(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
G06F 12/00 20060101AFI20221005BHJP
G11C 11/405 20060101ALI20221005BHJP
G11C 7/10 20060101ALI20221005BHJP
H01L 21/8242 20060101ALI20221005BHJP
H01L 27/108 20060101ALI20221005BHJP
H01L 27/1156 20170101ALI20221005BHJP
H01L 27/10 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G06F12/00 564A
G11C11/405
G11C7/10 420
H01L27/108 321
H01L27/1156
H01L27/10 481
(21)【出願番号】P 2021163240
(22)【出願日】2021-10-04
(62)【分割の表示】P 2017012854の分割
【原出願日】2017-01-27
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2016016658
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016016660
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】石津 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 輝
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161002(JP,A)
【文献】実開平4-82735(JP,U)
【文献】特開2004-54766(JP,A)
【文献】特開2016-6708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F12/00-12/06
13/16-13/18
G11C 7/00-8/20
11/00
11/34-11/4197
11/56
14/00
H01L21/8229
21/8239-21/8246
27/10-27/11597
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサコア、メモリ部、およびバスを有する半導体装置であり、
前記メモリ部は第1メモリを有し、
前記第1メモリはメモリセルを有し、
前記メモリセルは、第1トランジスタ、第2トランジスタ、および容量素子を有し、
前記第1トランジスタの第1端子は前記第2トランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第2トランジスタのゲートは、前記容量素子の第1端子に電気的に接続され、
前記第1のトランジスタは、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上の酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層上のソース電極層及びドレイン電極層と、前記ソース電極層及び前記ドレイン電極層上の第2の絶縁層と、ゲート絶縁層を介して前記酸化物半導体層と重なるゲート電極層と、を有し、
前記第2の絶縁層及び前記ゲート電極層は研磨面を有し、
前記プロセッサコアは、書き込みイネーブル信号を生成する機能を有し、
前記バスは、前記書き込みイネーブル信号を前記メモリ部に出力する機能を有し、
前記第1メモリは、前記書き込みイネーブル信号に基づいて、待機信号を生成する機能を有し、
前記バスは前記待機信号を前記プロセッサコアに出力する機能を有し、
前記プロセッサコアは、前記待機信号に基づいて、前記メモリ部へのアクセスをnクロックサイクル時間(nは1以上の整数)延期する機能を有する半導体装置。
【請求項2】
プロセッサコア、メモリ部、バス、レジスタ、クロック生成部、およびロジック部を有する半導体装置であり、
前記メモリ部は第1メモリを有し、
前記第1メモリはメモリセルを有し、
前記メモリセルは、第1トランジスタ、第2トランジスタ、および容量素子を有し、
前記第1トランジスタの第1端子は前記第2トランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第2トランジスタのゲートは、前記容量素子の第1端子に電気的に接続され、
前記第1のトランジスタは、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上の酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層上のソース電極層及びドレイン電極層と、前記ソース電極層及び前記ドレイン電極層上の第2の絶縁層と、ゲート絶縁層を介して前記酸化物半導体層と重なるゲート電極層と、を有し、
前記第2の絶縁層及び前記ゲート電極層は研磨面を有し、
前記プロセッサコアは、前記レジスタに第1データを書き込む機能を有し、
前記レジスタは前記第1データを前記クロック生成部に出力する機能と、前記第1データを前記ロジック部に出力する機能とを有し、
前記クロック生成部は、前記第1データに応じた周波数のクロック信号を生成する機能を有し、
前記ロジック部は、前記第1データに基づいて第1信号を生成する機能と、前記第1信号を前記第1メモリに出力する機能とを有し、
前記プロセッサコアは、書き込みイネーブル信号を生成する機能を有し、
前記バスは、前記書き込みイネーブル信号を前記メモリ部に出力する機能を有し、
前記第1メモリは、前記書き込みイネーブル信号および前記第1信号に基づいて、待機信号を生成する機能を有し、
前記バスは前記待機信号を前記プロセッサコアに出力する機能を有し、
前記プロセッサコアは、前記待機信号に基づいて、前記メモリ部へのアクセスをmクロックサイクル時間(mは0以上の整数)延期する機能を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の明細書、図面、および特許請求の範囲(以下、本明細書等と呼ぶ)で開示する本
発明の一形態は、半導体装置、その動作方法、その使用方法、およびその作製方法等に関
する。なお、本発明の一形態は例示した技術分野に限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
一般的なDRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)は、メモリセルが1個のトラ
ンジスタ(1T)と1個のキャパシタ(1C)で構成されている。1T1C型DRAMは
、キャパシタに電荷を蓄積することで、データを保持することが可能なメモリであるため
、原理的に無制限に書き込みができる。また、書き込みおよび読み出しの速度が高速であ
ること、メモリセルの素子数が少ないため高集積が容易であることから、DRAMは大容
量なメモリ装置として、多くの電子機器に組み込まれている。しかしながら、1T1C型
DRAMは、キャパシタに蓄積した電荷をそのままビット線に放出して電位の変動を測定
することでデータの読み出しを行うため、キャパシタの静電容量を一定以上とすることが
求められ、メモリセルの微細化によって必要な静電容量を確保することが困難となりつつ
ある。
【0003】
1T1C型メモリセルに対して、2個のトランジスタまたは3個のトランジスタで形成さ
れたゲインセルと呼ばれるメモリセルが提案されている(例えば、特許文献1、2)。ゲ
インセルは、蓄積した電荷量を読み出しトランジスタで増幅して、ビット線に供給できる
ため、キャパシタの容量を小さくすることが可能とされる。
【0004】
チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(以下、「酸化物半導体トランジス
タ」、または「OSトランジスタ」と呼ぶ場合がある。)が知られている。また、ゲイン
セルの書き込みトランジスタがOSトランジスタであるメモリが提案されている(例えば
、特許文献3、非特許文献1、2)。
【0005】
本明細書等では、特許文献3のように、メモリセルにOSトランジスタが設けられている
メモリのことを、「OSメモリ」と呼ぶこととする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-93988号公報
【文献】特開2006-12878号公報
【文献】特開2011-119675号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Y. Yakubo et al.,”High-speed and Low-leakage Characteristics of 60-nm C-axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor FET with GHz-ordered Cutoff Frequency,”Ext.Abstr.Solid-State Devices and Materials,2014,pp.648-649.
【文献】T.Matsuzaki et al.,“A 128kb 4bit/Cell Nonvolatile Memory with Crystalline In-Ga-Zn Oxide FET Using Vt Cancel Write Method,”ISSCC Dig.Tech.Papers,2015,pp.306-307.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一形態の課題は、新規な半導体装置を提供すること、新規な半導体装置の動作方
法を提供すること、新規な半導体装置の使用方法を提供すること、動作周波数を向上する
こと、動作周波数を変更できる半導体装置を提供すること、低消費電力の半導体装置を提
供すること、および1クロックサイクル時間よりも書き込みサイクル時間が長いメモリを
搭載する半導体装置を提供すること、である。
【0009】
なお、本発明の一形態はこれらの課題の全てを解決する必要はない。複数の課題の記載は
互いの課題の存在を妨げるものではない。列記した以外の課題は本明細書等の記載から自
ずと明らかになり、これらの課題も本発明の一形態の課題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の一形態は、プロセッサコア、メモリ部、およびバスを有する半導体装置
であり、メモリ部は第1メモリを有し、第1メモリはメモリセルを有し、メモリセルは、
第1トランジスタ、第2トランジスタ、および容量素子を有し、第1トランジスタの第1
端子は第2トランジスタのゲートに電気的に接続され、第2トランジスタのゲートは、容
量素子の第1端子に電気的に接続され、プロセッサコアは、書き込みイネーブル信号を生
成する機能を有し、バスは、書き込みイネーブル信号をメモリ部に出力する機能を有し、
第1メモリは、書き込みイネーブル信号に基づいて、待機信号を生成する機能を有し、バ
スは待機信号をプロセッサコアに出力する機能を有し、プロセッサコアは、待機信号に基
づいて、メモリ部へのアクセスをnクロックサイクル時間(nは1以上の整数)延期する
機能を有する半導体装置である。
【0011】
(2) 本発明の一形態は、プロセッサコア、メモリ部、バス、レジスタ、クロック生成
部、およびロジック部を有する半導体装置であり、メモリ部は第1メモリを有し、第1メ
モリはメモリセルを有し、メモリセルは第1トランジスタ、第2トランジスタおよび容量
素子を有し、第1トランジスタの第1端子は第2トランジスタのゲートに電気的に接続さ
れ、第2トランジスタのゲートは、容量素子の第1端子に電気的に接続され、プロセッサ
コアは、レジスタに第1データを書き込む機能を有し、レジスタは第1データをクロック
生成部に出力する機能と、第1データをロジック部に出力する機能とを有し、クロック生
成部は、第1データに応じた周波数のクロック信号を生成する機能を有し、ロジック部は
、第1データに基づいて第1信号を生成する機能と、第1信号を第1メモリに出力する機
能とを有し、プロセッサコアは書き込みイネーブル信号を生成する機能を有し、バスは書
き込みイネーブル信号をメモリ部に出力する機能を有し、第1メモリは書き込みイネーブ
ル信号および第1信号に基づいて、待機信号を生成する機能を有し、バスは待機信号をプ
ロセッサコアに出力する機能を有し、プロセッサコアは、待機信号に基づいて、メモリ部
へのアクセスをmクロックサイクル時間(mは0以上の整数)延期する機能を有する半導
体装置である。
【0012】
(3) 形態(1)または(2)において、第3トランジスタを有し、第2トランジスタ
の第1端子と第3トランジスタの第1端子は互いに電気的に接続されている半導体装置で
ある。
【0013】
(4) 形態(1)乃至(3)の何れか1において、メモリ部は、SRAM、フラッシュ
メモリ、強誘電体RAM、磁気抵抗RAM、抵抗変化RAM、および相変化RAMの少な
くとも1つを有することができる。
【0014】
本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用した装置であり、半導体素子(
トランジスタ、ダイオード等)を含む回路、同回路を有する装置等をいう。また、半導体
特性を利用することで機能しうる装置全般をいう。例えば、集積回路、集積回路を備えた
チップは、半導体装置の一例である。また、記憶装置、表示装置、発光装置、照明装置及
び電子機器等は、それ自体が半導体装置である場合があり、又は半導体装置を有している
場合がある。
【0015】
また、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合
は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合
と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。
したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、
図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に記載されているものとす
る。X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、な
ど)であるとする。
【0016】
トランジスタは、ゲート、ソース、およびドレインと呼ばれる3つの端子を有する。ゲー
トは、トランジスタの導通状態を制御する制御ノードとして機能するノードである。ソー
スまたはドレインとして機能する2つの入出力ノードは、トランジスタの型及び各端子に
与えられる電位の高低によって、一方がソースとなり他方がドレインとなる。このため、
本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるもの
とする。また、本明細書等では、ゲート以外の2つの端子を第1端子、第2端子と呼ぶ場
合がある。
【0017】
ノードは、回路構成やデバイス構造等に応じて、端子、配線、電極、導電層、導電体、不
純物領域等と言い換えることが可能である。また、端子、配線等をノードと言い換えるこ
とが可能である。
【0018】
電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位またはソース電位)との電位差のこと
を示す場合が多い。よって、電圧を電位と言い換えることが可能である。なお、電位とは
、相対的なものである。よって、接地電位と記載されていても、必ずしも、0Vを意味し
ない場合もある。
【0019】
本明細書等において、「膜」という言葉と「層」という言葉とは、場合によっては、また
は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語
を「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。例えば、「絶縁膜」という
用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0020】
本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は構成要素の混同を避
けるために付す場合があり、その場合は数的に限定するものではなく、また順序を限定す
るものでもない。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一形態によって、新規な半導体装置を提供すること、新規な半導体装置の動作方
法を提供すること、新規な半導体装置の使用方法を提供すること、動作周波数を向上する
こと、動作周波数を変更できる半導体装置を提供すること、低消費電力の半導体装置を提
供すること、および1クロックサイクル時間よりも書き込みサイクル時間が長いメモリを
搭載する半導体装置を提供すること、を実現することができる。
