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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】真空膜濾過用の濾過基台
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/08 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B01D63/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020528384
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018078182
(87)【国際公開番号】W WO2019101445
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】102017127970.9
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508053186
【氏名又は名称】ザルトリウス ステディム バイオテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Sartorius Stedim Biotech GmbH
【住所又は居所原語表記】August-Spindler-Str.11, D-37079 Goettingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン・プリュール
(72)【発明者】
【氏名】カール・プフランツ
(72)【発明者】
【氏名】ユリアーネ・グロスマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シュツラー
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534760(JP,A)
【文献】特開昭60-180577(JP,A)
【文献】独国特許発明第102005008220(DE,B3)
【文献】米国特許出願公開第2006/0144781(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0183707(US,A1)
【文献】特開2016-016062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00-71/82
B01D24/00-37/04
C02F1/44
C12M1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空膜濾過用途の濾過デバイス(10)であって、
濾過基台(12)と、
前記濾過基台(12)に着脱可能に取り付けられた注入漏斗(14)と、
前記濾過基台(12)と注入漏斗(14)との間に挟み込まれた膜フィルタ(16)と、
前記濾過基台(12)に接続された吸引デバイスと、
を備え、
前記濾過基台(12)は、前記濾過基台(12)の上側に膜支持領域(30)を有し、
前記膜支持領域(30)は、支持構造体(34)と、前記膜支持領域(30)内に設置される前記膜フィルタ(16)の為の前記支持構造体(34)を囲む支持輪郭部(32)とを備え、
前記支持輪郭部(32)は、少なくとも1つの切欠部(44)を有し、
前記少なくとも1つの切欠部(44)は、前記膜支持領域(30)の底面側と流体接続しており、前記濾過基台(12)に前記注入漏斗(14)が取り付けられているときに、前記膜フィルタ(16)によって覆われるように配置され、
前記少なくとも1つの切欠部(44)は、前記注入漏斗(14)が前記濾過基台(12)から取り外され、前記膜フィルタ(16)が前記吸引デバイスによって適用される負圧によって上向きに突出するときに、前記膜フィルタ(16)によって覆われない、
濾過デバイス(10)。
【請求項2】
前記切欠部(44)が、前記支持構造体(34)と前記支持輪郭部(32)との間の周縁部(46)を遮っている、請求項1に記載の濾過デバイス(10)。
【請求項3】
前記切欠部(44)が、前記支持輪郭部(32)の中まで延びている、請求項1又は2に記載の濾過デバイス(10)。
