94 V-0/1.6mm等級を達成することが示される。添加された塩は、ABS中のこれらの添加剤の乏しい有効性に基づいて有効であると予想される量よりも大幅に少ない合計量で適用される。
【0010】
ジアルキルホスフィン酸塩、例えば、Al((CPOは、ABSにおいて溶融混合可能であり(すなわち、ABSの処理温度で溶融する)、全て芳香族結合している臭素原子を有し、かつ難燃剤の臭素含有量が好ましくは50~70重量%の範囲にある臭素含有化合物と共に、特に良好に機能する。例えば、以下の臭素化難燃剤は、本発明に従って使用することに適している。
【0011】
(i)芳香族結合している臭素原子を有し、臭素含有量が67重量%である、式Iで表されるトリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジン。
【化1】
【0012】
一般的に、トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジンの製造は、当該分野において周知の様々な条件下でのシアヌル酸クロリドと2,4,6-トリブロモフェノラートとの反応に基づいている(例えば、米国特許第5907040号、米国特許第5965731号及び米国特許第6075142号を参照)。該難燃剤は、FR-245の名でICL-IP社から市販されている。この化学名及びFR-245は、本明細書において互換可能に使用されている。
【0013】
ii)芳香族結合している臭素原子を有し、臭素含有量が50~60重量%であり、式(II)で表される臭素化エポキシ樹脂及びその末端封鎖誘導体。
【化2】
式中、mは、重合度を表し、R及びRは、
【化4】
および
【化5】
からなる群より独立して選択される。
【0014】
好ましくは、下記式(IIa)で表されるトリブロモフェノール末端封鎖低分子量樹脂及びその混合物である。
【化2a】
式中、mは、0~5、より好ましくは0~4の整数である。つまり、式IIa(mが0、1及び2に等しい)の単独のトリブロモフェノール末端封鎖化合物を含む混合物の形態であるビス(2,4,6-トリブロモフェニルエーテル)-末端テトラブロモビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂であり、またビス(2,4,6-トリブロモフェニルエーテル)-末端テトラブロモビスフェノールA-エピクロロヒドリン樹脂のより高次のオリゴマーである可能性もある。1300~2500、より好ましくは約1400~2500、例えば1800~2100の数平均分子量を有する式IIaの難燃剤は、2000の分子量、56%の臭素含有量で市販されている(例えば、ICL-IP社製のF-3020)。
【0015】
上述したように、ジアルキルホスフィン酸金属塩の一部を置き換えるための次亜リン酸金属塩の添加は、良好な難燃性を保持して耐衝撃性を向上させる。好ましい次亜リン酸金属塩は、次亜リン酸アルミニウムと次亜リン酸カルシウムである。Al(HPOは、様々なメーカーから市場で入手可能であり、アルミニウム塩と次亜リン酸とを反応させることにより製造される((例えば、80~90℃で緩やかに加熱する)Handbook of inorganic compounds、D.L.Perry著 第2版、また米国特許第7700680号及びJ.Chem.Soc.2945ページ(1952)を参照)。Ca(HPOも市販されている。該塩は、国際公開2015/170130に示すような水酸化カルシウムと黄燐との反応、又は、カルシウムの炭酸塩又は酸化物とHPOとの反応、それに続く溶媒の蒸発及び塩の回収により製造され得る(Encyclopedia of the alkaline earth compounds、R.C.Ropp著、2013年 Elsevier社を参照)。他の方法は、米国特許第2938770号に記載されており、イオン交換樹脂による処理に基づくものである。次亜リン酸カルシウムの製造も中国特許101332982に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第5387636号
【文献】国際公開2010/010561
【文献】国際公開2013/176868
【文献】米国公開特許2005/000427
【文献】国際公開2015/170130
