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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】無人航空機の防振装置、及び無人航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 25/64 20060101AFI20221005BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20221005BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20221005BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20221005BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B64C25/64
B64C39/02
B64C27/08
F16F1/36 Z
F16F1/38 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020513123
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2019009364
(87)【国際公開番号】W WO2019198393
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2018077649
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】露木 俊介
(72)【発明者】
【氏名】楠田 達希
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3163200(JP,U)
【文献】特開2013-194746(JP,A)
【文献】特開2010-185539(JP,A)
【文献】特開2000-193003(JP,A)
【文献】特開2011-140289(JP,A)
【文献】特開2007-239917(JP,A)
【文献】特開2013-060154(JP,A)
【文献】特開2016-175426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 25/64
B64C 39/02
B64C 27/08
F16F 1/36
F16F 1/38
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結される無人航空機の機体本体と脚部との間に介在する防振ゴムと、
前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定する固定用の部材と、
を備え
前記防振ゴムは、前記機体本体に設けたプレートと前記脚部に設けたプレートとの間にゴム弾性体を介在させた防振マウントであり、
前記固定用の部材は、鉛直方向に平行に配置した前記二種類のプレートと前記ゴム弾性体とを一体に固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした、
無人航空機の防振装置。
【請求項2】
前記固定用の部材は、前記二種類のプレートとこれらのプレートの間に位置する筒形の前記ゴム弾性体とを貫通する取付ボルトをナットで締結するフェールセーフ機構を形成している、
請求項に記載の無人航空機の防振装置。
【請求項3】
前記ゴム弾性体は、その内周面に前記取付ボルトの外周面に接触する突起を有している、
請求項に記載の無人航空機の防振装置。
【請求項4】
互いに連結される無人航空機の機体本体と脚部との間に介在する防振ゴムと、
前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定する固定用の部材と、
を備え、
前記防振ゴムは、外筒と内筒との間に筒形のゴム弾性体を介在させた防振ブッシュであり、
前記固定用の部材は、軸方向を鉛直方向に向けて配置した前記外筒及び前記内筒を含む二種類の筒を前記機体本体と前記脚部とにそれぞれ固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした、
人航空機の防振装置。
【請求項5】
前記防振ゴムは、前記二種類の筒を抜け止めするフェールセーフ機構を有している、
