(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】積層造形を用いて物体を製造する装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20221005BHJP
B22F 10/20 20210101ALI20221005BHJP
B22F 10/31 20210101ALI20221005BHJP
B22F 10/36 20210101ALI20221005BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20221005BHJP
B22F 12/44 20210101ALI20221005BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20221005BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20221005BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20221005BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221005BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221005BHJP
B33Y 40/10 20200101ALI20221005BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20221005BHJP
【FI】
B29C64/393
B22F10/20
B22F10/31
B22F10/36
B22F10/85
B22F12/44
B22F12/90
B29C64/153
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/10
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2020516826
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(86)【国際出願番号】 NL2018050616
(87)【国際公開番号】W WO2019059761
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】517182527
【氏名又は名称】アディティブ インダストリーズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイン、エルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ハンデル、ロブ ピーター アルバート
(72)【発明者】
【氏名】ヴェース、マーク ヘルマン エルス
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/118569(WO,A1)
【文献】特開2018-077227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0082668(US,A1)
【文献】国際公開第2017/085470(WO,A1)
【文献】特開平05-045889(JP,A)
【文献】特表2016-540109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルドプレートのビルド表面上で積層造形を用いて物体を製造する装置の調整方法であって、
前記装置は、
電磁放射への暴露によって凝固可能な粉末材料の槽を受けるプロセスチェンバと、
物体を材料の槽の表面レベルに関係付けて配置するための支持具と、
材料の選択された部分を凝固するために電磁放射ビームを表面レベルに放出するように構成された凝固デバイスと、
を備え、
前記凝固デバイスは、前記電磁放射ビームのフォーカス設定を調整するためのフォーカスメンバを備え、
前記調整方法は、
センサユニットを備えた調整システムを与えるステップと、
第1のフォーカス設定で第1のテストパターンを生成するために、前記凝固デバイスを制御するステップと、
第2のフォーカス設定で第2のテストパターンを生成するために、前記凝固デバイスを制御するステップと、
前記第1のフォーカス設定で得られた前記第1のテストパターンの第1の特性と、対応する前記第2のフォーカス設定で得られた前記第2のテストパターンの第2の特性とを決定するために、前記調整システムを使用するステップと、
前記第1の特性と前記第2の特性とに基づいて、調整されたフォーカス設定を決定するステップと、
を備え
、
前記調整されたフォーカス設定を決定するステップは、得られた特性値に関連する関数を、使われるフォーカス設定において、得られた特性値にフィットするステップを含むことを特徴とする調整方法。
【請求項2】