【0022】
本発明の一形態は、必ずしも、例示した効果の全てを有する必要はない。複数の効果の記
載は、他の効果の存在を妨げるものではない。本発明の一形態について、上記以外の課題
、効果、および新規な特徴については、本明細書の記載および図面から自ずと明らかにな
るものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】マイクロコントローラユニット(MCU)の構成例を示すブロック図。
【
図2】A:NOSRAMの構成例を示すブロック図。B:メモリセルの構成例を示す回路図。
【
図5】A:マイクロコントローラユニット(MCU)の構成例を示すブロック図。B:クロック信号生成回路の構成例を示すブロック図。C:待機信号の構成例を示すタイミングチャート。
【
図6】A:NOSRAMの構成例を示すブロック図。B:メモリセルの構成例を示す回路図。
【
図9】A:NOSRAMの構成例を示すブロック図。B:メモリセルの構成例を示す回路図。
【
図10】A-F:メモリセルの構成例を示す回路図。
【
図12】NOSRAMの読み出し動作例を示すタイミングチャート。
【
図13】NOSRAMの書き込み動作例を示すタイミングチャート。
【
図14】A、B:NOSRAMのブロックの構成例を示すブロック図。
【
図15】A:電子部品の作製方法例を示すフローチャート。B:半導体ウエハの上面図。C:半導体ウエハの部分拡大図。Dチップの拡大図。E:電子部品の構成例を示す斜視模式図。
【
図17】A:OS(酸化物半導体)トランジスタの構成例を示す平面図。B、C:
図17AのOSトランジスタの断面図。
【
図18】A:OSトランジスタの構成例を示す平面図。B、C:
図18AのOSトランジスタの断面図。
【
図19】A:OSトランジスタの構成例を示す平面図。B、C:
図19AのOSトランジスタの断面図。
【
図20】A:OSトランジスタの構成例を示す平面図。B、C:
図20AのOSトランジスタの断面図。
【
図21】A:OSトランジスタの構成例を示す平面図。B、C:
図21AのOSトランジスタの断面図。
【
図22】A:OSトランジスタの構成例を示す平面図。B、C:
図22AのOSトランジスタの断面図。
【
図23】A:OSトランジスタの構成例を示す平面図。B、C:
図23AのOSトランジスタの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を示す。ただし、本明細書に記載された実施の形態を適宜組み
合わせることが可能である。また、1つの実施の形態の中に複数の構成例(動作例、使用
方法例、製造方法例も含む)が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが
可能である。また、本発明は、多くの異なる形態で実施することが可能であり、趣旨及び
その範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であ
れば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈
されるものではない。
【0025】
図面において、大きさ、層の厚さ、および領域等は、明瞭化のために誇張されている場合
がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。図面は、理想的な例を模式的に
示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。例えば、ノイズによる信
号、電圧、若しくは電流のばらつき、又は、タイミングのずれによる信号、電圧、若しく
は電流のばらつきなどを含むことが可能である。
【0026】
本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を
、図面を参照して説明するために、便宜上用いている場合がある。また、構成同士の位置
関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明
した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0027】
図面に記載したブロック図の各回路ブロックの配置は、説明のため位置関係を特定するも
のであり、本発明の一形態の回路ブロックの配置は、これに限定されない。ブロック図に
おいて、異なる回路ブロックで別々の機能を実現するよう示していても、実際の回路ブロ
ックにおいては同じ回路ブロック内で別々の機能を実現しうるように設けられている場合
もある。また各回路ブロックの機能は、説明のため機能を特定するものであり、1個の回
路ブロックで示されていても、実際の回路ブロックにおいては1個の回路ブロックで行う
処理を、複数の回路ブロックで行うように設けられている場合もある。
【0028】
〔実施の形態1〕
本実施の形態では、OSメモリを備えた半導体装置について説明する。
【0029】
<<MCU>>
図1にマイクロコントローラユニット(MCU)の構成例を示す。
図1に示すMCU10
0は、バス110、プロセッサコア111(以下、「コア111」と呼ぶ。)、メモリ部
112、クロック生成回路115、周辺回路116を有する。MCU100は1チップ化
された半導体装置である。
【0030】
クロック生成回路115は、MCU100で使用されるクロック信号を生成する機能を有
する。周辺回路116の機能に特段の制約はない。周辺回路116には、MCU100の
用途に応じて、様々な機能回路が設けられる。機能回路としては、例えば、電源回路、電
源管理ユニット、タイマー装置、割り込みコントローラ、入出力ポート、アナログーデジ
タルコンバータ(ADC)、コンパレータ、およびオペアンプ等が挙げられる。
【0031】
メモリ部112は、NOSRAM120、およびメモリ121を有する。「NOSRAM
(登録商標)」とはOSメモリの1種である。NOSRAMの説明は追って行う。メモリ
121は、書き換え可能なメモリであればよく、例えば、SRAM、フラッシュメモリ、
FeRAM(強誘電体RAM)、MRAM(磁気抵抗RAM)、抵抗変化RAM(ReR
AM)、相変化RAM(PRAM)等である。
【0032】
メモリ部112には、メモリ121を設けなくてもよいし、あるいは複数のメモリ121
を設けてもよい。例えば、メモリ部112に、SRAMおよびフラッシュメモリを設けて
もよい。メモリ部112に、読み出し専用メモリ(ROM)を設けてもよい。
【0033】
コア111は、バス110を介して、メモリ部112、および周辺回路116とデータの
やり取りを行う。コア111からの制御信号はバス110に入力される。バス110は、
制御対象の回路ブロックに制御信号を送信する。制御信号には、イネーブル信号、アドレ
ス信号などがある。
【0034】
NOSRAM120、メモリ121、周辺回路116は、待機(Wait)信号を発行す
る機能を有する。待機信号は、アクセスの延期をコア111に要求するための信号である
。バス110に入力された待機信号は、コア111に伝送される。
【0035】
<NOSRAM>
図2AはNOSRAM120の構成例を示すブロック図である。
図2Aに示すNOSRA
M120は、制御部131、ドライバ部132、セルアレイ133を有する。
【0036】
制御部131は、NOSRAM120の動作全般を制御する機能を有するロジック回路で
ある。制御部131は、チップイネーブル信号、および書き込みイネーブル信号を論理演
算して、コア111のアクセスが書き込みアクセスであるか読み出しアクセスであるか判
断する。制御部131は、この論理演算をもとに、ドライバ部132の制御信号を生成す
る。また、書き込みアクセスである場合、制御部131は待機信号を発行し、バス110
に送信する。コア111は待機信号を受信すると、次のアクセスの実行を延期する。
【0037】
書き込みイネーブル信号はコア111が生成する信号である。チップイネーブル信号は、
バス110が生成する信号である。バス110は、コア111が出力するアドレス信号お
よび書き込みイネーブル信号をもとに、チップイネーブル信号を生成する。
【0038】
ドライバ部132は、セルアレイ133に対するデータの書き込みおよび読み出しをする
ための回路である。例えば、ドライバ部132は、アドレス信号をデコードするデコーダ
、ワード線ドライバ、読み出し回路、および書き込み回路などを有する。
【0039】
セルアレイ133には、複数のメモリセル135が行列状に配置されている。
図2Bにメ
モリセル135の構成例を示す。ここでは、メモリセル135が2T型ゲインセルの例を
示す。メモリセル135は、トランジスタMW1、トランジスタMR1、容量素子CS1
、およびノードSN1、a1-a5を有する。トランジスタMW1は書き込みトランジス
タであり、OSトランジスタである。トランジスタMR1は読み出しトランジスタであり
、
図2Bの例ではnチャネル型Siトランジスタである。ノードSN1はデータ保持ノー
ドであり、容量素子CS1はノードSN1の電荷を保持するための保持容量素子である。
【0040】
OSトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、メモリセルのトランジスタに好適であ
る。ここでいう、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態のときにソースとドレインとの
間に流れる電流をいう。トランジスタがnチャネル型である場合、例えば、しきい値電圧
が0V乃至2V程度であれば、ゲートとソース間の電圧が負の電圧であるときのソースと
ドレインとの間に流れる電流をオフ電流と呼ぶことができる。また、オフ電流が極めて小
さいとは、例えば、チャネル幅1μmあたりのオフ電流が100zA(z;ゼプト、10
-21)以下であることをいう。オフ電流は小さいほど好ましいため、この規格化された
オフ電流が10zA/μm以下、あるいは1zA/μm以下とすることが好ましく、10
yA/μm(y;ヨクト、10-24)以下であることがより好ましい。
【0041】
酸化物半導体のバンドギャップは3.0eV以上であるため、OSトランジスタは熱励起
によるリーク電流が小さく、また上掲のようにオフ電流が極めて小さい。チャネル形成領
域に適用される酸化物半導体は、インジウム(In)および亜鉛(Zn)の少なくとも一
方を含む酸化物半導体であることが好ましい。このような酸化物半導体としては、In-
M-Zn酸化物(元素Mは、例えばAl、Ga、YまたはSn)が代表的である。電子供
与体(ドナー)となる水分または水素等の不純物を低減し、かつ酸素欠損も低減すること
で、酸化物半導体をi型(真性半導体)にする、あるいはi型に限りなく近づけることが
できる。ここでは、このような酸化物半導体は高純度化された酸化物半導体と呼ぶことが
できる。高純度化された酸化物半導体を適用することで、チャネル幅で規格化されたOS
トランジスタのオフ電流を数yA/μm以上数zA/μm以下程度に低くすることができ
る。OSトランジスタ、および酸化物半導体については、実施の形態5、6で説明する。
【0042】
メモリセル135にデータを書き込むには、ノードa3にデータを入力する。ノードa1
を“H”にしてトランジスタMW1をオンにすることで、ノードa3のデータがノードS
N1に書き込まれる。トランジスタMW1をオフ状態にして、ノードSN1をフローティ
ング状態にすることで、データの書き込みが終了する。
【0043】
ノードa4の電圧をデータとして読み出す。データの読み出しは、例えば、以下のように
行われる。ノードa5の電位を固定する。ノードa4をプリチャージした後、フローティ
ング状態にする。トランジスタMR1には、ノードSN1の電圧に応じたドレイン電流が
流れる。よって、ノードa4の電圧は、ノードSN1の電圧に応じて変化する。
【0044】
オフ電流が極めて小さいというOSトランジスタの特長によって、ノードSN1の電圧の
低下を抑えることができること、データの保持に電力を消費しないことから、メモリセル
135はデータを長時間保持できるという不揮発性の特性を持つ。そこで、本明細書等で
は、ゲインセルでセルアレイが構成されるOSメモリを、NOSRAM(Nonvola
tile Oxide Semiconductor RAM、ノスラム)と呼ぶことと
する。NOSRAMは、データを長時間保持できることの他に、次のような特長を持つ。
【0045】
容量素子の充放電によってデータを書き換えるため、NOSRAMには原理的には書き換
え回数に制約はなく、かつ、低エネルギーで、データの書き込みおよび読み出しが可能で
ある。メモリセルの回路構成が単純であるため、大容量化が容易である。つまり、NOS
RAMと搭載することで、メモリ部の容量が大きく、低消費電力なMCUを提供すること
ができる。したがって、書換え耐性が大容量メモリとして好適である。しかしながら、N
OSRAMのメモリセルは回路構成が単純なため、NOSRAMのメモリモジュールとし
ての性能は、OSトランジスタの電気特性に大きく影響される。
【0046】
OSトランジスタは、Siトランジスタと比較するとオン電流が小さい。NOSRAMの
メモリセルは、OSトランジスタのスイッチング動作によってデータを書き込むため、読
み出し速度に比較して、書き込み速度が遅い課題がある。そのため、NOSRAMを内蔵
するMCUのクロック周波数は、NOSRAMの書き込み速度によって制約を受ける。別
言すると、動作周波数の高いMCUにNOSRAMを搭載することは、非常に困難である
。本実施の形態は、このような問題点を解消したMCUを提供することが可能である。
【0047】
より具体的には、
図1に示すMCU100では、NOSRAM120からの待機信号をコ
ア111が受信すると、コア111は、メモリ部112に対する書き込みサイクルに(n
+1)クロックサイクル(nは1以上の整数)を割り当てる。以下、
図3、
図4を参照し
てMCU100の動作例を説明する。
【0048】
<<MCUの動作例>>
図3、
図4は、コア111のメモリ部112へのアクセスを示すタイミングチャートであ
る。
図3、
図4において、CY0、CY1等はクロックサイクルを示す。“_o”はバス
110への出力信号を示し、“_i”はバス110からの入力信号を示す。例えば、“A
ddress_o”はコア111がバス110に出力するアドレス信号を表し、“Add
ress_i”は、バス110からNOSRAM120に入力されるアドレス信号である
。コア111に入力されるデータは、NOSRAM120から読み出したデータである。
コア111が出力するデータは、NOSRAM120に書き込むデータである。
【0049】
図3、
図4には、アドレス(A)、(B)へのアクセスについて詳細に示され、その他の
動作に関わるアドレス、およびデータは“X”で略記されている。アドレス(A)、(B
)は、NOSRAM120のアドレスであり、アドレス(C)、(D)は、メモリ121
のアドレスである。コア111は、アドレス(A)のデータ(A)の読み出しと、アドレ
ス(B)へのデータ(B)の書き込みを行っている。
【0050】
(参考例) 先ず、参考例として、NOSRAM120が待機信号を生成する機能をもた
ない場合のMCU100の動作例を説明する。
図4は、コア111のNOSRAM120
へのアクセスを示すタイミングチャートである。
【0051】
クロックサイクルCY1で、コア111はアドレス(A)、“L”の書き込みイネーブル
信号をバス110に出力する。次のクロックサイクルCY2で、NOSRAM120には
、アドレス(A)、“L”の書き込みイネーブル信号、“H”のチップイネーブル信号が
入力される。書き込みイネーブル信号が“L”であるので、NOSRAM120はアドレ
ス(A)に記憶しているデータ(A)を読み出す。データ(A)はバス110を介してコ
ア111に入力される。
【0052】
また、コア111はアドレス(A)を発行した後、次のクロックサイクルCY2で、アド
レス(B)、“H”の書き込みイネーブル信号をバス110に出力し、クロックサイクル
CY3で、データ(B)をバス110に出力する。クロックサイクルCY3で、NOSR
AM120には、アドレス(B)、データ(B)、“H”の書き込みイネーブル信号、お
よび“H”のチップイネーブル信号が入力される。クロックサイクルCY3において、N
OSRAM120はデータ(B)をアドレス(B)に書き込む。
【0053】
クロックサイクルCY3でコア111はアドレス(C)をバス110に出力する。アドレ
ス(C)はメモリ121のアドレスであるので、クロックサイクルCY4で、バス110
は“L”のチップイネーブル信号をNOSRAM120に出力する。
【0054】
図4の例では、NOSRAM120の書き込みサイクルおよび読み出しサイクルには、1
クロックサイクルが割り当てられている。そのため、NOSRAM120の書き込みサイ
クル時間よりも1クロックサイクル時間を短くすることができない。例えば、NOSRA
M120がデータの書き込みサイクル時間が20nsである場合、MCU100の動作周