請求項に記載の無人航空機の防振装置。
【請求項6】
互いに連結される無人航空機の機体本体と脚部との間に介在する防振ゴムと、
前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定する固定用の部材と、
を備え、
前記防振ゴムは、筒形のゴム弾性体の外周面に環状の取付溝を設けた防振グロメットであり、
前記固定用の部材は、軸方向を鉛直方向に向けて前記ゴム弾性体を貫通する取付ボルトと前記取付溝とによって前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした、
人航空機の防振装置。
【請求項7】
前記防振ゴムは、前記取付溝に嵌合する前記機体本体と前記脚部とのいずれか一方の部材を前記防振グロメットから抜け止めするフェールセーフ機構を有している、
請求項に記載の無人航空機の防振装置。
【請求項8】
無人航空機の機体本体と、
前記機体本体に連結される脚部と、
前記機体本体と前記脚部とを連結する防振装置と、
を備え、
前記防振装置は、
互いに連結される無人航空機の機体本体と脚部との間に介在する防振ゴムと、
前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定する固定用の部材と、
を有し、
前記防振ゴムは、前記機体本体に設けたプレートと前記脚部に設けたプレートとの間にゴム弾性体を介在させた防振マウントであり、
前記固定用の部材は、鉛直方向に平行に配置した前記二種類のプレートと前記ゴム弾性体とを一体に固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした、
無人航空機。
【請求項9】
無人航空機の機体本体と、
前記機体本体に連結される脚部と、
前記機体本体と前記脚部とを連結する防振装置と、
を備え、
前記防振装置は、
互いに連結される無人航空機の機体本体と脚部との間に介在する防振ゴムと、
前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定する固定用の部材と、
を有し、
前記防振ゴムは、外筒と内筒との間に筒形のゴム弾性体を介在させた防振ブッシュであり、
前記固定用の部材は、軸方向を鉛直方向に向けて配置した前記外筒及び前記内筒を含む二種類の筒を前記機体本体と前記脚部とにそれぞれ固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした、
無人航空機。
【請求項10】
無人航空機の機体本体と、
前記機体本体に連結される脚部と、
前記機体本体と前記脚部とを連結する防振装置と、
を備え、
前記防振装置は、
互いに連結される無人航空機の機体本体と脚部との間に介在する防振ゴムと、
前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定する固定用の部材と、
を有し、
前記防振ゴムは、筒形のゴム弾性体の外周面に環状の取付溝を設けた防振グロメットであり、
前記固定用の部材は、軸方向を鉛直方向に向けて前記ゴム弾性体を貫通する取付ボルトと前記取付溝とによって前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした、
無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機の防振装置、及び無人航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、所謂ドローンなどと称される小型の無人航空機が開発され、農薬散布や空中撮影の分野で活用されている。建築や土木の分野での検査や測量と云った新たな用途の開拓も進んでおり、機体制御などの関連技術も日々向上している。無人航空機は、市場規模を拡大しつつある。
【0003】
無人航空機は、機体本体と脚部から構成されている。機体本体は、受信機、フライトコントローラー、プロペラ、モーター、バッテリーなどの無人航空機を飛行させ制御するための機器を搭載している。機体本体は、無人航空機における脳の役割を担っている。農薬散布や空中撮影の分野ではポンプやカメラ等の用途機器がこの機体本体に搭載される。脚部は、無人航空機の離着陸時に機体本体を保護する目的で設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-193208公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無人航空機では、飛行時、風等の影響により脚部から機体本体に振動が伝わることで、用途機器の作動に影響を及ぼすことが懸念される。例えば撮影する映像にブレを生じさせたり、農薬散布領域にズレを生じさせたりすることが起こり得る。着陸時の衝撃で機体のバランスが崩れることで機体が転倒し、プロペラや用途機器が破損することも懸念事項の一つである。