【請求項4】
前記支持輪郭部(32)が、その外側でシール面(28)と隣接しており、
前記膜フィルタ(16)の枠部が、前記濾過基台(12)の上に設置された前記注入漏斗(14)によって前記シール面(28)上に押し付けられ得る、
請求項1~3のいずれか1つに記載の濾過デバイス(10)。
【請求項5】
前記切欠部(44)が、前記シール面(28)の中まで延びていない、請求項4に記載の濾過デバイス(10)。
【請求項6】
前記支持構造体(34)は、前記シール面(28)よりも下方に配置され、
前記支持構造体(34)と前記シール面(28)との間の高低差が、前記支持輪郭部(32)によって埋められている、
請求項4又は5に記載の濾過デバイス(10)。
【請求項7】
前記支持輪郭部(32)は、環状であり、
前記支持輪郭部(32)には、複数の前記切欠部(44)が円周方向に互いに間隔を空けて設けられている、
請求項1~のいずれか1つに記載の濾過デバイス(10)。
【請求項8】
前記切欠部(44)の間の角度距離が、それぞれ等しいサイズである、請求項に記載の濾過デバイス(10)。
【請求項9】
前記切欠部(44)が、円周方向に0.1~4mmの範囲の幅を有する、請求項又はに記載の濾過デバイス(10)。
【請求項10】
前記切欠部(44)が、0.1~1.5mmの範囲の深さを有する、請求項のいずれか1つに記載の濾過デバイス(10)。
【請求項11】
滅菌可能なプラスチック材料から製造されている、請求項1~10のいずれか1つに記載の濾過デバイス(10)。
【請求項12】
前記膜フィルタ(16)が、前記支持輪郭部(32)を囲むシール面(28)と、前記注入漏斗(14)の隆起部(48)との間に挟み込まれる、請求項1~11のいずれか1つに記載の濾過デバイス(10)。
【請求項13】
前記濾過基台(12)及び/又は前記注入漏斗(14)及び/又は前記吸引デバイスが、滅菌可能なプラスチック材料から製造されている、請求項1~12のいずれか1つに記載の濾過デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空膜濾過に適用される濾過基台に関する。
【背景技術】
【0002】
濾過基台は、注入漏斗、及び、濾過基台と注入漏斗との間に挟み込まれた円状の膜フィルタと共に、濾過操作中に通常真空(負圧)が適用される濾過デバイスを形成する。既知のデバイスでは、膜フィルタの挟み込みは、漏斗の足部の円周状の隆起部、及び、濾過基台の円周状の段壁によって保証されている。隆起部は、段壁と係合でき、膜フィルタの外周部を濾過基台のシール面に押し付ける。典型的に、このような濾過デバイスの漏斗には、0~300mLの量の液体が投入されてよい。濾過操作中、膜フィルタの底面側(bottom side)には真空が適用され、漏斗内に存在する液体は、濾過基台上に載置された膜フィルタを通じて吸引される。この目的の為に、濾過基台は、その底面側に吸引デバイスとの接続の為のシール輪郭部を有している。
【0003】
濾過基台、膜フィルタ、及び漏斗を備えた濾過デバイスを利用した濾過の後には、泡圧が高い為、空気を真空ポンプによって膜フィルタを通じて吸引することができない。これは、膜フィルタの孔が非常に小さく、真空がこれらの小さな孔の内部にある水の表面張力を克服できないからである。更に、膜フィルタは、水に濡れると、漏斗が取り外された後でも濾過基台にしっかりと接続され、濾過基台上に載置される。これらの理由により、濾過後、膜フィルタの下には、容易に吸い出すことのできない液体が少なからずまだ存在し、それは、特に微生物学的な作業において問題を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、真空膜濾過デバイスにおいて、漏斗を取り外した後に膜フィルタの下に残留した液体を除去することを保証する為に、簡素な手段によって、膜フィルタの直下をターゲットとした通気を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、請求項1の特徴を有した真空膜濾過用途の濾過基台によって達成される。本発明に係る濾過基台の有利且つ有用な設計は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明に係る濾過基台は、真空膜濾過用途に提供され、濾過基台の上側に膜支持領域を有している。膜支持領域は、支持構造体と、膜支持領域内に設置される膜フィルタの為の支持構造体を囲む支持輪郭部とを備えている。本発明によれば、支持輪郭部は、少なくとも1つの切欠部を有している。少なくとも1つの切欠部は、膜支持領域の底面側と流体接続しており、膜支持領域内に配置される膜フィルタによって選択的に覆われるのに適するように配置されている。