波数を50MHz(1クロックサイクル時間=20ns)よりも高くすることができない
。
【0055】
本実施の形態によって、動作周波数がNOSRAMの書き込みサイクル時間に制約されな
いMCUを提供することが可能になる。
図3のタイミングチャートを参照して、このこと
を説明する。
図3は、コア111のNOSRAM120へのアクセスを示すタイミングチ
ャートである。
【0056】
図3では、待機信号は、“L”であるときがアクティブであり、“H”であるときは非ア
クティブである。
【0057】
読み出しアクセスの動作は、
図4の参考例と同様であり、クロックサイクルCY1でコア
111はアドレス(A)を発行し、クロックサイクルCY2で、NOSRAM120は、
データ(A)を読み出す。NOSRAM120の読み出し動作は高速で行うことができる
ので、コア111がアドレスを発行したクロックサイクルで、NOSRAM120が読み
出したデータがコア111に届く。
【0058】
書き込みアクセスの動作は、
図4の参考例と異なる。クロックサイクルCY2で、コア1
11は、アドレス(B)、および“H”の書き込みイネーブル信号をバス110に出力す
る。クロックサイクルCY3で、NOSRAM120には、アドレス(B)、“H”の書
き込みイネーブル信号、“H”のチップイネーブル信号が入力される。クロックサイクル
CY3において、クロック信号の立ち上がり時の書き込みイネーブル信号が“H”である
ため、NOSRAM120は“L”の待機信号を出力する。
【0059】
クロックサイクルCY4において、クロック信号立ち上がり時の待機信号の論理が”L”
であるため、コア111は、メモリ部112に対するアクセス要求を延期し、クロックサ
イクルCY3と同じ処理を行う。よって、NOSRAM120は、2クロックサイクル(
CY3、CY4)で、アドレス(B)へのデータ(B)の書き込みが可能となる。
【0060】
クロックサイクルCY5において、クロック信号立ち上がり時の待機信号の論理が“H”
であるため、コア111は、延期していたアクセス要求を実行する。
図3の例では、コア
111はアドレス(D)を発行する。
【0061】
図3の例では、NOSRAM120の書き込みサイクルに、2クロックサイクルを割り当
てているが、割り当てるクロックサイクル数は2に限定されない。NOSRAM120の
書き込みサイクルには、(n+1)クロックサイクル(nは1以上の整数)を割り当てる
ことができる。この場合、待機信号が”Lである時間はnクロックサイクル時間である。
【0062】
NOSRAM120の書き込みサイクル時間が20nsである場合を想定する。クロック
信号の周波数が100MHz(クロックサイクル時間=10ns)である場合は、1クロ
ックサイクルの間アクティブな待機信号が発行され、書き込みサイクルに2クロックサイ
クルが割り当てられる。クロック信号の周波数が200MHz(クロックサイクル時間=
5ns)である場合は、3クロックサイクルの間アクティブな待機信号が発行され、書き
込みサイクルに4クロックサイクルが割り当てられる。
【0063】
なお、待機信号が“H”であることは、NOSRAM120が、コア111のアクセスを
受け付け可能な状態であることを表し、待機信号が“L”であることは、NOSRAM1
20が、コア111のアクセスを受け付けられない状態であることを表していることから
、待機(Wait)信号は、準備(Ready)信号とみなすことができる。
【0064】
プロセッサコアの動作周波数はNOSRAMの書き込みサイクル時間に制約されない。つ
まり、NOSRAMの性能に合わせた動作を可能とすることで、MCUのシステム全体の
パフォーマンスを維持しつつ、低消費電力のNOSRAMを内蔵することができる。NO
SRAMを内蔵できることから、大容量のメモリ部を備えた高性能かつ低消費電力のMC
Uを提供できる。
【0065】
なお、本実施の形態では、MCUを例に、発明の実施の形態を説明したが、本実施の形態
はMCUに限定されず、プロセッサコアとメモリ部を備えた様々なプロセッサに適用する
ことができる。
【0066】
〔実施の形態2〕
本実施の形態では、OSメモリを備えた半導体装置一例として、MCUについて説明する
。本実施の形態のMCUは、内部で使用するクロック信号の周波数に応じて、NOSRA
Mの書き込みサイクル時間を変えることができる。
【0067】
<<MCU>>
図5Aにマイクロコントローラユニット(MCU)の構成例を示す。
図5Aに示すMCU
102は、バス150、プロセッサコア151(以下、「コア151」と呼ぶ。)、メモ
リ部152、クロック生成回路155、周辺回路156を有する。MCU102は1チッ
プ化された半導体装置である。
【0068】
コア151は、バス150を介して、メモリ部152、および周辺回路156とデータの
やり取りを行う。コア151からの制御信号はバス150に入力される。バス150は、
制御対象の回路ブロックに制御信号を送信する。制御信号には、イネーブル信号、アドレ
ス信号などがある。
【0069】
周辺回路156の機能に特段の制約はない。周辺回路156には、MCU102の用途に
応じて、様々な機能回路が設けられる。機能回路としては、例えば、電源回路、電源管理
ユニット、タイマー装置、割り込みコントローラ、入出力ポート、アナログ―デジタルコ
ンバータ(ADC)、コンパレータ、およびオペアンプ等が挙げられる。
【0070】
メモリ部152は、NOSRAM170、およびメモリ171を有する。メモリ171は
、書き換え可能なメモリであればよく、例えば、SRAM、フラッシュメモリ、FeRA
M(強誘電体RAM)、MRAM(磁気抵抗RAM)、抵抗変化RAM(ReRAM)、
相変化RAM(PRAM)等である。
【0071】
メモリ部152には、メモリ171を設けなくてもよいし、あるいは複数のメモリ171
を設けてもよい。例えば、メモリ部152に、SRAMおよびフラッシュメモリを設けて
もよい。メモリ部152に、読み出し専用メモリ(ROM)を設けてもよい。
【0072】
NOSRAM170、メモリ171、周辺回路156は、待機(Wait)信号を発行す
る機能を有する。待機信号は、アクセスの延期をコア151に要求するための信号である
。バス150に入力された待機信号は、コア151に伝送される。
【0073】
クロック生成回路155は、MCU102で使用されるクロック信号を生成する機能を有
する。クロック生成回路155は内部に記憶している周波数設定用データによって、クロ
ック周波数を変更できる機能を備えている。周波数設定用データの書き換えは、コア15
1によって行われる。
図5Bにクロック生成回路155の構成例を示す。
【0074】
<クロック生成回路>
クロック生成回路155は、設定用レジスタ161、クロック生成部162、ロジック部
163を有する。設定用レジスタ161は、クロック周波数設定用データFQ(以下、デ
ータFQと呼ぶ。)を記憶する機能を有する。設定用レジスタ161のデータFQは、コ
ア151の制御によって書き換えを行うことができる。設定用レジスタ161はデータF
Qをクロック生成部162、ロジック部163に出力する。
【0075】
クロック生成部162はデータFQに応じた周波数のクロック信号を生成する。クロック
生成部162が生成するクロック信号は、MCU102内で使用される。
【0076】
ロジック部163は、データFQに基づいて信号WCYを生成する機能を有する。信号W
CYは、バス150を介さずにNOSRAM170に入力される。信号WCYは、NOS
RAM170の書き込みサイクルに割り当てるクロックサイクル数を設定する機能を有す
る。
【0077】
クロック生成回路155によって、クロック信号の周波数を変更することができるため、
MCU102の高性能化と低消費電力化とを実現できる。高速処理が必要なときはクロッ
ク周波数を上げる。電力を下げたいとき(例えば、バッテリによる駆動時)は、クロック
周波数を下げることができる。
【0078】
<NOSRAM>
図6AはNOSRAM170の構成例を示すブロック図である。
図6Aに示すNOSRA
M170は、制御部181、ドライバ部182、セルアレイ183を有する。
【0079】
制御部181は、NOSRAM170の動作全般を制御する機能を有するロジック回路で
ある。制御部181は、チップイネーブル信号、および書き込みイネーブル信号を論理演
算して、コア151のアクセスが書き込みアクセスであるか読み出しアクセスであるかを
判断する機能、チップイネーブル信号、書き込みイネーブル信号および信号WCYを論理
演算して、ドライバ部182の制御信号を生成する機能、書き込みイネーブル信号と信号
WCYに基づいて待機信号を発行する機能を有する。
【0080】
コア151から書き込みアクセスがあると、制御部181は待機信号を発行し、バス15
0に送信する。コア151は待機信号を受信すると、次のアクセスの実行を延期する。
【0081】
書き込みイネーブル信号はコア151が生成する信号である。チップイネーブル信号は、
バス150が生成する信号である。バス150は、コア151が出力するアドレス信号お
よび書き込みイネーブル信号をもとに、チップイネーブル信号を生成する。
【0082】
ドライバ部182は、セルアレイ183に対するデータの書き込みおよび読み出しをする
ための回路である。例えば、ドライバ部182は、アドレス信号をデコードするデコーダ
、ワード線ドライバ、読み出し回路、および書き込み回路などを有する。
【0083】
セルアレイ183には、複数のメモリセル185が行列状に配置されている。
図6Bにメ
モリセル185の構成例を示す。メモリセル185の回路構成は、
図2Bのメモリセル1
35と同じである。
【0084】
実施の形態1で説明したように、OSトランジスタは、Siトランジスタと比較するとオ
ン電流が小さいため、NOSRAMを内蔵するMCUのクロック周波数は、NOSRAM
の書き込み速度によって制約を受ける。本実施の形態は、このような問題点を解消し、動
作周波数がNOSRAMの書き込み速度に制約されないMCUを提供することが可能であ
る。
【0085】
より具体的には、コア151によって、設定用レジスタ161のデータFQを書き換える
ことで、クロック周波数と、NOSRAM170の書き込みサイクル時間とを最適化する
ことができる。表1に、データFQによるクロック周波数と書き込みサイクル時間の設定
例を示す。ここでは、クロック周波数を、10MHz、50MHz、100MHz、およ
び200MHzの何れかに設定する例を示す。
【0086】
【0087】
データFQは2ビットのデータである。コア151が設定用レジスタ161に2’b00
を書き込むと、クロック生成部162は10MHzのクロック信号を生成し、設定用レジ
スタ161に2’b11を書き込むと、クロック生成部162は200MHzのクロック
信号を生成する。
【0088】
表1は、ロジック部163の真理値表に対応する。ここではNOSRAM170の書き込
みサイクル時間が20nsに最適化されていることを想定している。20nsは、クロッ
ク周波数が50MHzのときの1クロックサイクル時間である。クロック周波数が50M
Hzを超える場合、NOSRAM170の書き込みサイクルに、2クロックサイクル以上
を割り当てることが求められる。そこで、MCU102では、信号WCYによって、NO
SRAM170の書き込みサイクルに要するクロックサイクル数を制御している。
【0089】
設定用レジスタ161に、2’b01が書き込まれると、ロジック部163は、2’b0
0の信号WCYをNOSRAM170に出力し、設定用レジスタ161に、2’b10が
書き込まれると、ロジック部163は、2’b01の信号WCYをNOSRAM170に
出力する。NOSRAM170は、書き込みイネーブル信号を受け取ると、信号WCYの
データに基づいて待機信号を生成する。ここでは、信号WCYの値が、NOSRAM17
0が待機信号を発行するクロックサイクル時間を表している。
【0090】
表1の例では、データFQおよび信号WCYのビット幅は2ビットであるが、これに限定
されない。データFQのビット幅は、クロック周波数の使用数に応じて決めることができ
る。信号WCYのビット幅は、クロック周波数と、NOSRAM170の書き込み特性に
応じて決めることができる。
【0091】
<<MCUの動作例>>
以下、
図7、
図8、を参照してMCU102の動作例を説明する。
図7、
図8は、コア1
51のメモリ部152へのアクセスを示すタイミングチャートである。
図7の例では、ク
ロック周波数が50MHzであり、
図8の例では、クロック周波数は100MHzである
。
【0092】
図7、
図8において、CY0、CY1等はクロックサイクルを示す。“_o”はバス15
0への出力信号を示し、“_i”はバス150からの入力信号を示す。例えば、“Add
ress_o”はコア151がバス150に出力するアドレス信号を表し、“Addre
ss_i”は、バス150からNOSRAM170に入力されるアドレス信号である。コ
ア151に入力されるデータは、NOSRAM170から読み出したデータである。コア
151が出力するデータは、NOSRAM170に書き込むデータである。
【0093】
図7、
図8には、アドレス(A)、(B)へのアクセスについて詳細に示され、その他の
動作に関わるアドレス、およびデータは“X”で略記されている。アドレス(A)、(B
)は、NOSRAM170のアドレスであり、アドレス(C)、(D)は、メモリ171
のアドレスである。コア151は、アドレス(A)のデータ(A)の読み出しと、アドレ
ス(B)へのデータ(B)の書き込みを行っている。
【0094】
ここでは、待機信号は、“L”であるときがアクティブであり、“H”であるときは非ア
クティブである。
【0095】
(動作例1)
図7を参照して、NOSRAM170の書き込みサイクル時間が1クロックサイクル時間
であるときのMCU102の動作例を説明する。
【0096】
クロックサイクルCY1で、コア151はアドレス(A)、“L”の書き込みイネーブル
信号をバス150に出力する。次のクロックサイクルCY2で、NOSRAM170には
、アドレス(A)、“L”の書き込みイネーブル信号、“H”のチップイネーブル信号が
入力される。書き込みイネーブル信号が“L”であるので、NOSRAM170はアドレ
ス(A)に記憶しているデータ(A)を読み出す。データ(A)はバス150を介してコ
ア151に入力される。
【0097】
また、コア151はアドレス(A)を発行した後、次のクロックサイクルCY2で、アド
レス(B)、“H”の書き込みイネーブル信号をバス150に出力し、クロックサイクル
CY3で、データ(B)をバス150に出力する。クロックサイクルCY3で、NOSR
AM170には、アドレス(B)、データ(B)、“H”の書き込みイネーブル信号、お
よび“H”のチップイネーブル信号が入力される。クロックサイクルCY3において、N
OSRAM170はデータ(B)をアドレス(B)に書き込む。
【0098】
クロックサイクルCY3でコア151はアドレス(C)をバス150に出力する。アドレ
ス(C)はメモリ171のアドレスであるので、クロックサイクルCY4でバス150は
“L”のチップイネーブル信号をNOSRAM170に出力する。
【0099】
(動作例2)
図8を参照して、NOSRAM170の書き込みサイクル時間が2クロックサイクル時間
であるときのMCU102の動作例を説明する。
【0100】
読み出しアクセスは、
図7と同様に実行される。クロックサイクルCY1でコア151は
アドレス(A)を発行し、クロックサイクルCY2で、NOSRAM170は、データ(
A)を読み出す。NOSRAM170の読み出し動作は高速で行うことができるので、コ
ア151がアドレスを発行したクロックサイクルで、NOSRAM170が読み出しデー
タがコア151に届く。
【0101】
書き込みアクセスは、
図7の動作と異なり、NOSRAM170の書き込みサイクルは2
クロックサイクルで実行される。
【0102】
クロックサイクルCY2で、コア151は、アドレス(B)、および“H”の書き込みイ
ネーブル信号をバス150に出力する。クロックサイクルCY3で、NOSRAM170
には、アドレス(B)、“H”の書き込みイネーブル信号、“H”のチップイネーブル信
号が入力される。クロックサイクルCY3において、クロック信号の立ち上がり時の書き
込みイネーブル信号が“H”であるため、NOSRAM170は、アクティブな待機信号
を出力する。クロックサイクルCY4において、NOSRAM170は、待機信号を非ア
クティブにする。
【0103】
クロックサイクルCY4において、クロック立ち上がり時の待機信号の論理が”L”であ
るため、コア151は、メモリ部152に対するアクセス要求を延期し、クロックサイク
ルCY3と同じ処理を行う。クロックサイクルCY5では、クロック立ち上がり時の待機
信号の論理が“H”であるため、コア151は、延期していたアクセス要求を実行する。
図8の例では、アドレス(D)を発行する。
【0104】