【0006】
これらの懸念事項に対する対策として、無人航空機の脚部に金属製のコイルばねや積層ダンパーを設置することが考えられる。しかしながらコイルばねや積層ダンパーの設置は無人航空機の機体重量の極端な増加に繋がる。この種の対策を採用すると、機体重量のバランスの見直しが必要になるなど、新たな不都合を生じかねない。
【0007】
本発明の課題は、脚部から機体本体に振動が伝わるのを抑制することができる無人航空機の防振装置を提供することである。
【0008】
本発明の別の課題は、着陸時の衝撃を緩和することができる無人航空機の防振装置を提供することである。
【0009】
本発明の更に別の課題は、機体重量を極端に増加させない無人航空機の防振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
無人航空機の防振装置は、互いに連結される無人航空機の機体本体と脚部との間に介在する防振ゴムと、前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定する固定部とを備えている。
防振装置の一態様として、前記防振ゴムは、前記機体本体に設けたプレートと前記脚部に設けたプレートとの間にゴム弾性体を介在させた防振マウントであり、前記固定用の部材は、鉛直方向に平行に配置した前記二種類のプレートと前記ゴム弾性体とを一体に固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした。
防振装置の別の一態様として、前記防振ゴムは、外筒と内筒との間に筒形のゴム弾性体を介在させた防振ブッシュであり、前記固定用の部材は、軸方向を鉛直方向に向けて配置した前記外筒及び前記内筒を含む二種類の筒を前記機体本体と前記脚部とにそれぞれ固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした。
防振装置のさらに別の一態様として、前記防振ゴムは、筒形のゴム弾性体の外周面に環状の取付溝を設けた防振グロメットであり、前記固定用の部材は、軸方向を鉛直方向に向けて前記ゴム弾性体を貫通する取付ボルトと前記取付溝とによって前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした。
無人航空機は、無人航空機の機体本体と、前記機体本体に連結される脚部と、前記機体本体と前記脚部とを連結する防振装置と、を備え、前記防振装置は、互いに連結される無人航空機の機体本体と脚部との間に介在する防振ゴムと、前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定する固定用の部材と、を有している。
防振装置の一態様として、前記防振ゴムは、前記機体本体に設けたプレートと前記脚部に設けたプレートとの間にゴム弾性体を介在させた防振マウントであり、前記固定用の部材は、鉛直方向に平行に配置した前記二種類のプレートと前記ゴム弾性体とを一体に固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした。
防振装置の別の一態様として、前記防振ゴムは、外筒と内筒との間に筒形のゴム弾性体を介在させた防振ブッシュであり、前記固定用の部材は、軸方向を鉛直方向に向けて配置した前記外筒及び前記内筒を含む二種類の筒を前記機体本体と前記脚部とにそれぞれ固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした。
防振装置のさらに別の一態様として、前記防振ゴムは、筒形のゴム弾性体の外周面に環状の取付溝を設けた防振グロメットであり、前記固定用の部材は、軸方向を鉛直方向に向けて前記ゴム弾性体を貫通する取付ボルトと前記取付溝とによって前記防振ゴムを前記機体本体側と前記脚部側とに固定することで、鉛直方向の荷重成分をせん断変形で受け、水平方向の荷重成分を圧縮・引張り変形で受ける向きに前記防振ゴムを配置するようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、脚部から機体本体に振動が伝わるのを抑制することができる。本発明の一態様によれば、着陸時の衝撃を緩和することができる。本発明の一態様によれば、機体重量が極端に増加するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施の形態に係る防振装置を正面方向から見た説明図。