少なくとも1回は繰り返して実行されることを特徴とする請求項1に記載の調整方法。
【請求項3】
前記材料の槽の表面レベル上の第1の一般位置に関係付けて、前記凝固デバイスの第1の一般位置設定で実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の調整方法。
【請求項4】
繰り返して実行されることは、請求項1に記載の方法が、前記材料の槽の表面レベル上の第2の位置に関係付けて、前記凝固デバイスの第2の一般位置設定で実行されることを含むことを特徴とする請求項2または3に記載の調整方法。
【請求項5】
第3のフォーカス設定で第3のテストパターンを生成するために、前記凝固デバイスを制御するステップと、
前記第3のフォーカス設定で得られた前記第3のテストパターンの第3の特性を決定するために、前記調整システムを使用するステップと、
前記第1の特性、前記第2の特性および前記第3の特性に基づいて、調整されたフォーカス設定を決定するステップと、
を備える請求項1から4のいずれかに記載の調整方法。
【請求項6】
前記第1の特性および前記第2の特性は、前記センサユニットにより得られた画像に基づいて決定され、
前記第1の特性および前記第2の特性は、コントラスト値、カラー値およびグレー値のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の調整方法。
【請求項7】
前記第1のテストパターンは、所定の間隔を空けて配置された少なくとも2つの平行なラインを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の調整方法。
【請求項8】
前記関数の最大値または最小値を決定するステップを備え、
前記関数は二次関数であることを特徴とする請求項
1に記載の調整方法。
【請求項9】
複数の格子点に関して調整されたフォーカス設定を決定するために、異なる位置配置の所定の格子が使われ、複数の格子点に関して得られた結果に基づいてフィットを行う追加的なステップを備えることを特徴とする請求項
1から8のいずれかに記載の調整方法。
【請求項10】
前記支持具上に調整プレートを与えるステップと、
前記調整プレート内で、第1のテストパターンおよび第2のテストパターンを生成するステップと、
を備える請求項
1から9のいずれかに記載の調整方法。
【請求項11】
前記調整プレートはメインボディとコーティング層とを備え、
前記メインボディと前記コーティング層は互いに異なる材料特性を持ち、
前記メインボディは前記コーティング層と異なる色を持つことを特徴とする請求項
10に記載の調整方法。
【請求項12】
ビルドプレートのビルド表面上で積層造形を用いて物体を製造する装置であって、
電磁放射への暴露によって凝固可能な粉末材料の槽を受けるプロセスチェンバと、
物体を材料の槽の表面レベルに関係付けて配置するための支持具と、
材料の選択された部分を凝固するために電磁放射ビームを表面レベルに放出するように構成された凝固デバイスと、
センサユニットを備えた調整システムと、
を備え、
前記調整システムは、
第1のフォーカス設定で第1のテストパターンを生成するために、前記凝固デバイスを制御し、
第2のフォーカス設定で第2のテストパターンを生成するために、前記凝固デバイスを制御し、
前記第1のフォーカス設定で得られた前記第1のテストパターンの第1の特性と、対応する前記第2のフォーカス設定で得られた前記第2のテストパターンの第2の特性とを決定し、
前記第1の特性と前記第2の特性とに基づいて、調整されたフォーカス設定を決定
し、
前記調整システムは、使われるフォーカス設定に関連する関数を、得られた特性値にフィットすることにより、調整されたフォーカス設定を決定するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項13】
前記センサユニットは画像を取得するように構成され、
前記調整システムは、前記第1の特性および前記第2の特性を、前記センサユニットにより得られた画像に基づいて決定するように構成され、
前記調整システムは、前記第1の特性および前記第2の特性として、コントラスト値、カラー値およびグレー値のうちの少なくとも1つを決定するように構成されることを特徴とする請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
前記調整システムは、第1のテストパターンとして、所定の間隔を空けて配置された少なくとも2つの平行なラインを生成するように構成されることを特徴とする請求項13または
13に記載の装置。
【請求項15】
前記調整システムは、前記関数の最大値または最小値を決定するように構成されることを特徴とする請求項
14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形を用いて物体を製造する装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンティングまたは積層造形とは、3次元物体をプリントするための任意の様々な処理のことをいう。例えばポリマー製品の大量生産は、射出成形などの従来技術を用いてより廉価に実現できる。しかしながら3次元物体の比較的少量の生産は、3Dプリンティングまたは積層造形を用いてより高速かつ柔軟かつ廉価に実現できる。
