(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】レディ・トゥ・ドリンクコーヒー飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 5/24 20060101AFI20221005BHJP
A23F 5/14 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A23F5/24
A23F5/14
(21)【出願番号】P 2020506236
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2018072165
(87)【国際公開番号】W WO2019034715
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-10
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】アナンタラマン, ヘレン, ジリアン
(72)【発明者】
【氏名】ナポリターノ, ギレルモ, イー
(72)【発明者】
【氏名】イー, ユビン
(72)【発明者】
【氏名】フー, ユン-ツェ, レイ
(72)【発明者】
【氏名】ルセット, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シャー, アレクサンダー, エー
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/063942(WO,A1)
【文献】特表2012-525123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0044855(US,A1)
【文献】国際公開第2015/185372(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性コーヒー抽出物と;
中鎖トリグリセリド(MCT)と;
高アシルジェランガムと;
植物性タンパク質と;
緩衝剤と、を含み、
可溶性コーヒー抽出物が0.5~2.5w/w%であり、MCTが5~10w/w%であ
り、高アシルジェランガムが0.01~0.04w/w%であり、植物性タンパク質が0.3~1.0w/w%のエンドウ豆タンパク質である、
常温保存可能なレディ・トゥ・ドリンクコーヒー飲料。
【請求項2】
グアーガム、ペクチン、デンプン、及び/又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
0~10w/w%の範囲の糖を更に含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項4】
スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、及び/又はこれらの組み合わせを含む糖を更に含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項5】
前記緩衝剤が、重炭酸ナトリウム、リン酸二カリウム、クエン酸塩、及び/又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項6】
0~0.3w/w%の範囲の重炭酸ナトリウム
を含む、請求項5に記載の飲料。
【請求項7】
高アシルジェランガムと、糖と、緩衝剤とを添加する工程と;
植物性タンパク質と、
可溶性コーヒー抽出物とを添加する工程と;
MCT油を添加する工程と;
70~80℃で、約135/35barで均質化する工程と;
続いて、141~148℃で2~6秒間UHT処理し
、15~25℃まで冷却する工程と;
無菌条件下で容器に充填する工程と、
を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載のレディ・トゥ・ドリンクコーヒー飲料の、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]本開示は、全般的に、栄養製品に関する。より具体的には、本開示は、低カロリーであり、中鎖トリグリセリド(MCT)を含む、レディ・トゥ・ドリンク(「RTD」)コーヒー飲料に関する。
【0002】
[0002]消費者は、多くの場合、健康によい飲料を求めているが、味及び食感について妥協しない。加えて、消費者は、飲料のコク、食感又はクリーミーさとしても示される、良好な口当たりを求めている。
【0003】
[0003]MCT関連製品は、市場において知られており、例えば、20%のMCTを有するレディ・トゥ・ドリンク液体エマルジョンである医療用飲料BETAQUIK(登録商標)が知られている。この製品は、医師の指示のもとで使用することが勧められる。この製品は、コーヒー又は茶に添加することができるが、RTDコーヒー飲料ではない。同様に、外部から添加して飲料を調製することができる、Quest nutritionからのMCT油粉末も存在する。これは、RTDコーヒー飲料ではない。したがって、MCTを有するRTD飲料が必要とされている。