【0007】
本発明は、真空膜濾過デバイスにおいて、漏斗の取り外し後に膜フィルタの挙動が小さくも巧みな構造的手段によって利用される場合に、個別に切り替えられる必要のある弁又はその類似を含む複雑な構造(特にこの目的の為に設けられる)が濡れた膜フィルタの底面側を選択的に通気するのに不必要であるという発見に基づく。より具体的には、本発明は、適用された真空によって濾過基台の上側部に吸引され続けている濡れた膜フィルタが、漏斗が無くなり膜フィルタの枠部で挟み込まれなくなると、その枠部が上向きに突出するという事実を利用する。本発明に係る濾過基台において、この膜フィルタの変形は、挟み込まれた膜フィルタによって以前は覆われていた切欠部(特に通気の為に設けられる)を開放することによって、膜フィルタと濾過基台との相互作用に意図的なリークを引き起こすのに利用され得る。適用され続けている真空の補助によって開放された切欠部は、膜フィルタの下にまだ残留している液体を吸引でき、濾過基台から膜フィルタを容易に取り外せるように、周囲の空気が膜フィルタの底面側に流入することを許容する。
【0008】
支持輪郭部は、周縁部によって支持構造体と区切られ、本発明に係る設けられた切欠部は、支持構造体と支持輪郭部との間の周縁部を遮っていることが好ましい。膜フィルタの枠部が挟み込まれなくなり、真空によって膜フィルタの中心部が濾過基台の支持構造体の上に引き付けられると、膜フィルタは、支持構造体と支持輪郭部との間の縁部に対して押し付けられる。したがって、この時点では、膜フィルタは、原則として、濾過基台に対してしっかりと載置され続けている。しかしながら、切欠部によって形成された縁部の切れ間が所望のリークを生じることによって、空気は、膜フィルタの下に流入可能になる。
【0009】
切欠部は、その機能を確実にする為に、可能な限り鋭いエッジ部によって周囲から区切られる必要がある。さもなければ、例えば、エッジ部が過度に丸みを帯びている場合には、膜フィルタが丸みを帯びた形に対して極めて容易に接触し、この時点でも、濾過基台との密な接続が所望されない形式で形成されるリスクがある。この点で、切欠部の形状及び寸法は、市販の膜フィルタの硬さに適しており、典型的な吸引負圧において、濡れた状態の膜フィルタの所望されない密な適用は、排除されている。
【0010】
特に、濾過基台が射出成形されたプラスチック部品として製造され、製造公差によって切欠部の所望の鋭く縁取られた境界部が容易に確保できない場合、切欠部の機能は、切欠部が支持輪郭部の中まで延びるという事実によって促進されてもよい。切欠部のサイズを拡張することによって、拡大された吸引窓が利用可能である。
【0011】
本発明に係る濾過基台の好適な実施形態は、シール面の外側にある支持輪郭部がシール面に隣接するように構成される。当該シール面には、濾過基台の上に設置される注入漏斗によって、膜フィルタの枠部が押し当てられてもよい。このような設計では、漏斗と濾過基台のシール面との間に挟み込まれた膜フィルタは、真空が適用される時に、切欠部が覆われるように支持面に対してしっかりと載置される。一方、濾過後に膜フィルタの枠部領域が漏斗によってシール面に対して押し付けられなくなった場合に、膜フィルタの枠部が上向きに僅かに突出することは、支持輪郭部に形成された切欠部によって膜フィルタの下への流路を開放するのに十分である。
【0012】
切欠部は、挟み込まれた状態の膜フィルタの枠部の密な載置を損ねない為に、支持輪郭部からシール面の中まで延びてはならない。
【0013】
理想的には、支持構造体及びシール面は、互いにオフセットして配置され、支持構造体とシール面との間の高低差は、支持輪郭部によって埋められる。このことは、初めに漏斗によって挟み込まれた膜フィルタの枠部が、支持領域に向かって吸引されている膜フィルタの中心部よりも高く配置されることを意味している。本設計は、膜フィルタの枠部が所望のように上向きに突出するのを促進し、漏斗の取り外し後に切欠部を開放する。