【0003】
積層造形は、将来さらに重要となると考えられる。なぜなら製造会社は、一定の高品質を保ちながら製品製造を経済化することのみならず、製品開発の分野における時間とコストの節約に関しても、一層強い圧力を競争相手から受けるからである。また製品の寿命は常に短縮化されている。製品の成功には、品質とコストに加えて、市場導入のタイミングがますます重要になってきている。
【0004】
3D物体を製造する目的で、粉末又は液体の材料を選択的に層的な方法で焼結することにより、3次元物体を製造することができる。特に、所望のデザインを層ごとに形成するためにコンピュータ制御された積層造形装置を用いて、複数の層を連続的に焼結することができる。積層処理は主にコンピュータ制御の下で使われ、材料の連続層が積層される。これらの物体は、3Dモデルその他の電子データのソースから製造され、ほぼ任意の形または形状にすることができる。
【0005】
3次元物体をプリントするためには、コンピュータデザインパッケージや3Dスキャナーなどにより、プリント可能なモデルを作成する必要がある。入力は通常、STLファイル、STEPファイルまたはIGSファイルなどの3D-CADファイルである。CADファイルから物体をプリントする前に、ファイルはソフトウェアで処理される必要がある。このスライサーは、モデルを一連の薄い層に変換する。さらにこれらの層の各々の作成を制御するための装置設定とベクトルが生成される。
【0006】
連続断面から3D物体を形成することを目的に、材料の連続層を積層するために、コンピュータ制御の積層造形装置に備えられるレーザが、これらの装置設定とベクトルに続く。これらの層はCADモデルからの仮想的な断面に対応するため、最終的な3D物体を生成するために、このプロセス中に結合または融合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3次元物体の製造、特に積層造形を用いた金属物体の製造における課題の1つは、選択された層部分をいかに正確に焼結するかにある。
【0008】
従って本発明の目的は、積層造形を用いて物体を製造する装置の精度を改善することにある。特に本発明の目的は、レーザのフォーカシングの精度を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、ビルドプレートのビルド表面上で積層造形を用いて物体を製造する装置を調整する方法を与える。この装置は、
電磁放射への暴露によって凝固可能な粉末材料の槽を受けるプロセスチェンバと、
物体を材料の槽の表面レベルに関係付けて配置するための支持具と、
材料の選択された部分を凝固するために電磁放射ビームを表面レベルに放出するように構成された凝固デバイスと、を備える。凝固デバイスは、電磁放射ビームのフォーカス設定を調整するように構成されたフォーカスメンバを備える。このようにして正しいフォーカスが設定される。
【0010】
本発明によれば、本方法は、センサユニットを備えた調整システムを与えるステップを備える。この調整システムは、本発明に係る方法の1つ以上のステップを実行するおよび/または制御するように構成されてよい。特に調整システムは、後述するように、凝固デバイスで生成されるテストパターンの特性を決定するように構成される。調整システムは、上記装置の一部であってもよいし、スタンドアロンのユニットであってもよい。
【0011】
本発明に係る方法では、凝固デバイスは、第1のフォーカス設定で第1のテストパターンを生成し、第2のフォーカス設定で第2のテストパターンを生成するように制御される。その後、第1のフォーカス設定で得られた第1のテストパターンの第1の特性を決定し、第2のフォーカス設定で得られた第2のテストパターンの第2の特性を決定するために、調整システムが使われる。
【0012】
第2のフォーカス設定は、第1のフォーカス設定と異なる。このようにして、異なるフォーカス設定を互いに比較し、調整されたまたは最適なフォーカス設定を決定することができる。第2のテストパターンは、第1のテストパターンと正確に同じ位置で生成されてもよい。例えば、第1のテストパターンは第1の調整プレート上で生成されてよく、第1の特性を決定するために、このテストパターンは解析されてよい。その後、新たな調整プレートが与えられ、この第2の調整プレート上で、第1のテストパターンが生成されたのとまったく同じ位置で第2のテストパターンが生成されてよい。その後この第2のテストパターンは解析されてよい。これに代えて、第1および第2のテストパターンは、第1の一般位置で生成されてもよい。
この場合第1および第2のテストパターンは、それぞれの上に直接生成されず、(例えば1つの調整プレート上で)実質的に互いに隣接して生成される。
【0013】