信号WCYに応じて、NOSRAM170の書き込みサイクルに、(m+1)クロックサ
イクルが割り当てられる。mは0以上の整数である。ここでは、信号WCYのデータは、
待機信号をアクティブにするクロックサイクル時間を表す(
図5C参照)。別言すると、
信号WCYのデータは、コア151がメモリ部152へのアクセスを延期するクロックサ
イクル数を表す。
【0105】
信号WCYが2’b00であれば、書き込みイネーブル信号が入力されても、NOSRA
M170は“H”の待機信号を出力する。つまり、NOSRAM170は待機信号を発行
しないこととなる。NOSRAM170は、信号WCYが2’b01であれば、1クロッ
クサイクルの間アクティブな待機信号を発行し、信号WCYが2’b10であれば、3ク
ロックサイクルの間アクティブな待機信号を発行する。
【0106】
なお、待機信号が“H”であることは、NOSRAM170が、コア151のアクセスを
受け付け可能な状態であることを表し、待機信号が“L”であることは、NOSRAM1
70が、コア151のアクセスを受け付けられない状態であることを表していることから
、待機(Wait)信号は、準備(Ready)信号とみなすことができる。
【0107】
本実施の形態のMCUでは、NOSRAMの書き込みサイクル時間に制約されずに、動作
周波数を変更することができる。MCUの処理内容等に応じて、MCUの動作周波数を設
定できるため、MCU全体の消費電力を削減できる。
【0108】
本実施の形態では、NOSRAMの性能に合わせた制御を可能にすることで、MCUのシ
ステム全体のパフォーマンスを維持しつつ、低消費電力のNOSRAMを内蔵することが
できる。NOSRAMを内蔵できることから、大容量のメモリ部を備えた高性能かつ低消
費電力MCUを提供できる。
【0109】
なお、本実施の形態では、MCUを例に、発明の実施の形態を説明したが、本実施の形態
はMCUに限定されず、プロセッサコアとメモリ部を備えた様々なプロセッサに適用する
ことができる。
【0110】
〔実施の形態3〕
本実施の形態ではNOSRAMのより具体的な構成例を説明する。本実施の形態では、実
施の形態2のMCUに搭載可能なNOSRAMを説明する。
<<NOSRAMの構成例>>
図9Aは、NOSRAMの構成例を示すブロック図である。
図9Aに示すNOSRAM3
00は、コントロール部311、ドライバ部312、セルアレイ313、および出力回路
314を有する。
【0111】
NOSRAM300には、信号CLK、CE、GW、BW[3:0]、WCY[1:0]
、ADDR[10:2]が入力され、信号WAITを出力する。信号CLKはクロック信
号であり、信号CEはチップイネーブル信号であり、信号GWは書き込みイネーブル信号
であり、信号BW[3:0]はバイト書き込みイネーブル信号であり、信号ADDR[1
0:2]はアドレス信号である。信号WAITは待機信号である。データWDA[31:
0]は書き込みデータであり、データRDA[31:0]は読み出しデータである。
【0112】
NOSRAM300では信号GWが上掲の書き込みイネーブル信号に対応する。NOSR
AM300は信号GW、WCYに基づいて信号WAITを発行する。ここでは、信号WC
Yと書き込みサイクルとの関係は表1に従う。
【0113】
NOSRAM300には、電圧Vdd、Vss、Vrf、Vbgが入力される。電圧Vd
dは高電源電圧であり、Vssは低電源電圧である。電圧Vbgはセルアレイ313に入
力され、電圧Vrfはドライバ部312に入力される。
【0114】
セルアレイ313は、複数のメモリセル30、並びに、複数の配線WWL、RWL、WB
L、RBL、SL、BGLを有する。複数のメモリセル30は行列状に配置されている。
メモリセル30の配列に応じて、配線WWL等が設けられている。配線WWLは書き込み
ワード線であり、配線RWLは読み出しワード線である。配線WBLは書き込みビット線
であり、配線RBLは読み出しビット線であり、配線SLはソース線である。配線BGL
は電圧Vbgを供給するための配線である。
【0115】
図9Aでは、NOSRAM300の容量は2KBである。セルアレイ313には、128
行128列にメモリセル30が配置されている。ここでは、128本のWBLに対して、
32本の配線GWBL(グローバル書き込みビット線)が設けられ、128本のRBLに
対して、32本の配線GRBL(グローバル読み出しビット線)が設けられている。
【0116】
NOSRAM300において、各回路、各信号および各電圧は、必要に応じて、適宜取捨
することができる。あるいは、他の回路または他の信号を追加してもよい。また、NOS
RAM300の入力信号および出力信号の構造(例えば、ビット長)は、MCUのアーキ
テクチャ、NOSRAM300の動作モード、およびセルアレイ313の構成等に基づい
て設定される。
【0117】
(セルアレイ)
図9Bに、セルアレイ313の構成例を示す。
図9Bには、セルアレイ313の1行1列
の要素を代表的に示す。メモリセル30は、2トランジスタ型のゲインセルである例であ
る。メモリセル30は、トランジスタMW2、トランジスタMR2、容量素子CS2、ノ
ードSN2を有する。
【0118】
ノードSN2は保持ノードである。容量素子CS2はノードSN2の電圧を保持するため
の容量素子である。容量素子CS2の第1端子はノードSN2に、第2端子は配線RWL
に電気的に接続されている。トランジスタMR2はpチャネル型Siトランジスタである
。トランジスタMW2はバックゲートを有するOSトランジスタであり、バックゲートは
配線BGLに電気的に接続されている。トランジスタMW2、容量素子CS2は、トラン
ジスタMR2に積層して設けることができるため、セルアレイ313の集積度を向上する
ことができる。トランジスタMW2はバックゲートを有さないOSトランジスタとするこ
とができる。
【0119】
配線BGLには、電圧Vbgが入力される。電圧Vbgは電圧Vssよりも低い電圧、た
とえば負電圧とする。バックゲート電圧を負電圧とすることができるためトランジスタM
W2のしきい値電圧を正電圧側にシフトさせることができる。
【0120】
図10A-
図10Eにセルアレイの他の構成例を示す。各図には1行1列分の構成例が示
されている。
【0121】
図10Aは、3トランジスタ型のゲインセルを有するセルアレイの構成例を示す。
図10
Aに示すメモリセルアレイには、行ごとに配線RCLが設けられている。メモリセル31
は、配線WWL、RWL、WBL、RBL、SL、RCL、BGLに電気的に接続されて
いる。メモリセル31はトランジスタMW3、MR3、MR4、容量素子CS3、ノード
SN3を有する。トランジスタMW2はバックゲートをもつOSトランジスタであり、バ
ックゲートは配線BGLに電気的に接続されている。トランジスタMR4、MR3はpチ
ャネル型Siトランジスタである。
【0122】
図10Bに示すセルアレイは
図9Bの変形例であり、
図10Cに示すセルアレイは
図10
Aの変形例である。これらのセルアレイでは、配線WBL、RBLの代わりに、書き込み
および読み出し用のビット線(配線BL)が設けられている。
【0123】
図10Dに示すセルアレイは
図9Bの変形例であり、トランジスタMR2がnチャネル型
Siトランジスタである例である。
図10Dに示すメモリセル32は、配線WWL、RW
L、WBL、RBL、SL、BGLに電気的に接続されている。メモリセル32は、トラ
ンジスタMW5、MR5、容量素子CS5、ノードSN5を有する。トランジスタMW5
はバックゲートを有するOSトランジスタである。トランジスタMR5はnチャネル型S
iトランジスタである。
図10Dのセルアレイも、
図10Bのように、配線WBL、RB
Lに代えて配線BLを設けてもよい。
【0124】
図10Eに示すセルアレイは
図10Aの変形例であり、トランジスタMR3、MR4がn
チャネル型Siトランジスタである例である。
図10Eに示すメモリセル33は、配線W
WL、RWL、WBL、RBL、BGL、および電位GNDが入力される配線に電気的に
接続されている。メモリセル33は、トランジスタMW6、MR6、MR7、容量素子C
S6、ノードSN6を有する。トランジスタMW6はバックゲートを有するOSトランジ
スタである。トランジスタMR6、MR7はnチャネル型Siトランジスタである。
図1
0Eのセルアレイも、
図10Cのように、配線WBL、RBLに代えて配線BLを設けて
もよい。
【0125】
(コントロール部311)
コントロール部311は、NOSRAM300の動作全般を制御する機能を有するロジッ
ク回路である。コントロール部311は、信号GW、WCYに基づいて信号WAITを生
成する機能を有する。さらに、コントロール部311は、信号CE、GW、BWを論理演
算して、動作モードを決定する機能、決定した動作モードが実行されるように、ドライバ
部312の制御信号を生成する機能を有する。
【0126】
(ドライバ部312、出力回路314)
ドライバ部312は、セルアレイ313の配線WWL、RWL、WBL、RBLおよびS
Lを駆動する。ドライバ部312によって、セルアレイ313に対するデータの書き込み
および読み出しが行われる。
【0127】
データWDA[31:0]は、配線GWBLによって、ドライバ部312に入力される。
ドライバ部312が読み出したデータDO[31:0]は、配線GRBLを経て、出力回
路314に出力される。出力回路314はデータDO[31:0]を保持する機能を有す
る。出力回路314は、保持しているデータをNOSRAM300外部に出力する。この
出力データがデータRDA[31:0]である。
【0128】
ドライバ部312は、行デコーダ321、読み出しワード線ドライバ322、書き込みワ
ード線ドライバ323、列デコーダ325、列ドライバ330を有する。
【0129】
行デコーダ321は、アドレス信号をデコードする機能、読み出しワード線ドライバ32
2および書き込みワード線ドライバ323の制御信号を生成する機能を有する。列デコー
ダ325は、アドレス信号をデコードする機能、列ドライバ330の制御信号を生成する
機能を有する。
【0130】
列ドライバ330は、データをセルアレイ313書き込む機能、セルアレイ313からデ
ータを読み出す機能、読み出したデータを増幅する機能、読み出したデータを保持する機
能等を有する。列ドライバ330のより具体的な機能には、例えば、WBL、RBL、お
よびSLの電圧を制御する機能がある。
図9Aに示す列ドライバ330は、プリチャージ
回路331、センスアンプ332、出力MUX(マルチプレクサ)333、書き込みドラ
イバ334、およびソース線ドライバ335を有する。
【0131】
読み出しワード線ドライバ322は、行デコーダ321が指定する行のメモリセル30を
選択状態にする。列ドライバ330によって、選択状態のメモリセル30からはデータが
読み出される。書き込みワード線ドライバ323は、行デコーダ321が指定する行のメ
モリセル30を選択状態にする。列ドライバ330によって、選択状態のメモリセル30
にデータが書き込まれる。
【0132】
<列ドライバの構成例>
図11を参照して、列ドライバ330の構成例を説明する。
図11に示す回路340は、
列ドライバ330の基本要素となる回路ブロックである。
【0133】
信号PRCHG、信号SNS_P、信号SNS_N、信号RSEL[3:0]、信号RS
EL_G[3:0]、信号WSEL、および信号WSEL_G[15:0]は、列ドライ
バ330の制御信号であり、NOSRAM300内で生成される信号である。
【0134】
列ドライバ330には、列ごとに回路340が設けられている。回路340は、トランジ
スタT60―T62、T65-T69、SA(センスアンプ)60、TG(トランスファ
ゲート)61、62、AND回路65を有する。なお、
図11において、回路340には
、ソース線ドライバ335を構成する素子は省略されている。
【0135】
(プリチャージ回路331)
トランジスタT60はプリチャージ回路331に設けられている。トランジスタT60の
ゲートには、バッファ341を介して信号PRCHGが入力される。トランジスタT60
をオンにすることで、配線RBLは電圧Vss(”L”)にプリチャージされる。
【0136】
(センスアンプ332)
SA60はセンスアンプ332に設けられている。SA60は、ラッチ回路75、トラン
ジスタT65、T66、ノードQ2、QB2を有する。ラッチ回路75は2個のインバー
タ回路を有する。
【0137】
トランジスタT65のゲートにはバッファ344を介して、信号SNS_Pが入力される
。トランジスタT66のゲートにはバッファ345を介して、信号SNS_Nが入力され
る。トランジスタT65、T66は、スリープトランジスタとして機能する。トランジス
タT65によりラッチ回路75とVdd線(電圧Vddの供給用配線)との接続が制御さ
れ、トランジスタT66により、ラッチ回路75とVss線(電圧Vssの供給用配線)
との接続が制御される。信号SNS_Pと信号SNS_Nの論理は相補的に変化する。そ
のため、トランジスタT66がオンであれば、トランジスタT65もオンである。
【0138】
(出力MUX333)
出力MUX333は、データを読み出す配線RBLを選択する機能、配線RBLのデータ
を配線GRBLに出力する機能を有する。NOSRAM300には、4本の配線RBLに
対して1本の配線GRBLが設けられている。
【0139】
出力MUX333には、TG61、62、トランジスタT61、T62が設けられている
。信号RSEL[3:0]、RSEL_G[3:0]は、出力MUX333の制御信号で
ある。信号RSEL[3:0]は、データを読み出す配線RBLを選択するための選択信
号である。信号RSEL_G[3:0]は、配線GRBLへのデータの出力を制御するた
めの信号である。
【0140】
TG61は、ノードQB2と配線RBLとの接続を制御し、TG62は、ノードQ2とV
rf線(電圧Vrfの供給用配線)との接続を制御する。TG61において、信号RSE
L[3:0]の何れか1ビットが、バッファ343を介してnチャネル型トランジスタの
ゲートに入力され、かつバッファ343およびインバータ349を介してpチャネル型ト
ランジスタのゲートに入力される。TG62も同様である。
【0141】
直列に電気的に接続されているトランジスタT61、T62によって、スイッチ78が構
成される。信号RSEL_G[3:0]の何れか1ビットが、バッファ348を介して、
トランジスタT61のゲートに入力される。トランジスタT62のゲートは、ノードQB
2に電気的に接続されている。
【0142】
図11の例では、1本の配線GRBLに、4個のスイッチ78が並列に電気的に接続され
ている。4個のスイッチ78によって、4入力1出力MUXが構成される。この4入力1
出力MUXは、信号RSEL_G[3:0]に応じて、4列から1列を選択し、選択列の
SA60で保持しているデータを配線GRBLに出力する機能を有する。
【0143】
<書き込みドライバ>
AND回路65、トランジスタT67-T69は書き込みドライバ334に設けられてい
る。信号WSEL、信号WSEL_G[15:0]は、書き込みドライバ334の制御信
号である。書き込みドライバ334は、データを書き込む配線WBLを選択する機能、お
よび書き込みデータの列ドライバ330への入力を制御する機能等を有する。4本の配線
WBLに対して、1本の配線GWBLが設けられている。
【0144】
信号WSELは、バッファ342を介してAND回路65に入力される。AND回路65
は、ノードQ2と配線WBLとの接続を制御する。信号WSEL_G[15:0]は、デ
ータを書き込むWBLを選択するための選択信号である。
【0145】
トランジスタT67―T69によって、回路77が構成される。回路77は、配線GWB
LのデータをSA60に書き込む機能を有する。信号WSEL_G[15:0]の何れか
1ビットが、バッファ347を介して、トランジスタT67、T68のゲートに入力され
る。また、データWDA[31:0]の何れか1ビットが、バッファ346を介して配線
GWBLに入力される。配線GWBLにはトランジスタT69のゲートが電気的に接続さ
れている。配線GWBLに“H”が書き込まれているとき、トランジスタT68、T67
がオンになると、ノードQ2に“H”のデータが書き込まれ、ノードQB2に“L”のデ
ータが書き込まれる。
【0146】
コントロール部311が信号CE、GW、BW[3:0]を論理演算することで、NOS
RAM300の動作モードが決定される。表2に、NOSRAM300の動作モードを設
定する真理値表を示す。NOSRAM300は、スタンバイモード、読み出しモード、並
びに、3つの書き込みモード(バイト書き込み、ハーフワード書き込み、ワード書き込み
)、およびリフレッシュモードを有する。信号RSEL[3:0]、信号RSEL_G[
3:0]、信号WSEL_G[15:0]の論理はADDR[10:2]、BW[3:0
]によって決定される。
【0147】
【0148】