図2図1の要部拡大図。
図3】同防振装置の一部分解斜視図。
図4】(A)は同防振装置の平面配置を示す説明図、(B)は同防振装置の平面配置の他の例を示す説明図。
図5】同防振装置の平面配置の他の例を示す説明図。
図6】同防振装置におけるバネ配置を示す説明図。
図7】(A)は同防振装置に備えられるゴム弾性体の側面図、(B)はゴム弾性体の他の例を示す側面図。
図8】第2実施の形態に係る防振装置を正面方向から見た説明図
図9】同防振装置の断面図。
図10】同防振装置の平面配置を示す説明図。
図11】同防振装置の平面配置の他の例を示す説明図。
図12】同防振装置に備えられる防振ブッシュの他の例を示す側面図。
図13】第3実施の形態に係る防振装置を正面方向から見た説明図。
図14】同防振装置の断面図。
図15】同防振装置に備えられるゴム弾性体の斜視図。
図16】同防振装置の平面配置を示す説明図。
図17】同防振装置の平面配置の他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施の形態]
第1実施の形態を図1ないし図7(A)(B)に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態の無人航空機1は、機体本体11および機体本体11に連結される脚部21を備える小型の無人航空機である。機体本体11は、受信機、フライトコントローラー、プロペラ、モーター、バッテリーなど無人航空機を飛行させ制御するための機器を搭載している。図1は、プロペラ12と、機体本体11のフレーム13とを示している。脚部21は、無人航空機1の離着陸時に機体本体11を保護するために、機体本体11を安定的に支持する。図1は、フレーム23と接地部24とを示している。無人航空機1は無人マルチコプターもしくは無人回転翼機とも称され、所謂ドローンなどとも称される。
【0015】
機体本体11および脚部21は、直接連結されるのではなく、防振装置101が有する防振ゴム31を介して互いに弾性的に連結されている。防振ゴム31は、互いに連結される無人航空機1の機体本体11と脚部21との間に介在している。防振装置101は、固定用の部材111を有している。固定用の部材111は、防振ゴム31を機体本体11側と脚部21側とに固定する。
【0016】
図2に示すように、防振ゴム31は、剛材(金属または硬質樹脂など)製の複数のプレート(取付プレート)15,16,25の間に円筒形のゴム弾性体32,33を介在させた防振マウント121を構成している。防振マウント121は、ゴム弾性体32,33がゴム材質よりなるため、比較的軽量である。
【0017】
複数のプレート15,16,25は、機体本体11のフレーム13の下面に互いに平行に設けられた第1プレート15および第2プレート16と、脚部21のフレーム23の上面に設けられた第3プレート25との組み合わせである。これらのプレート15,16,25は、無人航空機1が着陸姿勢にあるとき、鉛直方向に沿って平行に配置される。したがって機体本体11側の第1プレート15及び第2プレート16と、脚部21側のプレート25とからなる二種類のプレート15,16と25は、無人航空機1の水平な着陸面に対して垂直をなす。
【0018】
以下本明細書では、「垂直」の用語を無人航空機1の水平な着陸面に対して垂直、つまり鉛直と同じ意味で用いる。
【0019】
脚部21側の第3プレート25は、機体本体11側の第1プレート15と第2プレート16との間に配置される。ゴム弾性体32,33は、第1プレート15と第3プレート25との間、および第2プレート16と第3プレート25の間にそれぞれ介在している。ゴム弾性体32,33は、その中心軸線Oを水平方向に向けて互いに同軸上に配置され、かつ軸方向に予圧縮された状態で設けられている。
【0020】
本実施の形態の防振装置101は、防振ゴム31を機体本体11側と脚部21側とに固定する固定用の部材111として、取付ボルト35とナット36とを設けている。プレート15,16,25およびゴム弾性体32,33は、取付ボルト35の差し込みを許容し、差し込まれた取付ボルト35にナット36をねじ込み、ナット36を締め付けることによって固定されている。