【0014】
真空膜濾過デバイス用の典型的な濾過基台は、15~55mmの範囲の外径を有する膜支持領域を含む。前記外径は、好ましくは25~50mm、特に好ましくは45~50mmの範囲である。また、少なくとも1つの切欠部が前記外径部から2~10mm、好ましくは3~7mmの範囲の距離に設けられることは、特に有用であると証明されている。
【0015】
本発明に係る濾過基台の好適な実施形態では、支持輪郭部は、環状であり、複数の切欠部が円周方向に互いに間隔を空けて設けられている。支持輪郭部に分散するように配置された複数の切欠部によって、切欠部の1つが塞がれた場合にも、信頼性のある通気が確保される。
【0016】
好適な対称設計を考慮すると、切欠部同士の間の角度距離は、それぞれ等しいサイズであり、好ましくは30°である。
【0017】
濾過基台の支持輪郭部に設けられた本発明に係る少なくとも1つの切欠部は、基本的に、膜フィルタの底面側への所望の流体接続を確立する任意の形状の凹部であってよい。しかしながら、漏斗が取り外された時に、膜フィルタが本発明に係る切欠部に吸い込まれず流体接続をなお阻害しないことは、保証されなければならない。切欠部は、膜フィルタが意義深くも(significantly)その硬さゆえに切欠部に嵌入不可能であることを保証する為の要件に従って、非常に小さいサイズにされる必要がある。円周方向に0.1~4mmの範囲の幅を有した切欠部は、前記要件に適合することが示されている。
【0018】
各切欠部は、空気を通過させる為の最小限の深さも有する必要がある。好適な深さは、0.1~1.5mmの範囲である。
【0019】
特に有利な設計は、少なくとも1つの切欠部が支持構造体に形成された排出溝の延長部であることを提供している。その目的は、濾過後に、支持構造体の内部にまだ存在している液体を可能な限り多く吸い出すことにある。濾過基台の支持構造体には、濾過中に膜フィルタを通じて吸引された液体を収集し、濾過基台の排出部に流すことを可能にするような排出溝が設けている。濾過後、切欠部によって空気が膜フィルタの下に吸引され、特に排出溝に向けられる場合、残留した液体の引き込み(entrainment)は、特に効果的である。
【0020】
本発明に係る濾過基台は、再利用可能な、又は、使い捨ての構成部品として設計されてもよい。濾過基台は、前者の場合にはステンレス鋼から、後者の場合には滅菌可能なプラスチック材料から製造されることが好ましい。このことは、濾過基台(必要ならば、濾過デバイスの更なる構成部品と共に)を事前滅菌する可能性を広げる。したがって、濾過基台は、配送直後に使用可能な状態である。
【0021】
また、本発明は、本発明に係る濾過基台と、濾過基台に着脱可能に取り付けられた注入漏斗と、濾過基台と注入漏斗との間に挟み込まれた膜フィルタとを備えた濾過デバイスを提供する。
【0022】
膜フィルタを挟み込む為に、濾過基台側には、支持輪郭部を囲むシール面が設けられ、漏斗側には、膜フィルタの枠部をシール面に押し付ける為に、合わせ隆起部が設けられてもよい。原理的に、シール面及び隆起部は、反転されてもよい。例えば、シール面は、漏斗に形成され得、隆起部は、濾過基台に形成され得る。本方法において実現するシーリングにより、フィルタがフィットしている場合に、空気を吸引することなく濾過することも可能である。
【0023】
しかしながら、典型的な用途では、濾過基台は、吸引デバイスに接続される。吸引デバイスによって、濾過基台の下に真空(負圧)が生成され、濾過工程を加速したり、又は、そもそも濾過工程を可能にしたりする。
【0024】
既に説明したように、少なくとも1つの切欠部は、濾過工程の為に吸引デバイスによって負圧が生成された場合に、膜フィルタがその硬さゆえに切欠部の輪郭部にしっかりと接触しないほどの小さいサイズにされるべきである。
【0025】
好適な使い捨ての用途に関して、濾過基台及び/又は漏斗は、(事前)滅菌が可能なプラスチック材料から製造される。複数回使用の用途が意図される場合、これらの構成部品は、典型的にステンレス鋼又はアルミニウムから製造される。いずれの場合でも、本発明に係る濾過デバイスは、負圧に基づく吸引デバイス(吸引ストリップ)に取り付けられるように適している。また、吸引デバイスは、滅菌可能なステンレス鋼若しくはアルミニウム(複数回使用)、又は、滅菌可能なプラスチック材料(使い捨て)から製造されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の記述及び添付の図面によって明らかになるであろう。