【0004】
[0004]MCTは、体内で急速に吸収及び代謝され、吸収不良を治療するために臨床用途において長く使用されてきた。MCTは、肝臓によってケトン体に変換され、グルコースの代替物として、脳へのエネルギー源として使用することができる。
【0005】
[0005]MCTの健康効果は、以下のとおりである:
容易に吸収され、消化されること、
認知機能の維持、
神経活動を調節すること。
【0006】
[0006]同時に、RTD飲料の食感知覚を改善するとき、飲料の長い保存可能期間での安定性を損なうことはできない。飲料安定性、口当たりを向上するために、保存可能期間中に相分離することなく、均質なRTD飲料を得ることができる解決策が必要とされている。
【0007】
[0007]飲料に添加される成分が、製品不安定化、例えば、製品粘度及び相分離(例えば、ゲル化、シネレシス、層化、クリーミング、及び/又は沈殿)の望ましくない増加などを引き起こし得ることから、このような安定性は困難な課題である。
【0008】
[0008]MCTを含有する既存の製品の大部分は、良好な口当たりを有さず、RTD形式ではない。
【0009】
[0009]したがって、製品消費に関する利便性を提供し、良好な口当たりを有するが、保存可能期間中に物理的安定性及び味覚プロファイルを損なわない、RTD飲料が必要とされている。
【0010】
[0010]本発明(preset invention)は、心地よい食感/口当たりを提供しながら、物理化学的不安定性の問題を伴わずに常温保存可能である、RTDコーヒー形式におけるMCT(中鎖トリグリセリド)の実証された健康効果に関する。
【0011】
[0011]加えて、コーヒーに関連する効果も提供する。
[発明の概要]
【0012】
[0012]本発明は、全般的に、コーヒーと;中鎖トリグリセリド(MCT)と;高アシルジェランガムと;植物性タンパク質(plant-based protein)と;緩衝剤と、を含み、コーヒーが0.5~2.5w/w%(重量/重量%)であり、MCTが5~10w/w%である、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料に関する。
【0013】
[0013]一実施形態では、組成物は、RTD無菌コーヒー飲料である。当該飲料は、低減された糖を有することができ、すぐに飲むことができ、心地よい口当たりを有することができる。当該飲料は、常温(ambient)保存中に良好な物理的化学的安定性を有することができ、例えば、4℃、20℃及び30℃で少なくとも6カ月間安定であることができる。当該飲料は、各種保存条件で、コーヒー飲料の全寿命にわたって、沈殿、シネレシス、クリーミング、粘度変化、経年ゲル化(age gelation)などの相分離による問題点、及び他の相分離/不安定性の問題を克服することもできる。
【0014】
[0014]新規技術を使用して、本発明者らはMCTを10~20g/200mL(提供量)含有するRTDコーヒーを開発した。驚くべきことに、特定濃度のヒドロコロイドと乳化剤との新規組み合わせは、食感/口当たりを損なうことなく良好な保存可能期間での安定性をもたらすことが見出された。乳化剤は、植物タンパク質である。植物タンパク質の例の1つは、エンドウ豆タンパク質である。
【0015】
[0015]通常、乳化剤がタンパク質であるとき、コーヒーの添加により水中油型エマルジョンが破壊される。植物タンパク質としては、穀類タンパク質、マメ科植物タンパク質、カボチャ属タンパク質、及びナッツタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
[0016]しかしながら、本発明者は、意外にも、エンドウ豆タンパク質などの植物タンパク質を特定の比でジェランと組み合わせて使用すると、所望のエマルジョン安定性が得られることを見出した。更に、MCT RTDコーヒーは、相分離(層化、シネレシス、沈殿など)などの他の不安定性の問題を有さない。
【0017】
[0017]驚くべきことに、高アシルジェランガムを含むヒドロコロイド食感付与/安定化システムを含む本発明の組成物は、良好な口当たりをもたらすことが見出された。本発明の組成物の他の利点は、保存可能期間中の相分離、異味、不安定性、及び粘度変化も克服することである。本発明の組成物は、相分離、ゲル化、沈殿、クリーミング、シネレシスなく、保存可能期間での安定性をもたらす。
【0018】
[0018]本発明はまた、冷蔵及び常温保存中に事実上一定の製品粘度を維持する、無菌RTD飲料を提供する。
【0019】
[0019]そのレシピは、所望により、ココア、各種風味料、甘味料、ビタミン、及びミネラルを含んでもよい。
