(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】JAK阻害剤化合物を使用する処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20221005BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221005BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221005BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20221005BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221005BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221005BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221005BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20221005BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20221005BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221005BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221005BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61P27/02
A61P3/10
A61P27/04
A61P37/08
A61P11/00
A61P31/00
A61P33/00
A61P9/12
A61P35/00
A61K9/08
A61K9/14
(21)【出願番号】P 2019559282
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018030140
(87)【国際公開番号】W WO2018204233
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-25
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514190040
【氏名又は名称】セラヴァンス バイオファーマ アール&ディー アイピー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サラディー, ヴェンカット アール.
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ハオ
(72)【発明者】
【氏名】クラインシェック, メラニー エー.
(72)【発明者】
【氏名】クレーター, グレン ディー.
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/079205(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/014567(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/017178(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の眼疾患を処置するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含み、前記医薬組成物が前記哺乳動物の眼に投与されることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、またはアトピー性角結膜炎である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記眼疾患が、ブドウ膜炎または糖尿病性黄斑浮腫である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、注射によって投与されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
哺乳動物の眼疾患の処置に使用
するための組成物であって、化合物5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩を含む組成物。
【請求項6】
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、またはアトピー性角結膜炎である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
哺乳動物の眼疾患を処置するための医薬の製造での、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノールまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項8】
哺乳動物の呼吸器疾患を処置するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含み、前記呼吸器疾患が、肺感染症、蠕虫感染症、肺動脈性肺高血圧症、サルコイドーシス、リンパ管平滑筋腫症、気管支拡張症、または浸潤性肺疾患である、医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、吸入によって投与されることを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が、ネブライザ吸入器によって投与されることを特徴とする、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が、乾燥粉末吸入器によって投与されることを特徴とする、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
哺乳動物の呼吸器疾患を処置するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含み、前記呼吸器疾患が、薬物誘発性肺臓炎、真菌誘発性肺臓炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、レフレル症候群、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎、または免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎である、医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が、吸入によって投与されることを特徴とする、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物が、ネブライザ吸入器によって投与されることを特徴とする、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物が、乾燥粉末吸入器によって投与されることを特徴とする、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
哺乳動物の呼吸器疾患の処置
に使用
するための組成物であって、化合物5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩を含
み、前記呼吸器疾患が、肺感染症、蠕虫感染症、肺動脈性肺高血圧症、サルコイドーシス、リンパ管平滑筋腫症、気管支拡張症、または浸潤性肺疾患である、組成物。
【請求項17】
哺乳動物の呼吸器疾患の処置
に使用
するための組成物であって、化合物5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩を含
み、前記呼吸器疾患が、薬物誘発性肺臓炎、真菌誘発性肺臓炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、レフレル症候群、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎、または免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎である、組成物。
【請求項18】
哺乳動物の呼吸器疾患を処置するための医薬の製造での、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記呼吸器疾患が、肺感染症、蠕虫感染症、肺動脈性肺高血圧症、サルコイドーシス、リンパ管平滑筋腫症、気管支拡張症、または浸潤性肺疾患である使用。
【請求項19】
前記医薬が、吸入による投与に適している、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記医薬が、ネブライザ吸入器による投与に適している、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記医薬が、乾燥粉末吸入器による投与に適している、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
哺乳動物の呼吸器疾患を処置するための医薬の製造での、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノールまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記呼吸器疾患が、薬物誘発性肺臓炎、真菌誘発性肺臓炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、レフレル症候群、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎、または免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎である使用。
【請求項23】
前記医薬が、吸入による投与に適している、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記医薬が、ネブライザ吸入器による投与に適している、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記医薬が、乾燥粉末吸入器による投与に適している、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記組成物が、吸入による投与に適している、請求項16に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、ネブライザ吸入器による投与に適している、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が、乾燥粉末吸入器による投与に適している、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、吸入による投与に適している、請求項17に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が、ネブライザ吸入器による投与に適している、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物が、乾燥粉末吸入器による投与に適している、請求項30に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のJAK阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩を使用して、眼およびある特定の呼吸器疾患を処置するための方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、および腫瘍壊死因子を含む、細胞間シグナル伝達分子である。サイトカインは、正常な細胞成長および免疫調節に極めて重要であるが、免疫介在疾患も推進させ、悪性細胞の成長に寄与する。高レベルの多くのサイトカインは、多数の疾患または状態、特に炎症によって特徴付けられるような疾患の病理に関係づけられてきた。疾患に関与するサイトカインの多くは、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)ファミリーの転写因子を介して信号伝達する(signal)、ヤヌスファミリーのチロシンキナーゼ(JAK)に依存するシグナル伝達経路を通して作用する。
【0003】
JAKファミリーは、4つのメンバー、JAK1、JAK2、JAK3、およびチロシンキナーゼ2(TYK2)を含む。JAK依存性サイトカイン受容体へのサイトカインの結合は、受容体の二量体化を誘導し、その結果、JAKキナーゼ上のチロシン残基がリン酸化し、JAK活性化が生じる。次に、リン酸化JAKは、二量体化して細胞核に内部移行し、遺伝子転写を直接調節する様々なSTATタンパク質と結合しそれをリン酸化し、とりわけ炎症性疾患に関連付けられた下流効果をもたらす。JAKは通常、ホモ二量体またはヘテロ二量体として対になってサイトカイン受容体に会合する。特定のサイトカインは特定のJAK対合に会合する。JAKファミリーの4つのメンバーのそれぞれは、炎症に関連するサイトカインの少なくとも1つのシグナル伝達に関与する。
【0004】
炎症は、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、およびアトピー性角結膜炎を含む多くの眼疾患で、顕著な役割を演ずる。ブドウ膜炎は、多数の眼内炎症状態を包含し、しばしば自己免疫性であり、公知の感染誘発因子なく生ずる。この状態に、米国内で約200万人の患者が罹患していると推定される。一部の患者では、ブドウ膜炎に関連した慢性炎症が組織破壊をもたらし、米国内で5番目に多い失明の原因である。JAK-STAT経路を介して信号伝達するブドウ膜炎患者の眼において上昇したサイトカインには、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-23、およびIFN-γが含まれる。(HoraiおよびCaspi、JInterferon Cytokine Res、2011年、31巻、733~744頁;Ooiら、Clinical Medicine and Research、2006年、4巻、294~309頁)。ブドウ膜炎に関する既存の療法は次善のものであり、多くの患者は管理が不十分である。ステロイドは、しばしば有効であるが、白内障および眼圧上昇/緑内障に関連する。
【0005】
糖尿病性網膜症(DR)は、網膜内の血管に対する損傷によって引き起こされる。それは、糖尿病の人々の間での失明の最も一般的な原因である。血管新生ならびに炎症経路は、その疾患において重要な役割を演ずる。しばしば、DRは糖尿病患者における最も頻繁な失明の原因である糖尿病性黄斑浮腫(DME)へと進行する。この状態に、米国のみで約150万人の患者が罹患しており、その約20%が両眼を冒す疾患を有すると推定される。IL-6などのJAK-STAT経路を介して信号伝達するサイトカイン、ならびにIP-10およびMCP-1(あるいはCCL2と称する)などのその他のサイトカインは、それらの生成が部分的にはJAK-STAT経路シグナル伝達によって推進されるものであり、DR/DMEに関連した炎症において役割を演ずると考えられる(Abcouwer、J Clin Cell Immunol、2013年、補遺1、1~12頁;Sohnら、American Journal of Opthalmology、2011年、152巻、686~694頁; OwenおよびHartnett、CurrDiab Rep、2013年、13巻、476~480頁;Cheungら、Molecular Vision、2012年、18巻、830~837頁;Dongら、Molecular Vision、2013年、19巻、1734~1746頁;Funatsuら、Ophthalmology、2009年、116巻、73~79頁)。DMEに関する既存の療法は、次善のものであり:硝子体内抗VEGF処置は患者の一部にしか有効ではなく、ステロイドは白内障および眼圧上昇に関連付けられる。
【0006】
ドライアイ疾患(DED)は、米国内で約500万人の患者が罹患している多因子障害である。眼表面炎症は、この疾患の発生および蔓延で重要な役割を演ずると考えられる。高レベルのIL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、およびIFN-γなどのサイトカインが、DED患者の眼液中に示されており(Stevensonら、Arch Ophthalmol、2012年、130巻、90~100頁)、そのレベルはしばしば疾患の重症度に相関する。加齢黄斑変性およびアトピー性角結膜炎も、JAK-依存性サイトカインに関連すると考えられる。
炎症性疾患で上昇するサイトカインの数、および各サイトカインが特定のJAK対合に関連することを考慮すれば、眼疾患の処置のためにJAKファミリーの全てのメンバーに対する汎活性(pan-activity)を化学阻害剤に与えることが望ましいと考えられる。しかし、そのような阻害剤の広範な抗炎症効果は、正常な免疫細胞機能を抑制し、感染リスクの増加を潜在的にもたらす可能性がある。したがって、眼の中の作用部位に局所的に送達することができる阻害剤を提供し、それによって有害な全身免疫抑制の可能性を制限することが望ましいと考えられる。
2016年11月2日に出願された、本発明の譲受人に譲渡された米国出願第15/341,226号は、JAK阻害剤として有用なジアミノ化合物を開示している。特に、化合物5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(化合物1)
【化1】
は、強力な汎-JAK阻害剤としてこの出願に特に開示されている。この出願は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺炎、間質性肺疾患(特発性肺線維症を含む)、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、気腫、および閉塞性細気管支炎を含む呼吸器疾患の、特定の処置での、化合物1の様々な使用を開示している。しかし、この出願は、眼疾患を処置するための化合物1の使用は開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】HoraiおよびCaspi、J Interferon Cytokine Res、2011年、31巻、733~744頁