【0021】
図3に示すように、円筒形のゴム弾性体32,33はそれぞれ、取付ボルト35を差し通すための軸穴32a,33aを備えている。第1プレート15および第2プレート16はそれぞれ、取付ボルト35を差し通すための軸穴15a,16aを備えている。第3プレート25も、取付ボルト35を差し通すための軸穴25aを備えている。第3プレート25の軸穴25aは、第1プレート15および第2プレート16に対して第3プレート25が水平方向および垂直方向に相対変位可能となるように、取付ボルト35との間に径方向の隙間を設定する。取付ボルト35は、第3プレート25の軸穴25aに、遊びをもって嵌合する。3枚のプレート15,16,25および2つのゴム弾性体32,33は、1組の弾性体ユニット32Aを構成している。
【0022】
防振ゴム31である弾性体ユニット32Aは、無人航空機1の平面上に複数組配置され、無人航空機1の周辺に沿って複数組配置されている。
【0023】
図4(A)に示す一例では、フレーム13,23は長方形の平面を有し、4組の弾性体ユニット32Aを4辺それぞれに沿わせ、4辺それぞれと平行な方向に向けて配置している。各弾性体ユニット32Aは、4辺それぞれの長手方向中央位置に配置されている。
【0024】
図4(B)に示すように、機体本体11の重量バランスやプロペラ12の回転方向等によっては、各弾性体ユニット32Aは、4辺それぞれの長手方向一端近傍位置に配置されてもよい。
【0025】
図5に示すように、いずれか一方または双方のフレーム13,23が平面円形とされるような場合には、一例として、複数組(図5では3組)の弾性体ユニット32Aは、円形の接線に沿って接線と平行な方向に向けて均等な間隔で配置される。
【0026】
上記構成の無人航空機1の防振装置101によれば、機体本体11と脚部21との間に挟まれて配置される防振ゴム31のゴム材質による防振・緩衝作用が発揮されるため、脚部21から機体本体11への振動の伝達を抑制することができる。無人航空機1の着陸時の衝撃が脚部21から機体本体11へ伝わることも抑制することができる。
【0027】
本実施の形態では、防振ゴム31は、円筒形のゴム弾性体32,33を備える防振マウント121によって形成されている。このような構造の防振ゴム31は、コイルばねや積層ダンパーと比較して軽量であり、無人航空機1の重量が極端に増加するのを抑制する。
【0028】
図6に示すように、防振ゴム31によるゴム弾性は、垂直成分Dおよび水平成分Dに分けられる。垂直成分Dについては、無人航空機1の飛行時、風等の影響による脚部起因の振動を絶縁するために、比較的低バネの特性であることが好ましい。水平成分Dについては、無人航空機1の着陸時、飛行慣性力の水平成分等での転倒防止および機体本体11への衝撃入力緩和を両立するために、比較的高バネの特性であることが好ましい。
【0029】
この点、上記構成の防振ゴム31は、その中心軸線Oが水平方向に向けて配置されることにより、無人航空機1における垂直方向の荷重成分を防振ゴム31のせん断変形で受け、無人航空機1における水平方向の荷重成分を防振ゴム31の圧縮・引張り変形で受けるよう配置されている。その結果垂直方向の荷重は、防振ゴム31のせん断変形による比較的低バネの特性で受け止められる。水平方向の荷重は、防振ゴム31の圧縮・引張り変形による比較的高バネの特性で受け止められる。
【0030】
したがって防振ゴム31は、垂直方向の荷重を防振ゴム31のせん断変形による比較的低バネの特性で受け止めるため、無人航空機1の飛行時、風等の影響による脚部21から機体本体11への振動を絶縁する。その一方で防振ゴム31は、水平方向の荷重を防振ゴム31の圧縮・引張り変形による比較的高バネの特性で受け止めるため、無人航空機1の着陸時、機体本体11へ入力される衝撃を緩和し、飛行慣性力の水平成分の作用による無人航空機1の転倒を抑制する。
【0031】
上記垂直成分Dについては、無人航空機1の着陸時、機体本体11へ入力される衝撃を緩和してクッション性を確保するため、荷重が加わる初期段階でのバネ特性を比較的低バネの特性とすることが好ましい。この点については、円筒形のゴム弾性体32,33の内周面に突起を付加して初期荷重をこの突起で受け止めることにより、荷重が加わる初期段階での低バネの特性を実現することが可能である。
【0032】