【0020】
[0020]別の態様において、本発明は、
高アシルジェランガムと、糖と、緩衝剤とを添加する工程と;
植物性タンパク質と、コーヒー成分とを添加する工程と;
MCT油を添加する工程と;
続いて、141~148℃で2~6秒間UHT処理し、約15~25℃まで冷却する工程と;70~80℃で、約135/35barで均質化する工程と;
無菌条件下で容器に充填する工程と、
を含むレディ・トゥ・ドリンクコーヒー飲料の製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】参照飲料及び本発明の飲料の不安定性指標を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0021]用語「中鎖トリグリセリド(MCT)」は、C8:0及びC10:0をそれぞれ(50~65%):(34~45%)含みC12:0は2.5%未満である
【0023】
[0022]本明細書に記載の全ての百分率は、別途記載のない限り飲料組成物の総重量によるものである。本出願において含まれる全ての用量範囲は、この範囲内に含まれる全ての数値、整数、又は分数を包含することを意図する。本開示及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの」(「a」、「an」及び「the」)には、別段の指示がない限り、複数の参照物も含まれる。本明細書で使用する場合、「約」は、数値範囲に含まれる複数の数を指すものと理解される。更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数又は分数を含むと理解されるべきである。
【0024】
[0023]本開示は、RTDコーヒー飲料に関する。当該飲料は、冷蔵された、又は常温保存可能なコーヒーベースのRTD飲料である。当該コーヒー飲料は、4℃、20℃及び30℃で少なくとも6カ月の常温保存可能であることができる。
【0025】
[0024]驚くべきことに、保存中に良好な物理的化学的安定性を有しながら、良好な口当たり及び心地よい爽快な味ももたらす、無菌RTD飲料を提供できる、安定化/食感付与システムについて、成分の独自の組み合わせが見出された。安定化システムは、飲料の冷蔵及び常温保存中の相分離、ゲル化、クリーミング、シネレシスなどの回避を助けることによって、飲料を含有する冷蔵された、及び無菌常温保存可能なRTDコーヒーの安定性を改善する。一般的な実施形態では、本開示は、植物タンパク質、水、コーヒー、及び安定化/食感付与システムを含む飲料を提供する。飲料を調製するために添加される水は、処理/濾過された水、例えば、逆浸透(「RO」)処理水であり、合計硬度が10ppm未満(例えばCaCO3として)である。安定化システムは、高アシルジェランガムを有する。システムはまた、グアーガム、ペクチン、デンプン、及び/又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0026】
[0025]高アシルジェランガムの分子構造は、グルコース、ラムノース、及びグルクロン酸単位の繰り返しをベースとする直鎖である。用語「高アシルジェランガム」は、2つのアシル置換基がアセテート及びグリセレートである高アシル形態を指す。両置換基は同じグルコース残基に位置し、平均して1つの繰り返し毎に1つのグリセレート、及び2つの繰り返し毎に1つのアセテートが存在する。高アシルジェランガムの量は、0.01~0.04重量%の範囲である。
【0027】
[0026]一実施形態では、用語「コーヒー」は、可溶性コーヒー抽出物、インスタントコーヒー、低温で淹れた液、焙煎及び挽くことで得たコーヒー、微紛化コーヒー、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
[0027]タンパク質は、乳化剤として液体飲料に使用することができる。植物タンパク質としては、穀類ンパク質、マメ科植物ンパク質、カボチャ属タンパク質、及びナッツタンパク質を挙げ得るが、これらに限定されない。
【0029】
[0028]RTD飲料中のタンパク質は、0.3~1w/w%の範囲のエンドウ豆タンパク質などの植物タンパク質をベースとする。
【0030】
[0029]RTD飲料中の糖は、スクロース、ラクトース、グルコース及び/又はフルクトースを含んでもよい。別の実施形態では、糖は約0%~約10%の範囲である。
【0031】
[0030]コーヒー飲料はまた、風味料、甘味料、着色料、又はこれらの組み合わせなどの1つ以上の成分も含むことができる。甘味料としては、例えばスクロース、スクラロース、アセスルファムK、フルクトース、デキストロース、マルトース、デキストリン、レブロース、タガトース、ガラクトース、固形コーンシロップ及び他の天然甘味料又は人工甘味料を挙げ得る。無糖甘味料としては、糖アルコール、例えば、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、イソマルト、ラクチトール、水添デンプン加水分解物などの単品又は組み合わせを挙げ得るが、これらに限定されない。