いずれの場合も、一旦第1および第2のテストパターンが生成され解析されると、従ってこれらのテストパターンの第1および第2の特性が決定されると、これら第1および第2の特性は、調整されたフォーカス設定の基礎となるものを形成する。例えば、凝固デバイスの所望のフォーカス設定として、第1および第2のフォーカス設定の1つが選択されてよい。これに代えて、取得された特性を処理することにより、調整されたまたは最適なフォーカス設定が得られてもよい。例えば、取得された特性が予め定められた値と比較され、調整されたフォーカス設定を得るために内挿を使うことが考えられる。本発明のある実施の形態では、得られた結果に関数がフィットされ、フィットされた関数の最大値(または最小値)に基づいて最適値が決定される。これについては、本発明の特定の実施の形態に関連して詳しく説明する。
【0014】
いずれの場合も本発明に係る方法により、テストパターンの特性に基づいて、調整されたフォーカス設定を決定することができる。この結果、精度が向上し、特に装置のフォーカス設定が改善される。従って、本発明の目的が達成される。
【0015】
前述のフォーカスメンバは、ガルバノミラー部品を備えてよい。ガルバノミラー(追加的なFーθスキャンレンズを使わずに)を使う装置では、システムのジオメトリは、正確なフォーカス結果を得るには単一のフォーカス設定では不十分である。一般にシステムは、システムの光軸と平行なフォーカスに関して最適化される。材料の槽表面上におけるレーザのxy位置を光軸に関して変えると、レーザビームの光路は少し長くなる。ガルバノミラー部品の特性に起因して、この効果は凝固される材料の槽の端部で最も大きい。すべてのxy位置で正確なフォーカスを示すために、一般的には球面状の修正マトリックスが使われる。複数の不連続な位置における凝固デバイスのフォーカスをさらに改善するために、その後本発明に係る方法が使われてもよい。直接測定されていないxy位置について改善されたフォーカス設定を得るために、本方法は、これらの1つ以上の不連続な位置で得られた結果を内挿するステップをさらに備えてもよい。
【0016】
以下、本発明に係る有利な実施の形態を説明する。
【0017】
ある実施の形態では、この方法は少なくとも1回繰り返される。例えばフォーカス設定の時間に関係する変化に対応するために、この方法は特定のインターバルで繰り返されてよい。追加的にまたは代替的に、凝固デバイスの異なる位置設定のために、この方法は繰り返されてもよい。こうしてこの方法は、材料の槽の表面レベルおける第1の一般位置に関係する凝固デバイスの第1の一般位置設定で実行されてよく、さらに材料の槽の表面レベルおける第2の一般位置に関係する凝固デバイスの第2の一般位置設定で実行されてよい。この方法を繰り返すことは、上述で定義された本発明係る方法を、材料の槽の表面レベルおける第2の一般位置に関係する凝固デバイスの第2の一般位置設定で実行することを含んでもよい。第1および第2の一般位置は実質的に互いに異なる。
【0018】
装置が複数の凝固デバイスを備え、これらの凝固デバイスの各々が対応する電磁放射ビームのフォーカス設定を調整するためのフォーカスメンバをそれぞれ備える場合、前述の方法を繰り返すと有利だろう。この方法を使うことにより、複数の凝固デバイスで信頼性の高い調整が得られる。
特に複数の凝固デバイスは、同じパワー設定で動作するように、または互いに異なるパワー設定で動作するように構成されてよい。
【0019】
装置がたがいに異なるパワー設定で動作するとき、前述の方法を繰り返すと有利だろう。この方法は、第1のパワー設定で実行されてよく、その後第1のパワー設定と異なる第2のパワー設定で繰り返されてよい。これにより、異なるパワー設定で装置をフォーカス調整することができる。
【0020】
ある実施の形態では、格子点で調整されたフォーカス設定を得るために、所定の異なる位置設定の格子が使われる。ある有利な実施の形態では、格子点で装置を調整するために、所定の異なる位置設定の格子が使われる。格子は、長方形の格子であっても、正方形の格子であってもよいし、別のジオメトリも考えられる。こうして、ビルドプレート全体で、すなわち材料の槽の表面領域全体でフォーカス設定を調整することができる。
【0021】
特にこの方法は、複数の格子点に関して得られた結果に基づいてフィットを行う追加的なステップを備える。これにより、すべての局所的な誤差が修正または平均化され、調整されたフォーカス設定が格子全体で(すなわち、格子点だけでなく)得られる。
【0022】
ある有利な実施の形態では、第3のフォーカス設定で第3のテストパターンが使われる。さらなるフォーカス設定でさらなるテストパターンが使われてもよい。この実施の形態では、この方法は以下のステップを備える。
第3のフォーカス設定で第3のテストパターンを生成するために、凝固デバイスを制御するステップ。
第3のフォーカス設定で得られた第3のテストパターンの第3の特性を決定するために、調整システムを使用するステップ。
第1の特性、第2の特性および第3の特性に基づいて、調整されたフォーカス設定を決定するステップ。