【文献】Ooiら、ClinicalMedicine and Research、2006年、4巻、294~309頁
【文献】Abcouwer、JClin Cell Immunol、2013年、補遺1、1~12頁
【文献】Sohnら、AmericanJournal of Opthalmology、2011年、152巻、686~694頁
【文献】OwenおよびHartnett、Curr Diab Rep、2013年、13巻、476~480頁
【文献】Cheungら、MolecularVision、2012年、18巻、830~837頁
【文献】Dongら、MolecularVision、2013年、19巻、1734~1746頁
【文献】Funatsuら、Ophthalmology、2009年、116巻、73~79頁
【文献】Stevensonら、Arch Ophthalmol、2012年、130巻、90~100頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、JAK阻害剤5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノールまたはその薬学的に許容される塩を使用して、眼疾患またはその症状を処置する方法に関する。
【0010】
一態様では、本発明は、ヒト患者の眼疾患を処置する方法であって、式
【化2】
の化合物5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(本明細書では以降、化合物1)、またはその薬学的に許容される塩を、患者の眼に投与することを含む方法を提供する。
【0011】
一態様では、眼疾患は、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、またはアトピー性角結膜炎である。特に、眼疾患は、ブドウ膜炎または糖尿病性黄斑浮腫である。
【0012】
別の態様では、本発明は、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(化合物1)またはその薬学的に許容される塩の医薬組成物を提供し、この医薬組成物は、患者の眼に直接投与するのに適している。
【0013】
本発明はさらに、ある特定の呼吸器疾患を処置するのに化合物1を使用する方法に関する。
【0014】
一態様では、本発明は、哺乳動物の呼吸器疾患を処置する方法であって、化合物1またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を、哺乳動物に投与することを含み、呼吸器疾患が、肺感染症、蠕虫感染症、肺動脈性肺高血圧症、サルコイドーシス、リンパ管平滑筋腫症、気管支拡張症、または浸潤性肺疾患である方法を提供する。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、哺乳動物の呼吸器疾患を処置する方法であって、化合物1またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を、哺乳動物に投与することを含み、呼吸器疾患が、薬物誘発性肺臓炎、真菌誘発性肺臓炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、レフレル症候群、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans organizing pneumonia)、または免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎である方法を提供する。
本発明では、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
哺乳動物の眼疾患を処置する方法であって、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を、前記哺乳動物の眼に投与することを含む、方法。
(項目2)
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、またはアトピー性角結膜炎である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記眼疾患が、ブドウ膜炎または糖尿病性黄斑浮腫である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記医薬組成物が、注射によって投与される、項目1に記載の方法。
(項目5)
哺乳動物の眼疾患の処置に使用される、化合物5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩。
(項目6)
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、またはアトピー性角結膜炎である、項目5に記載の化合物。
(項目7)
哺乳動物の眼疾患を処置するための医薬の製造での、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノールまたはその薬学的に許容される塩の使用。
(項目8)
哺乳動物の呼吸器疾患を処置する方法であって、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を、前記哺乳動物に投与することを含み、前記呼吸器疾患が、肺感染症、蠕虫感染症、肺動脈性肺高血圧症、サルコイドーシス、リンパ管平滑筋腫症、気管支拡張症、または浸潤性肺疾患である方法。
(項目9)
前記医薬組成物が、吸入によって投与される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記医薬組成物が、ネブライザ吸入器によって投与される、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記医薬組成物が、乾燥粉末吸入器によって投与される、項目9に記載の方法。
(項目12)
哺乳動物の呼吸器疾患を処置する方法であって、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を、前記哺乳動物に投与することを含み、前記呼吸器疾患が、薬物誘発性肺臓炎、真菌誘発性肺臓炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、レフレル症候群、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎、または免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎である方法。
(項目13)
前記医薬組成物が、吸入によって投与される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記医薬組成物が、ネブライザ吸入器によって投与される、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記医薬組成物が、乾燥粉末吸入器によって投与される、項目13に記載の方法。
(項目16)
哺乳動物の呼吸器疾患の処置で使用される、化合物5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩であって、前記呼吸器疾患が、肺感染症、蠕虫感染症、肺動脈性肺高血圧症、サルコイドーシス、リンパ管平滑筋腫症、気管支拡張症、または浸潤性肺疾患である化合物またはその塩。
(項目17)
哺乳動物の呼吸器疾患の処置で使用される、化合物5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩であって、前記呼吸器疾患が、薬物誘発性肺臓炎、真菌誘発性肺臓炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、レフレル症候群、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎、または免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎である化合物またはその塩。
(項目18)
哺乳動物の呼吸器疾患を処置するための医薬の製造での、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、またはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記呼吸器疾患が、肺感染症、蠕虫感染症、肺動脈性肺高血圧症、サルコイドーシス、リンパ管平滑筋腫症、気管支拡張症、または浸潤性肺疾患である使用。
(項目19)
前記医薬が、吸入による投与に適している、項目18に記載の使用。
(項目20)
前記医薬が、ネブライザ吸入器による投与に適している、項目19に記載の使用。
(項目21)
前記医薬が、乾燥粉末吸入器による投与に適している、項目19に記載の使用。
(項目22)
哺乳動物の呼吸器疾患を処置するための医薬の製造での、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノールまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記呼吸器疾患が、薬物誘発性肺臓炎、真菌誘発性肺臓炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、レフレル症候群、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎、または免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎である使用。
(項目23)
前記医薬が、吸入による投与に適している、項目22に記載の使用。
(項目24)
前記医薬が、ネブライザ吸入器による投与に適している、項目23に記載の使用。
(項目25)
前記医薬が、乾燥粉末吸入器による投与に適している、項目24に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0016】
化学構造を、本明細書では、ChemDrawソフトウェア(PerkinElmer,Inc.、Cambridge、MA)で実施されるようにIUPAC規則に従い命名する。
さらに、本発明の化合物の構造におけるテトラヒドロイミダゾピリジン部分(moiety)のイミダゾ部分(portion)は、互変異性型で存在する。化合物は、
【化3】
として等しく表すことができる。
【0017】
IUPAC規則によれば、これらの表現は、イミダゾピリジン部分の原子の異なる番号付けをもたらす。したがって、この構造は、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノールと表記される。構造が特定の型で図示されまたは命名されるが、本発明はそれらの互変異性体も含むことが理解されよう。
(定義)
【0018】
本発明について記述するとき、下記の用語は、他に指示しない限り下記の意味を有する。
【0019】
単数形の用語「a」、「an」、および「the」は、使用の文脈が他を明示しない限り、対応する複数形の用語を含む。
【0020】
「約」という用語は、指定された値の±5パーセントを意味する。
【0021】
「治療有効量」という用語は、処置を必要とする患者に投与したときに処置を行うのに十分な量、例えば、所望の治療効果を得るのに必要な量を意味する。
【0022】
「処置する」または「処置」という用語は、患者(特に、ヒト)の処置される医学的状態、疾患、もしくは障害(例えば、呼吸器疾患)を予防し、改善し、もしくは抑制すること、または医学的状態、疾患、もしくは障害の症状を軽減させることを意味する。
【0023】
「単位剤形」または「単位用量」という用語は、患者に投薬するのに適した物理的に別個の単位を意味し、即ち、各単位は、単独でまたは1つもしくは複数の追加の単位と組み合わせるかのいずれかで治療効果を生じるように計算された所定量の治療剤を含有する。例には、カプセル剤、錠剤などが含まれる。
【0024】
本明細書で使用されるその他全ての用語は、それらが属する当業者に理解されるような、それらの通常の意味を有するものとする。
【0025】
「薬学的に許容される」という用語は、患者に投与するのに許容されることを意味する(例えば、指定された用法に関して許容される安全性を有する)。
【0026】
「薬学的に許容される塩」という用語は、患者に投与するのに許容される、酸および塩基(両性イオンを含む)から調製された塩(例えば、所与の投薬計画に関して許容される安全性を有する塩)を意味する。
【0027】
代表的な薬学的に許容される塩には、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エジシル酸、フマル酸、ゲンチジン酸、グルコン酸、グルクロン酸(glucoronic acid)、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロト酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、およびキシナホ酸の塩などが含まれる。
【0028】
「それらの塩」という用語は、例えば、酸の水素が金属陽イオンまたは有機陽イオンなどの陽イオンによって置き換えられたときに形成された化合物を意味する。
(化合物1)
【0029】
本発明の方法は、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(化合物1)
【化4】
またはその薬学的に許容される塩を用いる。
【0030】
化合物1は、米国出願第15/341,226号または添付される実施例に記載されるように調製されてもよい。
【0031】
本発明の一態様では、化合物1は、有意な回折ピークを有する、とりわけ2θ値が6.20±0.20、9.58±0.20、17.53±0.20、19.28±0.20、および21.51±0.20である、粉末X線回折(PXRD)パターンによって特徴付けられる結晶質遊離塩基水和物の形で用いられる。結晶質水和物の調製も、米国出願第15/341,226号および以下の実施例に記載されている。
(医薬組成物)
【0032】
本発明の化合物、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(1)およびその薬学的に許容される塩は、医薬組成物または医薬製剤の形で、典型的には使用される。そのような医薬組成物は、有利には、口腔、吸入、光注入(optical injection)、局所(経皮を含む)、直腸、経鼻、および非経口の投与形態を含むがこれらに限定されない任意の許容される投与経路によって、患者に投与されてもよい。
【0033】
本発明で使用される医薬組成物は、典型的には、治療有効量の化合物1を含有する。しかし、当業者なら、医薬組成物は、治療有効量よりも多く、即ちバルク組成物を、または治療有効量未満、即ち治療有効量を実現するために複数回投与に向けて設計された個々の単位用量を含有していてもよいことが理解されよう。組成物および使用について論じる場合、化合物1を本明細書では「活性剤」と呼んでもよい。
【0034】
典型的には、医薬組成物は、例えば、約0.05から約30重量%、および約0.1から約10重量%の活性剤を含めて、約0.01から約95重量%の活性剤を含有する。
【0035】
任意の従来の担体または賦形剤を、本発明で利用される医薬組成物に使用してもよい。特定の担体もしくは賦形剤、または担体もしくは賦形剤の組合せの選択は、特定の患者または医学的状態のタイプまたは疾患状態を処置するのに使用される投与形態に依存する。これに関し、特定の投与形態に適した医薬組成物の調製は、十分に医薬分野の当業者の範囲内にある。さらに、本発明の医薬組成物に使用される担体または賦形剤は、市販されている。さらなる例として、従来の製剤技法は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、20版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(2000年)、およびH.C. Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、7版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(1999年)に記載されている。
【0036】
薬学的に許容される担体として働くことができる材料の代表的な例には、限定するものではないが、下記:ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;微結晶質セルロースなどのセルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、およびセルロースアセテート;粉末化トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐薬ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩液;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;および医薬組成物に用いられる、その他の無毒性の適合性の物質が含まれる。
【0037】
医薬組成物は、活性剤と薬学的に許容される担体および1種または複数種の任意選択の成分とを完全にかつ密接に混合しまたはブレンドすることによって、典型的には調製される。次いで、得られた均一にブレンドされた混合物を、従来の手順および器材を使用して、錠剤、カプセル剤、丸薬などに成形しまたは投入することができる。
【0038】
一態様では、医薬組成物は、眼注射に適している。この態様では、化合物は、滅菌水性懸濁剤または液剤として製剤化されてもよい。そのような水性製剤に含めてもよい有用な賦形剤には、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロース、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヒスチジン、α-α-トレハロース二水和物、スクロース、ポリソルベート20、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、およびリン酸ナトリウムが含まれる。ベンジルアルコールは防腐剤として働いてもよく、等張性を調節するのに塩化ナトリウムを含めてもよい。さらに、塩酸および/または水酸化ナトリウムを、pH調節のために溶液に添加してもよい。眼注射用の水性製剤は、防腐剤が入っていないものとして調製されてもよい。