図7(A)に示すように、円筒形のゴム弾性体32,33の内周面32c,33cは、通常、円筒面状である。本実施の形態では、図7(B)に示すように、円筒形のゴム弾性体32の内周面32c,33cに突起37が付加されている。詳しくは、円筒形のゴム弾性体32の内周面32c,33cから径方向内方へ向けて突出する断面円弧形の突起37が複数個(図7(B)では8個)、均等間隔で配列されている。防振ゴム31は、突起37を持つ構造によっても、荷重が加わる初期段階での低バネの特性を実現している。
【0033】
上記構成の防振装置101は、機体本体11側のプレート15,16と脚部21側のプレート25とをボルト35およびナット36を介して結合している。このような結合構造は、フェールセーフ機構131を構成する。このフェールセーフ機構131は、防振ゴム32が万一破断することがあっても、機体本体11と脚部21との結合を維持し、機体本体11からの脚部21の脱落を防止する。
【0034】
[第2実施の形態]
第2実施の形態を図8ないし図12に基づいて説明する。第1実施の形態と同一部分は適宜同一符号で示し、説明も省略する。
【0035】
図8に示すように、本実施の形態の無人航空機1は、機体本体11および機体本体11に連結される脚部21を備える小型の無人航空機である。機体本体11は、受信機、フライトコントローラー、プロペラ、モーター、バッテリーなど無人航空機を飛行させ制御するための機器を搭載している。図1は、プロペラ12と、機体本体11のフレーム13とを示している。脚部21は、無人航空機1の離着陸時に機体本体11を保護するために、機体本体11を安定的に支持する。図1は、フレーム23と接地部24とを示している。無人航空機1は無人マルチコプターもしくは無人回転翼機とも称され、所謂ドローンなどとも称される。
【0036】
機体本体11および脚部21は、直接連結されるのではなく、防振装置101が有する防振ゴム31を介して互いに弾性的に連結されている。防振ゴム31は、互いに連結される無人航空機1の機体本体11と脚部21との間に介在している。防振装置101は、固定用の部材111を有している。固定用の部材111は、防振ゴム31を機体本体11側と脚部21側とに固定する。
【0037】
図9に示すように、防振ゴム31は、剛材(金属または硬質樹脂など)製の外筒42と内筒43との間に、円筒形のゴム弾性体44を介在させた防振ブッシュ41を構成している。ゴム弾性体44は、外筒42の内周面および内筒43の外周面にそれぞれ接着(加硫接着)されている。防振ブッシュ41は、円筒形のゴム弾性体44がゴム材質よりなるため、比較的軽量である。
【0038】
防振ブッシュ41は、その中心軸線Oを垂直方向に向けた状態で、機体本体11と脚部21との間に介在している。
【0039】
防振ブッシュ41は、外筒42を、機体本体11のフレーム13に設けた取付孔17に嵌合させ、フレーム13に固定している。外筒42は、固定用の部材111を構成する。フレーム13への防振ブッシュ41の固定は、例えば取付孔17への外筒42の圧入、溶接などの手法によって実現可能である。防振ブッシュ41は、内筒43を、ボルト45およびナット46の組み合わせを用いて、脚部21のフレーム23にボルト止めしている。ボルト45およびナット46は、固定用の部材111を構成する。このような構造によって防振ブッシュ41は、機体本体11および脚部21のそれぞれに固定されている。
【0040】
防振ゴム31である防振ブッシュ41は、無人航空機1の平面上に複数個配置され、無人航空機1の周辺に沿って複数個配置されている。
【0041】
図10に示す一例では、フレーム13,23は長方形の平面形状を有し、4組の防振ブッシュ41を4隅のそれぞれに配置している。図11に示す一例では、いずれか一方または双方のフレーム13,23は円形の平面形状を有し、複数組(図11では3組)の防振ブッシュ41を円周上に均等間隔で配列している。
【0042】
上記構成の無人航空機1に設けられた防振装置101によれば、機体本体11と脚部21との間に挟まれて配置される防振ブッシュ41が有するゴム弾性体44のゴム材質による防振・緩衝作用が発揮されるため、脚部21から機体本体11への振動の伝達を抑制することができる。無人航空機1の着陸時の衝撃が脚部21から機体本体11へ伝わることも抑制することができる。
【0043】