【0023】
異なるフォーカス設定でさらなるテストパターンを使うことにより、さらに正確なフォーカス設定を決定することができる。特に、少なくとも5個、好ましくは少なくとも7個、さらに好ましくは9個、あるいは例えば11個のフォーカス設定を使うことが考えられる。テストされるフォーカス設定は、期待値または名目値(「ゼロ」値)を備えてもよい。この値は、凝固デバイスおよびビルド表面の幾何学的設定と独立な計算に基づいてよい。テストされるフォーカス設定は、正または負の摂動を備えてよい。テストされるフォーカス設定の範囲は、一定の間隔を持ってよい。例えば、フォーカス設定は、-10、-5、0、5および10であってよい(任意単位)。
【0024】
ある実施の形態では、対応する第1および第2の特性は、センサユニットにより得られた画像に基づいて決定される。センサユニットは、第1のテストパターンを生成するために使われる。センサユニットはまた、第2のテストパターンを生成するために使われる。センサユニットにより生成された画像は、第1のテストパターンと第2のテストパターンの両方を含んでもよい。場合によっては、画像は第3およびさらなるテストパターンを含んでもよい。好ましくは、テスト位置ごとに1つの画像が生成される。これは、第1の画像は第1の一般位置に関して生成され、第2の画像は第2の一般位置に関して生成されることを意味する。画像が1つのテスト位置に関する複数のテストパターンを含むときは、2つのテストパターンを互いに直接比較することができる。2つ(以上)の画像を互いに比較するときは、標準的な画像化プロトコルを使うこと、または複数の画像を規格化することが必要となる。これにより画像は微妙に変化するが、これは望ましいことではない。単一の画像を使うことによりこの欠点が解決され、より正確な比較が可能となる。
【0025】
センサユニットは、当該センサユニットにより得られた画像が、凝固デバイスと同軸であるように構成され設計されてよい。これは、テストパターンが生成されるとき、センサユニットにより得られた画像のxy位置が、凝固デバイスのxy位置セットと同じ(またはほぼ同じ)であることを意味する。これにより、xy位置セットと決定されたフォーカス設定との間のある種のフィードバックが得られる。
【0026】
ある実施の形態では、特性は、コントラスト値、カラー値およびグレー値のうちの少なくとも1つを含む。調整されたフォーカス設定を決定するために、これらの値の1つ(またはそれ以上)は互いに比較されてよい。特に調整されたフォーカス設定を決定するために、各テストに関する平均グレー値が使われてよい。
【0027】
例として、レーザが金属プレート上にマークを作る状況を考える。フォーカスが合っていないとき、レーザは金属プレート上に視認可能なマークを作れないだろう。フォーカスが改善されると、マークは少し見えるようになる。フォーカスが1点に合うと、一般にマークは鮮明に見えるだろう。これにより、マークと周辺の金属プレートとの間のコントラストが比較的高くなるだろう。さらに、フォーカス精度が上がると、異なるテストパターンの平均グレー値が上がるまたは下がるだろう。従ってこの性質は、フォーカスが合っているか否かを決定することに使えるだろう。
【0028】
ある実施の形態では、第1のテストパターンは、所定の間隔を空けて配置された少なくとも2つの平行なラインを含む。これにより、画像内に表示されるテストパターンのいくつかのパラメータを解析することができる。
【0029】
ある実施の形態では、調整されたまたは最適なフォーカス設定を決定するステップは、得られた特性値に関連する関数を、使われるフォーカス設定にフィットするステップを含む。得られたデータ点を通る関数をフィットすることにより、使われるフォーカス設定と独立に、最適な調整されたフォーカス設定を解析、決定および/または計算することができる。
【0030】
ある実施の形態では、この方法は、前述の関数の最大値または最小値を決定するステップを含む。これにより、調整されたフォーカス設定を、テスト設定として使われることのないフォーカス設定とすることができる。例えば、[-10、-5、0、5、10]の範囲のフォーカス設定を考える。これらについてのフォーカス設定に定められ、その特性が解析された後、データセットに二次関数(または同様の、または別の関数)がフィットされる。このフィットに基づいて、フォーカス設定-7(これはテストされていない点である)での二次関数の最大値が計算される。従って関数の最大値または最小値を決定することにより、多くの設定をテストすることなく、より正確にフォーカス設定を決定することができる。
【0031】
前述のように関数は二次関数であってよいが、他の関数、特に多項式関数であってもよい。
【0032】