ここでは、1ワードのビット幅は32ビットとする。信号BW[3]、BW[2]、BW
[1]、BW[0]の論理は、それぞれ、データWDA[31:24]、WDA[23:
16]、WDA[15:8]、WDA[7:0]の書き込みを決定する。
【0149】
図11に示す回路340で列ドライバ330を構成することで、NOSRAM300は、
階層ワード線構造を採用せずに、セルアレイ313のラインサイズよりも小さな単位での
データの書き込みが可能である。ワード線分割回路(AND回路)による面積増大が生じ
ないため、NOSRAM300は大容量化に非常に有利である。また、ワード線分割回路
を有さないため、NOSRAM300は大容量化に伴う消費電力の増大を抑えることがで
きる。
【0150】
ここでは、セルアレイ313のラインサイズが128ビットであるが、NOSRAM30
0はワード(例えば、32ビット)単位、ハーフワード(例えば、16ビット)単位、お
よびバイト(8ビット)単位での書き込みが可能である。
【0151】
なおNOSRAM300の動作モードは、表2に限定されない。例えば、バーストモード
を選択する制御信号を外部から入力し、バースト書き込み、バースト読み出しを行っても
よい。
図12、
図13に示すタイミングチャートを参照して、NOSRAM300の動作
例を説明する。
【0152】
図12は、NOSRAM300の読み出しサイクルの動作例を示すタイミングチャートで
あり、
図13は、NOSRAM300の書き込みサイクルの動作例を示すタイミングチャ
ートである。図中の信号RSEL[h]において、hは0以上3以下の整数であり、信号
RSEL_G[k]において、kは0以上3以下の整数であり、信号WSEL_G[i]
において、iは0以上15以下の整数である。また、NOSRAM300の動作の理解を
容易にするため、図中に矢印を記入している。
【0153】
ここでは、信号WCYのデータは2’b01であり、書き込みサイクルに2クロックが割
り当てられることとする。
【0154】
<読み出しサイクル>
図12では、アドレス(Z)、(A)が入力され、これらアドレスが指定するメモリセル
30から、データ(Z)、(A)が読み出されている。ここでは、アドレス(A)に注目
して、読み出しサイクルを説明する。また、NOSRAM300の動作の理解を容易にす
るため、
図12中に矢印を記入している。
【0155】
読み出しサイクルであるので、信号CEは1’b1であり、信号GWは1’b0であり、
信号BW[3:0]は4’b0000である(表2)。よって、NOSRAM300は、
“H”の信号WAITを出力している。
【0156】
データ(A)の読み出しには、先ず、配線RBLのプリチャージが行われる。信号SNS
_Nは”L”であるため、全ての列において、SA60へのVdd、Vssの供給が遮断
されている。信号PRCHGは”H”であるので、各列の配線RBLは、トランジスタT
60により”L”にプリチャージされている。全ての行の配線RWLは”H”であり、全
てのメモリセル30は非選択状態である。
【0157】
アドレス(A)が入力されると、信号RSEL[3:0]をアクティブにする。信号SN
S_Nは”L”のままである。32の読み出し対象列において、TG61によりノードQ
B2が配線RBLと接続され、TG62によりノードQ2がVrf線と接続される。読み
出し対象列では、ノードQB2は”L”となり、ノードQ2には電圧Vrfが供給される
。
【0158】
次に、信号PRCHGを”L”にして、プリチャージを終了する。プリチャージ終了に連
動して、読み出し対象行のメモリセル30を選択する。まず、全ての列の配線SLを”H
”にする。次に対象行の配線RWLを”L”にする。配線RWLの電位が低下するのに伴
って、ノードSN2の電圧も下がる。ノードSN2が”H”のデータを保持している場合
、トランジスタMR2はオフ状態が維持され、配線RBLは”L”のままである。ノード
SN2が”L”のデータを保持している場合、トランジスタMR2がオンとなるので、配
線RBLの電圧は上昇する。読み出し対象列では、配線RBLの電圧に応じて、ノードQ
B2の電圧も変化する。つまり、ノードQB2には、ノードSN2の論理を反転したデー
タが出力されることとなる。
【0159】
次に、信号SNS_Nを”H”にし、SA60をアクティブにする。信号RSEL[3:
0]を”L”にして、ノードQB2を配線RBLから電気的に分離する。SA60は、ノ
ードQB2に書き込まれたデータの増幅と、その保持を行う。SA60のノードQ2は、
ノードSN2と同じ論理のデータを保持することとなる。
【0160】
次に、信号RSEL_G[3:0]をアクティブにする。32の読み出し対象列において
、トランジスタT61はオンになる。ノードQB2が”H”であれば、配線GRBLが”
L”となり、ノードQB2が”L”であれば、配線GRBLは”H”となる。つまり、ノ
ードSN2から読み出したデータと同じ論理のデータが、配線GRBLに書き込まれるの
で、データ(A)が読み出されることとなる。信号RSEL_G[3:0]を一定期間ア
クティブにする。しかる後、非アクティブにすることで、読み出しサイクルが終了する。
【0161】
なお、配線RBLのプリチャージは、メモリセル30からのデータの読み出しが終了次第
、開始することができる。
図11の例では、信号RSEL[3:0]を”L”にして、S
A60と配線RBLとを電気的に分離した後、信号PRCHGを”H”して配線RBLの
プリチャージを開始している。また、プリチャージの開始と連動して、対象行のメモリセ
ル30を非選択状態に戻している。信号PRCHGを”H”にするのと連動して、配線S
Lを”Lにし、しかる後、配線RWLを”H”にしている。
【0162】
NOSRAM300の読み出しサイクルは1クロックサイクルで完了し、NOSRAM3
00は、アドレス(A)を受信したクロックサイクルにおいて、データ(A)を出力する
ことができる。
【0163】
<書き込みサイクル>
図13では、アドレス(Z)、(A)が入力され、これらアドレスが指定するメモリセル
30にデータを書き込んでいる。アドレス(A)に注目して、書き込みサイクルを説明す
る。セルアレイ313のラインサイズよりも小さい単位でのデータ書き込みを行うため、
書き込みサイクルでは、先ず読み出し動作が実行され、次いで書き込み動作が実行される
。
【0164】
信号CEは1’b1であり、信号GWは1’b1であり、信号BW[3:0]は4’b1
111である。また、信号WCYは2’b01である。したがって、アドレス(A)が入
力されると、NOSRAM300は、1クロックサイクル時間“L”の信号WAITを出
力する。
【0165】
まず、書き込み対象行の全てのメモリセル30のデータをノードQB2に読み出す。この
動作は、
図12の読み出しモードでの動作と同様である。信号SNS_Nを”H”にする
ことで、SA60において、メモリセル30から読み出したデータが増幅され、保持され
る。
【0166】
信号SNS_Nを“H”にした後、信号PRCHGを”H”にして、配線RBLのプリチ
ャージを開始する。また、プリチャージの開始と連動して、配線SLを”L”にする。
【0167】
信号SNS_Nを”H”にした後、信号WSEL_G[15:0]をアクティブにする。
32の対象列において、回路77により、SA60のノードQ2には配線GWBLのデー
タ(WDA[31:0]の何れか1)が書き込まれる。その他の列のSA60は、先に読
み出されたデータをそのまま保持する。
【0168】
なお、ハーフワード書き込みモードでは、16の対象列のノードQ2に、それぞれWDA
[15:0]の何れか1ビットが書き込まれる。バイト書き込みモードでは、8の対象列
のノードQ2に、それぞれ、WDA[7:0]の何れか1ビットが書き込まれる。
【0169】
次に信号WSELを”H”にする。全ての列において、AND回路65によってノードQ
2と同じ論理のデータが配線WBLに書き込まれる。なお、信号WSELが”L”である
期間は、AND回路65によって、配線WBLは”L”に維持されている。次に、対象行
の配線WWLを”H”にして、配線WBLのデータをメモリセル30に書き込む。32の
対象列のメモリセル30にデータ(A)が書き込まれ、その他の列のメモリセル30には
保持していたデータが書き戻される。
【0170】
配線WWLを”L”にして、書き込み対象行のメモリセル30を非選択状態にする。信号
WSEL_G[15:0]を非アクティブにして、配線GWBLとSA60とを電気的に
分離する。そして、信号WSELを”L”にし、信号SNS_Nを”L”にし、配線RW
Lを”H”にする。以上により、書き込みサイクルが終了する。
【0171】
以上述べたように、NOSRAM300は、ワード単位、ハーフワード単位、及びバイト
単位での書き込みが可能となっているが、データの書き込み単位はこれに限定されない。
ドライバ部312の回路構成、アドレス信号、制御信号等を適宜設定することで、NOS
RAM300の書き込み単位はセルアレイ313のラインサイズよりも小さい任意の大き
さとすることができ、例えば、Nバイト単位(Nは1以上8以下の整数)とすることがで
きる。
【0172】
また、NOSRAM300の容量を2KBとしているが、これに限定されない。NOSR
AM300には、ワード線分割回路を設ける必要がないので、ワード線分割回路によるチ
ップ面積の増大や消費電力の増大がないため、NOSRAM300は大容量化に非常に有
効な回路構成をもつ。
【0173】
例えば、セルアレイ313とドライバ部312とを有する回路ブロックを単位ブロックと
し、複数の単位ブロックを設けることで、NOSRAM300の容量を増やすことができ
る。
【0174】
例えば、
図14Aに示すブロック351は、8KBの容量を持つ。ブロック351は、4
個のセルアレイ313[00]-313[11]、4個の行ドライバ320、1個のプレ
デコーダ324、2個の列デコーダ325、2個の列ドライバ330を有する。行ドライ
バ320は、行デコーダ321、読み出しワード線ドライバ322、書き込みワード線ド
ライバ323を有する。2個の列ドライバの一方は、セルアレイ313「00]、313
[10]で共有され、他方は、セルアレイ313[01]、313[11]で共有されて
いる。プレデコーダ324は、ADDR[12:11]をデコードし、4個のセルアレイ
313[00]-313[11]からアクセス要求されているセルアレイを特定する。各
セルアレイ313に付されている[00]等が、アドレスADDR[12:11]の値で
ある。
【0175】
図14Bに示すブロック352は、16個(4行×4列)のブロック351を有する。ブ
ロック352の容量は128KBである。アドレス信号として、信号ADDR[16:2
]が用いられる。信号ADDR[16:13]がブロック351の選択に用いられる。
【0176】
〔実施の形態4〕
本実施の形態では、半導体装置の一例として、ICチップ、電子部品、電子機器等につい
て説明する。
【0177】
<電子部品の作製方法例>
図15Aは、電子部品の作製方法例を示すフローチャートである。電子部品は、半導体パ
ッケージ、またはIC用パッケージともいう。この電子部品は、端子取り出し方向や、端
子の形状に応じて、複数の規格や名称が存在する。そこで、本実施の形態では、その一例
について説明することにする。
【0178】
トランジスタで構成される半導体装置は、組み立て工程(後工程)を経て、プリント基板
に脱着可能な部品が複数合わさることで完成する。後工程については、
図15Aに示す各
工程を経ることで完成させることができる。具体的には、前工程で得られる素子基板が完
成(ステップST71)した後、基板の裏面を研削する。この段階で基板を薄膜化して、
前工程での基板の反り等を低減し、部品の小型化を図る。次に、基板を複数のチップに分
離するダイシング工程を行う(ステップST72)。
【0179】
図15Bは、ダイシング工程が行われる前の半導体ウエハ7100の上面図である。
図1
5Cは、
図15Bの部分拡大図である。半導体ウエハ7100には、複数の回路領域71
02が設けられている。回路領域7102には、本発明の形態に係る半導体装置(例えば
、MCU、記憶装置等)が設けられている。
【0180】
複数の回路領域7102は、それぞれが分離領域7104に囲まれている。分離領域71
04と重なる位置に分離線(「ダイシングライン」ともいう。)7106が設定される。
ダイシング工程ST72では、分離線7106に沿って半導体ウエハ7100切断するこ
とで、回路領域7102を含むチップ7110を半導体ウエハ7100から切り出す。図
15Dにチップ7110の拡大図を示す。
【0181】
分離領域7104に導電層や半導体層を設けてもよい。分離領域7104に導電層や半導
体層を設けることで、ダイシング工程時に生じうるESDを緩和し、ダイシング工程に起
因する歩留まりの低下を防ぐことができる。また、一般にダイシング工程は、基板の冷却
、削りくずの除去、帯電防止などを目的として、炭酸ガスなどを溶解させて比抵抗を下げ
た純水を切削部に供給しながら行なう。分離領域7104に導電層や半導体層を設けるこ
とで、当該純水の使用量を削減することができる。よって、半導体装置の生産コストを低
減することができる。また、半導体装置の生産性を高めることができる。
【0182】
ステップST72を行った後、分離したチップを個々にピックアップしてリードフレーム
上に搭載し接合する、ダイボンディング工程を行う(ステップST73)。ダイボンディ
ング工程におけるチップとリードフレームとの接着方法は製品に適した方法を選択すれば
よい。例えば、接着は樹脂やテープによって行えばよい。ダイボンディング工程は、イン
ターポーザ上にチップを搭載し接合してもよい。ワイヤーボンディング工程で、リードフ
レームのリードとチップ上の電極とを金属の細線(ワイヤー)で電気的に接続する(ステ
ップST74)。金属の細線には、銀線や金線を用いることができる。ワイヤーボンディ
ングは、ボールボンディングとウェッジボンディングの何れでもよい。
【0183】
ワイヤーボンディングされたチップは、エポキシ樹脂等で封止される、モールド工程が施
される(ステップST75)。モールド工程を行うことで電子部品の内部が樹脂で充填さ
れ、機械的な外力による内蔵される回路部やワイヤーに対するダメージを低減することが
でき、また水分や埃による特性の劣化を低減することができる。リードフレームのリード
をめっき処理する。そしてリードを切断及び成形加工する(ステップST76)。めっき
処理によりリードの錆を防止し、後にプリント基板に実装する際のはんだ付けをより確実
に行うことができる。パッケージの表面に印字処理(マーキング)を施す(ステップST
77)。検査工程(ステップST78)を経て、電子部品が完成する(ステップST79
)。上掲した実施の形態の半導体装置を組み込むことで、低消費電力で、小型な電子部品
を提供することができる。
【0184】
完成した電子部品の斜視模式図を
図15Eに示す。
図15Eでは、電子部品の一例として
、QFP(Quad Flat Package)の斜視模式図を示している。
図15E
に示すように、電子部品7000は、リード7001及びチップ7110を有する。
【0185】
電子部品7000は、例えばプリント基板7002に実装される。このような電子部品7
000が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板7002上で電気的に接続される
ことで電子機器に搭載することができる。完成した回路基板7004は、電子機器等の内
部に設けられる。電子部品7000を搭載することで、電子機器の消費電力を削減するこ
とができる。または、電子機器を小型化することが容易になる。
【0186】
電子部品7000は、デジタル信号処理、ソフトウェア無線、アビオニクス(通信機器、
航法システム、自動操縦装置、飛行管理システム等の航空に関する電子機器)、ASIC
のプロトタイピング、医療用画像処理、音声認識、暗号、バイオインフォマティクス(生
物情報科学)、機械装置のエミュレータ、および電波天文学における電波望遠鏡等、幅広
い分野の電子機器の電子部品(ICチップ)に適用することが可能である。このような電
子機器としては、カメラ(ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等)、表示装置、パーソ
ナルコンピュータ(PC)、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯型情報端末(スマー
トフォン、タブレット型情報端末など)、電子書籍端末、ウエアラブル型情報端末(時計
型、ヘッドマウント型、ゴーグル型、眼鏡型、腕章型、ブレスレット型、ネックレス型等
)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレ
イヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い
機(ATM)、自動販売機、家庭用電化製品などが挙げられる。