【0027】
図1図1は、本発明に係る濾過デバイスの側面図である。
図2図2は、図1の濾過デバイスの本発明に係る濾過基台の斜視図である。
図3図3は、図2の濾過基台の側断面図である。
図4図4は、図3の濾過基台の境界領域の斜視図である。
図5図5は、図3の濾過基台の境界領域の上面図である。
図6図6は、図1の濾過デバイスの挟み込み領域の詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、真空膜濾過用途を意図した濾過デバイス10を示している。注入漏斗14は、濾過基台12に着脱可能に取り付けられている。典型的に、濾過基台12及び漏斗14は、再利用可能なステンレス鋼ユニットである。しかしながら、本願の場合には、使い捨てが意図され事前滅菌に適したプラスチック材料から製造される設計が好ましい。
【0029】
膜フィルタ16(図6の断面図を参照)は、濾過基台12と漏斗14との間に挟み込まれている。
【0030】
濾過デバイス10は、吸引ストリップ、又は、ステンレス鋼(複数回使用)若しくはプラスチック材料(使い捨て)から製造された別の吸引デバイスに取り付けされることができる。この目的の為に、濾過基台12には凹部18が設けられている。凹部18は、吸引デバイスの接続部品の合致する突起と共に、バヨネットロックを形成する。その固定は、バヨネットロックのような回転動作を必要としないプラグイン接続によって実現されてもよい。
【0031】
図2及び図3では、濾過基台12は、分離して示されている。基本的な円状の濾過基台12は、好ましくは49mmの外径を有する上部の第1の円筒部20と、肩部の下にある下部の第2の円筒部22とを備えている。漏斗14は、第1の円筒部20、及び、漏斗14の前側の支持面として役立つ外周の肩部24に押し付けられる。下部の円筒部22は、バヨネットロック又はプラグイン接続を介して、吸引デバイスの接続部品と接続される。プラグイン接続とは、前記接続部品が濾過基部12のシール輪郭部26及び/又は制限壁部38(後で更に詳細に説明される)に対して押し込まれるような接続である。したがって、吸引デバイスによって提供される真空(負圧)に対して密な接続が確保される。
【0032】
図3図5に見られるように、濾過基台12は、その上側に、上部の円筒部20に隣接する環状のシール面28と、シール面28に隣接する支持輪郭部32と、支持輪郭部32に囲まれた歯形状の支持構造体34とに分割された膜支持領域30を備えている。シール面28及び歯形状の支持構造体34のいずれも、濾過基台12の中心軸に対して垂直な平面に実質的に延在している。しかしながら、歯形状の支持構造体34は、シール面28、及び、歯形状の支持構造体34と嵩上げされた環状のシール面28との間に延在している支持輪郭部32よりも下方にオフセットされている。
【0033】
支持輪郭部32は、一方では、環状のシール面28に対する明確な境界を構成しており、他方では、歯形状の支持構造体34の延長部、又は、他の歯形状構造(例えば、段を伴う)、又は、平坦な表面として設計されてもよい。いずれも場合でも、支持輪郭部32は、歯形状の支持構造体34とシール面28との間の前記軸方向の高低差を埋めている。
【0034】
膜支持領域30は、中央部において、膜支持領域30の下の領域、及び、吸引デバイスに対する流体接続を生成する中央の排出部36によって遮られている。排出部36の下向きに突出した制限壁部38は、シール輪郭部26に対して追加的又は代替的に、吸引デバイスとの接続の為のシール面として利用され得る。
【0035】
膜支持領域30の歯形状の支持構造体34は、多数の同心状の溝を有するが、他の構造も可能である。数本の排出溝40,42は、膜フィルタ16を通過した液体が排出部36に到達することを確実にしている。排出溝40,42は、円周方向に均一に配置され、径方向に真っ直ぐ延びている。例示の実施形態では、4本の大きな排出溝40は、90°間隔で設けられ、12本の小さな排出溝42は、30°間隔で設けられている。