【文献】米国特許第6503969号
【文献】国際公開2012/113146
【文献】米国特許第5907040号
【文献】米国特許第5965731号
【文献】米国特許第6075142号
【文献】米国特許第7700680号
【文献】米国特許第2938770号
【文献】中国特許101332982
【非特許文献】
【0017】
【文献】Polymer Degradation and Stability 64、465-470ページ(1999)
【文献】Ind.Eng.Chem.Res.、2014、53(6)、pp2299-2307
【文献】Handbook of inorganic compounds、D.L.Perry著 第2版
【文献】J.Chem.Soc.2945ページ(1952)
【文献】Encyclopedia of the alkaline earth compounds、R.C.Ropp著、2013年 Elsevier社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明は、
耐衝撃性が改良されたスチレン含有ポリマー、好ましくはABSと、
少なくとも一つの臭素含有難燃剤、好ましくはトリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジンと、
少なくとも一つのジアルキルホスフィン酸金属塩M n+(RPO、好ましくは一つ以上の次亜リン酸金属塩M q+(HPOとの組み合わせと、
少なくとも一つの滴下防止剤と、を含む組成物であって、
臭素含有難燃剤、ジアルキルホスフィン酸金属塩及び任意の次亜リン酸金属塩の総濃度は、28重量%未満であり、例えば18~26重量%、より具体的には19~25重量%である(例えば、20~25重量%)、特に20~24重量%である(組成物中の全ての成分の総重量に基づくものであり、以下、特に明記しない限り、濃度は組成物の総重量に基づくものとする)、主に、UL-94 V-1/1.6mm又はUL-94 V-0/1.6mmの試験要件を満たす、実質的にアンチモンを含まない組成物を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の組成物は、実質的にアンチモンを含まない。「実質的にアンチモンを含まない」とは、組成物中のアンチモン(例えば、三酸化アンチモン)の濃度が、スチレン系配合物中のハロゲン化添加剤と組み合わせてプラスチックで使用される許容可能な量よりかなり低く、例えば、(組成物の総重量に対して)0.3重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下、例えば、0.0~0.1重量%であることを意味する。最も好ましくは、本発明の組成物は、アンチモンを全く含まない。
【0020】
特定の耐衝撃性が改良されたスチレン系ポリマー(コポリマー/ターポリマーを含む)は、ABS、HIPS及びASAである。ABSは、上記ポリマーの組成及び製造方法にかかわらず、(任意に置換された)スチレン、アクリロニトリル及びブタジエンに対応する構造単位を含むコポリマー/ターポリマーを指す。ABSの特性及び組成は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、16巻、72-74ページ(1985)に記載されている。本発明のABS組成物は、50重量%以上、例えば、60重量%以上、より具体的には65~80重量%で、MFIが1~50g/10分間(220℃/10kgでISO 1133に従って測定される)のABSを含む。HIPSは、例えば、重合前に、エラストマー(ブタジエン)を(任意に置換された)スチレン系モノマー(複数可)と混合することにより得られる、スチレン系モノマーのゴム変性コポリマーの群を示す。HIPSの特性及び組成は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、16巻、88~96ページ(1985)に記載されている。本発明により提供されるHIPS組成物は、一般的には、50重量%以上、例えば、60重量%以上、より具体的には65~80重量%で、MFIが1~50(ISO 1133、200℃/5kg)のHIPSを含む。ASAは、アクリロニトリルスチレンアクリレートの略語であり、時には、ABS(ブタジエンゴムの代わりにアクリレートゴムを組み込む)の代替品として使用される。