【0039】
別の態様では、医薬組成物は、吸入投与に適している。吸入投与用の医薬組成物は、典型的には、エアロゾルまたは粉末の形態で存在する。そのような組成物は、乾燥粉末吸入器(DPI)、定量吸入器(MDI)、ネブライザ吸入器、または類似の送達デバイスなどの吸入器送達デバイスを使用して、一般に投与される。
【0040】
特定の実施形態では、医薬組成物は、乾燥粉末吸入器を使用する吸入によって投与される。そのような乾燥粉末吸入器は、吸息中に患者の気流中に分散される自由流動性粉末としての医薬組成物を、典型的には投与する。自由流動性粉末組成物を実現するために、治療剤は、ラクトース、デンプン、マンニトール、デキストロース、ポリ乳酸(PLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、またはこれらの組合せなどの適切な賦形剤で、典型的には製剤化される。典型的には、治療剤は、微細化され、適切な担体と組み合わせて、吸入に適した組成物に形成される。
【0041】
乾燥粉末吸入器で使用される代表的な医薬組成物は、ラクトース、および微細化形態の本発明の化合物を含む。そのような乾燥粉末組成物は、例えば、乾式粉砕ラクトースと治療剤とを組み合わせ、次いで成分を乾式ブレンドすることによって、作製することができる。次いで組成物を、乾燥粉末ディスペンサーに、または乾燥粉末送達デバイスと共に使用される吸入カートリッジもしくはカプセルに、典型的には投入する。
【0042】
吸入によって治療剤を投与するのに適した乾燥粉末吸入器送達デバイスは、当技術分野において記述されており、そのようなデバイスの例は市販されている。例えば、代表的な乾燥粉末吸入器送達デバイスまたは製品には、Aeolizer(Novartis);Airmax(IVAX);ClickHaler(Innovata Biomed);Diskhaler(GlaxoSmithKline);Diskus/Accuhaler(GlaxoSmithKline);Ellipta(GlaxoSmithKline);Easyhaler(Orion Pharma);Eclipse(Aventis);FlowCaps(Hovione);Handihaler(Boehringer Ingelheim);Pulvinal(Chiesi);Rotahaler(GlaxoSmithKline);SkyeHaler/Certihaler(SkyePharma);Twisthaler(Schering-Plough);Turbuhaler(AstraZeneca);Ultrahaler(Aventis)などが含まれる
【0043】
別の特定の実施形態では、医薬組成物は、定量吸入器を使用する吸入によって投与される。そのような定量吸入器は、圧縮推進ガスを使用して、測定された量の治療剤を典型的には放出する。したがって、定量吸入器を使用して投与される医薬組成物は、治療剤を液化噴射剤に加えた溶液または懸濁液を、典型的には含む。1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134a)および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン(HFA 227)などのヒドロフルオロアルカン(HFA)、およびCCl3Fなどのクロロフルオロカーボンを含む、任意の適切な液化噴射剤が用いられてもよい。特定の実施形態では、噴射剤がヒドロフルオロアルカンである。一部の実施形態では、ヒドロフルオロアルカン製剤は、エタノールもしくはペンタンなどの共溶媒、および/またはトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、レシチン、およびグリセリンなどの界面活性剤を含有する。
【0044】
定量吸入器で使用される代表的な医薬組成物は、本発明の化合物を約0.01%から約5重量%、約0%から約20重量%のエタノール、および約0%から約5重量%の界面活性剤を含み、残りはHFA噴射剤である。そのような組成物は、冷やしたまたは加圧されたヒドロフルオロアルカンを、治療剤、エタノール(存在する場合)、および界面活性剤(存在する場合)が入っている適切な容器に加えることによって、典型的には調製される。懸濁剤を調製するには、治療剤を微細化し、次いで噴射剤と組み合わせる。次いで組成物をエアロゾルキャニスタに投入し、これは、定量吸入器デバイスの一部を典型的には形成する。
【0045】
吸入によって治療剤を投与するのに適した定量吸入器デバイスは、当技術分野で記述され、そのようなデバイスの例は、市販されている。例えば、代表的な定量吸入器デバイスまたは製品には、AeroBid吸入器システム(Forest Pharmaceuticals);Atrovent吸入エアロゾル(Boehringer Ingelheim);Flovent(GlaxoSmithKline);Maxair吸入器(3M);Proventil吸入器(Schering);Serevent吸入エアロゾル(GlaxoSmithKline)などが含まれる。
【0046】
別の特定の態様では、医薬組成物は、ネブライザ吸入器を使用する吸入によって投与される。そのようなネブライザデバイスは、患者の気道内に運ばれるミストとして医薬組成物を噴霧させる高速空気流を、典型的には生成する。したがって、ネブライザ吸入器で使用するために製剤化されたとき、治療剤は適切な担体に溶解して溶液を形成することができる。あるいは、治療剤は、微細化しまたはナノミリングしかつ適切な担体を組み合わせて懸濁剤を形成することができる。
【0047】
ネブライザ吸入器で使用される代表的な医薬組成物は、約0.05μg/mLから約20mg/mLの本発明の化合物、および霧状にした製剤に適合性の賦形剤を含む、液剤または懸濁剤を含む。一実施形態では、液剤は約3から約8のpHを有する。
【0048】
吸入によって治療剤を投与するのに適したネブライザデバイスは、当技術分野で記述されており、そのデバイスの例は市販されている。例えば、代表的なネブライザデバイスまたは製品には、Respimat Softmist吸入器(Boehringer Ingelheim);AERx肺送達システム(Aradigm Corp.);PARI LC Plus再使用可能ネブライザ(Pari GmbH)などが含まれる。
【0049】
さらに別の態様では、本発明の医薬組成物は、代わりに経口投与を意図した剤形に調製されてもよい。経口投与に適した医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、丸薬、ロゼンジ剤、カシェ剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤の形をとってもよく、または水性もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤として、または水中油もしくは油中水液体エマルジョンとして、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤などとしてであってもよく、それぞれは、所定量の本発明の化合物を、活性成分として含有してよい。
【0050】
固体剤形での経口投与が意図されるとき、本発明の医薬組成物は、活性剤および1種または複数種の薬学的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムを、典型的には含む。必要に応じてまたは代替として、そのような固体剤形は:充填剤または増量剤、結合剤、保湿剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤、滑沢剤、着色剤、および緩衝剤を含んでいてもよい。剥離剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味料、着香および芳香剤、防腐剤、および抗酸化剤も、本発明の医薬組成物中に存在させることができる。
【0051】
代替の製剤は、制御放出製剤、経口投与用の液体剤形、経皮パッチ、および非経口製剤を含んでいてもよい。そのような代替の製剤を調製する従来の賦形剤および方法は、例えば上掲のRemingtonによる参考文献に記載されている。
【0052】
下記の非限定的な例は、本発明の代表的な医薬組成物を示す。
(眼注射用の水性製剤)
【0053】
滅菌水性懸濁液の各mLは、5mgから50mgの化合物1、等張性用の塩化ナトリウム、防腐剤としての0.99%(w/v)のベンジルアルコール、0.75%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、および0.04%のポリソルベートを含む。水酸化ナトリウムまたは塩酸は、pHを5から7.5に調整するのに含めてもよい。
(眼注射用の水性製剤)
【0054】
滅菌の防腐剤を含まない水性懸濁剤は、5mg/mLから50mg/mLの化合物1を、10mMのリン酸ナトリウム、40mMの塩化ナトリウム、0.03%のポリソルベート20、および5%のスクロース中に含む。
(乾燥粉末組成物)
【0055】
微細化化合物1(1g)を、ミリングしたラクトース(25g)とブレンドする。次いでこのブレンドされた混合物を、剥離可能なブリスタパックの個々のブリスタ内に、用量当たり約0.1mgから約4mgの間の式Iの化合物を得るのに十分な量で投入する。ブリスタの内容物は、乾燥粉末吸入器を使用して投与される。
(乾燥粉末組成物)
【0056】
微細化化合物1(1g)を、ミリングされたラクトース(20g)とブレンドして、化合物の、ミリングされたラクトースに対する重量比が1:20であるバルク組成物を形成する。ブレンドされた組成物を、用量当たり約0.1mgから約4mgの間の式Iの化合物を送達することが可能な乾燥粉末吸入デバイスに充填する。
(定量吸入器組成物)
【0057】
微細化化合物1(10g)を、レシチン(0.2g)を脱塩水(200mL)に溶解することによって調製された溶液中に分散させる。得られた懸濁液を噴霧乾燥し、次いで微細化して、約1.5μm未満の平均直径を有する粒子を含む微細化組成物を形成する。次いで微細化組成物を、加圧された1,1,1,2-テトラフルオロエタンが入っている定量吸入器のカートリッジに、この定量吸入器により投与される場合に用量当たり約0.1mgから約4mgの式Iの化合物を得るのに十分な量で投入する。
(ネブライザ組成物)
【0058】
化合物1(25mg)を、1.5~2.5当量の塩酸を含有する溶液に溶解し、その後、pHを3.5から5.5に調整するための水酸化ナトリウム、および3重量%のグリセロールを添加する。溶液を、全ての成分が溶解するまで十分撹拌する。溶液は、用量当たり約0.1mgから約4mgの式Iの化合物を提供するネブライザデバイスを使用して投与する。
(有用性)
【0059】
本発明の化合物、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(化合物1)は、JAKファミリーの酵素:JAK1、JAK2、JAK3、およびTYK2の強力な阻害剤であることが示されている。
(眼疾患)
【0060】
多くの眼疾患は、JAK-STAT経路に依拠する炎症誘発性サイトカインの上昇と関連することが示されている。本発明の化合物は、4種全てのJAK酵素で強力な阻害を示すので、JAKを介して信号伝達する数多くのサイトカイン(IL-6、IL-2、およびIFN-γなど)のシグナル伝達および病原性作用を強力に阻害すること、ならびにその生成がJAK-STAT経路シグナル伝達により推進されるその他のサイトカイン(MCP-1およびIP-10など)の増加を予防することが期待される。
【0061】
特に本発明の化合物は、6.7またはそれよりも大きいpIC50値(IC50値が200nMまたはそれよりも低い)を、サイトカイン上昇の下流効果の阻害を記録するアッセイも含めたアッセイ3から7に記述される細胞アッセイでのIL-2、IL-4、IL-6、およびIFNγシグナル伝達の阻害に関して示した。
【0062】
アッセイ8の薬物動態研究は、1回の硝子体内注射後のウサギの眼内での持続曝露と、硝子体組織で観察されたものよりも少なくとも3桁低い血漿中濃度とを実証した。
【0063】
さらに、本発明の化合物の硝子体内投薬は、ラットの網膜/脈絡膜組織でのIL-6誘導性pSTAT3の有意な阻害、同様に、ウサギの硝子体ならびに網膜/脈絡膜組織でのIFN-γ誘導性IP-10の有意な阻害を実証してきた。
【0064】
有意な全身レベルが存在しない状態での持続的な眼のJAK阻害は、全身に促される有害作用なしに、強力な局所的抗炎症活性を眼にもたらすと予測される。本発明の化合物は、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、およびアトピー性角結膜炎を含むがこれらに限定されないいくつかの眼疾患において、有益であることが予測される。
【0065】
特に、ブドウ膜炎(HoraiおよびCaspi、J Interferon Cytokine Res、2011年、31巻、733~744頁)、糖尿病性網膜症(Abcouwer、J Clin Cell Immunol、2013年、補遺1、1~12頁)、糖尿病性黄斑浮腫(Sohnら、American Journal of Opthamology、2011年、152巻、686~694頁)、ドライアイ疾患(Stevensonら、Arch Ophthalmol、2012年、130巻、90~100頁)、および加齢黄斑変性(Knickelbeinら、Int Ophthalmol Clin、2015年、55巻(3号)、63~78頁)は、JAK-STAT経路を介して信号伝達するある特定の炎症誘発性サイトカインの上昇によって特徴付けられる。したがって本発明の化合物は、関連する眼炎症を軽減し、かつ疾患の進行を反転させ、または症状緩和をもたらすことが可能であり得る。
【0066】
網膜静脈閉塞症(RVO)は、高度に蔓延している視覚障害疾患である。網膜血流の閉塞は、網膜脈管構造の損傷、出血、および組織虚血をもたらし得る。RVOの原因は多因子的であり、血管メディエーターならびに炎症性メディエーターが共に重要であることが示されている(Deobhaktaら、International Journal ofInflammation、2013年、論文ID438412)。IL-6およびIL-13などのJAK-STAT経路を介して信号伝達するサイトカイン、ならびにその生成がJAK-STAT経路シグナル伝達によって部分的には推進されるMCP-1などのその他のサイトカインは、RVO患者の眼組織で高レベルで検出されてきた(Shchukoら、Indian Journal of Ophthalmology、2015年、63巻(12号)、905~911頁)。したがって、化合物1は、関連する眼炎症を軽減し、かつ疾患の進行を反転させ、またはこの疾患の症状緩和をもたらすことが可能であり得る。多くのRVO患者が光凝固によって処置されるが、これは本質的に破壊的な療法である。抗VEGF剤も使用されるが、それらは一部の患者に有効なだけである。眼の炎症レベルを低減させるステロイド薬物治療(トリアムシノロンアセトニドおよびデキサメタゾン移植)は、ある特定の形のRVOの患者に有益な結果を提供することも示されてきたが、それらは白内障、および眼圧上昇/緑内障を引き起こすことも示されてきた。
【0067】
したがって一態様では、本発明は、哺乳動物の眼疾患を処置する方法であって、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノールまたはその薬学的に許容される塩を、哺乳動物の眼に投与することを含む方法を提供する。一態様では、眼疾患がブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、またはアトピー性角結膜炎である。一態様では、方法は、硝子体内注射によって本発明の化合物を投与することを含む。
(呼吸器疾患)
【0068】
本発明の化合物、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(1)は、T細胞活性化の阻害、炎症に関連したサイトカインの阻害、およびげっ歯類の肺好酸球増加および好中球増加アッセイにおける活性を、実証してきた。したがって化合物は、ある特定の呼吸器疾患の処置に有用であると考えられる。
【0069】
好酸球性気道炎症は、好酸球性肺疾患とまとめて呼ばれる疾患の特徴的フィーチャである(Cottinら、Clin. Chest. Med.、2016年、37巻(3号)、535~56頁)。好酸球性疾患は、IL-4、IL-13、およびIL-5シグナル伝達に関連付けられている。好酸球性肺疾患は、感染症(特に蠕虫感染症)、薬物誘発性肺臓炎(例えば、抗生物質、フェニトイン、またはl-トリプトファンなどの治療薬物によって誘発される)、真菌誘発性肺臓炎(例えば、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)、過敏性肺臓炎、および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(以前は、チャーグ・ストラウス症候群として公知)を含む。未知の病因の好酸球性肺疾患には、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、およびレフレル症候群が含まれる。化合物1は、アッセイ13のげっ歯類気道モデルで肺好酸球を有意に低減させること、および細胞アッセイでのIL-13、IL-4、およびIL-2のシグナル伝達を強力に阻害することが示されてきた。
【0070】
IL-6遺伝子の多形性は、高いIL-6レベル、および肺動脈性肺高血圧症(PAH)を発生させる増大したリスクに関連していた(Fangら、J Am Soc Hypertens.、Interleukin-6 -572C/G polymorphism is associated with seruminterleukin-6 levels and risk of idiopathic pulmonary arterial hypertension、2017年、印刷発行前)。PAHにおけるIL-6の役割が裏付けられ、IL-6受容体鎖gp130の阻害はPAHのラットモデルでの疾患を改善した(Huangら、Can J Cardiol.、2016年、32巻(11号)、1356.e1~1356.e10)。本発明の化合物は、IL-6シグナル伝達を阻害することが示されている。