【0187】
図16A-
図16Fを参照して、電子機器の構成例を示す。
図16A等の電子機器の表示
部には、タッチセンサを有するタッチパネル装置を用いることが好ましい。タッチパネル
装置を用いることで、表示部を電子機器の入力部としても機能させることができる。
【0188】
図16Aに示す情報端末2010は、筐体2011に組み込まれた表示部2012の他、
操作ボタン2013、外部接続ポート2014、スピーカ2015、マイクロフォン20
16を有する。ここでは、表示部2012の表示領域は、湾曲している。情報端末201
0は、バッテリで駆動する携帯型情報端末であり、タブレット型情報端末、あるいはスマ
ートフォンとして使用することができる。情報端末2010は、電話、電子メール、手帳
、インターネット接続、音楽再生等の機能を有する。指などで表示部2012に触れるこ
とで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、文字を入力する、表示部20
12の画面切り替え動作などの各種の操作は、指などで表示部2012に触れることで行
われる。また、マイクロフォン2016から音声を入力することで、情報端末2010を
操作することもできる。操作ボタン2013の操作により、電源のオン/オフ動作や、表
示部2012の画面切り替え動作などの各種の操作を行うこともできる。
【0189】
図16Bに示すノート型PC(パーソナルコンピュータ)2050は、筐体2051、表
示部2052、キーボード2053、ポインティングデバイス2054を有する。表示部
2052のタッチ操作で、ノート型PC2050を操作することができる。
【0190】
図16C示すビデオカメラ2070は、筐体2071、表示部2072、筐体2073、
操作キー2074、レンズ2075、接続部2076を有する。表示部2072は筐体2
071に設けられ、操作キー2074およびレンズ2075は筐体2073に設けられて
いる。筐体2071と筐体2073とは、接続部2076により接続されており、筐体2
071と筐体2073間の角度は、接続部2076により変更が可能である。接続部20
76における筐体2071と筐体2073間の角度に従って、表示部2072の映像を切
り替える構成としてもよい。表示部2072のタッチ操作によって、録画の開始および停
止の操作、倍率ズーム調整、撮影範囲の変更などの各種の操作を実行できる。
【0191】
図16Dに示す携帯型遊技機2110は、筐体2111、表示部2112、スピーカ21
13、LEDランプ2114、操作キーボタン2115、接続端子2116、カメラ21
17、マイクロフォン2118、記録媒体読込部2119を有する。
【0192】
図16Eに示す電気冷凍冷蔵庫2150は、筐体2151、冷蔵室用扉2152、および
冷凍室用扉2153等を有する。
【0193】
図16Fに示す自動車2170は、車体2171、車輪2172、ダッシュボード217
3、およびライト2174等を有する。実施の形態3のプロセッサは、自動車2170内
の各種のプロセッサに用いられる。
【0194】
〔実施の形態5〕
本実施の形態では、酸化物半導体トランジスタ等について説明する。
【0195】
<<OSトランジスタの構成例1>>
図17AはOSトランジスタの構成例を示す上面図である。
図17Bは、
図17AのX1
-X2線断面図であり、
図17CはY1-Y2線断面図である。ここでは、X1-X2線
の方向をチャネル長方向と、Y1-Y2線方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
図17Bは、OSトランジスタのチャネル長方向の断面構造を示す図であり、
図17Cは
、OSトランジスタのチャネル幅方向の断面構造を示す図である。なお、デバイス構造を
明確にするため、
図17Aでは、一部の構成要素が省略されている。
【0196】
OSトランジスタ501は絶縁表面に形成される。ここでは、絶縁層521上に形成され
ている。OSトランジスタ501は、絶縁層528、529で覆われている。OSトラン
ジスタ501は、絶縁層522-527、金属酸化物層511-513、導電層550-
553を有する。
【0197】
なお、図中の絶縁層、金属酸化物層、導電体等は、単層でも積層でもよい。これらの作製
には、スパッタリング法、分子線エピタキシー法(MBE法)、パルスレーザ堆積法(P
LD法)、CVD法、原子層堆積法(ALD法)などの各種の成膜方法を用いることがで
きる。なお、CVD法には、プラズマCVD法、熱CVD法、有機金属CVD法などがあ
る。
【0198】
金属酸化物層511-513をまとめて酸化物層510と呼ぶ。
図17B、
図17Cに示
すように、酸化物層510は、金属酸化物層511、金属酸化物層512、金属酸化物層
513の順に積層している部分を有する。OSトランジスタ501がオン状態のとき、チ
ャネルは酸化物層510の金属酸化物層512に主に形成される。
【0199】
OSトランジスタ501のゲート電極は導電層550で構成され、ソース電極またはドレ
イン電極として機能する一対の電極は、導電層551、552で構成される。バックゲー
ト電極は導電層553で構成される。導電層553は、導電層553a、553bを有す
る。なお、OSトランジスタ501はバックゲート電極を有さない構造としてもよい。後
述するOSトランジスタ502-507も同様である。
【0200】
ゲート(フロントゲート)側のゲート絶縁層は絶縁層527で構成され、バックゲート側
のゲート絶縁層は、絶縁層524-526の積層で構成される。絶縁層528は層間絶縁
層である。絶縁層529はバリア層である。
【0201】
金属酸化物層513は、金属酸化物層511、512、導電層551、552でなる積層
体を覆っている。絶縁層527は金属酸化物層513を覆っている。導電層551、55
2はそれぞれ、金属酸化物層513、絶縁層527を介して、導電層550と重なる領域
を有する。
【0202】
導電層551、552は、金属酸化物層511と金属酸化物層512との積層を形成する
ために使用されるハードマスクから作製されている。例えば、次のような工程を経て、金
属酸化物層511、512、導電層551、552を作製することができる。2層の金属
酸化物膜を形成する。金属酸化物膜上に導電膜を形成する。この導電膜をエッチングして
ハードマスクを形成する。ハードマスクを用いて、2層の金属酸化物膜をエッチングして
、金属酸化物層511と金属酸化物層512の積層を形成する。次に、ハードマスクをエ
ッチングして、導電層551および導電層552を形成する。このような工程を経て形成
されるため、導電層551、552は、金属酸化物層511、512の側面に接する領域
を有していない。
【0203】
(導電層)
導電層550―553に用いられる導電材料には、リン等の不純物元素をドーピングした
多結晶シリコンに代表される半導体、ニッケルシリサイド等のシリサイド、モリブデン、
チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム
等の金属、または上述した金属を成分とする金属窒化物(窒化タンタル、窒化チタン、窒
化モリブデン、窒化タングステン)等がある。また、インジウム錫酸化物、酸化タングス
テンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタ
ンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化
物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を用いることができる。
【0204】
導電層550に仕事関数の高い導電性材料を用いることで、OSトランジスタ501のV
tを大きくし、カットオフ電流を下げることができる。導電層550としては仕事関数が
好ましくは、4.8eV以上、さらに好ましくは5.0eV以上、さらに好ましくは5.
2eV以上、さらに好ましくは5.4eV以上、さらに好ましくは5.6eV以上の導電
性材料を用いればよい。仕事関数の大きな導電性材料として、例えば、モリブデン、酸化
モリブデン、Pt、Ptシリサイド、Niシリサイド、インジウム錫酸化物、窒素添加さ
れたIn-Ga-Zn酸化物などが挙げられる。
【0205】
なお、カットオフ電流とは、ゲートーソース間電圧が0Vであるときのドレイン電流のこ
とをいう。
【0206】
例えば、導電層550は窒化タンタル、またはタングステン単層である。あるいは、導電
層550が2層構造、および3層構造の場合、次のような組み合わせがある。(アルミニ
ウム、チタン)、(窒化チタン、チタン)、(窒化チタン、タングステン、(窒化タンタ
ル、タングステン)、(窒化タングステン、タングステン)、(チタン、アルミニウム、
チタン)、(窒化チタン、アルミニウム、チタン)、(窒化チタン、アルミニウム、窒化
チタン)。先に記載した導電体が絶縁層527側の層を構成する。
【0207】
導電層551と導電層552は同じ層構造をもつ。例えば、導電層551が単層である場
合、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリ
ブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金
を用いればよい。導電層551が2層構造、および3層構造の場合、次のような組み合わ
せがある。(チタン、アルミニウム)、(タングステン、アルミニウム)、(タングステ
ン、銅)(銅-マグネシウム-アルミニウム合金、銅)、(チタン膜、銅)、(チタン又
は窒化チタン、アルミニウムまたは銅、チタンまたは窒化チタン)、(モリブデンまたは
窒化モリブデン、アルミニウムまたは銅、モリブデンまたは窒化モリブデン)。先に記載
した導電体が絶縁層527側の層を構成する。
【0208】
例えば、導電層553aは、水素に対するバリア性を有する導電層(例えば、窒化タンタ
ル層)とし、導電層553bは、導電層553aよりも導電率の高い導電層(例えばタン
グステン層)とすることが好ましい。このような構造であることで、導電層553は配線
としての機能と、酸化物層510への水素の拡散を抑制する機能とをもつ。
【0209】
(絶縁体)
絶縁層521-529に用いられる絶縁材料には、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム
、窒化酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化シリコン、酸
化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、
酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、
酸化タンタル、アルミニウムシリケートなどがある。絶縁層521-529はこれらの絶
縁材料でなる単層、または積層して構成される。絶縁層521-529を構成する層は、
複数の絶縁材料を含んでいてもよい。
【0210】
なお、本明細書等において、酸化窒化物とは、酸素の含有量が窒素よりも多い化合物であ
り、窒化酸化物とは、窒素の含有量が酸素よりも多い化合物のことをいう。
【0211】
酸化物層510の酸素欠損の増加を抑制するため、絶縁層526-528は、酸素を含む
絶縁層であることが好ましい。絶縁層526―528の少なくとも1つは、加熱により酸
素が放出される絶縁膜(以下、「過剰酸素を含む絶縁膜」という。)で形成されることが
より好ましい。過剰酸素を含む絶縁膜から酸化物層510に酸素を供給することで、酸化
物層510の酸素欠損を補償することができる。したがって、OSトランジスタ501の
信頼性および電気特性を向上することができる。
【0212】
過剰酸素を含む絶縁層膜とは、TDS(Thermal Desorption Spe
ctroscopy:昇温脱離ガス分光法)において、膜の表面温度が100℃以上70
0℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲における酸素分子の放出量が1.0×
1018[分子/cm3]以上である膜とする。酸素分子の放出量は、3.0×1020
[分子/cm3]以上であることが好ましい。
【0213】
過剰酸素を含む絶縁膜は、絶縁膜に酸素を添加する処理を行って形成することができる。
酸素を添加する処理は、酸素雰囲気下による熱処理や、イオン注入法、イオンドーピング
法、プラズマイマージョンイオン注入法、またはプラズマ処理などを用いて行うことがで
きる。酸素を添加するためのガスとしては、16O2もしくは18O2などの酸素ガス、
亜酸化窒素ガスまたはオゾンガスなどを用いることができる。
【0214】
酸化物層510の水素濃度の増加を防ぐために、絶縁層521―529中の水素濃度を低
減することが好ましい。特に絶縁層523-528の水素濃度を低減することが好ましい
。具体的には、水素濃度は、2×1020atoms/cm3以下であり、好ましくは5
×1019atoms/cm3以下が好ましく、1×1019atoms/cm3以下が
より好ましく、5×1018atoms/cm3以下がさらに好ましい。
【0215】
酸化物層510の窒素濃度の増加を防ぐために、絶縁層523―518の窒素濃度を低減
することが好ましい。具体的には、窒素濃度は、5×1019atoms/cm3未満で
あり、5×1018atoms/cm3以下が好ましく、1×1018atoms/cm
3以下がより好ましく、5×1017atoms/cm3以下がより好ましい。
【0216】
上掲の水素濃度、窒素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary
Ion Mass Spectrometry)で測定された値である。
【0217】
OSトランジスタ501において、酸素および水素に対してバリア性をもつ絶縁層(以下
、バリア層)によって酸化物層510が包み込まれる構造であることが好ましい。このよ
うな構造であることで、酸化物層510から酸素が放出されること、酸化物層510に水
素が侵入することを抑えることができるので、OSトランジスタ501の信頼性、電気特
性を向上できる。
【0218】
例えば、絶縁層529をバリア層として機能させ、かつ絶縁層521、522、524の
少なくとも1つをバリア層と機能させればよい。バリア層は、酸化アルミニウム、酸化窒
化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イット
リウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化シリコンなどの材料で形成すること
ができる。
【0219】
酸化物層510と導電層550の間に、バリア層をさらに設けてもよい。もしくは、金属
酸化物層513として、酸素および水素に対してバリア性をもつ金属酸化物層を設けても
よい。
【0220】
絶縁層524、絶縁層525、絶縁層526の膜厚をそれぞれ薄くすることで、導電層5
50の電圧によるOSトランジスタのしきい値電圧の制御が容易になり、好ましい。例え
ば、絶縁層524-526の各膜厚は50nm以下にする。各膜厚は30nm以下が好ま
しく、10nm以下がより好ましく、5nm以下がさらに好ましい。
【0221】
絶縁層521-528の構成例を記す。この例では、絶縁層521、522、525、5
29は、それぞれ、バリア層として機能する。絶縁層526―528は過剰酸素を含む酸
化物層である。絶縁層521は窒化シリコンであり、絶縁層522は酸化アルミニウムで
あり、絶縁層523は酸化窒化シリコンである。バックゲート側のゲート絶縁層(524
-526)は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化シリコンの積層である。フロント
ゲート側のゲート絶縁層(527)は、酸化窒化シリコンである。層間絶縁層(528)
は、酸化シリコンである。絶縁層529は酸化アルミニウムである。
【0222】
(金属酸化物層)
金属酸化物層511―513の各厚さは3nm以上500nm以下であり、3nm以上1
00nm以下が好ましく、3nm以上60nm以下がさらに好ましい。
【0223】
OSトランジスタ501のオフ電流の低減のために、金属酸化物層512は、例えば、エ
ネルギーギャップが大きいことが好ましい。金属酸化物層512のエネルギーギャップは
、2.5eV以上4.2eV以下であり、2.8eV以上3.8eV以下が好ましく、3
eV以上3.5eV以下がさらに好ましい。
【0224】
酸化物層510は、結晶性金属酸化物層であることが好ましい。少なくとも、金属酸化物
層512は結晶性金属酸化物層であることが好ましい。信頼性、および電気特性の良いO
Sトランジスタ501を実現できる。
【0225】
金属酸化物層512に適用できる酸化物は、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn
酸化物、In-M-Zn酸化物(MはAl、Ga、Y、またはSn)である。金属酸化物