ある有利な実施の形態では、この方法は、支持具上に調整プレートを与えるステップと、この調整プレート内で、第1のテストパターンおよび第2のテストパターンを生成するステップと、を備える。第1および第2のテストパターンは、1つの調整プレート内で生成される。さらに多くの位置でフォーカスを調整する必要があるときも、この1つの調整プレートを使うことができる。装置内にさらに多くの凝固デバイスが存在するときも、この1つの調整プレートを使うことができる。同じ調整プレート内で、さらに多くのテストパターンを生成することもできる。
【0033】
ある実施の形態では、調整プレートはメインボディとコーティング層とを備える。メインボディとコーティング層は互いに異なる材料特性を持つ。特にメインボディはコーティング層と異なる色を持つ。コーティング層の厚さは、正しく(または、ほぼ正しく)フォーカスが合ったときに、電磁放射がこのコーティング層を除去できるような厚さであることが望ましい。これにより、正しい(または、ほぼ正しい)フォーカスが得られたとき、調整プレートの照射を受けた部分と受けていない部分との間のコントラストが最大となる。これにより、コントラスト値または平均グレー値に基づいて、画像を解析することができる。
【0034】
ある態様では、本発明は、ビルドプレートのビルド表面上で積層造形を用いて物体を製造する装置を与える。この装置は、
電磁放射への暴露によって凝固可能な粉末材料の槽を受けるプロセスチェンバと、
物体を材料の槽の表面レベルに関係付けて配置するための支持具と、
材料の選択された部分を凝固するために電磁放射ビームを表面レベルに放出するように構成された凝固デバイスと、
センサユニットを備えた調整システムと、
を備える。
調整システムは、
第1のフォーカス設定で第1のテストパターンを生成するために、凝固デバイスを制御し、
第2のフォーカス設定で第2のテストパターンを生成するために、凝固デバイスを制御し、
第1のフォーカス設定で得られた第1のテストパターンの第1の特性と、対応する第2のフォーカス設定で得られた第2のテストパターンの第2の特性とを決定し、
第1の特性と第2の特性とに基づいて、調整されたフォーカス設定を決定するように構成される。
【0035】
本発明に係る装置により、フォーカス調整を比較的簡単かつ迅速かつ高信頼に実行できる。フォーカス調整は繰り返されてもよい。例えば、よりよい結果を得るために最初のフォーカス調整の直後に繰り返されても好いし、および/または、正しいフォーカスがより長時間持続するように一定のインターバルで繰り返されてもよい。さらに調整システムを装置に組み込むことにより、自律的で客観的な調整が可能となる。これにより、調整(特に異なる位置での、さらには異なる時間帯での)がより高信頼なものとなる。さらなる利点は、前述の本発明に係る方法の説明で明らかにした。
【0036】
ある実施の形態では、センサユニットは画像を取得するように構成され、調整システムは、第1の特性および第2の特性を、センサユニットにより得られた画像に基づいて決定するように構成される。特に調整システムは、第1の特性および第2の特性として、コントラスト値、カラー値およびグレー値のうちの少なくとも1つを決定する。
【0037】
ある実施の形態では、調整システムは、第1のテストパターンとして、所定の間隔を空けて配置された少なくとも2つの平行なラインを生成するように構成される。第2のテストパターンとして、同じパターンが生成されてもよい。好ましくは、さらなるパターンが同じパターンを利用する。
【0038】
ある実施の形態では、調整システムは、使われるフォーカス設定に関連する関数を、得られた特性値にフィットすることにより、調整されたフォーカス設定を決定するように構成される。さらに調整システムは、この関数の最大値または最小値を決定するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【
図1】本発明に係る、積層造形を用いて物体を製造する装置の模式的な概観図である。
【
図2】凝固デバイスから回転可能な偏向ユニットを介して材料槽に放射された電磁放射の模式的な概観図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る方法が備えるステップの模式図である。
【
図4】本発明のさらなる実施の形態に係る方法が備えるステップの模式図である。
【
図5】本発明に係る方法で利用可能な調整プレートの模式図である。
【
図6】
図5に示される調整プレートを用いて、本発明に係る方法により生成できる調整パターンの模式図である。
【