【0071】
IFNγ、IL-12、およびIL-6などのサイトカインは、サルコイドーシスおよびリンパ管平滑筋腫症などの、ある範囲の非アレルギー性肺疾患に関与していた(El-Hashemiteら、Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.、2005年、33巻、227~230頁、およびEl-Hashemiteら、Cancer Res.、2004年、64巻、3436~3443頁)。本発明の化合物は、IL-6およびIFNγシグナル伝達を阻害することも示されている。
【0072】
気管支拡張症および浸潤性肺疾患は、慢性好中球性炎症を伴う疾患である。本発明の化合物は、げっ歯類モデルの気道好中球増加を阻害することが示されてきた。
【0073】
病理的T細胞活性化は、複数の呼吸器疾患の病因において極めて重要である。自己反応性T細胞は、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎(COP[特発性器質化肺炎]とも呼ばれる)において、ある役割を演ずる。より最近では、免疫チェックポイント阻害剤が肺臓炎を誘発し、別のT細胞媒介性肺疾患は、免疫チェックポイント阻害剤の使用の増加により出現した。これらのT細胞刺激剤で処置したがん患者では、致命的な肺臓炎が発生する可能性がある。本発明の化合物は、ヒト末梢血単核細胞から単離されたT細胞での活性化を阻害することが示されている。
【0074】
したがって一態様では、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)の呼吸器疾患を処置する方法であって、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノールもしくはその薬学的に許容される塩、または薬学的に許容される担体および本発明の化合物を含む医薬組成物、またはその薬学的に許容される塩を、哺乳動物に投与することを含み、呼吸器疾患が、肺感染症、蠕虫感染症、肺動脈性肺高血圧症、サルコイドーシス、リンパ管平滑筋腫症、気管支拡張症、または浸潤性肺疾患である方法を提供する。
【0075】
別の態様では、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)の呼吸器疾患を処置する方法であって、本発明の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または薬学的に許容される担体および本発明の化合物を含む医薬組成物、またはそれらの薬学的に許容される塩を、哺乳動物に投与することを含み、呼吸器疾患が、薬物誘発性肺臓炎、真菌誘発性肺臓炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、レフレル症候群、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎、または免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎である方法を提供する。
【0076】
JAK-シグナル伝達サイトカインは、T細胞、多くの免疫プロセスの中核をなす免疫細胞のサブタイプの活性化において、主な役割も演ずる。病理的T細胞活性化は、複数の呼吸器疾患の病因において極めて重要である。自己反応性T細胞は、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎(COSとも呼ぶ)において、ある役割を演ずる。COSと同様に、肺移植拒絶反応の病因は、移植されたドナーの肺によるレシピエントT細胞の異常なT細胞活性化に関連付けられる。肺移植拒絶反応は、一次移植不全(PGD)、器質化肺炎(OP)、急性拒絶反応(AR)、もしくはリンパ球性細気管支炎(LB)のように早期に生じる可能性があり、または慢性肺同種移植不全(CLAD)のように肺移植から何年も後に生じる可能性がある。CLADは、閉塞性細気管支炎(BO)として既に公知であるが、現在は、BO、拘束性CLAD(rCLADまたはRAS)、および好中球性同種移植不全を含む種々の病理的徴候を有し得る症候群と見なされる。慢性肺同種移植不全(CLAD)は、移植された肺の機能を徐々に失わせるので、肺移植レシピエントの長期管理における主な課題である(Gauthierら、Curr Transplant Rep.、2016年、3巻(3号)、185~191頁)。CLADは、処置に対する応答が不十分であり、したがって、この状態を予防または処置することが可能な、有効な化合物が未だに求められている。IFN-γおよびIL-5などのいくつかのJAK-依存性サイトカインは、CLADおよび肺移植拒絶反応で上方制御される(Berasteguiら、Clin Transplant. 2017年、31巻、e12898)。さらに、JAK-依存性IFNシグナル伝達の下流にある、CXCL9およびCXCL10などのCXCR3ケモカインの高い肺レベルは、肺移植患者の悪化する結果に関連する(Shinoら、PLOS One、2017年、12巻(7号)、e0180281)。全身性JAK阻害は、腎臓移植拒絶反応で有効であることが示されている(Vicentiら、American Journal of Transplantation、2012年、12巻、2446~56頁)。したがってJAK阻害剤は、肺移植拒絶反応およびCLADを処置しまたは予防するのに有効である潜在性を有する。肺移植拒絶反応の根拠として記述される類似のT細胞活性化事象も、造血幹細胞移植後に生じる可能性のある肺移植片対宿主疾患(GVHD)の主な駆動因子と見なされる。CLADと同様に、肺GVHDは、極めて不十分な結果になる慢性の進行性状態であり、どの処置も現在認可されていない。サルベージ療法として全身JAK阻害剤ルキソリチニブを受けたステロイド難治性急性または慢性GVHDの95名の患者の遡及的な多施設調査研究は、肺GVHDを持つ患者を含む大多数の患者において、ルキソリチニブに対する完全なまたは部分的な応答を実証した(Zeiserら、Leukemia、2015年、29巻、10号、2062~68頁)。全身JAK阻害は、深刻な有害事象および小さい治療指数に関連するので、肺移植拒絶反応または肺GVHDを予防および/または処置するための、吸入型肺指向性非全身JAK阻害剤が未だに求められている。
【0077】
したがって、本開示はさらに、哺乳動物における上記の追加の呼吸器状態を処置する方法であって、化合物1またはその薬学的に許容される塩を、哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
(胃腸炎症性疾患)
【0078】
JAK阻害剤として、化合物1またはその薬学的な塩は、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎、汎大腸炎、潰瘍性直腸炎、および左側結腸炎)、クローン病、膠原性大腸炎、リンパ球性大腸炎、ベーチェット病、セリアック病、免疫チェックポイント阻害剤誘発性大腸炎、回腸炎、好酸球性食道炎、移植片対宿主疾患関連大腸炎、および感染性大腸炎を含むがこれらに限定されない胃腸炎症性疾患を処置するのに有用であり得る。潰瘍性大腸炎(Reimundら、J Clin Immunology、1996年、16巻、144~150頁)、クローン病(Woywodtら、Eur J Gastroenterology Hepatology、1999年、11巻、267~276頁)、膠原性大腸炎(Kumawatら、Mol Immunology、2013年、55巻、355~364頁)、リンパ球性大腸炎(Kumawatら、2013年)、好酸球性食道炎(Weinbrand-Goichbergら、Immunol Res、2013年、56巻、249~260頁)、移植片対宿主疾患関連大腸炎(Coghillら、Blood、2001年、117巻、3268~3276頁)、感染性大腸炎(Stallmachら、Int J Colorectal Dis、2004年、19巻、308~315頁)、ベーチェット病(Zhouら、Autoimmun Rev、2012年、11巻、699~704頁)、セリアック病(de Nittoら、World J Gastroenterol、2009年、15巻、4609~4614頁)、免疫チェックポイント阻害剤誘発性大腸炎(例えば、CTLA-4阻害剤誘発性大腸炎;(Yanoら、J Translation Med、2014年、12巻、191頁)、PD-1-またはPD-L1阻害剤誘発性大腸炎)、および回腸炎(Yamamotoら、Dig Liver Dis、2008年、40巻、253~259頁)は、ある特定の炎症誘発性サイトカイレベルの上昇によって特徴付けられる。多くの炎症誘発性サイトカインはJAK活性化を介して信号伝達するので、本出願に記述される化合物は、炎症を軽減させることができかつ症状緩和をもたらすことができ得る。
(炎症性皮膚疾患)
【0079】
アトピー性皮膚炎およびその他の炎症性皮膚疾患は、JAK-STAT経路に依拠する炎症誘発性サイトカインの上昇を伴っていた。したがって、化合物1またはその薬学的な塩は、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、白斑、乾癬、皮膚筋炎、皮膚T細胞リンパ腫(Netchiporoukら、Cell Cycle. 2014年、13巻、3331~3335頁)およびサブタイプ(セザリー症候群、菌状息肉腫、パジェット様細網症、肉芽腫様弛緩皮膚、リンパ腫様丘疹症、慢性苔癬様粃糠疹、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、CD30+皮膚T細胞リンパ腫、二次皮膚CD30+大細胞リンパ腫、非菌状息肉腫CD30-皮膚大T細胞リンパ腫、多形性T細胞リンパ腫、レンネルトリンパ腫、皮下T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫)、結節性痒疹、扁平苔癬、一次局所皮膚アミロイドーシス、水疱性類天疱瘡、移植片対宿主疾患の皮膚症状、類天疱瘡、円板状ループス、環状肉芽腫、慢性単純性苔癬、外陰/陰嚢/肛門周囲掻痒、硬化性苔癬、ヘルペス後鎮痙痛掻痒、毛孔性扁平苔癬、および禿髪性毛包炎を含むがこれらに限定されない、いくつかの皮膚炎症または掻痒状態に有益となり得る。特に、アトピー性皮膚炎(Baoら、JAK-STAT、2013年、2巻、e24137)、円形脱毛症(Xingら、Nat Med. 2014年、20巻、1043~1049頁)、白斑(Craiglowら、JAMA Dermatol. 2015年、151巻、1110~1112頁)、結節性痒疹(Sonkolyら、J Allergy Clin Immunol. 2006年、117巻、411~417頁)、扁平苔癬(Welz-Kubiakら、J Immunol Res. 2015年、ID:854747)、一次局所皮膚アミロイドーシス(Tanakaら、Br J Dermatol. 2009年、161巻、1217~1224頁)、水疱性類天疱瘡(Felicianiら、Int J Immunopathol Pharmacol. 1999年、12巻、55~61頁)、および移植片対宿主疾患の皮膚症状(Okiyamaら、J Invest Dermatol. 2014年、134巻、992~1000頁)は、JAK活性化を介して信号伝達するある特定のサイトカインの上昇によって特徴付けられる。したがって、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、これらのサイトカインによって推進される関連ある皮膚炎症または掻痒を軽減することを可能にし得る。
(その他の疾患)
【0080】
化合物1またはその薬学的に許容される塩は、その他の炎症性疾患、自己免疫疾患、またはがんなどの、その他の疾患を処置するのに有用であり得る。化合物1またはその薬学的に許容される塩は、関節炎、リウマチ様関節炎、若年性関節リウマチ、移植拒絶反応、眼球乾燥、乾癬性関節炎、糖尿病、インスリン依存性糖尿病、運動ニューロン疾患、脊髄異形成症候群、疼痛、サルコペニア、悪液質、敗血症性ショック、全身性エリテマトーデス、白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、強直性脊椎炎、骨髄線維症、B細胞リンパ腫、肝細胞癌、ホジキン病、乳がん、多発性骨髄腫、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣明細胞癌、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、真性多血症、シェーグレン症候群、軟部組織肉腫、肉腫、脾腫、T細胞リンパ腫、および重症型地中海貧血の1つまたは複数を処置するのに有用であり得る。
(併用療法)
【0081】
本開示の化合物1またはその薬学的に許容される塩は、疾患を処置するのに同じメカニズムによってまたは異なるメカニズムによって作用する1種または複数種の薬剤と組み合わせて使用されてもよい。異なる薬剤は、逐次的にまたは同時に、別々の組成物でまたは同じ組成物で投与されてもよい。併用療法に有用な種類の薬剤には、ベータ2アドレナリン作用性受容体アゴニスト、ムスカリン性受容体アンタゴニスト、グルココルチコイドアゴニスト、Gタンパク質共役受容体-44アンタゴニスト、ロイコトリエンD4アンタゴニスト、ムスカリン性M3受容体アンタゴニスト、ヒスタミンH1受容体アンタゴニスト、免疫グロブリンEアンタゴニスト、PDE4阻害剤、IL-4アンタゴニスト、ムスカリン性M1受容体アンタゴニスト、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、IL-5アンタゴニスト、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、ベータアドレナリン作用性受容体アゴニスト、CCR3ケモカインアンタゴニスト、CFTR刺激因子、免疫グロブリン修飾因子、インターロイキン33リガンド阻害剤、PDE3阻害剤、ホスホイノシチド-3キナーゼデルタ阻害剤、トロンボキサンA2アンタゴニスト、エラスターゼ阻害剤、Kitチロシンキナーゼ阻害剤、トリコトリエンE4アンタゴニスト、ロイコトリエンアンタゴニスト、PGD2アンタゴニスト、TNFアルファリガンド阻害剤、TNF結合剤、補体カスケード阻害剤、エオタキシンリガンド阻害剤、グルタチオンレダクターゼ阻害剤、ヒスタミンH4受容体アンタゴニスト、IL-6アンタゴニスト、IL2遺伝子刺激因子、免疫グロブリンガンマFc受容体IIB修飾因子、インターフェロンガンマリガンド、インターロイキン13リガンド阻害剤、インターロイキン17リガンド阻害剤、L-セレクチンアンタゴニスト、白血球エラスターゼ阻害剤、ロイコトリエンC4アンタゴニスト、ロイコトリエンC4シンターゼ阻害剤、膜銅アミンオキシダーゼ阻害剤、メタロプロテアーゼ-12阻害剤、メタロプロテアーゼ-9阻害剤、ダニアレルゲン修飾因子、ムスカリン性受容体修飾因子、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、核因子カッパB阻害剤、p-セレクチンアンタゴニスト、PDE5阻害剤、PDGF受容体アンタゴニスト、ホスホイノシチド-3キナーゼガンマ阻害剤、TLR-7アゴニスト、TNFアンタゴニスト、Ablチロシンキナーゼ阻害剤、アセチルコリン受容体アンタゴニスト、酸性哺乳動物キチナーゼ阻害剤、ACTH受容体アゴニスト、アクチン重合修飾因子、アデノシンA1受容体アンタゴニスト、アデニル酸シクラーゼ刺激因子、アドレナリン作用性受容体アンタゴニスト、副腎皮質刺激ホルモンリガンド、アルコールデヒドロゲナーゼ5阻害剤、アルファ1抗トリプシン刺激因子、アルファ1プロテイナーゼ阻害剤、アンドロゲン受容体修飾因子、アンギオテンシン変換酵素2刺激因子、ANPアゴニスト、Bcrタンパク質阻害剤、ベータ1アドレナリン作用性受容体アンタゴニスト、ベータ2アドレナリン作用性受容体アンタゴニスト、ベータ2アドレナリン作用性受容体修飾因子、ベータアミロイド修飾因子、BMP10遺伝子阻害剤、BMP15遺伝子阻害剤、カルシウムチャネル阻害剤、カテプシンG阻害剤、CCL26遺伝子阻害剤、CCR3ケモカイン修飾因子、CCR4ケモカインアンタゴニスト、細胞接着分子阻害剤、シャペロニン刺激因子、キチナーゼ阻害剤、コラーゲンIアンタゴニスト、補体C3阻害剤、CSF-1アンタゴニスト、CXCR2ケモカインアンタゴニスト、サイトカイン受容体共通ベータ鎖修飾因子、細胞毒性Tリンパ球タンパク質-4刺激因子、デオキシリボヌクレアーゼI刺激因子、デオキシリボヌクレアーゼ刺激因子、ジペプチジルペプチターゼI阻害剤、DNAギラーゼ阻害剤、DPプロスタノイド受容体修飾因子、E-セレクチンアンタゴニスト、EGFRファミリーチロシンキナーゼ受容体阻害剤、エラスチン修飾因子、エンドセリンET-Aアンタゴニスト、エンドセリンET-Bアンタゴニスト、エポキシドヒドロラーゼ阻害剤、FGF3受容体アンタゴニスト、Fynチロシンキナーゼ阻害剤、GATA3転写因子阻害剤、グルコシルセラミダーゼ修飾因子、グルタミン酸受容体修飾因子、GM-CSFリガンド阻害剤、グアニル酸シクラーゼ刺激因子、H+K+ATPase阻害剤、ヘモグロビン修飾因子、ヘパリンアゴニスト、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ-2刺激因子、HMG CoAレダクターゼ阻害剤、I-カッパBキナーゼベータ阻害剤、ICAM1遺伝子阻害剤、IL-17アンタゴニスト、IL-17受容体修飾因子、IL-23アンタゴニスト、IL-4受容体修飾因子、免疫グロブリンG修飾因子、免疫グロブリンG1アゴニスト、免疫グロブリンG1修飾因子、免疫グロブリンイプシロンFc受容体IAアンタゴニスト、免疫グロブリンガンマFc受容体IIBアンタゴニスト、免疫グロブリンカッパ修飾因子、インスリン増感剤、インターフェロンベータリガンド、インターロイキン1様受容体アンタゴニスト、インターロイキン18リガンド阻害剤、インターロイキン受容体17Aアンタゴニスト、インターロイキン-1ベータリガンド阻害剤、インターロイキン-5リガンド阻害剤、インターロイキン-6リガンド阻害剤、KCNA電位依存性カリウムチャネル-3阻害剤、キットリガンド阻害剤、ラミニン-5アゴニスト、ロイコトリエンCysLT1受容体アンタゴニスト、ロイコトリエンCysLT2受容体アンタゴニスト、LOXL2遺伝子阻害剤、Lynチロシンキナーゼ阻害剤、MARCKSタンパク質阻害剤、MDR関連タンパク質4阻害剤、メタロプロテアーゼ-2修飾因子、メタロプロテアーゼ-9修飾因子、ミネラロコルチコイド受容体アンタゴニスト、ムスカリン性M2受容体アンタゴニスト、ムスカリン性M4受容体アンタゴニスト、ムスカリン性M5受容体アンタゴニスト、ナトリウム利尿ペプチド受容体Aアゴニスト、ナチュラルキラー細胞受容体修飾因子、ニコチン性ACh受容体アルファ7サブユニット刺激因子、NK細胞受容体修飾因子、核因子カッパB修飾因子、オピオイド成長因子受容体アゴニスト、P-糖タンパク質阻害剤、P2X3プリン受容体アンタゴニスト、p38 MAPキナーゼ阻害剤、ペプチダーゼ1修飾因子、ホスホリパーゼA2阻害剤、ホスホリパーゼC阻害剤、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤1阻害剤、血小板活性化因子受容体アンタゴニスト、PPARガンマアゴニスト、プロスタサイクリンアゴニスト、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、SH2ドメインイノシトールホスファターゼ1刺激因子、シグナル伝達阻害剤、ナトリウムチャネル阻害剤、STAT-3修飾因子、幹細胞抗原-1阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼ修飾因子、T細胞表面糖タンパク質CD28阻害剤、T細胞表面糖タンパク質CD8阻害剤、TGFベータアゴニスト、TGFベータアンタゴニスト、トロンボキサンシンセターゼ阻害剤、胸腺間質リンホプロテインリガンド阻害剤、チモシンアゴニスト、チモシンベータ4リガンド、TLR-8アゴニスト、TLR-9アゴニスト、TLR9遺伝子刺激因子、トポイソメラーゼIV阻害剤、トロポニンI速骨格筋刺激因子、トロポニンT速骨格筋刺激因子、I型IL-1受容体アンタゴニスト、II型TNF受容体修飾因子、イオンチャネル修飾因子、ウテログロビン刺激因子、およびVIPアゴニストが含まれるがこれらに限定するものではない。