【0021】
本発明の好ましいABS組成物において、(i)臭素含有難燃剤及び(ii)M n+(RPO、又は(i)臭素含有難燃剤、(ii)M n+(RPO及び(iii)M q+(HPOの総濃度は、組成物の総重量に対して、20~25重量%(20~24重量%)であることが好ましい。
【0022】
単独の成分(i)、(ii)及び(iii)の濃度について、本発明の組成物中の臭素の濃度は9.5~15.5重量%、例えば10~15重量%であることに留意すべきである。上述したように、組成物中の臭素の濃度は、所定の難燃剤の臭素含有量(本明細書ではBrFr-nameで示され、重量%で表される)に組成物中の難燃剤の重量濃度を掛けることにより計算される。例えば、市販されるFR-245、FR-3020の臭素含有量は、それぞれBrFR-245=67%、BrFR-3020=56%である。そのため、例えば12重量%の臭素をABS組成物中に組み込むために、これらの2種の難燃剤の対応する濃度は、(組成物の総重量に対して)17.9重量%、21.4重量%であるべきである。
【0023】
n+(RPO(例えば、Al((CPO)は、M q+(HPOが存在しないときに使用する場合には、ABS組成物の総重量に対して、好ましくは3~9重量%、より好ましくは4~8重量%、さらに好ましくは4.5~7.5重量%、特に5.5~6.5重量%の濃度で添加される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、M n+(RPOとM q+(HPOが併用される(例えば、Al((CPOをAl(HPOとCa(HPOのうちのいずれか1つと組み合わせた)場合、それらの総濃度は、ABS組成物の総重量に対して、好ましくは3~9重量%、より好ましくは4~8重量%、さらに好ましくは4.5~7.5重量%、特に5.5~6.5重量%である。均等な組成物が好ましく、つまり、Al((CPOの濃度は、Al(HPO又はCa(HPOの濃度とほぼ等しい。以下、角括弧を用いて化合物の濃度を示す。例えば、[M n+(RPO]:[M q+(HPO]の比は、2:1~1:2の範囲、例えば1.5:1~1:1.5、好ましくは約1:1である。
【0025】
本発明の組成物において、[臭素]:[Al((CPO]の重量比、[臭素]:{[Al((CPO]+[Al(HPO]}の重量比、又は[臭素]:{[Al((CPO]+[Ca(HPO]}の重量比は、2.5:1~1.5:1、好ましくは2.25:1~1.5:1、より好ましくは2.1:1~1.6:1である。
【0026】
本発明に係る組成物は、該組成物の総重量に対して、0.05~1.0重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%、さらに好ましくは0.1~0.3重量%の好ましい量のポリテトラフルオロエチレン(PTFEと略す)のような一つ以上の滴下防止剤をさらに含む。PTFEは、例えば、米国特許第6503988号に記載されている。高い溶融滴下防止性能を示すフィブリル化PTFE等級が好ましい(例えば、Teflon(登録商標)6C(登録商標Dupont)及びHostaflon(登録商標)2071(登録商標Dyneon))。
【0027】
例えば、以下の組成物は、所望の可燃特性を有する、すなわちUL 94 V-1/1.6mm又はUL 94 V-0/1.6mm等級の要件を満たすことが発見された。
【0028】
70~80重量%のABS(例えば、73~77重量%)、15~20重量%のFR-245(例えば、16~19重量%)、3~9重量%のAl((CPO又はAl((CPOとA1(HPO及びCa(HPOのうちの少なくとも一つとからなる混合物のいずれか(例えば、4~8重量%)、及び0.1~0.5重量%のPTFE(例えば、0.15~0.35重量%)。
【0029】
70~80重量%のABS(例えば、71~75重量%)、18~23重量%の式IIaのトリブロモフェノール末端封鎖低分子量エポキシ樹脂(例えば、19~22重量%)、3~9重量%のAl((CPO又はAl((CPOとA1(HPO及びCa(HPOのうちの少なくとも一つとからなる混合物のいずれか(例えば、4~8重量%)、及び0.1~0.5重量%のPTFE(例えば、0.15~0.35重量%)。