図7】本発明に係る装置の最適設定の決定を示す概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、積層造形を用いて物体2を製造する装置1の概観を示す。装置1は、いくつかのフレーム部品11、12、13から作られる。この装置は、凝固可能な材料4の槽を受けるためのプロセスチェンバ3を備える。下側フレーム部品11内で、シャフトが形成される。ここで、物体2(単数でも複数でもよい)を材料4の槽の表面レベルに関係付けて配置するための支持具5が与えられる。支持具5は、シャフト50内に動作可能に与えられる。これにより、ある層が凝固された後、支持具5が下げられ、さらなる材料の層が、すでに形成された物体2の頂部で凝固されることができる。装置1の頂部13の内部に、材料の選択された部分を凝固させるために、凝固デバイス7が与えられる。図示された実施形態では、凝固デバイス7はレーザデバイスである。このレーザデバイスは、支持具に与えられた粉末材料を溶解させる目的で、レーザビーム71の形で電磁放射を生成するように配置される。その後この粉末材料は冷却され、製造される物体の凝固部分を形成する。しかしながら本発明は、上記のタイプの凝固デバイス7に限定されない。図示されるように、レーザデバイス7から照射される電磁放射71は、偏向ユニット74を用いて屈折される。この偏向ユニット74は、照射された放射71を、材料4の層の表面Lに向けて導くために、回転可能な光学部品75を使用する。放射は、偏向ユニット74の位置に応じて、例えば放射線軸72、73に沿って放射されてよい。凝固デバイス7は、フォーカス部品76を備える。このフォーカス部品76は、放射のフォーカスを調整する(例えば、光線72の光路が光線73に比べて長くなるように調整する)ために使うことができる。
【0041】
装置1は、材料4の槽の表面を水平にするために、槽の表面Lに沿ってずらすことのできるリコート装置(図示しない)をさらに備えてもよい。このようなリコート装置自体は当業者に既知である。本発明に係る方法では、槽の表面レベルにおける所定のフォーカス精度のフォーカス設定を目的とする。なぜなら、凝固デバイスが凝固材料に関して精度を要求するのは、表面レベルにおいてだからである。
【0042】
本発明に係る装置1は、センサユニット81を備えた調整システム8を備える。センサユニット81は、材料4の表面レベルLに(材料4がないときは、支持具5に)導かれる。調整システム8は、ライン82を用いて装置1に接続される。以下に説明するように、これにより調整システム8は凝固デバイスを制御できる。調整システム8は、装置1に固定された部品であってよいし、多かれ少なかれ、フォーカス設定が必要なときに装置1に接続されるモジュラー部品であってよい。調整システムとセンサユニット81の詳細は以下で明らかになる。センサユニット81は、材料の槽の表面レベルL、支持具上にあるその他の材料、または支持具自体を画像化するための画像センサを備えてもよいことに注意する。この画像センサは、画像センサの光路が凝固デバイスの光路と一致するように構成されてもよい。これは同軸画像センサと呼ばれる。
【0043】
図2は、レーザビーム71、回転可能な光学部品76および材料4の層の表面Lに導かれた放射の模式的な詳細を示す。ここで光線73と72は、回転可能な光学部品75の異なる角度位置に関する放射を示す。回転可能な光学部品75が使われることにより、一般的にカーブした焦点面79が得られる。ビルドプレート51(および材料4の層)は平面である。従って所定の位置x
sに関し、z方向のフォーカスオフセットδzが発生する。従って、凝固デバイス7、偏向ユニット74および支持具5上のビルドプレート51の幾何学的セットアップは、一般的なフォーカスオフセットを持つ。このフォーカスオフセットは、いわゆる一般フォーカス設定によって補償される。一般フォーカス設定は、所定のx位置に基づいてフォーカスを調整する。一般フォーカス設定は、ルックアップテーブルに組み入れられてもよく、材料の層上の位置に応じてフォーカスを変えるために装置で利用されてもよい。この一般フォーカス設定は、任意の与えられた位置に関する「ゼロ」設定と呼ばれる。ビルドプレート上の位置が異なれば、この「ゼロ」設定の実際のフォーカスも異なることは当業者には明らかだろう。これは幾何学的セットアップの結果である。
【0044】
フォーカスをさらに改善するために、本発明に係るフォーカス調整が適用されてよい。
【0045】
図3に模式的に示される通り、本発明に係る方法は、第1の位置で以下のステップを備える。
i)複数のフォーカス設定に対応する複数のテストパターンを作るステップ。
ii)複数のテストパターンの各々に対応する複数の特性を決定するステップ。
iii)複数の特性に基づいて、調整されたフォーカス設定を決定するステップ。
iv)第1の位置に関する調整されたフォーカス設定を組み入れるステップ。
【0046】
必要であれば、この方法は、第1の位置に限らず異なる位置に関して繰り返されてもよい。すなわち第2の位置や、例えば少なくとも第3の位置も本発明の方法で徴されてもよい。この方法は、所定の格子の複数の格子点に関して、調整されたフォーカス設定を決定するために使われてもよい。
【0047】
図4は、本発明に係る方法のさらなる実施の形態を模式的に示す。本方法は、少なくとも第1の位置で以下のステップを備える。
I)複数のフォーカス設定に対応する複数のテストパターンを作るステップ。
II)複数のテストパターンの各々に対応する複数の特性を決定するステップ。
III)これらの特性を複数のフォーカス設定に関係付けるステップ。
IV)関数を、領域としてフォーカス設定に、余域として結果特性にフィットさせるステップ。
V)これらのデータにフィットされた関数の最小値または最大値を決定するステップ。