【0082】
本発明のJAK阻害剤化合物1と組み合わせて使用され得る特定の薬剤には、酢酸ロシプトール(rosiptor acetate)、臭化ウメクリジニウム、セクキヌマブ、酢酸メテンケファリン、酢酸トリデカクチド、プロピオン酸フルチカゾン、アルファ-シクロデキストリン安定化スルホラファン、テゼペルマブ、フロ酸モメタゾン、BI-1467335、ズピルマブ、アクリジニウム、ホルモテロール、AZD-1419、HI-1640V、リビパンセル、CMP-001、マンニトール、ANB-020、オマリズマブ、トレガリズマブ、Mitizax、ベンラリズマブ、ゴリムマブ、ロフルミラスト、イマチニブ、REGN-3500、マシチニブ、アプレミラスト、RPL-554、Actimmune、アダリムマブ、ルパタジン、パログレリル、MK-1029、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フマル酸ホルモテロール、モガムリズマブ、セラトロダスト、UCB-4144、ネミラリシブ、CK-2127107、フェビピプラント、ダニリキシン、ボセンタン、アバタセプト、EC-18、ズベリシブ、ドシパルスタット、シプロフロキサシン、サルブタモールHFA、エルドステイン、PrEP-001、ネドクロミル、CDX-0158、サルブタモール、エノボサルム、R-TPR-022、レンジルマブ、フロ酸フルチカゾン、ビランテロールトリフェニル酢酸塩、プロピオン酸フルチカゾン、サルメテロール、PT-007、PRS-060、レメステムセル-L、シトルリン、RPC-4046、一酸化窒素、DS-102、ゲリリムズマブ、アシテア、フロ酸フルチカゾン、ウメクリジニウム、ビランテロール、AG-NPP709、Gamunex、インフリキシマブ、アンピオン、アクマピモド、カナキヌマブ、INS-1007、CYP-001、シルクマブ、プロピオン酸フルチカゾン、メポリズマブ、ピタバスタチン、ソリスロマイシン、エタネルセプト、イバカフトル、アナキンラ、MPC-300-IV、臭化グリコピロニウム、臭化アクリジニウム、FP-025、リサンキズマブ、グリコピロニウム、フマル酸ホルモテロール、Adipocell、YPL-001、臭化チオトロピウム、臭化グリコピロニウム、マレイン酸インダカテロール、アンデカリキシマブ、オロダテロール、エソメプラゾール、イエダニワクチン、ヨモギ花粉アレルゲンワクチン、バモロロン、ゲファピキクサント(gefapixant)、レベフェナシン、ゲフィチニブ、レジョイン(ReJoin)、チペルカスト、ベドラドリン、SCM-CGH、SHP-652、RNS-60、ブロダルマブ、BIO-11006、臭化ウメクリジニウム、ビランテロールトリフェニル酢酸塩、臭化イプラトロピウム、トラロキヌマブ、PUR-1800、VX-561、VX-371、オロパタジン、ツロブテロール、フマル酸ホルモテロール、トリアムシノロンアセトニド、レスリズマブ、キシナホ酸サルメテロール、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フマル酸ホルモテロール、臭化チオトロピウム、リゲリズマブ、RUTI、ベルチリムマブ、オマリズマブ、臭化グリコピロニウム、SENS-111、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、CHF-5992、LT-4001、インダカテロール、臭化グリコピロニウム、フロ酸モメタゾン、フェキソフェナジン、臭化グリコピロニウム、アジスロマイシン、AZD-7594、ホルモテロール、CHF-6001、バテフェンテロール、OATD-01、オロダテロール、CJM-112、ロシグリタゾン、サルメテロール、セチピプラント、吸入インターフェロンベータ、AZD-8871、プレカナチド、フルチカゾン、サルメテロール、エイコサペンタエン酸モノグリセリド、レブリキズマブ、RG-6149、QBKPN、モメタゾン、インダカテロール、AZD-9898、ピルビン酸ナトリウム、ジロートン、CG-201、イミダフェナシン、CNTO-6785、CLBS-03、モメタゾン、RGN-137、プロカテロール、ホルモテロール、CCI-15106、POL-6014、インダカテロール、ベクロメタゾン、MV-130、GC-1112、アレルゴバクデポー(Allergovac depot)、MEDI-3506、QBW-251、ZPL-389、ウデナフィル、GSK-3772847、レボセチリジン、AXP-1275、ADC-3680、チマピプラント、アベジテロール、AZD-7594、臭化イプラトロピウム、硫酸サルブタモール、タデキニグアルファ、ACT-774312、ドルナーゼアルファ、イロプロスト、バテフェンテロール、フロ酸フルチカゾン、アリカホルセン、シクレソニド、エメラミド、アルホルモテロール、SB-010、オザグレル、BTT-1023、デクトレクマブ、レバルブテロール、プランルカスト、ヒアルロン酸、GSK-2292767、ホルモテロール、NOV-14、ルシナクタント、サルブタモール、プレドニゾロン、エバスチン、シペシル酸デキサメタゾン、GSK-2586881、BI-443651、GSK-2256294、VR-179、VR-096、hdm-ASIT+、ブデソニド、GSK-2245035、VTX-1463、エメダスチン、デクスプラミペキソール、レバルブテロール、N-6022、リン酸デキサメタゾンナトリウム、PIN-201104、OPK-0018、TEV-48107、スプラタスト、BI-1060469、ゲミルカスト、インターフェロンガンマ、ダラザチド、ビラスチン、プロピオン酸フルチカゾン、キシナホ酸サルメテロール、RP-3128、臭化ベンシクロキジウム、レスリズマブ、PBF-680、CRTH2アンタゴニスト、プランルカスト、キシナホ酸サルメテロール、プロピオン酸フルチカゾン、臭化チオトロピウム一水和物、マシルカスト、RG-7990、ドキソフィリン、アベジテロール、臭化グリコピロニウム、TEV-46017、ASM-024、プロピオン酸フルチカゾン、臭化グリコピロニウム、キシナホ酸サルメテロール、サルブタモール、TA-270、フルニソリド、クロモグリク酸ナトリウム、Epsi-gam、ZPL-521、サルブタモール、アビプタジル、TRN-157、ザフィルルカスト、Stempeucel、ペミロラストナトリウム、ナドロール、プロピオン酸フルチカゾン+キシナホ酸サルメテロール、RV-1729、硫酸サルブタモール、二酸化炭素+臭化パーフルオロオクチル、APL-1、デクトレクマブ+VAK-694、アセチルサリチル酸リシン、ジロートン、TR-4、ヒト同種脂肪由来間葉系前駆細胞療法、MEDI-9314、PL-3994、HMP-301、TD-5471、NKTT-120、ペミロラスト、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トランチンテロール、アルファルミノール一ナトリウム(monosodium alpha luminol)、IMD-1041、AM-211、TBS-5、ARRY-502、セラトロダスト、組換えミジスマーゼ、ASM-8、デフラザコルト、バンブテロール、RBx-10017609、イプラトロピウム+フェノテロール、フルチカゾン+ホルモテロール、エピナスチン、WIN-901X、VALERGEN-DS、OligoG-COPD-5/20、ツロブテロール、オキシス タービュヘイラー(oxis Turbuhaler)、DSP-3025、ASM-024、ミゾラスチン、ブデソニド+サルメテロール、LH-011、AXP-E、ヒスタミンヒト免疫グロブリン、YHD-001、テオフィリン、アンブロキソール+エルドステイン、ラマトロバン、モンテルカスト、プランルカスト、AG-1321001、ツロブテロール、イプラトロピウム+サルブタモール、トラニラスト、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、コルホルシンダロペート、レピリナスト、およびドキソフィリンが含まれるがこれらに限定するものではない。
【0083】
本明細書には、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、および1種または複数種のその他の治療剤を含む、医薬組成物も提供される。治療剤は、上記にて指定された薬剤の種類から、および上記の特定の薬剤のリストから選択されてもよい。一部の実施形態では、医薬組成物は、肺に送達するのに適している。一部の実施形態では、医薬組成物は、吸入または霧状にした投与に適している。一部の実施形態では、医薬組成物は、乾燥粉末または液体組成物である。
【0084】
さらに方法の態様では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容される塩、および1種または複数種のその他の治療剤を、哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の疾患または障害を処置する方法を提供する。
【0085】
併用療法で使用される場合、薬剤は、単一の医薬組成物に製剤化されてもよく、または薬剤は、同じまたは異なる投与経路によって同時にまたは別々の時間に投与される個別の組成物で提供されてもよい。そのような組成物は、個別にパックすることができ、またはキットとして一緒にパックされてもよい。キット内の2種またはそれよりも多くの治療剤は、同じ投与経路によってまたは異なる投与経路によって投与されてもよい。
【0086】
本発明の化合物は、以下の実施例に記述されるように、酵素結合アッセイにおいてJAK1、JAK2、JAK3、およびTYK2酵素の強力な阻害剤であること、細胞アッセイにおいて細胞毒性のない強力な機能的活性を有すること、および前臨床モデルにおいてJAK阻害の薬力学的効果を生じることが実証されてきた。
【実施例】
【0087】
下記の合成および生物学的実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明の範囲を如何様にも限定すると解釈するものではない。下記の実施例において、以下の略称は、他に指示されない限り下記の意味を有する。以下に定義されていない略称は、それらの一般に受け入れられる意味を有する。
ACN=アセトニトリル
DCC=ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIPEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF=N,N-メチルホルムアミド
EtOAc=酢酸エチル
HATU=N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート
LDA=リチウムジイソプロピルアミド
min=分
MTBE=メチルtert-ブチルエーテル
NBS=N-ブロモスクシンイミド
RT=室温
THF=テトラヒドロフラン
ビス(ピナコラト)二ホウ素=4,4,5,5,4’,4’,5’,5’-オクタメチル-[2,2’]ビ[[1,3,2]ジオキサボロラニル]
Pd(dppf)Cl2-CH2Cl2=ジクロロメタンとのジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-フェロセン)-ジパラジウム(II)錯体
【0088】
試薬および溶媒は、商業上の供給元(Aldrich、Fluka、Sigmaなど)から購入し、さらに精製することなく使用した。反応混合物の進行状態を、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析高性能液体クロマトグラフィー(分析HPLC)、および質量分析法によってモニタした。反応混合物を、各反応において特に記述されるように作り上げ、一般にそれらは、抽出およびその他の精製方法、例えば温度依存性結晶化および溶媒依存性結晶化、および沈殿によって精製した。さらに、反応混合物を、カラムクロマトグラフィーによってまたは分取HPLCによって通常通りに、典型的にはC18またはBDSカラム充填および従来の溶離液を使用して精製した。典型的な分取HPLC条件を、以下に記述する。
【0089】
反応生成物の特徴付けは、質量分析法および1H-NMR分光法によって通常通り実施した。NMR分析では、試料を重水素化溶媒(CD3OD、CDCl3、またはd6-DMSOなど)に溶解し、1H-NMRスペクトルを、標準観察条件下、Varian Gemini 2000機器(400MHz)で獲得した。化合物の質量分析による同定を、自動精製システムに連結されたApplied Biosystems(Foster City、CA)モデルAPI 150EX機器またはWaters(Milford、MA)3100機器で、エレクトロスプレーイオン化法(ESMS)によって行った。
(分取HPLC条件)
カラム:C18、5μm 21.2×150mm、またはC18、5μm 21×250、またはC14、5μm 21×150mm
カラム温度:室温
流量:20.0mL/分
移動相:A=水+0.05%TFA
B=ACN+0.05%TFA
注入体積:(100~1500μL)
検出器波長:214nm
【0090】
粗製化合物を、約50mg/mLで、1:1の水:酢酸に溶解した。4分の分析規模の試験操作を、2.1×50mm C18カラムを使用して実施し、その後に、15または20分の分取規模の操作を、分析規模の試験操作の%B保持をベースにした勾配で、100μL注入を使用して行った。正確な勾配は、試料に依存的であった。不純物が近くを流れる試料を、最良の分離に関し、21×250mm C18カラム、および/または21×150mm C14カラムでチェックした。所望の生成物を含有する画分を、質量分析による分析によって同定した。
(分析HPLC条件)
(方法A)
カラム:Agilent Zorbax Bonus-RP C18、150×4.60nm、3.5ミクロン
カラム温度:40℃
流量:1.5mL/分
注入体積:5μL
試料の調製:1:1のACN:1M HClに溶解
移動相:A=水:TFA(99.95:0.05)
B=ACN:TFA(99.95:0.05)
検出器の波長:254nmおよび214nm
勾配:合計26分(時間(分)/%B):0/5、18/90、22/90、22.5/90、26/5
(方法B)
カラム:Agilent Poroshell 120 Bonus-RP、4.6×150mm、2.7μm
カラム温度:30℃
流量:1.5mL/分
注入体積:10μL
移動相:A=ACN:水:TFA(2:98:0.1)
B=ACN:水:TFA(90:10:0.1)
試料の調製:移動相Bに溶解
検出器の波長:254nmおよび214nm
勾配:合計60分(時間(分)/%B):0/0、50/100、55/100、55.1/0、60/0
調製1:1-ベンジル-4-イミノ-1,4-ジヒドロピリジン-3-アミン
【化5】
【0091】
ピリジン-3,4-ジアミン(445g、4.078mol)とACN(11.0L)との混合物を、25℃から15℃まで80分間撹拌した。臭化ベンジル(485mL、4.078mol)を20分にわたり添加し、反応混合物を20℃で一晩撹拌した。反応混合物を10℃に冷却し、濾過した。反応器にACN(3L)を添加し、10℃に冷却した。ケークを反応器すすぎ水で洗浄し、25℃に温めたACN(3L)で再び洗浄した。固体をフィルタ上で、窒素下24時間、真空下55℃で2時間、次いでRTで一晩、さらに4日間乾燥させて、表題化合物のHBr塩を得た(1102.2g、3.934mol、収率96%)。HPLC法Aでの保持時間4.12分。
調製2:5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル)-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン
【化6】
(a)5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル)-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン
【0092】