【0036】
図4,5の詳細図に見られるように、小さな排出溝42がそれぞれ支持輪郭部32の切欠部44で終結している一方で、大きな排出溝40は、傾斜した支持輪郭部32まで完全には外向きに延びていない。切欠部44は、支持輪郭部32と歯形状の支持構造体34との間で円周状の縁部46を遮っている。したがって、膜フィルタ16を支持している輪郭部32は、切欠部44によって円周方向に角度距離30°毎に遮られている。
【0037】
鋭いエッジ部によって区切られた切欠部44は、それぞれ1.0mmの幅及び1.4mmの深さを有し、上部の円筒部20の外周から内向きに4.6~5.6mmの間隔を空けた領域に位置している。例示の実施形態では、切欠部44は、支持輪郭部32の中まで放射状に延びている(図4,5を参照)。この放射状の延長は、使用される材料及び製造工程の精度に応じて、切欠部44の機能(更に下で説明される)に必ずしも必要ではないが、濾過基台12が射出成形されたプラスチック部品として製造される場合には、特に推奨される。
【0038】
濾過デバイス10の濾過操作及びその後の通気については、以下に記述される。
【0039】
濾過操作の前に、膜フィルタ16は、濾過基台12の上側部に載置され、注入漏斗14は、濾過基台12の上に設置される。したがって、図6の詳細図に示したように、漏斗14における円周状の内向き方向の隆起部48は、膜フィルタ16の外側の枠部を濾過基台12のシール面28にしっかりと押し付けている。
【0040】
原理的には、漏斗14の側に過圧をかけて濾過することも可能である。しかし、通常、濾過デバイス10は、濾過基台12の下に真空を生成する吸引デバイスに接続され、漏斗14内に保持された液体を濾過基台12と漏斗14との間に挟み込まれた膜フィルタ16を通じて吸引する。したがって、膜フィルタ16は、膜支持領域30の歯形状の支持構造体34に向かって引き付けられ、支持輪郭部32と接触する。膜フィルタ16に吸引された液体は、歯形状の支持構造体34及び排出溝40,42を通じて、排出部36に向かう。
【0041】
濾過後、真空が適用され続けている間に、漏斗14は、取り外される。膜フィルタ16が漏斗14によってシール面28に対して押し付けられなくなるので、吸引によって濾過基台12に付着し続けている濡れた膜フィルタ16の枠部は、上向きに突出することがある(図の詳細図に示した)。しかしながら、膜フィルタ16は、傾斜した支持輪郭部32、及び、支持輪郭部32とシール面28との間の縁部46に対して、これらの接触領域から周囲の空気が膜フィルタ16の下に侵入できないように、しっかりと載置され続けている。
【0042】
しかしながら、支持輪郭部32と歯形状の支持構造体34との間の縁部46は切欠部44によって遮られており、また真空が適用されている為、空気は、切欠部44を通じて、小さな排出溝42、及び、膜フィルタ16の下の領域に吸引される。
【0043】
既に説明したように、切欠部44は、非常に小さく(円周方向の幅、及び、深さ)、鋭いエッジ部によって区切られている。この理由により、濾過工程に典型的な負圧の場合、濡れた状態の市販の膜フィルタ16は、その硬さゆえに切欠部44に引き込まれず、空気の吸引又は残った液体の排出を妨げることはない。例示の実施形態のように、切欠部44が支持輪郭部32の中まで放射状に延びている場合、切欠部44を通じる空気の吸引は、切欠部44のエッジ部があまり鋭くなくとも(例えば、製造公差による)確保される。
【0044】
空気が吸引されることによって、膜フィルタ16の下に存在する液体は、排出部36を通じて流下することができる。更に、通気によって、濾過基台12から膜フィルタ16を取り外すことは、真空が適用されていても比較的容易である。
【符号の説明】
【0045】
10 濾過デバイス
12 濾過基台
14 注入漏斗
16 膜フィルタ
18 凹部
20 第1の円筒部
22 第2の円筒部
24 肩部
26 シール輪郭部
28 シール面
30 膜支持領域
32 支持輪郭部
34 歯形状の支持構造体
36 排出部
38 制限壁部
40 大きな排出溝
42 小さな排出溝
44 切欠部
46 縁部
48 隆起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6