防振ブッシュ41は円筒形状であるため、水平方向の全ての入力に対して同じ剛性で入力を受けることが可能である。防振ブッシュ41は径方向の弾性が高いため、水平方向の衝撃の緩和に有利である。よって無人航空機1の着陸時に、無人航空機1の姿勢が安定しやすく、転倒による各部の破損を回避することが可能である。
【0044】
本実施の形態の防振ゴム31は、外筒42および内筒43と、円筒形のゴム弾性体44とを組み合わせた防振ブッシュ41によって形成されている。このような構造の防振ブッシュ41は、コイルばねや積層ダンパーと比較して軽量であり、無人航空機1の重量が極端に増加するのを抑制する。
【0045】
本実施の形態の防振ゴム31は、垂直方向の荷重をゴム弾性体44のせん断変形による比較的低バネの特性で受け止める。このため無人航空機1の飛行時、風等の影響による脚部21から機体本体11への振動が絶縁されやすい。その一方で防振ゴム31は、水平方向の荷重をゴム弾性体44の圧縮・引張り変形による比較的高バネの特性で受け止める。このため無人航空機1の着陸時、機体本体11へ入力される衝撃が緩和され、飛行慣性力の水平成分の作用による無人航空機1の転倒が抑制される。
【0046】
図12は、第2実施の形態の変形例を示す。本例は、内筒43の上端部にフランジ状の係合部47を設け、その外径を外筒42の内径よりも大きく設定している。この構造は、フェールセーフ機構132を構成する。このフェールセーフ機構132は、ゴム弾性体44が破断したとき、フランジ状の係合部47を外筒42に係合させ、機体本体11からの脚部21の落下を停止させる。フェールセーフ機構132は、機体本体11と脚部21との結合を維持し、機体本体11からの脚部21の脱落を防止するフェールセーフ機能を発揮する。
【0047】
第2実施の形態の別の変形例としては、防振ゴム31である防振ブッシュ41を90度回転させた状態で配置するようにしてもよい。上記したように、第2実施の形態では、中心軸線Oを垂直方向に向けた状態で、機体本体11と脚部21間との間に防振ブッシュ41を介在させている。これに対して第1実施の形態と同様に、防振ブッシュ41の中心軸線Oを水平方向に向けた状態で機体本体11と脚部21との間に介在させるようにしてもよい。
【0048】
[第3実施の形態]
第3実施の形態を図13ないし図17に基づいて説明する。第1及び第2実施の形態と同一部分は適宜同一符号で示し、説明も省略する。
【0049】
図13に示すように、本実施の形態の無人航空機1は、機体本体11および機体本体11に連結される脚部21を備える小型の無人航空機である。機体本体11は、受信機、フライトコントローラー、プロペラ、モーター、バッテリーなど無人航空機を飛行させ制御するための機器を搭載している。図1は、プロペラ12と、機体本体11のフレーム13とを示している。脚部21は、無人航空機1の離着陸時に機体本体11を保護するために、機体本体11を安定的に支持する。図1は、フレーム23と接地部24とを示している。無人航空機1は無人マルチコプターもしくは無人回転翼機とも称され、所謂ドローンなどとも称される。
【0050】
機体本体11および脚部21は、直接連結されるのではなく、防振装置101が有する防振ゴム31を介して互いに弾性的に連結されている。防振ゴム31は、互いに連結される無人航空機1の機体本体11と脚部21との間に介在している。防振装置101は、固定用の部材111を有している。固定用の部材111は、防振ゴム31を機体本体11側と脚部21側とに固定する。
【0051】
図14および図15に示すように、防振ゴム31は、円筒形のゴム弾性体52の外周面に環状の取付溝53を設けた防振グロメット51を構成している。グロメット51は、カラー54およびワッシャ55とともに、機体本体11と脚部21との間に組み付けられている。カラー54は、ゴム弾性体52の下端に配置され、内周に差し込まれている。ワッシャ55は、ゴム弾性体52の上端に配置されている。ワッシャ55は、ゴム弾性体52の内周に差し込まれたカラー54に押し当てられる。
【0052】
防振グロメット51は、その中心軸線Oを垂直方向に向けた状態で機体本体11と脚部21とに固定され、これらの機体本体11と脚部21との間に介在している。
【0053】
防振グロメット51を機体本体11に固定する固定用の部材111は、取付溝53である。防振グロメット51は、ゴム弾性体52の外周面に設けた環状の取付溝53を機体本体11のフレーム13に設けた取付孔17の開口周縁部17aに係合する。この係合は、機体本体11と防振グロメット51とを固定する。
【0054】