6-ブロモ-1H-インダゾール-3-カルバルデヒド(550g、2.444mol)、1-ベンジル-4-イミノ-1,4-ジヒドロピリジン-3-アミンHBr(721g、2.333mol)、およびDMAc(2.65L)の溶液を、60分間撹拌し、重亜硫酸ナトリウム(257g、2.468mol)を添加した。反応混合物を135℃に加熱し、3時間保持し、20℃に冷やし、20℃で一晩保持した。アセトニトリル(8L)を添加し、反応混合物を15℃で4時間撹拌した。スラリーを、圧力フィルタ上で、中程度の濾過速度で濾過した。反応器にACN(1L)を添加した。ケークをACN反応器の洗浄液で洗浄し、窒素下で一晩、次いで真空下50℃で24時間乾燥させて、表題化合物のHBr塩を、密な湿潤ベージュ/褐色固体として得た(1264g、2.444mol、収率100%、純度94%)。HPLC法Aでの保持時間8.77分。
【0093】
先のステップの生成物(1264g、2.444mol)、MeTHF(6L)および水(2.75L)の混合物を、65℃に加熱し、水酸化ナトリウム50wt%(254g、3.177mol)を5分にわたり添加し、反応混合物を65℃で1時間撹拌し、RTに冷却し、次いで5℃に冷却し、2時間保持した。スラリーを濾過し、反応器およびケークをMeTHF(1L)で洗浄した。得られたベージュから黄色の固体を、フィルタ上で窒素下3日間乾燥させて、表題化合物を、ベージュ/黄色の固体として得た(475g、1.175mmol、収率48%)。母液(約8L)を濃縮して約2Lにし、そこで固形分が急に析出した。スラリーを50℃に加熱し、2時間保持し、5℃に2時間にわたり冷却し、一晩撹拌し、濾過した。ケークをMeTHF(100mL)で洗浄し、真空下40℃で一晩乾燥させて、追加の表題化合物を得た(140g、0.346mol、収率14%)。
【0094】
先のステップの全生成物の混合物を、同じ規模(1500g、3.710mol)の第2のバッチの生成物、およびMeTHF(4L)と組み合わせ、20℃で2時間撹拌し、濾過した。反応器およびケークをMeTHF(1.5L)で洗浄した。得られたベージュから黄色の固体を、窒素下で3日間乾燥させて、表題化合物をベージュ・黄色の固体として得た(1325g、3.184mol、収率86%(全体で収率68%)、純度97%)。HPLC法Aでの保持時間8.77分。
調製3:5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン
【化7】
【0095】
15Lのフラスコに、5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル)-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(440g、1.088mol)を添加し、その後、MeTHF(4.5L)、メタノール(2.25L)、および水(1.125L)を添加した。スラリーを20℃に冷却し、1時間撹拌し、NaBH4(247g、6.530mol)を添加した。反応混合物を、25℃で18時間撹拌した。水(1.125L)を添加し、その後、20wt%の塩化ナトリウム溶液(1.125L)を添加し、混合物を30分間撹拌し、層を分離させた。水性層を排出させた。NaOH(522g)と水(5L)とを予め混合した溶液を添加し、反応混合物を60分間撹拌し、層を分離させ、水性層を排出した。同じ規模にある2つの追加のバッチを調製した。
【0096】
1つのバッチからの有機層を、ジャケットが50℃に設定され内部温度が20℃の、15Lのジャケット付き反応器内で、減圧下で濃縮した。追加のバッチを反応器に添加し、一度に一つずつ濃縮し、体積が約6Lのスラリーを得た。スラリーを50℃に加熱し、IPAc(6L)を添加し、混合物を60℃で1.5時間保持し、20℃に10時間冷却し、60℃に50時間加熱し、20℃に5時間冷却し、次いで5℃に冷却し、3時間保持した。混合物を濾過し、反応器およびケークを、予め5℃に冷却した、IPAc(1L)とMeTHF(1L)との予め混合した溶液で洗浄した。固形分を、フィルタ上40℃で3日間、窒素下で乾燥させて、表題化合物(1059g、2.589mol、収率79%)をオフホワイトの固体として得た。材料をさらに、真空炉内で50~60℃で8時間、および27℃で2日間乾燥させて、表題化合物(1043g、2.526mol、収率77%、純度99%)を得た。HPLC法Aでの保持時間6.73分。
調製4:(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)トリフルオロホウ酸カリウム
【化8】
(a)2-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン
【0097】
1-(ベンジルオキシ)-4-ブロモ-5-エチル-2-フルオロベンゼン(520g、1682mmol)およびジオキサン(5193mL)の混合物を、窒素でパージし、次いでビス(ピナコラト)二ホウ素(641g、2523mmol)を添加し、その後、酢酸カリウム(495g、5046mmol)を添加した。反応混合物を窒素でパージし、Pd(dppf)Cl2(41.2g、50.5mmol)を添加し、反応混合物を窒素でパージし、窒素下103℃で5時間、加熱し、RTに冷却した。反応混合物を、真空蒸留によって濃縮し、酢酸エチル(5204mL)と水(5212mL)との間で分配した。反応混合物をセライトに通して濾過し、有機層をブライン(2606mL)で洗浄し、その後、真空蒸留により溶媒除去して、粗製生成物が濃厚な黒色油(約800g)として得られた。
【0098】
粗製生成物をDCM(1289mL)に溶解し、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製した(2627gのシリカをヘキサン中に予備スラリー化し、ヘキサン(10.35L)中20%の酢酸エチルで溶離した)。溶媒を、真空蒸留によって除去して、薄黄色の油(600g)を得た。HPLC法Bによる保持時間33.74分。
(b)(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)トリフルオロホウ酸カリウム
【0099】
先のステップの生成物(200g、561mmol)を、完全な溶解までアセトン(1011mL)と混合し、メタノール(999mL)を添加し、その後、水(1310mL)に溶解した3Mの二フッ化水素カリウム(307g、3930mmol)を添加した。反応混合物を3.5時間撹拌した。有機溶媒のほとんどを、真空蒸留によって除去した。水(759mL)を添加し、得られた濃厚スラリーを30分間撹拌し、濾過した。ケークを水(506mL)で洗浄し、固形分をフィルタ上で30分間乾燥させた。固形分をアセトン(1237mL)中でスラリー化し、1時間撹拌した。得られたスラリーを濾過し、固形分をアセトン(247mL)で洗浄した。アセトン溶液を真空蒸留によって濃縮し、全てのアセトンおよび水が蒸留されるまでトルエン(2983mL)をゆっくり添加することにより、一定体積(2L)を維持した。トルエン溶液を蒸留して、回転蒸発により濃厚な黄色スラリーにし、その時間中に生成物が白色の固形分として沈殿した。トルエンの追加の一部(477mL)を混合物に添加し、1時間撹拌した。次いで混合物を濾過し、トルエン(179mL)ですすぎ、50℃で24時間真空下乾燥させて、表題化合物(104g、310mmol、収率55%)を自由流動性のふわふわした僅かにオフホワイトの固体として得た。HPLC法Bによる保持時間27.71分。
調製5:5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン
【化9】
(a) 5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン
【0100】
ビス(ピナコラト)二ホウ素(250g、984mmol)およびIPA(1.88L)の混合物を撹拌して溶解し、次いで二フッ化水素カリウム(538g、6.891mol)を水(2.31L)に溶かした溶液を、10分にわたり少量ずつ添加した。反応混合物を1時間撹拌し、濾過した。ゲル様固形分を、混合物が透明なヒドロゲルを形成するまで水(1.33L)でスラリー化し、さらに45分間スラリー化した。得られた固形分/ゲルを濾過し、次いでアセトン(1.08L)中で再スラリー化し、濾過し、フィルタ上で30分間空気乾燥し、一晩乾燥させてふわふわの白色固体(196.7g)を得た。
【0101】
5Lのフラスコに、5-ベンジル-2-(6-ブロモ-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(135g、331mmol)、(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-トリフルオロホウ酸カリウム(133g、397mmol)、および先のステップの白色固体生成物(40.5g)を添加し、その後、MeTHF(1.23L)およびMeOH(1.75L)を添加した。得られたスラリーを、窒素で3回脱気した。スラリーに、炭酸セシウム(431g、1.323mol)を水(1.35L)に溶かした脱気溶液を添加した。スラリーを2回脱気し、Pd(amphos)
2Cl
2(11.71g、16.53mmol)を添加し、スラリーを再び2回脱気し、反応混合物を67℃で一晩撹拌し、20℃に冷却した。層を分離し、MeTHF(550mL)で逆抽出した。有機層を合わせ、固形分が沈殿するまで回転蒸発により濃縮した。MeTHF(700mL)を添加し、反応混合物を65℃で撹拌した。層を分離し、水性相をMeTHF(135mL)で逆抽出した。有機相を合わせ、約300mLに濃縮した結果、濃厚な橙色のスラリーが得られた。スラリーにMeOH(270mL)を添加し、その後、1M HCl(1.325L)を20℃で、素早く撹拌しながら添加した。反応混合物を5分間撹拌し、水(1L)を添加し、得られたスラリーを1時間撹拌した。固形分を濾過し、水(150mL)で洗浄し、フィルタ上で10分間、および窒素下45℃で16時間乾燥させて、薄黄色の固体として表題化合物の2HCl塩(221.1g、351mmol、純度92.2%)を得た。HPLC法Bによる保持時間23.41分。
調製6:5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール
【化10】
【0102】
1Lのフラスコに、エタノール中のスラリー(348mL)として5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン、2HCl(40g、63.4mmol)と、MeOH中1.25MのHCl(101mL)と、水(17.14mL)とを加えた。反応混合物を、窒素で5分間脱気し、10wt%のPd/C、50wt%のH2O(4.05g、1.903mmol)を添加した。反応器を密閉し、H2でパージし、1~2psiに加圧し、50℃に温め、反応混合物を一晩撹拌し、セライトに通して濾過した。反応器およびフィルタを、メタノール(100mL)で洗浄した。
【0103】
濾過した溶液を、第2のバッチの生成物と、98mmol規模で組み合わせ、390gに濃縮した。EtOAc(2.04L)を、撹拌しながらゆっくり添加し、次いで溶液を撹拌しながら5℃に冷却した。固形分を濾過し、EtOAc(510mL)で洗浄し、一晩、窒素下45℃で乾燥させて、表題化合物の2HCl塩(58g、収率80%)を、オフホワイトの固体として得た。HPLC法Bによる保持時間12.83分。
(実施例1)
5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノールの結晶質水和物
【化11】
【0104】
3Lのフラスコに、NMP(239mL)、および5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール、2HCl(74.5g、165mmol)を、撹拌しながら添加し、その後、NMP(74mL)を添加した。酢酸(31.3mL)を添加し、反応混合物を55℃へと10分間温め、次いで25℃に冷却した。1-メチルピペリジン-4-オン(61.0mL、496mmol)を1回で添加し、反応混合物を25℃で30分間撹拌し、15℃に冷却した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(98g、463mmol)を添加し、外部ジャケットを5分後に20℃に設定した。3時間後、温度を25℃よりも低く維持しながら、水酸化アンモニウム(365mL、5790mmol)を45分にわたり滴下添加した。反応混合物を20℃で1.5時間撹拌し、オフホワイトのスラリーを形成させた。メタノール(709mL)を添加し、反応混合物を、55℃で一晩、ゆっくり撹拌した。水(1.19L)を55℃で30分にわたり添加し、混合物を10℃に冷却し、2時間撹拌し、濾過した。ケークを、1:1のMeOH:水(334mL)で洗浄し、フィルタ上45℃で20分間、窒素ブリードを伴う真空下で乾燥させて、黄色の固形分(87g)を得た。
【0105】
固形分に、5%の水/アセトン(1.5L)を、55℃でゆっくり撹拌しながら添加し、反応混合物を55℃で6時間加熱し、10℃に冷却し、濾過し、5%の水/アセトン(450mL)で洗浄した。固形分を、窒素ブリードを伴う真空下、50℃で一晩乾燥させ、空気中で20時間平衡化し、真空炉内で48時間乾燥させ、空気で平衡化して、表題化合物(71.3g、収率91%)を、自由流動性の薄黄色の固体として得た。HPLC法Bによる保持時間12.29分。
(実施例2)
粉末X線回折
【0106】
実施例1の生成物の粉末X線回折(PXRD)パターンを、出力電圧45kVおよび電流40mAでCu-Kα放射線(λ=1.54051Å)を使用して、Bruker D8-Advance X線回折計で得た。試料での強度が最大化するよう設定した、入射スリット、発散スリット、散乱スリットを有するBragg-Brentanoジオメトリーの機器を操作した。測定のため、少量の粉末(5~25mg)を、試料ホルダ上に穏やかに加圧して、滑らかな表面を形成し、X線曝露に供した。試料を、2θが2°から40°の2θ-2θモードで、0.02°のステップサイズおよびステップ当たりスキャン速度0.30°秒でスキャンした。データ獲得を、Bruker DiffracSuite測定ソフトウェアによって制御し、Jadeソフトウェア(バージョン7.5.1)により解析した。機器を、コランダム標準で、±0.02°の2シータ角内に較正した。観察されたPXRD 2θピーク位置、および格子面間隔(d-spacing)を、表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
生物学的アッセイ
【0107】
5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(化合物1)は、下記の生物学的アッセイで特徴付けられている。
アッセイ1:生化学的JAKキナーゼアッセイ
【0108】
4つのLanthaScreen JAK生化学アッセイのパネル(JAK1、2、3、およびTyk2)を、共通キナーゼ反応緩衝液(50mM HEPES、pH7.5、0.01%Brij-35、10mM MgCl2、および1mM EGTA)中で実施した。組換えGSTタグ付きJAK酵素およびGFPタグ付きSTAT1ペプチド基質を、Life Technologiesから得た。
【0109】
段階希釈した化合物を、4種のJAK酵素のそれぞれおよび基質と共に白色384ウェルマイクロプレート(Corning)内で、周囲温度で1時間プレインキュベートした。ATPを続けて添加して、1%のDMSOを含む10μLの全体積中で、キナーゼ反応を開始させた。JAK1、2、3、およびTyk2に関する最終酵素濃度は、それぞれ4.2nM、0.1nM、1nM、および0.25nMであり、対応する、使用されたKm ATP濃度は、25μM、3μM、1.6μM、および10μMであり、一方、基質濃度は、4種全てのアッセイに関して200nMである。キナーゼ反応を、周囲温度で1時間進行させ、その後、TR-FRET希釈緩衝液(Life Technologies)中のEDTA(10mM最終濃度)およびTb-抗pSTAT1(pTyr701)抗体(Life Technologies、2nM最終濃度)の調製物10μLを添加した。プレートを周囲温度で1時間インキュベートさせ、その後、EnVisionリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。放射比シグナル(520nm/495nm)を記録し、これを利用して、DMSOおよびバックグラウンド対照に基づいて阻害パーセント値を計算した。
【0110】
用量応答分析では、阻害パーセントデータを化合物濃度に対してプロットし、IC50値を、Prismソフトウェア(GraphPad Software)で4-パラメーターロバストフィットモデルから決定した。結果を、pIC50(IC50の負の対数)として表し、その後、Cheng-Prusoff方程式を使用してpKi(解離定数Kiの負の対数)に変換した。
【0111】
本発明の化合物は、下記の酵素効力(enzyme potency)を示した。
【表2】
アッセイ2:細胞JAK効力アッセイ:IL-13の阻害
【0112】
AlphaScreen JAKI細胞効力アッセイは、BEAS-2Bヒト肺上皮細胞(ATCC)中のインターロイキン-13(IL-13、R&D Systems)誘導性STAT6リン酸化を測定することによって実施した。抗STAT6抗体(Cell Signaling Technologies)を、AlphaScreenアクセプタービーズ(Perkin Elmer)とコンジュゲートし、一方、抗pSTAT6(pTyr641)抗体(Cell Signaling Technologies)は、EZ-Link Sulfo-NHS-Biotin(Thermo Scientific)を使用してビオチン化した。
【0113】