層512は、インジウムを含む酸化物層に限定されない。金属酸化物層512は、例えば
、Zn-Sn酸化物、Ga-Sn酸化物、Zn-Mg酸化物等で形成することができる。
金属酸化物層511、513も、金属酸化物層512と同様の酸化物で形成することがで
きる。金属酸化物層511、513は、それぞれ、Ga酸化物で形成することができる。
この場合、金属酸化物層512はGaを含む金属酸化物層であることが好ましい。
【0226】
金属酸化物層512と金属酸化物層511の界面に界面準位が形成されると、界面近傍の
領域にもチャネル領域が形成されるために、OSトランジスタ501のしきい値電圧が変
動してしまう。そのため、金属酸化物層511は、構成要素として、金属酸化物層512
を構成する金属元素の少なくとも1つを含むことが好ましい。これにより、金属酸化物層
512と金属酸化物層511の界面には、界面準位が形成されにくくなり、OSトランジ
スタ501のしきい値電圧等の電気特性のばらつきを低減することができる。
【0227】
金属酸化物層513は、構成要素として、金属酸化物層512を構成する金属元素の少な
くとも1つを含むことが好ましい。これにより、金属酸化物層512と金属酸化物層51
3との界面では、界面散乱が起こりにくくなり、キャリアの動きが阻害されにくくなるの
で、OSトランジスタ501の電界効果移動度を高くすることができる。
【0228】
金属酸化物層511-513のうち、金属酸化物層512のキャリア移動度が最も高いこ
とが好ましい。これにより、絶縁層526、527から離間している金属酸化物層512
にチャネルを形成することができる。
【0229】
例えば、In-M-Zn酸化物等のIn含有金属酸化物は、Inの含有率を高めることで
、キャリア移動度を高めることができる。In-M-Zn酸化物では、主として重金属の
s軌道がキャリア伝導に寄与しており、インジウムの含有率を多くすることにより、より
多くのs軌道が重なるため、インジウムの含有率が多い酸化物はインジウムの含有率が少
ない酸化物と比較して移動度が高くなる。そのため、酸化物半導体膜にインジウムの含有
量が多い酸化物を用いることで、キャリア移動度を高めることができる。
【0230】
例えば、In-Ga-Zn酸化物で金属酸化物層512を形成し、Ga酸化物で金属酸化
物層511、513を形成する。例えば、In-M-Zn酸化物で、金属酸化物層511
-513を形成する場合、3層のうち、金属酸化物層511を最もIn含有率が高いIn
-M-Zn酸化物層とする。In-M-Zn酸化物をスパッタリング法で形成する場合、
ターゲットの金属元素の原子数比を変えることで、In含有率を変化させることができる
。
【0231】
例えば、金属酸化物層512の成膜に用いるターゲットの金属元素の原子数比In:M:
Znは、1:1:1、3:1:2、または4:2:4.1が好ましい。例えば、金属酸化
物層511、513の成膜に用いるターゲットの金属元素の原子数比In:M:Znは、
1:3:2、または1:3:4が好ましい。In:M:Zn=4:2:4.1のターゲッ
トで成膜したIn-M-Zn酸化物の原子数比は、およそIn:M:Zn=4:2:3で
ある。
【0232】
OSトランジスタ501に安定した電気特性を付与するには、酸化物層510の不純物濃
度を低減することが好ましい。金属酸化物において、水素、窒素、炭素、シリコン、およ
び主成分以外の金属元素は不純物となる。例えば、水素および窒素はドナー準位の形成に
寄与し、キャリア密度を増大させてしまう。また、シリコンおよび炭素は酸化物半導体中
で不純物準位の形成に寄与する。不純物準位はトラップとなり、トランジスタの電気特性
を劣化させることがある。
【0233】
例えば、酸化物層510は、シリコン濃度が2×1018atoms/cm3以下の、好
ましくは、2×1017atoms/cm3以下の領域を有する。酸化物層510の炭素
濃度も同様である。
【0234】
酸化物層510は、アルカリ金属濃度が1×1018atoms/cm3以下の、好まし
くは2×1016atoms/cm3以下の領域を有する。アルカリ土類金属の濃度につ
いても同様である。
【0235】
酸化物層510は、窒素濃度が5×1019atoms/cm3未満の、好ましくは5×
1018atoms/cm3以下の、より好ましくは1×1018atoms/cm3以
下の、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下の領域を有する。
【0236】
酸化物層510は、水素濃度が1×1020atoms/cm3未満の、好ましくは1×
1019atoms/cm3未満の、より好ましくは5×1018atoms/cm3未
満の、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満の領域を有する。
【0237】
上掲した酸化物層510の不純物濃度は、SIMSにより得られる値である。
【0238】
金属酸化物層512が酸素欠損を有する場合、酸素欠損のサイトに水素が入り込むことで
ドナー準位を形成することがある。その結果、OSトランジスタ501のオン電流を減少
させてしまう。酸素欠損のサイトは、水素が入るよりも酸素が入る方が安定する。したが
って、金属酸化物層512中の酸素欠損を低減することで、OSトランジスタ501のオ
ン電流を大きくできる場合がある。よって、金属酸化物層512の水素を低減することで
、酸素欠損のサイトに水素が入りこまないようにすることが、オン電流特性の向上に有効
である。
【0239】
金属酸化物に含まれる水素は、金属原子に結合している酸素と反応して水になるため、酸
素欠損を形成することがある。酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成
されることがある。また、水素の一部が金属原子に結合している酸素と結合して、キャリ
アである電子を生成することがある。金属酸化物層512にチャネル形成領域が設けられ
るので、金属酸化物層512に水素が含まれていると、OSトランジスタ501はノーマ
リーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物層512中の水素はできる限り低減さ
れていることが好ましい。
【0240】
図17は、酸化物層510が3層構造の例であるが、これに限定されない。例えば、酸化
物層510を金属酸化物層511または金属酸化物層513のない2層構造とすることが
できる。または、金属酸化物層511の上もしくは下、または金属酸化物層513上もし
くは下に、金属酸化物層511、金属酸化物層512および金属酸化物層513として例
示した酸化物半導体層のいずれか一を有する4層構造とすることもできる。または、酸化
物層510の任意の層の間、酸化物層510の上、酸化物層510の下のいずれか二箇所
以上に、金属酸化物層511―513と同様の金属酸化物層を1層または複数を設けるこ
とができる。
【0241】
(エネルギーバンド構造)
図24を参照して、金属酸化物層511―513の積層によって得られる効果を説明する
。
図24は、OSトランジスタ501のチャネル形成領域のエネルギーバンド構造の模式
図である。ここでは、OSトランジスタ501を例に説明するが、金属酸化物層511―
513の積層による効果は、後述するOSトランジスタ502、503でも同様である。
【0242】
Ec526、Ec511、Ec512、Ec513、Ec527は、それぞれ、絶縁層5
26、金属酸化物層511、金属酸化物層512、金属酸化物層513、絶縁層527の
伝導帯下端のエネルギーを示している。
【0243】
ここで、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差(「電子親和力」ともいう。)は、真
空準位と価電子帯上端のエネルギーとの差(イオン化ポテンシャルともいう。)からエネ
ルギーギャップを引いた値となる。なお、エネルギーギャップは、分光エリプソメータ(
HORIBA JOBIN YVON社 UT-300)を用いて測定できる。また、真
空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultrav
iolet Photoelectron Spectroscopy)装置(PHI社
VersaProbe)を用いて測定できる。
【0244】
絶縁層526、527は絶縁体であるため、Ec526とEc527は、Ec511、E
c512、およびEc513よりも真空準位に近い(電子親和力が小さい)。
【0245】
金属酸化物層512は、金属酸化物層511、513よりも電子親和力が大きい。例えば
、金属酸化物層512と金属酸化物層511との電子親和力の差、および金属酸化物層5
12と金属酸化物層513との電子親和力の差は、それぞれ、0.07eV以上1.3e
V以下である。電子親和力の差は、0.1eV以上0.7eV以下が好ましく、0.15
eV以上0.4eV以下がさらに好ましい。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端
のエネルギーとの差である。
【0246】
OSトランジスタ501のゲート電極(導電層550)に電圧を印加すると、金属酸化物
層511、金属酸化物層512、金属酸化物層513のうち、電子親和力が大きい金属酸
化物層512に主にチャネルが形成される。
【0247】
インジウムガリウム酸化物は、小さい電子親和力と、高い酸素ブロック性を有する。その
ため、金属酸化物層513がインジウムガリウム酸化物を含むと好ましい。ガリウム原子
割合[Ga/(In+Ga)]は、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、さらに
好ましくは90%以上とする。
【0248】
また、金属酸化物層511と金属酸化物層512との間には金属酸化物層511と金属酸
化物層512の混合領域が存在する場合がある。また、金属酸化物層513と金属酸化物
層512との間には金属酸化物層513と金属酸化物層512の混合領域が存在する場合
がある。混合領域は、界面準位密度が低くなるため、金属酸化物層511-513の積層
体(酸化物層510)は、それぞれの界面近傍においてエネルギーが連続的に変化する(
連続接合ともいう。)バンド構造となる。
【0249】
このようなエネルギーバンド構造を有する酸化物層510において、電子は主に金属酸化
物層512を移動することになる。そのため、金属酸化物層511と絶縁層526との界
面に、または、金属酸化物層513と絶縁層527との界面に準位が存在したとしても、
これらの界面準位により、酸化物層510中を移動する電子の移動が阻害されにくくなる
ため、OSトランジスタ501のオン電流を高くすることができる。
【0250】
また、
図24に示すように、金属酸化物層511と絶縁層526の界面近傍、および金属
酸化物層513と絶縁層527の界面近傍には、それぞれ、不純物や欠陥に起因したトラ
ップ準位Et526、Et527が形成され得るものの、金属酸化物層511、513が
あることにより、金属酸化物層512をトラップ準位Et526、Et527から離間す
ることができる。
【0251】
なお、Ec511とEc512との差が小さい場合、金属酸化物層512の電子が該エネ
ルギー差を越えてトラップ準位Et526に達することがある。トラップ準位Et526
に電子が捕獲されることで、絶縁膜の界面にマイナスの固定電荷が生じ、トランジスタの
しきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。Ec512とEc513とのエネルギー
差が小さい場合も同様である。
【0252】
OSトランジスタ501のしきい値電圧の変動が低減され、OSトランジスタ501の電
気特性を良好なものとするため、Ec511とEc512との差、Ec512とEc51
3と差は、それぞれ0.1eV以上が好ましく、0.15eV以上がより好ましい。
【0253】
<<OSトランジスタの構成例2>>
図18A-
図18Cに示すOSトランジスタ502は、OSトランジスタ501の変形例
である。OSトランジスタ502の導電層550は、導電層550a、導電層550b、
導電層550cを有する。
【0254】
導電層550aは、熱CVD法、MOCVD法またはALD法を用いて形成する。特に、
原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法を用いて形
成することが好ましい。ALD法等により形成することで、絶縁層527に対するプラズ
マによるダメージを減らすことができる。また、被覆性を向上させることができるため、
導電層550aをALD法等により形成することが好ましい。従って、信頼性が高いOS
トランジスタ502を提供することができる。
【0255】
導電層550bは、タンタル、タングステン、銅、アルミニウムなどの導電性が高い材料
を用いて形成する。さらに、導電層550b上に形成する導電層550cは、窒化タング
ステンなどの酸化しづらい導電体を用いて形成することが好ましい。絶縁層528に酸素
が脱離する酸化物材料を用いる場合、導電層550が、脱離した酸素により酸化すること
を防止することができる。従って、導電層550の酸化を抑制し、絶縁層528から、脱
離した酸素を効率的に酸化物層510へと供給することができる。
【0256】
過剰酸素領域を有する絶縁層528と接する面積が大きい導電層550cに酸化しにくい
導電体を用いることで、絶縁層528の過剰酸素が導電層550に吸収されることを抑制
することができる。また、導電層550bに導電性が高い導電体を用いることで、消費電
力が小さいOSトランジスタ502を提供することができる。
【0257】
<<OSトランジスタの構成例3>>
図19A-
図19Cに示すOSトランジスタ503は、OSトランジスタ501の変形例
である。OSトランジスタ503では、導電層550をエッチングマスクに用いて、金属
酸化物層513および絶縁層527がエッチングされている。
【0258】
<<OSトランジスタの構成例4>>
図20A-
図20Cに示すOSトランジスタ504は、OSトランジスタ501の変形例
である。
【0259】
導電層550は導電層550aと導電層550bの2層構造である。導電層550は絶縁
層530に覆われている。
【0260】
例えば、絶縁層530は、酸素に対してバリア性を有する絶縁層とする。これにより、絶
縁層528等から離脱した酸素によって、導電層550が酸化することを抑制することが
できる。この場合、絶縁層530には、酸化アルミニウムなどの金属酸化物を用いること
ができる。絶縁層530の厚さは、導電層550の酸化を防止できる程度であればよく、
例えば、1nm以上10nm以下であり、好ましくは3nm以上7nm以下である。
【0261】
なお、OSトランジスタ504も、OSトランジスタ503と同様に、金属酸化物層51
3と絶縁層527を部分的に除去し、導電層551、552の上面の一部を露出させても
よい。あるいは、絶縁層527のみを部分的に除去してもよい。
【0262】
<<OSトランジスタの構成例5>>
図21A-
図21Cに示すOSトランジスタ505は、OSトランジスタ501の変形例
である。
【0263】
導電層551は導電層551aと導電層551bの2層構造であり、導電層552は導電
層552aと導電層552bの2層構造である。
【0264】
導電層551、552において、導電層551a、552aは金属酸化物層512との密
着性が高い導電膜で形成することが好ましい。この導電膜をALD法で成膜することは、
被覆性を向上させることができるので、好ましい。導電層551b、552bは、導電層
551a、552aよりも高い導電率をもつ導電体で形成することが好ましい。導電層5
51a、552aを設けることで、導電層551b、552bに用いることのできる導電
体材料の制約が小さくなる。導電層551a、552aに、タンタル、タングステン、銅
、アルミニウムなどの導電性が高い材料を用いることで、OSトランジスタ505で構成
される回路の消費電力を低減できる。
【0265】
<<OSトランジスタの構成例6>>
図22A-
図22Cに示すOSトランジスタ506は、OSトランジスタ501の変形例
であり、主に、ゲート電極の構造が異なる。
【0266】
絶縁層528に形成された開口部には、金属酸化物層513、絶縁層527、導電層55
0が設けられている。つまり、絶縁層528の開口部を利用して、ゲート電極を自己整合
的に形成することができる。よって、OSトランジスタ506では、ゲート電極(550
)は、ゲート絶縁層(527)を介してソース電極およびドレイン電極(551、552
)と重なる領域を有していない。そのためゲートーソース間の寄生容量、ゲートードレイ
ン間の寄生容量が低減でき、周波特性を向上できる。また、絶縁層528の開口部によっ
てゲート電極幅を制御できるため、チャネル長の短いOSトランジスタの作製が容易であ
る。
【0267】
<<OSトランジスタの構成例7>>
図23A-