【0030】
本発明のいくつかの特に好ましいABS組成物は、
4.5≦{[Al((CPO]+[A1(HPO]}≦7.5、又は
4.5≦{[Al((CPO]+[Ca(HPO]}≦7.5
のいずれか1つと併せて、
13重量%未満、すなわち、9.5%≦[臭素]<11.5%又は11.5%≦[臭素]≦13.0%の臭素含有レベルを有する。
【0031】
これらの好ましい組成物では、ABSの濃度は、総配合物の75重量%超、例えば、76重量%超、さらに77重量%超であり、これより耐衝撃強度が増大する。
【0032】
ABS(又はHIPS)、臭素含有難燃剤、ジアルキルホスフィン酸金属塩、次亜リン酸金属塩及び滴下防止剤以外に、本発明の組成物は、UV安定剤(例えば、ベンゾトリアゾール誘導体)、加工助剤、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系)、潤滑剤、顔料、熱安定剤、ダイなどの従来の添加剤をさらに含有することができる。これらの従来の添加剤の総濃度は、典型的に3重量%以下である。具体的には、本発明の組成物は、酸化防止剤及び熱安定剤、例えば、有機亜リン酸塩とヒンダードフェノール系酸化防止剤の混合物を含有することができる。
【0033】
本発明者らはまた、本発明の実質的にSbを含まず、臭素を含有し、[M n+(RPO及びM q+(HPO]が添加された組成物の可燃性及び/又は機械的特性が、ハロゲンを含まない難燃剤(例えば、リン系)と炭化剤からなる群より選択される補助添加剤の添加により改良されることを発見した。
【0034】
例えば、式(III)のヒドロキノン(1,4-ジヒドロキシベンゼン)のアリールリン酸エステルが、使用され得る。
【化3】
式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、ヘテロ原子で任意に中断されたアリール(例えば、フェニル)又はアルキル置換アリール(例えば、キシレニル)であり、nは、約1.0~約2.0の平均値を有する。式(III)の化合物は、EP2089402に記載されている。一般的に、式IIIのヒドロキノンビスホスフェートは、触媒の存在下でジアリールハロホスフェートをヒドロキノンと反応させることにより製造される。例えば、MgClの存在下で、ジフェニルクロロホスフェート(DPCP)をヒドロキノンと反応させて、ヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)を製造する。式(III)の化合物を合成する詳細な方法は、EP2089402に見出すことができる。本発明で用いられる式(III)の好ましい化合物[R=R=R=R=フェニル、1.0<n≦1.1、つまり、約1.0<n≦1.05のn平均値を有するヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート]は、EP2089402の実施例1の生成物であり、以下、簡略化するために「HDP」と命名する。この化合物は、固体の形態で入手可能であり、トローチの形態で使用され得る。
【0035】
アリールリン酸エステル及び/又は一つ以上の炭化剤(例えば、ポリジメチルシロキサン、例えば、メタクリル官能基を有する高分子量シロキサン)により、アンチモンを含まず、臭素を含有し、{M n+(RPO及びM q+(HPO}が添加された組成物は、良好な可燃性能を得ることができる。したがって、本発明の別の実施形態は、UL-94 V-1/1.6mm又はUL-94 V-0/1.6mmの試験要件を満たす、実質的にSbを含まない組成物であって、
耐衝撃性が改良されたスチレン含有ポリマー、好ましくはABSと、
少なくとも一つの臭素含有難燃剤、好ましくはトリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジンと、
少なくとも一つのM n+(RPO、好ましくは一つ以上の次亜リン酸金属塩M q+(HPO、好ましくはA1(HPO又はCa(HPOと組み合わせたAl((CPOと、
少なくとも一つの滴下防止剤、好ましくはPTFEと、
アリールリン酸エステルおよび炭化剤からなる群より選択される少なくとも一つの添加剤と、を含み、