BEAS-2B細胞を、10%FBS(Hyclone)、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Life Technologies)、および2mM GlutaMAX(Life Technologies)を補充した50%DMEM/50%F-12培地(Life Technologies)中、5%CO2加湿インキュベーター内で、37℃で成長させた。アッセイの1日目、細胞を7,500個/ウェルの密度で、25μLの培地を含む白色ポリ-D-リシンコーティング384ウェルプレート(Corning)に播き、インキュベーター内で一晩接着させた。アッセイの2日目、培地を除去し、試験化合物の用量応答を含有する12μLのアッセイ緩衝液(ハンクス平衡塩溶液/HBSS、25mM HEPES、および1mg/mlのウシ血清アルブミン/BSA)で置き換えた。化合物を、DMSO中で段階希釈し、次いで培地中でさらに1000倍希釈して、最終DMSO濃度を0.1%にした。細胞を、試験化合物と共に、37℃で1時間インキュベートし、その後、12μlの事前に温められたIL-13(アッセイ緩衝液中80ng/mL)を添加して刺激した。37℃で30分間インキュベートした後、アッセイ緩衝液(化合物およびIL-13を含有する)を除去し、10μLの細胞溶解緩衝液(25mM HEPES、0.1% SDS、1% NP-40、5mM MgCl2、1.3mM EDTA、1mM EGTA、ならびにComplete Ultraミニプロテアーゼ阻害剤およびPhosSTOP(Roche Diagnostics)を補充)を添加した。プレートを周囲温度で30分間振盪させ、その後、検出試薬を添加した。ビオチン-抗pSTAT6および抗STAT6コンジュゲートアクセプタービーズの混合物を最初に添加し、周囲温度で2時間インキュベートし、その後、ストレプトアビジンコンジュゲートドナービーズ(Perkin Elmer)を添加した。最短で2時間のインキュベーション後、アッセイプレートをEnVisionプレートリーダーで読み取った。AlphaScreenルミネセンスシグナルを記録し、これを利用して、DMSOおよびバックグラウンド対照に基づいて阻害パーセント値を計算した。
【0114】
用量応答分析では、阻害パーセントデータを化合物濃度に対してプロットし、IC50値を、Prismソフトウェアで4-パラメーターロバストフィットモデルから決定した。結果は、IC50値の負の対数、pIC50として表してもよい。本発明の化合物は、このアッセイにおいて、pIC50値8.2を示した。
アッセイ3:細胞JAK効力アッセイ:ヒトPBMC中のIL-2/抗CD3刺激IFNγの阻害
【0115】
インターロイキン-2(IL-2)/抗CD3刺激インターフェロンガンマ(IFNγ)の阻害に関する試験化合物の効力を、ヒト全血(Stanford Blood Center)から単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)で測定した。JAKを通してIL-2がシグナル伝達するので、このアッセイは、JAK細胞効力の尺度を提供する。
【0116】
(1)ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール勾配を使用して健康なドナーのヒト全血から単離した。細胞を、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS、Life Technologies)、2mM Glutamax(Life Technologies)、25mM HEPES(Life Technologies)、および1×Pen/Strep(Life Technologies)を補充したRPMI(Life Technologies)中、37℃の5%CO2加湿インキュベーター内で培養した。細胞を、培地(50μL)に、200,000個/ウェルで播き、1時間培養した。化合物を、DMSO中で段階希釈し、次いで培地中でさらに500倍に希釈した(2×最終アッセイ濃度に)。試験化合物(100μL/ウェル)を細胞に添加し、37℃、5%CO2で1時間インキュベートし、その後、IL-2(R&D Systems;最終濃度100ng/mL)および抗CD3(BD Biosciences;最終濃度1μg/mL)を、事前に温めたアッセイ培地(50μL)に24時間添加した。
【0117】
(2)サイトカイン刺激後、細胞を500gで5分間遠心分離し、上清を除去し、-80℃で凍結した。IL-2/抗CD3に応答する試験化合物の阻害効力を決定するために、上清IFNγ濃度を、ELISA(R&D Systems)を介して測定した。IC50値を、化合物濃度に対するIFNγの濃度の阻害曲線の解析から決定した。データを、pIC50(負の常用対数IC50)値として表す。本発明の化合物は、このアッセイにおいて約7.3のpIC50値を示した。
アッセイ4:細胞JAK効力アッセイ:CD4+T細胞におけるIL-2刺激pSTAT5の阻害
【0118】
インターロイキン-2(IL-2)/抗CD3刺激STAT5リン酸化の阻害に関する試験化合物の効力を、フローサイトメトリーを使用して、ヒト全血(Stanford Blood Center)から単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるCD4陽性(CD4+)T細胞で測定した。IL-2はJAKを通してシグナル伝達するので、このアッセイは、JAK細胞効力の尺度を提供する。
【0119】
CD4+T細胞を、フィコエリスロビリン(PE)コンジュゲート抗CD4抗体(Clone RPA-T4、BD Biosciences)を使用して同定し、一方、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗pSTAT5抗体(pY694、Clone 47、BD Biosciences)を使用して、STAT5リン酸化を検出した。
【0120】
(1)抗CD3によるサイトカイン刺激を、24時間の代わりに30分間行ったこと以外、アッセイ3のパラグラフ(1)のプロトコールに従った。
【0121】
(2)サイトカイン刺激後、細胞を、事前に温めた固定溶液(200μL;BD Biosciences)で10分間、37℃、5%CO2で固定し、DPBS緩衝液(1mL、Life Technologies)で2回洗浄し、氷冷Perm Buffer III(1000μL、BD Biosciences)中に4℃で30分間再懸濁した。細胞を、DPBS(FACS緩衝液)中2%のFBSで2回洗浄し、次いで抗CD4 PE(1:50希釈)および抗CD3抗CD3 Alexa Fluor 647(1:5希釈)を含有するFACS緩衝液(100μL)中に、暗所で、室温で60分間再懸濁した。インキュベーション後、細胞を、FACS緩衝液中で2回洗浄し、その後、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して分析した。IL-2/抗CD3に応答する試験化合物の阻害効力を決定するために、pSTAT5のメジアン蛍光強度(MFI)を、CD4+T細胞において測定した。IC50値は、MFI対化合物濃度の阻害曲線の解析から決定した。データは、pIC50(負の常用対数IC50)値として表される。本発明の化合物は、このアッセイにおいて約7.7のpIC50値を示した。
アッセイ5:細胞JAK効力アッセイ:CD3+T細胞におけるIL-4刺激pSTAT6の阻害
【0122】
インターロイキン-4(IL-4)刺激STAT6リン酸化の阻害に関する試験化合物の効力を、フローサイトメトリーを使用して、ヒト全血(Stanford Blood Center)から単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるCD3陽性(CD3+)T細胞で測定した。IL-4はJAKを通してシグナル伝達するので、このアッセイは、JAK細胞効力の尺度を提供する。
【0123】
CD3+T細胞を、フィコエリスロビリン(PE)コンジュゲート抗CD3抗体(Clone UCHT1、BD Biosciences)使用して同定し、一方、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗pSTAT6抗体(pY641、Clone 18/P、BD Biosciences)を使用して、STAT6リン酸化を検出した。
【0124】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、アッセイ3および4におけるように健康なドナーのヒト全血から単離した。細胞を、培地(200μL)中に250,000個/ウェルで播き、1時間培養し、次いで、様々な濃度の試験化合物を含有するアッセイ培地(50μL)(0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma)、2mM Glutamax、25mM HEPES、および1×Penstrepを補充したRPMI)中に再懸濁した。化合物をDMSO中に段階希釈し、次いでアッセイ培地中でさらに500倍に(2×最終アッセイ濃度に)希釈した。試験化合物(50μL)を、37℃、5%CO2で1時間、細胞と共にインキュベートし、その後、IL-4(50μL)(R&D Systems;最終濃度20ng/mL)を、事前に温めたアッセイ培地に30分間添加した。サイトカイン刺激後、細胞を、事前に温めた固定溶液(100μL)(BD Biosciences)で10分間、37℃、5%CO2で固定し、FACS緩衝液(1mL)(DPBS中2%FBS)で2回洗浄し、氷冷Perm Buffer III(1000μL)(BD Biosciences)中に4℃で30分間再懸濁した。細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、次いで抗CD3 PE(1:50希釈)および抗pSTAT6 Alexa Fluor 647(1:5希釈)を含有するFACS緩衝液(100μL)中に、暗所で、室温で60分間再懸濁した。インキュベーション後、細胞を、FACS緩衝液中で2回洗浄し、その後、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して分析した。
【0125】
IL-4に応答する試験化合物の阻害効力を決定するために、pSTAT6のメジアン蛍光強度(MFI)をCD3+T細胞で測定した。IC50値を、MFI対化合物濃度の阻害曲線の解析から決定した。データは。pIC50(負の常用対数IC50)として表す。本発明の化合物は、このアッセイにおいて8.1のpIC50の値を示した。
アッセイ6:細胞JAK効力アッセイ:CD3+T細胞でのIL-6刺激pSTAT3の阻害
【0126】
アッセイ5のプロトコールに類似したプロトコールを使用して、インターロイキン-6(IL-6)刺激STAT3リン酸化阻害に関する試験化合物の効力を決定した。Alexa Fluor 647コンジュゲート抗pSTAT3抗体(pY705、Clone 4/P、BD Biosciences)を使用して、STAT3リン酸化を検出した。
【0127】
本発明の化合物は、このアッセイにおいて7.4のpIC50値を示した。
アッセイ7:細胞JAK効力アッセイ:IFNγ-誘導性pSTAT1の阻害
【0128】
インターフェロンγ(IFNγ)刺激STAT1リン酸化の阻害に関する試験化合物の効力を、フローサイトメトリーを使用して、ヒト全血(Stanford Blood Center)由来のCD14陽性(CD14+)単球で測定した。IFNγがJAKを通してシグナル伝達するので、このアッセイは、JAK細胞効力の尺度を提供する。
【0129】
単球を、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)コンジュゲート抗CD14抗体(Clone RM052、Beckman Coulter)を使用して同定し、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗pSTAT1抗体(pY701、Clone 4a、BD Biosciences)を使用してSTAT1リン酸化を検出した。
【0130】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール勾配を使用して健康なドナーのヒト全血から単離した。細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS、Life Technologies)、2mM Glutamax(Life Technologies)、25mM HEPES(Life Technologies)、および1×Pen/Strep(Life Technologies)を補充したRPMI(Life Technologies)中、37℃の5%CO2加湿インキュベーター内で培養した。細胞を、培地(200μL)中、250,000個/ウェルで播き、2時間培養し、様々な濃度の試験化合物を含有するアッセイ培地(50μL)(0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma)、2mM Glutamax、25mM HEPES、および1×Penstrepを補充したRPMI)に再懸濁した。化合物をDMSO中で段階希釈し、次いで培地中でさらに1000倍に希釈して、最終DMSO濃度を0.1%にした。試験化合物の希釈物を、37℃、5%CO2で1時間、細胞と共にインキュベートし、その後、事前に温めたIFNγ(R&D Systems)を、0.6ng/mLの最終濃度で30分間、培地(50μL)に添加した。サイトカイン刺激後、細胞を、事前に温めた固定溶液(100μL)(BD Biosciences)で10分間、37℃、5%CO2で固定し、FACS緩衝液(1mL)(PBS中1%BSA)で2回洗浄し、1:10の抗CD14FITC:FACS緩衝液(100μL)に再懸濁し、4℃で15分間インキュベートした。細胞をもう一度洗浄し、氷冷Perm Buffer III(BD Biosciences)(100μL)に、4℃で30分間再懸濁した。細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、次いで1:10の抗pSTAT1 Alexa Fluor647:FACS緩衝液(100μL)に、暗所で、RTで30分間再懸濁し、FACS緩衝液で2回洗浄し、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して分析した。
【0131】
試験化合物の阻害効力を決定するために、pSTAT1のメジアン蛍光強度(MFI)をCD14+単球で測定した。IC50値を、MFI対化合物濃度の阻害曲線の解析から決定した。データは、pIC50(負の常用対数IC50)値として表される。本発明の化合物は、このアッセイにおいて約7.5のpIC50値を示した。
アッセイ8:ウサギの眼における眼の薬物動態
【0132】
このアッセイの目的は、ウサギの眼組織における試験化合物の薬物動態を決定することであった。
(溶液製剤)
【0133】
本発明の化合物、5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(5-(1-メチルピペリジン-4-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(1)を、10%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンに溶解して4mg/mLの目標濃度に到達させるか、または精製水に溶解して1mg/mLの目標濃度に到達させた。試験化合物の溶液の両側硝子体内注射(50μL/眼)を、それぞれシクロデキストリンおよび水ビヒクル製剤に関して、それぞれ200μg/眼および50μg/眼の、2つの投薬群でニュージーランド白色家兎に投与した。試験化合物濃度を、眼組織:硝子体、房水、網膜/脈絡膜、および虹彩-毛様体で、注射後の所定の時点(30分、4時間、1日、3日、7日、14日)で測定した。2羽のウサギ(4つの眼)に、各時点で投薬した。硝子体組織において、化合物1は、約12時間の半減期での濃度の初期減少と、最終的に約3.6日の終末相半減期とを特徴とする、濃度の2相減少を示した。化合物は、網膜および脈絡膜領域に同様に素早く分布することがわかり、硝子体組織において類似した薬物動態プロファイルを示す。
(懸濁液製剤)
【0134】
懸濁液製剤を、実施例1の結晶質化合物1と、0.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)+0.02%Tween80とを組み合わせて、10mg/mLの目標濃度を実現することによって調製した。試験化合物の懸濁液の両側硝子体内注射(50μL/眼)を、ニュージーランド白色家兎(500μg/眼)に投与した。試験化合物濃度を、注射から30分、2週間、4週間、6週間、および8週間後に懸濁液製剤アッセイにおけるように眼組織で測定した。化合物は、約3μg/mL/日のクリアランス速度で、30分から6週間まで、硝子体内の薬物濃度の線形減少を示した。挙動は、ビヒクル内の化合物1の溶解度、および溶液製剤における眼の薬物動態挙動に一致する。血漿中の薬物濃度を測定し、硝子体組織内の濃度よりも少なくとも3桁少ないことがわかった。
アッセイ9:薬力学アッセイ:ラットにおけるIL6-誘導性pSTAT3の阻害
【0135】
IL-6誘導性pSTAT3を阻害する試験化合物の単回硝子体内投与の能力を、ラットの網膜/脈絡膜ホモジネートで測定した。
【0136】
懸濁液製剤を、実施例1の結晶質化合物1と、精製水中0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5 LV)、0.02%Tween80、および0.9%塩化ナトリウムとを組み合わせて、3mg/mLおよび10mg/mLの目標濃度を実現することによって調製した。
【0137】
メスLewisラットに、懸濁液製剤または薬物ビヒクルを硝子体内(IVT)投薬(1つの眼につき5μL)した。3日後、IL-6(Peprotech;0.1mg/mL;1つの眼につき5μL)またはビヒクルを硝子体内投与して、pSTAT3を誘導させた。眼組織を、IL-6の2回目のIVT注射から1時間後に切り取った。網膜/脈絡膜組織を均質化し、pSTAT3レベルを、ELISA(Cell Signaling Technology)を使用して測定した。IL-6誘導性pSTAT3の阻害パーセントを、ビヒクル/ビヒクルおよびビヒクル/IL-6群と比較して計算した。100%よりも大きい阻害は、ビヒクル/ビヒクル群で観察されたレベルを下回るpSTAT3レベルの低減を反映する。
【0138】
IL-6チャレンジ前の3日間の前処置で、懸濁液製剤を投与した本発明の化合物の15μg用量および50μg用量は、IL-6誘導性pSTAT3を、網膜/脈絡膜組織でそれぞれ33%および109%阻害した。
アッセイ10:薬力学アッセイ:ウサギにおけるIFNγ-誘導性IP-10の阻害
【0139】
インターフェロン-ガンマ(IFNγ)誘発性IP-10タンパク質レベルを阻害する、試験化合物の単回硝子体内投与の能力を、ウサギの硝子体および網膜/脈絡膜組織で測定した。
【0140】