VI)第1の位置に関する調整されたフォーカス設定を組み入れるステップ。
【0048】
ここでも必要であれば、この方法は、第1の位置に限らず異なる位置に関して繰り返されてもよい。すなわち第2の位置や、例えば少なくとも第3の位置も本発明の方法で徴されてもよい。この方法は、所定の格子(特に構造格子)の複数の格子点に関して、調整されたフォーカス設定を決定するために使われてもよい。ある実施の形態ではこの方法は、内挿されたフォーカス設定を得るために、複数の格子点に関して得られた結果を内挿するステップを追加的に備える。
【0049】
ある実施の形態では、この方法は、格子に関して得られた調整されたフォーカス設定に所定の関数をフィットさせるステップを備える。これにより、調整中に得られたすべての誤差および/または外れ値が平均化される。この結果、一般にスムーズで正確なフォーカス設定が格子全体で得られる。
【0050】
この実施の形態に係る方法を、
図5-
図7を参照してさらに説明する。
【0051】
図5は、本方法で利用可能な調整プレート21を模式的に示す。調整プレート21は、調整ボディ22と、コーティング層23と、を備える。調整プレート21は金属プレートであってよい。コーティング層23は、調整ボディ22と異なる色を持つ比較的薄い層であってよい。この場合、コーティング層23を腐食させることにより、異なる色の調整ボディ22が現れる。有利なことに、これは、適用されたフォーカス設定が最適であるか否かを決定することに利用可能である。
【0052】
図6は、例えば
図5に示される調整プレート21に全部で9個のテストパターンa-iが与えられる様子を示す。ここでは、連続する9個テストパターンa-iの中で、複数の異なるフォーカス設定が使われる。例えばテストパターンeは、一般(「ゼロ」)フォーカス設定を使ってよい。テストパターンaは負の設定で実行されてよく、テストパターンiは正の設定で実行されてよい。対応するテストパターン[a、b、c、d、e、f、g、h、i]に関し、フォーカス設定は[-20、-15、-10、-5、0、5、10、15、20]であってよい。
【0053】
図6に、テスト正方形a-iの各々に関し、全部で8本のラインを含むテストパターンが形成される様子が見られる。これらのライン、およびラインの数は例示である。別のパターンおよび/または別の要素数を使ってもよいことは、当業者に明らかだろう。これらの図の中で、ラインのないテストパターン91も見られる。フォーカス設定が進むにつれ、ライン91-94はより鮮明で明確となり、ライン95を持つテストパターンeで最適となる。その後のフォーカス設定では、ライン96-99の視認性が低下していき、テストパターンiでライン99はまったく見えなくなる。
【0054】
図5の調整プレート21が使われた場合、
図6の結果は逆転することに注意する。これは白い部分は実際には黒であり、黒い部分は実際には白であることを意味する。これは、調整プレート21の黒色コーティングは、フォーカスが合っていないときは黒であり続けるのに対し、フォーカスが合うと除去されることによる。
【0055】
9個のテストパターンa-iの画像を作るために、多かれ少なかれ自動化された方法でセンサユニット81が使われてもよい。特性値を得るために、1つの画像上で画像解析が実行されてもよい。示された例では、特性値は、テスト正方形a-iの平均グレー値である。
【0056】
本発明に係る方法は、第1のパワー設定で実行されてもよく、第1のパワー設定と異なる第2のパワー設定で繰り返されてもよいことに注意する。
図6では、これは、第1のパワー設定で9個のパターンが作られてよく、その後第2のパワー設定で追加的な9個のパターン(例えば、最初の9個のパターンに近いもの)が作られてよいことを意味する。これにより、異なるパワー設定で装置をフォーカス調整することができる。
【0057】
図7は、異なるテストパターンa-iに関するフォーカス設定に対して、特性値がプロットされる様子を示す。特性値(ここでは平均グレー値)は、テストサンプルcおよびdでは比較的高く、テストサンプルa、g、hおよびiでは比較的低い。唯一の最適なフォーカス設定があることが期待されるため、データ点y
a-y
iに二次関数がフィットされてよい。関数がフィットされた後、最大値y
mと、これに対応する調整されたフォーカス設定x
mが決定される。その後このフォーカス設定は、この位置に関する設定として使われてよい。
図7に示されるステップは、完全に調整システム内で実行されてもよい(すなわち、データ点とフィットされたグラフを実際にプロットすることなく)。調整をさらに改良するために、反復的なステップが使われてもよい。これは、更新されたフォーカス設定が装置に導入され、本発明に係る方法が繰り返されることを意味する。このようにして更新されたフォーカス設定が得られる。
【0058】
本発明に係る方法および装置によって、正確なフォーカス設定が可能となる。いくつかの形態を図面を参照して説明した。望まれる保護の範囲は、添付の請求項によって定められる。