臭素含有難燃剤、M n+(RPO、M q+(HPO、アリールリン酸エステル及び炭化剤の総濃度は、(組成物中の全ての成分の総重量に対して)28重量%未満であり、例えば18~26重量%、より具体的には19~25重量%(例えば、20~25重量%)、特に20~24重量%である、組成物に関する。
【0036】
例えば、以下の組成物は、所望の可燃特性を有する、すなわちUL 94 V-1/1.6mm又はUL 94 V-0/1.6mm等級の要件を満たすことが発見された。
【0037】
60~80重量%のABS(例えば、73~77重量%)、14~20重量%のFR-245(例えば、16~19重量%)、4.5~7.5重量%の{Al((CPO+A1(HPO}の混合物又は{Al((CPO+Ca(HPOの混合物(例えば、4~6重量%)、0.5~3重量%のアリールリン酸エステル(例えば、1~2%の式IIIのヒドロキノンビスジフェニルホスフェート)、及び0.1~0.5重量%のPTFE(例えば、0.15~0.35重量%)。
【0038】
60~80重量%のABS(例えば、73~77重量%)、14~20重量%のFR-245(例えば、14~16重量%)、4.5~7.5重量%の{Al((CPO+A1(HPO}の混合物又は{Al((CPO+Ca(HPOの混合物(例えば、5~7重量%)、1~6重量%の炭化剤(例えば、2~4重量%のPDMS)、及び0.1~0.5重量%のPTFE(例えば、0.15~0.35重量%)。
【0039】
本発明の組成物の製造は、当該分野で公知の様々な方法を用いて実施することができる。例えば、該ABS組成物は、コニーダ又は二軸スクリュー押出機などで各成分を溶融混合することにより製造し、混合温度は160~240℃の範囲とする。全ての原料を一緒に押出スロートに供給することができるが、一般的に、まず、一部又は全ての成分を乾式混合し、次に、乾燥混和物を押出機の主供給ポートに導入することが好ましい。バレル温度、溶融温度及びスクリュー速度などのプロセスパラメータは、以下の実施例において、より詳細に説明される。
【0040】
得られた押出物を粉砕してペレットにする。乾燥ペレットは、物品成形プロセス、射出成形、押出成形、圧縮成形への供給に適し、必要に応じて他の成形方法が続く。本発明の組成物から成形された物品は、本発明の他の態様を形成する。
【実施例
【0041】
材料及び方法
ABS又はHIPS配合物を製造するために用いた材料を表1に示す(FRは、難燃剤の略語である)。
【0042】
【表1】
【0043】
調製
ポリマー及び全ての添加剤を予備混合し、混合物をフィーダーno.1により、L/D=32の二軸スクリュー共回転押出機ZE25(Berstorff社)の主ポートに供給した。押出機の動作パラメータは以下のとおりである。
【0044】
バレル温度(供給端から排出端まで):160℃、180℃、200℃、200℃、210℃、220℃、230℃、ダイ-240℃である。
スクリュー回転速度:350rpm、
供給速度:12kg/hである。
【0045】
製造されたストランドを、Accrapak Systems Ltdのペレタイザー750/3でペレット化した。得られたペレットを循環空気オーブン(Heraeus Instruments社)において80℃で3時間乾燥させた。乾燥したペレットを、下記のように、Arburg社のAllrounder 500-150を用いて試験片に射出成形した。
【0046】
【表2】
【0047】
1.6mm厚さの試験片を用意した。試験片を23℃で1週間調整し、その後にそれらの特性を決定するためにいくつかの試験を行った。
【0048】
可燃性試験
ガスメタン動作可燃性フード内において、Underwriter-Laboratories標準のUL 94に従って、厚さ1.6mmの試験片に垂直燃焼を適用することにより、直接火炎試験を実施した。
【0049】
機械的試験
ASTM D256-81に従って、Instron Ceast 9050振り子衝撃システムを使用して、ノッチ付きアイゾット衝撃試験を実施した。
【0050】
実施例1~6(いずれも比較用)
臭素含有化合物、ジエチルホスフィン酸アルミニウム又は次亜リン酸金属塩のいずれか1つで難燃化されたABS