図23Cに示すOSトランジスタ507は、OSトランジスタ506の変形例
である。
【0268】
酸化物層510は、さらに金属酸化物層514を有する。金属酸化物層514は、金属酸
化物層511、512、導電層551、552を覆っている。
【0269】
金属酸化物層514によって、金属酸化物層512は絶縁層528から離間される。酸化
物層510において、金属酸化物層512に主にチャネルが形成されるため、金属酸化物
層512が絶縁層528と接している領域が存在しないようにすることで、チャネル近傍
に浅い準位が生じることが抑制できる。よって、OSトランジスタ507の信頼性を向上
できる。
【0270】
<<半導体装置の構成例>>
図25、
図26を参照して、OSトランジスタとSiトランジスタとで構成されている半
導体装置の構成例を説明する。
【0271】
図25、
図26は、MCU100(
図1)の積層構造を説明するための断面図である。図
25にはMCU100に搭載されているNOSRAM120の要部を示す。
【0272】
MCU100は、CMOS層570、配線層W1-W5、OSFET層571、配線層W
6、W7の積層で構成されている。
【0273】
CMOS層570には、MCU100を構成するSiトランジスタが設けられている。S
iトランジスタの活性層は単結晶シリコンウエハ560に設けられている。
【0274】
OSFET層571には、MCU100のOSトランジスタが設けられている。OSFE
T層571には、NOSRAM120のメモリセル135のOSトランジスタが設けられ
る。
図25には、メモリセル135を代表的に示している。なお、
図25において、トラ
ンジスタMW1はバックゲートを有するOSトランジスタであり、OSトランジスタ50
3(
図19A-
図19C)と同様の構造を有する。このバックゲート電極は、配線層W
5
に設けられている。配線層W
6には、容量素子CS1が設けられている。
【0275】
図26は、OSFET層571に、OSトランジスタ504(
図20A-
図20C)と同
様の構造を有するトランジスタを設けた例を示している。
図26は、
図25と同様に、M
CU100の要部を示す図である。
【0276】
〔実施の形態6〕
本実施の形態では、酸化物半導体について説明する。酸化物半導体は、単結晶酸化物半導
体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体として
は、CAAC-OS(c-axis-aligned crystalline oxi
de semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocr
ystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半
導体(a-like OS:amorphous-like oxide semico
nductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0277】
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物半
導体と、に分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC-
OS、多結晶酸化物半導体およびnc-OSなどがある。
【0278】
非晶質構造は、一般に、等方的であって不均質構造を持たない、準安定状態で原子の配置
が固定化していない、結合角度が柔軟である、短距離秩序は有するが長距離秩序を有さな
い、などといわれている。
【0279】
即ち、安定な酸化物半導体を完全な非晶質(completely amorphous
)酸化物半導体とは呼べない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構
造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体とは呼べない。一方、a-li
ke OSは、等方的でないが、鬆(ボイドともいう。)を有する不安定な構造である。
不安定であるという点では、a-like OSは、物性的に非晶質酸化物半導体に近い
。
【0280】
(CAAC-OS)
CAAC-OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物半
導体の一種である。
【0281】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数の結晶部(ナノ結
晶)が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。結晶部一つの大きさは1nm以上、
または3nm以上である。よって、CAAC-OSの結晶部をナノ結晶と称することがで
き、CAAC-OSを、CAA crystal(c-axis-aligned a-
b-plane-anchored crystal)を有する酸化物半導体と称するこ
ともできる。
【0282】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の混
入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(
酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
【0283】
不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素な
どがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結
合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、
結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭
素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、
結晶性を低下させる要因となる。
【0284】
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合があ
る。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャリ
ア発生源となる場合がある。例えば、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップと
なる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
【0285】
(nc-OS)
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3
nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。nc-OSは、異なる結晶部間で
結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。結晶部(ナノ
結晶)間で結晶方位が規則性を有さないことから、nc-OSを、RANC(Rando
m Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体、またはNAN
C(Non-Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶ
こともできる。
【0286】
nc-OSの結晶は配向性を有さないので、nc-OSは、分析方法によっては、a-l
ike OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0287】
なお、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて密度の低い構造
である。具体的には、a-like OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の78.6
%以上92.3%未満である。また、nc-OSの密度およびCAAC-OSの密度は、
同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満である。単結晶の密度の78%未
満である酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
【0288】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱
面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3である。よっ
て、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において
、a-like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満である。また
、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、
nc-OSの密度およびCAAC-OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3
未満である。
【0289】
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わ
せることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所
望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、
加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組
み合わせて見積もることが好ましい。
【0290】
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。な
お、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、
CAAC-OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。酸化物半導体の構造は
、X線回折(XRD)、ナノビーム電子回折、TEM(透過型電子顕微鏡)観察などによ
って、特定することができる。
【0291】
<酸化物半導体のキャリア密度>
次に、酸化物半導体のキャリア密度について説明する。酸化物半導体のキャリア密度に影
響を与える因子としては、酸化物半導体中の酸素欠損(VO)、または酸化物半導体中の
不純物などが挙げられる。
【0292】
酸化物半導体中の酸素欠損が多くなると、該酸素欠損に水素が結合(この状態をVoHと
もいう)した際に、欠陥準位密度が高くなる。または、酸化物半導体中の不純物が多くな
ると、該不純物に起因し欠陥準位密度が高くなる。したがって、酸化物半導体中の欠陥準
位密度を制御することで、酸化物半導体のキャリア密度を制御することができる。
【0293】
OSトランジスタにおいて、Vtのマイナスシフトを抑制する、またはオフ電流を低減す
るためには、酸化物半導体のキャリア密度が低い方が好ましい。酸化物半導体のキャリア
密度を低くするには、酸化物半導体中の不純物濃度を低くして、欠陥準位密度を低くすれ
ばよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性
または実質的に高純度真性と言う。
【0294】
OSトランジスタにおいて、オン電流の増加、電界効果移動度の増加のためには、酸化物
半導体のキャリア密度を高くする方が好ましい場合がある。酸化物半導体の不純物濃度を
わずかに高める、または酸化物半導体の欠陥準位密度をわずかに高めることで、酸化物半
導体のキャリア密度を高くすることができる。例えば、OSトランジスタのオフ電流に対
するオン電流比(Ion/Ioff)がとれる範囲において、不純物濃度がわずかに高い
、または欠陥準位密度がわずかに高い酸化物半導体は、実質的に真性とみなせる。
【0295】
また、電子親和力が大きく、それにともなってバンドギャップが小さくなり、その結果、
熱励起された電子(キャリア)の密度が増加した酸化物半導体は、実質的に真性とみなせ
る。なお、電子親和力がより大きな酸化物半導体を用いた場合には、OSトランジスタの
Vtはより低くなる。
【0296】
キャリア密度が高められた酸化物半導体は、わずかにn型化している。したがって、キャ
リア密度が高められた酸化物半導体を、「Slightly-n」型の酸化物半導体と呼
称してもよい。
【0297】
高純度真性の酸化物半導体のキャリア密度は、例えば、8×1015cm-3未満であり
、好ましくは1×1011cm-3未満が好ましく、1×1010cm-3未満がさらに
好ましく、1×10-9cm-3以上であるとよい。
【0298】
実質的に高純度真性の酸化物半導体のキャリア密度は、例えば、1×105cm-3以上
1×1018cm-3未満であり、1×107cm-3以上1×1017cm-3以下が
好ましく、1×109cm-3以上5×1016cm-3以下がより好ましく、1×10
10cm-3以上1×1016cm-3以下がさらに好ましく、1×1011cm-3以
上1×1015cm-3以下がさらに好ましい。
【符号の説明】
【0299】
30、31、32、33:メモリセル、60:SA(センスアンプ)、61、62:TG
(トランスファゲート)、 65:AND回路、75:ラッチ回路、77:回路、78:
スイッチ、
100、102:MCU(マイクロコントローラユニット)、 110、150:バス、
111、151:プロセッサコア、 112、152:メモリ部、 115、155:
クロック生成回路、 116、156:周辺回路、 120、170:NOSRAM、
121、171:メモリ、 131、181:制御部、 132、182:ドライバ部、
133、183:セルアレイ、 135、185:メモリセル、 161:設定用レジ
スタ、162:クロック生成部、163:ロジック部、
300:NOSRAM、 311:コントロール部、 312:ドライバ部、313:セ
ルアレイ、 314:出力回路、 320:行ドライバ、 321:行デコーダ、 32
2:読み出しワード線ドライバ、323:書き込みワード線ドライバ、 324:プレデ
コーダ、 325:列デコーダ、 330:列ドライバ、 331:プリチャージ回路、
332:センスアンプ、 333:出力MUX(マルチプレクサ)、 334:書き込
みドライバ、 335:ソース線ドライバ、 340:回路、 341、342、343
、344、345、 346、347、348:バッファ、 349:インバータ、 3
51、352:ブロック、
501、502、503、504、505、506、507:OSトランジスタ、
510:酸化物層、511、512、513、514:金属酸化物層、
521、522、523、524、525、526、527、528、529、530:
絶縁層、
550、550a、550b、550c、551、551a、551b、552、552
a、552b、553、553a、553b:導電層、
560:単結晶シリコンウエハ、 570:CMOS層、 571:OSFET層、
2010:情報端末、 2011:筐体、 2012:表示部、 2013:操作ボタン
、 2014:外部接続ポート、 2015:スピーカ、 2016:マイクロフォン、
2050:ノート型PC(パーソナルコンピュータ)、 2051:筐体、 2052
:表示部、2053:キーボード、 2054:ポインティングデバイス、 2070:
ビデオカメラ、 2071:筐体、 2072:表示部、 2073:筐体、 2074
:操作キー、 2075:レンズ、 2076:接続部、 2110:携帯型遊技機、
2111:筐体、2112:表示部、 2113:スピーカ、 2114:LEDランプ
、 2115:操作キーボタン、 2116:接続端子、 2117:カメラ、 211
8:マイクロフォン、 2119:記録媒体読込部、 2150:電気冷凍冷蔵庫、 2
151:筐体、 2152:冷蔵室用扉、 2153:冷凍室用扉、 2170:自動車
、 2171:車体、 2172:車輪、 2173:ダッシュボード、 2174:ラ
イト、
7000:電子部品、 7001:リード、 7002:プリント基板、 7004:回
路基板、 7100:半導体ウエハ、 7102:回路領域、 7104:分離領域、
7106:分離線、 7110:チップ、
a1、a2、a3、a4、a5、Q2、QB2、SN1、SN2、SN3、SN5、SN
6:ノード、
CS1、CS2、CS3、CS5、CS6:容量素子、
MR1、MR2、MR3、MR4、MR5、MR6、MR7、MW1、MW2、MW3、
MW5、MW6、T60、T61、T62、T65、T66、T67、T68、T69:
トランジスタ、
BL、BGL、GRBL、GWBL、RBL、RWL、RCL、SL、WBL、WWL:
配線