【0032】
[0031]風味料、甘味料、及び着色料の使用量は大きく変動し、甘味料の効力、飲料に望まれる甘味、使用される風味料の濃度及び種類、並びにコスト検討などの要因に依存する。糖及び/又は無糖甘味料の任意の好適な組み合わせをチョコレート飲料に使用することができる。一実施形態では、甘味料は、約0.001~約1重量%の範囲の濃度でコーヒー飲料中に存在する。別の実施形態では、人工甘味料は、約0.001~約0.1重量%の範囲の量で存在する。
【0033】
[0032]好適な風味料の非限定的な例としては、コーヒーエンハンサ(coffee enhancer)、クリーム/乳製品エンハンサ、バニラ風味料、又はこれらの組み合わせが挙げられる。風味料は、約0.01~約0.5重量%の範囲の量で存在し得る。
【0034】
[0033]コーヒー飲料は、任意の好適なプロセスを用いて製造することができる。例えば、コーヒー飲料を製造するプロセスは、原材料を流体ミルク/水に溶解する工程と、コーヒー粉末を水和(例えば、湿潤)して飲料を形成する工程と、を含む。次いで、飲料を超高温(「UHT」)熱処理に供することができ、141~143℃で5秒間のUHT処理の前及び/又は後に、約135/35bar、70~75℃で均質化し、約15~25℃まで冷却し、無菌条件下で容器に充填することができる。
【0035】
[0034]一実施形態では、飲料は、1つ以上のデンプンを更に含む。デンプンは、良好な分散安定性の維持、保存中のシネレシス及び他の相分離問題の回避、及び口当たりの改善を助けることができる。デンプンは、例えば、トウモロコシデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、又は異なるデンプンの組み合わせであり得る。好ましい実施形態では、デンプン濃度は、組成物の約0.05~約3重量%の範囲である。
【0036】
[0035]一実施形態では、コーヒー飲料は、1種以上のビタミン及び/又はミネラルを更に含み得る。ビタミンは、約0.01~約0.5重量%の範囲の量であり得る。ビタミンとしては、ビタミンC及びビタミンB群が挙げられるが、これらに限定されない。好適なビタミンの非限定的な例としては、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンB1、B2、B6、B12、及びナイアシン(B3)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。ビタミンとしては、ビタミンA、D、E及びK、並びにパントテン酸及び葉酸などの酸ビタミン並びにビオチンも挙げられる。
【0037】
[0036]ミネラルは、約0.0025~約1重量%の範囲の量であり得る。ミネラルの非限定的な例としては、カルシウム、マグネシウム、鉄、又はこれらの組み合わせが挙げられる。カルシウム源としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、他の不溶性カルシウム化合物、又はこれらの組み合わせを挙げ得る。マグネシウム源としては、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、又はこれらの組み合わせを挙げ得る。鉄源としては、リン酸鉄アンモニウム、ピロリン酸第二鉄、リン酸第二鉄、リン酸第一鉄、他の不溶性鉄化合物、アミノ酸、EDTAなどの鉄キレート化合物、又はこれらの組み合わせを挙げ得る。ミネラルとしては、亜鉛、ヨウ素、銅、リン、マンガン、カリウム、クロム、モリブデン、セレン、ニッケル、スズ、ケイ素、バナジウム、及びホウ素も挙げ得る。
【0038】
[0037]一実施形態では、コーヒー飲料は、1つ以上のアミノ酸を更に含み得る。アミノ酸の非限定的な例としては、イソロイシン、アラニン、ロイシン、アスパラギン、リジン、アスパルテート、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタメート、トレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、プロリン、セリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