防振グロメット51を脚部21に固定する固定用の部材111は、ボルト56である。防振グロメット51は、防振ブッシュ41とともにカラー54およびワッシャ55を脚部21のフレーム23にボルト56で締結する。
【0055】
防振ゴム31である防振グロメット51は、無人航空機1の平面上に複数個配置され、無人航空機1の周辺に沿って複数個配置されている。
【0056】
図16に示す一例では、フレーム13,23は長方形の平面形状を有し、4組の防振グロメット51を4隅のそれぞれに配置している。図17に示す一例では、いずれか一方または双方のフレーム13,23は円形の平面形状を有し、複数組(図17では3組)の防振グロメット51を円周上に均等間隔で配列している。
【0057】
上記構成の無人航空機1に設けられた防振装置101によれば、機体本体11と脚部21との間に挟まれて配置される防振グロメット51が有するゴム弾性体52のゴム材質による防振・緩衝作用が発揮されるため、脚部21から機体本体11への振動の伝達を抑制することができる。無人航空機1の着陸時の衝撃が脚部21から機体本体11へ伝わることも抑制することができる。
【0058】
防振グロメット51は円筒形状であるため、水平方向の全ての入力に対して同じ剛性で入力を受けることが可能である。防振グロメット51は径方向の弾性が高いため、水平方向の衝撃の緩和に有利である。よって無人航空機1の着陸時に、無人航空機1の姿勢が安定しやすく、転倒による各部の破損を回避することが可能である。
【0059】
本実施の形態の防振ゴム31は、円筒形のゴム弾性体52の外周面に環状の取付溝53を設けた防振グロメット51によって形成されている。このような構造の防振グロメット51は、コイルばねや積層ダンパーと比較して軽量であり、無人航空機1の重量が極端に増加するのを抑制する。
【0060】
本実施の形態の防振ゴム31は、垂直方向の荷重をゴム弾性体52のせん断変形による比較的低バネの特性で受け止める。このため無人航空機1の飛行時、風等の影響による脚部21から機体本体11への振動が絶縁されやすい。その一方で防振ゴム31は、水平方向の荷重をゴム弾性体52の圧縮・引張り変形による比較的高バネの特性で受け止める。このため無人航空機1の着陸時、機体本体11へ入力される衝撃が緩和され、飛行慣性力の水平成分の作用による無人航空機1の転倒が抑制される。
【0061】
図14に示すように、本実施の形態の防振装置101では、防振グロメット51のワッシャ55の外径は、取付溝53の内径、つまり機体本体11のフレーム13に設けた取付孔17の内径よりも大きく設定されている。この寸法設定は、フェールセーフ機構133を構成する。このフェールセーフ機構133は、ゴム弾性体52が破断したとき、取付孔17の開口周縁部17aをワッシャ55に係合させ、機体本体11からの脚部21の落下を停止させる。フェールセーフ機構133は、機体本体11と脚部21との結合を維持し、機体本体11からの脚部21の脱落を防止するフェールセーフ機能を発揮する。
【0062】
第3実施の形態の変形例としては、防振ゴム31である防振グロメット51を90度回転させた状態で配置するようにしてもよい。上記したように、第3実施の形態では、中心軸線Oを垂直方向に向けた状態で、機体本体11と脚部21間との間に防振グロメット51を介在させている。これに対して第1実施の形態と同様に、防振グロメット51の中心軸線Oを水平方向に向けた状態で機体本体11と脚部21との間に介在させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 無人航空機
11 機体本体
12 プロペラ
13,23 フレーム
15,16,25 プレート
15a,16a,25a 軸穴
17 取付孔
17a 開口周縁部
21 脚部
24 接地部
31 防振ゴム
32,33,44,52 ゴム弾性体
32A 弾性体ユニット
32a,33a 軸穴
32c,33c 内周面
35,45,56 取付ボルト(固定用の部材)
36,46 ナット(固定用の部材)
37 突起
41 防振ブッシュ
42 外筒
43 内筒
47 係合部
51 防振グロメット
53 取付溝
54 カラー
55 ワッシャ
101 防振装置
111 固定用の部材
121 防振マウント
131,132,133 フェールセーフ機構
O 中心軸線
垂直成分
水平成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17