実施例1の化合物1の1mg/mLおよび4mg/mLの濃度の溶液製剤を、アッセイ8におけるように調製した。懸濁液製剤を、実施例1の結晶質化合物1と、精製水中0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)、0.02%Tween80、および9mg/mL塩化ナトリウムとを組み合わせて、20mg/mLの目標濃度を実現することによって調製した。
【0141】
オスのニュージーランド白色家兎(Liveon Biolabs、India)を研究に使用した。動物を、研究施設(Jubilant Biosys Ltd.、India)に到着後に順応させた。各ウサギに、眼1つ当たり50μLの合計用量体積で、合計2回の硝子体内(IVT)注射をした。1回目のIVT注射(眼1つ当たり45μL)は、処方された時点で(即ち、溶液製剤に関して24時間、または懸濁液製剤に関して1週間)、試験化合物またはビヒクルを送達した。2回目のIVT注射(眼1つ当たり5μL)は、IP-10誘導のためにIFNγ(1μg/眼;原液1mg/mL;Kingfisher Biotech)またはビヒクルを送達した。簡単に言うと、注射の日に、ウサギにケタミン(35mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)を筋肉内注射して麻酔をかけた。深く麻酔をかけたら、それぞれの眼を滅菌食塩液ですすぎ、31ゲージ針を備えた0.5mLのインスリン注射器(50単位=0.5mL)を使用して、両眼の鼻上側に、直筋から3.5mmおよび縁(limbus)から4mmの位置にBraunstein固定キャリパー(2 3/4”)でマークすることにより、IVT注射を行った。
【0142】
組織を、IFNγによる2回目のIVT注射の24時間後に収集した。硝子体液(VH)および網膜/脈絡膜組織(R/C)を収集し、均質化し、IP-10タンパク質レベルを、ウサギCXCL10(IP-10)ELISAキット(Kingfisher Biotech)を使用して測定した。IFNγ-誘導性IP-10の阻害パーセントを、ビヒクル/ビヒクルおよびビヒクル/IFNγ群と比較して計算した。
【0143】
溶液として投薬する場合、IFNγチャレンジ前の24時間の前処置では、45μgの化合物1は、IFNγ-誘導性IP-10を、硝子体液および網膜/脈絡膜組織中でそれぞれ70%および86%阻害し、一方、180μgの化合物は、IFNγ-誘導性IP-10を、硝子体液および網膜/脈絡膜組織中でそれぞれ91%および100%阻害した。
【0144】
IFNγチャレンジ前の1週間の前処置では、化合物1の結晶質懸濁液製剤が、硝子体液および網膜/脈絡膜組織の両方でIFNγ-誘導性IP-10を100%阻害した。
アッセイ11:マウスの血漿および肺における薬物動態
【0145】
試験化合物の血漿および肺レベル、ならびにそれらの比は、下記の手法で決定した。Charles River LaboratoriesからのBALB/cマウスをアッセイで使用した。試験化合物は、0.2mg/mLの濃度で、pH4のクエン酸緩衝液中20%のプロピレングリコール中で個々に製剤化し、50uLの投薬溶液を、経口吸引によってマウスの気管に導入した。投薬後の様々な時点で(典型的には、0.167、2、6、24時間)、心臓穿刺を介して血液試料を取り出し、無傷の肺をマウスから切り取った。血液試料を4℃で、約12,000rpmで4分間遠心分離(Eppendorf遠心分離機、5804R)して、血漿を収集した。肺をパッド乾燥させ、計量し、滅菌水中1:3の希釈で均質化した。試験化合物の血漿および肺レベルを、試験マトリックスの標準曲線に構成された分析標準に対してLC-MS分析により決定した。肺の血漿に対する比を、肺AUC(μg時間/g)の血漿AUC(μg時間/mL)に対する比として決定し、AUCは、試験化合物濃度対時間の曲線下の面積として従来より定義されている。
【0146】
本発明の化合物は、マウスの血漿における曝露よりも約55倍多い、肺における曝露を示した。
アッセイ12:肺組織におけるIL-13誘導性pSTAT6誘導のネズミ(マウス)モデル
【0147】
Il-13は、喘息の病態生理の基礎をなす重要なサイトカインである(Kudlaczら、Eur. J. Pharmacol、2008年、582巻、154~161頁)。IL-13は、キナーゼのJanusファミリー(JAK)のメンバーを活性化する細胞表面受容体に結合し、これらは次いでSTAT6をリン酸化し、その後、さらなる転写経路を活性化する。記述されるモデルでは、IL-13の用量は、マウスの肺に局所的に送達されて、STAT6のリン酸化(pSTAT6)を誘導し、次いでこれをエンドポイントとして測定する。
【0148】
Harlanからの成体balb/cマウスを、アッセイで使用した。研究当日、動物に、イソフルランで軽く麻酔をかけ、ビヒクルまたは試験化合物(0.5mg/mL、数回の呼吸で50μLの合計体積)を、経口吸引を介して投与した。動物を、用量を与えた後に側臥位に置き、麻酔からの完全な回復に関してモニタし、その後、それらの飼育ケージに戻した。4時間後、動物にもう一度短く麻酔をかけ、経口吸引を介してビヒクルまたはIL-13(0.03μgの合計用量が送達、50μLの合計体積)を負荷し、その後、麻酔からの回復をモニタし、それらの飼育ケージに戻した。ビヒクルまたはIL-13投与の1時間後、肺を、抗pSTAT6 ELISA(ウサギmAb捕捉/コーティング抗体;マウスmAb検出/リポート抗体;抗pSTAT6-pY641;二次抗体:抗マウスIgG-HRP)を使用して両方のpSTAT6検出のために収集し、アッセイ11で既に述べたように全薬物濃度に関して分析した。
【0149】
モデルの活性は、ビヒクルで処置されたIL-13チャレンジ対照マウスと比較して、5時間での、処置された動物の肺に存在するpSTAT6のレベルの減少によって証明された。ビヒクルで処置されIL-13チャレンジされた対照動物と、ビヒクルで処置されビヒクルチャレンジされた対照動物との差は、任意の所与の実験で、それぞれ0%および100%の阻害効果を決定付けた。本発明の化合物は、IL-13チャレンジの4時間後に、STAT6リン酸化の約60%の阻害を示した。
アッセイ13:肺のAlternaria alternata-誘発性好酸球性炎症のネズミモデル
【0150】
気道好酸球増加は、ヒト喘息の特徴である。Alternaria alternataは、ヒトの喘息を悪化させかつマウスの肺の好酸球性炎症を誘発させ得る、真菌空中アレルゲンである(Havauxら、Clin Exp Immunol. 2005年、139巻(2号):179~88頁)。マウスでは、アルテルナリアが、肺の組織常在2型自然リンパ球を間接的に活性化し、それが応答して(例えば、IL-2およびIL-7)、JAK-依存性サイトカイン(例えば、IL-5およびIL-13)を放出し、好酸球性炎症を調整することが実証されてきた(Bartemesら、J Immunol. 2012年、188巻(3号):1503~13頁)。
【0151】
Taconicからの7から9週齢のオスC57マウスを、研究で使用した。研究当日、イソフルランで動物に軽く麻酔をかけ、ビヒクルまたは試験化合物(0.1~1.0mg/mL、数回の呼吸にわたり50μLの合計体積)のいずれかを、口腔咽頭吸引を介して投与した。動物を、用量を与えた後に側臥位に置き、麻酔からの完全な回復に関してモニタし、その後、それらの飼育ケージに戻した。1時間後、動物にもう一度短く麻酔をかけ、口腔咽頭吸引を介してビヒクルまたはアルテルナリア抽出物(200ugの合計抽出物が送達、50μLの合計体積)を負荷し、その後、麻酔からの回復をモニタし、それらの飼育ケージに戻した。アルテルナリア投与の48時間後、気管支肺胞洗浄液(BALF)を収集し、好酸球を、Advia 120血液検査システム(Siemens)を使用してBALF中でカウントした。
【0152】
モデルにおける活性は、ビヒクルで処置されたアルテルナリアチャレンジ対照動物と比較して、48時間での、処置された動物のBALF中に存在する好酸球のレベルの減少によって証明される。データは、ビヒクル処置されたアルテルナリアチャレンジBALF好酸球応答の阻害パーセントとして表される。阻害パーセントを計算するために、各条件ごとのBALF好酸球の数を、平均的なビヒクル処置されたアルテルナリアチャレンジBALF好酸球のパーセントに変換し、100パーセントから差し引く。本発明の化合物は、アルテルナリアチャレンジの48時間後に、BALF好酸球カウント数の約88%の阻害を示した。
アッセイ14:肺モデルのLPS/G-CSF/IL-6/IFNγカクテル-誘発性気道好中球性炎症のネズミモデル
【0153】
気道好中球増加は、ある範囲のヒトの呼吸器疾患の特徴である。化合物1を、気道好中球増加が誘発されるように、LPS/G-CSF/IL-6/IFNγカクテルを使用して、好中球性気道炎症のモデルで試験をした。
【0154】
Jackson Laboratoryからの7から9週齢のオスBalb/C(野生形)マウスを、研究で使用した。研究当日、イソフルランで動物に軽く麻酔をかけ、ビヒクルまたは試験化合物(1.0mg/mL、数回の呼吸にわたり50μLの合計体積)のいずれかを、口腔咽頭吸引を介して投与した。動物を、用量を与えた後に側臥位に置き、麻酔からの完全な回復に関してモニタし、その後、それらの飼育ケージに戻した。1時間後、動物にもう一度短く麻酔をかけ、口腔咽頭吸引(OA)を介してビヒクルまたはLPS;0.01mg/kg/G-CSF;5μg/IL-6;5μg/IFNγ;5μg(100μLの合計体積)を負荷した。LPS/G-CSF/IL-6/IFNγカクテル投与の24時間後、気管支肺胞洗浄液(BALF)を収集し、好中球をカウントした。
【0155】
化合物1でのOA処置後、気道好中球の統計的に有意な低減があり(ビヒクル処置したマウスと比較して84%)、JAK-依存性シグナル伝達の遮断が好中球性気道炎症に対して有効であることが実証された。
アッセイ15:ヒト3D気道培養物中のIFNγおよびIL-27誘導性ケモカインCXCL9およびCXCL10の阻害
【0156】
上皮気道組織培養物を、Mattek(AIR-100)から得た。培養物を、喘息患者由来であった。細胞培養物インサートにおいて、ヒトから誘導された気管/気管支上皮細胞を、細胞の下の温められた培養培地と上の気体試験雰囲気との気-液界面を可能にする多孔質膜支持体上で成長および分化させた。組織を、37℃、5%CO2加湿インキュベーター内の維持培地(Mattek、AIR-100-MM)で培養した。4人のドナーについて試験をした。0日目、組織培養物を、10μM、1μM、および/または0.1μMの試験化合物で処置した。化合物をジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma)で希釈して、最終濃度0.1%にした。0.1%のDMSOをビヒクル対照として使用した。試験化合物を、培養物と共に、37℃、5%CO2で1時間インキュベートし、その後、最終濃度100ng/mlのIFNγ(R&D Systems)またはIL-27(R&D Systems)を含有する事前に温めた培地を添加した。組織培養物を8日間維持した。培地を2日ごとに、化合物およびIFNγまたはIL-27を含有する新鮮な培地で置き換えた。8日目、組織培養物および上清を、分析用に収集した。上清試料を、ルミネックス分析(EMD Millipore)を使用してCXCL10(IP-10)およびCXCL9(MIG)に関してアッセイした。データは、阻害%+/-標準偏差(±STDV)として表される。阻害パーセントは、ビヒクル処置した細胞と比較した、IFNγまたはIL-27誘導性CXCL10またはCXCL9分泌に対する化合物阻害効力によって決定した。データは、3または4ドナーからの平均である。化合物1は、ビヒクル対照と比較したときに、IFNγ誘導性CXCL10分泌を、99%±2.0(10μMで)、71%±19(μMで)、および17%±12(0.1μMで)阻害することができた。化合物1は、ビヒクルと比較したときに、IFNγ誘導性CXCL9分泌を、100%±0.3(10μMで)、99%±0.9(1μMで)、および74%±17(0.1μMで)阻害することができた。化合物1は、ビヒクル対照と比較したときに、IL-27誘導性CXCL10分泌を108%±11(10μMで)、98%±10(1μMで)、および73%±8.5(0.1μMで)阻害することができた。化合物1は、ビヒクル対照と比較したときに、IL-27誘発性CXCL9分泌を100%±0(10μMで)、95%±3.7(1μMで)、および75%±3.5(0.1μMで)阻害することができた。
アッセイ16:IL-5媒介性好酸球生存アッセイ
【0157】
IL-5媒介性好酸球生存に関する試験化合物の効力を、ヒト全血(AllCells)から単離したヒト好酸球で測定した。IL-5はJAKを通してシグナル伝達するので、このアッセイは、JAK細胞効力の尺度を提供する。
【0158】
ヒト好酸球を、健康なドナーの新鮮なヒト全血(AllCells)から単離した。血液を、0.9%塩化ナトリウム溶液(Sigma-Aldrich)中の4.5%デキストラン(Sigma-Aldrich)と混合した。赤血球を、35分間沈降させた。白血球に富む上層を除去し、Ficoll-Paque(GE Healthcare)上に層にし、600gで30分間遠心分離した。血漿および単核細胞層を除去し、その後、顆粒球層を水で溶解して、汚染赤血球を全て除去した。好酸球を、ヒト好酸球単離キット(Miltenyi Biotec)を使用してさらに精製した。精製された好酸球の画分を、抗CD16 FITC(Miltenyi Biotec)と共に暗所で、4℃で10分間インキュベートした。純度は、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して分析した。
【0159】
細胞を、37℃、5%CO2加湿インキュベーター内で、10%の熱不活性化ウシ胎児血清(FBS、Life Technologies)、2mMのGlutamax(Life Technologies)、25mMのHEPES(Life Technologies)、および1×Pen/Strep(Life Technologies)を補充したRPMI 1640(Life Technologies)中で培養した。細胞を、10,000個/ウェルで培地(50μL)に播いた。プレートを、300gで5分間遠心分離し、上清を除去した。化合物を、DMSO中で段階希釈し、次いでさらに500倍に希釈して、培地中で2×の最終アッセイ濃度にした。試験化合物(50μL/ウェル)を細胞に添加し、37℃、5%CO2で1時間インキュベートし、その後、IL-5(R&D Systems;最終濃度1ng/mLおよび10pg/ml)を、事前に温めたアッセイ培地(50μL)に72時間添加した。
【0160】
サイトカイン刺激後、細胞を300gで5分間遠心分離し、冷DPBS(Life Technologies)で2回洗浄した。生存率およびアポトーシスを入手するために、細胞をヨウ化プロピジウム(Thermo Fisher Scientific)およびAPC Annexin V (BD Biosciences)と共にインキュベートし、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して分析した。IC50値は、細胞生存率パーセント対化合物濃度の生存率曲線の解析から決定した。データは、pIC50(負の常用対数IC50)値として表される。化合物1は、10pg/mlのIL-5の存在下で7.9±0.5のpIC50値を、1ng/mlのIL-5の存在下で6.5±0.2のpIC50値を示した。
アッセイ17:薬力学的アッセイ:ウサギの眼におけるIFNγ誘導性pSTAT1の阻害
【0161】
試験化合物の単回硝子体内投与が、STAT1タンパク質(pSTAT1)のインターフェロン-ガンマ(IFNγ)誘発性リン酸化を阻害する能力を、ウサギ網膜/脈絡膜組織で測定した。
【0162】
懸濁液製剤を、実施例1の化合物1と、精製水中0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)、0.02%Tween80、および9mg/mL塩化ナトリウムとを組み合わせて、20mg/mLの目標濃度を実現することによって調製した。
【0163】
オスのニュージーランド白色家兎(Liveon Biolabs、India)を、研究に使用した。動物を、研究施設(Jubilant Biosys Ltd.、India)に到着後に順応させた。それぞれのウサギに、合計2回の硝子体内(IVT)注射をし、その合計用量体積は眼1つ当たり50μLであった。1回目のIVT注射(眼1つ当たり45μL)は、0.9mgの試験化合物またはビヒクルを送達した。1週間後、2回目のIVT注射(眼1つ当たり5μL)は、IFNγ(1μg/眼、原液1mg/mL;Kingfisher Biotech)またはビヒクルを、IP-10の誘導のために送達した。注射当日に、ウサギにケタミン(35mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)を筋肉内注射して麻酔をかけた。深く麻酔をかけたら、それぞれの眼を滅菌食塩液ですすぎ、31ゲージ針を備えた0.5mLのインスリン注射器(50単位=0.5mL)を使用して、両眼の鼻上側に、直筋から3.5mmおよび縁から4mmの位置にBraunstein固定キャリパー(2 3/4”)でマークすることにより、IVT注射を行った。
【0164】
組織を、IFNγでの2回目のIVT注射の2時間後に収集した。網膜/脈絡膜組織(R/C)を収集し、均質化し、pSTAT1レベルを、ProteinSimple WES機器上で、定量的ウェスタンブロットにより測定した。IFNγ-誘導性pSTAT1の阻害パーセントを、ビヒクル/ビヒクルおよびビヒクル/IFNγ群と比較して計算した。
【0165】
IFNγチャレンジ前の1週間の前処置で、実施例1の化合物1の懸濁液製剤は、IFNγ-誘導性pSTAT1を85%阻害した。
【0166】
本発明について、特定の態様またはその実施形態を参照しながら記載してきたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができまたは均等物を置換することができることが、当業者に理解されよう。さらに、適用可能な特許法および規則により認められる限り、本明細書に引用される全ての刊行物、特許、および特許出願の全体は、各文書が個々に本明細書に参照により組み込まれる場合と同じ範囲まで、参照により本明細書に組み込まれる。