臭素含有難燃剤は、三酸化アンチモンを使用することなくABSの可燃性を低下させるために適用した。同様に、ABS中の唯一の難燃剤として、ジエチルホスフィン酸アルミニウム及び次亜リン酸金属塩を試験した。可燃性試験の組成物及び結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
この結果は、FR-245又はF-3020のいずれか1つによって供給された組成物中の16重量%臭素の量が、三酸化アンチモンが存在しない場合には不十分であるため、UL-94の等級を達成していないことを示している(実施例1及び2)。ABS中にFR-245のみを使用する場合に、UL-94 V-0/1.6 mm等級を得るためには、臭素の量を約22重量%に増やす必要があり、つまり、難燃剤の許容できないほど高い含有レベルが必要である(約33%、実施例3)。
【0053】
ジエチルホスフィン酸アルミニウム及び次亜リン酸金属塩に関しては、単独で使用する場合、ABSにおいて明らかに非効率的である(実施例4、5及び6)。それらはいずれもABSの可燃性を低下させ、約25重量%の含有レベルでもUL-94等級を達成することはできない。
【0054】
(本発明の)実施例7~11
臭素含有化合物(添加臭素濃度12重量%)及びAl((CPO
難燃化されたアンチモンを含まないABS

この一連の実施例に示すように、臭素含有難燃剤とジエチルホスフィン酸アルミニウムとの組み合わせにより、三酸化アンチモンが存在しなくても、UL-94 V-0/1.6mm等級に格付けされるABS組成物を得ることができる。この組成物に組み込んだ臭素化難燃剤の量は、組成物中の臭素濃度が、市販されている多くのアンチモン含有ABS配合物中の通常の臭素濃度である12重量%になるように調整した。
【0055】
【表4】
【0056】
かなり少量のAl((CPOを添加することにより、アンチモンが存在しないにもかかわらず、優れた難燃性を達成することができることがわかる(実施例7及び8)。さらに、これらの添加剤の総濃度を合理的な(6重量%)閾値に保持しながらAl((CPOの一部をAl(HPO又はCa(HPOに置き換えると、耐衝撃強度が向上する(実施例9及び10)。非常に少量のヒドロキノンのフェニルリン酸エステルを使用することで、[Al((CPO]+[Ca(HPO]+[HDP]≦6重量%という、6重量%の制限を超えずに良好な可燃性を維持すると共に、耐衝撃特性をさらに改善できる(実施例11)。
【0057】
実施例12~14
臭素含有化合物(添加臭素濃度10~11重量%)及びAl((CPO
で難燃化されたアンチモンを含まないABS

10%の臭素を含有レベルまで下げてUL-94 V-0/1.6mmに等級付けられたABS配合物は、強力な相乗剤である三酸化アンチモンが約4重量%の濃度で存在するため、市場で入手可能である。この一連の実施例では、本発明者らは、臭素の含有レベルが12重量%未満で、この配合物に三酸化アンチモンが完全に含まれていない場合に、ABSにおいて優れた可燃性を達成することに役立つ、{Al((CPO+Al(HPO}又は{Al((CPO+Ca(HPO}の組み合わせの能力を調査した。
【0058】
このABS配合物を製造し、これらの試験の結果を表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
{Al((CPO+Al(HPO}及び{Al((CPO+Ca(HPO}の混合物は、10~11%臭素含有ABS配合物からのアンチモンの完全な除去を効果的に補償し、課題に好適に対応していることがわかる。アンチモンを含まないABS配合物が少なくともUL-94 V-0/1.6 mm等級を達成できるように、これらの混合物を6重量%添加する(それぞれ実施例12及び13)。ポリジメチルシロキサンを添加することにより、UL-94 V-0/1.6 mmのABS配合物は、強化された耐衝撃強度を備えるように製造できる(実施例14)。
【0061】
実施例15
臭素含有化合物とAl((CPOとからなる組み合わせで
難燃化されたHIPS

HIPSは、三酸化アンチモンが存在しないが、Al((CPOが添加される場合、臭素含有化合物{トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-s-トリアジン、FR-245}により、効果的に難燃化できる。
【0062】
【表6】