[0038]別の実施形態では、コーヒー飲料は、1つ以上のプレバイオティクスを更に含み得る。プレバイオティクスの非限定的な例としては、フラクトオリゴ糖、イヌリン、ラクツロース、ガラクトオリゴ糖、ダイズオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ラクトスクロース、グルコオリゴ糖、ペクチン性オリゴ糖、難消化性デンプン、糖アルコール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は、限定するものではなく例として、本開示の様々な実施形態を例示する。本発明のこの実施例及び全ての他の実施例では、成分の濃度は、製品配合全体に基づいて、w/w%として与えられる。
【0041】
飲料の物理的安定性は、Lumisizer Model 611を使用して評価した。Lumisizerは、サンプルの遠心分離の原理(2300gの力、120分)で作動する。透過率プロファイルが作成され、サンプルの空間及び時間分解吸光係数(Space and Time resolved extinction coefficients)が記録される。サンプルと参照との間の分離速度(不安定性指標として表される)の差から、沈殿及び/又はクリーミングに対する製品の相対的な物理的安定性を評価することができる。
【0042】
実施例1
MCTコーヒー飲料は、10kgのMCTと、4kgの糖と、1kgのアラビカコーヒー粉末と、600gのエンドウ豆タンパク質と、30gの高アシルジェランガムと、100gの重炭酸ナトリウムと、最終飲料を100kgにするのに必要な水と、を使用して調製した。
【0043】
MCTコーヒー飲料を製造する方法は、以下の順のプロセス工程を含む。
高アシルジェランガムを糖及び緩衝塩とドライブレンドした後、高撹拌下で、水が入った分離槽に添加した。
コーヒー粉末を、いくらかの量の水に予め溶解させた後、上記槽に添加した。
エンドウ豆タンパク質を添加した。
高撹拌及びいくらかの剪断力の下で、MCT油を槽内に注ぎ、予備エマルジョンを作製した。
生成物を、約142℃で約3秒間の超高温(UHT)熱処理に供した。
次いで、生成物を、75℃、135/35barで均質化した。
製品を20℃まで冷却し、好適な無菌容器、例えば、PETボトル、Tetra Pak(登録商標)、ジャー、ジャグ又はパウチに、RTD飲料を無菌充填した。
【0044】
[0039]飲料の物理化学的特性を、機器的方法によって評価し、官能試験員によって判断した。保存中に、相分離(シネレシス、クリーミング、マーブリングなど)、ゲル化はなく、粘度変化は事実上確認されなかった。驚くべきことに、飲料は、良好な外観、口当たり、滑らかな食感、及び「異」味のない良好な風味を有することが見出された。
【0045】
[0040]本発明の製品は、参照と比較して、著しく低い不安定性指標を有し(
図1)、参照飲料は、本発明の飲料と同じ配合及びプロセスを使用すること、ただし、合成乳化剤(モノグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル)とヒドロコロイド(カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロース、及びカラギーナン)とを使用することにより、調製された。結果は、本発明の飲料のより高い物理的安定性(より低い不安定性指標、より高い製品物理的安定性)を示す。
【0046】
実施例2
RTD飲料は、実施例1と同様に調製したが、アラビカの代わりにロブスタコーヒー粉末を添加した。より高い含有量のロブスタコーヒー(1.8kg)を添加して、最終製品のカフェイン含有量が同じになるようにした。
【0047】
飲料の物理化学的特性を、機器的方法によって評価し、官能試験員によって判断した。保存中に、相分離(シネレシス、クリーミング、マーブリングなど)、ゲル化はなく、粘度変化は事実上確認されなかった。飲料は、良好な外観と、口当たりと、滑らかな食感と、「異」味のない良好な風味と、を有することが見出された。
【0048】
実施例3
RTD飲料は、実施例1と同様に調製したが、糖を添加しなかった。結果は、良好な物理的安定性及び口当たりを示す。
【0049】
実施例4
RTD飲料は、実施例1と同様に調製したが、5kgのMCT油を添加しなかった。油の含有量が少ない方が、実施例1と比較して、色が濃くなり、クリーミーさが低下した。結果は、良好な物理的安定性及び風味を示す。
【0050】
実施例5
RTD飲料は、実施例1と同様に調製したが、45gの高アシルジェランガムを添加した。飲料粘度の著しい増加が確認され、ゲル化が観察された。
【0051】
実施例6
RTD飲料は、実施例1と同様に調製したが、5gの高アシルジェランガムを添加した。飲料の物理的安定性は良好であるが、サラサラした食感/口当たりが知覚された。
【0052】
実施例7
RTD飲料は、実施例1と同様に調製したが、エンドウ豆タンパク質を添加しなかった。重度の相分離が観察された。
【0053】
実施例8
RTD飲料は、実施例1と同様に調製したが、1.1kgのエンドウ豆タンパク質を添加した。飲料の物理的安定性は良好であったが、望ましくない風味(豆臭い(beany)、苦味など)が知覚された。